【発明の詳細な説明】
新規な物理学的に安定な固体形のフルオロキノロン
発明の背景
本発明は、抗生物質キノロン、さらに詳しくは、[S-(R*,S*)]-1-シクロプ
ロピル-6-フルオロ-1,4-ジヒドロ-8-メトキシ-7-[3-[1-(メチルアミノ)
エチル]-1-ピロリジニル]-4-オキソ-3-キノリンカルボン酸と命名される、新
規結晶形のフルオロキノロンの分野に関する。
情報の開示
して安定」であると考えられる。
ES2006099号(Investchemi社)。キノロン抗生物質シプロフロキサシン(cipr
ofloxacin)の二水和形の調製。
B.Sustar,N.BukovecおよびP.Bukovec,J.Therm.Anal.40,475-481(
1993)。「Polymorphism and Stability of Norfloxacin,1-Ethyl-6-fluoro-1
,4-dihydro-4-oxo-7-(1-piperazinil)-3-quinolinocarboxylic acid.」。ノルフ
ロキサシンに対する構造類似体のより安定な多形の知見に関する実験。
Katdare,A.V.;J.A.Ryan;J.F.Bavitzら,Mikrochim.Acta(1986)
Vol.3(1-2)pp.1-12。「Characterization of hydrates of norfloxacin.」。
三種の水和物形のノルフロキサシンを論じており、該水和物は室温にて最大の熱
力学的安定性を有する。
1985年6月4日発行の米国特許第4,521,431号は、1および2形の塩酸ラニチジ
ン(ranitidine)を開示している。
発明の背景
キノロンタイプの構造は、その抗菌性特性で知られており、幾つかのキノロン
抗生物質(例えば、ノルフロキサシン(norfloxacin)およびシプロフロキサシン(c
iprofloxacin))が市販されている。市販キノロンの物理学的特性は非常に重要で
ある。優れた抗生物質特性は有するが、1日しか貯蔵寿命を有していないキノロ
ンでは役に立たない。優れた抗生物質特性を有するが、有用な溶媒に溶解しない
キノロンも等しく役に立たない。精製した場合のキノロンは結晶形または結晶様
形を形成し、それは種々の形態や物理学的特性を有し得る。
医薬を包含する固形物は、しばしば、2以上の結晶形を有し、これは多形とし
て知られている。化合物が結晶充填性が異なる複数の固体相で結晶化する場合に
多形が生じる。膨大な例が医薬品の固体状態特性の標準参照で引用されている(
Byrn,S.R.,「Solid-State Chemistry of Drugs」,New York,Academic
Press社(1982);Kuhnert-Brandstatter,M.,「Thermomiscroscopy In Th
e Analysis of Pharmaceuticals」New York,Pergamon Press社(1971)お
よびJ.Pharm.Sci.,58,911(1969))。Byrnは、一般的に、多形は、溶解性な
らびに物理学的および化学的安定性を包含する異なる物理学的特性を示すと述べ
ている。
分子充填性が異なるため、多形は、薬剤放出、固体-状態安定性、および医薬
製造に影響を及ぼす幾つかの点において異なり得る。相対的安定性および多形の
相互変換性は、市販薬剤の選択に特に重要である。適当な多形は、物理学的安定
性の結果次第である。例えば、市販薬剤の選択は、優れた物理学的安定性のごと
き望ましい特性を有する適当な多形の利用性および選択に依存し得る。固体投与
形の性能は、製品の貯蔵寿命間の多形変態によって制限されてはならない。所与
の薬剤の観察可能な結晶構造を予想し、または望ましい物理学的特性を有する多
形の存在を予想する信頼し得る方法が全く存在しないことに注意することは重要
である。
本発明は、医薬開発に非常に望ましい物理学的特性を有する新規な形態のキノ
ロンを記載する。
発明の概要
本発明は、以下に示す式:
を有し、示差走査熱量計(DSC)によって測定して、純度に応じて、あるいは図
5に示すごとく、190-202℃の間、または195-201℃の間、または1
98-201℃の間の融解開始範囲を有し、あるいは表IIIに記載するX-線回折
パターンを有し、または図4に示すX-線回折パターンを有する、「キノロン」
と称される、結晶形の[S-(R*,S*)]-1-シクロプロピル-6-フルオロ-1,4-ジ
ヒドロ-8-メトキシ-7-[3-[1-(メチルアミノ)エチル]-1-ピロリジニル]-4-
オキソ-3-キノリンカルボン酸を含んでなる化合物を含む。本発明は、また、こ
の同結晶形のキノロンを含む医薬組成物をも含む。
図面の簡単な説明
図1.I形のX-線粉体回折(XRD)パターン。
図2.制御雰囲気中の重量分析測定によるキノロンI形の水分吸収。
図3.II形のX-線粉体回折(XRD)パターン。
図4.III形のX-線粉体回折(XRD)パターン。
