JPH11111633A - イオン注入シミュレーション方法及びイオン注入シミュレーションプログラムを格納した記録媒体 - Google Patents

イオン注入シミュレーション方法及びイオン注入シミュレーションプログラムを格納した記録媒体

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JPH11111633A
JPH11111633A JP26742097A JP26742097A JPH11111633A JP H11111633 A JPH11111633 A JP H11111633A JP 26742097 A JP26742097 A JP 26742097A JP 26742097 A JP26742097 A JP 26742097A JP H11111633 A JPH11111633 A JP H11111633A
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ion
scattering
ions
ion implantation
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Sanae Fukuda
早苗 福田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 計算時間の増大を招くことなく、イオン注入
直後の実際のイオン注入分布を高精度に再現することが
できるイオン注入シミュレーション方法を提供する。 【解決手段】 ターゲット物質中における個々の注入イ
オンの散乱を逐次追跡しながら注入イオンが原子核との
散乱及び電子との散乱により失うエネルギーを計算して
個々の注入イオンの静止位置を求めることにより、注入
イオンの濃度分布を計算する、モンテカルロ法を用いた
イオン注入シミュレーション方法で、電子損失の計算に
用いられる電子濃度を、注入イオンが所定の電子濃度を
通過する確率を予め計算しておき、その確率に基づき一
様乱数を用いて決定する。従って、電子損失の計算に電
子濃度分布の効果が取り込まれ、計算時間が増えること
もない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体製造工程の
シミュレーション方法に関し、特に、イオン注入工程の
シミュレーション方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体製造工程では、シリコンなどにヒ
素、ホウ素、リンなどの不純物を制御性よく導入する手
段としてイオン注入技術が広く用いられている。注入さ
れた不純物イオンは打ち込まれたターゲット物質(例え
ば、シリコン)の原子に散乱されながらエネルギーを失
って静止する。散乱はイオンと原子の相対的な位置関係
によりランダムなパラメータを含み、イオン種とイオン
注入条件(加速エネルギー・ドーズ量・注入角度など)
によって決まる注入分布を形成する。この分布はターゲ
ット物質が決まれば再現性よく制御できるので、シミュ
レーションにおいてもイオン注入工程は注入されるイオ
ンのターゲット物質中での分布を適当な分布関数で表す
ことによって実現することが可能である。代表的な加速
エネルギー・ドーズ量に対して分布関数のパラメータを
テーブルとして持っておくことにより、計算したい条件
で注入したイオンの分布を比較的よい精度で高速に求め
ることができる。
【0003】しかし、上述した事柄は、ターゲットとな
る物質に構造がない場合(例えば、ターゲット物質が非
晶質である場合)に有効であって、ターゲット物質に構
造がある場合、例えばターゲット物質が密度や組成・構
成元素などが異なる複数の物質が重なってできている場
合や、単一元素で構成されていても、シリコン基板のよ
うに結晶構造を有し、原子との散乱確率がイオンの進行
方向によって著しく変化する場合などでは事情が少し異
なってくる。そして、上記のように、簡単な分布関数の
パラメータだけでは注入後の不純物の分布を精度よく表
すことはできない。
【0004】このような問題に対し、イオン注入のシミ
ュレーションにおいては、上記のような解析的分布関数
を用いる方法に加えて、個々のイオンがターゲット物質
の中で繰り返す散乱過程をイオンがエネルギーを失って
静止するまで追跡し、それを多くの個数の粒子に対して
計算して最終的なイオンの注入分布を計算する方法があ
る。個々のイオンの散乱過程を追跡するので、計算時間
は前記の分布関数による方法と比べて桁違いに長くかか
るが、どのような構造のターゲット物質に対しても高精
度で計算できるのがこの方法の特徴である。この方法
は、イオンを代表する粒子とターゲット原子との相対位
置を求める際に乱数を使うため、モンテカルロ法(J.P.
