JPH1068069A - 金属ホウ化物膜の形成方法 - Google Patents
金属ホウ化物膜の形成方法Info
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- JPH1068069A JPH1068069A JP24433396A JP24433396A JPH1068069A JP H1068069 A JPH1068069 A JP H1068069A JP 24433396 A JP24433396 A JP 24433396A JP 24433396 A JP24433396 A JP 24433396A JP H1068069 A JPH1068069 A JP H1068069A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 膜の結晶構造の制御が容易であり、硬度、靱
性および化学的安定性に優れた金属ホウ化物膜を基体表
面に形成することができ、しかも蒸発源配置の自由度が
高い、金属ホウ化物膜の形成方法を提供する。 【解決手段】 アーク放電によって陰極を加熱して陰極
物質14を蒸発させるアーク式蒸発源10であって、元
素周期表の4A、5Aまたは6A族に属する金属のホウ
化物から成る陰極12を有するものを用いる。そして、
真空容器2内に不活性ガス18を導入すると共に基体4
にバイアス電源8から負のバイアス電圧を印加しなが
ら、アーク式蒸発源10から陰極物質14を蒸発させて
それを基体4に蒸着させることによって、当該基体4の
表面に前記金属のホウ化物から成る膜を形成する。
性および化学的安定性に優れた金属ホウ化物膜を基体表
面に形成することができ、しかも蒸発源配置の自由度が
高い、金属ホウ化物膜の形成方法を提供する。 【解決手段】 アーク放電によって陰極を加熱して陰極
物質14を蒸発させるアーク式蒸発源10であって、元
素周期表の4A、5Aまたは6A族に属する金属のホウ
化物から成る陰極12を有するものを用いる。そして、
真空容器2内に不活性ガス18を導入すると共に基体4
にバイアス電源8から負のバイアス電圧を印加しなが
ら、アーク式蒸発源10から陰極物質14を蒸発させて
それを基体4に蒸着させることによって、当該基体4の
表面に前記金属のホウ化物から成る膜を形成する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば工具、金
型等の基体の耐摩耗性、耐食性等を向上させるために、
基体の表面に、元素周期表の4A、5Aまたは6A族に
属する金属のホウ化物から成る膜を形成する方法に関す
る。
型等の基体の耐摩耗性、耐食性等を向上させるために、
基体の表面に、元素周期表の4A、5Aまたは6A族に
属する金属のホウ化物から成る膜を形成する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】元素周期表の4A、5Aまたは6A族に
属する金属のホウ化物(これをこの明細書では、単に金
属ホウ化物と呼ぶ場合がある)は、高硬度で化学的安定
性に優れていることから、それを基体表面に薄膜にして
被覆することによって、当該基体の耐摩耗性および耐食
性を向上させる試みが従来から成されている。
属する金属のホウ化物(これをこの明細書では、単に金
属ホウ化物と呼ぶ場合がある)は、高硬度で化学的安定
性に優れていることから、それを基体表面に薄膜にして
被覆することによって、当該基体の耐摩耗性および耐食
性を向上させる試みが従来から成されている。
【0003】例えば、特開昭63−26347号公報に
は、4A、5A、6A族金属またはその合金とホウ素を
原料とするイオンプレーティング法によって、上記金属
のホウ化物膜を基体表面に形成する方法が提案されてい
る。
は、4A、5A、6A族金属またはその合金とホウ素を
原料とするイオンプレーティング法によって、上記金属
のホウ化物膜を基体表面に形成する方法が提案されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記方法は、前記金属
とホウ素とを電子ビームによって加熱溶融し蒸発させ
て、基体表面で金属ホウ化物膜を合成する方法である
が、膜の硬度や化学的安定性を良好なものにするために
は、形成される膜中の金属とホウ素との組成比を厳密に
制御する必要がある。しかし、金属とホウ素とは互いに
融点が大きく異なるため、両物質に加えられる熱を別個
に制御しなければ、それぞれの物質における所望の蒸発
速度が得られない。特に前記金属はいわゆる高融点金属
と呼ばれているけれども比較的融点が低いのに対して、
ホウ素は非常に高融点物質であり、従って蒸発速度の制
御によって膜の組成比を厳密に調整するためには、蒸発
源の複雑な制御が要求され、非常に難しい。
とホウ素とを電子ビームによって加熱溶融し蒸発させ
て、基体表面で金属ホウ化物膜を合成する方法である
が、膜の硬度や化学的安定性を良好なものにするために
は、形成される膜中の金属とホウ素との組成比を厳密に
制御する必要がある。しかし、金属とホウ素とは互いに
融点が大きく異なるため、両物質に加えられる熱を別個
に制御しなければ、それぞれの物質における所望の蒸発
速度が得られない。特に前記金属はいわゆる高融点金属
と呼ばれているけれども比較的融点が低いのに対して、
ホウ素は非常に高融点物質であり、従って蒸発速度の制
御によって膜の組成比を厳密に調整するためには、蒸発
源の複雑な制御が要求され、非常に難しい。
【0005】また、上記方法で用いる電子ビーム式蒸発
源では、原料物質を電子ビームによって溶融させて蒸発
させるので、蒸発源から溶融した原料物質がこぼれ出さ
ないように、蒸発源は基体の下方にしか設置することが
できない。従って、立体的な基体の側面に均一に成膜す
るには、基体を保持するホルダに複雑な動きをさせる必
要が生じ、生産性の低下や装置に要するコストが高くな
る等の欠点が生じる。
源では、原料物質を電子ビームによって溶融させて蒸発
させるので、蒸発源から溶融した原料物質がこぼれ出さ
ないように、蒸発源は基体の下方にしか設置することが
できない。従って、立体的な基体の側面に均一に成膜す
るには、基体を保持するホルダに複雑な動きをさせる必
要が生じ、生産性の低下や装置に要するコストが高くな
る等の欠点が生じる。
【0006】更に、前記金属のホウ化物膜は、硬度は高
いけれども脆い(靱性が低い)といった欠点を有してい
る。このため、膜が被覆された基体を実際に使用してい
る際に、膜が欠けたり割れたりして所望の特性を得るこ
とができない場合が多い。これを解決するためには、形
成される膜の結晶構造をうまく制御する必要があるが、
そのためには上述したように膜の組成比の厳密な調整を
要し、これには蒸発源の複雑な制御が要求されるので、
現状では困難である。
いけれども脆い(靱性が低い)といった欠点を有してい
る。このため、膜が被覆された基体を実際に使用してい
る際に、膜が欠けたり割れたりして所望の特性を得るこ
とができない場合が多い。これを解決するためには、形
