JPH1110254A - 金属部材の加工方法 - Google Patents

金属部材の加工方法

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JPH1110254A
JPH1110254A JP17188397A JP17188397A JPH1110254A JP H1110254 A JPH1110254 A JP H1110254A JP 17188397 A JP17188397 A JP 17188397A JP 17188397 A JP17188397 A JP 17188397A JP H1110254 A JPH1110254 A JP H1110254A
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metal
liquid
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Yutaka Nagayama
豊 永山
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Nagayama Electronic Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特に金属の板材のプレス加工において、潤滑
剤に含まれる油分による汚染を来すことなく、しかも良
好な加工特性を得ることのできる加工方法を提供する。 【解決手段】 雄型23aと雌型21aとの間に金属板
材10を挟んで押圧成形するプレス加工において、潤滑
剤として、界面活性剤を主成分とする液状合成洗剤に防
錆剤を含有した液体を金属板材に供給する。この加工方
法によれば、液状合成洗剤中に主成分として含有される
界面活性剤の良好な潤滑特性により、ステンレス鋼板の
プレス加工等を順調に施すことができるだけでなく、炭
素鋼板等の潤滑に適用した場合にも、防錆剤の作用によ
って錆を生じさせることなく、良好な加工特性を得るこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、金属部材の加工
方法に関し、特に、ステンレス鋼以外の鉄系金属などの
ように腐食性を有する金属材料からなる素材、あるい
は、ステンレス鋼やチタン合金などのように高い耐蝕性
を有する、比較的加工硬化の生じやすい金属材料からな
る素材に加工を施して所定の部材を形成する際の、潤滑
方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】以下、この発明に関連する従来の鉄系材
料の加工工程について、たとえば炭素鋼板のような、ス
テンレス鋼以外の鉄系の金属板の間欠的な順送りプレス
加工工程およびタッピングマシンによる雌ねじ形成加工
工程を備えたTナットの製造工程を例に挙げて、図1な
いし図5に基づいて説明する。
【0003】図1に示されたTナットは従来より、図2
に示す順送プレス工程により製造する方法が行なわれて
いる。この製造方法によって製造されるTナット31
は、図1(a)(b)を参照して、軸部32およびこの
軸部32の第1の端部から外方へ張出すフランジ部33
を備える。軸部32は、外径が一様な中空の筒状をな
し、その内周面上に雌ねじ36が形成された雌ねじ形成
部分35を備える。
【0004】フランジ部33の外周部には、2対の爪3
7および38,39および40がフランジ部33の径方
向に対向して配置される。これら爪37〜40の各々
は、フランジ部33の外周縁の一部を切り起こすことに
よって形成される。フランジ部33は、全体として実質
的に八角形の形状をなしている。特に、各対をなす2個
の爪37および38、ならびに39および40のそれぞ
れの間は、直線状の辺41および42で結ばれている。
【0005】上述の図1に示したTナット31は、次の
ように製造される。図2を参照して、まず、鉄系材料か
らなる長手の帯状の金属板10が用意される。この金属
板10は、図2(a)(b)に矢印Xで示すように、そ
の長手方向に所定のピッチずつ間欠的に順送りされなが
ら、各停止位置において、それぞれ所望の加工が施され
る。したがって、図2(a)(b)の各々に示された加
工区間iないしvii は、一つの加工区間における加工工
程をその順に順次示していることになる。
【0006】順送りされる金属板10の上面には、図2
(b)の右端に示すように、潤滑剤供給装置の供給口5
0から、潤滑剤が連続的に供給される。このような鉄系
板材からのTナットの製造工程においては、材料自体が
錆びやすいことから、潤滑剤として、一般に、防錆作用
を有する鉱物油、動物性油、あるいは植物性油が用いら
れる。
【0007】金属板10には、まず、フランジ部33と
なるべき部分の位置を決めるため、加工区間iにおい
て、実質的に円形に沿って切込線11a,11bが切断
加工により形成される。このとき、切込線11a,11
bによって形成される円の帯状の金属板10の幅方向に
沿う2つの対向する部分に、それぞれ未切断部12a,
12bが形成される。次に、加工区間iiにおいて、切込
線11a,11bによって形成された円の外側に、その
円と同心の円に沿って切込線13a,13bが形成され
る。この切込線13a,13bは、金属板10の長さ方
向に沿う両端縁近傍に未切断部14a,14bが形成さ
れる。
【0008】次に、加工区間iii において、内側の切込
線11a,11bに囲まれた加工部分16に絞り加工が
施される。この絞り加工によって生じる絞り代は間隙1
5として現れ、加工部分16は、未切断部12a,12
b,14a,14bにつながれた連結部17a,17
b,17c,17dによって、金属板10に対して保持
される。この連結部17a,17b,17c,17d
は、絞り加工に応じて生じる絞り代を中心方向に変形す
ることによって有利に吸収するものである。