Biersack and L.G.Haggmark:Nuclear Instruments and
Methods,174(1980)pp.257-269 )の名前で呼ばれる。以
下にその具体的な計算方法を説明する。
【0005】まずイオンは前述のようにターゲット物質
に入射されると近くの原子に散乱される。第1に、イオ
ンは物質の原子の原子核の正電荷によってクーロン散乱
を受ける。原子核の周りには電子がいるため、イオンの
原子核によるクーロン散乱は、これらの電子に遮蔽され
たクーロンポテンシャルによる散乱で記述できる。重心
系で見れば原子核散乱は二体弾性散乱で、イオンの運動
方向は変わるが全体のエネルギーは保存される。しかし
実験室系で考えると散乱相手の原子核が反跳を受ける
分、イオンはエネルギーを失う。この原子核との散乱で
イオンが失うエネルギーを核損失と呼ぶ。また、第2
に、ある原子の原子核に散乱されてから、次の原子核に
散乱されるまでの間、イオンは原子の電子を励起したり
電離したりしながら進んでいく。このときの電子による
散乱は非弾性散乱であり、イオンはエネルギーを失うが
イオンに比べて電子は軽いのでイオンの運動方向は変わ
らない。電子による散乱で失うエネルギーを電子損失と
呼ぶ。この二種類の散乱を繰り返しながら注入されたイ
オンは次第にエネルギーを失い、最後には静止する。
【0006】原子核による散乱に関しては、まず、ター
ゲット物質がアモルファス、すなわち原子配列がランダ
ムな場合、イオンが次に散乱される相手原子の位置は、
その物質の原子数密度に基づいて乱数を使って求め、イ
オンの進行方向に対して相手原子の中心からおろした垂
線の長さで定義されるインパクトパラメータとして表現
される。このパラメータはメモリ等に保存され、その後
の計算に用いられる。一方、ターゲット物質が原子が規
則正しく配列しているシリコン結晶などの場合、前回の
散乱相手の位置座標をもとに次の散乱相手となる原子の
位置を求めることができる。但し、原子の熱振動(零点
振動も含む)があるためイオンと原子核の相対位置は一
意的には決まらず、乱数を用いてこの振動の効果を取り
入れる必要がある。さらに、ターゲット物質が規則正し
い原子配列をしている部分とアモルファス状態の両方を
含む場合には、上記二種類の扱いを合わせて用いればよ
い。
【0007】一方、電子による散乱に関しては、ある一
つの原子核との散乱とその次の原子核との散乱の間にイ
オンは運動方向を変えることなく電子の海の中を進行す
るものと考えればよい。この散乱と散乱との間の距離を
一般に自由行程と呼ぶ。自由行程を進む間に電子との散
乱によってイオンが失うエネルギーはイオンの速度と電
子の数密度に依存する。電子数密度としては、従来、空
間的に均一な値、すなわち電子の平均的な濃度を使用す
ることが多く、この値は原子の数密度と原子に属する電
子の数から求めることができる。
【0008】しかし、より微視的に扱うには、空間的に
均一の電子濃度ではなく、イオンの進む軌跡に沿って電
子の密度を求め、その値に応じた電子によるエネルギー
損失を計算すべきである。シリコン結晶のように方向に
よって原子密度、すなわち電子密度の濃淡に著しく差が
ある場合、電子濃度の濃いところを通過するイオンは長
い距離進まないうちにエネルギーを失い、比較的表面か
ら浅いところで止まり、電子濃度の薄いところを通るイ
オンは同じ距離進んでもあまりエネルギーを失わず、深
いところまで進入することになるからである。
【0009】ここで、電子密度は原子核からの位置の関
数であるので、イオンの軌跡に沿って逐次電子密度を求
めることは理論的には可能である。しかし、実際には通
常のモンテカルロ計算よりはるかに長い計算時間が必要
となり、実用的ではない。
【0010】また、電子の平均的な濃度を用いるよりは
多少精度のあがる方法として、上記インパクトパラメー
タをイオンと原子核の相対距離の代表値として考え、イ
オンの軌跡が原子核から離れるほど電子濃度が低くなる
ようにインパクトパラメータ値の指数関数で減少する電
子損失計算モデルが提案されている(Gerhard Hobleret
al., SISDEP'91 PP.389-398 )。しかし、この方法を
用いても、シリコン結晶中で電子損失が不純物の注入分
布に大きな影響を与えるホウ素などの軽いイオンの注入
に対しては、いわゆるチャネリング効果と呼ばれる一部
の注入イオンが深くまで到達する現象を十分に再現する
ことはできなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】このように、モンテカ
ルロ法を用いたイオン注入工程のシミュレーションで
は、注入された不純物イオンが電子との散乱により失う
エネルギー(電子損失)の計算精度が十分ではなかっ
た。従って、シミュレーションによって得られるイオン
注入直後の不純物分布は十分に正確なものではなかっ
た。
【0012】特に、ターゲット物質が結晶構造を有する
ような場合や、電子密度の空間的分布がイオンの飛程に
大きく影響するような場合には、電子損失を過大評価し
てしまうことが多く、そのためチャネリング現象のよう
な深くイオンが進入してしまう現象を計算することはで
きないという問題があった。
【0013】本発明は上記事情に鑑みて成されたもので
あり、計算時間の増大を招くことなく、イオン注入直後
の実際のイオン注入分布を高精度に再現することができ
るイオン注入シミュレーション方法を提供するものであ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は、ターゲット物質中における個々の注入
イオンの散乱を逐次追跡しながら注入イオンが原子核と
の散乱及び電子との散乱により失うエネルギーを計算し
て個々の注入イオンの静止位置を求めることにより、注
入イオンの濃度分布を計算する、モンテカルロ法を用い
たイオン注入シミュレーション方法において、電子損失
を計算する際には、注入イオンが所定の電子濃度を通過
する確率を予め計算し、一様乱数を用いて個々の注入イ
オンが通過する電子濃度を決定し、電子損失を計算する
ことを特徴とするイオン注入シミュレーション方法であ
る。
【0015】上記構成によれば、計算時間をほとんど増
大させることなく電子濃度分布をより現実に近い形でシ
ミュレーションに取り込むようにしたので、イオン注入
直後の不純物分布をより正確に得ることが可能となる。
【0016】すなわち、従来では、ターゲット物質中の
電子濃度分布を空間的に均一であると見なし、電子損失
を計算していたので、特に、電子濃度の小さい領域を他
と比較してより多く通過した注入イオンが他のイオンよ
りも深くターゲット物質中に進入してしまう現象を忠実
に再現することは不可能であった。また、逆に、電子濃
度分布を注入イオンの軌跡に沿って逐次計算し、それに
基づいて電子損失を計算することも理論的には可能であ
ったが、現実には計算時間が膨大であり実行することは
ほとんど不可能であった。そこで、本発明では、ターゲ
ット物質中の電子濃度分布を近似するモデルを予め用意
し、それに基づき所定の範囲の電子濃度でターゲット物
質中の空間を分割し、各分割された区間を注入イオンが
通過する確率を求め、一様乱数を用いて各注入イオンが
通過する区間を決定し、その決定された区間の電子濃度
に基づいて電子損失を計算するようにしたので、計算時
間を増大させることなく、かつ、電子濃度の濃淡の効果
をシミュレーションに取り入れることができる。それに
より、シミュレーションの精度を向上させることが可能
となる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を用いて説明する。
【0018】図1は、本実施の形態に係るイオン注入シ
ミュレーション装置の機能的な構成を示すブロック図で
ある。図1において、このイオン注入シミュレーション
装置1は、操作者からのデータや命令などの入力を受け
付ける入力部2と、イオン注入工程をシミュレーション
する機能手段として、パラメータ設定手段10、粒子数
繰り返し計算制御手段11、初期条件設定手段12、散
乱相手位置決定手段13、散乱角計算手段14、核損失
・運動量計算手段15、電子損失計算手段16、イオン
静止位置記録手段17、濃度分布算出手段18、を備え
た計算処理部3と、計算結果を出力する出力部4と、シ
ミュレーションプログラム・入力データなどを格納した
記憶部5とから構成されている。
【0019】ここで、入力部2はキーボード・マウス・
フロッピーディスク装置などで構成される。また、計算
処理部3及び記憶部5はCPU及びこのCPUに接続さ
れたROM、RAM、磁気ディスク装置などの記憶装置
を含むコンピュータシステムで構成される。さらに、出
力部4はディスプレイ装置やプリンタ装置などにより構
成されている。上記計算処理部3で実行される各処理の
データや命令は、記憶部5に格納されており、必要に応
じて信号に読み込まれ計算処理が実行されるとともに、