図5.キノロンIII形のDSCプロフィール。
図6.制御雰囲気中の重量分析測定によるキノロンIII形の水分吸収。
図7.メタノール溶媒和物のユニークXRD粉体パターン。
図8.キノリンI形のDSCプロフィール。
図9(A).IおよびIII形の熱流プロフィール。
図9(B).IおよびIII形の熱流プロフィール。
図10.I形キノロンのDSCプロフィール。
発明のさらなる説明
定義および方法
種々の標準的方法を記載する。以下の定義および説明は、明細書および請求の
範囲の両方を包含するこの全体書類を通して用いる用語に関する。
光学顕微鏡
薬物は、6×から50×の倍率で、Wild M5立体顕微鏡で検鏡する。薬物試料
は、乾燥物、または、鉱油、シリコーン油、カーギル・メルトマウント(Cargil
le MeltMount)および水のごとき種々の選択した液体媒質中でマウントする。
粒子サイズ、晶癖および結晶化度は、40×ないし600×倍率でNikon Opti
phot偏光顕微鏡またはOlympus BHSP偏光顕微鏡で検鏡する。
熱顕微鏡
10×対物レンズを備えたNikon POH-2偏光複合顕微鏡を用いて、ガラススラ
イドとno.11/2 カバーガラスとの間に乾燥させてマウントした標本を観察する
。試料は、Mettler FP-8マイクロプロセッサーによって制御されるMettler FP-
80ミクロ炉中にて常温から250℃まで加熱する。加熱速度は、5-20℃/分
で変動し得る。ホット-ステージ実験は、Hitachi VK-C350カラービデオカメラ
およびPanasonic AG-6200ビデオカセットレコーダーで録画(Sony T120-HGおよ
びPM VHSテープ)し得る。
粉体X-線回折(XRD):
Rigaku DMAX-A X-線回折計を用いて、XRD粉体-パターンを得る。該
装置は、1.5406Åの銅K-L3線で操作する。主要な装置パラメーターを以
下のごとく設定する:40KV電圧、30mA電流、1°のビーム開口および0
.30°の検出器開口(受けスリット)。パターンは、1.5°2θ/分(0.05°
ステップ-サイズ、2秒/ステップのカウント時間)のスキャン速度で3-40°
2θ角の範囲にわたってスキャンする。試料を摩砕して微粉末とし、アルミニウ
ムトレイに充填する。
示差走査熱量測定
示差走査熱量計(DSC)を用いて、直線的に温度を上昇させる間の温度の関数
として、エンタルピー変化をモニターする。TA Instruments TA2100コンピュ
ーターに接続したDuPont 910 DSCを用いてもよい。スキャン速度は5℃/
分で、50-80cc/分の乾燥窒素をパージさせつつ、該装置を作動させる。
試料は、約2バールの圧力で、密封した試料容器中に封入する。ある種の実験に
おいては、容器のフタを、水分および他の揮発性成分が通過し得るように穿孔す
る。
熱量測定試料は時として残存水分によって影響されるため、しばしば、試料は
、異なる初期水分活性(activity)で実験する。試料は風袋を差し引いたDSC容
器に秤量し、開口容器を、25±1℃、一定の相対湿度のチャンバー中で数日間
平衡化させる。これらのチャンバーは、飽和塩溶液から53%RHおよび75%
RHに調製する。平衡期間の終期に、チャンバーを開け、フタを試料の上に置い
て大気に再-平衡化することを防止する。試料をチャンバーから取り出し、容器
を素早く留閉する。
動的水分吸収重量分析
動的水分取り込みは、25℃の制御雰囲気の微量天秤系で実験する。試料約1
0mgを該天秤で、2.5%RHにて約2時間平衡化する。試料を取り囲む相対
湿度を3%RHの増加量で約92%RHまで上昇させ、その時点で、RHを約2
.5%RHの最終RHまで3%段階で下降させる。各相対湿度にて、試料を、1
0分間にわたって0.0005mg内で質量が安定するまで、平衡化させる。乾
燥質量は、最初の平衡化期間後の試料の質量に対応すると仮定する。制御雰囲気
の微量天秤とは、Bergren,M.S.Int.J.Pharm.(1994)Vol.103,pp.103-11
4によって記載されている天秤系である。
ミクロヒグロスタット
その中に飽和塩溶液を入れた約0.5mlの容積を有する小ガラス容器である
。
塩が塩化ナトリウムである場合、例えば、容器内の相対湿度は75%に維持され
るであろう。ミクロヒグロスタットをもう1の容器内に入れた場合には、塩はよ
り大きな容器内の湿度がミクロヒグロスタットのそれに平衡化するように、溶解
するか結晶化するであろう。
HPLCアッセイ条件
ChemStationコントローラーを備えたHewlett-Packard 1090液体クロマト
グラフィーを用いて化学純度を評価する。関連化合物からの標的化合物の分離は
、常温にて、4.6×100mmカラム中に充填したYMC ODS-AQ 3ミ
クロンを用いて行う。移動相は、75%(pH3の100mMリン酸、46mM
水酸化テトラブチルアンモニウム):25%(容積比837/93/70のメタノ
