JPH10504142A - 半導体ダイオードレーザ及びその製造方法 - Google Patents
半導体ダイオードレーザ及びその製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、量井戸(2A)及び障壁層(2B,2C)の一方の部分(2A)に圧縮応力が与えられ他方の部分(2B,2C)に引っ張り応力が与えられているMQW活性層(2)を有するレーザに関するものである。本発明のレーザにおける応力は、全応力が引っ張り応力となるように過剰補償する。この補償の利点は、レーザの端面(30)付近における発生した放射の吸収が大幅に減少することである。この結果、端面崩壊すなわちミラー崩壊が相当減少する。従って、得られたレーザは既知のレーザよりもより長い寿命を有する。本発明は、応力緩和が端面付近で発生し過剰な引っ張り応力を与えると端面(30)付近の部分のバンドギャップが増大するという認識に基づいている。これにより、放射吸収が減少する。好ましくは、本発明のレーザは圧縮応力を有する1個又は数個の量子井戸層(2A)と過剰な引っ張り応力を有する多数の障壁層(2B,2C)で構成する。本発明は、例えばGaAs/InGaP/InAlGaP材料系により製造されるレーザにおいて極めて有益な利点が達成される。
Description
【発明の詳細な説明】
半導体ダイオードレーザ及びその製造方法
本発明は、第1導電型の基板と、この上に位置する半導体層構造体とを具える
半導体本体を有し、半導体層構造体が、少なくとも第1導電型の第1のクラッド
層と、第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層と、第1クラッド層
と第2クラッド層との間に形成され、順方向に十分な電流強度が供給された場合
に2個の端面間に形成した共振キャビティ内に位置する細条状の活性領域内で単
色のコヒーレントな電磁放射を発生させることができる活性層及びpn接合とを
有し、前記活性層が第1半導体材料の1個又は数個の量子井戸層を具え、この量
子井戸層が第2の半導体材料の障壁層により分離され又は包囲され、前記第2の
クラッド層及び基板が接続導体に電気的に接続され、前記活性層の一部を形成す
る量子井戸層及び障壁層の第1の部分が、この第1の部分の半導体材料が基板の
格子定数よりも大きな格子定数を有することにより圧縮応力を有し、前記層の第
2の部分が、この第2の部分の半導体材料が基板の格子定数よりも小さな格子定
数を有することにより引っ張り応力を有する半導体ダイオードレーザ(以後、簡
単のためにレーザと称する)に関するものである。ここで、「障壁層」と言う用
語は、所謂分離閉じ込め層とも称される。本発明はこのレーザの製造方法にも関
するものである。
このようなレーザは1994年12月13日に公開された米国特許第5373
166号から既知である。そこに記載されているレーザはInP/InGaAs
p材料系により製造され、この材料系のレーザは1〜1.5μmの波長領域に対
応すると共に、量子井戸層と障壁層が基板の格子定数よりも大きい格子定数と小
さい格子定数とを交互に有する材料で構成される多重量子井戸(MQW)活性層
を用いている。より大きな格子定数により関連する層には圧縮応力が生じ、より
小さな格子定数により引張応力が生ずる。このレーザは、価電子帯及び伝導帯の
形状及び位置に対する応力の作用により、全ての層が基板に正確に整合している
レーザの始動電流よりも小さい始動電流を有している。この既知のレーザは応力
補償され、すなわち全圧縮応力が全引張応力にほぼ等しくされている。換言すれ
ば、格子定数の相対差の絶対値と厚さとの積が両方の層について同一にされてい
る。この応力補償により、レーザの活性層に欠陥がほとんど生ずることはなく、
有用な製造寿命が得られる利点がある。
既知のレーザの欠点は、寿命が短過ることであり、特にGaAs/AlGaA
s又はInGaP/InAlGaP材料系で製造される場合に顕著になる。これ
は、光デイスク装置、レーザプリンタ、またはバーコードリーダの用途において
欠点となり、特に高パワーレベルが望まれる場合顕著な欠点となってしまう。
