JPH10508025A - 眼の遺伝子療法 - Google Patents

眼の遺伝子療法

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JPH10508025A JP8514779A JP51477995A JPH10508025A JP H10508025 A JPH10508025 A JP H10508025A JP 8514779 A JP8514779 A JP 8514779A JP 51477995 A JP51477995 A JP 51477995A JP H10508025 A JPH10508025 A JP H10508025A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、眼の遺伝子療法に関する。

Description

【発明の詳細な説明】 眼の遺伝子療法 発明の技術分野 本発明は、眼の遺伝子療法に関する。 発明の背景 遺伝子療法による治療は、急速に現実のものとなりつつあり、すでに数ダース の遺伝子療法のプロトコルが国立衛生研究所の認可を受けており、また多くの他 の遺伝子療法プロトコルが進行中である。 眼の遺伝子療法による治療に適する多数の眼疾患および身体状態(コンディシ ョン)が存在する。これらの疾患は、2つのカテゴリーに分類することができる が、そのひとつは特定の遺伝子障害(優性または劣性)によって引き起こされる 眼疾患であり、他方は、現在のところは遺伝子的根拠が解明されていないが、コ ンディションの治療に有用なタンパク質を発現する遺伝子を導入することによっ て治療しうる疾患である。 第1のカテゴリーには、根本的な遺伝子欠損が知られている多数の疾患が含ま れる。常染色体性網膜色素変性症(優性および劣性)は、ロドプシン遺伝子中の 50の突然変異によって起こる[ボックのInvest.Ophthalm.and Visual Sci.3 4(3):473(1993)]。常染色体性優性白点状網膜症、眼窩蝶形色素ジストロフィー および成人卵黄様斑点ジストロフィーは、ペリフェリン/RDS遺伝子における 突然変異と関係がある[カジワラらのNature Genetics 3:202(1993);ニコルスら のNature Genetics 3:202(1993);ウエルズらのNature Genetics 3:313(1993)] 。ノリエ病[バーガーらのNature Genetics 1:199(1992)]、青錐体一色型色覚[ ネイザンスらのScience 245:831(1989)]および先天性脈絡膜欠如[クレーマーら のNature 347:674(1990);メリーらのProc.Natl.Acad.Sci.USA 89:2135(1992 )]は、すべて遺伝子突然変異によって起こることがわかっている。脳回転状萎縮 症を起こす遺伝子は、ミトコンドリア酵素オルニチンアミノトランスフェラーゼ に60以上の異なる突然変異を含んでいる。 特定の遺伝子突然変異が表現型を起こすことがわかっている疾患に加えて、特 定の遺伝成分が未知である多数の疾患が存在する。これらの疾患は、遺伝子に起 因するかまたはタンパク質の発現に変化をもたらすような他の因子によって起こ る。たとえば、年齢関連性黄斑変性は、老年の患者にとって重要な眼疾患である 。網膜芽腫、前部および後部ブドウ膜炎、網膜脈管疾患、白内障、角膜ジストロ フィーなどの遺伝性角膜欠損、網膜剥離および変性ならびに虹彩萎縮が、このカ テゴリーに含まれる。糖尿病性網膜症などの緑内障および糖尿病に追随する網膜 疾患も含まれる。 最後に、遺伝的根拠はないけれども、重要な眼疾患を起こす多数のコンディシ ョンも眼疾患に含まれる。たとえば、単純ヘルペスウイルス(HSV)またはサ イトメガロウイルス(CMV)感染などのウイルス感染は頻繁に重大な症状を起 こし、失明することもある。網膜剥離、糖尿病性網膜疾患、網膜静脈血栓症、網 膜動脈塞栓症、アレルギー性結膜炎ならびにその他の眼のアレルギー性応答、ド ライアイ、リソソーム貯蔵疾患、グリコーゲン貯蔵疾患、コラーゲン障害、ムコ 多糖類ならびにプロテオグリカン障害、スフィンゴリピドーシス、ムコリピドー シス、アミノ酸代謝障害、内分泌性眼疾患、前部および後部角膜ジストロフィー 、網膜光受容体障害、角膜潰瘍および外科手術後の創傷などのその他の眼の創傷 もまた、公知の遺伝子的成分をもたない重要なコンディションである。 