ール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル)よりなる。移動相は0.7ml/分
の速度でポンプ送給する。検出は、298nmのUV吸収をモニターすることに
よって行う。注射容量は10μlである。
バルクの薬剤試料は、該物質を約0.25〜0.5mg/mlの最終濃度で移動
相に溶解させることによって調製する。溶解性実験については、酢酸エチル溶液
100mclアリコットを回収し、HPLCオートサンプラーバイアルに直接入
れる。温和な窒素ガス流を用いて、試料バイアル中の溶媒を蒸発させる。固形物
は、分析の前にHPLC移動相0.5mlで復元する。
溶解性
溶解性は酢酸エチル中で測定する。5〜10mgのバルク薬剤を褐色オートイ
ンジェクターバイアル中に入れ、酢酸エチル3.0mlを添加する。そのバイア
ルをキャップし、BurrellモデルBBリスト-アクション(wrist-action)撹拌器
を用いて室温にて24時間までの時間振盪する。遠心後に上清からアリコットを
採取する。最終試料は、24時間の時点まで振盪しなかった静置溶液から採取す
る。
等温カロリメトリー
等温カロリメトリー(ITC)実験は、ThermoMetric社製のモデル2277ミ
クロカロリメーターを用いて行う(Suurkuusk,J.:Wadso,I.Chem.Scr.
(1982)Vol.20 pp.155-163を参照されたし)。Thermometric社製のDigitamRバ
ージョン2.1ソフトウェアを用いて、データを示し、試料から得られた合計熱
を積分する。熱流は、60℃および40℃にて、時間の関数としてモニターする
。ガラスおよびステンレス鋼の両方のアンプルを用いて固形物試料をおよび参照
物質(石英砂)を保持する。試料は、熱データを記録する前に、15分間(ガラス
アンプル)ないし1時間(ステンレス鋼アンプル)の範囲の時間、熱的に平衡させ
る。試料重量は、約75ないし300mgの範囲とする。ガラスアンプル中の試
料は、塩化ナトリウムまたは硝酸カルシウム四水和物の飽和溶液を含有するチャ
ンバー中で53%または75%RHにて、等圧法を介して平衡化する。試料を取
り出した直後に、アンプルをキャップする。他の試料は、アンプル内に密閉した
少量の飽和塩溶液を含有する「ミクロヒグロスタット」を用いて平衡化する。こ
の装置は、結晶変換が進行しつつある間もほぼ一定の相対湿度を供する。
溶液のエンタルピー
溶液のエンタルピーは、25.0±0.05℃にて、0.1M HCl 50mL
中で測定する。試料(0.10-0.11g)を2mlの球形、軟質ガラスアンプル
中で秤量し、P2O5を入れた真空デシケーター中で一晩乾燥する。アンプルを取
り出し、キャップし、秤量し、フレームシールする。溶液のエンタルピーは、T
ronacモデル458イソペリボール溶液カロリメータで測定する。この装置のカロリ
メトリー精度は、0.1N HCl中のトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン(
TRIS)での較正に基づいて1%以内である。
記載しないさらなる標準的な用語および定義は、当業者により一般的に認識さ
れているものと理解される。
すべての温度は℃である。RHとは相対湿度である。HPLCとは高速液体ク
ロマトグラフィーである。溶媒対を用いる場合、用いる溶媒の比は容積/容積(v/
v)である。溶媒中の固形物の溶解性を用いる場合、溶媒に対する固形物の比は重
量/容積(wt/v)である。
本発明の化合物
[S-(R*,S*)]-1-シクロプロピル-6-フルオロ-1,4-ジヒドロ-8-メトキ
シ-7-[3-[1-(メチルアミノ)エチル]-1-ピロリジニル]-4-オキソ-3-キノリ
ンカルボン酸は、抗生物質キノロンファミリーの1メンバーである。その分子構
造は、以下の式:
のいずれかで示される。
本明細書の目的のために、上式によって示される化合物は単純に「キノロン化
合物」という。キノロン化合物に関する実験により、3種の無水多形、I、IIお
よびIII形、ならびにメタノール溶媒和物形、MS形が明らかにされた。1の形
、III形のみが変態に対して安定であり、他の2の無水和物形、I形、II形およ
びメタノール溶媒和物形、MS形は、種々の条件下で相変態する。
III形の調製
III形物質は、キノロンを熱メタノールに溶解し、メタノールをより高温の沸
点を有する非極性溶媒で徐々に蒸留置換することによって調製し得る。該キノロ
ンは、メタノールを置換する溶媒に僅かしか溶解しないはずである。この目的に
用
いることができる種々の溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ヘプタン
他である。1の例において、III形は、熱メタノール50mlにI形2.7gを溶
解し、ガラス漏斗を通して濾過し、清澄化することによって得られる。その透明
黄色溶液を蒸留してメタノール約25mlを除去し、メタノールの蒸留を続ける
