JPH10506376A - 薬剤移送用組成物および薬剤投与方法 - Google Patents
薬剤移送用組成物および薬剤投与方法Info
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Abstract
(57)【要約】
抗ウイルス剤ICAM−1と生体付着性材料を含有する鼻腔内移送用の薬剤移送用組成物である。生体付着性材料としては、キトサン溶液、重合材料を含む液体、または生体付着性の微球体が使用できる。重合材料は好ましくはゲランゴムまたはアルギン酸塩である。微球体は澱粉、キトサン、ヒアルロン酸、またはゼラチンなどで形成される。
Description
【発明の詳細な説明】
薬剤移送用組成物および薬剤投与方法
本発明は、鼻から薬剤を投与するための組成物および方法に関し、特に、細胞
間付着分子1(Intercellular Adhesion Molecule1:ICAM−1)として知
られる抗ウイルス剤を鼻腔内投与するための組成物および投与方法に関するもの
である。
インフルエンザおよびライノウイルスの感染のように、鼻腔に作用するウイル
ス感染は、健常者において不愉快な病状を示すだけでなく、ある種の危険因子を
もつ者にとっては、健康に対する深刻な脅威となり得る。
この種のウイルス感染への処置法として、従来より、さまざまな薬剤が利用さ
れている。その中には、エンビロキシン(Enviroxlne)やピロダビール(Plroda
vlr)などの低分子量の抗ウイルス剤や、インターフェロン−αやシアリダーゼ
抑制剤などの抗ウイルス蛋白質(例えば、Von Itzstein et al.Nature.363 41
8,1993参照)などが含まれる。最近では、ライノウイルスが特定の付着プロセス
を経て組織に付着することが判明しており、組織へのウイルスの結合は、ICA
M−1やそのフラグメントのような細胞間付着分子を使用することにより抑制で
きることもわかっている(Martin et al.,Asoluble form of intercellular ad
hesion molecule-1 inhibits rhinovirus infection(可溶性形態の細胞間付着
分子−1によるライノウイルス感染の抑制),Nature 344,1990,70-72)。
この種の抗ウイルス剤は、生体外での適当な試験によりウイルス抑制や結合妨
害作用を調べた場合には効果を示すが、生体内で例えば鼻腔内投与を行う場合に
は十分な効果を示さなかったり、高濃度で頻繁な投与が必要であるために中毒を
生じるおそれがあったり(Hayden et al.New Eng.J.Med.314 71(1986))
、コストの問題が生じるなど欠点があった。(Al-Nakib,W.et al.Antimicrob
ial Agents and Chemotherapy 33,522(1989))
したがって、鼻腔内において抗ウイルス化合物の薬効を高めることができれば
、十分な利益がある。鼻からの投与システムについては、以前よりさまざまな提
案がなされてきた。イルム(Illum)の多数の特許及び特許出願では、澱粉微球
体
を用いて鼻から投与する技術が提案されている。US4847091で彼女は、
低分子量薬剤であるクロモリンナトリウムをDEAE−デキストラン微球体の表
面に複合させることにより、鼻内における滞留時間が増加することを述べている
。PCT/GB88/00836、PCT/GB90/101676では、微球
体がペプチドや蛋白質などのような輸送されにくい分子の組織による摂取をいか
にして増加させるかが開示されている。
キトサンを生体付着性材料として使用し、極性のある薬剤を鼻腔内の粘膜表面
を通じてより効果的に吸収させる技術が、Topics in Pharmaceutical Science 1
991(編集者:Crommellin D.J.A.and Midha,K.K.,Stuttgart,Medpharm.,199
2.p71)およびPCT/GB90/00291において、イルムにより開示され
ている。また、局所適用のためのキトサンシステムは、US4946870にお
いてパーテェイン(Partain)により開示されている。彼は、局所表面に接触す
る実質的な膜として形成されたシステムに言及している。ただし、パーテェイン
が行った種々の実験例は、皮膚に用いるローションとしての使用を意図したもの
である。US4946870は鼻腔内への適用について述べているが、鼻腔内に
膜を形成しないシステムは一つも挙げられていない。また、パーテェインの実験
例では、密着した実質的な膜を形成する目的で、エタノールなどの揮発性材料を
多量に使用している。このような方法では、鼻への適用は無理である。
AUS86.63189では、眼病への適用に関連して、自然部位(in-situ
)におけるゲル化材料としてゲランゴム(gellan gum)を使用することが提案さ
れている。この特許発明に係る眼病用組成物によって投与できる薬剤には、アシ
クロビル、アデノシン、アラビノシド、インターフェロン、及びインターフェロ
ン誘導剤等の抗ウイルス剤が含まれる。ゲランゴムの薬剤学的な使用およびその
流動学上の性質は、Deasy et al.Int.J.Pharm.73 117(1991)、Kublik and
Muller,Eu.J.Pharm.Biopharm39 192(1993)、およびSanzgiri et al.J.