最近の研究では、30年間にわたってヒト網膜色素変性症の研究用モデルとし て供されている、rdマウスの網膜変性表現型が、トランスジェニックrdマウ スにおいてウシcGMPホスホジエステラーゼβサブユニットが発現することに よって救われることが明らかにされた[レムらのProc.Natl.Acad.Sci.USA 1 5:442(1992)]。同様に、rdマウスの網膜変性遅延(rds)表現型もまた、 野生型rds遺伝子産物である39kdの膜表面糖タンパク質を発現するトラン スジェニックマウスを創製することによって治癒することができる[トラビスら のNeuron 9:113(1992)]。しかし、何人かのコメンテーターから指摘されている ように、トランス遺伝子の挿入の不確実性ゆえに、トランスジェニックテクニッ クをヒトに対する療法に直接適用することはできない[ザックのArch.Ophthalm ol.111:1477(1993)、ボック(前述)]。 さらに、レトロウイルスベクターを用いるインビトロの遺伝子トランスファー が、常染色体劣性遺伝の酵素欠損であるβ−グルクロニダーゼ欠損細胞上で行わ れた。該酵素をコードする遺伝子を形質転換した後は、β−グルクロニダーゼ欠 損細胞は正常な酵素活性を呈した[ストラムらのExp.Eye Res.50:521-532(199 0)]。 最近、アデノウイルスベクターを用いる2つのインビボプロトコルが報告され ている[ベネットらのInvestigative Ophthalmology and Visual Science 1994 3 5(5):2535;リーらのInvestigative Ophthalmology and Visual Science 1994 35 (5):2543]。 このように、インビボおよび生体内の眼の遺伝子療法が必要である。したがっ て、本発明の目的のひとつは、遺伝子工作した眼細胞の作製方法、さらに詳しく は生体内における遺伝子工作した眼細胞の作製方法を提供することである。 発明の要約 本発明は、外来性タンパク質を産生するように、生体内眼細胞に遺伝子工作を 行ないうることが確定されたことを基盤としている。 本発明のひとつの態様においては、本発明は遺伝子工作した眼細胞の作製方法 を提供する。該方法は、眼細胞内へ外来性核酸の取り込みを許容する条件下で、 眼細胞を外来性核酸に接触させることを特徴とする。 本発明の別の態様においては、本発明は外来性核酸を生体内眼細胞に導入する 方法を提供する。該方法は、眼細胞内へ外来性核酸の取り込みを許容する条件下 で、眼細胞を外来性核酸に接触させることを特徴とする。 本発明の別の態様においては、本発明は、眼疾患の治療方法を提供する。該方 法は、当該眼疾患に関連するタンパク質をコードする外来性核酸を生体内眼細胞 に導入することを特徴とする。 本発明のさらに別の態様においては、本発明は、眼疾患の治療方法を提供する 。該方法は、当該眼疾患の治療に有用なタンパク質をコードする外来性核酸を生 体内眼細胞に導入することを特徴とする。 本発明のさらにまた別の態様においては、本発明は、外来性核酸を含む眼細胞 を提供する。 図面の簡単な説明 図1Aおよび1Bは、角膜上皮細胞の凍結切片に組織化学的X−gal染色を 行ったものである。図1Aの青いX−gal染色は、実施例1に概略したような 組織切除後に、β−ガラクトシダーゼマーカーが角膜表面の基底上皮細胞へ遺伝 子輸送されていることを示す。図1Bはコントロールであり、染色されないこと を示している。両切片は、エオシンで対比染色した。 図2Aおよび2Bは、角膜内皮細胞の凍結切片に組織化学的X−gal染色を 行ったものである。図2Aの青いX−gal染色は、β−ガラクトシダーゼマー カーが角膜表面の内皮細胞へ遺伝子輸送されていることを示す。図2Bはコント ロールであり、染色されないことを示している。両切片は、エオシンで対比染色 した。 詳細な記載 本発明は、眼細胞、特に生体内眼細胞へ外来性核酸を導入しうるという発見に 基づいている。