間、酢酸エチル50mlを徐々に添加する。さらに40mlの溶媒を留去した後
に、酢酸エチルを別に50ml添加し、器内温度が74℃に上昇するまで、蒸留
を続ける。灰色がかった沈殿をガラス漏斗で濾別し、酢酸エチル2×25mlで
洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、III形2.0gを得る。
MS形としても、メタノレートとしても公知であるメタノール溶媒和物
最も安定な形、III形は、メタノールから直接結晶化することができない。本
発明者らがメタノールから最も安定な形、III形を結晶化させることができなか
った時に、本発明らはメタノール溶媒和物の存在を推定した。結晶化工程で溶媒
としてメタノールを用いてキノロン化合物を単離した場合に、メタノール溶媒和
物形が生成する。脱溶媒和を避けるように注意をした後に、本発明らはメタノー
ル溶媒和物を単離した。メタノール溶媒和物は、キノロン化合物をメタノール中
に溶解し(メタノール約8ml中のI形キノロン200mgが良好に作動する)、
ついで該懸濁液をガラスバイアルに密封し、完全に溶解させるためにスチームバ
スで加熱することによって調製する。該試料を一晩放冷し、翌朝に真空濾過によ
って結晶を採取する。
メタノール溶媒和物形、MS形またはメタノレートは、I形の外観および特性
に対して僅かな影響を有する。メタノレートは容易に形成し、メタノール中で安
定な無水物、III形を成長できなくする。メタノレートは、溶媒が通常は生成物
結晶中に保持されない、かかる温和な条件下で脱溶媒和してI形を供する。該メ
タノレートは、メタノールからIII形が成長し得なかったことがわかった後にの
み発見される。I形は比較的単純な合成単離工程を介してかく得られたが、物理
学的変態に対して感受性の吸湿性多形を供する固体状態脱溶媒和工程の生成物で
ある。
もう1の単離方法は、結晶化工程における溶媒として酢酸エチルを用いること
である。最終反応工程で酢酸エチルを用いると、III形を生成し、酢酸エチルを
用
いると溶媒和物が全く生成しない。生成したIII形固体は、非常に大きな溶解性
と低い吸湿性のユニークな組合せを有し;かくして、本発明者らは、今まで生成
も記載もされていない、驚くべき、非常に有用な、かつ、予期せぬタイプの結晶
キノロンを生成する。
I、IIおよびIII形
I形を適当な条件下にて徐々に加熱すると、140-151℃の温度範囲でII
形を生成し、これは、適当な条件下にてさらに加熱すると、166-171℃の
融解/再結晶化範囲でIII形を生成する。顕微鏡的には、II形は、元のI形試料
中に存在する種子結晶からの成長を介して変換するようである。
初期水活性が少なくとも53%RHであるI形の試料においては、II形を形成
することなく、I形からIII形への直接変換が起こる。該変換は、ミクロカロリメ
ーター中で40℃くらいの低温で認められる。変換速度は、室温、75%RHで
最初に平衡化した試料については劇的に上昇する。これらの試料は60℃にて1
日以内にIII形に完全に変換する。
I形の乾燥試料は、一連の融解および再結晶化を通してII形およびIII形に変
換する。キノロン化合物は、II形が現れることなくI形からIII形に直接変態さ
せることができる。密封し湿度調節したI形試料は、水分-媒介固体-状態工程を
介してIII形に直接変態する。III形は変態に対して安定であるが、他の2の形、
I形、II形は種々の条件下で相変態する。III形は医薬製造に好ましい形である
。
III形は、熱酢酸エチルからの再結晶化を介して直接固形物として単離し得る
。かく生成したIII形物質は、他の固体相物が全く混入していない。医薬製造に
はIII形を推奨する。なぜならば、それが、現在までに見い出されている最も安
定な形のキノロン化合物であり、I形よりも吸湿性が低いためである。I形は、
より安定な結晶III形と比較して活性が高く、低融点の多形である。溶液から直
接成長させたIII形は、ギブズ自由エネルギーが約7.7kJ/モル、エンタルピ
ーが約8.8kJ/モル、I形よりも低い。この2の形の吸湿性における差は劇
的である。80%RHを超えるところでは、I形は十分な水分を吸湿して見かけ
一水和物に不可逆的に変態するが、III形は全RH範囲にわたり0.5%未満の水
分しか吸湿
しない。III形はI形よりも安定であるが、それはI形よりも溶解性が低い。I
形は、室温にて酢酸エチル中にIII形よりも約20倍溶解性が高い。
種々の形態の特徴付け
I形
I形は、灰色がかった微粉末として単離される。微視的には、該物質は結晶(
すなわち、1または2以上の以下の特性を示す:規則的な面角、へき開面または
複屈折)であるが、粒子は非対称で、ラスなしに針状形固形物の凝集し積層した
集合体にて生じる。誤配列結晶および複数層により生じる光散乱のため、より大
きな凝集は、透過照明中で暗く見える。典形的には、不完全な、平行の消光が直
交偏光中で認められる。2の屈折率が測定される:nmin=1.563およびnmax=1.