【0009】次に、加工区間ivおよびvにおいて加工部
分16に対してより深い絞り加工が施された後、加工区
間viにおいて穴18が打ち抜かれる。その後、加工区間
viiに示すように穴18が広げられる。
【0010】その後、図2(a)(b)では省略した爪
37〜40等の成形工程を経て、金属板10から切り離
してバレル研磨されたTナットの中間製品は、順送プレ
ス工程において生じた加工硬化を緩和し、次工程におけ
る雌ねじ形成のためのタッピング加工を容易にするた
め、および、順送プレス工程においてTナットの中間製
品が帯びた磁気を消去するため、真空炉において所定温
度で焼鈍が施される。潤滑剤として用いられている鉱物
油等は可燃性であり、焼鈍のために必要な温度で引火す
るおそれがあることから、Tナットの表面に皮膜を形成
した油を、トリクレンなどの溶剤によって洗浄して除去
する工程を施すことが必要である。
【0011】真空炉において焼鈍されたTナットの中間
製品は、タッピングマシンに供給されて、軸部32の雌
ねじ形成部分35の内周面上に、雌ねじ36を形成する
ためのタッピング加工工程が実施される。このタッピン
グ加工においても、順送プレス工程と同様に、鉱物油等
の油性の潤滑剤が用いられる。
【0012】次に、Tナットの中間製品の雌ねじ形成部
分35の内周面上に、タッピングマシンによって雌ねじ
36を形成するためのタッピング工程について、図4お
よび図5に基づいて説明する。このタッピング工程で
は、中空の回転スピンドル70内に保持されて、100
0〜3000RPM程度の回転速度で回転するベンドタ
ップ71が使用される。シュート72に沿って連続的に
供給される複数のTナット73は、ストッパー74を操
作することによって1個ずつベンドタップ71の一端に
導かれ、押し棒75によってベンドタップ71側へ押し
付けられてねじ切りが開始される。ベンドタップ71が
回転スピンドル70とともに矢印Y方向に回転している
ため、ねじ切り加工中のTナット73はベンドタップ7
1に沿って矢印Z方向へ移動し、タップカバー76によ
って両側から挟まれたベンドタップ71の切れ刃部分を
通り過ぎてからも、後から続くTナットに押されて移動
を続ける。その結果、回転スピンドルの内側を通ってベ
ンドタップ71の他端まで到達したTナットは、回転ス
ピンドル70の開口70aから外に放り出される。この
ようにしてTナットの雌ねじの形成が完了し、所望のT
ナット31が得られる。
【0013】ところで、上述のようにステンレス鋼以外
の鉄系の板材から加工されたTナットの場合、水分の多
い環境や、酸性雨によって金属の腐食が生じやすい環境
において使用されるコンポーネント部材に適用すると、
錆による変色が問題となることから、このような環境下
で使用されても錆びることのないTナットへの要望が高
まり、JIS規格のSUS304などのステンレス鋼の
ような高い耐蝕性を有する材料からなるTナットの需要
が増大している。
【0014】上述した従来のステンレス鋼以外の鉄系の
板材の場合、比較的熱伝導率が高く、しかも加工硬化が
生じにくいため、潤滑剤として、油分および水分を含む
冷却作用の強いものを用いることにより、絞り等の加工
を行なう上で大きな問題を生じることがなかった。ま
た、そのような鉄系の板材は、通常、微細な凹凸を有す
る梨地状表面を有しているために、加工中においてもそ
の凹部に油分が付着して残留し、加工時の工具と被加工
物との間の良好な滑りを維持するため、これが一種のク
ッション材となって、加工中においてそれほど極端な音
を発生することもない。
【0015】しかしながら、上述した従来の鉄系の板材
からTナットを加工する工程と同様に、鉱物油等の非水
溶性の潤滑剤を用いて、ステンレス鋼の板材からTナッ
トを形成しようとすると、ステンレス鋼が比較的硬く、
塑性変形性が悪いことに加えて、ステンレス鋼の熱伝導
率が比較的低いこと、および加工硬化が生じやすいこと
に起因して、また、ステンレス鋼の板材の表面が炭素鋼
の板材等に比べてより滑らかであるために、その表面へ
の油の付着性が悪いことに起因して、次のような問題が
生じ、良好な加工特性が得られないことが判明した。
【0016】図2に基づいて説明したような、板材の順
送プレス工程においてTナットの軸部32を絞りによっ
て形成する際に、最も大きな加工応力を生じる底部(軸
部32の先端部)近傍において発熱量が最大となり、ま
た、ステンレス鋼の熱伝導率が炭素鋼材等に比べて低
く、板材内部での熱の伝導による温度の均等化に時間が
かかるため、底部近傍において最大の加工硬化が生じ
る。この順送プレス工程において、潤滑剤として鉱物油
等の油性のものを使用すると、冷却作用の大きい油が被
加工部材表面に皮膜を形成するために、加工硬化を生じ
た部分が硬化したままの状態で冷却されてしまう。図2
に示した多段の絞り加工を行なう場合には、一つの段の
絞りにおいてこのような加工硬化が一旦生じてしまう
と、板材の柔軟性が損なわれているために、次の段の絞
りにおいて、所望の絞りが良好に行なえず、順送プレス
工程が順調に流れないという問題があった。
【0017】また、ステンレス鋼板の表面は、炭素鋼板
に比べて比較的凹凸が小さく滑らかであるために、油性
の潤滑剤の密着性が悪く、加工時の工具と被加工物との
間の潤滑性が劣化するため、加工中において極端な摩擦
音を発生するという問題もあった。
【0018】ステンレス鋼板のプレス加工が炭素鋼板等
に比べて施し難いことの一因について、図3に基づいて
次のように説明される。まず、図2(a)(b)の加工
区間iii ないしvに対応する各段の絞り工程において、
図3(a)ないし(c)に示すように、ダイス(雌型)
21a,21b,21cとしわ押さえ22a,22b,
22cとの間に挟まれた金属板10がポンチ23a,2
3b,23cによって絞られる際に、炭素鋼板等の場合
には、矢印Aで示す円内の基部から矢印Bで示す円内の
底部にかけてほぼ均一な肉厚を維持して延びやすいが、