成される膜の結晶構造をうまく制御する必要があるが、
そのためには上述したように膜の組成比の厳密な調整を
要し、これには蒸発源の複雑な制御が要求されるので、
現状では困難である。
【0007】そこでこの発明は、膜の結晶構造の制御が
容易であり、硬度、靱性および化学的安定性に優れた金
属ホウ化物膜を基体表面に形成することができ、しかも
蒸発源配置の自由度が高い、金属ホウ化物膜の形成方法
を提供することを主たる目的とする。
容易であり、硬度、靱性および化学的安定性に優れた金
属ホウ化物膜を基体表面に形成することができ、しかも
蒸発源配置の自由度が高い、金属ホウ化物膜の形成方法
を提供することを主たる目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の金属ホウ化物
膜の形成方法は、アーク放電によって陰極を加熱して陰
極物質を蒸発させるアーク式蒸発源であって元素周期表
の4A、5Aまたは6A族に属する金属のホウ化物から
成る陰極を有するものを用いて、真空容器内に不活性ガ
スを導入すると共に基体に負のバイアス電圧を印加しな
がら、前記アーク式蒸発源から陰極物質を蒸発させてそ
れを基体に蒸着させることによって、当該基体の表面に
前記金属のホウ化物から成る膜を形成することを特徴と
する。
膜の形成方法は、アーク放電によって陰極を加熱して陰
極物質を蒸発させるアーク式蒸発源であって元素周期表
の4A、5Aまたは6A族に属する金属のホウ化物から
成る陰極を有するものを用いて、真空容器内に不活性ガ
スを導入すると共に基体に負のバイアス電圧を印加しな
がら、前記アーク式蒸発源から陰極物質を蒸発させてそ
れを基体に蒸着させることによって、当該基体の表面に
前記金属のホウ化物から成る膜を形成することを特徴と
する。
【0009】金属ホウ化物は昇華性物質であり、このよ
うなものを電子ビーム式蒸発源において電子ビームで加
熱すると、スプラッシュ(パチパチはじけること)が生
じて安定な蒸発速度が得られない。これに対して、アー
ク式蒸発源では、アークによって陰極表面に局所的に集
中してエネルギーを供給することができるので、金属ホ
ウ化物から成る陰極をスプラッシュを生じさせることな
く安定して蒸発させることができる。
うなものを電子ビーム式蒸発源において電子ビームで加
熱すると、スプラッシュ(パチパチはじけること)が生
じて安定な蒸発速度が得られない。これに対して、アー
ク式蒸発源では、アークによって陰極表面に局所的に集
中してエネルギーを供給することができるので、金属ホ
ウ化物から成る陰極をスプラッシュを生じさせることな
く安定して蒸発させることができる。
【0010】この発明では、アーク式蒸発源から金属ホ
ウ化物そのものを蒸発させてそれを基体表面に蒸着させ
て金属ホウ化物膜を形成することができるので、金属と
ホウ素とを別々に蒸発させる場合と違って、組成比の制
御を必要としない。金属ホウ化物そのものの蒸発速度
を、アーク電流によって容易に制御することができ、従
来例のように融点の異なる複数の物質を同時に溶解させ
るといった複雑な工程を要しない。従って、組成比が良
好で化学的安定性に優れた金属ホウ化物膜を、簡単な制
御で容易に形成することができる。
ウ化物そのものを蒸発させてそれを基体表面に蒸着させ
て金属ホウ化物膜を形成することができるので、金属と
ホウ素とを別々に蒸発させる場合と違って、組成比の制
御を必要としない。金属ホウ化物そのものの蒸発速度
を、アーク電流によって容易に制御することができ、従
来例のように融点の異なる複数の物質を同時に溶解させ
るといった複雑な工程を要しない。従って、組成比が良
好で化学的安定性に優れた金属ホウ化物膜を、簡単な制
御で容易に形成することができる。
【0011】また、上記のようにして形成される膜の結
晶構造は、真空容器内に導入する不活性ガスのガス圧
や、基体に印加するバイアス電圧によって、容易に制御
することができる。これを詳述すると、真空容器内に導
入されたガスが、アーク式蒸発源において生じさせたア
ーク放電によってプラズマ化し、そのプラズマ中を蒸発
物質が通過することで、当該蒸発物質が励起あるいはイ
オン化される。その際、ガス圧を変化させると、前記プ
ラズマの状態や密度が変化し、その結果蒸発物質の励起
状態やイオン化状態が変化する。これらが変化すると、
膜の結晶構造が変化する。従って、不活性ガスのガス圧
によって、形成される膜の結晶構造を制御することがで
きる。更に、基体に印加するバイアス電圧は、前記プラ
ズマによってイオン化された蒸発物質が基体に飛来し付
着する際の運動エネルギーを与える。この運動エネルギ
ーの大小によって、膜の結晶構造が変化する。従って、
バイアス電圧によって、当該運動エネルギーを変化させ
ることで、形成される膜の結晶構造を制御することがで
きる。更に、バイアス電圧は、基体上の膜の密着性を制
御する際にも有効に作用する。
晶構造は、真空容器内に導入する不活性ガスのガス圧
や、基体に印加するバイアス電圧によって、容易に制御
することができる。これを詳述すると、真空容器内に導
入されたガスが、アーク式蒸発源において生じさせたア
ーク放電によってプラズマ化し、そのプラズマ中を蒸発
物質が通過することで、当該蒸発物質が励起あるいはイ
オン化される。その際、ガス圧を変化させると、前記プ
ラズマの状態や密度が変化し、その結果蒸発物質の励起
状態やイオン化状態が変化する。これらが変化すると、
膜の結晶構造が変化する。従って、不活性ガスのガス圧
によって、形成される膜の結晶構造を制御することがで
きる。更に、基体に印加するバイアス電圧は、前記プラ
ズマによってイオン化された蒸発物質が基体に飛来し付
着する際の運動エネルギーを与える。この運動エネルギ
ーの大小によって、膜の結晶構造が変化する。従って、
バイアス電圧によって、当該運動エネルギーを変化させ
ることで、形成される膜の結晶構造を制御することがで
きる。更に、バイアス電圧は、基体上の膜の密着性を制
御する際にも有効に作用する。
【0012】このような結晶構造の制御は、次のような
作用効果を奏する。即ち、前述したように、金属ホウ化
物膜は高硬度ながら脆いという欠点があるが、結晶化度
を下げてアモルファス状の膜にすると、硬度は低下する
けれども脆さは改善される(即ち靱性が向上する)。一
方、結晶化度を高めた膜は、脆さは改善されないけれど
も高硬度が得られる傾向にある。このような特性を生か
して、膜の結晶化度を制御したり、アモルファス状と結
晶化度が高いものとを積層したりすることで、硬度と靱
性とを両立させることができる。
作用効果を奏する。即ち、前述したように、金属ホウ化
物膜は高硬度ながら脆いという欠点があるが、結晶化度
を下げてアモルファス状の膜にすると、硬度は低下する
けれども脆さは改善される(即ち靱性が向上する)。一
方、結晶化度を高めた膜は、脆さは改善されないけれど
も高硬度が得られる傾向にある。このような特性を生か
して、膜の結晶化度を制御したり、アモルファス状と結
晶化度が高いものとを積層したりすることで、硬度と靱
性とを両立させることができる。
【0013】更に、金属ホウ化物は昇華性物質であるけ
