JPH1068419A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JPH1068419A
JPH1068419A JP17523597A JP17523597A JPH1068419A JP H1068419 A JPH1068419 A JP H1068419A JP 17523597 A JP17523597 A JP 17523597A JP 17523597 A JP17523597 A JP 17523597A JP H1068419 A JPH1068419 A JP H1068419A
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JP
Japan
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hardness
weight
bearing
wear resistance
particle size
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JP17523597A
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English (en)
Inventor
Nobuaki Mitamura
宣晶 三田村
Kazuo Sekino
和雄 関野
Yasuo Murakami
保夫 村上
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NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】過酷条件下での耐摩耗性を確実に確保し、軸受
の寿命を向上できる転がり軸受の提供を課題としてい
る。 【解決手段】軌道輪(外輪・内輪)、転動体(玉)は、
それぞれ表面が300℃でHV600以上の硬さを有
し、表層部に析出した炭化物及び炭窒化物の最大粒径が
5μm以下の各完成品表面から構成される。高温である
300℃で表面硬さを特定することで、確実に、軌道輪
及び転動体に所定以上の耐摩耗性が確保され、軸受の寿
命が向上する。更に、表面硬化のために析出する炭化物
及び炭窒化物の最大粒径が5μm以下となっているの
で、摩耗による表面の荒れも軽減されて、この点からも
耐摩耗性が向上し、軸受の耐久寿命が更に向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転がり軸受に係
り、特に、潤滑条件が厳しく軌道輪と転動体との間にす
べりが大きく生じるような環境下で使用される場合に有
効な転がり軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】軌道輪(内輪・外輪)及び転動体を主部
品とする転がり軸受は、高い面圧下で繰り返し剪断応力
を受けるという厳しい使われ方をするため、その剪断応
力に耐える転がり疲労寿命を確保する必要がある。ま
た、軸受は作動中に転がり応力の他に繰り返し軌道輪と
転動体との間にすべりが生じ、それによって摩耗が生じ
るため耐摩耗性が良好であることが望まれる。
【0003】そこで、通常、軌道輪及び転動体の材料
に、高クロム炭素軸受鋼を用い、それに焼入れ・焼戻し
を施すことや肌焼き鋼に浸炭した後、焼入れ・焼戻しを
施すことにより、要求される転がり疲労特性や耐摩耗性
を確保してきた。
【0004】しかしながら、最近では転がり軸受を使用
する機械の高負荷化・高速化が進み、従来に比べて、軸
受の使用条件は高温化、油膜形成不足、高PV値などか
なり厳しいものとなってきており、上記軸受の有する耐
摩耗性では満足できないものとなってきている。
【0005】このような厳しい使用環境に対処して、従
来技術では、軌道輪及び転動体に、ステンレス鋼及びハ
イス系材料(SKH材やM50鋼)に代表される炭化物
形成元素を多量に含む高合金鋼を使い、表面に多量の炭
化物を析出させて表面硬さを高くし、耐摩耗性の改善を
図っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、軸受の
素材として、高炭素軸受鋼(SUJ2)や浸炭処理され
た通常の肌焼き鋼を使用した場合、上記のような過酷条
件下では摩耗が著しく早く進行し寿命が短いという問題
がある。
【0007】また、耐摩耗性を向上するために、上述の
