JPH11236269A - 窒化珪素質焼結体およびそれを用いた切削工具 - Google Patents

窒化珪素質焼結体およびそれを用いた切削工具

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JPH11236269A
JPH11236269A JP10043977A JP4397798A JPH11236269A JP H11236269 A JPH11236269 A JP H11236269A JP 10043977 A JP10043977 A JP 10043977A JP 4397798 A JP4397798 A JP 4397798A JP H11236269 A JPH11236269 A JP H11236269A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】窒化珪素質マトリックスとTi化合物系強化相
を分散せしめた複合材料において強化相のマトリックス
への濡れ性を向上させて特性向上効果を最大源に発揮し
た高強度、高靱性および高硬度を有し耐摩耗性に優れた
窒化珪素質焼結体を提供する。 【解決手段】β−窒化珪素結晶からなる主相と、少なく
とも周期律表第3a族元素を含有する粒界相とを具備す
るマトリックス相1中に、Tiの窒化物、炭窒化物、炭
酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる
粒子あるいはウイスカーと、Ni、Fe、Co、Cu、
Mo、WおよびMnの群から選ばれる少なくとも1種の
遷移金属を含有する強化相2を10〜40体積%の割合
で分散してなり、特に強化相2を、Ti化合物からなる
コア部2aとコア部2aの周囲に遷移金属を含有するシ
ェル部2bにより形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐摩耗部品、摺動
部品、耐蝕性部品、耐熱用部品、もしくは装飾用部品な
どに適用され、とりわけ、切削工具に好適に使用される
耐摩耗性に優れた窒化珪素質焼結体と、それを用いた切
削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、セラミックスは、金属に比べ比
重が小さいため、製品重量が軽く、金属より高い硬度を
有し、耐摩耗性、耐酸化性、耐蝕性及び耐熱性に優れて
いることから、耐摩耗性を有する切削工具や、ベアリン
グ用ボールなどの摺動用部品、バルブ、ヘッドライナ
ー、発熱体、焼成管などの耐熱性部品、時計ケース、釣
り具のリール用ガイドなどの装飾用部品などの幅広い分
野に用いられている。
【0003】このような用途に用いられるセラミックス
材料は、アルミナ、炭化珪素、窒化アルミニウム、グラ
ファイトあるいは窒化珪素を主体とするセラミックスが
最も使用されているが、金属より破壊靭性や強度が低い
ために、セラミックス複合材料の様々な検討が進められ
ている。
【0004】その中でも、上記の主成分に対して、硬質
粒子や、繊維状結晶粒子(ウイスカー、ファイバー)を
分散させることにより、靱性あるいは強度を改善する試
みが行われている。例えば、分散相としては、ジルコニ
ア等の酸化物粒子の他に、カーボンファイバー、炭化珪
素、炭化チタン、炭窒化チタン等の炭化物、炭窒化物な
どの粒子、あるいはそれらのウイスカー等が知られてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】例えば、アルミナ−炭
化珪素ウイスカー系複合材料は、アルミナセラミックス
に比較して靭性や強度を大きく向上できるものの、アル
ミナ自体の強度、靱性および高温強度等の特性が低いた
めに、その効果も限界があり、使用できる用途が限られ
ている。
【0006】これに対して、窒化珪素質焼結体は、焼成
の段階で結晶が針状に成長するために、この針状結晶が
からみあった構造となることにより、セラミックスの中
でも靭性や強度、耐熱衝撃性等に優れた材料であるが、
実用的には不十分であることから、炭化珪素ウイスカー
を分散させて靭性や強度をさらに向上させる試みがあ
