JPH11140598A - ばね限界値の高い高強度ステンレス鋼帯およびその製造方法 - Google Patents

ばね限界値の高い高強度ステンレス鋼帯およびその製造方法

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JPH11140598A
JPH11140598A JP31915297A JP31915297A JPH11140598A JP H11140598 A JPH11140598 A JP H11140598A JP 31915297 A JP31915297 A JP 31915297A JP 31915297 A JP31915297 A JP 31915297A JP H11140598 A JPH11140598 A JP H11140598A
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JP
Japan
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steel strip
less
martensite
austenite
stainless steel
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JP31915297A
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English (en)
Inventor
Katsuhisa Miyakusu
克久 宮楠
Hiroki Tomimura
宏紀 冨村
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メタルガスケット等の高性能ばね材に適した
ばね限界値の高い高強度ステンレス鋼帯を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.15%以下,Si:3.0%以
下,Mn:4.0%以下,Ni:4.0〜7.0%,Cr:12.0〜20.0%,
N:0.15%以下,Mo:0〜5.0%,Cu:0〜5.0%,C+N≧0.1
0、かつ、次式、X=1305−41.7(Cr+Mo+Cu)−61.1Ni
−33.3Mn−27.8Si−1667(C+N)におけるX値が−100〜2
00であり、平均粒径2μm以下のオーステナイト母相か
ら変態した微細なマルテンサイトと時効析出物を有し、
ばね限界値が1200N/mm2以上であるステンレス鋼帯。
この鋼帯は、80体積%以上のマルテンサイトを含む鋼帯
を600〜850℃で0.1〜60分間逆変態処理した後、400〜55
0℃で0.1〜120分間時効処理して得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れたばね特性が
要求されるメタルガスケットや各種ばね材に適した、ば
ね限界値の高い高強度ステンレス鋼帯、およびその製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ステンレス鋼をメタルガスケット
等のばね材に適用する場合、SUS301に代表される加工
硬化型オーステナイト系ステンレス鋼や、SUS630,SU
S631等の析出硬化型ステンレス鋼が使用されてきた。
【0003】加工硬化型オーステナイト系ステンレス鋼
は、溶体化処理された状態でオーステナイト相を呈し、
その後の冷間圧延で加工誘起マルテンサイトを生成させ
て高強度を得ようとするものである。その強度は冷間加
工量やマルテンサイト量に依存するが、冷間加工のみで
所望の強度に精度良く調整するのは難しく、また冷間加
工率を大きくするほど材料の異方性が増すとともに靭性
も低下する。
【0004】析出硬化型ステンレス鋼は、析出硬化に寄
与する元素を添加し、時効処理により硬化させるもので
あり、Cuを添加したSUS630、Alを添加したSUS631が
代表的である。前者は溶体化処理後の時効処理により硬
化を図るものである。後者は溶体化処理後に準安定オー
ステナイト相を冷間圧延などの前処理でマルテンサイト
相に変化させ、その後に時効処理することにより金属間
化合物Ni3Alを析出させて硬化を図るものであり、
かなりの高強度が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】メタルガスケット等の
用途に用いるばね材は、高強度・高靭性の他、高いばね
限界値を呈することが部品の性能を向上させるうえで重
要となる。前述した従来の高強度ステンレス鋼のうち、
析出硬化型ステンレス鋼では、加工硬化型ステンレス鋼
の欠点である強度調整の困難性,特性の異方性,靭性低
下といった問題点が回避され、特にSUS631のように金属
間化合物析出による強化機構を取り入れた合金系ではか
なりの高強度が得られている。しかし、このような合金
系のものであっても、ばね限界値がメタルガスケット等
のばね材として十分満足できるレベルには達していな
い。
【0006】本発明は、メタルガスケット等のばね用途
に適した、ばね限界値の高い高強度ステンレス鋼帯を提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、質量%にお
いて、C:0.15%以下,Si:3.0%以下,Mn:4.0%
以下,Ni:4.0〜7.0%,Cr:12.0〜20.0%,N:0.