本発明の目的は、低い始動電流で極めて長い寿命を有し、特に比較的短いレー
ザ放射波長で高い(光)パワー放射を有するレーザを提供することにある。
この目的を達成するため、冒頭部で述べた型式の半導体レーザダイオードは、
前記活性層の2個の部分の基板に対する格子定数の相対変移及び厚さを、活性層
の全引っ張り応力が全圧縮応力よりも大きくなるように選択し、前記応力が補償
され活性層に生ずる応力が引っ張り応力となることを特徴とする。本発明は、活
性層の一部を構成する層に生ずる応力が端面と隣接する部分において緩和すると
いう驚くほどの認識に基づいている。圧縮応力を有する層は、この応力の結果と
してバンドキャップが増大するが、この増大は応力緩和より端面付近でその全部
又は一部が消滅するので、端面付近の部分のバンドギャップは端面から遠く離れ
た部分のバンドギャップよりも小さくなる。引張応力が生ずるとバンドギャップ
は小さくなるが、同様に緩和により端面付近においてはバンドギャップの低下が
消滅するので、この場合活性層は端面付近においてより大きなバンドギャップを
有することになる。さらに、本発明は、上記第1のケースでは端面付近において
発生した放射の吸収が増大するため、第1のケースは好ましくないという認識に
基づく。この吸収により発生した熱によりレーザに破壊が生じてしまう。他方、
上記第2のケースは好ましいものである。実際に、バンドギャップが増大すると
吸収が低下し、レーザ崩壊が一層低下し、特にいわゆるレーザの端面又はミラー
崩壊か一層低下する。両方の種類の応力が補償し合う既知のレーザにおいては、
応力の効果及びバンドギャップの緩和の効果が補償されてしまう。この結果、既
知のレーザは共振キャビティの全長に亘って(ほぼ)一定のバンドギャップを有
することになる。一方、本発明によるレーザにおいては、過剰補償が行われるの
で、全引張応力により端面付近のバンドギャップは他の部分のバンドギャップよ
りも一層大きくなる。従って、このようなレーザの端面崩壊は極めて小さくなり
、高い光パワーの場合でもレーザ寿命が長くなる。さらに、本発明のレーザは応
力の部分的な補償による利点も達成される。これにより、レーザの始動電流が大
幅に小さくなる。さらに、このレーザの活性層は、それぞれ応力を有する比較的
多数の層又は比較的厚い層で構成することができる。このように構成することに
より、発生した放射の良好な閉じ込め及び比較的長い波長の放射が得られる別の
利点が達成される。得られるレーザは特に長い有用な寿命を有している。
価電子帯及び伝導帯の形状及び位置、つまりバンドギャップ値に対する圧縮又
は引張応力の効果は、機械的な応力の作用についてだけ関係する。実際に、異な
る格子定数の選択は異なる材料を選択すること(異なる材料組成を含む)を意味
し、バンドギャップに対してより強い影響を及ぼす。圧縮応力が作用する場合、
これは、応力のない場合よりも活性層のバンドギャップが相当小さいことを意味
する。引張応力の場合、バンドギャップは一層大きくなる。一方、組成変化の影
響は共振キャビティの全長に亘って同一であり変化させることはできない。発生
した放射が偏移する方向及びその程度は極めて重要であるが、後者の効果(上述
した効果に重畳される)は前述した説明の有効性が低減するものではない。
本発明よる方法は、第1導電型の基板に、少なくとも第1導電型の第1のクラ
ッド層と、活性層と、第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層とを
有する半導体層構造体を形成し、前記活性層を、第2の半導体材料の障壁層によ
り相互に分離され又は包囲されている1個又は数個の量子井戸層により形成し、
前記第2のクラッド層及び基板に電気的接続導体を形成し、前記第1及び第2の
半導体材料又はその組成を、前記活性層の一部を形成する層の第1の部分が、こ
の第1の部分の半導体材料が基板の格子定数よりも小さな格子定数を有し、第2
の部分が基板の格子定数よりも大きな格子定数を有するように選択して半導体ダ
イオードレーザを製造するに際し、前記2個の部分の格子定数の差の値及び厚さ
を、活性層の反対の応力が互いに十分に補償し合わず、生ずる応力が引っ張り応