る。ところが、窒化珪素や炭化珪素は、いずれも金属と
の凝着、溶着性がアルミナより高く、また、硬度が低い
ため耐摩耗性が低いという問題があった。
【0007】そこで、本発明者は、窒化珪素質焼結体の
靭性や強度の向上に加え、耐摩耗性を向上させる上で、
それ自体、硬度が高く、耐摩耗性に優れたTiCやTi
Nなどのチタン化合物ウイスカーを分散させる試みを行
ったが、期待される効果が得られないものであった。そ
れは、上記チタン化合物が、窒化珪素との濡れ性が悪い
ために、窒化珪素マトリックスとの密着性や親和性が低
く、相互適合性が十分でない点であることがわかった。
【0008】従って、本発明の目的は、窒化珪素をマト
リックスとして、Ti化合物系強化相を分散せしめた複
合材料において、前記強化相とマトリックスとの濡れ性
を向上させて、強化相による特性向上効果を最大源に発
揮し、高強度、高靱性および高硬度を有し耐摩耗性に優
れた窒化珪素質焼結体を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、窒化珪素系
マトリックス相とTi化合物系強化相との濡れ性を向上
させるための具体的な構成について種々検討した結果、
Ti化合物系強化相中に、特定の遷移金属を存在せしめ
ることにより、窒化珪素マトリックスとの濡れ性が改善
されることを見いだし、本発明に至った。
【0010】即ち、本発明の窒化珪素質焼結体は、β−
窒化珪素結晶からなる主相と、少なくとも周期律表第3
a族元素を含有する粒界相とを具備するマトリックス相
中に、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少
なくとも1種のTi化合物からなる粒子あるいはウイス
カーと、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、WおよびMn
の群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有する
強化相が10〜40体積%の割合で分散してなることを
特徴とするものである。
【0011】また、前記強化相は、Tiの窒化物、炭窒
化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物
からなる粒子あるいはウイスカーからなるコア部と、該
コア部の周囲に前記遷移金属を含有するシェル部を有す
ること、前記遷移金属が、前記Ti化合物以外の全成分
を100重量%として、金属に換算して0.01〜8重
量%の割合で含まれること、前記マトリックス相が、マ
トリックス全量中、窒化珪素を70〜95重量%、周期
律表第3a族元素を酸化物換算で1〜15重量%、アル
ミニウムを酸化物換算量で7重量%以下、不純物的酸素
を酸化珪素換算量で10重量%以下の割合で含むこと、
焼結体の相対密度が95%以上、気孔率が3%以下、平
均ボイド径が5μm以下であること、該焼結体のラマン
分光分析法により検出される窒化珪素の206cm-1
ピーク強度X1 と、Siの521cm-1のピーク強度X
2 との比(X2 /X1 )が0.2〜3であること等の種
々の特徴を具備するものである。
【0012】また、本発明によれば、上記の窒化珪素質
焼結体を切削工具として用いることを特徴とするもので
ある。
【0013】
【作用】窒化珪素質焼結体の靭性、強度および硬度を向
上させる場合、セラミックウイスカー等を強化相として
分散させることが効果的であるが、その中でも、硬度が
高く、耐摩耗性に優れたTiC等のTi化合物を選択す
ることにより機械的特性の向上が期待できる。しかも、
窒化珪素に対して、Ti化合物を添加し焼成した焼結体
では、強度、靭性はある程度の効果が見られたが、耐摩
耗性については顕著な向上は見られず、むしろ耐摩耗性
が劣化する傾向が見られた。
【0014】これは、Ti化合物が、窒化珪素との濡れ
性、密着性や親和性が悪く、相互適合性が十分でないた
めであり、そのために、Ti化合物の形状や添加量など
を細かく制御しなければならない。つまり、相互適合性
が悪い物質を分散させると、添加量や形状によって、ク
ラックのブリッジング効果により靭性や強度は向上する