15%以下,Mo:0〜5.0%(無添加を含む),Cu:0
〜5.0%(無添加を含む)を含有し、C+N≧0.10、か
つ、次式、 X=1305−41.7(Cr+Mo+Cu)−61.1Ni−33.3Mn−27.8Si
−1667(C+N) におけるXの値が−100〜200となるようにこれらの元素
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学
組成の鋼帯であって、平均粒径2μm以下のオーステナ
イト母相から変態した微細マルテンサイトと時効析出物
から実質的になる金属組織(請求項1)、または平均粒
径2μm以下のオーステナイト母相から変態した微細マ
ルテンサイトを80体積%以上含み残部はオーステナイト
と時効析出物から実質的になる金属組織(請求項2)を
有し、1200N/mm2以上の高いばね限界値を呈する、高
強度ステンレス鋼帯によって達成される。
【0008】ここで、Mo,Cu含有量の下限の0%
は、その元素が無添加の場合を意味する。したがって、
例えばMoとCuはいずれも含有しない鋼や、Moまた
はCuのうちいずれか一方のみ0.5%以下の範囲で含有
する鋼も含まれる。式、X=1305−41.7(Cr+Mo+Cu)−
61.1Ni−33.3Mn−27.8Si−1667(C+N)、におけるCr,M
o,Cu,Ni,Mn,Si,CおよびNは、それぞれの元素の含
有量を質量%で表した値を意味する。「・・から実質的
になる金属組織」における「実質的に」とは、製造上不
可避的に含有される介在物や、少量(大略5容量%以
下)のδフェライトが存在していてもよいことを意味す
る。ばね限界値は、JIS G 4313に示されているように
「繰返したわみ式試験」によって求められる値であり、
その試験方法はJIS H 3130による。
【0009】また、本発明では、上記の化学組成を有
し、かつ金属組織が、平均粒径2μm以下のオーステナ
イト母相から変態した微細マルテンサイトから実質的に
なる金属組織(請求項3)、または平均粒径2μm以下
のオーステナイト母相から変態した微細マルテンサイト
を80体積%以上含み残部はオーステナイトから実質的に
なる金属組織(請求項4)である鋼帯に対して、400〜5
50℃で0.1〜120分間の時効処理を施す、ばね限界値の高
い高強度ステンレス鋼帯の製造方法を提供する。
【0010】また、その製造方法の代表的な態様とし
て、上記の化学組成を有し、かつ80体積%以上のマルテ
ンサイトを含む金属組織を有する、溶体化処理鋼帯また
は溶体化処理後に冷間圧延された鋼帯に対して、600〜8
50℃で0.1〜60分間の加熱を施してそのマルテンサイト
の全量を平均粒径2μm以下の微細なオーステナイトに
逆変態させ、次いで室温までの冷却過程でその微細なオ
ーステナイトからマルテンサイトを生成させた後、さら
に、400〜550℃で0.1〜120分間の時効処理を施す、ばね
限界値の高い高強度ステンレス鋼帯の製造方法(請求項
5)を提供する。
【0011】さらに本発明では、用途がメタルガスケッ
ト用である請求項1または2に記載の高強度ステンレス
鋼帯を提供し(請求項6)、同様に、用途がメタルガス
ケット用である請求項3,4または5に記載の高強度ス
テンレス鋼帯の製造方法を提供する(請求項7)。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明では、特定形態の微細マル
テンサイトを生成させ、かつ、時効処理で析出物を生成
させることによって高強度ステンレス鋼帯のばね限界値
を高めた。以下、本発明の鋼帯を特定するための事項に
ついて説明する。
【0013】Cは、マルテンサイトの強化に極めて有効
であり、析出物を生成してばね限界値を上昇させる役割
を果たす。また、オーステナイト形成元素として高温で
のδフェライト生成を抑制する。このような作用を十分
発揮させるためにはC含有量は0.05質量%以上とするこ