591。
水、薬剤-関連不純物(HPLC)、および焦炎残渣を包含する微量成分の分析
に基づいて、I形物質の1試料の純度は99.2%である。合計HPLC不純物
は、HPLCアッセイの説明で記載する方法で測定する。個々の不純物につき1
.0の相対応答因子(relative response factor)が予想される場合に0.20面積
%値が得られる。
I形の粉体X-線回折(XRD)パターンを図1に示す。回折プロフィールの狭
角ピークおよび低いバックグラウンドは、物質が非常に高い結晶性であることを
示している。該回折パターンは、I形を常温、75%相対湿度にて5日間暴露し
た後にも変化しない。
I形の水分吸収プロフィールを図2に示す。試料は、雰囲気相対湿度にて中程
度に吸湿性であり:吸水性は1%から70%RHである。80%RHを超えたと
ころで、水分吸収性は顕著に増加する。試料中の水分は、90-92%RHで約
7.5-7.7%w/wのプラトーに達する。RHが低下するに従い、水分含量も
80%RHで約4.9%まで低下する。該水分含量は中間RHで徐々に低下し、
10%RHでは約4.3%となる。脱着プロフィールの安定な水分プラトーは、
理想一水和物の水分含量-4.16%に近い。
図2の詳細な説明 図2は制御雰囲気中の重量測定によるI形キノロンの水分
吸収を示す。縦座標は、最低質量測定値に対する質量変化を示す。横座標は相対
湿度である。○は相対湿度の一連上昇後に記録した点を示し、□は相対湿度を低
下させた後に記録した。プロット中央部の水平線は、キノロンの仮定一水和物の
水分含量に相当する。
II 形
X-線分析用のII形を得るために、本発明者らはI形の試料をTGA炉中、5
℃/分で150℃まで加熱した。得られた物質は図3に示す独特のXRDパター
ンを有する中程度の結晶性である。加熱物質のXRDプロフィールは、I形に帰
せられるほぼ17.4および10の2θ角に小さな特徴を有するII形特徴よりな
る。
III形
III形物質は、キノロンを熱メタノールに溶解し、メタノールをより高い沸点
を有する非極性溶媒で徐々に蒸留的に置換することによって調製し得る。キノロ
ンは、メタノール置換溶媒中に微量しか溶解しない。この目的に使用し得る種々
の溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ヘプタン他である。1の例にお
いて、III形は、I形2.7gを熱メタノール50ml中に溶解し、ガラス漏斗を
通す濾過で清澄化することによって得られる。透明な黄色溶液を蒸留してメタノ
ール約25mlを留去し、メタノールを連続して留去する間に酢酸エチル50m
lを徐々に添加する。別の溶媒40mlを留去した後に、さらに酢酸エチル50
mlを添加し、器内温度が74℃に上昇するまで蒸留を続ける。灰色がかった白
色沈殿をガラス漏斗上で濾別し、酢酸エチル2×25mlで洗浄し、真空オーブ
ン中で乾燥してIII形2.0gを得る。
III形結晶は前記のごとく酢酸エチルから成長させ、灰色がかった白色粉末に
見える。標準として用いたI形物質に対して、この物質についてHPLC濃度は
98.2%である。TGAは、III形試料中に(KFにより約0.1%水を含有する
)揮発性物質がほとんど存在しないことを示し;融点までに0.3%未満の質量損
失が認められたことを示した(データは示さず)。
顕微鏡評価により、一般的に20μm未満の小サイズの結晶性ラスおよび細長
い板状物が明らかにされた。より大きな集合体も存在する。完全な平行消光が直
交偏光中で認められる。3の主な屈折率(nα=1.527、nβ=1.70およ
びnγ=1.8)が測定される。したがって、複屈折 0.27。
XRDおよびDSCは、この試料の特有の特性を確認し、測定し得る量の他の
相が存在しないことを明確にした。図4に示す粉体パターンは、試料の非常に高
い結晶性を反映している。IおよびII形に特徴的なピークは存在しない。III形
のDSCプロフィールを図5に示す。装置的な相異および試料純度の変化により
、融解開始は190-202℃の範囲内の値にシフトし得る。化合物がかなり純