が、焼結性が劣化したり、分散強化物質と窒化珪素マト
リックスとの濡れ性、密着性や親和性が悪いため相互の
結合力が低下し、焼結体表面の分散強化相の脱落(脱
粒)等が発生するために耐摩耗性は劣化したものと推察
される。
【0015】これに対して、本発明によれば、Ti化合
物からなる強化相中に、Ni、Fe、Co、Cu、M
o、WおよびMnの群から選ばれる少なくとも1種の遷
移金属を含有せしめると、上記遷移金属が、いわゆるT
i化合物からなるコア部の周囲にシェル部を形成するこ
とにより、強化相の窒化珪素マトリックスへの濡れ性を
改善して相互適合性を向上させる作用を成す結果、焼結
体の靭性や強度とともに、耐摩耗性を著しく向上させる
ことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の窒化珪素質焼結体は、図
1の概略組織図に示すように、窒化珪素質マトリックス
相1と、Ti化合物系強化相2とから構成される。窒化
珪素質マトリックス相1は、β−窒化珪素結晶からなる
主相と、少なくとも周期律表第3a族元素を含有する粒
界相とを具備する。一方、Ti化合物系強化相2は、T
iの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも
1種の粒子あるいはウイスカーを主体とするものであ
る。
【0017】Ti化合物系強化相2中のTi化合物とし
ては、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少
なくとも1種からなる粒子あるいはウイスカー(繊維状
物質)からなり、例えば、TiC,TiC、TiCN、
TiCO、TiNO、TiCNO等が挙げられる。これ
らの粒子及びウイスカーは、化学量論組成であっても、
又は非化学量論組成からなっているものでもよい。
【0018】また、前記Ti化合物は、特にウイスカー
であることが望ましく、その場合、ウイスカーは長繊維
状のもの又は短繊維状のもの、もしくはこれらの混合物
であってもよいが、平均粒径(短軸径)が0.1〜2μ
m、好ましくは0.5〜1.5μmで、平均アスペクト
比が2〜50、好ましくは4〜30であるものが望まし
い。これは、平均粒径が2μmを越えると焼結性が妨げ
られ、マトリックスとウイスカーの結合力が低下し、焼
結体の靱性、強度及び耐摩耗性が低下するからである。
平均アスペクト比も同様の理由による。
【0019】又、粒子形状のTi化合物を用いる場合に
は、平均粒径が0.2〜3μm、好ましくは0.4〜
1.5μmであることが望ましい。これは、粒子形状で
ある場合、平均粒径が3μmをこえるとマトリックスと
の結合力が低下し、焼結体の靱性、強度及び耐摩耗性が
低下するからである。
【0020】本発明によれば、Ti化合物系強化相2中
に、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、WおよびMnの群
から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有すること
が重要である。これらの遷移金属の存在によって、Ti
化合物系強化相2の窒化珪素質マトリックス相1との濡
れ性を改善し、相互適合性を向上させることができるの
である。
【0021】上記のようにTi化合物系強化相2中に前
記遷移金属が含まれる場合、組織上、図1に示すよう
に、Ti化合物系強化相2は、概して、Ti化合物から
なる中心部(コア部)2aと、その周囲に前記遷移金属
を含むシェル部2bが形成される。この遷移金属は、酸
化物、窒化物、酸窒化物もしくは珪化物として存在する
ことが望ましく、その場合、遷移金属は、コア部2a中
にTi化合物との固溶体を形成する。但し、遷移金属
は、コア部2aよりも、主としてシェル部2bに多く含
まれる。
【0022】このように、遷移金属が、コア−シェル構
造におけるシェル部2bに多く含まれることにより、強
化相2と、窒化珪素マトリックス相1との濡れ性の向上
に寄与できる。なお、上記シェル部2bは、必ずしも全
周囲に形成されていなくても、コア部2aの周囲の50