ような高合金鋼(ステンレス鋼やハイス系材料)を使う
ことで、従来の軸受材料である高炭素軸受鋼(SUJ
2)や浸炭処理された通常の肌焼き鋼を使用した場合に
比べ、耐摩耗性は向上する。
【0008】しかし、さらに厳しい環境下では、上記従
来の高合金鋼を材料に用いた軸受においても軌道輪の軌
道面及び転動体の転動面に、転動体表面の拡大写真であ
る図16(a)に示されるように、バンド状の摩耗が発
生し(写真中で上下にやや黒くなっている部分がバンド
状の摩耗部分である)、つまり軌道輪と転動体との軌道
面の走行跡が一定となり局部摩耗するため、振動及び音
響特性を劣化させ、さらにはピーリング等の表面損傷が
発生して、軸受が破損するおそれがあるという問題があ
る。
【0009】これは、後述のように、室温での表面硬さ
と耐摩耗性に相関関係がないため、室温での表面硬さを
大きくするようにしても、必ずしも耐摩耗性が向上しな
いことが原因の一つとなっている(図3参照)。
【0010】本発明は、上記のような問題点に着目して
なされたもので、過酷条件下での耐摩耗性を確実に確保
し、軸受の寿命を向上できる転がり軸受の提供を課題と
している。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の転がり軸受は、軌道輪及び転動体の少なく
とも一つが表層部に炭化物及び炭窒化物の少なくとも一
方が析出された鋼からなる転がり軸受において、上記鋼
からなる軌道輪及び転動体の少なくとも一つの完成品表
面は、300℃でHV600以上700以下の硬さを有
し、且つ、上記炭化物及び炭窒化物の最大粒径が5μm
以下であることを特徴としている。
【0012】この発明においては、後述のように高温で
の表面硬さと耐摩耗性とに高い相関関係があることに基
づき300℃でHV600以上の表面硬さとすること
で、確実に耐摩耗性に優れた軸受部品となる。更に、炭
化物及び炭窒化物を析出させることで表面の硬度を高く
するとともに、その最大粒径を5μm以下とすること
で、表面粗さの劣化を抑える。
【0013】ここで、上記300℃でHV600以上7
00以下の表面硬さとした限定理由について説明する。
通常、表面硬さ(常温での硬さ)を上げることにより耐
摩耗性は向上すると考えられているが、実験を行ったと
ころ、常温での表面硬さと耐摩耗性との間にはあまり相
関関係が見られなった。例えば、常温での表面硬さがH
V700から850の高硬度の鉄鋼材料の範囲において
は、必ずしも耐摩耗性は、常温での表面硬さに依存して
いない(図3参照)。
【0014】これに対して、実験により、高温での表面
硬さが高い値を示すものは、耐摩耗性に優れている傾向
を示し、特に、300℃における表面硬さと摩耗量との
間には高い相関関係があることを確認し、また、300
℃で表面硬さがHV600以上のものは良好な耐摩耗性
を示したため、300℃でHV600以上の表面硬さに
限定した(図4から図6参照)。
【0015】なお、例えば,300℃より高い400℃
で表面硬さを限定することも可能であるが、300℃に
換算した表面硬さが本発明の範囲内であれば、本発明の
内容となる。
【0016】また、300℃での硬度はHV600以上
であればいくらでもよいが、硬度を大きくするには炭化
物形成元素を多量に投入したりすることが要求されるた
め、HV700程度が限度である。これに基づき、30
0℃での表面硬さの上限値をHV700としている。
【0017】なお、室温雰囲気での摩耗特性と高温での
表面硬さとの間に高い相関関係があった理由は、実際の
摩擦面(軌道面及び転動面)の真実の接触部はかなり高
温になっているため高温での硬さなどの機械的強度が、
摩耗量に大きく影響が与えるためと推測される。
【0018】次に、炭化物及び炭窒化物の最大粒径を5
μm以下とした理由について説明する。炭化物及び炭窒
化物の粒径と表面粗さとの関係を調べてみたところ、粒
径が大きくなるほど表面粗さが劣化して面荒れが生じ、
逆に、粒径が5μm以下になると、表面粗さの劣化が非
常に小さなものとなり面荒れの状態が軽度であったの
で、最大粒径を5μm以下とした(図7参照)。
【0019】ここで、表層部の炭化物及び炭窒化物の最
大粒径は、浸炭・浸炭窒化後の表面炭素濃度や表面窒素
濃度で調整すればよい。
【0020】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しつつ説明する。本発明の転がり軸受の軸
