JPH1049204A - 周期性信号の適応制御方法 - Google Patents

周期性信号の適応制御方法

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JPH1049204A
JPH1049204A JP8200083A JP20008396A JPH1049204A JP H1049204 A JPH1049204 A JP H1049204A JP 8200083 A JP8200083 A JP 8200083A JP 20008396 A JP20008396 A JP 20008396A JP H1049204 A JPH1049204 A JP H1049204A
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JP
Japan
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adaptive
signal
coefficient vector
algorithm
adaptive coefficient
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JP8200083A
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English (en)
Inventor
Masanao Ebata
正直 江端
Takeshi Usagawa
毅 宇佐川
Hiroyuki Ichikawa
浩幸 市川
Katsuhiro Goto
勝博 後藤
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Sumitomo Riko Co Ltd
Original Assignee
Tokai Rubber Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 適応信号を直交型で表記しながら、周期性信
号の一次角振動数、振幅および位相、並びに制御対象シ
ステムの伝達特性の変動に対し、優れた適応性をもつ周
期性信号の適応制御方法を提供すること。 【解決手段】 一次角振動数ωの周期性信号d(n)に
対し、これに同期しているK次(2≦K)までの高調波
信号からなる適応信号y(n)を逆位相で加えることに
よって、周期性信号d(n)の観測点24への影響を能
動的に除去し、誤差信号e(n)を低減する。具体的に
は、一次角振動数ωに基づき適応信号y(n)を発生さ
せる適応信号発生アルゴリズム11と、適応係数ベクト
ルW(n)を適応的に調整する適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズム12とを有する適応制御アルゴリズム1であ
る。更新アルゴリズム12により更新される適応係数ベ
クトルW(n)の成分をもって、適応信号発生アルゴリ
ズム12で発生する適応信号y(n)の係数α
k(n),βk(n)が更新され、適応が進む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、周期性信号の能動
抑制技術の技術分野に属する。例えば、周期性信号が振
動であれば能動制振の技術分野に属し、周期性信号が雑
音であればアクティヴ・ノイズ・サプレッションの技術
分野に属し、周期性信号の種類によって応用範囲は広く
拡がっている。
【0002】
【従来の技術】本発明に対する従来技術としては、特開
平8−44377号公報(特願平6−201384号)
には、DXHSアルゴリズムと名付けられた周期性信号
の適応制御方法が開示されている。DXHSアルゴリズ
ムは、周期性信号の基本周波数成分とその高調波成分と
の制御を行い、その観測点に及ぼす影響を抑制する適応
制御方法を実現するものである。DXHSアルゴリズム
では、その影響を抑制すべき制御対象信号(周期性信
号)と、これを相殺すべく発生させられる制御信号(適
応信号とも呼ぶ)とは、それぞれ正弦波で表記され、こ
の正弦波の角振動数、位相、およびゲインが主要な変数
として定義されていた。そして、周期性信号の影響を受
ける観測点で観測される誤差信号の二乗を評価関数とす
る最小二乗法を基本として、制御信号のゲインおよび位
相を適応的に調整して周期性信号の影響を最小化してい
た。また、制御対象システムの位相遅れ特性の変動にも
配慮し、テーブルデータの導入による制御対象システム
の特性の変動への適応能力の向上も図られていた。
【0003】このようなDXHSアルゴリズムは、上記
公報中で従来技術としたアルゴリズムに比べ、外乱の影
響を受けにくく、演算量が少ないという利点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述の従来技
術においては、制御信号を観測点に伝達する制御対象シ
ステムの時間変動(所定の角振動数で伝達特性が経時変
化する)に対する適応能力が十分ではなかった。そこ
で、先行技術として発明者らはその改良アルゴリズム
(DXHS改アルゴリズム)を開発し、同アルゴリズム
によれば制御対象システムの伝達特性の大幅な変動に対
しても速やかに適応することができるという実験成果を
得た。この先行技術は、特願平7−129868号とし
て出願されている。
【0005】DXHS改アルゴリズムでは、周期性信号
および制御信号をそれぞれ調和関数で定義している点で
は従来技術と同様である。しかし、適応係数ベクトルW
(n)の成分に、制御信号の振幅および位相に加えて、
制御対象システムの位相遅れに関する適応係数が導入さ
れている点が異なっている。同適応係数の導入に伴い、
適応係数ベクトルW(n)を更新する適応係数ベクトル
更新アルゴリズムに、適応係数を調整する成分も含まれ
るようになっている。また、適応係数ベクトル更新アル
ゴリズムの適応係数を調整する成分に、位相調整パラメ
ータを付加することにより、その収束性を改善してい
る。
【0006】その結果、DXHS改アルゴリズムを用い
た周期性信号の適応制御方法によれば、制御対象システ
ムの伝達特性の経時変化に対する適応能力が飛躍的に高
まるという効果を得ている。さて、前述の従来技術およ
び以上の先行技術のいずれにおいても、周期性信号およ
び適応信号はそれぞれ正弦波(または余弦波)で表記さ
れていた。それゆえ、いずれのアルゴリズムも、適応信
号の各次数の正弦波の振幅および位相を適応的に調整
し、周期性信号の影響を相殺して抑制するものであっ
た。
【0007】そこで本発明は、周期性信号および適応信
号の表記を、正弦波と余弦波との線形結合である直交型
に表記を改め、従来技術および先行技術とは異なる数式
上の表現を取りながら、従来技術および先行技術の持つ
作用効果を包括して有する周期性信号の適応制御方法を