%以上に形成されていれば、その効果が発揮される。
【0023】このシェル部2bの厚みは、特に限定され
るものではないが、好ましくは平均で0.1〜0.5μ
m程度が望ましい。
【0024】本発明においては、上記Ti化合物は、全
量中に、10〜40体積%、特に15〜30体積%の割
合で含有されていることが望ましい。上記含有量が10
体積%よりも少ないとTi化合物による機械的特性の向
上効果が期待できず、含有量が40体積%を超えると焼
結性やマトリックスとの結合力が低下し、強度や耐摩耗
性が低下する場合がある。なお、前記Ti化合物系強化
相2中に含有される前記遷移金属は、Ti化合物以外の
全成分の合計量を100重量%とした時に、0.01〜
8重量%の割合で含有され、特に強度や耐摩耗性の向上
の点で0.1〜5重量%、また、0.5〜4重量%でさ
らに耐摩耗性を向上できる。
【0025】一方、窒化珪素質マトリックス相は、組成
上、前記Ti化合物以外の全成分の合計量を100重量
%とした時、窒化珪素を75〜95重量%、好適には8
0〜90重量%含む。窒化珪素結晶相は、平均粒径(短
軸径)が0.5〜2μm、平均アスペクト比が3以上の
針状のβ−窒化珪素粒子からなり、それが互いに絡み合
った構造となることで、焼結体の破壊靱性および強度の
向上に寄与する。
【0026】さらに、上記窒化珪素質焼結体には、焼結
助剤成分として、周期律表第3a族元素を含み、その含
有量は酸化物換算で1〜15重量%、好適には3〜10
重量%であることが望ましい。その他の焼結助剤として
は、アルミニウムを酸化物換算量7重量%以下、好適に
は5重量%以下、さらに不純物的酸素を酸化珪素換算量
で10重量%以下、好適には8重量%以下の割合でそれ
ぞれ含むことが望ましい。上記周期律表第3a族元素と
しては、Y、Er、Yb、Lu、Sm等が挙げられ、こ
れらの中でもY、Yb,Erが好適である。
【0027】ここで、上記不純物的酸素とは、焼結体中
の全酸素量から焼結体中のYまたは希土類元素(RE)
およびAlに対して化学量論組成(RE2 3 およびA
23 )で結合していると仮定される酸素量を差し引
いた残りの酸素量であり、そのほとんどは窒化珪素粉末
中の不可避的酸素または意図的に添加されたSiO2
分より構成される。
【0028】前記周期律表第3a族元素、アルミニウ
ム、不純物的酸素は、窒化珪素結晶相の粒界に、ガラス
相を形成するか、または希土類元素−Si3 4 −Si
2 系の結晶相として存在してもよい。なお、アルミニ
ウムは、β−窒化珪素結晶相中に一部固溶していてもよ
い。
【0029】また、本発明の窒化珪素質焼結体は、優れ
た機械的特性を得る上で、相対密度が95%以上、好適
には98%以上であり、気孔率を3%以下、好適には
1.5%以下であることが、優れた耐摩耗性を達成する
上で望ましい。
【0030】さらに、窒化珪素質焼結体内には、実質的
にはボイドが存在しないことが望ましいが、不可避的に
ボイドが発生する場合、ボイドを均一に点在させること
で、破壊源であるクラックが発生した場合において、ク
ラックの進展により破損や欠損および割損が生じても、
クラックの進展を防止することができる。このボイドの
平均径は5μm以下であることが望ましい。これは、平
均ボイド径が5μmを越えると、微小な脱粒摩耗やチッ
ピングを併発し、脱粒が増加し、摩耗が増加するためで
ある。
【0031】このようなボイドを均一に点在させるに
は、窒化珪素原料を混合粉砕し、造粒なしに、成形、焼
成したり、混合粉末を一旦造粒した後、この造粒した粉
体を成形時に成形圧力を十分に上げて造粒粉体をつぶす
ことにより、均一に点在させることができる。なお、ボ
イド径分布は、用いる原料粉末と成形時の圧力、さらに
は焼成条件による緻密化の程度によって制御できる。
【0032】さらに、本発明によれば、かかる焼結体を
ラマン分光分析法によって分析した時に、微小のSiが
検出されることが望ましい。このSiは、走査型電子顕
微鏡(SEM)においても観察することができないレベ
ルのものであり、ラマン分光分析法によって検出される
ものである。このSiがSEM観察では検出できないも
のの、おそらく窒化珪素質マトリックス中の窒化珪素結