れども、アーク式蒸発源では、金属ホウ化物から成る陰
極をアーク放電によって気化させるため、蒸発原料が蒸
発源からこぼれ落ちることがない。そのため、蒸発源配
置の自由度が非常に高く、基体の下方のみでなく側方お
よび上方にも自由に配置することができる。従って、立
体的な形状の基体に対する成膜にも簡単に対応すること
ができる。
れども、アーク式蒸発源では、金属ホウ化物から成る陰
極をアーク放電によって気化させるため、蒸発原料が蒸
発源からこぼれ落ちることがない。そのため、蒸発源配
置の自由度が非常に高く、基体の下方のみでなく側方お
よび上方にも自由に配置することができる。従って、立
体的な形状の基体に対する成膜にも簡単に対応すること
ができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、この発明に係る金属ホウ
化物膜の形成方法を実施する装置の一例を示す断面図で
ある。この装置は、図示しない真空排気装置によって真
空排気される真空容器2と、この真空容器2内に設けら
れていて基体4を保持するホルダ6と、このホルダ6上
の基体4に向くように真空容器2の壁面に取り付けられ
たアーク式蒸発源10とを備えている。更にこの例で
は、ホルダ6上の基体4にイオン24を照射するイオン
源22を備えている。
化物膜の形成方法を実施する装置の一例を示す断面図で
ある。この装置は、図示しない真空排気装置によって真
空排気される真空容器2と、この真空容器2内に設けら
れていて基体4を保持するホルダ6と、このホルダ6上
の基体4に向くように真空容器2の壁面に取り付けられ
たアーク式蒸発源10とを備えている。更にこの例で
は、ホルダ6上の基体4にイオン24を照射するイオン
源22を備えている。
【0015】ホルダ6およびそれに保持された基体4に
は、直流のバイアス電源8から、真空容器2の電位(こ
の例では接地電位)を基準にして、負のバイアス電圧が
印加される。7は絶縁物である。
は、直流のバイアス電源8から、真空容器2の電位(こ
の例では接地電位)を基準にして、負のバイアス電圧が
印加される。7は絶縁物である。
【0016】アーク式蒸発源10は、陰極12と陽極兼
用の真空容器2との間のアーク放電によって陰極12を
加熱して陰極物質14を蒸発させるものである。陰極1
2と真空容器2との間には、直流のアーク電源20か
ら、前者を負側にして、例えば数十V〜数百V程度のア
ーク放電電圧が印加される。15は絶縁物である。な
お、アーク起動用のトリガ電極等は図示を省略してい
る。
用の真空容器2との間のアーク放電によって陰極12を
加熱して陰極物質14を蒸発させるものである。陰極1
2と真空容器2との間には、直流のアーク電源20か
ら、前者を負側にして、例えば数十V〜数百V程度のア
ーク放電電圧が印加される。15は絶縁物である。な
お、アーク起動用のトリガ電極等は図示を省略してい
る。
【0017】上記陰極12は、元素周期表の4A族金属
(Ti、Zr、Hf)、5A族金属(V、Nb、Ta)
または6A族金属(Cr、Mo、W)のホウ化物、例え
ばZrBx 、TiBx 、CrBx 、TaBx 等から成
る。よく用いられる物は、x=1〜2である。
(Ti、Zr、Hf)、5A族金属(V、Nb、Ta)
または6A族金属(Cr、Mo、W)のホウ化物、例え
ばZrBx 、TiBx 、CrBx 、TaBx 等から成
る。よく用いられる物は、x=1〜2である。
【0018】真空容器2内には、その壁面に設けたガス
導入口から不活性ガス18を導入しても良いけれども、
この例では、ガスライン16からアーク式蒸発源10の
陰極12の近傍に不活性ガス18を供給することによっ
て、真空容器2内に不活性ガス18を導入するようにし
ている。但し両者を併用しても良い。不活性ガス18
は、例えば、Heガス、Neガス、Arガス、Krガ
ス、Xeガス、Rnガスまたはこれらの混合ガスであ
る。
導入口から不活性ガス18を導入しても良いけれども、
この例では、ガスライン16からアーク式蒸発源10の
陰極12の近傍に不活性ガス18を供給することによっ
て、真空容器2内に不活性ガス18を導入するようにし
ている。但し両者を併用しても良い。不活性ガス18
は、例えば、Heガス、Neガス、Arガス、Krガ
ス、Xeガス、Rnガスまたはこれらの混合ガスであ
る。
【0019】このような装置を用いて、真空容器2内を
例えば10-6Torr程度以上の高真空に真空排気した
後、真空容器2内に不活性ガス18を導入すると共に、
基体4に負のバイアス電圧を印加しながら、アーク式蒸
発源10においてアーク放電を行わせる。このアークに
よって陰極12が局所的に加熱されて陰極12から陰極
物質14が蒸発させられる。このとき、陰極12の近傍
では、上記アーク放電によって、不活性ガス18がプラ
ズマ化されており、そのプラズマ中を陰極物質14が通
過することで、当該陰極物質14がかなりの割合で励起
あるいはイオン化される。従って、前述した従来技術の
ように、わざわざ別の放電機構を真空容器内に設ける必
要がない。
例えば10-6Torr程度以上の高真空に真空排気した
後、真空容器2内に不活性ガス18を導入すると共に、
基体4に負のバイアス電圧を印加しながら、アーク式蒸
発源10においてアーク放電を行わせる。このアークに
よって陰極12が局所的に加熱されて陰極12から陰極
物質14が蒸発させられる。このとき、陰極12の近傍
では、上記アーク放電によって、不活性ガス18がプラ
ズマ化されており、そのプラズマ中を陰極物質14が通
過することで、当該陰極物質14がかなりの割合で励起
あるいはイオン化される。従って、前述した従来技術の
ように、わざわざ別の放電機構を真空容器内に設ける必
要がない。
【0020】このようにして励起あるいはイオン化され
た陰極物質14は、基体4に印加された負のバイアス電
圧によって基体4に向けて加速され、当該バイアス電圧
に応じた運動エネルギーで基体4に衝突して被着する。
それによって、基体4の表面に、陰極12と同じ金属ホ
ウ化物、即ち元素周期表の4A、5Aまたは6A族に属
する金属のホウ化物から成る膜(金属ホウ化物膜)が形
成される。
た陰極物質14は、基体4に印加された負のバイアス電
圧によって基体4に向けて加速され、当該バイアス電圧
に応じた運動エネルギーで基体4に衝突して被着する。
それによって、基体4の表面に、陰極12と同じ金属ホ
ウ化物、即ち元素周期表の4A、5Aまたは6A族に属
する金属のホウ化物から成る膜(金属ホウ化物膜)が形
成される。
【0021】その場合、上記例のように不活性ガス18
をガスライン16によって陰極12の近傍に供給する
と、陰極12の近傍のプラズマ密度を高めることがで
き、それによって、陰極物質14が気化する際に発生し
易い粗大粒子(いわゆるドロップレット)の分解が促進
される等の作用が生じて、粗大粒子が基体4に被着する
のを抑制することができるので、表面粗度の良好な(即
ち表面の平滑性の高い)膜を形成することができる。不
活性ガス18は、ガスライン16から陰極12の前面