Control.Rel.26 195(1993)において述べられている。
我々は、抗ウイルス剤であるICAM−1の鼻腔内における薬効が生体付着性
材料とともに投与することにより劇的に増大することを見いだした。
本発明は上記発見に基づいてなされたものであり、ICAM−1および生体付
着性材料を含有する、鼻からの投与に適した薬剤移送用組成物を提供するもので
ある。
生体付着性材料という用語は、化学的結合、ファンデルヴァールス相互作用の
ような物理的結合、イオン相互作用、水素結合、重合鎖の絡まりなどの相互作用
により鼻の粘膜に付着する物質をいずれも含むものとする。生体付着性材料の付
着は、上皮(細胞質の)表面に対してでもよいし、その表面を覆っている粘液に
対してでもよい。
ライノウイルスはピコルナウイルス科に属し、一般の風邪の約50%を引き起
こしている。大部分のライノウイルスは、人間細胞に対する共通のレセプターを
有している。糖蛋白細胞間付着分子−1(TCAM−1)は、主要グループとし
て知られるライノウイルスのそのサブグループに対する細胞レセプターとして特
定された。ICAM−1は炎症部位の複合列の細胞上に現れる。ICAM−1は
分子量が85〜90kDである糖蛋白であり、その蛋白部分の分子量は45〜5
0kDである。
本発明の第1実施例では、生体付着性材料はキトサンであり、好ましくは溶液
状態で使用される。キトサン溶液は、水または薬剤学的に許容できる緩衝系溶液
により作成される。その中でも特に燐酸塩緩衝液または乳酸塩緩衝液が好ましい
。
溶液中のキトサンの濃度は、好ましくは0.01〜50%w/vであり、より
好ましくは0.1〜30%であり、さらに好ましくは0.1〜15%であり、も
っとも好ましくは0.2〜2.0%である。
キトサンは、脱アセチル基化されたキチン質、またはポリ−N−アセチル−D
−グルコサミンである。入手先としては、protan Laboratories Inc,Redmond,
Washington 98052が例示でき、選択されたグレードにもよるが、pH6.0まで
の水に溶解できる。非水溶性キトサン(Sea Cure)の1%溶液は、水によりスラ
リー(例えば2g/100ml)を作成し、等容量の有機酸(例えば2%酢酸の
100ml)を加えて、1時間激しく撹拌することで得られる。水溶性のキトサ
ン(see Cure+)は、有機酸または無機酸の存在がなくても溶解することができ
る。
キトサンは以前、蛋白質材料を沈殿させて外科用の縫糸を製造する場合や、免
疫刺激剤として使用されていた。また、キトサンは、溶解性に乏しい薬剤の溶解
性を増す目的(Sawayanagi et al,Chem.Pharm.Bull.,31,2062-2068(1983)
を参照)、並びに、水和され圧縮された母相からゆっくりと滲出させることによ
り薬剤の放出を持続させる目的(Nagai et al.Proc.Jt.US-Jpn.Semin.Adv
.Chitin,Chitosan,Relat.Enzymes,21-39.Zikakis J.P.(ed),Academic
Press.Orlando(1984)参照)に使用されていた。
キトサン製剤は、塩化ベンザルコニウムのような保存薬を含んでいてもよい。
ICAM−1は好ましくは0.01〜20%w/vの濃度でキトサン溶液と混合
される。より好ましくは0.1〜10%w/vであり、さらに好ましくは0.2
〜5%w/vである。キトサン製剤は、当業者に周知の一般的な鼻腔内スプレー
装置で投与することができる。
本発明の第2実施例では、生体付着性材料として多数の微球体(小包体、小球
体、ミクロスフェア)が使用される。微球体は、適切な材料、例えば澱粉、澱粉
誘導体、アミロデキストリン、アミロペタチン、それらの架橋された変異体、ゼ
ラチン、アルブミン、アルギン酸塩(エステル)、ゲラン(gellan)、ヒアルロ
ン酸、キトサン、デキストラン、デキストラン誘導体などから選択される1種ま
たは2種以上から形成できる。微球体は、イオン交換物質を含んでいてもよい。
「誘導体」という用語は、ここでは特に、官能基を変化させないか、もしくは、
例えばイオン性基を含むように官能基を変化させた親化合物のエステルまたはエ