晶粒界中もしくは窒化珪素粒内に分散しているものと推
察される。
【0033】このようなSiをマトリックス中に存在さ
せることにより、強度および靱性を高めることができ
る。この理由は定かではないが、おそらく粒界に分散す
るSiがクラックの進展を妨げる作用をなしているため
と推察される。
【0034】しかし、ここで粒界に存在するSi粒子
は、ごく微量であることが必要であり、例えば、X線回
折測定法によって検出されるレベルで存在すると、それ
が破壊源となり、焼結体の強度を劣化させてしまう。こ
れに対して、本発明の焼結体は、ごく微量のSiまで検
出可能なラマン分光分析法に従い、特定のレベルで存在
することが必要である。それは、具体的にはβ−窒化珪
素の206cm-1付近に存在するピークの強度をX1
Siの521cm-1付近のピークの強度をX2 としたと
き、X2 /X1 で表されるピーク比が0.2〜3、好ま
しくは0.5〜2であることが望ましい。このピーク比
が0.2よりも低いと強度、靱性の向上効果が低く、所
望の特性が得られず、3を越えると、析出したSi自体
が破壊源となり強度を劣化させてしまうためである。
【0035】次に、本発明の窒化珪素質焼結体を製造す
る方法について説明すると、窒化珪素原料として、窒化
珪素粉末、特にα化率が90%以上の粉末を用いるか、
あるいは窒化珪素原料の0〜80重量%相当量を珪素粉
末に置き換え、珪素粉末を低温で窒化するとα−Si3
4 が生成されやすくなり、窒化後の成形体のα−Si
3 4 の含有量を高めることができる。このようなα−
Si3 4 の含有量の大きい成形体を焼成すると、針状
のβ−窒化珪素結晶相の生成を増加させることができ、
焼結体の強度および靱性を高くさせることができる。ま
た、窒化珪素粉末の平均粒径は、0.4〜1.2μm、
不純物酸素量は0.5〜1.5重量%が適当である。
【0036】次に、このような窒化珪素粉末に対して、
周期律表第3a族元素酸化物、場合によっては、Al2
3 粉末、さらにはSiO2 粉末を、焼成前の成形体組
成が、希土類元素の酸化物換算量が1〜15重量%、特
に3〜10重量%、Al2 3 を7重量%以下、特に5
重量%以下、さらには、成形体中の全酸素量から周期律
表第3a族元素酸化物粉末、Al2 3 粉末中の酸素分
を差し引いた残りの酸素量が、SiO2 換算で10重量
%以下、特に8重量%以下となるように添加する。
【0037】また、上記の成分の他に、Ni、Co、
W、Mo、Mn、CuおよびFeのうちの少なくとも1
種の遷移金属の酸化物、窒化物、酸窒化物もしくは珪化
物粉末を金属に換算して0.01〜8重量%の割合で添
加し、さらに、上記の成分に対して、Tiの窒化物、炭
窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種の粒子ある
いはウイスカーを10〜40体積%の割合で添加混合す
る。
【0038】得られた混合粉末をメッシュパス造粒、ス
プレー造粒、乾式造粒等により30〜300μmの大き
さの造粒体を形成した後に、公知の成形法、たとえばプ
レス成形、鋳込み成形、押し出し成形、射出成形、冷間
静水圧成形などにより所望の形状に成形する。
【0039】つぎに、この成形体を1650〜1850
℃、特に1700〜1800℃の窒素雰囲気中、特にS
iO含有雰囲気中で公知の焼成方法により、焼結体密度
が理論密度の95%以上となる条件で焼成緻密化する。
焼成方法としては、常圧焼成、窒素ガス加圧焼成、熱間
静水圧焼成法など周知の焼成方法が採用される。SiO
の雰囲気は、SiO2 +Si、もしくはSiO2 +Si
3 4 の混合粉末を成形体が収納される焼成鉢内に一緒
に入れて焼成することにより形成することができる。
【0040】なお、焼結体中のマトリックス中にSiを
残存させるためには、焼成温度を、窒化珪素が常圧にて
珪素と窒素ガスに分解する平衡温度から約30℃低い温
度範囲内で焼成して、ごく微量のSi3 4 を分解さ
せ、分解によって生成されたSiがマトリックス中の窒
化珪素結晶粒子の粒界中に存在することになる。なお、
Si量は、上記温度範囲での保持時間などにより任意に