受部品である、外輪及び内輪(軌道輪)、玉(転動体)
は、それぞれ表面が300℃でHV600以上の硬さを
有し、表層部に析出した炭化物及び炭窒化物の最大粒径
が5μm以下の各完成品表面から構成される。なお、表
層部には、必ずしも炭化物及び炭窒化物の両方が析出す
る必要はなく、例えば、炭化物だけ析出している場合も
ある。
【0021】そして、高温である300℃で表面硬さを
特定することで、確実に、軌道輪及び転動体に所定以上
の耐摩耗性が確保され、軸受の寿命が向上する。また、
表面硬化のために析出する炭化物及び炭窒化物の最大粒
径が5μm以下となっているので、摩耗による表面の荒
れも軽減されて、この点からも耐摩耗性が向上し、軸受
の耐久寿命が更に向上する。
【0022】なお、上記説明では、外輪,内輪,転動体
の全ての完成品を本発明に基づいて形成するようにして
いるが、外輪,内輪,転動体のうちの一部品以上のみに
本発明を適用しても構わない。
【0023】上記特性を持つ完成品は、例えば、次に示
す二つの製造方法によって製造される。第1の製造方法
は、焼戻し軟化抵抗性をもつ合金元素であるSi,M
o,Crをそれぞれ、Siを0.5重量%以上、Moを
0.5重量%以上、Crを1.0重量%以上添加した鋼
を、浸炭窒化直後表面から取代δを除去した時の仮想表
面における炭素濃度が0.8〜1.0重量%、同じく表
面窒化濃度が0.2〜1.0重量%となるように浸炭窒
化処理を行う。その後に焼入れ・焼戻しを行うことで製
造する。
【0024】すなわち、上記浸炭窒化直後で焼入れ・焼
戻し処理前の状態の、いわゆる黒皮状態においては、図
15に示すように、完成品とするための切削取代δを残
しており、上記表面の炭素濃度や窒化濃度は、上記黒皮
品の表面から取代深さδだけ入った所の表面炭素濃度や
表面窒素濃度を言う。図15中、1は黒皮を示し、2は
完成品表面を示している。
【0025】ここで、Siを0.5重量%以上とした理
由は、これ未満であると高温硬さが低下してしまい、3
00℃でHV600以上を満足しないためである。ま
た、Siの上限は1.5重量%とする。理由は、1.5
重量%を超えた場合、浸炭を阻害するため、表面が所定
(0.8重量%以上)の炭素濃度にならなくなったり、
浸炭深さが不足するなどの阻害がでてくるためである。
【0026】また、Moを0.5重量%以上とした理由
は、これ未満であると高温硬さが低下してしまい、30
0℃でHV600以上を満足しないからである。Moの
上限は3.0重量%とする。理由は、Moは高価な合金
元素であり、3.0重量%以上添加しても、さほど高温
での硬さは向上しないためである。
【0027】また、Crを1.0重量%以上とした理由
は、これ未満であると、高温硬さが低下してしまい、3
00℃でHV600以上を満足しないからである。ま
た、Crの上限を8.0重量%とする。これ以上添加す
ると巨大炭化物が析出するためである。
【0028】また、浸炭窒化直後表面から取代δを除去
した時の仮想表面における炭素濃度が0.8〜1.0重
量%としたのは、0.8重量%未満では高温硬さが低下
してしまい、300℃でHV600以上を満足しないか
らである。また、1.0重量%を越えると、巨大炭化物
(5μmより大きい)が析出してしまう。
【0029】また、浸炭窒化直後表面から取代δを除去
した時の仮想表面における窒素濃度が0.2〜1.0重
量%としたのは、0.2重量%未満では高温硬さが低下
してしまい300℃でHV600以上を満足しないから
である。また、1.0重量%を越えると、切削性を著し
く損なうからである。
【0030】第2の製造方法は、炭素が0.7重量%以
下の鋼材料に、炭化物形成元素であるCr、Mo、Vを
それぞれ、Crを3.0〜8.0重量%、Moを3.0
重量%以上、Vを0.5重量%以上添加して浸炭後の表
面炭素濃度が0.8〜1.0重量%にあるように浸炭処
理を施した後に焼入れを行い、さらに500℃以上の高
温焼戻しを施すことにより表層部に微細な炭化物を析出
させることで製造する。
【0031】ここで、上記表面炭素濃度の定義は、上記
第1の製造方法と同じである。また、Crを3.0〜
8.0重量%としたのは、3.0重量%未満であると炭
化物析出硬化不足により300℃での硬さがHV600
以上を満足しないからである。また、8.0重量%を越
えると素材の段階で5μmより大きい炭化物が形成され
てしまうからである。
【0032】また、Moを3.0重量%以上としたの