提供することを解決すべき課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題を解決するために、発明者らは以下の各手段を発
明した。なお、通常ハットまたはルーフと呼び慣わされ
ている数式中の記号は、明細書本文には電子出願上の制
約でそのまま表記できないので、「ハット」の接尾辞で
代替している。例えば、Gpkハットという具合である。
【0009】(第1手段)本発明の第1手段は、観測点
に影響を及ぼす周期性信号d(n)に対し、該周期性信
号に同期している一次の基本正弦波およびまたは該基本
正弦波から該基本正弦波のK次(2≦K)までの高調波
信号からなる適応信号y(n)を、直接的または間接的
に逆位相で加えることによって、該周期性信号d(n)
の特定周波数成分の該観測点への影響を能動的に除去
し、該観測点で検知される誤差信号e(n)を低減する
周期性信号の適応制御方法において、時刻nにおいて、
前記周期性信号d(n)の一次角振動数ωに基づき、数
10に従って前記適応信号y(n)を発生させる適応信
号発生アルゴリズムと、該適応信号y(n)の各次数k
(k=1,・・・,K、ただし1≦K)の係数α
k(n),βk(n)を成分に含む適応係数ベクトルW
(n)を、前記誤差信号e(n)に基づいて該時刻nの
経過毎に更新し、該周期性信号d(n)の各次数の振
幅、位相および一次角振動数ωの変動と、該適応信号y
(n)が該観測点に至るまでの制御対象システムの伝達
特性の変動とに対応して、該適応係数ベクトルW(n)
の各該成分を適応的に調整する適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズムとを有し、該適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズムにより更新される該適応係数ベクトルW(n)の成
分であるαk(n),βk(n)をもって、該適応信号発
生アルゴリズムで発生する該適応信号y(n)の各次数
k(k=1,・・,K)の係数αk(n),βk(n)が
更新されることを特徴とする周期性信号の適応制御方法
である。
【0010】
【数10】
【0011】本手段では、上記数10に示すように、適
応信号y(n)を正弦波と余弦波との線形結合である直
交型の数式で表記している。それゆえ、適応係数ベクト
ルW(n)の成分には、振幅と位相に代えて各次数の係
数αk(n),βk(n)が含まれている。適応係数ベク
トル更新アルゴリズムでは、この適応係数ベクトルW
(n)が誤差信号e(n)に基づいて更新周期T毎に更
新される。適応信号発生アルゴリズムでは、こうして更
新される適応係数ベクトルW(n)の成分であるα
k(n),βk(n)をもって、適応信号y(n)の各次
数k(k=1,・・,K)の係数αk(n),βk(n)
が更新される。
【0012】以上のようにして、該周期性信号d(n)
の所定の各次数k(1≦k≦K)の振幅、位相および一
次角振動数ωの変動と制御対象システムの伝達特性の変
動とに対応して、適応信号y(n)は適応的に調整され
る。その結果、観測点における周期性信号の所定の各次
数k(1≦k≦K)の成分の影響は、適応信号y(n)
の影響に相殺されて抑制される。
【0013】したがって本手段では、適応信号発生アル
ゴリズム(すなわち適応信号y(n))は直交型の数式
で表記されており、これに合わせて適応係数ベクトル更
新アルゴリズムも直交型に適合した数式で表記されてい
て、従来技術とも先行技術ともアルゴリズムの表記が異
なっている。それにも係わらず、本手段によれば、従来
技術および先行技術に劣ることのない適応性を有する周
期性信号の適応制御方法を提供することができるという
効果がある。
【0014】(第2手段)本発明の第2手段は、上記第
1手段において、前記適応係数ベクトルW(n)は数1
1により表記され、前記適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズムは数12により表記される、周期性信号の適応制御
方法である。
【0015】
【数11】
【0016】
【数12】
【0017】本手段では、適応係数ベクトルW(n)
は、直交型の適応信号y(n)の各次数k(k=1,・
・,K、ただし1≦k≦K)の係数αk(n),β
k(n)だけを成分として構成されている。また、適応
係数ベクトル更新アルゴリズムも、この係数α
k(n),βk(n)に対応する成分でしか構成されてお
らず、極めて簡素である。
【0018】したがって本手段によれば、上記第1手段
の効果に加えて、適応係数ベクトル更新アルゴリズムの
構成が極めて簡素で計算量が少ない。それゆえ、演算能
力や記憶能力が比較的低い計算機(プロセッサ)でも周
期性信号の適応制御方法が実施できるという効果があ
る。逆に、演算能力が高いプロセッサを用いれば、極め
て短い更新周期Tを設定して、一次角振動数ωが高くシ
ステムの状態が急変する制御対象に対しても、この周期
性信号の適応制御方法の実施が可能になるという効果が
ある。
【0019】(第3手段)本発明の第3手段は、上記第
1手段において、前記制御対象システムの位相遅れの推
定値Gpkハットを前記一次角振動数ωに対応して前記適
応係数ベクトル更新アルゴリズムに供給するテーブルデ
ータを有し、前記適応係数ベクトルW(n)は数13に
より表記され、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズム
は数14により表記される、周期性信号の適応制御方法
である。
【0020】
【数13】
【0021】
【数14】
【0022】本手段では、一次角振動数ωの変動があっ
た場合に、新たな一次角振動数ωに対応して、テーブル
データに記憶されている適正な制御対象システムの位相
遅れの推定値Gpkハットが、適応係数ベクトル更新アル
ゴリズムに供給される。それゆえ、一次角振動数ωが急
激に変動し、それに伴って推定値Gpkハットに少なから
ぬ変動があった場合にも、通常の適応係数ベクトル更新
アルゴリズムの更新作用により推定値Gpkハットの収束
を待つ必要がない。すなわち、テーブルデータから瞬時
に適正な推定値Gpkハットが供給されるので、極めて短
時間に適応することが可能になる。
【0023】したがって本手段によれば、前述の第1手
段の効果に加えて、一次角振動数ωの急激な変動に対す
る適応性が向上し、一次角振動数ωが急変した場合に
も、収束に要する時間が極めて短くなるという効果があ
る。 (第4手段)本発明の第4手段は、上記第1手段におい
て、適応係数ベクトルW(n)は、位相遅れに関する適
応係数Gpkハットを成分に含んで数15により表記さ
れ、適応係数ベクトル更新アルゴリズムは数16により
表記される、周期性信号の適応制御方法である。
【0024】
【数15】
【0025】
【数16】
【0026】本手段では、適応係数ベクトルW(n)の
成分として、係数αk(n),βk(n)に加えて適応係