とが望ましい。一方、過剰なCの含有は粗大なCr炭化
物の生成を促して粒界腐食や疲労特性劣化の原因となる
ので、C含有量の上限は0.15質量%以下とする必要があ
るが、0.12質量%以下とすることがより好ましい。
【0014】Siは、通常脱酸の目的で使用されるが、
マルテンサイトの固溶強化にも有効に作用するので、本
発明では積極的に添加することが望ましく、特に0.50質
量%以上のSiを含有させることが望ましい。ただし、
Si含有量が3.0質量%を超えると高温割れを誘発し易
くなり、また製造上種々の問題も生じる。
【0015】Mnは、主としてオーステナイト相の安定
度をコントロールする目的で、他の元素とのバランスに
よって決定される適正量を含有させる。本発明の成分系
では0.50質量%以上のMnを含有させてオーステナイト
安定度を確保することが望ましい。ただし、Mn含有量
が多くなるとマルテンサイトが生成しにくくなり、4.0
質量%を超えると冷間圧延によっても十分な量のマルテ
ンサイトを誘起させるのが難しくなる。
【0016】Niは、高温でオーステナイト相を得るた
めに必要な元素である。本発明ではオーステナイトの母
相を微細化させることによって、そのオーステナイトか
ら生じるマルテンサイトを微細化させる。そのために
は、比較的低温でマルテンサイトの全量がオーステナイ
トへ逆変態すること、すなわち逆変態温度を低下させる
ことが極めて有利となる。Niはオーステナイト形成元
素であり、その含有により逆変態温度を低下させること
ができる。本発明でその効果を十分得るためには4.0質
量%以上のNi含有量を確保する必要がある。ただし、
Ni含有量が7.0質量%を超えると、逆変態後の冷却過
程で十分な量のマルテンサイトが生成しにくくなる。し
たがって、Ni含有量は4.0〜7.0質量%の範囲とした。
【0017】Crは、耐食性を付与するために必須の元
素である。ステンレス鋼としての耐食性を確保するため
には12.0質量%以上のCr含有量が必要である。しかし
Crはフェライト形成元素でもあるので、多く添加しす
ぎると高温でδフェライトが多量に生成してしまう。こ
のδフェライトの生成を抑制するためにはオーステナイ
ト形成元素(C,N,Ni,Mn,Cuなど)を添加し
なければならないが、これらの元素の多量添加は室温で
のオーステナイトの安定化をもたらし、冷間加工の助け
を借りても逆変態処理前に必要なマルテンサイト量(後
述)を確保することが難しくなり、ひいては高いばね限
界値が得られなくなる。このため、本発明ではCr含有
量の上限を20.0質量%に規定した。
【0018】Nは、Cと同様にオーステナイト形成元素
であるとともに、マルテンサイトを硬化させて鋼帯の高
強度化を図るうえで極めて有用な元素である。また析出
物の形成にも寄与する。しかし、多量の添加は鋳造時に
ブローホールの原因となるのでN含有量は0.15質量%以
下とした。
【0019】Moは、逆変態オーステナイトの粒成長抑
制、および析出物の微細分散に有効な元素である。した
がって、本発明の効果を最大限に引き出すためにはMo
を積極的に添加することが好ましく、その含有量は0.5
質量%以上とすることが望ましい。ただし、Moを多量
に添加すると高温でδフェライトが生成してしまう。ま
た、熱間変形抵抗が高まり熱間加工性を阻害することに
もなる。このためMo含有量の上限は5.0質量%以下に
抑える必要がある。
【0020】Cuは、Niと同様にマルテンサイトから
オーステナイトへの逆変態温度を低下させる元素であ
る。したがって、本発明ではCuを積極的に添加するこ
とが有効であり、その含有量は0.5質量%以上とするこ
とが望ましい。ただし、多量のCu添加は熱間加工性の
劣化を招き、鋼帯に割れを発生させる原因となる。この
ためCu含有量の上限は5.0質量%以下に抑える必要が
ある。
【0021】なお、本発明の目的を阻害しない範囲であ
れば、その他の元素として、例えば熱間加工性向上の目