ーテルを意味する。
好ましい澱粉誘導体としては、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱
粉、カルボキシメチル澱粉、陽イオン化澱粉、アセチル化澱粉、燐酸化澱粉、澱
粉の琥珀酸塩誘導体、グラフトされた澱粉から選択される1種または2種以上が
挙げられる。これらのような澱粉誘導体は、既に周知であり文献もある(例えば
Modified Starches: Properties and Uses,O.B.Wurzburg,CRC Press Boca Ra
ton(1986))。
好ましいデキストラン誘導体としては、ジエチルアミノエチルデキストラン(
DEAE−デキストラン)、硫酸デキストラン、デキストランメチルベンジルア
ミドスルホン酸塩、デキストランメチルベンジルアミドカルボン酸塩、カルボキ
シメチルデキストラン、二燐酸デキストラン、デキストランヒドラジド、パルミ
トイルテキストラン、および燐酸デキストランから選択される1種または2種以
上が例示できる。これらの微球体は、乳化処理または噴霧乾燥により製造できる
。いずれの処理も、薬剤学上の手段として既に確立されたものであり、当業者に
周知である。微球体の粒径は、好ましくは1〜200μmであり、より好ましく
は10〜100μmであり、もっとも好ましいのは40〜60μmである。微球
体は実質的に均一で、中実であることが望ましい。
薬剤を含む微球体は、凍結乾燥または噴霧乾燥された粉末システム、もしくは
物理的に混合されたものとして調製できる。微球体は粉吸入器で投与できるほか
、肺に粉末を供給させるときに一般に使用される装置でも投与することができる
が、好ましくは鼻からの投与に適するように改良された装置が使用される。その
ような装置としては、Ventolin inhaler(Glaxo製)や、Dura Dry Powder Devic
e(US5327883)、Bespak device(WO935950)などが例示でき
る。
生体付着性微球体は、水中で膨潤する特性を有している。この膨潤する特性に
より、鼻腔内の粘膜表面に選択的に結合し、薬剤の滞留を促進する。膨潤の程度
は、水に浸したときに微球体の直径が少なくとも1.2倍膨張することが好まし
い。その際の直径は光学顕微鏡、レーザー回折計などを用いて測定することが可
能である。微球体の直径が1.5倍以上に膨潤するとさらによい。
調剤は、薬剤溶液と微球体の懸濁液を凍結乾燥して調製してもよいし、粉末状
の薬剤と、凍結乾燥、噴霧乾燥もしくは通常乾燥した微球体を機械的に混合して
調製してもよい。薬剤は、微球体を作成した後に、これら微球体の内部に吸収さ
せてもよいし、微球体の表面に吸着させてもよい。あるいはその代わりに、微球
体の製造過程で薬剤を原料に添加してもよい。薬剤を含む所望の粒径の微球体を
製造する手段としては、従来より当業者に周知の、噴霧乾燥技術、乳化技術、お
よびその他の技術を使用することができる。調製条件としては、当業者に周知の
ように、微球体としての完全さを有し、かつ、薬剤の生物学的活性を維持できる
条件が選択される。これらの微球体システムの調製は、各種の薬剤学論文に詳し
く述べられている(例えば、Davis et al,(Eds),"Microspheres and Drug T
herapy",Elsevier Biomedical Press,1984)。
微球体の調製には、エマルジョンおよび相分離法がいずれも適している。例え
ば、アルブミン微球体は、油中水乳化法により調製できる。この場合、アルブミ
ンを適当な油中で均質化技術または撹拌技術により分散させ、もしも必要であれ
ば少量の適当な界面活性剤を添加する。
乳化技術は、GB1518121およびEP223303に記載されているよ
うに、澱粉微球体やゼラチン微球体の製造に使用できる。蛋白質微球体は、単純
または複合コアセルベーションなどのようなコアセルベーション法や、適当な溶
媒または電解質溶液を使用する相分離法を用いて調製できる。これらのシステム
を調製するための方法は、標準的な文献に述べられている(例えば、Florence a