数Gpkハットが含まれている。また、適応係数ベクトル
W(n)の成分に対応して、適応係数ベクトル更新アル
ゴリズムにも、適応係数Gpkハットを適応的に調整して
更新する成分が含まれている。適応係数Gpkハットに
は、制御対象システムの伝達特性のうち位相遅れの変動
を吸収して適応を促進する作用がある。それゆえ、本手
段によれば、制御対象システムの位相遅れの変動が90
度を超えて拡大する場合にも、誤差信号e(n)を発散
させることなく速やかに収束させることができる。
【0027】また、制御対象システムの伝達特性のうち
ゲインの変動は、適応係数Gpkハットによらずとも、係
数αk(n),βk(n)が互いの比率を一定に保ちなが
ら増大することにより適応的に吸収されている。したが
って本手段によれば、位相遅れを含む制御対象システム
の伝達特性の大きな経時変動に対しても適応できるよう
になるという効果がある。特に、制御対象システムの位
相遅れの変動が大きい場合にも、速やかに適応して誤差
信号e(n)を収束させることが可能になっている。
【0028】(第5手段)本発明の第5手段は、上記第
1手段において、適応係数ベクトルW(n)は、位相遅
れに関する適応係数Gpkハットを成分に含んで数17に
より表記され、適応係数ベクトル更新アルゴリズムは、
非零の位相調整パラメータψを含んで数18により表記
される、周期性信号の適応制御方法である。
【0029】
【数17】
【0030】
【数18】
【0031】本手段では、適応係数ベクトル更新アルゴ
リズムのうち適応係数Gpkハットの調整(更新)をする
成分に、位相調整パラメータψが加えられている。位相
調整パラメータψは非零であって、位相調整パラメータ
ψに適当に調整した値を設定すると、係数αk(n),
βk(n)を更新している成分に対して、適当な位相差
をもって適応係数Gpkハットを更新することができる。
それゆえ、制御対象システムの伝達特性の変動を含む極
めて悪い条件下であっても、誤差信号e(n)を発散さ
せることなく短時間で収束させることが可能になり、適
応性は大幅に改善されている したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加
えて、適応性がいっそう向上し、極めて劣悪な条件下で
も周期性信号d(n)の影響を抑制して誤差信号e
(n)を収束させることが可能になるという効果があ
る。
【0032】(第6手段)本発明の第6手段は、上記第
1〜第5手段のうちいずれかにおいて、前記適応係数ベ
クトル更新アルゴリズムの各前記ステップサイズパラメ
ータの絶対値は、前記一次角振動数ωに関して単調減少
関数としてそれぞれ定義される、周期性信号の適応制御
方法である。
【0033】本手段では、適応係数ベクトル更新アルゴ
リズムにおいて、適応係数ベクトルW(n)の各成分の
更新時の刻み幅を調整する各ステップサイズパラメータ
の絶対値が、一次角振動数ωの単調減少関数である。す
なわち、一次角振動数ωが低く比較的収束し易い範囲で
は、各成分更新の刻み幅が大きく取られ、逆に一次角振
動数ωが高く比較的収束しにくい範囲では、各成分更新
の刻み幅が小さく取られている。それゆえ、一次角振動
数ωが低い範囲では誤差信号e(n)の収束がいっそう
速くなり、一方、一次角振動数ωが高い範囲では誤差信
号e(n)が発散することが防止されている。
【0034】したがって本手段によれば、前述の各手段
の効果に加えて、一次角振動数ωの高い領域と低い領域
との両方において、優れた適応性を両立させることがで
きるという効果がある。 (第7手段)本発明の第7手段は、上記第1〜第6手段
のうちいずれかにおいて、前記一次角振動数ωが変動し
た際に、前記係数αk(n),βk(n)ならびに前記制
御対象システムのゲインの推定値GGkハットおよび位相
遅れの推定値Gpkハットのうち少なくとも一つを、該記
一次角振動数ωに対応して前記適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズムに供給するテーブルデータを有する、周期性
信号の適応制御方法である。
【0035】本手段では、一次角振動数ωの変動があっ
た場合に、新たな一次角振動数ωに対応してテーブルデ
ータに記憶されている適正な値が、適応係数ベクトル更
新アルゴリズムの適応係数ベクトルW(n)の成分のう
ち少なくとも一つに供給される。それゆえ、一次角振動
数ωが急激に変動し、それに伴って適応係数ベクトルW
(n)の各成分に大きな変動があった場合にも、通常の
適応係数ベクトル更新アルゴリズムの更新作用による収
束を待つ必要がない。すなわち、適応係数ベクトル更新
アルゴリズム中の適応係数ベクトルW(n)の特定の成
分に、テーブルデータから瞬時に適正な値が供給される
ので、極めて短時間に適応することが可能になる。
【0036】したがって本手段によれば、前述の各手段
の効果に加えて、一次角振動数ωの急激な変動に対する
適応性が向上し、一次角振動数ωが急変した場合にも、
収束に要する時間がなおいっそう短くなるという効果が
ある。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明の周期性信号の適応制御方
法の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が
えらえるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明す
る。 [実施例1] (実施例1の導出)本発明の実施例1としての周期性信
号の適応制御方法は、図1に示すように、観測点24に
影響を及ぼす周期性信号d(n)を発生する物理システ
ム2に対して適用される。周期性信号d(n)は、一次
角振動数ω**は真値を表す)を基本振動数とする一次
以上の調和信号である。本適応制御の制御目標は、周期
性信号d(n)に適正な相殺信号z(n)を加えること
により、観測点での誤差信号e(n)を抑制することで
ある。
【0038】周期性信号d(n)は、通常は各次数k
(k=1,・・・,L)の振幅ak *および位相φk *をパ
ラメータとして、数19に示す正弦波関数で表現される
のが普通である。
【0039】
【数19】
【0040】ここで、自然数Lは周期性信号d(n)の
高調波成分の最高次数であり、Tはサンプリング周期
(または更新周期)である。この周期性信号d(n)の
表記を直交型に改めて展開すると、周期性信号d(n)
は数20のように表記される。
【0041】
【数20】
【0042】ここで、振幅ak *および位相φk *と直交型
の係数αk(n),βk(n)とは、 振幅 ak * =√{αk(n)2+βk(n)2}, 位相 φk * =tan-1{αk(n)/βk(n)} との関係にある。以上を踏まえて、適応信号発生アルゴ
リズム11および適応係数ベクトル更新アルゴリズム1