ステンレス鋼板の場合には、矢印Aで示す円内の基部か
ら矢印Bで示す円内の底部への材料の流れ(図3の各図
における金属板10の断面中に示す矢印方向の流れ)が
悪く、基部の肉厚が厚いまま残留して、側面および底部
の肉厚が所望の厚さよりも薄くなりやすい。この現象
は、ステンレス鋼板表面への潤滑油の密着性が悪いため
に、ダイス21a,21b,21cおよびポンチ23
a,23b,23cと金属板10との間の潤滑が維持さ
れず、摩擦が大きくなるために材料の流動が阻止される
こと、および摩擦熱のために材料が加工硬化してしまう
ことによるものと考えられる。
【0019】このような、絞り加工による肉厚の非均一
化の傾向は、複数段の絞り工程を経るごとに累積される
ため、図3(c)に示す加工区間においてはTナットの
軸部が所望の厚さから大きく外れたものとなり、極端な
場合にはTナットの軸部の底部が破損してしまう。
【0020】また、雌ねじ36を形成するための工程に
おいても、潤滑剤として鉱物油等の油性のものを使用す
ると、従来の炭素鋼板等の板材から成形されたTナット
の場合と同じ加工速度で、タッピングによるねじ切り加
工を行なうと、タップとTナット素材との間に発生する
熱のために、焼き付きが生じて良好なねじ切りが行なえ
ないという問題もあった。
【0021】ステンレス鋼板の絞りやねじ切りにおける
上述の問題点は、熱伝導性が悪く加工硬化が生じやすい
ことの他、その表面が、炭素鋼板等に比べて凹凸が少な
く滑らかであるために、従来の油性の潤滑剤では、一旦
表面に付着しても、加工中にはじき飛ばされ易く、加工
に要する潤滑性を維持する程度に、潤滑剤が被加工部材
表面に残留しないことも、良好な加工が行なえない一因
となっていると推察される。
【0022】そこで、本発明者は、ステンレス流し台の
絞り用として使用されている、カストロール社製の水溶
性塑性加工油である「カストロールアイロフォームPS
158」を、同社の推奨仕様に応じて、水で薄めて10
%希釈液としたものを潤滑剤として、上記と同様のステ
ンレス製Tナットの加工実験を実施した。このように水
で薄めることを要するのは、加工時に発生する熱によっ
て油分が発火することを防止するためであると考えられ
る。この水溶性塑性加工油を用いた加工実験の結果、絞
りにおいてもタッピング工程においても、やはり加工硬
化が顕著に生じ、良好な加工特性を得ることができなか
った。その理由は、油分と、潤滑剤中に占める水分との
作用によって過剰な冷却作用が働くために、上述の鉱物
油を用いた場合と同様に、加工硬化の問題が解消できな
かったためであると推察される。
【0023】なお、この水溶性塑性加工油の原液を用い
て、上記と同様の実験を試みたところ、10%希釈液を
用いた場合と同様に、やはり、良好な加工特性を得るこ
とができなかった。その理由としては、この水溶性塑性
加工油の原液中にも、それに含まれる油成分の発火性を
抑制する目的で相当量の水を含有しているために、好ま
しくない冷却効果が作用し、やはり加工硬化の問題が解
消しなかったためと考えられる。
【0024】また、下記の表1の成分を有する、タイユ
株式会社製の水溶性潤滑油である「ハイチップ EX−
446H」を用いて、上記同様のステンレス製Tナット
の加工実験を実施したところ、やはり、加工硬化が顕著
に生じ、良好な加工特性を得ることができなかった。そ
の理由は、界面活性剤を主成分とはしているものの、鉱
物油の含有量が10〜20%と比較的多い上に、防錆の
ための添加剤や消泡剤等の、ステンレス鋼の潤滑剤とし
ては不要な成分も多く含んでいるために、これらの不要
な成分による冷却作用によって、上述の鉱物油を用いた
場合と同様に、加工硬化の問題が解消できなかったため
であると推察される。
【0025】
【表1】
【0026】このように、熱伝導性が悪いために加工硬
化が生じて、良好な加工が行なえないという問題は、ス
テンレス鋼だけでなく、チタン合金なども含めた高い耐
蝕性を有する材料に共通する問題であり、この問題を解
消する潤滑方法の開発が課題となっていた。
【0027】そこで本発明者らは、平成9年4月25日
出願の特願平9−109047号において、ステンレス
鋼などの高耐蝕性の金属の加工において、界面活性剤を
主成分とする市販の液状合成洗剤を潤滑油として用いる
ことを既に提案し、当該特許出願の実施の形態として、
特にステンレス鋼板に順送プレスによる絞り加工および
タッピングによるねじ切り加工を施して、Tナットを製
造する工程において、種々の市販の液状合成洗剤を用い
た実験結果をを通じ、特に界面活性剤の含有比率が多い
ほど、良好な潤滑特性が得られることを立証した。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
願平9−109047号において提案された金属材料の
加工方法のように、液状合成洗剤を潤滑剤として用いる
加工方法では、加工対象となるステンレス鋼などの高耐
蝕性金属材料の加工のための潤滑としては良好な特性を
得ることができるものの、順送プレス工程におけるダイ
ス,ポンチなどの金型や、加工のためのその他の機械設
備については、通常腐食を生じやすい鉄系などの材質の
金属で構成されているため、その摺動部の潤滑には、鉱
物油等の油性の潤滑油を用いなければならない。また、
加工対象となる高耐蝕性金属材料の加工のための潤滑に
用いる液状合成洗剤がそのような加工設備に付着する
と、加工機械等の腐食の原因となる恐れがあるために、
液状合成洗剤が加工機械等に飛び散らないように、何ら
かの遮蔽を施さなければならないという問題があった。
【0029】また、従来鉱物油等の油性の潤滑油によっ
て比較的良好な加工特性を得られている、ステンレス鋼
以外の鉄系の板金に機械加工等を施す場合においても、
潤滑油が床に落下し、さらには地面に落下して地中に深
く進入し、地下水やその他の地下資源を汚染し、公害問