したがって、本発明は、遺伝子工作した生体内眼細胞の作製方法 を提供する。本発明方法は、眼細胞内へ外来性核酸が取り込まれて該核酸が発現 する条件下で、眼細胞を外来性核酸に接触させることを特徴とする。 本明細書において、「生体内眼細胞」またはその文法的等価物とは、眼球に含 まれた眼細胞、すなわちインビボの眼細胞を意味する。眼細胞としては、水晶体 、角膜(内皮、支質および上皮角膜細胞)、虹彩、網膜、脈絡膜、強膜、毛様体 、硝子体、眼血管系、シュレム管、眼筋細胞、視神経およびその他の感覚、運動 および自律神経の細胞が挙げられる。 本明細書において、「遺伝子工作した」とは、天然には通常見られない形体の 細胞または組織を得るために外来性核酸を導入することなどの組換えDNA処置 に付された細胞または組織を意味する。たとえば、該細胞は、外来性核酸を含む 。一般に、外来性核酸は組換えDNA技術を用いて作製される。いったん遺伝子 工作した細胞または組織を作製すると、該細胞または組織は、非組換え的、すな わ ち、宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて複製しうるが、それらも本発明の目的 のために遺伝子工作した細胞または組織とみなしてよいことが理解されよう。 本明細書において、「核酸」またはその文法的等価物は、DNAまたはRNA 、あるいはリボおよびデオキシリボヌクレオチドの両方を含む分子を意味する。 核酸には、ゲノムDNA、cDNAおよびセンスおよびアンチセンス核酸を含む オリゴヌクレオチドが包含される。核酸は二本鎖、一本鎖であってよく、もしく は二本鎖または一本鎖配列の両方の部分を含んでいてもよい。 本明細書において、「外来性核酸」または「組換え核酸」あるいはその文法的 等価物は、通常、眼細胞において認知量または治療量で産生されないタンパク質 をコードする核酸を意味する。したがって、外来性核酸とは、他の生物由来の異 種核酸などの眼細胞のゲノムに通常は見られない核酸である。外来性核酸には、 眼細胞のゲノムに通常見られるが、眼細胞において通常、認知量または治療量で 発現しないタンパク質を発現させる形体である核酸も含まれる。たとえば、神経 成長因子(NGF)およびニューロトロフィン3(NT3)などのヒトニューロ トロフィン類はヒト眼細胞のゲノム内にコードされるが、それらはヒト眼組織に おいて通常、有意量または治療量では発現しない。したがって、あるヒト遺伝子 は、それが該タンパク質のプロモーターを含むかまたは眼細胞内で該タンパク質 の発現を増加させるなんらかの形体であるならば、ヒト眼細胞にとって外来性で ある。このように、遺伝子工作した眼細胞は、そのゲノム内に通常見られる遺伝 子の余分のコピーを含んでいる。別法として、外来性核酸は、天然のタンパク質 の変異体または突然変異体をコードしてもよい。いったん外来性核酸を作製し、 宿主細胞または生物に再導入すると、該核酸は、非組換え的、すなわち、インビ トロ処理操作よりもむしろ宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて複製するが、し かし、組換え的に作製され、非組換え的に複製される、このような核酸も本発明 の目的の外来性または組換え核酸とみなしてよいことが理解されよう。 好ましい具体例では、外来性核酸は発現されるタンパク質をコードする。すな わち、それは眼疾患の治療に用いられるタンパク質である。別の具体例では、外 来性核酸は、タンパク質の発現を阻害または調節するアンチセンス核酸である。 この具体例では、外来性核酸は発現する必要がない。したがって、たとえば、眼 腫瘍細胞が望ましくないタンパク質を発現する場合、本発明方法によって、アン チセンス核酸を増加させて望ましくないタンパク質の発現を調節する。同様に、 タンパク質の突然変異体の発現によって、眼疾患が起こる場合もある。突然変異 外来性遺伝子の発現レベルを低下させるためのアンチセンス核酸および遺伝子の 正常なコピーをコードする核酸の両方を組み合わせることが可能である。 別の具体例では、外来性核酸は、転写または翻訳調節タンパク質などの調節タ ンパク質をコードする。