2を有する適応制御アルゴリズム1を、これから導き出
す。
【0043】まず、適応信号発生アルゴリズム1の定義
を行う。制御信号である適応信号y(n)は、直交型表
現である次の数21で表記され、適応信号発生アルゴリ
ズム11は、この適応信号y(n)を数21に従って発
生させるアルゴリズムとして定義される。
【0044】
【数21】
【0045】ここで、適応信号y(n)を駆動している
一次角振動数ωは、周期性信号d(n)の一次角振動数
ω* が十分に精密に観測されるものとし、工学的に周期
性信号d(n)の一次角振動数ω* と等価(ω=ω*
であるものとしている。次に、適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズム12を以下のようにして導出する。誤差信号
e(n)の大きさを評価するための評価関数Jを、J=
e(n)2 と定義し、適応係数ベクトルW(n)を、W
(n)=[・・・αk(n)・・・,・・・βk(n)・
・・]T と定義する。すると、適応係数ベクトルW
(n)に関する評価関数Jの勾配ベクトルD(n)は、
数22に示すように展開される。
【0046】
【数22】
【0047】したがって、更新周期T毎に適正なステッ
プサイズパラメータμαk,μβkを勾配ベクトルD
(n)の各成分に乗じた修正量を、適応係数ベクトルW
(n)から差し引くことにより、適応係数ベクトル更新
アルゴリズム12は数23に示すように定義される。
【0048】
【数23】
【0049】適応係数ベクトル更新アルゴリズム12
は、最小二乗法の特性にしたがって係数αk(n),βk
(n)を評価関数Jが最小になる値に収束させ、適応制
御アルゴリズム1は適応していく。なお、前述の勾配ベ
クトルD(n)の数式(数22)および適応係数ベクト
ル更新アルゴリズム12(数23)を導き出す上で、理
解を容易にするために説明が省略されている部分がある
ので、ここに補っておく。すなわち、制御対象システム
23の伝達特性は、周期性信号d(n)に加えられる相
殺信号z(n)の振幅および位相に影響があるが、偏微
分した上に係数をステップサイズパラメータにまとめて
しまうと、その影響は消えてしまう。それゆえ、前述の
数22および数23に示すように、e(n)=d(n)
+y(n)としたシステム構成と同様の結果が得られ
る。
【0050】(実施例1の構成)以上のようにして導き
出された本実施例としての周期性信号の適応制御方法の
構成について、改めてまとめると次のようになる。すな
わち、本実施例は、再び図1に示すように、観測点24
に影響を及ぼす周期性信号d(n)に対し、周期性信号
d(n)に同期している適応信号y(n)を制御対象シ
ステム23を介して逆位相で加えることによって、周期
性信号d(n)の特定周波数成分の観測点24への影響
を能動的に除去し、観測点4で検知される誤差信号e
(n)を低減する周期性信号の適応制御方法である。
【0051】適応信号y(n)は、周期性信号d(n)
に同期(ω=ω* )している一次の基本正弦波である
か、この基本正弦波からそのK次(2≦K)までの高調
波信号からなる調和信号である。適応信号y(n)の次
数Kは、高調波の最高次数L以下でよく、制御目的を果
たしうる範囲で極力低く設定される。適応制御アルゴリ
ズム1は、適応係数ベクトルW(n)を格納し、更新周
期T毎にこれを更新する適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12と、更新された適応係数ベクトルW(n)の成
分で係数αk(n),βk(n)を更新して適応信号y
(n)を発生させる適応信号発生アルゴリズム11とか
ら構成されている。
【0052】適応信号発生アルゴリズム11は、時刻n
において前記周期性信号d(n)の一次角振動数ωに基
づき、数24に従って前記適応信号y(n)を発生させ
るアルゴリズムである。
【0053】
【数24】
【0054】一方、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
12は、適応係数ベクトルW(n)を、誤差信号e
(n)に基づいて毎時刻nで更新するアルゴリズムであ
る。ここで、適応係数ベクトルW(n)=[・・・αk
(n)・・・,・・・βk(n)・・・]T は、適応信
号y(n)の各次数k(k=1,・・・,K、ただし1
≦K≦L)の係数αk(n),βk(n)を成分としてい
る。
【0055】適応係数ベクトル更新アルゴリズム12
は、次の数25に従って適応係数ベクトルW(n)の各
該成分を適応的に調整する。この調整により、周期性信
号d(n)の各次数k(1≦k≦L)の振幅ak *、位相
φk *および一次角振動数ω* (=ω)の変動と、適応信
号y(n)が観測点24に至るまでの制御対象システム
23の伝達特性の変動とに対応して、誤差信号e(n)
が抑制されるようになる。
【0056】
【数25】
【0057】すなわち、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12により更新される適応係数ベクトルW(n)の
成分αk(n),βk(n)をもって、適応信号発生アル
ゴリズム11で発生する適応信号y(n)の各次数k
(k=1,・・,K)の係数α k(n),βk(n)が更
新されることにより、周期性信号d(n)の影響に対す
る適応制御が行われる。
【0058】(実施例1の作用効果)本実施例の周期性
信号の適応制御方法は、以上のように構成されているの
で、次のような大きく分けて二つの作用および効果を有
する。第1に、本実施例の周期性信号の適応制御方法で
は、上記数24に示すように、適応信号y(n)が正弦
波と余弦波との線形結合である直交型の数式で表記され
ている。また、適応係数ベクトルW(n)の成分は、
(従来技術や先行技術の)振幅および位相に代えて、直
交型表記の適応信号y(n)の各次数の係数α
k(n),βk(n)からなっている。
【0059】適応係数ベクトル更新アルゴリズム12で
は、この適応係数ベクトルW(n)が誤差信号e(n)
に基づいて、更新周期T毎に(すなわち毎時刻nに)更
新される。適応信号発生アルゴリズムでは、こうして更
新される適応係数ベクトルW(n)の成分αk(n),
βk(n)をもって、適応信号y(n)の各次数k(k
=1,・・,K)の係数αk(n),βk(n)が更新さ
れる。
【0060】以上のようにして、周期性信号d(n)の
所定の各次数k(1≦k≦K)の振幅、位相および一次
角振動数ωの変動と制御対象システム23の伝達特性の
変動とに対応して、適応信号y(n)は適応的に調整さ
れる。その結果、観測点における周期性信号の所定の各
次数k(1≦k≦K)の成分の影響は、適応信号y
(n)の影響に相殺されて抑制される。
【0061】したがって本実施例では、適応信号発生ア
ルゴリズム11(すなわち適応信号y(n))は直交型
の数式(上記数24)で表記されている。そして、これ