nd Attwood,Physicochemical Principles of Pharmacy 2nd Ed.,MacMillan Pr
ess,1988,Chapter 8)。
微球体は、周知のように、化学的架橋剤または熱処理を用いた架橋処理により
硬化させることもできる。適当な架橋剤としては、ジアルデヒド(グリオキサル
、マロンジアルデヒド、琥珀酸アルデヒド、アジピン酸アルデヒド、グルタルア
ルデヒド、およびフタルアルデヒドなどを含む)、ジケトン(ブタジオン、エピ
タロルヒドリン、ポリ燐酸エステル、硼酸エステルなどを含む)が例示できる。
シアルデヒドは、アルブミンなどの蛋白質を架橋させるために使用され、アミ
ノ基と、アミノ基を有するジケトン型シッフ試薬(diketones form shiff bases
with amino groups)との相互作用により架橋させる。エピクロルヒドリンは、
アミノ基または水酸基のような求核基を有する化合物を、エポキシド誘導体へ活
性化する。
例えば、微球体は以下のように製造される。
[澱粉微球体]
15mlの5%澱粉溶液(pH=7)を70℃に保ち、約7mlの30%PE
G溶液を添加しながら500rpmで撹拌し、相分離を生じさせた。さらにこの
システムを15分間撹拌し、撹拌しながら氷の上で冷却した。これを濾過して微
球体を分離したうえ、凍結乾燥した。500rpmの撹拌速度で、平均粒径が3
3
±10μmの微球体が得られた。
[ゼラチン微球体]
30mlの10%牛ゼラチン溶液(pH=8.5)を50℃に保ち、約20m
lの30%PEG溶液を添加しながら、コアセルベーション領域が広がるまで5
00rpmで撹拌した。この工程を調整するため比濁計を使用した。混合物を氷
の上で撹拌しながら冷却した。濾過して微球体を分離したうえ、凍結乾燥した。
500rpmの撹拌速度で、平均粒径が60±10μmの微球体が得られた。
微球体中におけるICAM−1の含有量は、好ましくは0.1〜50%w/w
であり、より好ましくは0.5〜25%w/wであり、もっとも好ましくは1〜
20%w/wである。
本発明の第3実施例では、生体付着性材料が重合材料を含む液体製剤とされる
。重合材料は、鼻腔内における滞留を促進するように、粘性溶液であるべきであ
る。好ましい重合材料は、鼻腔内粘膜と接触したときに、温度上昇によって、ま
たは特定の陽イオンの存在によって、もしくはpH変化によって、ゲル化するも
のである。
適当な重合材料としては、ゲランゴム(gellan gum)、ヴェラン(welan)、
ラムサン(rhamsan)、アルギン酸塩(エステル)、カルボキシメチルセルロー
ス、アルギン酸ナトリウム、キサン、寒天、カルボキシメチルグアールガムなど
のグアール誘導体、カラゲーニン、硫酸デキストラン、ケラタン、デルマタン、
ペクチンなどが例示できる。多糖類とその誘導体は特に好適である("Polysacch
arides and deriVatives"edited by R C Whistler and J N BeMiller(3版)Ac
ademic Press,San Diego 1993)。
好ましい重合材料はゲランゴムであり、これはシュードモナスエロダエ(Pseu
domonas elodae)から得られた細胞外多糖類を、脱アセチル基化した物質である
。天然/高−アシルゲラン(Native/hlgh-acyl gellan)は、四糖類の繰り返し
ユニットの直鎖の列からなり、D−グルクロノピラノシル、D−グルコピラノシ
ル、およびL−ラムノピラノシルユニットと、アシル基とを含んでいる。
別の好ましい重合材料はアルキン酸塩である。アルキン酸塩はモノマーユニッ
トの二つの基礎ブロック、すなわちβ−D−マンヌロノピラノシルユニットおよ
びα−グルロノピラノシルユニットからなる。D−マンヌロン酸成分およびL−
グルロン酸成分の割合、およびそれらの配列によって、異なる海藻原料から抽出
されたアルギン酸塩それぞれの特性が決まる。
ヴェラン(welan)はアルカリジェーン種(Alcaligenes species)の一種によ
って産出される。ヴェランはゲランと同じ塩基繰り返しユニットを有しているが