(基体4に向かう面)に向けて吹き付けても良い。その
ようにすれば、アーク放電の陰極点が陰極表面に多数生
じて陰極12の表面近傍でアーク分岐が生じる等の作用
によって、陰極表面での粗大な溶融部の形成が抑制さ
れ、粗大粒子の飛散が一層抑制される。
をガスライン16によって陰極12の近傍に供給する
と、陰極12の近傍のプラズマ密度を高めることがで
き、それによって、陰極物質14が気化する際に発生し
易い粗大粒子(いわゆるドロップレット)の分解が促進
される等の作用が生じて、粗大粒子が基体4に被着する
のを抑制することができるので、表面粗度の良好な(即
ち表面の平滑性の高い)膜を形成することができる。不
活性ガス18は、ガスライン16から陰極12の前面
(基体4に向かう面)に向けて吹き付けても良い。その
ようにすれば、アーク放電の陰極点が陰極表面に多数生
じて陰極12の表面近傍でアーク分岐が生じる等の作用
によって、陰極表面での粗大な溶融部の形成が抑制さ
れ、粗大粒子の飛散が一層抑制される。
【0022】膜形成時に基体4に印加するバイアス電圧
は、−10V〜−5kVの範囲内にするのが好ましい。
バイアス電圧が−10Vより小さい(絶対値が小さいこ
と。以下同じ)と、イオン化された陰極物質14を基体
4に向けて加速する加速エネルギーが小さ過ぎて、基体
4に対する膜の密着性が劣化する。バイアス電圧が−5
kVより大きい(絶対値が大きいこと。以下同じ)と、
イオン化された陰極物質14の加速エネルギーが大きく
なり過ぎて、基体4の損傷が過大になったり、膜の表面
がスパッタリングによって荒れて平滑性(表面粗度)が
悪化する。
は、−10V〜−5kVの範囲内にするのが好ましい。
バイアス電圧が−10Vより小さい(絶対値が小さいこ
と。以下同じ)と、イオン化された陰極物質14を基体
4に向けて加速する加速エネルギーが小さ過ぎて、基体
4に対する膜の密着性が劣化する。バイアス電圧が−5
kVより大きい(絶対値が大きいこと。以下同じ)と、
イオン化された陰極物質14の加速エネルギーが大きく
なり過ぎて、基体4の損傷が過大になったり、膜の表面
がスパッタリングによって荒れて平滑性(表面粗度)が
悪化する。
【0023】また、このバイアス電圧によって、基体4
への膜の密着性および膜の結晶構造を制御することがで
きる。即ち、バイアス電圧が大きければ、イオン化され
た陰極物質14に与えられる加速エネルギーが大きくな
るので、基体4への膜の密着性は向上するけれども、膜
の結晶化度はバイアス電圧が小さい方が向上し、その結
果膜の硬度も高いものとなる。これは、イオン化された
陰極物質14に与えられる加速エネルギーが小さい方
が、膜に与えるダメージが小さくなって結晶化度が良く
なるからである。
への膜の密着性および膜の結晶構造を制御することがで
きる。即ち、バイアス電圧が大きければ、イオン化され
た陰極物質14に与えられる加速エネルギーが大きくな
るので、基体4への膜の密着性は向上するけれども、膜
の結晶化度はバイアス電圧が小さい方が向上し、その結
果膜の硬度も高いものとなる。これは、イオン化された
陰極物質14に与えられる加速エネルギーが小さい方
が、膜に与えるダメージが小さくなって結晶化度が良く
なるからである。
【0024】従って例えば、基体4に印加するバイアス
電圧の大きさを、膜形成の途中で変化させることによっ
て、密着性および硬度に優れた金属ホウ化物膜を容易に
形成することができる。例えば、基体4と膜との界面付
近での膜形成時は、即ち膜形成の初期には、バイアス電
圧を大きくして成膜し、その後、連続的または断続的に
バイアス電圧を小さくすれば良い。これによって、密着
性に優れた膜が基体4との界面付近に形成され、その上
に硬度に優れた膜が形成される。その結果、密着性およ
び硬度に優れた膜が得られる。また、膜の表面粗度も向
上する。
電圧の大きさを、膜形成の途中で変化させることによっ
て、密着性および硬度に優れた金属ホウ化物膜を容易に
形成することができる。例えば、基体4と膜との界面付
近での膜形成時は、即ち膜形成の初期には、バイアス電
圧を大きくして成膜し、その後、連続的または断続的に
バイアス電圧を小さくすれば良い。これによって、密着
性に優れた膜が基体4との界面付近に形成され、その上
に硬度に優れた膜が形成される。その結果、密着性およ
び硬度に優れた膜が得られる。また、膜の表面粗度も向
上する。
【0025】膜形成時の真空容器2内の不活性ガス18
のガス圧は、1×10-6Torr〜1×10-1Torr
の範囲内にするのが好ましい。ガス圧が1×10-6To
rrより低い(即ち真空度が高い)と、アーク式蒸発源
10の陰極12におけるアーク放電が安定しないので、
安定した蒸発速度が得られなくなる。ガス圧が1×10
-1Torrより高い(即ち真空度が低い)と、イオンの
平均自由行程が短くなり過ぎ、イオン化された陰極物質
14が基体4に到達しにくくなるので、成膜速度が低下
する。
のガス圧は、1×10-6Torr〜1×10-1Torr
の範囲内にするのが好ましい。ガス圧が1×10-6To
rrより低い(即ち真空度が高い)と、アーク式蒸発源
10の陰極12におけるアーク放電が安定しないので、
安定した蒸発速度が得られなくなる。ガス圧が1×10
-1Torrより高い(即ち真空度が低い)と、イオンの
平均自由行程が短くなり過ぎ、イオン化された陰極物質
14が基体4に到達しにくくなるので、成膜速度が低下
する。
【0026】また、このガス圧によって、膜の結晶化度
を制御することができる。即ち、ガス圧を低くすれば、
形成される膜は結晶化度に優れ硬度に優れるが靱性に劣
るようになる。これは、ガス圧が低いと、陰極12にお
けるアーク放電のアークが集中して陰極物質14のイオ
ン化がより促進され、高励起状態で膜が形成されて膜の
結晶化がより促進されるからであると考えられる。一方
ガス圧が高いと、形成される膜はアモルファス化して靱
性に優れたものとなる。これは、ガス圧が高いと、上記
とは反対の作用で、陰極12におけるアーク分岐が進ん
で陰極物質14のイオン化作用が低下し、イオン化して
いない陰極物質14は単にその蒸発時のエネルギーで基
体4に堆積するだけであり、イオン化している陰極物質
14もその平均自由行程が短くなって基体到達時の運動
エネルギーが小さくなり、そのために膜は結晶化せずア
モルファス化するからであると考えられる。
を制御することができる。即ち、ガス圧を低くすれば、
形成される膜は結晶化度に優れ硬度に優れるが靱性に劣
るようになる。これは、ガス圧が低いと、陰極12にお
けるアーク放電のアークが集中して陰極物質14のイオ
ン化がより促進され、高励起状態で膜が形成されて膜の
結晶化がより促進されるからであると考えられる。一方
ガス圧が高いと、形成される膜はアモルファス化して靱
性に優れたものとなる。これは、ガス圧が高いと、上記
とは反対の作用で、陰極12におけるアーク分岐が進ん
で陰極物質14のイオン化作用が低下し、イオン化して
いない陰極物質14は単にその蒸発時のエネルギーで基
体4に堆積するだけであり、イオン化している陰極物質
14もその平均自由行程が短くなって基体到達時の運動