に合わせて適応係数ベクトル更新アルゴリズム12も直
交型に適合した数式(上記数25)で表記されていて、
従来技術とも先行技術とも両アルゴリズム11,12の
表記が異なっている。それにも係わらず、本実施例によ
れば、従来技術および先行技術に劣ることのない適応性
を有する周期性信号の適応制御方法を提供することがで
きるという効果がある。
【0062】第2に、本実施例では、適応係数ベクトル
W(n)は、直交型の適応信号y(n)の各次数k(k
=1,・・,K、ただし1≦k≦K)の係数α
k(n),βk(n)だけを成分として構成されている。
これに合わせて、適応係数ベクトル更新アルゴリズム1
2も、この係数αk(n),βk(n)に対応する成分で
しか構成されておらず、極めて簡素である。
【0063】したがって、本実施例の周期性信号の適応
制御方法によれば、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
の構成が極めて簡素で計算量が少ない。それゆえ、演算
能力や記憶能力が比較的低い計算機(プロセッサ)でも
周期性信号の適応制御方法が実施できるという効果があ
る。逆に、演算能力が高いプロセッサを用いれば、極め
て短い更新周期Tを設定して、一次角振動数ωが高くシ
ステムの状態が急変する制御対象に対しても、この周期
性信号の適応制御方法の実施が可能になるという効果が
ある。
【0064】(実施例1の車載制振システムへの応用)
本実施例のより具体的な理解を深めるため、自動車のエ
ンジンの振動のキャビンに与える影響を抑制する車載制
振システムへの適用を例に取って、図1に示されている
適応制御システムの各ブロックがどの装置に相当してい
るかを説明する。
【0065】車載制振システムは、図2に示すように、
車両側の物理システム2と、車載の適応制御装置ユニッ
ト10とから構成されている。車両側の物理システム2
では、エンジンEがアクチュエータを内蔵しているエン
ジンマウントAに支持されている。エンジンEの回転数
(一次角振動数ω* )はエンジンEに取り付けられてい
る回転数センサPにより計測される。回転数センサP
は、カムシャフト(またはクランクシャフト)のギヤの
歯の通過時にパルスを発生するピックアップと、このピ
ックアップからの信号をパルス化する回路とを備えてい
る。このパルスはパルスカウンタでカウントされ、エン
ジンEの回転数の計測値(すなわち一次角振動数ω)が
角振動数検出器14で割り出されて、コントローラ1に
入力される。
【0066】運転席の床には、観測点として振動加速度
計Bが設置されている。振動加速度計Bで検出された垂
直方向の加速度は、誤差信号e(n)として検出され、
誤差信号検出器15で増幅処理された後、コントローラ
1に入力される。コントローラ1では、一次角振動数ω
および誤差信号e(n)は、各々のA/D変換器(図
略)を通じてサンプリングされ、デジタル化されてコン
トローラ1に内蔵されているコンピュータ(図略)に入
力される。このコンピュータでは、前述の適応制御アル
ゴリズム1(図1参照)がソフトウエアとして内蔵され
ており、デジタル化された一次角振動数ωおよび誤差信
号e(n)は、この適応制御アルゴリズム1に従って処
理される。その結果、適応制御アルゴリズム1からは適
応信号y(n)が算出され、D/A変換器(図略)を経
てパワーアンプ16に出力される。
【0067】パワーアンプ16では、適応信号y(n)
を増幅して駆動電流を発生し、この駆動電流はアクチュ
エータ内蔵エンジンマウントAを駆動して、振動加速度
センサBの設置されている観測点24でのエンジンEの
振動の影響を相殺する。したがって、図1中の制御対象
システムの伝達特性23は、パワーアンプ16の応答特
性、アクチュエータ内蔵エンジンマウントAの駆動特
性、および車体Sの振動伝達特性が直列に連結された伝
達特性である。
【0068】コントローラ1の作用で、常にエンジンE
の回転数(一次角振動数ω)に同期している適応信号y
(n)が適正な直交型表記の係数αk(n),βk
(n)(すなわち、正弦波表現なら振幅および位相)で
発生する。エンジンEからは、車体Sの伝達特性22
(G’[g,p])(図1参照)を介して観測点24
へ、振動が伝達される。このエンジンEに起因する振動
成分のうち、コントローラ1に内蔵された適応制御アル
ゴリズム1で制御される第K次までの振動成分は、アク
チュエータ内蔵エンジンマウントAから伝達される適応
信号y(n)に起因する振動成分と互いに相殺し合う。
【0069】その結果、観測点24においては、誤差信
号e(n)は十分に低く抑制される。エンジンEの回転
数(すなわち一次角振動数ω)が変化しても、コントロ
ーラ1が適応して同様の振動抑制作用が発揮される。ま
た、伝達特性22,23のうちいずれに変動があって
も、所定の範囲であればコントローラ1は適応すること
ができ、同様の振動抑制効果が発揮される。なお、伝達
特性22,23は、温度変化や貨客の搭載状態、また経
年変化等により、ある程度の範囲内で変化することがあ
る。
【0070】以上詳述したように、本実施例の周期性信
号の適応制御方法を適用すれば、エンジンによる車両の
振動などを有効に抑制することが可能である。 (実施例1の変形態様)本実施例の適応制御アルゴリズ
ム1に、一次角振動数ωの領域で区分された区画毎に適
正な係数αk(n),βk(n)を格納しているテーブル
データを有する変形態様が可能である。本変形態様で
は、一次角振動数ωが変動しこれに伴って適正な係数α
k(n),βk(n)が変動した場合に、上記テーブルデ
ータから新たな一次角振動数ωで適正な係数αk
(n),βk(n)が、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12に供給される。本変形態様によれば、一次角振
動数ωが変動した際に、よりいっそう速やかに適応でき
るという効果がある。
【0071】さらに、十分に適応して誤差信号e(n)
が収束していることを判定する適応判定手段を有し、テ
ーブルデータの内容をアップデートする機能を備えてい
る変形態様も可能である。すなわち本変形態様では、適
応係数ベクトルW(n)が適応済みと判定された場合に
は、適応係数ベクトルW(n)の成分でテーブルデータ
の係数αk(n),βk(n)がアップデートされる。ア
ップデートされるのは、係数αk(n),βk(n)のう
ち、当該一次角振動数ωの区画の数値である。本変形態
様によれば、周期性信号d(n)の周波数特性や伝達経
路22,23の周波数特性に変動があった場合にも、そ
の変動を学習することができ、いっそう柔軟で優れた適
応性が発揮されるという効果がある。
【0072】[実施例2]本発明の実施例2としての周
期性信号の適応制御方法について、図3を参照して説明
する。本実施例の適応制御アルゴリズム1’は、前述の
実施例1と異なり、制御対象システム23の位相遅れの