力となるように選択することを特徴とする。
本発明によるレーザは、上記方法により簡単に得られる。
本発明によるレーザの第1実施例において、前記活性層の第1の部分がより大
きな引っ張り応力を有する少なくとも1個の量子井戸層を含み、前記活性層の第
2の部分ががより小さな圧縮応力を有する少なくとも1個の障壁層を有すること
を特徴とする。
ここで、大きい及び小さいという用語は、他の部分の応力よりも大きいか又は
小さいことを意味する。生ずる応力は、上述したように、関連する層の格子定数
が基板の格子定数と異なる程度に依存するだけでなく関連する層の厚さにも依存
する。この実施例のレーザは、上述した材料効果により比較的短い放射波長を有
している。この放射波長は、レーザがGaAs/InGaP/InAlGaP材
料系で構成される場合、例えば630nmと650nmとの間にある。
本発明によるレーザの好適実施例は、前記活性層の第1の部分がより小さな圧
縮応力を有する少なくとも1個の量子井戸層を含み、前記活性層の第2の部分が
がより大きな引っ張り応力を有する少なくとも1個の障壁層を有することを特徴
とする。
このレーザは比較的長い放射波長を有している。この放射波長は、InGaP
の量子井戸層を有するGaAs/InGaP材料系の場合、例えば650nmと
700nmとの間にある。このレーザは、比較的長い放射波長を有しているため
、特に低い始動電流を有している。最も大きなバンドギャップを有するクラッド
層を用いることは、放射波長が短い場合に閉じ込めが一層良好になることを意味
する。
好ましくは、本発明のレーザの活性層に生ずる引張応力は約30nm%以下と
する。これは、例えば30nmの厚さの層についての基板に対する格子定数の相
対偏移が−1%以下であることを意味する。これにより、生ずる(引張)応力に
より発光崩壊を伴う欠陥が活性層に生ずることが回避される。
好適な変形例として、第1の障壁層が薄い厚さで大きな応力を有し、第2の障
壁層が厚さが厚く小さい応力を有する。2種類の障壁層に亘って障壁層中にこの
ような応力分布を形成することは、量子井戸を中心にして対称的な大きな応力を
形成できる利点がある。これは、障壁層中の応力すなわち引張応力を比較的大き
くする必要がある上記好適実施例の場合に特に好ましい。
別の好適実施例は、前記活性層が、厚さが4nmと16nmとの間にある少な
くとも1個の量子井戸層及び厚さが2nmと30nmとの間にある少なくとも2
個の障壁層を具え、前記活性層の一方の部分の半導体材料が、絶対値が0.3%
と2%との間にある基板に対する格子定数の相対変移を有し、活性層の他方の部
分の半導体材料が、絶対値が0.15%と1%との間にある基板に対する格子定
数の相対変移を有することを特徴とする。この場合、対称的な構成を取ることが
でき、より薄い層が比較的大きな応力を有することができ、より厚い層はより小
さい応力を有する。
応力及び厚さを前述したように選択し、層の厚さ(d)と格子定数の相対変移
(Δa/a)との積を互いに応力を補償し合う部分について同一にする。この積
(d×Δa/a)は、応力の種類が数個の層に分布する場合、各種類の応力につ
いての和である。過剰な引っ張り応力、すなわち和の結果は好ましくは30nm
%以下とする。
上述した好適実施例において、少なくとも1個の量子井戸層が約8nmの厚さ
を有し、少なくとも2個の障壁層が8nmと30nmとの間の厚さを有し、第1
の半導体材料が約+1%の基板に対する格子定数の相対変移を有し、前記第2の
半導体材料が−1.0%と−0.5%との間の基板に対する格子定数の相対変移
を有する場合に極めて好ましい結果が得られる。
本発明によるレーザは、InP/InGaAsPの材料系及びGaAs/Al
GaAs材料系のような材料系を用いて有益に製造することができる。GaAs
/AlGaAs材料系の場合、圧縮応力及び引っ張り応力はインジウム及びリン
原子をそれぞれ添加することにより実現できる。好ましくは、本発明のレーザは
GaAs/InGaP/InAlGaP材料系で実現される。この場合、基板は
GaAsで構成し、量子井戸層はInGaPで構成し、障壁層はInAlGaP