は、3.0重量%未満であると炭化物析出硬化不足によ
り300℃での硬さがHV600以上を満足しないから
である。Moの上限は6.0重量%とする。Moは高価
な合金元素であり、6.0重量%以上添加してもさほど
高温での硬さは向上しないからである。
【0033】また、Vを0.5重量%以上としたのは、
0.5重量%未満であるとCr,Moが規定量であって
も300℃での硬さがHV600以上とならないからで
ある。又、Vの上限は2.0重量%とする。理由は、こ
れ以上添加すると前加工(鍛造、切削)工程において著
しく加工性を劣化するためである。
【0034】また、素材の炭素を0.7重量%以下とし
たのは、0.7重量%より多いと、Cr,Mo,Vを多
量に含んだ材料の場合、溶解時に5μmを越える炭化物
が形成されるためである。
【0035】また、上記第2の製造方法において、完成
品である焼入れ・焼戻し後の表面炭素濃度を使用せず
に、浸炭及び浸炭窒化後の表面炭素濃度で特定した理由
は、第2の製造方法では、例えば1000℃以上の高温
焼入れが必要となり、そのため、この焼入れ時に炭素の
拡散などが起こり、浸炭及び浸炭窒化後と、焼入れ後と
では表面炭素濃度が大幅に変化するためである。一方、
浸炭又は浸炭窒化時に生成される炭化物や炭窒化物の巨
大炭化物(最大粒径で表される)は、浸炭時の表面炭素
濃度が支配的であって、そのあとの焼入れ加熱保持中の
炭素の拡散の影響は余り受けない(あまり小さくならな
い)。このため、第2の製造方法では、浸炭及び浸炭窒
化後の表面炭素濃度を特定している。
【0036】なお、上記二つの製造方法を比較した場
合、第1の製造方法の方が望ましい。その理由を説明す
ると、材料コスト面において、第2の製造方法では高価
な合金元素で焼戻し抵抗性を付与する。即ち、軟化抵抗
性を持つMoやVを多量に使用する必要がある。また、
製造面において、第2の製造方法では1000℃以上で
の高温焼入れが必要であり特別の熱処理設備が必要にな
る、などからである。
【0037】次に、上記二つの製造方法での各合金元素
及び表面炭素濃度,表面窒素濃度を上述のように規定し
た理由を、次に説明する。各種材料及び各種熱処理を施
したものの常温での表面硬さ及び高温での表面硬さ、及
び炭化物・炭窒化物の最大粒径を調査したところ、下記
表1に示す結果を得た。
【0038】
【表1】 ここで、材料A〜Lは、第1の製造方法に関するもので
あり、材料M〜Xは、第2の製造方法に関するものであ
る。そして、材料K,L,Xが上記製造方法に則って製
造された本発明に基づくものである。
【0039】また、表1中の熱処理方法a〜fは、図9
〜図14に対応する方法である。即ち、 熱処理a:通常の焼入れを行った後に、焼戻しを行う
(図9参照)。
【0040】熱処理b:通常の焼入れ(サブゼロ処理)
を行った後に、焼戻しを行う(図10参照)。 熱処理c:浸炭の後に、通常の焼入れ、焼戻しを行う
(図11参照)。
【0041】熱処理d:浸炭窒化の後に、通常の焼入
れ、焼戻しを行う(図12参照)。 熱処理e:高温焼入れ(サブゼロ処理)の後、焼戻しを
複数回行う(図13参照)。
【0042】熱処理f:浸炭の後に、高温焼入れ(サブ
ゼロ処理)を行い、更に焼戻しを複数回行う(図14参
照)。 なお、浸炭・浸炭窒化後に狙う表面炭素濃度や窒素濃度
は、表1中の各値に設定される。
【0043】まず、上記第1の製造方法での各規定値の
限定理由を説明する。上記表1の比較材A〜Eから、S
iが規定値の0.5重量%より少ないと、比較材Eのよ
うにCrが規定量の1.0重量%以上で且つMoが規定
量の0.5重量%以上であっても、300℃における硬
さがHV600以上とならないことが分かる。また、比
較材Fから、Siが規定値の0.5重量%以上で且つM
oが規定量の0.5重量%以上であっても、Crが規定
値の1.0重量%より少ないと300℃における硬さが
HV600以上とならないことが分かる。さらに、比較
材Gから、Siが規定値の0.5重量%以上で且つCr
が規定値の1重量%以上であっても、Moが規定値の
0.5重量%より少ないと300℃における硬さがHV
600以上とならないことが分かる。
【0044】このような理由から、Si、Cr、Moの
添加量をそれぞれ、上述のようにSi:0.5重量%以
上、Mo:0.5重量%以上、Cr:1.0重量%以上
に設定した。
【0045】さらに、上記Si、Cr,Moがそれぞれ
規定量であっても、完成品表面での表面炭素濃度が0.