途中で発生した数値情報などのデータはRAMや磁気デ
ィスクなどの記憶装置に格納される。
【0020】次に、本実施の形態に係るイオン注入シミ
ュレーション装置の動作(すなわち、イオン注入シミュ
レーション方法)について説明する。
【0021】まず最初に、通常のモンテカルロ法による
イオン注入シミュレーション方法について説明する。図
2は、通常のモンテカルロ法によるイオン注入シミュレ
ーション方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0022】図2において、まず、ステップ1におい
て、イオン注入条件をデータとして入力する。何のイオ
ンをどのような構成のターゲット物質に注入するか、ま
た、そのエネルギー・ドーズ量・イオンビームとターゲ
ット物質の相対位置(注入角度)を指定する。さらに、
モンテカルロ計算に必要な粒子数Nや乱数設定のための
パラメータなどを入力してもよい。
【0023】次に、ステップ2において、個々の粒子を
追跡するモンテカルロ計算を始める前に、そこで使うあ
らかじめ求めておけるパラメータを計算し、メモリーに
格納しておいてもかまわない。
【0024】次に、ステップ3において、前記ステップ
1で指定した計算に使用するN個の粒子からn番目の粒
子1個を取り出し、指定されたイオン注入条件のエネル
ギーや角度を設定して、ターゲット物質に入射する。こ
こで、初期条件が設定されることになる。なお、入射位
置は注入イオンのターゲット物質の特定の原子に対する
相対位置をターゲットの原子数密度と乱数を使って決め
る。
【0025】次に、ステップ4において、前記ステップ
3で設定された初期設定位置から与えられたエネルギー
と角度で運動を開始したイオンが次に散乱される相手の
原子核の位置を求める。ターゲット物質が結晶構造を有
する場合には、例えば前回の散乱相手の位置を基準にそ
のまわりの格子と位置を計算して、候補となりうる原子
位置から、イオンの進行方向に対して最もはじめに遭遇
する原子を散乱相手とする。一方、ターゲット物質がア
モルファス状態の場合には、結晶構造のような規則性が
ないので、散乱相手はターゲット物質中の原子数密度を
もとに乱数を用いてその原子核の座標を決める。
【0026】次に、ステップ5において、進行するイオ
ンと次の散乱相手のターゲット原子核との間のポテンシ
ャルによる散乱の軌跡を計算する。
【0027】次に、ステップ6において、散乱位置の座
標、散乱後のイオンの進行方向とエネルギー及び散乱時
にターゲット原子に与えたエネルギー(核損失)を計算
する。
【0028】次に、ステップ7において、一のターゲッ
ト原子核との散乱とその次のターゲット原子核との散乱
の間はイオンはターゲット物質の中を電子との相互作用
を行いながらまっすぐ進むと見なし、その時の運動エネ
ルギーに応じた電子阻止能から電子によるエネルギー損
失を計算し、イオンのエネルギーを減ずる。
【0029】次に、ステップ8において、前記ステップ
3でイオンのエネルギーが上記核損失、電子損失により
減少した結果、その値が静止したと見なせる値であるか
否かを判断する。そして、静止したと見なせる値でない
場合には、前記ステップ4に戻り、イオンのエネルギー
が静止したと見なせる値になるまで、前記ステップ4〜
ステップ8を繰り返す。
【0030】次に、前記ステップ8でイオンのエネルギ
ーが静止したと見なせる値となったと判断された場合に
は、ステップ9において、そのイオンの静止位置を記録
する。
【0031】次に、ステップ10において、前記ステッ
プ1で設定した粒子数Nの繰り返し計算が終了したか否
かを判断する。そして、粒子が残っている場合には前記
ステップ3に戻り、n+1番目の粒子を取り出し、粒子
数Nの繰り返し計算が終了するまで、前記ステップ3〜
ステップ10を繰り返す。
【0032】次に、前記ステップ10ですべての粒子の
計算が終了したと判断された場合には、ステップ11に
おいて、すべての粒子の静止位置のデータから濃度分布
を求め、出力して計算を終了する。
【0033】以上、通常のモンテカルロ法によるイオン
注入シミュレーション方法について説明を行った。以下
では、本発明の特徴部分である、上記ステップ7におけ
る電子損失の計算方法について更に詳しく説明する。
【0034】上述した従来の技術においては、空間的に
均一な電子濃度分布を基にして電子損失の計算を行って
いたため、その精度を十分には上げることができなかっ