で構成し、クラッド層はInAlGaP又はInAlPで構成する。これにより
、放射波長が約700nm以下で優れた性能を有するレーザが得られる。
以下2個の実施例及び添付図面に基づき本発明を詳細に説明する。
図1は本発明による半導体ダイオードレーザを共振キャビティの長手方向と直
交する面で切った断面として線図的に示す。
図2及び図3は図1のレーザの活性層の第1及び第2実施例を線図的に示す。
図4及び図5は第1及び第2の実施例についてのバンドギャップに対する本発
明の作用を端面までの距離(S)の関数として示す。
図面は線図的でありスケール通りに図示されておらず、厚さ方向の寸法は図面
を明瞭にするため拡大されている。図面中対応する部材には同一符号を付して説
明する。
図1は本発明による半導体ダイオードレーザを共振キャビティの長手方向と直
交する面で切った断面として線図的に示す。このレーザは第1導電型、本例では
n形の基板11を有する半導体本体10を具え、本例では基板は単結晶ガリウム
砒素で構成し、接続導体9を設ける。この本体上に半導体層構造を形成し、本例
では、この層構造体はn形のAiGaAsのバッファ層12、InAlGaPの
第1のクラッド層1、InGaPとInAIGaPとの活性層2、及びp形のI
nAlGaPの第2のクラッド層3、p形のInAlGaPの第3のクラッド層
5、InGaPの遷移層6、及びp形のGaAsのコンタクト層7を含む。第2
のクラッド層3と第3のクラッド層5との間にpn接合及び本例の場合中間層4
が存在し、中間層は細条状のメサ20を形成する際のエッチングストッパとして
作用し、このメサは第3のクラッド層5及び遷移層6を含む。メサ20のいずれ
かの側の中間層4とコンタク層7との間に電流阻止層15が存在する。動作中、
活性層2中のメサ20の下側の共振キャビティ内に細条状活性層が形成される。
ミラー面として作用すると共に共振キャビティを長手方向において規定する半導
体本体10の端面30は紙面に平行である。本例のレーザはインデックスガイド
型とする。第1クラッド層1と第2クラッド層3との間の電気的接続はコンタク
層7及び基板11上にそれぞれ形成した接続導体8,9により行う。
図1にレーザの第1実施例の活性層2の構成を示す。この活性層2は2個の障
壁層2Bにより包囲された単一の量子井戸層2Aを有する。本発明では、活性層
2の一部、本例では量子井戸層2Aは圧縮応力を有し、他の部分本例では2個の
障壁層2Bは上記圧縮応力よりも大きな引っ張り応力を有し、従って活性層2の
全応力を引っ張り応力とする。本発明に必要な活性層2の応力状態は、以下の表
に列挙した例により達成する。その中のΔa/aは基板11との比較における格
子定数の相対的な差であり、dは問題とする層の厚さである。得られる活性層中
の引っ張り応力は、2×(16)×(−0.5)+1×(8)×(+1)=−8
nm%であり、この絶対値は微小であり、30nm%よりもはるかに小さい。こ
れは、活性層2中に応力誘導欠陥が生ずる危険性が実際的にほとんど無いことを
意味する。端面30付近のレーザ中に生ずる量子井戸層2Aと障壁層2Bの応力
緩和及び圧縮応力の過剰補償により、活性層2の端面30付近により大きなバン
ドギャップ(Eg)が発生するので、活性層2中で発生した放射の吸収は端面3
0付近で減少する(強く)。この結果、本発明のレーザにおける端面崩壊すなわ
ちミラー崩壊は、既知のレーザよりも大幅に減少し、有用な寿命が相当改善され
る。活性層2の2個の部分の厚さ及び組成は、明細書の導入部分で説明した範囲
内にあることが好ましい。層がこれらの範囲にある特性を有するレーザは好まし
い結果が得られる。この表はレーザの2個の実施例の別の層の関連するデータを
含み、本例では活性層2は、所謂分離クラッド層2Cとして作用すると共に基板
11と同一の格子定数を有する2個の別の障壁層2Cを含む。
図4において、曲線42は活性層2のバンドギャップ(EG)を本例のレーザ
の端面30までの距離(S)の関数として示す。曲線42は、活性層2のバンド
ギャップが端面30から約10〜80nmの範囲において端面30から大きな距
離だけ離れて位置する部分のバンドギャップよりも約15meV大きいことを示