、一本のグリコシル側鎖置換基を有している。この側鎖ユニットは、例えばα−
L−ラムノピラノシルユニットまたはα−L−マンヌロノピラノシルユニットの
いずれかであり、これらユニットは、基幹部に含まれる4−O置換されたβ−D
−グルコピラノシルユニットに対して(1→3)結合している。
ラムサン(rhamsan)はアルカリジェーン種(Alcaligenes species)の一種に
よって産出される。ラムサンはゲランと同じ主鎖繰り返しユニットを有している
が、3−O置換されたβ−D−グルコピラノシルユニットのO−6に二糖類から
なる側鎖を有している。
キサン(Xanthan)は、多数のキソモナス種(Xanthomonas strains)が生成す
る。重合体の主鎖はセルロースと同じであり、(1→4)結合されたβ−D−グ
ルコピラノシルユニットから構成されている。0−3位置においてD−グルコシ
ルユニットを変えるために、2つのD−マンノシルユニットの間にD−グルコロ
ノシルユニットを含む三糖類の側鎖が、接続されている。末端基であるβ−D−
マンノピラノシルユニットはグリコシドのようにβ−D−グルコピラノシルウロ
ン酸の0−4位置に結合し、それが交互にα−D−マンノピラノシルユニットの
0−2位置にグリコシドのように連結している。
カラゲーニンは、Gigartinaceae科、Hypneaceae科、Solieriaceae科、Phyllop
horaceae科、Furcellariaceae科の紅藻から抽出された直鎖状のガラクタン多糖
類の1グループであり、硫酸エステル成分を15〜40%有し、(1→3)−α
−D−および(1→4)−α−D−の配糖体結合を交互に含んでいる。
寒天は親水性のコロイドであり、Rhodophyceae綱のある種の、細胞壁に構造炭
水化物を有している海藻から抽出される(Kang and Pettitt: Xanthan,Gellan
,Welan and Rhamsan in Industrial gums by Whistler and BeMilIer(Eds),
Academic Press Inc.London,1993参照)。
ゲランと他の重合材料、例えばアルギン酸塩との混合物も使用可能である。混
合物のゲル化はゲランゴムによって起きる。他のゴムの組み合わせも可能である
。特に、組み合わせによってゲル化特性等における共同作用を生じることが望ま
しい。そのような例としては、キサンとイナゴ豆の鞘のゴムとの組み合わせが挙
げられる。
ゲランは他の材料に比べて、鼻腔内に流体状態で投与でき、投与後にシステム
がゲル化する利点を有しており、これにより、生体付着作用および薬剤をその吸
収性の表面に長時間に亘って保持することができる。
ゲランゴムの品種としては、Kelco Int,Ltd.製のGelriteまたはKelcogelが例
示できるが、他の会社の他の製品も使用可能である。ゲランの濃度は0.1〜1
5%w/vとされるが、好ましい濃度は0.2〜1%である。
いくつかの種類の重合材料の場合には、ゲル化を生じさせるために、1価また
は2価の陽イオンを組成物に加えておく必要がある。そのような重合材料として
は、ゲランゴム、ヴェラン、ラムサン、アルギン酸塩が例示できる。
上記陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムな
どが例示できる。イオン濃度は、必要とされるゲル化の程度に応じて決定され、
イオン化された薬剤がゲル上に保持されるようにする。ゴム濃度が0.2%であ
れば、2価のイオンであるカルシウムおよびマグネシウムを使用すると最も高い
ゲル硬度が得られ、ナトリウムやカリウムなど1価イオンの場合に必要なモル濃
度の約1/40のモル濃度でよい。ゲル化を引き起こす陽イオンの濃度は限られ
る。本発明の鼻腔内製剤の場合には、製剤の粘性を十分に低くすることができ、
かつ、いったん鼻腔内に投与された後は、鼻腔内液体中で陽イオンの存在により
確実にゲル化を引き起こすイオン濃度とされるべきである。ゲランゴムの濃度が
0.5%の場合には、1価の陽イオンであれば0.1〜50mMであることが好
ましく、より好ましくは1〜5mMであり、2価の陽イオンであれば0.1〜5