エネルギーが小さくなり、そのために膜は結晶化せずア
モルファス化するからであると考えられる。
【0027】従って例えば、真空容器2内のガス圧を、
膜形成時の途中で変化させることによって、硬度および
靱性に優れた金属ホウ化物膜を容易に形成することがで
きる。例えば、基体4と膜との界面付近での膜形成時
は、即ち膜形成の初期には、ガス圧を高くして成膜し、
その後、連続的または断続的にガス圧を低くすれば良
い。これによって、靱性に優れ剪断応力に対して強い膜
が基体4との界面付近に形成され、その上に結晶化度に
優れ硬度の高い膜が形成される。その結果、硬度および
靱性に優れた膜が得られる。
膜形成時の途中で変化させることによって、硬度および
靱性に優れた金属ホウ化物膜を容易に形成することがで
きる。例えば、基体4と膜との界面付近での膜形成時
は、即ち膜形成の初期には、ガス圧を高くして成膜し、
その後、連続的または断続的にガス圧を低くすれば良
い。これによって、靱性に優れ剪断応力に対して強い膜
が基体4との界面付近に形成され、その上に結晶化度に
優れ硬度の高い膜が形成される。その結果、硬度および
靱性に優れた膜が得られる。
【0028】更に、上記のようにバイアス電圧を変化さ
せることとガス圧を変化させることとを組み合わせても
良い。例えば、基体4と膜との界面付近での膜形成時
は、即ち膜形成の初期には、ガス圧を低く、かつバイア
ス電圧を大きくして成膜することによって、結晶化度の
高い膜を運動エネルギーの高い状態で成膜することがで
きるので、硬度に優れた膜を密着性良く形成することが
できる。その後、ガス圧を高くすることで、膜をアモル
ファス化して、靱性に優れた膜を表層部に形成すること
ができる。これによって、表層部は靱性に優れ、下地は
硬度および基体への密着性に優れた膜を形成することが
できるので、摺動性に優れた膜被覆物を得ることができ
る。またその際、膜の最表層部形成時のバイアス電圧を
小さくする、ガス圧を低くする、または両者を併用する
ことを更に採用しても良く、そのようにすれば、膜最表
層部の結晶化度を向上させて、膜最表層部の硬度を向上
させることも可能である。
せることとガス圧を変化させることとを組み合わせても
良い。例えば、基体4と膜との界面付近での膜形成時
は、即ち膜形成の初期には、ガス圧を低く、かつバイア
ス電圧を大きくして成膜することによって、結晶化度の
高い膜を運動エネルギーの高い状態で成膜することがで
きるので、硬度に優れた膜を密着性良く形成することが
できる。その後、ガス圧を高くすることで、膜をアモル
ファス化して、靱性に優れた膜を表層部に形成すること
ができる。これによって、表層部は靱性に優れ、下地は
硬度および基体への密着性に優れた膜を形成することが
できるので、摺動性に優れた膜被覆物を得ることができ
る。またその際、膜の最表層部形成時のバイアス電圧を
小さくする、ガス圧を低くする、または両者を併用する
ことを更に採用しても良く、そのようにすれば、膜最表
層部の結晶化度を向上させて、膜最表層部の硬度を向上
させることも可能である。
【0029】また、上記アーク式蒸発源10による蒸着
と、イオン源22から加速して引き出したイオン24を
基体4に照射することとを併用しても良い。即ち、イオ
ン照射によって成膜前に基体4をクリーニングしたり加
熱したりすることができ、それによって基体4への膜の
密着性を高めることができる。また、成膜中の(即ち蒸
着と同時または交互の)イオン照射によって、イオンが
蒸着物質を基体4の中へ押し込む作用をするので、基体
4への膜の密着性をより一層高めることができる。ま
た、イオン照射によって蒸着物質に運動エネルギーを与
えることができるので、成膜中のイオン照射によって、
基体表面に形成される膜の結晶の配向性を制御すること
ができる。また、陰極物質14がアーク放電プラズマ中
を通過することによる陰極物質14の励起作用に加え
て、イオン24と陰極物質14との衝突によっても陰極
物質14の励起作用を奏するので、成膜中のイオン照射
によって、膜の結晶構造を制御することができる。即
ち、イオン照射を併用することによって、膜の結晶構造
の制御性および配向性の制御性を一段と高めることがで
きる。
と、イオン源22から加速して引き出したイオン24を
基体4に照射することとを併用しても良い。即ち、イオ
ン照射によって成膜前に基体4をクリーニングしたり加
熱したりすることができ、それによって基体4への膜の
密着性を高めることができる。また、成膜中の(即ち蒸
着と同時または交互の)イオン照射によって、イオンが
蒸着物質を基体4の中へ押し込む作用をするので、基体
4への膜の密着性をより一層高めることができる。ま
た、イオン照射によって蒸着物質に運動エネルギーを与
えることができるので、成膜中のイオン照射によって、
基体表面に形成される膜の結晶の配向性を制御すること
ができる。また、陰極物質14がアーク放電プラズマ中
を通過することによる陰極物質14の励起作用に加え
て、イオン24と陰極物質14との衝突によっても陰極
物質14の励起作用を奏するので、成膜中のイオン照射
によって、膜の結晶構造を制御することができる。即
ち、イオン照射を併用することによって、膜の結晶構造
の制御性および配向性の制御性を一段と高めることがで
きる。
【0030】イオン照射の併用の仕方のより具体例を示
すと、特に良好な表面粗度が要求されたり、低温下で成
膜しなければならないような場合は、陰極物質14の運
動エネルギーを小さくする必要があるので、基体4に印
加するバイアス電圧を高めることができず、そのために
膜の密着性が劣る結果となる。この場合、イオン照射を
併用して照射イオンによる蒸着物質の基体4中への押し
込み作用を利用することで、膜の密着性を補うことがで
きる。
すと、特に良好な表面粗度が要求されたり、低温下で成
膜しなければならないような場合は、陰極物質14の運
動エネルギーを小さくする必要があるので、基体4に印
加するバイアス電圧を高めることができず、そのために
膜の密着性が劣る結果となる。この場合、イオン照射を
併用して照射イオンによる蒸着物質の基体4中への押し
込み作用を利用することで、膜の密着性を補うことがで
きる。
【0031】上記イオン源22には、プラズマ閉じ込め
に多極磁場(より具体的にはカスプ磁場)を用いたバケ
ット型イオン源を用いるのが好ましい。バケット型イオ
ン源は、大面積で均一性の高いイオンビームを引き出す
ことができるので、大面積処理が可能であり、これを用
いれば、スループットを向上させて製造コストを低減さ
せる効果が大きい。
に多極磁場(より具体的にはカスプ磁場)を用いたバケ
ット型イオン源を用いるのが好ましい。バケット型イオ
ン源は、大面積で均一性の高いイオンビームを引き出す
ことができるので、大面積処理が可能であり、これを用
いれば、スループットを向上させて製造コストを低減さ
せる効果が大きい。
【0032】基体4に照射するイオン24には、その運
動エネルギーだけを利用するものであるから、基体表面
に蒸着される陰極物質14と反応しないイオン、即ちA