している。これは、端面30に隣接する区域におけるレーザ中で発生した放射の
吸収が圧縮応力と引っ張り応力とが相互に補償し合うレーザ中の部分よりも相当
小さいことを意味する。この場合、実際のものとしてバンドギャップの勾配を曲
線41に示す。勿論、発生した放射の吸収はバンドギャップ(Eg)に対数的に
依存する。比較のため、曲線40は、圧縮応力だけを有する場合すなわち全体と
して圧縮応力を有する場合を示し、曲線41の応力補償された場合よりも一層悪
い状態が発生している。
メサ20の幅は5μmとする。半導体本体10の長さ及び幅並びにメサ20の
長さは約500μmとする。導体層8,9は通常の厚さ及び組成とする。InG
aP/InAlGaP材料系により得られるレーザの実施例の放射波長は約68
0nmである。このレーザは多くの部分については通常の方法で製造される。簡
単に説明すると、製造プロセスは以下の通りである。第1の成長プロセスとして
基板11上に層12及び1〜6を形成する。表に例示した本発明による材料組成
及び厚さは、本例では活性層に対して選択した。次に、SiO2の細条状のマス
クの両側をエッチング阻止層4までエッチングすることによりメサ20を形成す
る。第2のエピタキシャルプロセスとし、メサ20いずれかの側に電流阻止層1
5を形成し、ほぼ平坦な構造を形成する。最後に、SiO2のマスクを除去した
後、第3の成長プロセスにおいて構造体上にコンタクト層7を形成する。2個の
側にメタライゼーション8,9を形成し2方向において劈開した後、レーザとし
て使用される。
図3は図1の構成を有する本発明のレーザの活性層2の第2実施例の構成を示
す。本例の活性層2は相互に分離され3個の障壁層2Bにより包囲されている2
個の量子井戸層2Aを具え、外側の障壁層を分離クラッド層として作用する2個
の別の障壁層2Cにより包囲する。このレーザの他の層12,1,3〜7,15
及び基板11は第1実施例と同一とする。本発明では、活性層2の一部分、本例
では量子井戸層2Aは圧縮応力を有し、活性層2の別の部分、本例では3個の障
壁層2B及び2個の別の障壁層2Cはこの圧縮応力よりも大きい引張応力を有す
るので、最終的な活性層2の全応力は以下の表に示すように達成される。得られ
る引張応力は、3×(8)×(−1)+2×(24)×(−0.5)+2×(8
)×(+1)=−32nm×%となり、この絶対値は約30nm%である。本例
において、存在する全引張応力は2種類の障壁層2C,2D全体に分布する。こ
れは、大きな引張応力が可能になると共に量子井戸層2Aの周囲に対称性が維持
される利点がある。量子井戸層2A及び障壁層2C,2Dにおける応力緩和は、
本例のレーザにおいても同様に端面30付近で発生する。圧縮応力の過剰補償に
より、バンドギャップの増大が活性層2の端面付近で同様に生ずるので、活性層
2で発生した放射の吸収が端面30付近で(強く)減少する。本発明のレーザに
おける端面崩壊又はミラー崩壊は既知のレーザよりも大幅に減少し、有用な寿命
が大幅に改善されることになる。
本例のレーザで発生した放射の波長は同様に約680nmである。この実施例
においては、障壁層2B,2Cの応力は有益に分布する。すなわち、障壁層2B
は薄く且つ高い引張応力を有し、障壁層2Cは厚く且つ低い圧縮応力を有するの
で、対称的な構造を得るのが一層容易になる。
図5において、曲線53は、このレーザの実施例についての活性層2のバンド
ギャップ(Eg)を端面30までの距離の関数(s)として示す。曲線53は、
活性層2のバンドギャップが、端面30から約10〜80nm離れた位置におい
て端面30から大きな距離だけ離れた部分よりも数10meV、ここでは約25
meV大きいことを示している。これは、レーザ中で発生した放射の吸収が、こ
れらの区域においては圧縮応力と引張応力とが相互に補償されるレーザよりも大
幅に小さいことを意味する。後者の場合、バンドギャップは曲線51で示す勾配
を有している。曲線50は、活性層2が圧縮応力だけを有する例を示し、この例
は曲線51の応力補償されたものよりも一層悪い状況になっている。外側障壁層