mMであることが好ましく、より好ましくは0.15〜1mMである。ゲランゴ
ムの濃度がより高い場合には、イオン強度はそれに応じてより低いものとされる
べきである。
液体製剤の場合には、重合材料の濃度は一般に0.01〜20%とされ、より
好ましくは0.05〜10%であり、さらに好ましくは0.1〜5%である。本
発明の組成物には、他の薬理学的に許容できる無毒の成分を添加してもよい。そ
のようなものとしては、保存薬、酸化防止薬、香味料などが例示できる。保存薬
としては、塩化ベンゼルコニウムが使用可能である。製剤中におけるICAM−
1の濃度は0.01〜20%w/vであり、より好ましくは0.1〜10%w/
vであり、最も好ましいのは0.2〜5%w/vである。
液体製剤の場合には、周知の鼻腔内スプレー装置を使用して投与することがで
きる。また、製剤が凍結乾燥されたもの、例えば凍結乾燥された微球体であるな
らば、鼻腔内粉末吸入器を使用して投与することができる。
本発明に係る生体付着性材料とともにICAM−1を鼻腔内に投与した場合に
は、鼻腔内におけるICAM−1の薬効は著しく増加することが判明した。これ
は、生体付着性材料により、ICAM−1に対する粘膜繊毛の浄化力が低下する
とともに、生体付着性材料からのICAM−1の放出量がコントロールされるこ
とによるものと考えられる。
次に詳しい実験例を挙げて、本発明の好ましい実施例を例証する。
[実験1]
20mlの容量測定用のフラスコに、100mgのグルタミン酸キトサン(Se
a Cure +210)を量り取った。5mlの水をキトサンに添加し、一晩撹拌した。
ビーカーに、1.36gの燐酸二水素カリウムおよび2.80gの塩化ナトリウ
ムを量り取った。これらの塩に80mlの水を加えて溶解し、溶液を2NのNa
OH溶液によりpH5.7に調整し、さらに水を加えて100mlにした。キト
サンが溶解した時、5mlの燐酸緩衝液を加えた。
キトサンを燐酸緩衝液に加えた溶液に、1:1の割合で20mg/mlのIC
AM溶液を加えることにより、10mg/mlのICAMおよび5ml/mlの
キトサンを含む製剤を得た。
[実験2]
3mlのガラス瓶に10mgのゲランゴム(Keleogel,Kelco Inc.)を量り取
った。ガラス瓶に、11mg/mlのICAM溶液を1.8mlと、4mg/m
1の塩化ベンザルコニウムを0.05mlと、0.15mlの水を加えた。
小さいマグネチックスターラーバーをガラス瓶に入れて、室温で24時間撹拌
してゲランゴムを分散させた。
[実験3]
250mlのフラスコに、Perstorp,Sweden製のEldexomer澱粉微球体を50
0mg量り取った。微球体を入れたフラスコに31mlの水、および12.5m
g/mlのICAM溶液を1.6ml入れた。フラスコ内容物を静かに撹拌し、
30分間放置した。
フラスコを液体窒素に浸してフラスコ内容物を凍らせた。凍結の過程ではフラ
スコを回転させ、内容物を均一に混合した。
フラスコを凍結乾燥機に移し、内容物を24時間かけて凍結乾燥させた。得ら
れた製剤は、製剤21mg中に1mgのICAM−1を含む流動性の高い粉末で
あった。
[実験4]
10mlの容量測定用のフラスコに1.0gのゼラチンを量り取り、5mlの
水を加えて35〜40℃に加温することにより溶解した。
ゼラチン溶液に22mg/mlのICAM溶液を1.8ml加え、フラスコを
水で満たした。
ビーカーに、大豆油中にSpan 80が1%w/v含まれる溶液を90mg量り取
り、ホットプレート上でビーカー内容物を35〜40℃に加温した。温めたSpan
/大豆油混合物をホットプレートから外し、オーバーヘッドスターラーにより1
000rpmで撹拌した。
10mlのICAM/ゼラチン混合物を、撹拌されている油に加えて、100
0rpmで2分間撹拌した。撹拌を続けている間、懸濁液の入ったビーカーを氷
で囲み、15℃まで冷却した。撹拌されている懸濁液に、100mlのアセトン
を滴下した。
懸濁液を遠心分離し、ゼラチン−ICAM微球体を回収し、アセトンで洗浄し
て室温に放置して乾燥させた。
得られた製剤は、流動性のある粉末であり、26mg中に1mgのICAMを