推定値Gpkハットを一次角振動数ωに対応して前記適応
係数ベクトル更新アルゴリズムに供給するテーブルデー
タ13を有している。テーブルデータ13は、一次角振
動数ωを所定の区画(例えば1Hzに相当する区間づ
つ)に区分した表形式のデータであり、事前に周波数掃
引試験などで測定された制御対象システム23の位相遅
れの測定値Gpkハットが格納されている。
【0073】その他の点(例えば適応信号発生アルゴリ
ズム11)では、適応制御アルゴリズム1の構成は実施
例1のそれと同様である。一方、物理システム2は、実
施例1のものと同様である。適応制御アルゴリズム1’
のうち、適応信号発生アルゴリズム11と適応係数ベク
トルW(n)=[・・・αk(n)・・・,・・・β
k(n)・・・]T とは、実施例1と同様であるが、適
応係数ベクトル更新アルゴリズム12’は実施例1と異
なっている。すなわち、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12’は、次の数26に示すように、制御対象シス
テム23の伝達特性23(G’[g,p])の位相遅れ
の推定値Gpkハットによる補正成分を含んでいる。
【0074】
【数26】
【0075】本実施例の適応制御アルゴリズム1’で
は、一次角振動数ωの変動があった場合に、新たな一次
角振動数ωに対応して、テーブルデータ13に記憶され
ている適正な制御対象システムの位相遅れの推定値Gpk
ハットが、適応係数ベクトル更新アルゴリズム12’に
供給される。それゆえ、一次角振動数ωが急激に変動
し、それに伴って推定値Gpkハットに少なからぬ変動が
あった場合にも、実施例1の適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム12と異なり、通常の更新作用による推定値G
pkハットの収束を待つ必要がない。すなわち、テーブル
データ13から適応制御アルゴリズム12’に対し、瞬
時に適正な推定値Gpkハットが供給されるので、極めて
短時間に適応することが可能になる。
【0076】したがって本実施例によれば、前述の実施
例1の効果に加えて、一次角振動数ωの急激な変動に対
する適応性が向上し、一次角振動数ωが急変した場合に
も、即座に適応が可能で、誤差信号e(n)の収束に要
する時間が極めて短くなるという効果がある。 (実施例2の変形態様)本実施例のテーブルデータ13
の内容を、推定値Gpkハットだけではなく、係数α
k(n),βk(n)をも含むものとした変形態様も可能
である。本変形態様によれば、一次角振動数ωが変動し
た際に、よりいっそう速やかに適応できるという効果が
ある。
【0077】さらに、十分に適応して誤差信号e(n)
が収束していることを判定する適応判定手段を有し、テ
ーブルデータの内容をアップデートする機能を備えてい
る変形態様も可能である。すなわち本変形態様では、適
応係数ベクトルW(n)が適応済みと判定された場合に
は、図3中に破線で示されている信号経路Rを介して適
応係数ベクトルW(n)の成分でテーブルデータの係数
αk(n),βk(n)がアップデートされる。アップデ
ートされるのは、係数αk(n),βk(n)のうち、当
該一次角振動数ωの区画の数値である。本変形態様によ
れば、周期性信号d(n)の周波数特性や伝達経路2
2,23の周波数特性に変動があった場合にも、その変
動を学習することができ、いっそう柔軟でさらに優れた
適応性が発揮されるという効果がある。
【0078】[実施例3]本発明の実施例3としての周
期性信号の適応制御方法は、図4に示すように、適応制
御アルゴリズム1”のみが実施例1と異なっている。本
実施例の適応制御アルゴリズム1”では、適応係数ベク
トルW(n)に各次数kの位相遅れに関する適応係数G
pkハットを含んでおり、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12”に適応係数Gpkハットを更新する機能が付与
されている。適応制御アルゴリズム1”のうち、適応信
号発生アルゴリズム11の方は、実施例1と同様であ
る。また、物理システム2も実施例1と同様である。
【0079】すなわち本実施例では、適応係数ベクトル
W(n)は、位相遅れに関する適応係数Gpkハットを成
分に含んで数27により表記され、適応係数ベクトル更
新アルゴリズムは数28により表記される。
【0080】
【数27】
【0081】
【数28】
【0082】本実施例では、適応係数ベクトルW(n)
の成分として、係数αk(n),βk(n)に加えて適応
係数Gpkハットが含まれている。また、適応係数ベクト
ルW(n)の成分に対応して、適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズム12”にも、適応係数Gpkハットを適応的に
調整して更新する成分が含まれている。適応係数Gpk
ットには、制御対象システムの伝達特性23のうち位相
遅れの変動を吸収して適応を促進する作用がある。それ
ゆえ、本実施例によれば、制御対象システム23の位相
遅れの変動が90度を超えて拡大する場合にも、誤差信
号e(n)を発散させることなく速やかに収束させるこ
とができる。
【0083】また、制御対象システムの伝達特性23の
うちゲインの変動は、適応係数Gpkハットによらずと
も、係数αk(n),βk(n)が互いの比率を一定に保
ちながら増大することにより適応的に吸収されている。
したがって本実施例によれば、位相遅れを含む制御対象
システムの伝達特性23の大きな経時変動に対しても適
応できるようになるという効果がある。特に、制御対象
システム23の位相遅れの変動が大きい場合にも、速や
かに適応して誤差信号e(n)を収束させることが可能
になっている。
【0084】(実施例3の変形態様)本実施例について
も、前述の実施例2の変形態様と同様に、テーブルデー
タ13”を有する変形態様が可能であり、実施例2と同
様の効果が発揮される。ただし、本実施例では適応係数
pkハットを推定する機能が適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム12”にあるので、信号経路Rを通じてテーブ
ルデータ13”の適応係数Gpkハットのアップデートも
可能である。その結果、本実施例の変形態様では実施例
2の変形態様と比較しても、いっそう適応性が向上して
いる。
【0085】[実施例4] (実施例4の構成)本発明の実施例3としての周期性信
号の適応制御方法は、図5に示すように、適応制御アル
ゴリズム1Aのみが実施例1と異なっている。ただし、
適応制御アルゴリズム1Aのうち適応信号発生アルゴリ
ズム11の方は、実施例1と同様である。また、物理シ
ステム2も実施例1と同様である。
【0086】本実施例の適応制御アルゴリズム1Aで
は、実施例3と同様に、適応係数ベクトルW(n)に各
次数kの位相遅れに関する適応係数Gpkハットを含んで