た。また、逆に、イオンの軌跡に沿って電位濃度を逐次
求めて電子損失を正確に求めることは理論的には可能で
あるが、その膨大な計算時間のため実際に行うことはほ
とんど不可能であった。本発明は、電子損失の計算の基
本となる電子濃度分布をより現実に近いものに近似する
ことにより、短い計算時間で精度の高い電子損失を計算
することを可能とするものである。
【0035】そこで、最初に、本発明の特徴である電子
濃度分布の近似について説明する。まず、ターゲット物
質が非晶質の材料である場合について説明する。ここで
は、ターゲット物質がポリシリコンである場合を例にし
て説明する。
【0036】ターゲット物質中の電子の空間分布は近似
的に原子核からの距離の関数として表すことができる。
例えば、電子の分布を原子核を中心とした球対象分布と
みなし、Siの原子核位置を0、原子核からの距離をR
とすれば、電子濃度分布をRの関数として表すことが可
能となる。
【0037】上記Rの関数として、例えば図3(a)の
実線で示すような電子濃度分布f(R)をここで考え
る。ターゲット物質は非晶質なので、ターゲット物質中
のSi原子核の間隔を原子数密度から求める。具体的に
は、Si1個分の電子はすべて半径1.4オングストロ
ームの球内に存在すると仮定する。そして、図3(a)
に示す分布を例えば図3(b)の点線のようにn個の区
間に分割し、近似的に表し、ある範囲のRの電子濃度の
平均値f^(Ri )(i=1〜n+1)を用いると、シ
リコン結晶構造の空間を電子濃度によって分割すること
が可能となる。例えば、R=0(Siの原子核位置)か
らR=R1 までの電子濃度f^(R1 )領域が占める体
積V(R1 )はV(R1 )=(4/3)πR1 3 で表す
ことができる。一般的には電子濃度f^(Ri )の領域
が占める体積V(Ri )はV(Ri )=(4/3)π
(R1 3 −Ri-1 3 )で表される。なお、ここではRi
>Rn で電子濃度は0となる。
【0038】さらに、Si原子1個がターゲット物質中
で占める体積Vは原子数密度d(atom/cm3 )の
逆数であるV=1/d(cm3 )で求められる。従っ
て、イオンが進行中に電子濃度f^(Ri )の領域を通
過する確率はV(Ri )/Vで求めることができる。
【0039】このように、本実施の形態では、従来のよ
うに電子濃度分布を空間的に均一であると見なさず、上
記のように電子濃度分布を原子核位置からの距離の関数
で表すようにしたものである。そして、その電子濃度分
布を基にしてイオンの電子損失を計算することにより、
その計算精度を向上させることができるものである。具
体的には、例えば、電子濃度の薄い領域を多く通過した
イオンが他のイオンと比べてより深くターゲット物質中
に侵入することをシミュレーションで再現することが可
能となる。さらに、進行するイオンが通過する電子濃度
の各領域を確率的に計算し、乱数を用いてイオンが通過
する領域を決定するので、ほとんど計算時間の増加を招
くこともないのである。
【0040】次に、図1に示す通常のモンテカルロ法に
よるイオン注入シミュレーション方法に、実際に、上記
本発明の特徴を適用したシミュレーション方法について
説明する。
【0041】まず、図1に示すステップ2において、上
記電子濃度分布の計算及び上記電子濃度分布の各領域を
イオンが通過する確率の計算を実行し、メモリーに格納
する。具体的には図4に示すような手順で行う。
【0042】図4(a)に示すように、ステップ12に
おいて、各ターゲット物質中の原子核のまわりの電子濃
度分布をn個の区間に分割し、近似的に表したf^(R
i )を求める。次に、ステップ13において、ターゲッ
ト物質中の原子1個の占める空間の体積Vと電子濃度f
^(Ri )の領域が占める体積V(Ri )を使って確率
分布Pi =ΣV(Ri )/Vを求め、メモリーに格納す
る。次に、ステップ14において、各ターゲット物質に
対してイオンの電子阻止能(電子1個当たり,単位長さ
当たりの電子損失)の値をイオンのエネルギーの関数と
して求める。例えば、ESP(E,k)(kはターゲッ
ト物質を表す添字、Eはイオンのエネルギー)のように
計算し、テーブル化してメモリーに格納しておけばよ
い。そうすると実際に電子損失を計算するときには、イ
オンのエネルギーとターゲット物質から、テーブルを参
照するだけで高速に電子阻止能の値を得ることが可能と
なる。
【0043】次に、図1に示すステップ7において、電