2Cの作用を曲線52で示す。曲線52は上記表と対応する状態に関連するが、
2個の外側障壁層2Cが削除されている。この場合、本発明の有益な効果は存在
するが、第1実施例のレーザとほぼ同程度である。30nm%のほぼ最大許容値
を有する全引張応力により、本例における本発明の利点は曲線53に対応する状
態の最大のものとなる。
本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の範囲内において種々の変形や
変更が可能である。上述した実施例で説明したものとは異なる半導体材料及び選
択した半導体材料の異なる組成を用いることもできる。これは、特に前述したI
nP/InGaAsP及びGaAs/AlGaAs材料系を用いることに関係す
る。さらに、本発明は量子井戸層及び/又は障壁層がそれぞれただ1個の形態の
応力だけを有する形態に限定されるものではない。従って、量子井戸層に圧縮応
力及び引張応力が同時に存在する場合にも適用することが可能である。この場合
、両方の放出波長は量子効果を用いることにより、すなわち量子井戸層の厚さ(
比)を適合させることにより等しくすることができる。
全ての導電形を反対導電形にすることも可能である。MOVPE(有機金属気
相エピタキシ)等のような種々の技術を用いて半導体層を形成することも可能で
ある。
さらに、本発明は、上述した実施例のBR(埋込リッジ)型のレーザに限定さ
れない。本発明は、BH(埋込ヘテロ)型又はRW(リッジ導波路)型等の他の
形態のレーザにも適用することができる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ダウンズ ジェイムス ロバート
イギリス国 サリー ジーユー2 6ワイ
ビー ギルドフォード サマートンズ ク
ローズ 36
(72)発明者 ファルステル アドリアーン
オランダ国 5581 テーヴェー ヴァーレ
デ フリーショフ 12
(72)発明者 アケット ヘラルド アドリアーン
オランダ国 5503 ベーアー フェルトホ
ーフェン フェー アエルストラーン 25
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.第1導電型の基板(11)と、この上に位置する半導体層構造体とを具える 半導体本体(10)を有し、半導体層構造体が、少なくとも第1導電型の第1の クラッド層(1)と、第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層(3 )と、第1クラッド層(1)と第2クラッド層(3)との間に形成され、順方向 に十分な電流強度が供給された場合に2個の端面間に形成した共振キャビティ内 に位置する細条状の活性領域内で単色のコヒーレントな電磁放射を発生させるこ とができる活性層(2)及びpn接合とを有し、前記活性層(2)が第1半導体 材料の1個又は数個の量子井戸層(2A)を具え、この量子井戸層が第2の半導 体材料の障壁層により分離され又は包囲され、前記第2のクラッド層(3)及び 基板(11)が接続導体(8,9)に電気的に接続され、前記活性層(2)の一 部を形成する量子井戸層及び障壁層(2A,2B,2C)の第1の部分(2A) が、この第1の部分(2A)の半導体材料が基板(11)の格子定数よりも大き な格子定数を有することにより圧縮応力を有し、前記層(2A,2B,2C)の 第2の部分(2B,2C)が、この第2の部分の半導体材料が基板(11)の格 子定数よりも小さな格子定数を有することにより引っ張り応力を有する半導体ダ イオードレーザにおいて、前記活性層(2)の2個の部分(2A,(2B,2C ))の基板(11)に対する格子定数の相対変移(Δa/a)及び厚さ(d)を 、活性層(2)の全引っ張り応力が全圧縮応力よりも大きくなるように選択し、 前記応力が補償され活性層(2)に生ずる応力が引っ張り応力となることを特徴 とする半導体ダイオードレーザ。 2.請求項1に記載の半導体ダイオードレーザおいて、前記活性層(2)の第1 の部分(2A)がより大きな引っ張り応力を有する少なくとも1個の量子井戸層 (2A)を含み、前記活性層(2)の第2の部分が(2B,2C)がより小さな 圧縮応力を有する少なくとも1個の障壁層(2B,2C)を有することを特徴と する半導体ダイオードレーザ。 