この具体例では、タンパク質それ自体は、眼疾患に直接 影響を与えないが、その代わりに、眼疾患に影響を与える他のタンパク質の発現 を増加あるいは減少させる。 他の具体例では、外来性核酸は、単一のタンパク質をコードする。別の具体例 では、外来性核酸は、1種以上のタンパク質をコードする。したがって、たとえ ば、眼疾患の治療に有用な数種のタンパク質を所望することができる;また、数 種のタンパク質をコードする外来性核酸を用いて一度に数種の眼疾患を治療する ことができる。 同様に、「外来性」または「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて(す なわち前述の外来性または組換え核酸の発現を介して)生産されたタンパク質で ある。組換えタンパク質は、少なくとも1個以上の特徴によって、天然のタンパ ク質と区別される。たとえば、組換えタンパク質は、タンパク質の発現を増加さ せるような誘発プロモーターまたは高発現プロモーターを使用するため、通常に 見られる濃度よりも特に高濃度で生産される。したがって、たとえば、外来性タ ンパク質は、通常は眼組織において発現しないタンパク質である。別の表現をす ると、エピトープタグの付加またはアミノ酸の置換、挿入および欠失などがある ので、該タンパク質は、天然には通常認められない形体である。 好ましい具体例では、外来性核酸は、眼疾患の治療に有用なタンパク質をコー ドする。本明細書において、「眼疾患」とは、疾患または健康な動物にとって正 常でない眼の病的コンディションを意味する。 ひとつの具体例では、眼疾患は、遺伝子欠損によって引き起こされる。遺伝子 が同定されている、このような眼疾患の例としては、常染色体性網膜色素変性症 、常染色体性優性白点状網膜症、眼窩蝶形色素ジストロフィー、成人卵黄様斑点 ジストロフィー、ノリエ病、青錐体一色型色覚、先天性脈絡膜欠如および脳回転 状萎縮症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの疾患を遺 伝子眼疾患ともいう。他の具体例では、眼疾患は、特定の既知の遺伝子型によっ て引き起こされない疾患である(将来的には、その遺伝成分は明らかにされるで あろうが)。このような眼疾患としては、年齢関連性黄斑変性は、網膜芽腫、前 部および後部ブドウ膜炎、網膜脈管疾患、白内障、角膜ジストロフィーなどの遺 伝性角膜欠損、網膜剥離および変性ならびに虹彩萎縮が、および糖尿病性網膜症 などの緑内障および糖尿病に追随する網膜疾患が挙げられる。 さらに、遺伝的根拠はないけれども、眼疾患または機能不全を引き起こすよう なコンディションも、眼疾患に含まれる。このようなコンディションとしては、 単純ヘルペスウイルス(HSV)またはサイトメガロウイルス(CMV)感染、 アレルギー性結膜炎ならびにその他の眼のアレルギー性応答、ドライアイ、リソ ソーム貯蔵疾患、グリコーゲン貯蔵疾患、コラーゲン障害、ムコ多糖類ならびに プロテオグリカン障害、スフィンゴリピドーシス、ムコリピドーシス、アミノ酸 代謝障害、内分泌性眼疾患、前部および後部角膜ジストロフィー、網膜光受容体 障害、角膜潰瘍および外科手術後の創傷などのその他の眼の創傷が挙げられるが 、これらに限定されるものではない。 本明細書において、「外来性核酸の取り込みを許容する条件」とは、生体内眼 細胞に外来性核酸を取り込ませ、発現させる経験に基づいた条件を意味する。 該許容条件は、外来性核酸の形体に依存する。したがって、たとえば、外来性 核酸がアデノウイルス、レトロウイルスあるいはアデノ随伴ウイルスベクターの 形体である場合、許容条件とは細胞がウイルス感染しうる条件である。同様に、 外来性核酸がプラスミドの形体である場合、許容条件とはプラスミドが細胞内に はいりうる条件である。このように、外来性核酸の形体とその取り込みを許容す る条件との間には、相互関係がある。これらの条件は、一般に当業界において公 知である。 好ましい具体例では、核酸は、発現されるタンパク質をコードする。ある具体 例では、外来性核酸の発現は、一時的である;すなわち、外来性タンパク質が発 現する時間が限定されている。他の具体例では、発現は永続的である。