子によるエネルギー損失量を計算する際に一様に乱数を
使ってどの電子濃度の領域を通過したかを決め、その電
子濃度f^(Ri )を用いて電子との散乱によるエネル
ギー損失量を求める。
【0044】具体的には、図4(b)に示すように、ま
ず、ステップ15において、[0,1]間の一様乱数r
を発生する。次に、ステップ16において、図4(a)
のステップ13で求めた確率分布Pi に対して、Pi
r<Pi+1 となるiを求める。次に、ステップ17にお
いて、そのiで決まる電子濃度f^(Ri )を参照す
る。次に、ステップ18において、その時点のイオンの
エネルギーと散乱相手のターゲット物質の種類とから電
子阻止能ESPを上記ステップ14でメモリーに格納し
たテーブルから参照する。次に、ステップ19におい
て、自由工程Lの区間において電子損失として失うエネ
ルギーΔelossをΔeloss=ESP(E,k)
・L・f^(Ri )で求める。
【0045】なお、上記実施の形態では、電子濃度分布
f(R)を図3(a)に示すよう分布としたが、f
(R)としてHartree−Fock型のmuffi
n−tin構造の原子を仮定して計算してもよいし、よ
り微細な構造を仮定してもよい。また、上記実施の形態
では1原子の電子が詰まっていると考える半径Rn より
大きいRでは電子濃度を0としたが、バックグラウンド
電子として全体の電子濃度の積分値が正しくなるように
設定してあれば、Rn 以上のRにおける電子濃度を有限
の値としてもかまわない。さらに、上記実施の形態では
簡単のため電子濃度分布を球対称としたが、分子軌道法
などの手法により詳細に物質中の電子濃度の空間分布を
計算し、その結果に基づいて空間を幾つかの電子濃度レ
ベルで分割し、イオンが通過する電子濃度を確率的に計
算できるようにあらかじめ整えておいてもよい。
【0046】上記では、ターゲット物質として非晶質の
材料の場合について説明したが、以下では、ターゲット
物質が結晶構造のような規則的な原子配列構造を有する
材料の場合についてさらに説明する。
【0047】従来技術では、ターゲット物質が結晶構造
を有する材料等の場合、チャネリング効果による一部の
注入イオンが深くまで到達する現象も十分に再現できな
かった。本発明は、このチャネリング現象も正確に再現
することを可能とするものである。なお、ここでは、例
としてターゲット物質がシリコン結晶である場合につい
て説明する。
【0048】まず、図1に示すステップ2において、タ
ーゲット物質の原子配列に対してイオンの進行方向がな
す角度が、チャネリング現象に特に有効な範囲を求め、
メモリーに格納する。例えば、シリコン結晶において
は、<100>方向、<110>方向、<111>方向
の3方向がチャネリングと呼ばれる奥深くまでイオンが
進入する現象に関係の深い方向であり、注入イオンがこ
れらの方向となす角度がある範囲内のときに、散乱によ
ってもイオンの進行方向が変わりにくく、電子によるエ
ネルギー損失も少なくなって、その結果イオンは深いと
ころまで到達する。具体的には、図5(a)に示すよう
に、ステップ20において、チャネリング現象を起こし
やすい方向をすべて求める。次に、ステップ21におい
て、それら各方向に対してチャネリングが起きやすい角
度の範囲を、イオンの進行方向がこれらの方向となす角
度の幅、すなわち臨界角として求めて設定する。ここ
で、臨界角は定数として設定してもよいが、イオンとタ
ーゲット原子核との散乱に深く関係するパラメータであ
り、イオンの陽子数Z1 、ターゲット原子の陽子数Z2
やイオンのエネルギー値の関数としてモデル化しておい
てもよい。次に、ステップ22において、イオンの進行
方向が臨界角(チャネリングを起こしやすい方向±臨界
角度)内に入ったときには電子阻止能をそれ以外の場合
に比べて、定数倍小さい値を設定して計算するようにパ
ラメータ(fk)を設定する。次に、ステップ23にお
いて、上記図4(b)のステップ12と同様に、ターゲ
ット物質の原子核のまわりの電子濃度分布を原子核位置
からの距離の関数として近似的に求める。ここで、電子
濃度分布を求める際に、上述したターゲット物質が非晶
質の材料である場合とは異なり、Si1個分の電子はす
べて半径1.175オングストロームの球内に存在する
と仮定する。ターゲット物質がシリコン結晶である場
合、結晶中での最近接のSi原子核の間隔は2.35オ
ングストロームであるからである。この分布を上記と同
様、図3(b)の点線のようにn個の区間に分割して近