3.請求項1に記載の半導体ダイオードレーザおいて、前記活性層(2)の第1 の部分(2A)がより小さな圧縮応力を有する少なくとも1個の量子井戸層( 2A)を含み、前記活性層(2)の第2の部分が(2B,2C)がより大きな引 っ張り応力を有する少なくとも1個の障壁層(2B,2C)を有することを特徴 とする半導体ダイオードレーザ。 4.請求項1、2又は3に記載の半導体ダイオードレーザおいて、前記生じた引 っ張り応力(e)を約30nm%以下としたことを特徴とする半導体ダイオード レーザ。 5.請求項1から4までのいずれか1項に記載の半導体ダイオードレーザにおい て、前記障壁層(2B,2C)が、薄い厚さで大きな応力を有する第1の障壁層 と厚い厚さで小さな応力を有する第2の障壁層を含むことを特徴とする半導体ダ イオードレーザ。 6.請求項1から5までのいずれか1項に記載の半導体ダイオードレーザにおい て、前記活性層(2)が、厚さが4nmと16nmとの間にある少なくとも1個 の量子井戸層及び厚さが2nmと30nmとの間にある少なくとも2個の障壁層 (2B,2C)を具え、前記活性層の一方の部分の半導体材料が、絶対値が0. 3%と2%との間にある基板(11)に対する格子定数の相対変移を有し、活性 層の他方の部分の半導体材料が、絶対値が0.15%と1%との間にある基板( 11)に対する格子定数の相対変移を有することを特徴とする半導体ダイオード レーザ。 7.請求項5に記載の半導体ダイオードレーザにおいて、前記少なくとも1個の 量子井戸層(2A)が約8nmの厚さを有し、前記少なくとも2個の障壁層(2 B,2C)が8nmと30nmとの間の厚さを有し、前記第1の半導体材料が約 +1%の基板(11)に対する格子定数の相対変移を有し、前記第2の半導体材 料が−1.0%と−0.5%との間の基板(11)に対する格子定数の相対変移 を有することを特徴とする半導体ダイオードレーザ。 8.請求項1から7までのいずれか1項に記載の半導体ダイオードレーザにおい て、前記基板(11)をGaAsで構成し、前記量子井戸層(2A)をInGa Pで構成し、前記障壁層(2B,2C)をInAlGaPで構成し、前記クラッ ド層(1,3,5)をInAlGaP又はInAlPで構成したことを特徴とす る半導体ダイオードレーザ。 9.第1導電型の基板に、少なくとも第1導電型の第1のクラッド層(1)と、 活性層(2)と、第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層(3)と を有する半導体層構造体を形成し、前記活性層(2)を、第2の半導体材料の障 壁層(2B,2C)により相互に分離され又は包囲されている1個又は数個の量 子井戸層により形成し、前記第2のクラッド層(3)及び基板(11)に電気的 接続導体(8,9)を形成し、前記第1及び第2の半導体材料又はその組成を、 前記活性層(2)の一部を形成する層(2A,2B,2C)の第1の部分(2A )が、この第1の部分(2A)の半導体材料が基板(11)の格子定数よりも小 さな格子定数を有し、第2の部分(2B,2C)が基板(11)の格子定数より も大きな格子定数を有するように選択して半導体ダイオードレーザを製造するに 際し、前記2個の部分(2A,2B,2C)の格子定数の差の値及び厚さを、活 性層(2)の反対の応力が互いに十分に補償し合わず、生ずる応力が引っ張り応 力となるように選択することを特徴とする半導体ダイオードレーザ。 10.請求項9に記載の方法において、前記活性層の(2)の第1の部分につい て少なくとも1個の量子井戸層を選択し、前記活性層の(2)の第2の部分(2 B,2C)について少なくとも1個の障壁層(2B,2C)を選択し、前記第1 の半導体材料を、その格子定数が基板(11)の格子定数よりも大きくなるよう に選択し、前記第2の半導体材料を、その格子定数が基板(11)の格子定数よ りも小さくなるように選択したことを特徴とする方法。
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