したがっ て、たとえば、治療タンパク質が短期間で輸送されるべき場合、一時的発現系を 用いる;たとえば、眼の外科手術あるいは創傷後は、そのような外来性タンパク 質が望ましい。反対に、網膜色素変性症または緑内障などの進行性あるいは先天 性のコンディションに対しては、永続的発現が望ましい。 別の具体例では、外来性核酸は、標的細胞のゲノムに組み込まれる;たとえば 、後記レトロウイルスベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。一般に、 比較的長期または永続的な発現が望まれる場合、これを行う。他の具体例では、 外来性核酸は、標的細胞のゲノム内に組み込まれない、というよりむしろ自律的 に細胞内に存在する。一時的発現が望まれる場合、この具体例が好ましい。 許容条件は、使用される発現ベクター、望まれる発現量および標的細胞によっ て変わる。一般に、インビトロでの外来性細胞の取り込みを許容する条件が、イ ンビボの眼細胞に対して使用される。眼の身体的構造的特徴が考慮される場合も ある。 たとえば、標的細胞が角膜内皮細胞である場合、許容条件には、内皮基底層ま で角膜表面を露出させるために、組織切除または角膜内皮の削除が含まれる。そ の後、後のような種々の方法で外来性核酸を加える。 当業界で公知の技術を用いて許容条件を分析する。たとえば、ノーザンハイブ リッド形成法を用いてmRNAの存在を検出するか、または抗体あるいは生物学 的機能アッセイを用いてタンパク質の存在を検出することによって、外来性核酸 の発現をアッセイする。 外来性核酸の取り込みのための特定の条件は、当業界で公知である。その条件 としては、レトロウイルス感染、アデノウイルス感染、プラスミドによる形質転 換、外来性核酸を含むリポソームによる形質転換、バイオリスティック(biolist ic)核酸輸送[すなわち、金または他の金属粒子を核酸で被覆したものを細胞に 注入(shootingまたはinjecting)する]、アデノ随伴ウイルス感染およびエプ スタイン・バーンウイルス感染が挙げられるが、これらに限定されるものではな い。これらはすべて本発明の目的のための「発現ベクター」とみなすことができ る。 発現ベクターは、染色体外ベクターあるいは前述したような宿主のゲノムに組 み込まれているベクターのいずれであってもよい。一般に、これらの発現ベクタ ーには、外来性核酸に作動可能状態で結合した転写および翻訳調節核酸が含まれ る。ここで、「作動可能状態で結合」とは、転写および翻訳調節DNAが、転写 が開始される仕方で外来性タンパク質のコーディング配列に関連する位置に存在 することを意味する。一般に、このことは、プロモーターおよび転写開始配列が 、外来性タンパク質コーディング領域の5'末端に位置することを意味する。外 来性タンパク質を発現するのに用いる眼の宿主細胞には、一般に、転写および翻 訳調節核酸が適している;たとえば、哺乳類およびヒトにおいて外来性タンパク 質を発現するのに用いるのは、哺乳類細胞由来、特にヒト由来の転写および翻訳 調節核酸配列が好ましい。眼細胞の転写および翻訳調節配列が好ましい。数多く のタイプの適当な発現ベクターおよび適当な調節配列が当業界では公知である。 一般に、転写および翻訳調節配列としては、プロモーター配列、リボソーム結 合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、ならびにエンハン サーまたはアクチベーター配列が挙げられるが、これらに限定されるものではな い。好ましい具体例では、調節配列は、プロモーターならびに転写開始および停 止配列である。 プロモーター配列は、構成または誘導プロモーターのいずれかをコードする。 プロモーターは、天然のプロモーターまたはハイブリッドプロモーターのいずれ であってもよい。1種以上のプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプ ロモーターもまた当業界で公知であり、本発明に有用である。 さらに、発現ベクターも付加的要素を含むことができる。たとえば、発現ベク ターを組込むためには、発現ベクターは少なくとも1個の宿主細胞ゲノムと相同 な配列を含んでおり、発現構築物に隣接する2個の相同配列を含んでいるのが好 ましい。