似的に表し、ある範囲のRの電子濃度の平均値f^(R
i )(i=1〜n+1)を求める。次に、ステップ24
において、上記ステップ13と同様、ターゲット物質中
の原子1個の占める空間の体積Vと電子濃度f^
(Ri )の領域が占める体積V(Ri )を使って確率分
布Pi =ΣV(Ri )/Vを求め、メモリーに格納す
る。次に、ステップ25において、上記ステップ14と
同様、各ターゲット物質に対してイオンの電子阻止能
(電子1個当たり,単位長さ当たりの電子損失)の値を
イオンのエネルギーの関数として求める。
【0049】次に、図1に示すステップ7において、電
子によるエネルギー損失量を計算する際に一様に乱数を
使ってどの電子濃度の領域を通過したかを決め、その電
子濃度f^(Ri )を用いて電子との散乱によるエネル
ギー損失量を求める。ここで、イオンの進行方向が臨界
角内に入ったときには電子阻止能をそれ以外の場合に比
べて定数倍小さい値とするパラメータfkも用いてエネ
ルギー損失量を求める。
【0050】具体的には、図5(b)に示すように、ま
ず、ステップ26において、[0,1]間の一様乱数r
を発生する。次に、ステップ27において、図5(a)
のステップ24で求めた確率分布Pi に対して、Pi
r<Pi+1 となるiを求める。次に、ステップ28にお
いて、そのiで決まる電子濃度f^(Ri )を参照す
る。次に、ステップ29において、その時点のイオンの
エネルギーと散乱相手のターゲット物質の種類とから電
子阻止能ESPを上記ステップ25でメモリーに格納し
たテーブルから参照する。次に、ステップ30におい
て、その時点のイオンの進行方向を調べて、チャネリン
グしやすい各方向の臨界角内に入っている場合には、上
記パラメータfkを求める。次に、ステップ31におい
て、自由工程Lの区間に電子損失として失うエネルギー
ΔelossをΔeloss=fk・ESP(E,n)
・L・f^(Ri )で求める。なお、臨界角内に入って
いない場合にはパラメータfkを1とすればよい。
【0051】このように、かかるパラメータを導入する
ことにより、注入されたイオンが奥深く進入するチャネ
リング現象も正確に再現することが可能となる。従っ
て、ターゲット物質がシリコン結晶構造のような規則的
な原子配列構造を有する場合であっても、注入したイオ
ンがチャネリングの顕著な角度に進行した場合の電子損
失を精度よく扱えるため、注入イオンの分布の計算を正
しく実行することができる。
【0052】ここで、上述したイオン注入シミュレーシ
ョン方法を実現するためのプログラムはコンピュータ読
み取り可能な記録媒体に保存することができる。この記
録媒体をコンピュータシステムによって読み込ませ、前
記プログラムを実行してコンピュータを制御しながら上
述したイオン注入シミュレーション方法を実現すること
ができる。ここで、前記記録媒体としては、メモリ装
置、磁気ディスク装置、光ディスク装置等、プログラム
を記録することができるような装置が含まれる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ターゲット物質中の電子濃度分布をより現実に近い形で
取り込み、電子損失を従来より正確に計算するので、従
来よりも高精度にイオン注入直後の不純物分布を求める
ことができる。また、注入イオンが通過する電子濃度を
予め確率的に計算し、一様乱数を用いてその確率から注
入イオンの通過する電子濃度を決定するので、計算時間
の増大を招くことなく、電子濃度の濃淡を電子損失の計
算に取り込むことができる。従って、ターゲット物質が
複雑な構造を有する材料であっても、電子濃度分布を考
慮してシミュレーションを行うことができるので、従来
よりも不純物分布を正確に求めることができる。それに
より、予め製造後の不純物分布を正確に予測することが
可能となり、プロセスパラメータを絞り込み、試作実験
の回数や開発期間を少なくし、開発の効率化を図ること
ができる。そして、最終的には、製品のコストの削減が
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係るイオン注入シミュレーショ
ン装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】通常のモンテカルロ法によるイオン注入シミュ
レーション方法の処理手順を示すフローチャートであ
る。
【図3】本実施の形態に係るイオン注入シミュレーショ