粋である場合、該範囲は195-201℃の間にあると予想される。一般的にい
うと、不純物は融点を通常の融解開始範囲未満に低下させる。III形のこの特定
の試料の融解は、198.7℃の開始温度で観察された。融解のエンタルピーは
約150J/gである。より低い温度での転移が存在しないことにより、I形お
よびII形および他の可能な形態の不存在が確認された。
図5の詳細な説明。キノロンIII形のDSCプロフィール。縦座標はワット/
グラム単位の熱流で、横座標は℃単位の温度である。加熱速度は5℃/分である
。
III形はすべての相対湿度でI形よりもより少ない水分しか吸収しない。III形
の平衡水分吸収プロフィールを図6に示す。吸収と脱着プロフィールの間には非
常に僅かなヒステリシスが存在し、試料は再結晶化物および/または水和物形成
の事実を全く示さなかった。
図6の詳細な説明。図6は、制御雰囲気中の重量測定によるキノロンIII形の
水分吸収を示す。縦座標は最小質量測定値に対する質量変化を示す。横座標は相
対湿度である。○は相対湿度を一連上昇させた後に記録した点を示し、□は該相
対湿度を低下させた後に記録した。プロット中央部の水平線は、キノロンの仮定
一水和物の水分含量に相当する。
メタノール溶媒和物
この試料のユニークXRD粉体パターンを図7の最上枠中に示す。このメタノ
ール溶媒和物を、真空下にて70℃に5時間加熱することによって脱溶媒和させ
てI形を得ることができる。図7中のY座標は強度で、X座標は2-θ角であ
る。
種々の形態の転移
サーモミクロスコピーおよびDSCにより、最終的に融解する前までの、I形
から出発して2のさらなる固体相転移を経過する一連の熱変態が明らかにされた
。I形のDSCプロフィールを図8に示す。140-150℃および165-18
0℃に出現した吸熱反応および発熱反応は、組合わさった融解/再結晶化事象を
表している。200℃の最終融解吸熱反応に続き、融解のブロードな発熱分解が
起こる。これらの帰属決定は、5および10℃/分の加熱速度でのI形のサーモ
ミクロスコピー観察によって確認される。結晶形命名は、一連のサーモミクロス
コピー変態に基づく。143−151℃の融解/再結晶化は、I形→II形変態を
示し、166-177℃の第2の融解/再結晶化はII形→III形変態を示す。III
形融解開始温度(融点)は190-202℃の間で、少し純粋な試料の融点は19
5-202℃で、より純粋な試料の融点は195-201℃で、よりさらに純粋な
試料の融点は198-201℃である。サーモミクロスコピー観察により、II形
およびIII形の両方がI形融解物中に存在する種子結晶から成長するようである
という事実が得られた。II形の成長は、III形の成長に比較して比較的迅速であ
る。
図8の詳細な説明。図8はキノロンI形のDSCプロフィールを示す。縦座標
はW/g単位の熱流であり、横座標は℃単位の温度である。加熱速度は5℃/分
である。(a.)標準的なDSC容器中に封入した試料。(b.)密閉DSC容器中
に封入した試料。
ITCにより、40℃くらいの低温でI形がIII形に変換することが明らかと
なった。本発明者らの60℃で得た初期のITC結果は、この温度における変換
速度が水に感受性であることを示していた。したがって、本発明者らは、51%
および75%RHで平衡化した後の試料の変換を実験した。これらの試料の熱流
プロフィールを図9(a)に示す。I形からIII形への変換速度は、これらの2の
試料の間で顕著に相異し;該速度は、51%RHでは75%RHでよりも約2桁
遅い。XRDおよびDSCの両方により、高湿試料がIII形に完全に変換したこ
とが確認された。反応産物のHPLC分析により、60℃ ITCプロフィール
が、化学
分解からの無視し得る帰与を含むことが確認された。
ミクロカロリメトリー変態のエンタルピー変化は、試料が変換するのに要する
時間にわたる熱流を積分することによって得られる。60℃で得られた3の結果
の平均は18.3J/gまたは7.4kJ/モルである。図9(a)に示す低湿試料は
80時間後に約10J/gの積分エンタルピー変化を有していた。XRD結果に