的で0.01質量%以下のBや100ppm以下のCaを、また時
効硬化性向上の目的で1.0質量%以下のNb,1.0質量%
以下のV,1.0質量%以下のZrを添加してもよい。た
だし、本発明ではTiは添加しない。Tiの添加は溶解
時に粗大なTi系の介在物を生成させ、疲労特性を著し
く低減させる原因になることに加え、本発明で規定する
構成によればTiに頼らずとも十分な時効硬化性を得る
ことができるからである。
【0022】CとNは前記のように、時効析出物を形成
してばね限界値の上昇に寄与する。本発明ではその効果
を十分に発揮させるために、C+Nの合計量を0.10質量
%以上とする必要がある。
【0023】次式、X=1305−41.7(Cr+Mo+Cu)−61.1
Ni−33.3Mn−27.8Si−1667(C+N)、はマルテンサイトの
生成のし易さを表す指標であり、本発明で規定する成分
系の合金に適用できるものである。本発明で目的とする
ばね限界値の高い高強度鋼帯を得るためにはX値が−10
0〜200の範囲にある化学組成とすることが極めて重要で
ある。X値が−100より低い鋼では逆変態処理前にたと
え冷間圧延を施したとしても十分な量のマルテンサイト
を生成させることが困難であるため、逆変態処理での微
細なオーステナイト母相の生成は不十分となる。加え
て、逆変態処理後の冷却過程においてもマルテンサイト
の生成量が不十分となる。したがってそのような鋼では
ばね限界値の顕著な向上は望めない。一方、X値が200
を超えて高くなるとマルテンサイトは十分に生成する
が、逆変態処理の冷却過程においてかなり高温でマルテ
ンサイトが生成するので、冷却中に焼戻しの現象が起き
てばね限界値は著しく低下してしまう。
【0024】本発明の高強度ステンレス鋼帯は、その金
属組織に大きな特徴がある。すなわち、平均粒径2μ
m以下のオーステナイト母相から生成した微細なマルテ
ンサイトが大部分を占め、かつ、時効析出物が存在す
る金属組織を有していることが特徴である。これによっ
て高いばね限界値が得られるのである。
【0025】その微細マルテンサイトは、時効析出物を
除くほぼ100体積%を占めていてもよいし、また80体積
%以上の微細マルテンサイトを含み残部がオーステナイ
トと時効析出物から実質的になる複相組織であってもよ
い。マルテンサイトが平均粒径2μm以下のオーステナ
イト母相に由来するものであるか否かは、金属組織の電
子顕微鏡観察あるいは光学顕微鏡観察によって判定する
ことができる。母相のオーステナイト粒界はマルテンサ
イト変態後も金属組織中に形跡を残しているからであ
る。
【0026】時効析出物は、例えばCr236,FeM
o等が挙げられる。これらの析出物は微細マルテンサイ
トを生成させるための逆変態処理過程でも、ある程度は
生じる。だが、それだけではばね限界値を十分に高める
ことができない。つまり本発明では、逆変態処理とは別
に、比較的低温での時効処理を行うことが重要であり、
それによって生成させた多量の析出物(時効析出物)を
必要とするのである。具体的には、マルテンサイト中に
析出間隔0.3μm以下の密度で析出物が存在しているこ
とが望ましい。ここで、析出間隔は、走査距離Lに対し
析出物がN個存在した場合に、L/(N−1)で表される
(切片法)。
【0027】本発明鋼帯は、「平均粒径2μm以下のオ
ーステナイト母相から変態した微細マルテンサイト」と
「時効析出物」の相乗作用によって、ばね限界値:1200
N/mm2以上という優れたばね特性を有している。この
ような高いばね限界値を呈する高強度鋼帯は、メタルガ
スケット等、高性能が要求されるばね材に適している。
【0028】「平均粒径2μm以下のオーステナイト母
相から変態した微細マルテンサイト」を主体とする金属
組織は次のような逆変態処理によって得ることができ
る。まず、逆変態処理に供する鋼帯中には80体積%以上
のマルテンサイトが存在していることを要する。マルテ