題を問題を引き起こす要因となる。したがって、腐食性
の金属材料を加工する際においても、油分を含まないで
かつ良好な潤滑特性を有する潤滑剤の開発が強く要望さ
れていた。
【0030】本発明は、上記従来の問題点を解決するた
め、ステンレス鋼等の高耐蝕性金属材料の加工に際して
は、加工対象となる金属材料の加工のための潤滑だけで
はなく、耐蝕性の材質からなる加工設備の潤滑をも良好
に行なうことのでき、また、ステンレス鋼以外の鉄系の
材料のような腐食性の金属材料を加工する際にも、被加
工材に錆を生じさせることなく、しかも良好な潤滑特性
を得ることのできる、油分を含まない潤滑材を提供する
ことを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する請求
項1に記載の本発明の金属部材の加工方法は、雄型と雌
型との間に金属板材を挟んで押圧成形するプレス加工に
おいて、潤滑剤として、界面活性剤を主成分とする液状
合成洗剤に防錆剤を含有させた液体を前記金属板材に供
給することを特徴とする。
【0032】この加工方法によれば、たとえばステンレ
ス鋼のように、比較的加工加工硬化が生じやすい高耐蝕
性金属材料のプレス加工に適用した場合、工具と被加工
物との間の摩擦によって発生する熱により、主成分であ
る界面活性剤とその他の潤滑に寄与する成分以外の不要
成分が蒸発し、界面活性剤を含む潤滑に寄与する高い粘
度の物質が被加工物表面に残留して皮膜を形成する。こ
のような界面活性剤を主成分とする高い粘度の物質は、
ステンレス鋼板等のように比較的滑らかな表面にも強固
に付着して皮膜を形成しやすいため、プレス加工時にお
いても金型によって弾き飛ばされることなく、雄型およ
びと雌型と被加工部材との間の良好な潤滑性を確保す
る。
【0033】また、形成された界面活性剤の皮膜は、油
性の潤滑剤のような大きな冷却作用を有することないた
めに、加工中に発生した熱を被加工部材中に保持され、
熱伝導によって熱が均等化されて、被加工部材の温度が
適度に高温に保たれる。その結果として、一種の焼鈍が
施されたのと同様の熱処理効果が得られて、加工中に一
旦生じた加工硬化が緩和されるため、断続的に繰り返さ
れるプレス加工を順調に行なわせることができる。ま
た、潤滑性が向上するため、加工中の摩擦音も大幅に低
減させることができる。
【0034】さらに、潤滑剤として用いる液体に防錆剤
を含有するため、腐食性を有する加工機械等の加工設備
に付着したとしても、錆を生じさせる要因とはならない
ため、潤滑剤が飛び散らないように遮蔽するための手段
を用意する必要がない。
【0035】また、ステンレス鋼以外の鉄系のような腐
食性の金属材料を加工する際の潤滑剤として適用する場
合においても、液状合成洗剤に含まれる界面活性剤の作
用によって良好な潤滑特性が得られ、防錆剤の作用によ
って腐食が防止される。したがって、従来鉱物油等によ
り潤滑が行なわれていたステンレス鋼以外の鉄系の金属
材料の加工においても、油分を含まない潤滑剤を用いて
良好な加工特性が得られることから、潤滑剤に油分を含
むことに起因する種々の問題点が解消するという、画期
的な効果を得ることができる。
【0036】請求項2に記載の本発明の金属部材の加工
方法においては、金属材料素材に加工を施して所定の部
材を形成する際に、潤滑剤として、液状合成洗剤および
防錆剤を含む液体を用いる。
【0037】この加工方法によれば、たとえばステンレ
ス鋼のように、比較的加工加工硬化が生じやすい高耐蝕
性金属材料に、液状合成洗剤中に主成分として含有され
る界面活性剤の良好な潤滑特性により、種々の加工を順
調に施すことができる。高耐蝕性金属材料の加工におい
て、鉱物油等の油性の潤滑剤に換えて、液状合成洗剤を
潤滑剤として用いることにより、良好な加工特性が得ら
れる理由は、次のように考察される。
【0038】液状合成洗剤には、通常20wt%程度以
上の界面活性剤が含有されており、加工において工具と
被加工物との間の摩擦によって発生する熱により、主成
分である界面活性剤およびその他の潤滑に寄与する、比
較的蒸発しにくい高い粘度の成分のみを残して、その他
の不要成分が蒸発し、高純度の界面活性剤が被加工物表
面に残留して皮膜を形成する。このような高純度の界面
活性剤の皮膜の作用によって、加工の際の工具と被加工
物との間の滑りが良好に保たれる。また、皮膜を構成す
る高純度の界面活性剤は、その冷却作用は、鉱物油等の
油性の潤滑剤に比べて弱いものである。
【0039】そのため、たとえば図2に示したTナット
の軸部の多段絞り工程において、一つの段の絞りによっ
てTナットの軸部の底部近傍に加工硬化が生じたとして
も、Tナットの表面に皮膜を形成した合成洗剤がその部
分から熱を奪う速さが、油性の潤滑剤を用いた場合に比
べて遅くなる。そのために、Tナット内部において生じ
た熱の、Tナット表面から外への放散が比較的減少し、
Tナット内部における熱伝導により、Tナット全体とし
て比較的高温を保った状態で温度が均等化される。その
結果、絞りによって一旦加工硬化が生じたTナットの軸
部の底部近傍が、硬化状態から、次の段の絞りを良好に
行なえる程度に柔軟性が回復し、加工硬化に伴う加工性
の劣化が低減される。このような現象が各段の絞り工程
において生じることにより、多段の絞り工程が良好に流
れるようになるものと考えられる。
【0040】また、潤滑剤として用いる液体に防錆剤を
含有するため、腐食性を有する加工機械等の加工設備に
付着したとしても、錆を生じさせる要因とはならないた
め、潤滑剤が飛び散らないように遮蔽するための手段を
用意する必要がない。
【0041】さらに、ステンレス鋼以外の鉄系のような
腐食性の金属材料素材を加工して所定の部材を形成する
際の潤滑剤として適用する場合においても、液状合成洗
剤に含まれる界面活性剤の作用によって良好な潤滑特性
が得られ、防錆剤の作用によって腐食が防止される。し
たがって、従来鉱物油等により潤滑が行なわれていたス