ベクターに封入するのに適した相同配列を選択することによって、該組 込み発現ベクターを、宿主細胞の特定の遺伝子座に直接結合することができる。 ベクターを組み込むための構築物は、当業界において公知である。 適当なレトロウイルスベクターとしては、LNL6、LXSNおよびLNCX が挙げられる。 適当なアデノウイルスベクターは、たとえばE1領域などのウイルスがインビ ボで複製するのに必要な遺伝子要素が除去されているAd2またはAd5などの ヒトアデノウイルスを修飾したもの、およびアデノウイルスゲノムに挿入された 対象の外来性遺伝子をコードする発現カセットを含む(たとえば、AdGvCFT R10)。 本明細書において、「眼疾患関連タンパク質」とは、遺伝眼疾患の源として同 定された遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。したがって、それ らの遺伝成分が同定されている眼疾患、たとえば網膜色素変性症では、関連タン パク質はロドプシンである。このように、関連タンパク質が無いか有るかは、遺 伝眼疾患の結果あるいは原因のいずれかである。 本明細書において、「眼疾患の治療に有用なタンパク質」とは、眼疾患の症状 を緩和するのに効果のあるタンパク質を意味する。眼疾患には、遺伝子が関連す るものと遺伝成分をもたないものがある。したがって、たとえば、眼の創傷、ア レルギー、ウイルス感染、潰瘍などは、有用なタンパク質で治療することができ る。たとえば、gDは、単純ヘルペスウイルス感染の治療に、トランスフォーミ ング成長因子β(TGFB)は角膜内皮創傷に、抗IgE抗体は眼のアレルギー に、および脳由来神経栄養因子(BDNF)は網膜変性症に有用なタンパク質で ある。神経成長因子(NGF)およびニューロトロフィン5(NT5)ならびに これらの融合体および/または突然変異体は、網膜変性症の治療、網膜脈管疾患 後のダメージの遅延化または予防、または網膜剥離あるいは緑内障の治療に有用 である。これらの神経栄養因子は、視神経圧迫、外傷または脱髄の治療に用いる こともできる。免疫抑制タンパク質は、角膜移植後の移植片拒絶反応の治療に用 いる。脈管内皮細胞増殖因子(VEGF)アンタゴニスト(抗体または小分子と いったような)は、網膜および硝子体の新生血管疾患の治療に用いる。塩基性繊 維芽細胞増殖因子は、ラットにおいて光受容体の寿命を長くすることが明らかに されている[ファクトロビッチらのNature 347:83-86(1990)]。 ひとつの具体例では、外来性核酸を角膜上皮細胞に輸送する。角膜上皮細胞を それぞれ損傷、アレルギー反応および感染に付す。その後、これらのコンディシ ョンおよびその他のコンディションの治療に有用なタンパク質を本発明方法にし たがって輸送する。 別の具体例では、外来性核酸を角膜内皮細胞に輸送する。角膜内皮細胞の機能 不全は失明を引き起こすので、これは特に重要である。この層はしばしば白内症 の水晶体摘出術中に損傷を受ける(この手術は、米国において最も一般的な外科 手術である)。さらに、角膜内皮細胞は再生できないので(細胞分裂が起こらな いので)、角膜内皮細胞の分裂または再生を引き起こすタンパク質の発現は、角 膜内皮損傷の重要な治療となりうる。 別の具体例では、外来性核酸を角膜周辺部下の小柱網の細胞に導入する。小柱 網は眼の前眼房からの流出管であり、眼房水(眼房を充填している液体)を眼か ら排液する。緑内障は眼内圧を増加させ、米国における失明の一般的な原因とな っているので、この処置は重要である。したがって、本発明方法は、眼房水の流 出の調節および緑内障の治療に有用である。 また別の具体例では、外来性核酸を眼の脈絡膜層の細胞に導入する。眼の脈絡 膜層は、網膜に血液を供給する器官であり、したがって、網膜にタンパク質を供 給する。たとえば、本発明方法にしたがってBDNF(脳由来神経栄養因子)を 輸送して網膜変性症を治療する。 また別の具体例では、外来性核酸を網膜、強膜または毛様体の細胞に導入する 。この処置は、たとえば、緑内障の治療または予防において水性液の産生をコン トロールするために行う。 同様に、さらに他の具体例では、外来性核酸を網膜血管系あるいは眼血管系の 細胞、硝子体の細胞または水晶体の細胞(たとえば水晶体上皮細胞など)に導入 する。 