おり、適応係数ベクトル更新アルゴリズム12Aに適応
係数Gpkハットを更新する機能が付与されている。ただ
し本実施例は、適応係数ベクトル更新アルゴリズム12
Aの適応係数Gpkハットを更新する成分に位相調整パラ
メータψが付加されている点で、実施例3と異なってい
る。
【0087】すなわち本実施例では、適応係数ベクトル
W(n)は、位相遅れに関する適応係数Gpkハットを成
分に含んで数29により表記され、適応係数ベクトル更
新アルゴリズム12Aは、非零の位相調整パラメータψ
を含んで数30により表記される。
【0088】
【数29】
【0089】
【数30】
【0090】(実施例4の作用効果)本実施例では、適
応係数ベクトル更新アルゴリズム12Aのうち適応係数
pkハットの調整(更新)をする成分に、位相調整パラ
メータψが加えられている。位相調整パラメータψは非
零であって、(π/2)<ψ<(3π/2)の範囲で設
定するのが適応性を向上させる上で好ましい。
【0091】この位相調整パラメータψに適正な範囲の
値を設定すると、適応係数ベクトル更新アルゴリズム1
2Aにおいて、係数αk(n),βk(n)を更新してい
る成分に対して、適当な位相差をもって適応係数Gpk
ットを更新することができる。それゆえ、制御対象シス
テムの伝達特性の変動を含む極めて悪い条件下であって
も、誤差信号e(n)を発散させることなく短時間で収
束させることが可能になり、適応性は大幅に改善されて
いるしたがって本実施例によれば、適応性がいっそう向
上し、極めて劣悪な条件下でも周期性信号d(n)の影
響を抑制して誤差信号e(n)を収束させることが可能
になるという効果がある。
【0092】(実施例4の数値シミュレーションによる
評価)発明者らは、本実施例の適応制御アルゴリズム1
Aの性能を評価する目的で、数値シミュレーションを行
った。この数値シミュレーションでは、制御対象システ
ムの伝達特性23のうち位相遅れによる影響とその影響
下での適応性を調査した。図6に示すように、位相シフ
ト(位相遅れの符号を逆転)の範囲は−135°から+
180°までであり、45°刻みに各ケースが設定され
ている。
【0093】各ケースでの周期性信号d(n)の振幅は
1.0であり、これにより無制御時の誤差信号e(n)
(=d(n))の二乗値(二乗誤差)も定まる。二乗誤
差レベルの分解能は3×10-5であり、サンプリング周
期(更新周期)Tは0.5ミリ秒(2kHz)である。
一方、周期性信号d(n)の一次角振動数ωは、900
0[deg/s](25Hz)である。また、位相調整
パラメータψはψ=πと設定されており、各ステップサ
イズパラメータは、μαk=0.1,μβk=0.1,μ
Gk=0.01と設定されている。
【0094】その結果、図6に示すように、短時間のう
ちに二乗誤差e2(n)は収束し、極めて優れた適応性
が確認された。すなわち、位相進みのケースに関して
は、途中やや乱れる傾向があるものの、位相シフトが1
80度に至るまで、0.5〜0.7秒程度でグラフから
読みとれない程度にまで二乗誤差は収束している。一
方、位相遅れのケースに関しては、位相シフトが−13
5°に至るまで、二乗誤差は0.2〜0.4秒程度で急
速に収束しており、収束の途中で乱れる傾向もなく、極
めて良好な適応性が発揮されている。なお、図6には収
録されていないが、同シミュレーションでは位相シフト
が−180°に至るまで、誤差信号e(n)は収束する
ことが確認されている。
【0095】したがって、この数値シミュレーションの
結果から、本実施例の周期性信号の適応制御方法は、制
御対象システムの伝達特性23の位相シフトに対して速
やかに適応して誤差信号e(n)を抑制することができ
ることが判明した。また、この結果では特に位相遅れに
対しては極めて良好な適応性を示しているので、温度上
昇や経年変化により位相遅れが生じ易い実システムへの
適用に好適であることが判った。
【0096】(実施例4の変形態様1)前述の本実施例
の適応係数ベクトル更新アルゴリズム12Aにおいて、
各ステップサイズパラメータμαk,μβk,μGkは定数
であるとしていたが、これらを可変とする変形態様も可
能である。例えば、各ステップサイズパラメータの絶対
値は、前記一次角振動数ωに関して単調減少関数として
それぞれ定義される変形態様が可能である。ここでいう
単調減少は、部分的にでもよく、また、連続的にでも段
階的にでもよい。
【0097】本変形態様では、適応係数ベクトル更新ア
ルゴリズム12Aにおいて、適応係数ベクトルW(n)
の各成分係数αk(n),βk(n),Gpkハット(n)
の更新時の刻み幅を調整する各ステップサイズパラメー
タμαk,μβk,μGkの絶対値が、一次角振動数ωの単
調減少関数である。すなわち、一次角振動数ωが低く比
較的収束し易い範囲では、各成分更新の刻み幅が大きく
取られ、逆に一次角振動数ωが高く比較的収束しにくい
範囲では、各成分更新の刻み幅が小さく取られている。
それゆえ、一次角振動数ωが低い範囲では誤差信号e
(n)の収束がいっそう速くなり、一方、一次角振動数
ωが高い範囲では誤差信号e(n)が発散することが防
止されている。
【0098】したがって本変形態様によれば、一次角振
動数ωの高い領域と低い領域との両方において、よりい
っそう優れた適応性を両立させることができるという効
果がある。なお、本変形態様は、前述の実施例1〜3に
対しても適用が可能であり、本変形態様と同様の効果が
得られる。
【0099】(実施例4の変形態様2)本実施例に対し
ても、実施例3と同様に、適応制御アルゴリズム1A内
にテーブルデータ13A(図5参照)を有する変形態様
が可能である。本変形態様では、一次角振動数ωが変動
した際に、係数αk(n),βk(n)および制御対象シ
ステム23の位相遅れの推定値GGkハットが、一次角振
動数ωに対応してテーブルデータ13Aから前記適応係
数ベクトル更新アルゴリズム12Aに供給される。
【0100】本変形態様では、一次角振動数ωの変動が
あった場合に、新たな一次角振動数ωに対応してテーブ
ルデータ13Aに記憶されている適正な値が、適応係数
ベクトル更新アルゴリズム12Aの適応係数ベクトルW
(n)の成分に供給される。それゆえ、一次角振動数ω
が急激に変動し、それに伴って適応係数ベクトルW
(n)の各成分に大きな変動があった場合にも、通常の
適応係数ベクトル更新アルゴリズム12Aの更新作用に
よる収束を待つ必要がない。すなわち、適応係数ベクト
ル更新アルゴリズム12A中の適応係数ベクトルW
(n)成分に、テーブルデータ13Aから瞬時に適正な
値が供給されるので、極めて短時間に適応することが可
能になる。
【0101】したがって本変形態様によれば、一次角振
動数ωの急激な変動に対する適応性がいっそう向上し、
一次角振動数ωが急変した場合にも、収束に要する時間
がさらに短くなるという効果がある。また、実施例3と