テンレス鋼以外の鉄系の金属材料の加工においても、油
分を含まない潤滑剤を用いて良好な加工特性がえられる
ことから、潤滑剤に油分を含むことに起因する種々の問
題点が解消するという、画期的な効果を得ることができ
る。
【0042】このような液状合成洗剤による作用効果
は、絞り工程のみではなく、Tナットの雌ねじ形成のた
めのタッピングや、その他の切削加工などの機械加工に
おいても同様に発揮される。
【0043】以上述べたように、請求項1または2に記
載の金属部材の加工方法においては、液状合成洗剤を潤
滑剤として用いることから、従来のように、潤滑剤中の
油が地面にこぼれて地中に浸透し、地下水等を汚染する
という問題も回避され、環境汚染防止という観点からも
大きな効果を奏するものである。
【0044】本発明の金属部材の加工方法は、他の局面
においては、請求項3に記載のように、金属の板材に加
工を施して所定の部材を形成する際に、潤滑剤として、
界面活性剤を主成分とし、さらに、少なくともポリオキ
シエチレンアルキルエーテル、アルキル系硫酸エステ
ル、脂肪酸および防錆剤を含有する液体を用いる。
【0045】この加工方法によれば、請求項1あるいは
2に記載の加工方法と同様の作用によって、ステンレス
鋼等のような高耐蝕性の金属材料あるいはステンレス以
外の鉄系の腐食性の金属材料のいずれからなる部材の加
工においても、良好な潤滑特性を得ることができるとと
もに、潤滑剤が油分を含むことに起因する主事の問題点
が解消する。
【0046】請求項2および3に記載の本発明の金属部
材の加工方法は、請求項4に記載のように、金属材料か
らなる板材の絞り加工に適用することが特に好ましく、
たとえば請求項5に記載のように、金属の板材からTナ
ットの軸部を形成するための複数段の絞り加工を含むプ
レス加工に、特に効果的に使用される。
【0047】またTナットの加工においては、その軸部
の絞り加工に限ることなく、請求項6に記載のように、
軸部内周に雌ねじを形成するためのねじ切り加工におい
ても同様に、請求項2または3に記載の加工方法が適用
可能であるため、請求項7に記載のように、金属の板材
からTナットの軸部を形成するための複数段の絞り加工
と、該Tナットの軸部内周に雌ねじを形成するためのね
じ切り加工とを含む一連の加工に、本発明の加工方法を
有効に適用することが可能である。
【0048】また、このような潤滑剤をTナットの雌ね
じ形成工程に使用することにより、請求項8に記載のよ
うに、当該雌ねじ形成工程の前において焼鈍工程を経る
ことなく、タッピング加工を行なうことが可能となる。
その理由は、冷却効果を抑えて潤滑効果のみを発揮する
ことによって、Tナットの中間製品がタッピング中に適
度に昇温することにより、焼鈍と同様の熱処理効果が生
じて、タッピング加工を容易化するためであると考えら
れる。
【0049】さらに、金属部材を形成する加工を行なう
に際して、潤滑剤として 液状合成洗剤および防錆剤を
含む液体を用いるという本発明の基本的な手法は、請求
項9に記載のように、金属からなる板材または線材を圧
延ロールによって圧延加工する際に、あるいは、請求項
10に記載のように、金属材料の線材からナット自体を
形成する際、あるいはそのナットに雌ねじを形成するね
じ切り加工を施す際にも、有効に適用することが可能で
あり、それらの加工においても良好な加工特性を得るこ
とができる。
【0050】さらに本発明は、請求項11に記載のよう
に、加工対象となる金属材料自体を加工するための潤滑
油としてだけではなく、加工対象となる金属材料に加工
を施すための加工機械等の加工設備の潤滑剤としても、
液状合成洗剤および防錆剤を含む液体を用いる加工方法
も含まれる。
【0051】このように、加工設備の潤滑剤としても、
液状合成洗剤および防錆剤を含む液体を用いることによ
って、油分を含まない潤滑油によって加工機械等をも良
好に潤滑可能となるため、油分を含む潤滑剤を用いるこ
との種々の弊害の解消がさらに徹底されることになると
ともに、加工対象部材の加工自体のための潤滑と加工機
械の潤滑とを分離することなく行なえるという、画期的
な効果を得ることができる。
【0052】
【発明の実施の形態】
実施の形態1 まず、本発明の実施の形態1として、特にステンレス鋼
からなる板材からステンレス製Tナットを製造する場合
を例に挙げて説明する。なお、ステンレス製Tナットを
製造する場合においても、その軸部を形成するための多
段絞り工程を含めて、基本的には、図1および図2に基
づいて説明した、炭素鋼板からTナットを製造する場合
とほぼ共通の順送プレス工程を採用することができるた
め、以下の本発明の実施の形態の説明においては、図1
および図2に基づいて共通の参照番号を用いて、その詳
細な説明を省略する。
【0053】本実施の形態においては、図2を参照し
て、まず、JIS規格のSUS304等のステンレス鋼
材からなる長手の帯状の金属板10が用意される。この
金属板10は、矢印Xで示すように、その長手方向に所
定のピッチずつ間欠的に順送りされながら、各停止位置
において、それぞれ所望の加工が施される。順送りされ
る金属板10の上面には、図2(b)の右端に示すよう
に、潤滑剤供給装置の供給口50から、液状の合成洗剤
に防錆剤を含有した液体が潤滑剤として連続的に供給さ
れる。
【0054】図2(a)(b)の加工区間i〜vii に示
した工程およびその後の爪37〜40等の成形工程は、
上記従来の技術の場合と同様に行なわれる。なお、合成
洗剤によって、加工機械の摺動部のベアリング等を潤滑
する潤滑油を除去されてしまうことのないように、加工
機械の摺動部への合成洗剤の付着を防止するための遮蔽
手段を設けることが好ましい。ただし、防錆剤を含有し
ていることから、潤滑剤が金型やその他の、腐食性の鉄
系金属からなる加工設備に付着したとしても、錆を発生
させることが防止される。
【0055】このように、本実施の形態においては、上