r、Kr等の不活性ガスイオンを用いるのが好ましい。
動エネルギーだけを利用するものであるから、基体表面
に蒸着される陰極物質14と反応しないイオン、即ちA
r、Kr等の不活性ガスイオンを用いるのが好ましい。
【0033】基体4に照射するイオン24の加速エネル
ギーは、10eV〜40keVの範囲内にするのが好ま
しい。10eV未満ではイオン照射の効果が不十分にな
り、40keVを超えると基体4に与える損傷が過大に
なるので、いずれも好ましくない。
ギーは、10eV〜40keVの範囲内にするのが好ま
しい。10eV未満ではイオン照射の効果が不十分にな
り、40keVを超えると基体4に与える損傷が過大に
なるので、いずれも好ましくない。
【0034】膜形成時には基体4を加熱または冷却して
も良い。いずれにするかは、即ち、成膜中の基体4の温
度をどのようにするかは、基体4の種類に応じて決めれ
ば良い。
も良い。いずれにするかは、即ち、成膜中の基体4の温
度をどのようにするかは、基体4の種類に応じて決めれ
ば良い。
【0035】上記アーク式蒸発源10を、例えば図2に
示す例のように、複数台配置しても良く、そのようにす
れば、立体的な形状の基体4に対してもより均一に成膜
することができると共に、成膜速度(スループット)を
より向上させることができる。このアーク式蒸発源10
は、前述したように配置の自由度が非常に高いので、ホ
ルダ6上の基体4の側方だけでなく、図2に示す例のよ
うに上方に配置することも可能である。また、基体4を
保持したホルダ6は、例えば矢印Aで示すように回転さ
せても良く、そのようにすれば、基体4に対する成膜の
均一性が一層向上する。
示す例のように、複数台配置しても良く、そのようにす
れば、立体的な形状の基体4に対してもより均一に成膜
することができると共に、成膜速度(スループット)を
より向上させることができる。このアーク式蒸発源10
は、前述したように配置の自由度が非常に高いので、ホ
ルダ6上の基体4の側方だけでなく、図2に示す例のよ
うに上方に配置することも可能である。また、基体4を
保持したホルダ6は、例えば矢印Aで示すように回転さ
せても良く、そのようにすれば、基体4に対する成膜の
均一性が一層向上する。
【0036】
〈実施例1〉図1に示した装置において、基体4として
超硬合金(K10種)を用い、アーク式蒸発源10の陰
極12としてZrB2 を用い、真空容器2内を一旦10
-6Torr以上の高真空に排気した後、真空容器2内に
ガスライン16からArガスを真空容器2内が1×10
-4Torrになるように導入し、アーク式蒸発源10に
おいてアーク放電を生じさせて陰極物質14を蒸発させ
て、基体4の表面にZrB2 膜を厚さ1000nm形成
した。その際、膜厚が500nmまでは基体4に印加す
るバイアス電圧を−500Vとし、その後バイアス電圧
を−200Vにして厚さ500nmを成膜した。
超硬合金(K10種)を用い、アーク式蒸発源10の陰
極12としてZrB2 を用い、真空容器2内を一旦10
-6Torr以上の高真空に排気した後、真空容器2内に
ガスライン16からArガスを真空容器2内が1×10
-4Torrになるように導入し、アーク式蒸発源10に
おいてアーク放電を生じさせて陰極物質14を蒸発させ
て、基体4の表面にZrB2 膜を厚さ1000nm形成
した。その際、膜厚が500nmまでは基体4に印加す
るバイアス電圧を−500Vとし、その後バイアス電圧
を−200Vにして厚さ500nmを成膜した。
【0037】〈実施例2〉図1に示した装置において、
基体4として超硬合金(K10種)を用い、アーク式蒸
発源10の陰極12としてCrB2 を用い、真空容器2
内を一旦10-6Torr以上の高真空に排気した後、真
空容器2内にガスライン16からArガスを真空容器2
内が1×10-3Torrになるように導入し、アーク式
蒸発源10においてアーク放電を生じさせて陰極物質1
4を蒸発させて、しかも基体4に印加するバイアス電圧
を−500Vにして、基体4の表面にCrB2 膜を厚さ
500nm形成した。その後、真空容器2内のガス圧を
1×10-4Torrにし、バイアス電圧を−200Vに
して厚さ500nmを成膜した。
基体4として超硬合金(K10種)を用い、アーク式蒸
発源10の陰極12としてCrB2 を用い、真空容器2
内を一旦10-6Torr以上の高真空に排気した後、真
空容器2内にガスライン16からArガスを真空容器2
内が1×10-3Torrになるように導入し、アーク式
蒸発源10においてアーク放電を生じさせて陰極物質1
4を蒸発させて、しかも基体4に印加するバイアス電圧
を−500Vにして、基体4の表面にCrB2 膜を厚さ
500nm形成した。その後、真空容器2内のガス圧を
1×10-4Torrにし、バイアス電圧を−200Vに
して厚さ500nmを成膜した。
【0038】〈実施例3〉図1に示した装置において、
基体4として超硬合金(K10種)を用い、アーク式蒸
発源10の陰極12としてTiB2 を用い、真空容器2
内を一旦10-6Torr以上の高真空に排気した後、真
空容器2内にガスライン16からArガスを真空容器2
内が5×10-5Torrになるように導入し、アーク式
蒸発源10においてアーク放電を生じさせて陰極物質1
4を蒸発させて、しかも基体4に印加するバイアス電圧
を−500Vにして、基体4の表面にTiB2 膜を厚さ
1000nm形成した。しかもこの成膜と同時に、イオ
ン源22からArイオンを加速エネルギー500eVで
引き出してそれを基体4に照射した。
基体4として超硬合金(K10種)を用い、アーク式蒸
発源10の陰極12としてTiB2 を用い、真空容器2
内を一旦10-6Torr以上の高真空に排気した後、真
空容器2内にガスライン16からArガスを真空容器2
内が5×10-5Torrになるように導入し、アーク式
蒸発源10においてアーク放電を生じさせて陰極物質1
4を蒸発させて、しかも基体4に印加するバイアス電圧
を−500Vにして、基体4の表面にTiB2 膜を厚さ
1000nm形成した。しかもこの成膜と同時に、イオ
ン源22からArイオンを加速エネルギー500eVで
引き出してそれを基体4に照射した。
【0039】〈実施例4〉図1に示した装置において、
基体4として超硬合金(K10種)を用い、アーク式蒸
発源10の陰極12としてZrB2 を用い、真空容器2
内を一旦10-6Torr以上の高真空に排気した後、ま
ずイオン源22からArイオンを加速エネルギー1ke
Vで引き出してそれを基体4に照射してクリーニングを
行った。その後、真空容器2内にガスライン16からA
rガスを真空容器2内が5×10-5Torrになるよう
に導入し、アーク式蒸発源10においてアーク放電を生
じさせて陰極物質14を蒸発させて、しかも基体4に印
加するバイアス電圧を−200Vにして、基体4の表面
にZrB2 膜を厚さ1000nm形成した。この成膜時
にイオン照射は行わなかった。
基体4として超硬合金(K10種)を用い、アーク式蒸
発源10の陰極12としてZrB2 を用い、真空容器2