ンサイト量がこれより少ないと最終的に目的とする微細
なマルテンサイトの生成量が不足してばね限界値を十分
に高めることができない。この逆変態処理前のマルテン
サイトは冷却マルテンサイトであるか加工誘起マルテン
サイトであるかを問わない。つまり、溶体化処理の冷却
過程で生じたマルテンサイトが80体積%以上存在してい
る場合はそのまま逆変態処理に供することができるし、
それが80体積%に満たない場合はさらに冷間圧延を施し
て加工誘起マルテンサイトを生成させ、全マルテンサイ
ト量を80体積%以上にすればよい。
【0029】そして、逆変態処理は比較的低温で行い、
鋼帯中のマルテンサイト全部をオーステナイトに逆変態
させる。このようにして生成させた逆変態オーステナイ
トは微細な結晶粒となる。本発明者らの研究によれば、
600〜850℃,0.1〜60分間の加熱により、平均粒径が2μ
m以下の微細な逆変態オーステナイトを生成させること
が可能である。比較的低温で完全に逆変態を起こすため
には、前述の化学組成に調整して逆変態温度を低下させ
た鋼を使用する必要がある。
【0030】このようにして生じた逆変態オーステナイ
トは安定化したものではないため、逆変態処理の冷却過
程では十分にマルテンサイト変態を起こすことができ
る。その結果、平均粒径2μm以下のオーステナイト母
相から変態した微細マルテンサイトを主体とする金属組
織が得られるのである。
【0031】本発明では、さらに時効処理を行うことに
よって、ばね限界値を高めるのに十分な量の「時効析出
物」を生成させる。時効処理は400〜550℃で0.1〜120分
間の条件で行えばよい。実操業での安定性およびコスト
を考慮すれば、420〜520℃で1〜60分間の条件が好まし
く、450〜500℃で5〜30分間の条件がさらに好ましい。
【0032】
【実施例】表1に、供試材の化学組成、および次式、X
=1305−41.7(Cr+Mo+Cu)−61.1Ni−33.3Mn−27.8Si−
1667(C+N)、によって定まるX値を示す。表1中、A〜
Iは化学組成が本発明で規定する範囲にある発明鋼、
〜はそれ以外の比較鋼である。いずれの鋼も溶製後、
熱間圧延→焼鈍→冷間圧延を経て2.0〜2.5mm厚の冷延鋼
帯とされ、次いで1050℃×1分間保持の溶体化処理を受
けて水冷された。その後さらに冷間圧延されて80容量%
以上のマルテンサイト(冷却マルテンサイトもしくは加
工誘起マルテンサイトまたはそれら両方)を含む板厚1m
mの鋼帯とされた。これらの鋼帯は500〜1050℃の範囲の
温度で逆変態処理を受けたのち室温まで空冷され、その
後さらに400〜550℃の範囲の温度で時効処理された。
【0033】
【表1】
【0034】時効処理後の各鋼帯からサンプルを切り出
し、断面の金属組織観察,室温における引張試験,およ
びばね限界値の測定を行った。金属組織観察は走査型電
子顕微鏡または光学顕微鏡を用いて行った。そして、マ
ルテンサイトについてその由来するオーステナイト母相
の平均粒径を切片法により測定した40〜50の粒径を平均
することによって求めた。マルテンサイトの体積%も求
めた。また、ばね限界値はJIS H 3130に規定されている
「繰返したわみ式試験」によって求めた。その際、試験
片毎にたわみ係数(ヤング率)を測定した。これらの結
果をX値,逆変態処理条件,時効処理条件と併せて表2
に示す。
【0035】
【表2】
【0036】表2の結果に見られるように、本発明に係
るNo.1〜15の鋼帯は、ばね限界値が1200N/mm2以上と
非常に高く、メタルガスケット等のばね材に特に適した
ものである。これに対し比較例の鋼帯は、引張強さに関
しては高い値も得られているが、ばね限界値が低い。こ
のように本発明鋼帯は、引張強さのレベルは比較鋼帯と
同等であっても、ばね限界値のレベルが顕著に高くなっ
ている点に特徴を有する。これら本発明鋼帯に存在する