記従来の技術において用いられていた鉱物油等の油性の
潤滑剤や、従来のステンレス鋼板の絞り工程などに用い
られていた水溶性の潤滑剤に換えて、液状の合成洗剤に
防錆剤を含有した液体を潤滑剤として用いることによ
り、従来の順送プレス工程における加工方法に対して、
たとえばプレス荷重や加工速度等のような、潤滑剤の種
類以外の加工条件のすべてについて変更することなく、
加工特性を大幅に向上することができる。しかも、含有
される防錆剤の作用によって、金型やその他加工設備に
付着したとしても、錆を発生させることが防止される。
【0056】複数段の絞り工程を経た後において、加工
中の応力や摩擦に伴う熱の発生に起因して、被加工部材
の表面がわずかに変色するが、その変色は、水洗いによ
り、製品としての美観を損なわない程度に除去可能であ
る。また、潤滑剤としての合成洗剤の使用量を増加する
ことによって、加工後のそのような変色の発生を大幅に
低減することも可能である。
【0057】フランジ部33の外周部に爪37〜40を
形成し、金属板10から切り離してバレル研磨されたT
ナットの中間製品は、上記従来の場合と同様に、次工程
におけるタッピング加工に備えて真空炉での焼鈍が施さ
れる。本実施の形態で用いられる潤滑剤としての液状合
成洗剤は、可燃性の成分を含まないことから、焼鈍前に
おいて特に洗浄して除去する必要はなく、焼鈍前にある
程度乾かしておくだけで十分である。また、除去するこ
とが好ましい場合においても、合成洗剤は水溶性である
ために、水洗いによって容易に除去可能である。したが
って、上記従来例において必要であったトリクレン等に
よる洗浄工程が不要となり、工程の簡略化が図れること
になる。これらのことは、金型やその他の加工設備に錆
を発生させない程度に防錆剤が含有していることによ
り、何ら損なわれるものではない。
【0058】真空炉において焼鈍されたTナットの中間
製品は、タッピングマシンに供給されて、軸部32の雌
ねじ形成部分35の内周面上に、雌ねじ36を形成する
ためのタッピング加工工程が実施される。本実施の形態
においては、このタッピング加工においても、順送プレ
ス工程と同様に、潤滑剤として、液状の合成洗剤に防錆
剤を含有した液体が用いられる。このように、雌ねじ3
6の形成工程においても、潤滑剤として液状合成洗剤に
防錆剤を含有した液体を用いることによって、従来のタ
ッピング加工と同一の加工条件下で、良好なねじ切り加
工を行なうことができ、しかも、タッピング加工機など
の加工設備に錆を発生させることが防止される。
【0059】なお、上記実施の形態においては、Tナッ
トの中間製品を焼鈍した後にタッピング加工を施すこと
としたが、雌ねじ形成のためのタッピング加工において
潤滑剤として液状の合成洗剤を用いることにより、タッ
ピング加工前の焼鈍工程を行うことなくタッピング加工
を施しても、良好なタッピングを進行させることができ
ることが実証されている。このように、タッピング加工
前における焼鈍工程を省略できる理由は、タッピング加
工中の加工熱が被加工材内部に保持されて均一化し、焼
鈍とほぼ同様の熱処理効果が得られることから、一旦生
じた加工効果も即時に緩和されるためであると推察され
る。
【0060】また、上記実施の形態においては、図1に
示すような、ほぼ八角形のフランジ部33の外周部に爪
37〜40を形成した、いわゆるホッパーフィードTナ
ットの形成工程を例に挙げたが、その軸部32の絞り工
程や雌ねじ36のタッピング工程については、フランジ
部33の形状とは無関係に共通するものである。したが
って、上記実施の形態の絞り工程およびタッピング工程
は、フランジ部に爪を有しないTナットや丸形フランジ
などの他の形状のフランジ部を有するTナットの形成工
程にも共通に適用可能であることは言うまでもない。
【0061】以下、上記実施の形態で説明した、ステン
レス製Tナットの順送プレス加工における、液状合成洗
剤に防錆剤を含有した液体を潤滑剤として用いた場合の
良好な加工特性を実証するために行なった、ステンレス
製Tナットの加工実験において使用した種々の合成洗剤
の成分とそれぞれの加工特性を、下記の表2および表3
に示す。また、比較例として行なった、信越化学製のエ
マルジョン系の4種類のシリコーンオイルを潤滑剤とし
て用いた同様の加工実験の結果を、表4に示す。なお、
本発明における「液状合成洗剤」は、たとえば表2およ
び表3に列挙した市販の商品のように、界面活性剤を主
成分とし、洗剤として必要なその他の成分を含有する液
体洗剤を包含するものである。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】上記各表に示した本発明品A〜Iはそれぞ
れ、各表の注に記しているように、表注に示された組成
の液状合成洗剤に、防錆剤(日本工作油社製のP531
0およびP5960)を0.1重量%含有して、液状の
潤滑剤を構成している。上記各表に示した実験結果か
ら、表2および表3に示した本発明品A〜Iを潤滑剤と
して用いた場合、表4に示した比較品J〜Mのシリコー
ンオイルを用いた場合に比べて、全体として、絞り加工
の連続性を含めて良好な加工特性が得られていることが
わかる。また、本発明品A〜Iの合成洗剤の中でも、界
面活性剤の含有量が多い程良好な加工特性が得られるこ
とがわかり、界面活性剤がステンレス鋼材の絞りおよび
タッピングの加工性向上に寄与していることが実証され
たと言える。さらに、本発明品A〜Iの合成洗剤による
実験結果の対比から、主成分とする界面活性剤に加え
て、さらに、少なくともポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル、アルキル系硫酸エステルおよび脂肪酸を含有す
る合成洗剤を用いた場合、特に顕著な効果があるといえ
る。
【0066】また、本発明品A〜Iの合成洗剤を潤滑剤
として用いた場合、比較品J〜Mのシリコーンオイルを