本明細書において、「動物」には、ヒトおよび他の動物ならびに生物が包含さ れる。したがって、本発明方法は、ヒトの療法および家畜病治療の両方に適用し うる。たとえば、適用される家畜としては、イヌ、ウシ、ネコ、ブタ、ウマおよ びヒツジ、ならびに爬虫類、鳥、ウサギ、およびラット,ネズミ,モルモットや ハムスターなどの齧歯類などのペット化動物が挙げられるが、これらに限定され るものではない。動物園の動物などのペットではない有価動物もまた治療するこ とができる。好ましい具体例では、動物は哺乳類であり、最も好ましい具体例で は、動物はヒトである。 さらに、本発明方法は、眼疾患動物モデルの作製においても有用である。すな わち、遺伝子の突然変異したコピーを動物に導入して薬物スクリーニングおよび 薬物療法のためのモデルを作製することができる。たとえば、突然変異が眼疾患 を引き起こすか、または眼疾患においてひとつの役割を演じることがわかってい る遺伝子を、齧歯類およびウサギなどの動物に導入して眼疾患を得る。たとえば 、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を眼内マクロファー ジにて発現させて網膜変性症モデルを作製する。同様に、S−抗原を眼にて発現 させてブドウ膜炎モデルを作製することができる。 次に記載する実施例により上記本発明方法をさらに詳しく説明し、本発明の種 々の態様を実行するための最良の型式を記載する。これらの実施例によって本発 明の真の範囲が制限されるものではなく、むしろ説明の目的のみで提示されてい ることを理解すべきである。引用した文献は本発明の参考文献であることを明示 する。 実施例 実施例1 角膜上皮細胞への外来性核酸の輸送 まず、CMV/βガラクトシダーゼ発現カセットに隣接したアデノウイルスD NA配列を有するシャトルプラスミドを作成することによってβ−ガラクトシダ ーゼ発現組換えアデノウイルスベクターを構築するが、DNA欠失変異株アデノ ウイルスd1324を293細胞に共トランスフェクトさせる場合は、相同組換 えイベントによって、β−ガラクトシダーゼ発現カセットがウイルスのE1領域 に設置される。したがって、得られるE1−欠失組換えウイルスは、293細胞 以外のすべての細胞において、複製不能であり、大腸菌β−ガラクトシダーゼ遺 伝子を発現する。この遺伝子産物を、その酵素機能についてアッセイするか、ま たは該酵素をX−gal基質に接触させた結果、マーカー遺伝子を発現する細胞 が特徴的に青く染色されることによる組織化学的アッセイを行う。 組換え複製不能ウイルスベクターを、ヒト胎児腎細胞系である293細胞内で 生産し、該細胞はE1タンパク質をトランスで発現する。 1×109pfu/mlのウイルスベクター調製品20μを、平衡緩衝塩類液 [10mMトリス、pH7.5、1mM MgCl2、10%グリセロール]中、 麻酔したスプラーグ−ダウリーラットの無傷の角膜上皮細胞に局所的に適用する 。ウイルス溶液を30分間そのままにしておき、次いで溶液を除去し、眼の表面 を保護用水性軟膏(ラグビー・アーティフィシャル・ティアーズ:白色ワセリン 、鉱物油および無水ラノリン)で覆う。動物を回復させ、次いで24時間後に屠 殺する。Tissue Tek中で眼を凍結し、厚さ7μmの組織切片を切り出し 、β−ガラクトシダーゼの発現を検出するために、該切片を組織化学的に染色す る。コントロール動物にはビヒクルのみを局所適用し、同じ処理で眼を加工する 。試験動物もコントロール動物も、角膜上皮細胞においてβ−ガラクトシダーゼ を発現しない。 角膜の上皮細胞は、層状・ウロコ状の上皮細胞である。再外部の細胞は薙ぎ倒 され、表面から規則正しく生理的にはがれていくが、同時にその下の不完全分化 細胞から更新される。我々は、おそらく、我々が遺伝子移動を達成した角膜上皮 細胞、すなわち外部上皮細胞構造が、遺伝子輸送後24時間経過してから検査を おこなったために、経時変化によって脱落したからであると推論する。 我々は、局所遺伝子輸送処理を行う前に角膜上皮細胞の再外部層を外科的に除 去することによって、より深い、より長命の細胞への遺伝子輸送が達成され、次 いで輸送された遺伝子が発現し、インビボにおいて長期間生存しうると推論する 。