マルテンサイトは全て逆変態処理後に生成したものであ
った。
【0037】比較例No.14〜25の鋼帯は、いずれも時効
処理に関しては本発明で規定する適正条件でなされてい
る。しかし、No.14はX値が250と高すぎたため逆変態処
理の冷却中にかなり高温からマルテンサイトが生成し、
冷却過程で焼戻しの現象が起きてばね限界値が低下した
ものである。No.15,16はNi含有量が低かったため十分
にオーステナイトに逆変態しきれず、微細マルテンサイ
トが生成するために必要な微細な逆変態オーステナイト
の生成量が少なかったものである。最終的にはほぼ100
%マルテンサイト組織となったにもかかわらず逆変態オ
ーステナイトから生じた微細なマルテンサイト量はNo.1
5で40%,No.16で70%と少なく、その結果ばね限界値が
向上しなかった。なお、逆変態処理前から存在していた
マルテンサイトは粒径約50μm程度のオーステナイト相
から変態したものであり、逆変態処理後に生成した微細
なマルテンサイトとはエッチングのされかたが異なるた
め、これらは光学顕微鏡観察によって区別がつく。No.1
7,18はC+Nの合計量が0.10質量%に満たなかったため
析出物が十分に生成せずばね限界値が向上しなかったも
の、No.19,20はX値が−100より低かったためマルテン
サイトの生成が不十分となってばね限界値が向上しなか
ったものである。また、No.21〜25は逆変態処理を850℃
より高温で行ったため、逆変態オーステナイトの粒径が
粗大化してばね限界値が向上しなかったものである。
【0038】参考のため、表2のデータを基に、X値と
ばね限界値の関係をプロットした結果を図1に、またマ
ルテンサイト相におけるオーステナイト母相の平均粒径
とばね限界値の関係をプロットした結果を図2に示して
おく。
【0039】次に、化学組成および逆変態処理条件が本
発明の規定を満たす鋼帯について、種々の温度で時効処
理を行い、ばね限界値に及ぼす時効処理温度の影響を調
べた。その結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】表3の結果に見られるように、時効処理温
度が本発明規定範囲の鋼帯(No.26〜30)は、それ以外
の鋼帯(No.31〜35)と比較して、極めて高いばね限界
値を示した。参考のため、表3のデータを基に、時効温
度とばね限界値の関係をプロットした結果を図3に示し
ておく。
【0042】以上のように、i)適正な化学組成を有し、
ii)適正な逆変態処理組織(微細マルテンサイトを主体
とした組織)を有し、かつ、iii)適正な時効処理条件で
析出物を生成させた場合にのみ、非常に高いばね限界値
を呈する高強度ステンレス鋼帯が得られることがわかっ
た。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、ばね限界値が従来より
も飛躍的に高い高強度ステンレス鋼帯を提供することが
できた。この鋼帯はメタルガスケット用途をはじめとす
る多くのばね材に好適に使用でき、高性能のばね部品が
製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】X値とばね限界値の関係を表すグラフである。
【図2】マルテンサイト相におけるオーステナイト母相
の平均粒径とばね限界値の関係を表すグラフである。
【図3】時効処理温度とばね限界値の関係を表すグラフ
である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%において、C:0.15%以下,S
    i:3.0%以下,Mn:4.0%以下,Ni:4.0〜7.0%,
    Cr:12.0〜20.0%,N:0.15%以下,Mo:0〜5.0%
    (無添加を含む),Cu:0〜5.0%(無添加を含む)を
    含有し、C+N≧0.10、かつ、次式、 X=1305−41.7(Cr+Mo+Cu)−61.1Ni−33.3Mn−27.8Si