用いた場合に比べて、概して加工中の摩擦音が大幅に低
減されており、このことからも、本発明の加工方法によ
って潤滑特性が向上していることがわかる。
【0067】また、上記実施の形態で説明した、ステン
レス製Tナットの雌ねじ形成のためのタッピング加工に
おける、液状合成洗剤を潤滑剤として用いた場合の良好
な加工特性を実証するために、表2および表3に示した
本発明品A〜Iの、合成洗剤に防錆剤を0.1重量%含
有する液体を潤滑剤として用いた場合、表4に示した比
較品J〜Mのシリコーンオイルを用いた場合について、
ステンレス製Tナットの焼鈍後の中間製品および焼鈍前
の中間製品の両方のタッピング加工実験を実施した。こ
の実験には、タッピングマシンを用い、ミリサイズM8
×1.25およびインチサイズ5/16−18のタップ
サイズを有するベンドタップを使用した。その結果、焼
鈍後の中間製品および焼鈍前の中間製品のいずれについ
ても、加工特性に関して、表2〜表4に示した絞り加工
の場合とほぼ同様の傾向の結果が得られた。また、潤滑
剤がタッピング加工機に付着した箇所においても、錆を
発生することがないことが確認された。
【0068】このことから、ステンレス鋼の加工におい
て界面活性剤を主成分とする液状合成洗剤に防錆剤を含
有する液体を潤滑剤として用いるという本発明の方法
が、絞り加工だけでなく、ねじ切り等の切削加工にも有
効に適用可能であることが実証されたと言える。また、
焼鈍を経ないステンレス製Tナットの中間製品において
も、焼鈍を経た中間製品とほぼ同様のタッピング特性が
得られたことから、液状合成洗剤に防錆剤を含有する液
体を用いた潤滑により、加工中に発生す熱が潤滑剤に吸
収されずに被加工物内に維持されるために、焼鈍と同様
の加工硬化を緩和する現象が生じているものと考えられ
る。したがって、金属板10から分離されたステンレス
製Tナットの中間製品に対して、焼鈍工程を経ることな
くタッピング加工を施すという、画期的な生産工程を実
現可能であることが実証されたと言える。
【0069】なお、本実施の形態の金属部材の加工方法
は、ステンレス製Tナットに限らず、ビルの火災防止用
のスプリンクラーに用いられるステンレス製フレキシブ
ルチューブの成形加工や、図6に示した圧延ロール6
1,62を用いてステンレス鋼板(あるいはステンレス
線材)63の冷間圧延等を行なう圧延工程、ステンレス
鋼の線材から鍛造によって図7(a)(b)に示す蝶ナ
ットのようなナットの中間製品を製造する工程、および
そのナットの中間製品にタッピングによって雌ねじを形
成する工程等に、幅広くかつ有効に適用することが可能
である。
【0070】実施の形態2 次に、本発明の実施の形態2として、ステンレス鋼に比
べて耐蝕性が劣る鉄系の金属板である炭素鋼板からTナ
ットを製造する際に、本発明の潤滑剤を適用する場合に
ついて説明する。
【0071】本実施の形態に関連して本発明者は、まず
予備実験として次のようなテストを行ない、本発明の潤
滑剤がステンレス鋼に比べて耐蝕性が劣る炭素鋼板を被
加工部材とする場合にも適用可能かどうか検討した。 i.日本工作油製の防錆剤(商品番号:P5310およ
びP5960)を、P&G社製の「液体ボーナス」に
0.1重量%程度含有させて、上記の表3に示した本発
明品Iと同じ組成の潤滑剤を作製した。 ii.防錆剤を全く含まない液体ボーナスを炭素鋼板(J
IS規格のSPCC)の表面に付着させたものと、上記
i.で作製した潤滑剤(液体ボーナスに防錆剤を0.1
重量%程度含有させた液体)を同じ炭素鋼板の表面に付
着させたものとを準備し、両者を同一条件下で放置し
た。 iii.両者の放置を開始した後、一定時間経過後、防錆剤
を全く含まない液体ボーナスを炭素鋼板の表面に付着さ
せたものには、周囲から急速に錆が発生した。それに対
して、上記i.で作製した潤滑剤を同じ炭素鋼板の表面
に付着させたものについては、同じ時間経過後も、錆の
発生を目視することはできなかった。すなわち、界面活
性剤を主成分とする液状合成洗剤に0.1重量%程度の
防錆剤を含有させた液体を潤滑剤として用いて、ステン
レス鋼に比べて耐蝕性の劣る炭素鋼板などの鉄系の金属
材料を被加工部材とする加工を行なう可能性があること
が確認された。
【0072】次に、上記予備実験によって裏付けられた
結果を、Tナットの実際の製造工程においても適用可能
であることを実証する目的で、本発明の実施の形態2と
して、ステンレス鋼のような高耐蝕性を有しない鉄系の
金属板である炭素鋼板からTナットを製造する場合にお
いて、上記実施の形態1と同様に、表2〜表4に示した
本発明品A〜Iの潤滑剤を用いて、上記実施の形態1と
同様の製造実験を行なった。なお、この場合において
も、その軸部を形成するための多段絞り工程を含めて、
基本的には、図1および図2に基づいて説明したTナッ
トを製造する場合とほぼ共通の順送プレス工程を採用す
ることができるため、本実施の形態における製造工程の
詳細な説明を省略する。
【0073】本実施の形態のように、ステンレス鋼に比
べて耐蝕性の劣る炭素鋼板からTナットを製造する場合
においても、その加工特性は、表2〜表4に示した上記
実施の形態2とほぼ同様の結果がえられるとともに、防
錆剤の作用によって、被加工部材である炭素鋼板および
金型等の加工設備のいずれにおいても、錆を生じさせる
ことなく、Tナットを製造することができた。
【0074】また、本実施の形態においては、比較例と
して、本発明品A〜Iのそれぞれと同様の成分の液状合
成洗剤のみからなり、防錆剤を含有しない潤滑剤を用い
た場合についても、同様に製造実験を試みたところ、被
加工部材である炭素鋼板に、急速に錆が発生することが
確認された。すなわち、炭素鋼板のように、ステンレス
鋼に比べて耐腐食性の劣る金属材料に加工を施す際に、
液状の合成洗剤を潤滑剤として用いる場合には、被加工
部材に錆を発生させることなく加工するためには、0.