8重量%未満の場合、比較材Iのように300℃におけ
る硬さがHV600以上を満足しない。また、完成品表
面での表面炭素濃度が1.0重量%より多い場合、比較
材D,F,Hのように炭化物及び炭窒化物の最大粒径が
5μmより大きくなってしまう(図8参照)。さらに、
表面窒素濃度が0.2重量%より少ない場合、比較材J
のように300℃における硬さがHV600以上を満足
しない。
【0046】このような理由から、完成品表面での表面
炭素濃度を0.8〜1.0重量%、表面窒化濃度を0.
2重量%以上に設定した。 そして、上述の規定値に則
って製造された実施例K及び実施例Lは、300℃にお
ける硬さがHV600以上を満足し、且つ、炭化物及び
炭窒化物の最大粒径が5μm以下となり、上記第1の製
造方法によって、本発明に基づく完成品表面を持った軸
受部品が製造できることが分かる。
【0047】次に、第2の製造方法での規定値の限定理
由を上記表1に基づき説明する。浸炭前の素材の表面炭
素濃度を特定した理由は、この製造方法の場合、炭化物
形成元素を多量に添加するため素材の炭素濃度が高いと
素材の段階で大きな粒径の炭化物が析出される可能性が
あり、また、浸炭前の段階で析出している大きな炭化物
は後の工程(熱処理など)で小さくすることは非常に難
しいからである。
【0048】そして、上記表1の調査結果から、素材の
炭素濃度が0.7重量%を越えると、比較材M,N,
Q,Uのように、炭化物の大きさに影響を与えるCr量
や浸炭後の表面炭素濃度にかかわらず、完成品表面の炭
化物の粒径が5μmにより大幅に大きなものとなること
を確認した。このため、浸炭前の炭素濃度を0.7重量
%以下に設定した。
【0049】また、表1の比較材Qから、Crが規定値
の3.0重量%より少ないと、300℃における硬さが
HV600以上とならないことが分かる。また、比較材
O,R、特に比較材RのようにMo,Vが規定量であっ
ても、Crが規定量の8.0重量%より多いと、浸炭前
の炭素濃度及び浸炭後の炭素濃度が規定量であっても、
完成品表面に粒径が5μmより大きい炭化物が確認され
た。また、比較材Sから、Moが規定値の3.0重量%
より少ないと、Cr,Vがそれぞれ規定量であっても、
300℃における硬さがHV600以上とならないこと
が分かる。また、比較材Tから、Vが規定値の0.5重
量%より少ないと、Cr,Moが規定量であっても、3
00℃における硬さがHV600以上とならないことが
分かる。
【0050】このような理由から、上述のようにCr,
Mo,Vの規定量を、それぞれCr:3.0〜8.0重
量%、Mo:3.0重量%以上、V:0.5重量%以上
に設定した。
【0051】また、Cr,Mo,Vが規定量であって
も、浸炭後の表面炭素濃度が0.8重量%未満の場合に
は、比較材Wのように、300℃における硬さがHV6
00以上とならない。また、浸炭後の表面炭素濃度が
1.0重量%より多い場合には、比較材Vのように、完
成品表面の炭化物及び炭窒化物の最大径が5μmよりも
大幅に大きなものとなってしまう(図8参照)。
【0052】このような理由から、浸炭後で焼入れ・焼
戻し前の表面炭素濃度を0.8〜1.0重量%に設定し
た。そして、上述の第2の製造方法の各規定値に則って
製造された実施例Xは、300℃における硬さがHV6
00以上を満足し、且つ、炭化物及び炭窒化物の最大粒
径が5μm以下となり、上記第1の製造方法によって、
本発明に基づく完成品表面を持った軸受部品が製造でき
ることが分かる。
【0053】次に、上記表1に示した各材料A〜Xに対
して摩耗試験を行ったところ、下記表2のような結果が
得られた。摩耗試験は、2円筒型摩耗試験及び高温高速
スラスト型試験である。2円筒型摩耗試験は、超低速域
で油膜形成が厳しく且つすべりが大きい場合の摩耗試験