内を一旦10-6Torr以上の高真空に排気した後、ま
ずイオン源22からArイオンを加速エネルギー1ke
Vで引き出してそれを基体4に照射してクリーニングを
行った。その後、真空容器2内にガスライン16からA
rガスを真空容器2内が5×10-5Torrになるよう
に導入し、アーク式蒸発源10においてアーク放電を生
じさせて陰極物質14を蒸発させて、しかも基体4に印
加するバイアス電圧を−200Vにして、基体4の表面
にZrB2 膜を厚さ1000nm形成した。この成膜時
にイオン照射は行わなかった。
【0040】〈比較例〉図3に示した装置を用いて、基
体4として超硬合金(K10種)を用い、Tiペレット
とBペレットとを電子ビーム式蒸発源32、34にそれ
ぞれ納め、真空容器2内を1×10-6Torr以上の高
真空に排気した後、ホルダ6および基体4に−500V
のバイアス電圧を印加すると共に、両蒸発源32、34
の上方に配置されたバイアスプローブ30に40Vの電
圧を印加して、バイアスプローブ30とホルダ6間で放
電を生じさせると同時に、両蒸発源32、34からTi
とBとをそれぞれ蒸発させて、イオンプレーティング法
によって基体4の表面にTiB2 膜を厚さ1000nm
形成した。これは、前述した特許公報に記載された技術
に従った成膜方法である。
体4として超硬合金(K10種)を用い、Tiペレット
とBペレットとを電子ビーム式蒸発源32、34にそれ
ぞれ納め、真空容器2内を1×10-6Torr以上の高
真空に排気した後、ホルダ6および基体4に−500V
のバイアス電圧を印加すると共に、両蒸発源32、34
の上方に配置されたバイアスプローブ30に40Vの電
圧を印加して、バイアスプローブ30とホルダ6間で放
電を生じさせると同時に、両蒸発源32、34からTi
とBとをそれぞれ蒸発させて、イオンプレーティング法
によって基体4の表面にTiB2 膜を厚さ1000nm
形成した。これは、前述した特許公報に記載された技術
に従った成膜方法である。
【0041】上記の各方法によって形成された膜の硬
度、密着性および靱性を測定した結果を表1に示す。硬
度は、荷重が10gのヌープ硬度を示す。密着性は、A
Eセンサー付スクラッチ試験機において、0Nからスク
ラッチ荷重を漸次増加し、膜が剥離した時の荷重を測定
した値である。靱性は、スクラッチ痕周辺の膜のクラッ
ク発生状態で判断した。
度、密着性および靱性を測定した結果を表1に示す。硬
度は、荷重が10gのヌープ硬度を示す。密着性は、A
Eセンサー付スクラッチ試験機において、0Nからスク
ラッチ荷重を漸次増加し、膜が剥離した時の荷重を測定
した値である。靱性は、スクラッチ痕周辺の膜のクラッ
ク発生状態で判断した。
【0042】
【表1】
【0043】上記表からも分かるように、実施例の膜は
いずれも、硬度、密着性および靱性に優れていたが、比
較例の膜は、硬度には優れているものの、15Nのスク
ラッチ荷重で膜が割れてしまい、靱性に劣っていた。従
って実用化には不適である。また、実施例の膜は空気中
で600℃まで加熱した後も、表1に示した特性を安定
に保持しており、化学的に安定なことも確かめられた。
また、比較例の方法では、電子ビーム式蒸発源32、3
4は基体4の下方にしか設置できないので、立体的な基
体4への成膜が困難であることは前述のとおりである。
いずれも、硬度、密着性および靱性に優れていたが、比
較例の膜は、硬度には優れているものの、15Nのスク
ラッチ荷重で膜が割れてしまい、靱性に劣っていた。従
って実用化には不適である。また、実施例の膜は空気中
で600℃まで加熱した後も、表1に示した特性を安定
に保持しており、化学的に安定なことも確かめられた。
また、比較例の方法では、電子ビーム式蒸発源32、3
4は基体4の下方にしか設置できないので、立体的な基
体4への成膜が困難であることは前述のとおりである。
【0044】
【発明の効果】この発明は、上記のとおり構成されてい
るので、次のような効果を奏する。
るので、次のような効果を奏する。
【0045】請求項1記載の発明によれば、アーク式蒸
発源から金属ホウ化物そのものを蒸発させて基体上に金
属ホウ化物膜を形成することができるので、困難な組成
比の制御を必要とせず、組成比が良好で化学的安定性に
優れた金属ホウ化物膜を容易に形成することができる。
しかも、形成される膜の結晶構造を、真空容器内に導入
する不活性ガスのガス圧や、基体に印加するバイアス電
圧によって容易に制御することができるので、硬度と靱
性とを両立させて、両者に優れた金属ホウ化物膜を容易
に形成することができる。従って、簡単な方法で、基体
の耐摩耗性、摺動性および耐食性等を向上させることが
できる。更に、アーク式蒸発源では蒸発原料が蒸発源か
らこぼれ落ちることがないため、蒸発源配置の自由度が
非常に高く、基体の下方のみでなく側方および上方にも
自由に配置することができる。従って、立体的な形状の
基体に対する成膜も簡単に対応することができる。従っ
て、この発明の成膜方法は、工業的生産にも適してい
る。
発源から金属ホウ化物そのものを蒸発させて基体上に金
属ホウ化物膜を形成することができるので、困難な組成
比の制御を必要とせず、組成比が良好で化学的安定性に
優れた金属ホウ化物膜を容易に形成することができる。
しかも、形成される膜の結晶構造を、真空容器内に導入
する不活性ガスのガス圧や、基体に印加するバイアス電
圧によって容易に制御することができるので、硬度と靱
性とを両立させて、両者に優れた金属ホウ化物膜を容易
に形成することができる。従って、簡単な方法で、基体
の耐摩耗性、摺動性および耐食性等を向上させることが
できる。更に、アーク式蒸発源では蒸発原料が蒸発源か
らこぼれ落ちることがないため、蒸発源配置の自由度が
非常に高く、基体の下方のみでなく側方および上方にも
自由に配置することができる。従って、立体的な形状の
基体に対する成膜も簡単に対応することができる。従っ
て、この発明の成膜方法は、工業的生産にも適してい
る。
【0046】請求項2記載の発明によれば、真空容器内
のガス圧および基体に印加するバイアス電圧を上記範囲
内にすることによって、基体への密着性、表面の平滑性
等に優れた金属ホウ化物膜を、大きな成膜速度で安定し
て形成することができる。
のガス圧および基体に印加するバイアス電圧を上記範囲
内にすることによって、基体への密着性、表面の平滑性
等に優れた金属ホウ化物膜を、大きな成膜速度で安定し
て形成することができる。
【0047】請求項3記載の発明によれば、ガスライン
からアーク式蒸発源の陰極近傍に不活性ガスを供給する
ので、陰極近傍のプラズマ密度を高めることができ、そ
れによって粗大粒子が基体に被着するのを抑制すること
ができるので、表面の平滑性の一層良好な金属ホウ化物
膜を形成することができる。
からアーク式蒸発源の陰極近傍に不活性ガスを供給する
ので、陰極近傍のプラズマ密度を高めることができ、そ
れによって粗大粒子が基体に被着するのを抑制すること
ができるので、表面の平滑性の一層良好な金属ホウ化物
膜を形成することができる。
【0048】請求項4記載の発明によれば、イオン照射