制御することが可能である。
【0041】また、上記のようにして焼成した焼結体を
さらに熱間静水圧焼成によって、1600〜1800℃
の温度で窒素ガス、またはアルゴンガス中で1000〜
2000atmの圧力下で焼成して、さらに緻密化を図
ることもできる。
【0042】
【実施例】平均粒径が1μm、α化率98%、酸素含有
量が1.2重量%の窒化珪素(Si3 4 )粉末、平均
粒径が0.7μmの珪素粉末、平均粒径が1μm以下の
各種の周期律表第3a族元素酸化物(RE2 3 )、酸
化アルミニウム(Al2 3 )および酸化珪素(SiO
2 )の粉末、さらには、遷移金属化合物と、Ti化合物
を、成形体組成が表1,2の比率になるように混合し
た。なお、Ti化合物としては、平均粒径が0.5〜1
μmの粒子状、平均粒径(短軸径)が0.8μm、平均
アスペクト比が10〜20のTi化合物ウイスカーを用
いた。
【0043】得られた混合物をスプレードライによって
粒径が40〜200μmの造粒体を作製した。その後、
0.3〜3t/cm2 の圧力でもってラバープレス(ア
イソスタテイックプレス)成形をおこなった。
【0044】そして、成形体中にSi粉末を含まない場
合には、窒素圧9気圧の窒素中、表1の焼成温度で5時
間焼成し、その後に炉冷して焼結体を得た。また、Si
粉末を含む場合には、1150℃で5時間加熱して窒化
させ、その後に表1の焼成温度で5時間焼成し、続けて
炉冷して焼結体を得た。なお、ボイドの大きさは成形時
の圧力によって制御した。
【0045】なお、焼成は、各成形体を成形体重量の5
%のSiO2 +Si(重量比で1:1)混合粉末を配置
し、炭化珪素質の匣鉢に入れて焼成した。なお、試料N
o.22については、SiO2 +Si混合粉末を配置せず
に焼成した。
【0046】かくして得られた各焼結体に対して、相対
密度、気孔率、強度、靭性、硬度および平均ボイド径を
以下の方法で測定し、その結果を表4に示した。相対密
度および気孔率は、JISR1601にて規定された条
件の形状にまで加工し、アルキメデス法に基づく比重測
定から求めた。強度は、JISR1601に基づき室温
の4点曲げ抗折強度試験をおこなって求めた。靭性は鏡
面仕上げをおこなった試料に対して、JIS−R160
7に基づく室温での破壊靱性を測定した。硬度は、ビッ
カース硬度(荷重1kg)により測定した。さらに平均
ボイド径は、SEMや実体顕微鏡を用いてを調べた。
【0047】さらに、ラマン分光分析法により窒化珪素
の206cm-1のピーク強度X1 と、Siの521cm
-1のピーク強度X2 とのX2 /X1 比を求めた。なお、
試料No.3についてそのラマン分光分析チャートを図2
に示した。
【0048】また、各組成の焼結体を用いて下記表3の
条件で切削テストを行い、テスト後の摩耗量を測定し
た。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】表1および表4の結果から明らかな通り、
遷移金属を全く添加しない試料No.7,25では、摩耗
量が3mm以上と大きく、耐摩耗特性が低いものであっ
たが、本発明に従い、所定量の遷移金属を添加せしめた
本発明試料は、いずれも強度800MPa以上、靭性
7.0MPa・m1/2 以上、硬度15.0GPa以上の
機械的特性を有し、摩耗特性においても、切削テスト1
で1.0mm以下、切削テスト2では0.5mm以下の
優れた耐摩耗性を有するものであった。
【0054】表1の結果によると、Ti化合物の量が本
発明範囲より少ない試料No.1、23では、耐摩耗性の
効果が十分でなく、本発明範囲より多い試料No.6、2
4では、焼結性が低下するとともに、耐摩耗性は大幅に
劣化した。
【0055】本発明品の中で、ラマン分光分析による強
度比が0.2〜3の試料は、この範囲から逸脱する試料
No.20、21、22よりも優れた特性を示し、いずれ
も室温強度900MPa以上、靱性が8.0MPa・m
1/2 以上で切削テスト1で0.4mm以下、切削テスト
2で0.3mm以下の優れた特性であった。
【0056】
【発明の効果】以上の通り、本発明の窒化珪素質焼結体