より、該試料がI形およびIII形の混合物であることが確認された。
40℃データを図9(b)に示す。初期の発熱反応特性は、薬剤による水分吸収
によるもののようで、ミクロヒグロスタットならびに少量のNaClの結晶化か
らの両方の水分の蒸発熱によって低下する。約6時間目に始まり、約50時間目
に終了するブロードな発熱反応は、I形からIII形への転移熱と生成物結晶から
の水の脱着熱との合計である。回収III形結晶の水分含量は0.61%であり、I
形試料の初期水分含量は0.54%であるため、水分取り込みおよび放散による全体
プロフィール中の熱交換はほとんど存在しない。かくして、本発明者らは図
9(b)に示す全体プロフィールを積分し、結晶形変換の熱を概算する。本発明ら
の結果は、>20.4J/gまたは>8.2kJ/モルとして表され;この不均衡
は発明者が平衡化した試料としての初期熱流プロフィールを積分できないこと、
ならびにII形およびIII形種子結晶の初期濃度の知識が不足していたことの結果
である。
以下の図9の詳細な説明。プロット「(a)」は、X-座標の時間の関数としての
μW/g単位のy座標の熱流を示す。軌跡(a)は、試料を試料容器に密封し、そ
れをカロリメーター中にて60℃条件に暴露する前に75%相対湿度に平衡化し
たI形試料から記録される。軌跡(b)は、75%相対湿度の「ミクロヒグロスタ
ット」をデータを記録する直前に試料容器中に設置するが、60℃のI形試料に
つき記録される。実験の間に水がミクロヒグロスタットからI形結晶に運搬され
なければならないことにより、変換は軌跡(a)のものから遅れる。軌跡(c)は、
試料容器中に密閉する前に試料を53%相対湿度で平衡化させるが、60℃のI
形試料につき記録する。
プロット「(b)」は、x座標上の時間の関数としてy軸のμW/g単位の熱流
を示す。この軌跡は、データを記録する直前に試料容器に75%相対湿度ミクロ
ヒグロスタットを設置することにより生じる。試料はカロリメーター中で40℃
に保持し;熱流はI形物質がIII形へ変換する結果生じる。
興味深いことには、本発明者らは、ミクロカロリメーター中のI形変態の産物
としてのII形を全く観察しなかった。明らかに、吸収水分の存在が、II形の成長
を促進することなく、III形への変換の直接低温度経路を供した。乾燥条件下で
は、40℃/50%RHにて7日を超えた後、または、60℃にて5日後でさえ
、I形はIII形に変換しなかった。
水分が相の変換に影響したことは、図10中の3のDSCスキャンの結果によ
っても説明される。スキャン(a)は、53%RHで平衡化し、穿孔DSC容器中
に密封した試料を示す。このスキャンは、図8に示したものに匹敵する一連の転
移を示している。それに対して、スキャン(b)および(c)は、DSCスキャンを
通して水分が保持される密封DSC容器中に封入した試料を示している。スキャ
ン(b)において、薬剤を53%RHで平衡化した場合、該試料は140-150
℃範囲で融解し再結晶化し、200℃でIII形として最終的に融解する。165-
175℃の第2変態範囲で非常に小さな変化が認められる。スキャン(a)により
、II形からIII形への変換が発熱反応であることが明らかとなったため、本発明
者らは、140-150℃の変態が、恐らくは、I形からIII形への直接変態であ
ると結論した。薬剤を75%RHで平衡化させた場合[スキャン(c)]、唯一のII
I形融解前の目に見られる変態は約130℃の小さい発熱反応である。本発明者
らは、この試料中には十分量の水分が存在して、I形の前-融解領域においてI
形→III形の急速な変換が生じると予想する。DSC軌跡により、この試料中に
いずれかのII形が形成したという事実は全く得られなかった。
図10の詳細な説明。図10はキノロンI形のDSCプロフィールを示してい
る。縦座標はW/g単位の熱流で、横座標は℃単位の温度である。加熱速度は5
℃/分である。(a.)53%RHで平衡化し、標準的なDSC容器中に封入した
試料。(b.)53%RHで平衡化し、密閉DSCフタ中に封入した試料。(c.)