を併用することで、形成される金属ホウ化物膜の結晶構
造の制御、配向性の制御および密着性の向上等を行うこ
とができる。
を併用することで、形成される金属ホウ化物膜の結晶構
造の制御、配向性の制御および密着性の向上等を行うこ
とができる。
【0049】請求項5記載の発明によれば、バイアス電
圧の大きさを膜形成の途中で変化させることによって、
密着性および硬度に優れた金属ホウ化物膜を容易に形成
することができる。
圧の大きさを膜形成の途中で変化させることによって、
密着性および硬度に優れた金属ホウ化物膜を容易に形成
することができる。
【0050】請求項6記載の発明によれば、真空容器内
のガス圧を膜形成の途中で変化させることによって、硬
度および靱性に優れた金属ホウ化物膜を容易に形成する
ことができる。
のガス圧を膜形成の途中で変化させることによって、硬
度および靱性に優れた金属ホウ化物膜を容易に形成する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る金属ホウ化物膜の形成方法を実
施する装置の一例を示す断面図である。
施する装置の一例を示す断面図である。
【図2】この発明に係る金属ホウ化物膜の形成方法を実
施する装置の他の例を示す断面図である。
施する装置の他の例を示す断面図である。
【図3】従来のイオンプレーティング装置の一例を示す
断面図である。
断面図である。
2 真空容器 4 基体 6 ホルダ 8 バイアス電源 10 アーク式蒸発源 12 陰極 14 陰極物質 16 ガスライン 18 不活性ガス 22 イオン源 24 イオン
Claims (6)
- 【請求項1】 アーク放電によって陰極を加熱して陰極
物質を蒸発させるアーク式蒸発源であって元素周期表の
4A、5Aまたは6A族に属する金属のホウ化物から成
る陰極を有するものを用いて、真空容器内に不活性ガス
を導入すると共に基体に負のバイアス電圧を印加しなが
ら、前記アーク式蒸発源から陰極物質を蒸発させてそれ
を基体に蒸着させることによって、当該基体の表面に前
記金属のホウ化物から成る膜を形成することを特徴とす
る金属ホウ化物膜の形成方法。 - 【請求項2】 膜形成時の真空容器内のガス圧を1×1
0-6Torr〜1×10-1Torrにし、かつ基体に印
加するバイアス電圧を−10V〜−5kVにする請求項
1記載の金属ホウ化物膜の形成方法。 - 【請求項3】 前記真空容器内に不活性ガスを導入する
ことを、ガスラインから前記アーク式蒸発源の陰極近傍
に不活性ガスを供給することによって行う請求項1また
は2記載の金属ホウ化物膜の形成方法。 - 【請求項4】 前記アーク式蒸発源による蒸着と、加速
されたイオンを基体に照射することとを併用する請求項
1、2または3記載の金属ホウ化物膜の形成方法。 - 【請求項5】 前記バイアス電圧の大きさを、膜形成の
途中で変化させる請求項1、2、3または4記載の金属
ホウ化物膜の形成方法。 - 【請求項6】 前記真空容器内のガス圧を、膜形成の途
中で変化させる請求項1、2、3、4または5記載の金
属ホウ化物膜の形成方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP24433396A JPH1068069A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | 金属ホウ化物膜の形成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP24433396A JPH1068069A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | 金属ホウ化物膜の形成方法 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH1068069A true JPH1068069A (ja) | 1998-03-10 |
Family
ID=17117154
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP24433396A Pending JPH1068069A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | 金属ホウ化物膜の形成方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH1068069A (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2008231560A (ja) * | 2007-03-23 | 2008-10-02 | Toyota Motor Corp | 皮膜の成膜方法、及び皮膜形成部材 |
| US20130243955A1 (en) * | 2012-03-14 | 2013-09-19 | Andritz Iggesund Tools Inc. | Process and apparatus to treat metal surfaces |
| CN112352063A (zh) * | 2018-04-20 | 2021-02-09 | 普兰西复合材料有限公司 | 真空电弧源 |
-
1996
- 1996-08-26 JP JP24433396A patent/JPH1068069A/ja active Pending
Cited By (7)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
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| US8894770B2 (en) * | 2012-03-14 | 2014-11-25 | Andritz Iggesund Tools Inc. | Process and apparatus to treat metal surfaces |
| US9068260B2 (en) | 2012-03-14 | 2015-06-30 | Andritz Iggesund Tools Inc. | Knife for wood processing and methods for plating and surface treating a knife for wood processing |
| CN112352063A (zh) * | 2018-04-20 | 2021-02-09 | 普兰西复合材料有限公司 | 真空电弧源 |
| US11610760B2 (en) | 2018-04-20 | 2023-03-21 | Plansee Composite Materials Gmbh | Vacuum arc source |
| CN112352063B (zh) * | 2018-04-20 | 2023-05-05 | 普兰西复合材料有限公司 | 真空电弧源 |
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