によれば、窒化珪素マトリックス相とのTiの窒化物、
炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化
合物からなる粒子、あるいはそのウイスカーとの濡れ性
を改善し、強度、靱性および耐摩耗性に優れ、切削工具
等に好適な焼結体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化珪素質焼結体の概略組織図を示
す。
【図2】本発明の窒化珪素質焼結体(試料No.3)のラ
マン分光分析チャートの一例を示す。
【符号の説明】
1 マトリックス相 2 強化相 3 コア部 4 シェル部

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】β−窒化珪素結晶からなる主相と、少なく
    とも周期律表第3a族元素を含有する粒界相とを具備す
    るマトリックス相中に、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸
    窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる粒
    子、あるいはそのウイスカーと、Ni、Fe、Co、C
    u、Mo、WおよびMnの群から選ばれる少なくとも1
    種の遷移金属を含有する強化相を10〜40体積%の割
    合で分散してなることを特徴とする窒化珪素質焼結体。
  2. 【請求項2】前記強化相が、Tiの窒化物、炭窒化物、
    炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物の粒子
    あるいはウイスカーからなるコア部と、該コア部の周囲
    に前記遷移金属を含有するシェル部を有することを特徴
    とする請求項1記載の窒化珪素質焼結体。
  3. 【請求項3】前記遷移金属が、前記Ti化合物以外の全
    成分を100重量%として、金属に換算して、0.01
    〜8重量%の割合で含まれることを特徴とする請求項1
    記載の窒化珪素質焼結体。
  4. 【請求項4】ラマン分光分析法により検出される窒化珪
    素の206cm-1のピーク強度X1 と、Siの521c
    -1のピーク強度X2 との比(X2 /X1 )が0.2〜
    3である請求項1記載の窒化珪素質焼結体。
  5. 【請求項5】前記マトリックス相が、Ti化合物以外の
    全成分を100重量%として、窒化珪素を70〜95重
    量%、周期律表第3a族元素を酸化物換算で1〜15重
    量%、アルミニウムを酸化物換算量で7重量%以下、不
    純物的酸素を酸化珪素換算量で10重量%以下の割合で
    含む請求項1記載の窒化珪素質焼結体。
  6. 【請求項6】相対密度95%以上、気孔率3%以下、平
    均ボイド径が5μm以下であることを特徴とする請求項
    1記載の窒化珪素質焼結体。
  7. 【請求項7】請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに
    記載の窒化珪素質焼結体からなる切削工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001206774A (ja) * 2000-01-24 2001-07-31 Kyocera Corp 窒化珪素質焼結体
JP2001261446A (ja) * 2000-03-21 2001-09-26 Ngk Spark Plug Co Ltd 窒化珪素質焼結体とその製造方法、及び窒化珪素質部品の製造方法
JP2005213081A (ja) * 2004-01-28 2005-08-11 Kyocera Corp 窒化珪素質焼結体およびこれを用いた金属溶湯用部材
CN110256085A (zh) * 2019-07-01 2019-09-20 中国科学院兰州化学物理研究所 一种强韧耐磨的氮化硅基复合陶瓷的制备方法

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