ン方法で用いられる、一の原子の電子濃度分布を原子核
からの距離の関数として近似的に表したものの一例を示
す図である。
【図4】本実施の形態に係るイオン注入シミュレーショ
ン方法の処理手順を示すフローチャートであって、
(a)は、ターゲット物質が非晶質の材料等である場合
に、図2に示すステップ2で実行される電子損失に関す
るパラメータを求める処理手順を示すフローチャート、
(b)は、ターゲット物質が非晶質の材料等である場合
に、図2に示すステップ7で実行される電子損失を求め
る処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態に係るイオン注入シミュレーショ
ン方法の処理手順を示すフローチャートであって、
(a)は、ターゲット物質が結晶構造を有する材料等で
ある場合に、図2に示すステップ2で実行される電子損
失に関するパラメータを求める処理手順を示すフローチ
ャート、(b)は、ターゲット物質が結晶構造を有する
材料等である場合に、図2に示すステップ7で実行され
る電子損失を求める処理手順を示すフローチャートであ
る。
【符号の説明】
1 イオン注入シミュレーション装置 2 入力部 3 計算処理部 4 出力部 10 パラメータ設定手段 11 粒子数繰り返し計算制御手段 12 初期条件設定手段 13 散乱相手位置決定手段 14 散乱角計算手段 15 核損失・運動量計算手段 16 電子損失計算手段 17 イオン静止位置記録手段 18 濃度分布算出手段

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ターゲット物質中における個々の注入イ
    オンの散乱を逐次追跡しながら注入イオンが原子核との
    散乱及び電子との散乱により失うエネルギーを計算して
    個々の注入イオンの静止位置を求めることにより、注入
    イオンの濃度分布を計算する、モンテカルロ法を用いた
    イオン注入シミュレーション方法において、 注入イオンが電子との散乱により失うエネルギー(以
    下、電子損失と呼ぶ)を計算する際には、 注入イオンが所定の電子濃度を通過する確率を予め計算
    し、 一様乱数を用いて個々の注入イオンが通過する電子濃度
    を決定し、電子損失を計算することを特徴とするイオン
    注入シミュレーション方法。
  2. 【請求項2】 ターゲット物質中における個々の注入イ
    オンの散乱を逐次追跡しながら注入イオンが原子核との
    散乱及び電子との散乱により失うエネルギーを計算して
    個々の注入イオンの静止位置を求めることにより、注入
    イオンの濃度分布を計算する、モンテカルロ法を用いた
    イオン注入シミュレーションプログラムを格納した記録
    媒体において、 注入イオンが電子との散乱により失うエネルギーを計算
    する際には、 注入イオンが所定の電子濃度を通過する確率を予め計算
    する処理と、 一様乱数を用いて個々の注入イオンが通過する電子濃度
    を決定し、電子損失を計算する処理とを含み、これら処
    理をコンピュータに実行させることを特徴とするイオン
    注入シミュレーションプログラムを格納したコンピュー
    タ読取り可能な記録媒体。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005197617A (ja) * 2004-01-09 2005-07-21 Toshiba Corp イオン注入シミュレーション装置、イオン注入シミュレーション方法及びイオン注入シミュレーションプログラム
US7197437B2 (en) 2000-09-11 2007-03-27 Kabushiki Kaisha Toshiba Method, apparatus, and computer program for the Monte Carlo ion implantation simulation, and semiconductor device manufacturing method based on the simulation
JP2007213142A (ja) * 2006-02-07 2007-08-23 Mitsubishi Electric Corp 移動模擬装置

Cited By (4)

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