    −1667(C+N) におけるXの値が−100〜200となるようにこれらの元素
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学
    組成の鋼帯であって、平均粒径2μm以下のオーステナ
    イト母相から変態した微細マルテンサイトと時効析出物
    から実質的になる金属組織を有し、1200N/mm2以上の
    高いばね限界値を呈する、高強度ステンレス鋼帯。
  2. 【請求項2】 金属組織が、平均粒径2μm以下のオー
    ステナイト母相から変態した微細マルテンサイトを80体
    積%以上含み残部はオーステナイトと時効析出物から実
    質的になる、請求項1に記載の高強度ステンレス鋼帯。
  3. 【請求項3】 質量%において、C:0.15%以下,S
    i:3.0%以下,Mn:4.0%以下,Ni:4.0〜7.0%,
    Cr:12.0〜20.0%,N:0.15%以下,Mo:0〜5.0%
    (無添加を含む),Cu:0〜5.0%(無添加を含む)を
    含有し、C+N≧0.10、かつ、次式、 X=1305−41.7(Cr+Mo+Cu)−61.1Ni−33.3Mn−27.8Si
    −1667(C+N) におけるXの値が−100〜200となるようにこれらの元素
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学
    組成で、かつ、平均粒径2μm以下のオーステナイト母
    相から変態した微細マルテンサイトから実質的になる金
    属組織の鋼帯に対して、400〜550℃で0.1〜120分間の時
    効処理を施す、ばね限界値の高い高強度ステンレス鋼帯
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 時効処理を施す鋼帯の金属組織が、平均
    粒径2μm以下のオーステナイト母相から変態した微細
    マルテンサイトを80体積%以上含み残部はオーステナイ
    トから実質的になるものである、請求項3に記載の高強
    度ステンレス鋼帯の製造方法。
  5. 【請求項5】 質量%において、C:0.15%以下,S
    i:3.0%以下,Mn:4.0%以下,Ni:4.0〜7.0%,
    Cr:12.0〜20.0%,N:0.15%以下,Mo:0〜5.0%
    (無添加を含む),Cu:0〜5.0%(無添加を含む)を
    含有し、C+N≧0.10、かつ、次式、 X=1305−41.7(Cr+Mo+Cu)−61.1Ni−33.3Mn−27.8Si
    −1667(C+N) におけるXの値が−100〜200となるようにこれらの元素
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学
    組成を有し、かつ、80体積%以上のマルテンサイトを含
    む金属組織を有する、溶体化処理鋼帯または溶体化処理
    後に冷間圧延された鋼帯に対して、600〜850℃で0.1〜6
    0分間の加熱を施してそのマルテンサイトの全量を平均
    粒径2μm以下の微細なオーステナイトに逆変態させ、
    次いで室温までの冷却過程でその微細なオーステナイト
    からマルテンサイトを生成させた後、さらに、400〜550
    ℃で0.1〜120分間の時効処理を施す、ばね限界値の高い
    高強度ステンレス鋼帯の製造方法。
  6. 【請求項6】 用途がメタルガスケット用である請求項
    1または2に記載の高強度ステンレス鋼帯。
  7. 【請求項7】 用途がメタルガスケット用である請求項
    3,4または5に記載の高強度ステンレス鋼帯の製造方
    法。
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