1重量%程度あるいはそれ以上の防錆剤を合成洗剤に含
有させることが必要であることがわかる。
【0075】なお、本実施の形態の金属部材の加工方法
も、炭素鋼板製Tナットに限らず、図6に示した圧延ロ
ール61,62を用いて炭素鋼板(あるいは炭素鋼製線
材)63の冷間圧延等を行なう圧延工程、炭素鋼の線材
から鍛造によって図7(a)(b)に示す蝶ナットのよ
うなナットの中間製品を製造する工程、およびそのナッ
トの中間製品にタッピングによって雌ねじを形成する工
程等に、幅広くかつ有効に適用することが可能である。
【0076】また、上記実施の形態は、本願発明を具現
化した単なる例示に過ぎず、本願発明は、特許請求の範
囲に記載した構成に均等の範囲で変更を加えた種々の態
様を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、従来の技術および本発明の実施の形
態として例に挙げた加工工程によって製造されるTナッ
トの完成品を説明するための斜視図、(b)は、そのT
ナットの縦断面図である。
【図2】(a)は、図1に示したTナットを得るために
金属板に対して順次施される加工状態を示す平面図、
(b)はそのIIB−IIB線断面図である。
【図3】(a)(b)(c)はそれぞれ、絞り加工にお
ける加工特性の詳細を説明するために、図2(b)の加
工区間iii ,ivおよびvの断面を分離し、拡大して示す
断面図である。
【図4】図1に示したTナットを得るために、Tナット
の中間製品の軸部内周に雌ねじを形成するタッピング加
工装置の要部を示す斜視図である。
【図5】図4に示したタッピング装置において、ベンド
タップによりTナットが順次ねじ切りされる様子を説明
するための図である。
【図6】本発明の金属部材の加工方法を適用することが
可能な、圧延ロールを用いたステンレス鋼板の圧延工程
を模式的に示す図である。
【図7】(a)は、本発明の金属部材の加工方法を適用
することが可能な、ステンレス鋼の線材の鍛造とタッピ
ングによって製造される蝶ナットを示す平面図、(b)
はその一部断面正面図である。
【符号の説明】
10 金属板 21a,21b,21c ダイス(雌型) 23a,23b,23c ポンチ(雄型)

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 雄型と雌型との間に金属板材を挟んで押
    圧成形するプレス加工において、潤滑剤として、界面活
    性剤を主成分とする液状合成洗剤に防錆剤を含有させた
    液体を前記金属板材に供給することを特徴とする、金属
    部材の加工方法。
  2. 【請求項2】 金属材料素材に加工を施して所定の部材
    を形成する際に、潤滑剤として液状合成洗剤に防錆剤を
    含有させた液体を用いる、金属部材の加工方法。
  3. 【請求項3】 金属の板材に加工を施して所定の部材を
    形成する際に、潤滑剤として、界面界面活性剤を主成分
    とし、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキル
    系硫酸エステル、脂肪酸および防錆剤をさらに含む液体
    を用いる、金属部材の加工方法。
  4. 【請求項4】 前記加工が板材の絞り加工工程を含む、
    請求項2または3に記載の金属部材の加工方法。
  5. 【請求項5】 前記所定の部材がTナットであって、前
    記加工が、金属の板材からTナットの軸部を形成するた
    めの複数段の絞り加工を含むプレス加工である、請求項
    3記載の金属部材の加工方法。
  6. 【請求項6】 前記所定の部材がTナットであって、前
    記加工が、該Tナットの軸部内周に雌ねじを形成するた
    めのねじ切り加工である、請求項3記載の金属部材の加
    工方法。
  7. 【請求項7】 前記所定の部材がTナットであって、前
    記加工が、金属の板材からTナットの軸部を形成するた
    めの複数段の絞り加工と、該Tナットの軸部内周に雌ね
    じを形成するためのねじ切り加工とを含む一連の加工で
    ある、請求項3記載の金属部材の加工方法。
  8. 【請求項8】 金属の板材からTナットの軸部を形成す
    るための複数段の絞り加工を経て、雌ねじを形成する前
    のTナットの中間製品を完成した後、焼鈍工程を経るこ
    となく、該Tナットの軸部内周に雌ねじを形成するため
    のねじ切り加工を行なう、請求項7記載の金属部材の加
    工方法。
  9. 【請求項9】 金属材料の板材または線材を、圧延ロー
    ルによって圧延加工する際に、潤滑剤として液状合成洗
    剤および防錆剤を含む液体を用いる、金属部材の加工方
    法。
  10. 【請求項10】 金属材料の線材からナットの中間製品
    自体を形成する際、および/または当該ナットの中間製
    品に雌ねじを形成するねじ切り加工を施す際に、潤滑剤
    として液状合成洗剤および防錆剤を含む液体を用いる、
    金属部材の加工方法。
  11. 【請求項11】 加工対象となる金属材料に加工を施す
    ための加工設備の潤滑剤としても、液状合成洗剤および
    防錆剤を含む液体を用いる、請求項1ないし10のいず
    れかに記載の金属部材の加工方法。
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