含んでいた。微球体の平均粒径をレーザー回折計で測定したところ、50μmで
あった。
[実験5]
500mgの中粘度のグルタミン酸キトサンを50mlの水で溶解した。26
mgのICAMをこのキトサン溶液に溶解した。得られたキトサン/ICAM溶
液を、噴霧乾燥装置(Lab-Plant SD-04 Spray Dryer(Lab-Plant,Huddersfield
,UK))を用いて噴霧乾燥した。乾燥温度は100℃にセットした。粒径が約5
μmの微球体が得られた。
[実験6]
1000mgのゼラチンを50mlの水に40℃で溶解した。52mgのIC
AMをこのゼラチン溶液に溶解した。得られたゼラチン/ICAM溶液を噴霧乾
燥装置(Lab-Plant SD-04 Spray Dryer(Lab-Plant,Huddersfield,UK))を用
いて噴霧乾燥した。乾燥温度は100℃にセットした。粒径が約5μmの微球体
が得られた。
[実験7]
2.1mg/mlのICAM、1.4mg/mlのマンニトール、および0.
7mg/mlのPBSを含有する水溶液を調製した。溶液を噴霧乾燥し、約5μ
mの粒径の微球体を製造した。10mgの噴霧乾燥されたICAMと、100m
gのEldexomer澱粉微球体を瓶に入れ、ローラーミキサーにより30分間撹拌し
た。得られた製剤は、澱粉微球体の表面に噴霧乾燥させたICAM微粒子がコー
ティングされたものとなった。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,M
N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TT,
UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 イラム,リスベス
イギリス国 NG7 1BA ノッティン
ガム ザ パーク キャヴェンディッシュ
クレセント ノース 19
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.鼻からの薬剤投与のための薬剤移送用組成物であって、ICAM−1およ び生体付着性材料を含有することを特徴とする薬剤移送用組成物。 2.前記生体付着性材料は、キトサン溶液であることを特徴とする請求項1記 載の薬剤移送用組成物。 3.前記キトサンの溶液中の濃度は、0.2〜2.0%w/vであることを特 徴とする請求項2記載の薬剤移送用組成物。 4.前記ICAM−1は前記キトサン溶液中に0.2〜5%w/vの濃度で存 在することを特徴とする請求項2または3記載の薬剤移送用組成物。 5.前記生体付着性材料は、多数の微球体であることを特徴とする請求項1記 載の薬剤移送用組成物。 6.前記微球体は、澱粉、キトサン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩 、およびゲラン(gellan)から選択される1種または2種以上により形成されて いることを特徴とする請求項5記載の薬剤移送用組成物。 7.前記ICAM−1の含有量は、前記微球体の1〜20%w/wであること を特徴とする請求項5または6記載の薬剤移送用組成物。 8.前記生体付着性材料は、重合材料を含有する液剤であることを特徴とする 請求項1記載の薬剤移送用組成物。 9.前記重合材料は、ゲランゴム(gellan gum)、アルギン酸塩、ベラン(we lan)、キサン、およびラムサン(rhamsan)から選択される1種または2種以上 であることを特徴とする請求項8記載の薬剤移送用組成物。 10.前記重合材料の含有量は、0.1〜5%w/vであることを特徴とする 請求項8または9記載の薬剤移送用組成物。 11.前記ICAM−1の含有量は、0.2〜5%w/vであることを特徴と する請求項8〜10のいずれかに記載の薬剤移送用組成物。 12.薬効を高めるようにICAM−1を鼻腔内に投与する方法であって、前 記ICAM−1を、生体付着性材料を添加した薬剤移送用組成物中に含有させて 投与することを特徴とする薬剤投与方法。
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