である。また、高温高速スラスト型試験は、高温高圧下
で、油膜形成が厳しく、さらに高速スラスト型試験を用
いることでスピンすべりを極端に大きくした場合の摩耗
試験である。
【0054】
【表2】 ここで、2円筒型摩耗試験は、図1に示すように、一対
の円筒状の試験片3を所定荷重で当接させた状態で回転
駆動させたものである。そして、その試験条件の諸元
は、次のものである。
【0055】 試験片形状 :外径30mmφで厚さ7mmの円筒形状 試験片粗さ :Ra 0.008〜0.01μm 駆動側回転速度:10rpm 従動側回転速度: 7rpm すべり率 :30% 潤滑方式 :滴下式 潤滑油 :スピンドル油♯10 試験温度 :室温(20℃) 面圧 :120kgf/mm2 すべり距離 :3000m 摩耗調査 :試験後の摩耗量調査(重さ) また、高温高速スラスト型試験は、図2に示すように、
板状の試験片4にボール状の試験片5を当接し、スラス
ト荷重を負荷した状態で高速回転させたものである。そ
の試験条件の諸元は、次のものである。
【0056】 試験片形状 板 :外径60mmφで厚さ6mmの円板 ボール:(3/8)インチ 試験前の試験片粗さ 板 :Ra 0.008〜0.01μm ボール:Ra 0.006μm P.C.D :38.5mm 回転数 :8000rpm 潤滑方式 :強制潤滑 潤滑油 :MIL−L−23699D規格適合油 試験温度 :150℃ 面圧 :300kgf/mm2 試験時間 :20時間 摩耗調査 :試験後の板及びボールの形状・粗さ測
定,表面観察 そして、上記表2のうちの2円筒型摩耗試験の結果から
分かるように、300℃における表面硬さがHV600
以上の材料であるH,K,L,M,N,P,R,U,
V,Xは、良好な耐摩耗性を示している。
【0057】ここで、上記2円筒摩耗試験の結果である
摩耗量と、各温度での硬さの関係を整理すると、図3か
ら図6のような結果が得られる。これらの図から分かる
ように、常温(20℃)での表面硬さと耐摩耗性との間
には明確な相関関係は得られず(図3参照)、高温での
表面硬さと耐摩耗性との間には相関関係がある(図4〜
図6参照)。
【0058】即ち、室温での表面硬さがHV700〜8
50の高硬度の鉄鋼材料の範囲においては、必ずしも耐
摩耗性は常温での表面硬さの値に依存していないことが
いえる。一方、高温での表面硬さが高い値を示すもの
は、耐摩耗性に優れている傾向を示しており、特に30
0℃以上での表面硬さと耐摩耗性とが高い相関関係が見
られる。
【0059】従って、300℃での表面硬さで評価する
ことで、軌道輪や転動体に目的とする耐摩耗性を確実に
確保することができる。また、上記表2のうちの高温高
速スラスト試験結果を、炭化物及び炭窒化物の最大粒径
と試験後の表面粗さとの関係で整理すると図7に示すよ
うなものとなる。なお、この試験は、試験前の表面粗さ
を上述のようにほぼ一定に設定して、試験後表面粗さを
測定し、試験後の表面粗さが大きいものを耐摩耗性が劣
っていると判断している。
【0060】この図7から分かるように、炭化物及び炭
窒化物の粒径が大きくなる程、試験後の表面粗さが劣化
しており、炭化物及び炭窒化物の粒径が5μm以下の材
料A,B,C,E,G,I,J,K,L,T,W,Xで
は、試験後の表面粗さの劣化が他の材料に比べて小さ
く、粒径を5μm以下とすることに妥当性があることが
分かる。
【0061】ここで、試験後の表面観察結果からも、図
16(a)に示すように、炭化物及び炭窒化物の粒径が
大きいものは面荒れが起こっており、図17(a)に示
すように、粒径が5μm以下のものは面荒れの状態が軽
度であった。さらに、面荒れのところを拡大観察する
と、図16(b)、図17(b)に示すように、微小な
圧痕が連続的に発生しており、その中でも最大粒径の圧
痕は、炭化物及び炭窒化物の最大粒径とほぼ一致してい