このような表面上皮細胞の外科的除去は「組織切除」と称され、角膜潰瘍化を 含めた多くの角膜上皮疾患状態の治療の際に行われる。 したがって、我々は、表面上皮細胞の組織切除後のラットの角膜上皮細胞の回 復速度を測定するための実験を行った。麻酔したラットの角膜上皮細胞を外科用 メスの刃で再生可能な状態で削り取る。次いで、上皮の修復を確認するために、 5分、1時間、16時間および2日の間隔で眼を組織学的に検査する。外科処置 後、手術をしていない眼と表面上皮細胞を除去された眼の間に、16時間以内に 差異を目視することは不可能であることがわかった。 したがって、2番目の実験として、削り取り処置によって表面角膜上皮細胞の 組織切除を行った後すぐに、1×109pfu/mlの組換えアデノウイルス2 0μlを角膜表面に適用し、30分間放置する。次いで、前述のように、24時 間後に動物を屠殺する。図1Aおよび1Bに示されるように、これらの眼の切片 の組織化学的染色から、アデノウイルスベクターの局所適用を受けた動物の角膜 上皮細胞においては大量にβ−ガラクトシダーゼマーカー遺伝子が発現している が、コントロール動物においては発現がないことがわかる。 実施例2 角膜内皮細胞への外来性核酸の輸送 30gニードルとハミルトンシリンジを用い、麻酔したラットの前眼房から眼 房水20μlを抜き取る。β−ガラクトシダーゼマーカー遺伝子を輸送する、前 述の1×109pfu/mlの複製不能組換えアデノウイルスベクターの溶液2 0μlを、抜き取った液体の代わりに加える。コントロールラットはビヒクルの みで同様に処理する。24時間後に動物を屠殺し、眼をTissue Tekで 凍結し、切片を作成し、β−ガラクトシダーゼ検出用に染色する。図2Aおよび 2Bに示されるように、ウイルスベクターを処置された動物の角膜後部表面細胞 (角膜内皮細胞)では、その大部分がくっきりと染色されているが、ビヒクルの みで処理された動物では染色がみられない。さらに、ベクター処置動物の毛様体 上皮細胞も染色される。 実施例3 脈絡膜細胞への外来性核酸の輸送 1×109pfu/mlのβ−ガラクトシダーゼ発現組換えアデノウイルスベ クターの溶液5μlを、麻酔したラットの眼の硝子体液(後部)に注射する。コ ントロールラットはビヒクルのみで同様に処理する。24時間後に動物を屠殺し 、眼をTissue Tekで凍結し、切片を作成し、β−ガラクトシダーゼ検 出用に染色する。ウイルスベクターを処置された動物の脈絡膜(眼の後部を取り 巻く血管の被膜である)の細胞のいくらかは、くっきりと染色される。しかし、 ビヒクルのみで処理された動物では染色されない。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.遺伝子工作した生体内眼細胞の作製方法であって、外来性核酸を発現させ ための眼細胞内へ該核酸の取り込みを許容する条件下で、眼細胞を外来性核酸に 接触させることを特徴とする方法。 2.外来性核酸がレトロウイルスの形体である請求項1に記載の方法。 3.外来性核酸がアデノウイルスの形体である請求項1に記載の方法。 4.外来性核酸がプラスミドの形体である請求項1に記載の方法。 5.外来性核酸がアデノ随伴ウイルスの形体である請求項1に記載の方法。 6.眼疾患に関連するタンパク質をコードする外来性核酸を、眼細胞内へ該核 酸の取り込みを許容する条件下で、生体内眼細胞に導入することを特徴とする眼 疾患の治療方法。 7.眼疾患の治療に有用なタンパク質をコードする外来性核酸を、眼細胞内へ 該核酸の取り込みを許容する条件下で、生体内眼細胞に導入することを特徴とす る眼疾患の治療方法。 8.外来性核酸を含む眼細胞。 9.細胞が角膜内皮細胞である請求項6または7に記載の方法。 10.細胞が角膜上皮細胞である請求項6または7に記載の方法。 11.細胞が脈絡膜細胞である請求項6または7に記載の方法。 12.外来性核酸を導入する前に、細胞の組織切除をおこなう請求項10に記 載の方法。
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