75%RHで平衡化し、密閉DSC容器中に封入した試料。該プロフィールは、
比較するために、縦座標に沿ってずらせた。
I形およびIII形の溶解性は、室温、酢酸エチル中で測定し;各形態の溶解性
データを同時に収集し、各形態の溶解性が同一条件下で測定されることを保証し
た。K.Ragavanら,J.Pharm.Biomed.Anal.Vol.12(6),pp.777-785(1994)に
よって記載されているごとく、酢酸エチルを非プロトン性溶媒として用いて、キ
ノロンのかなり低い平衡溶解性を得;酢酸エチルを用いて、抗侵害痛覚薬剤の多
形の自由エネルギー差が評価されている。結果を以下の表Sに示す。表S中の溶
解性が希釈溶液限界と一致するとの仮定のもとに、本発明者らは以下の表現を用
いて、I形およびIII形の間のギブズ自由エネルギーの差を算出し得る:
[式中、「sx」は十分に希釈した溶液中のx形の溶解性で、Rはガス定数で
、Tは絶対温度である]
表1のデータを用いて、本発明者らは、III形のギブズ自由エネルギーがI形の
ものよりも7.7±0.2kJ/モル低いことを見い出す。
溶解性における差は極めて重要であり、より高いエネルギーのI形はより安定
なIII形よりも20倍を超えてより溶解性が高い。この差および吸湿性で記録さ
れた差は、2の形態が極めて異なる特性を有していることを示している。この点
におけるIII形の特定の利点は、長期保存の予想物理学的安定性である。I形は
、それが、恐らく、懸濁液のケーキングまたは固体投与形からの低い解離を引き
起こして、放置する間に形態が変化し得るという独特の不都合を有する。これら
の差は、抗生物質薬剤としてIII形を用いる明白な利点を示している。
以下の実施例は説明目的であって、いかなる場合においても本発明を限定する
ものではない。
実施例
I形の調製
キノロン(205g)を還流下にてメタノール4ml中に溶解し、ガラス漏斗
を通して濾過することによって清澄化した。濾液を1時間にわたって放置して室
温まで冷却し、ついで1時間0℃に冷却した。形成した固形物をガラス濾過で採
取し、一定の重量になるまで50℃にて真空オーブン中で乾燥し、結晶性のI形
94gを得た。この物質をよく特徴付けた。
III形の調製
III形は、I形2.7gを熱メタノール50ml中に溶解し、ガラス漏斗を通し
て濾過して清澄化することによって得た。透明黄色溶液を蒸留してメタノール約
25mlを除去し、メタノールを連続して蒸留する間に、酢酸エチル50mlを
徐々に添加した。別の溶媒40mlを留去した後に、別の酢酸エチル50mlを
添加し、器内温度が74℃に上昇するまで蒸留を続けた。灰色がかった沈殿をガ
ラス漏斗で濾別し、酢酸エチル2×25mlで洗浄し、真空オーブン中で乾燥し
てIII形2.0gを得た。
メタノール溶媒和物、MS形の調製
メタノール溶媒和物は、キノロンI形200mgをメタノール約8ml中に溶
解することによって調製した。その懸濁液をガラスバイアル中に密封し、スチー
ム浴で加熱して完全に溶解させた。その試料を放置して一晩冷却し、翌朝に真空
濾過することによって結晶を採取した。メタノール蒸気不存在下の自然脱水和を
防止するため、収集漏斗への流入口を、メタノール/ブタノールの50/50
v/v混合物を含有する泡(bubbler)フラスコを通して空気を引き入れる管に接
続した。ブタノールをこの混合物に添加し、メタノール蒸気の活性を低下させた
。約100mgの結晶を採取した。
キノロンI、II、IIIおよびMS形のXRDパターンを以下の表I、II、IIIお
よびIVに掲載する。これらの表について、*とは、アルミニウム試料皿の回折ピ
ークで、#とは17.40°の最強ピークの強度を100とした場合に対する各
ピークの強度を比率化することによって測定したそれらの相対強度を示す。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B
Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES
,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,
KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
TJ,TM,TT,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 チャオ,ロバート・シー−リェン
アメリカ合衆国49002ミシガン州ポーテイ
ジ、モンタギュー・ドライブ175番
(72)発明者 アルドリッチ,デイル・エス
アメリカ合衆国49083ミシガン州リッチラ
ンド、イースト・ディ・アベニュー11133
番
(72)発明者 ジェガナサン,アズウォーサミー
アメリカ合衆国49002ミシガン州ポーテイ
ジ、オールド・ミッション・ストリート
5643番
(72)発明者 ユ,シュアンチャン
アメリカ合衆国48105ミシガン州アナーバ
ー、ビール・アベニュー1647番 アパート
メント・ナンバー5
(72)発明者 バーグレン,マイケル・エス
アメリカ合衆国49002ミシガン州ポーテイ
ジ、エバーグリーン5828番