た。この結果から考察するに、この試験での摩耗は、炭
化物及び炭窒化物が、潤滑条件が厳しくメタル接触が起
こる中で、素地(マルテンサイト)との硬さ及びヤング
率の違いから、相手(板の場合はボール、ボールの場合
は板)に損傷を与える、また、強い接線力を受けること
により炭化物及び炭窒化物が脱落し、その脱落した炭化
物及び炭窒化物が異物として転動面に噛み込み圧痕を形
成し損傷を与える、などの理由によるものと考えられ
る。実際に、試験後のボール5表面を観察したところ、
上記図16及び図17の写真のように、炭化物が脱落し
た痕跡がみられる。
【0062】以上の結果から、潤滑が厳しくすべりが大
きい使用環境下では、粒径の大きな炭化物等が表面粗さ
の劣化を招く一因となるので、上述のように、最大粒径
は5μm以下が望ましい。
【0063】このように、条件の異なる2種類の摩耗試
験結果を比べると、それぞれ異なった材料因子が耐摩耗
性に影響を与えるのが分かる。そして、実際に軸受が使
用される場合の耐摩耗性は、使用条件が限定されず、上
記二つの条件の両方の耐摩耗性が良好であることが望ま
れる。この二つの条件の両方で耐摩耗性に優れた材料
は、本発明に基づく材料K,L,Mのみであることが分
かる。
【0064】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の転が
り軸受では、過酷条件下での耐摩耗性が確実に確保でき
るという効果がある。この結果、超低速で作動された
り、高温環境下で作動されるなど、油膜形成等の厳しい
環境での使用であっても、耐久寿命が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】2円筒摩耗試験を説明するための概略図であ
る。
【図2】高温高速スラスト型試験を説明するための概略
図である。
【図3】常温(20℃)での表面硬さと摩耗量との関係
を示す図である。
【図4】200℃での表面硬さと摩耗量との関係を示す
図である。
【図5】300℃での表面硬さと摩耗量との関係を示す
図である。
【図6】400℃での表面硬さと摩耗量との関係を示す
図である。
【図7】炭化物・炭窒化物の最大粒径と試験後の表面粗
さとの関係を示す図である。
【図8】浸炭・浸炭窒化後の表面炭素濃度と炭化物・炭
窒化物の最大粒径との関係を示す図である。
【図9】熱処理aを示す概念図である。
【図10】熱処理bを示す概念図である。
【図11】熱処理cを示す概念図である。
【図12】熱処理dを示す概念図である。
【図13】熱処理eを示す概念図である。
【図14】熱処理fを示す概念図である。
【図15】完成品表面と切削取代との関係を示す概念図
である。
【図16】炭化物の最大粒径が12μmの場合の摩耗試
験後のボール表面の金属組織を示す写真であって、
(a)は100倍に拡大した写真を、(b)は400倍
に拡大した写真である。
【図17】炭化物の最大粒径が0.9μmの場合の摩耗
試験後のボール表面の金属組織を示す写真であって、
(a)は100倍に拡大した写真を、(b)は400倍
に拡大した写真である。
【符号の説明】
2 完成品表面 3〜5 試験片

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軌道輪及び転動体の少なくとも一つが表
    層部に炭化物及び炭窒化物の少なくとも一方が析出され
    た鋼からなる転がり軸受において、 上記鋼からなる軌道輪及び転動体の少なくとも一つの完
    成品表面は、300℃でHV600以上700以下の硬
    さを有し、且つ、上記炭化物及び炭窒化物の最大粒径が
    5μm以下であることを特徴とする転がり軸受。
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