同様に、適応が十分に進んだと判定された際に、信号経
路Rを通じてテーブルデータ13Aの内容をアップデー
トする変形態様が可能である。本変形態様によれば、実
施例3同様にシステムの特性の経時変動に対して適応性
を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1としての適応制御システムの構成を
示すブロック線図
【図2】 実施例1の車載制振システムへの適用を示す
模式図
【図3】 実施例2としての適応制御システムの構成を
示すブロック線図
【図4】 実施例3としての適応制御システムの構成を
示すブロック線図
【図5】 実施例4としての適応制御システムの構成を
示すブロック線図
【図6】 実施例4の数値シミュレーションの結果を示
すグラフ一式
【符号の説明】
1,1’,1”,1A:適応制御アルゴリズム(コント
ローラ=コンピュータと A/D,D/A変換器) 10:適応制御装置ユニット 11:適応信号発生アルゴリズム 12,12’,12”,12A:適応係数ベクトル更新
アルゴリズム 13,13”,13A:テーブルデータ 14:検出処理器(一次角振動数ωの信号の) 15:誤差信号検出器(ピックアップセンサの加速度信
号の) 16:パワーアンプ(マウントアクチュエータ駆動用) 2:物理システム 21:信号発生源(エンジンE) 22:信号伝達特性(21から24へ至るまでの) 23:制御対象システムの伝達特性(11から24へ至
るまでの) 24:観測点(ピックアップセンサP) d(n):周期性信号 e(n):誤差信号 y(n):適応信号 z(n):相殺信号 Gpkハット:制御対象システムの位相遅れの推定値、計
測値または適応係数 K:適応信号y(n)の最高次数 L:周期性信号d
(n)の最高次数 k:高調波の次数(ただし、1≦k≦K≦L) n:時刻(離散時間で)、ステップ数 T:サンプリ
ング周期(更新周期) W(n):適応係数ベクトル αk(n),βk(n):直交型の適応信号y(n)の係
数 μαk,μβk,μGk:ステップサイズパラメータ ω*:一次角振動数(真値) ω:一次角振動数(計
測値) A:アクチュエータ内蔵エンジンマウント B:振動
加速度センサ E:エンジン S:車体 P:回転数センサ(電磁
ピックアップ等) R:信号経路(テーブルデータのアップデート用)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】観測点に影響を及ぼす周期性信号d(n)
    に対し、該周期性信号に同期している一次の基本正弦波
    およびまたは該基本正弦波から該基本正弦波のK次(2
    ≦K)までの高調波信号からなる適応信号y(n)を、
    直接的または間接的に逆位相で加えることによって、該
    周期性信号d(n)の特定周波数成分の該観測点への影
    響を能動的に除去し、該観測点で検知される誤差信号e
    (n)を低減する周期性信号の適応制御方法において、 時刻nにおいて、前記周期性信号d(n)の一次角振動
    数ωに基づき、数1に従って前記適応信号y(n)を発
    生させる適応信号発生アルゴリズムと、 該適応信号y(n)の各次数k(k=1,・・・,K、
    ただし1≦K)の係数αk(n),βk(n)を成分に含
    む適応係数ベクトルW(n)を、前記誤差信号e(n)
    に基づいて該時刻nの経過毎に更新し、該周期性信号d
    (n)の各次数の振幅、位相および一次角振動数ωの変
    動と、該適応信号y(n)が該観測点に至るまでの制御
    対象システムの伝達特性の変動とに対応して、該適応係
    数ベクトルW(n)の各該成分を適応的に調整する適応
    係数ベクトル更新アルゴリズムとを有し、 該適応係数ベクトル更新アルゴリズムにより更新される
    該適応係数ベクトルW(n)の成分であるαk(n),
    βk(n)をもって、該適応信号発生アルゴリズムで発
    生する該適応信号y(n)の各次数k(k=1,・・,
    K)の係数αk(n),βk(n)が更新されることを特
    徴とする周期性信号の適応制御方法。 【数1】
  2. 【請求項2】前記適応係数ベクトルW(n)は数2によ
    り表記され、 前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムは数3により表
    記される、請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。 【数2】 【数3】
  3. 【請求項3】前記制御対象システムの位相遅れの推定値
    pkハットを、前記一次角振動数ωに対応して前記適応
    係数ベクトル更新アルゴリズムに供給するテーブルデー
    タを有し、 前記適応係数ベクトルW(n)は数4により表記され、 前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムは数5により表
    記される、請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。 【数4】 【数5】
  4. 【請求項4】適応係数ベクトルW(n)は、位相遅れに
    関する適応係数Gpkハットを成分に含んで数6により表
    記され、 適応係数ベクトル更新アルゴリズムは数7により表記さ
    れる、請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。 【数6】 【数7】
  5. 【請求項5】適応係数ベクトルW(n)は、位相遅れに
    関する適応係数Gpkハットを成分に含んで数8により表
    記され、 適応係数ベクトル更新アルゴリズムは、非零の位相調整
    パラメータψを含んで数9により表記される、請求項1
    記載の周期性信号の適応制御方法。 【数8】 【数9】
  6. 【請求項6】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムの
    各前記ステップサイズパラメータの絶対値は、前記一次
    角振動数ωに関して単調減少関数としてそれぞれ定義さ
    れる、請求項1〜5のうちいずれかに記載の周期性信号
    の適応制御方法。
  7. 【請求項7】前記一次角振動数ωが変動した際に、前記
    係数αk(n),βk(n)ならびに前記制御対象システ
    ムのゲインの推定値GGkハットおよび位相遅れの推定値
    pkハットのうち少なくとも一つを、該記一次角振動数
    ωに対応して前記適応係数ベクトル更新アルゴリズムに
    供給するテーブルデータを有する、請求項1〜6のうち
    いずれかに記載の周期性信号の適応制御方法。
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