JPH11264016A - ステンレス鋼の熱処理方法および耐熱ステンレス鋼 - Google Patents

ステンレス鋼の熱処理方法および耐熱ステンレス鋼

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JPH11264016A
JPH11264016A JP6822798A JP6822798A JPH11264016A JP H11264016 A JPH11264016 A JP H11264016A JP 6822798 A JP6822798 A JP 6822798A JP 6822798 A JP6822798 A JP 6822798A JP H11264016 A JPH11264016 A JP H11264016A
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JP
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stainless steel
weight
hardness
heat
quenching
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JP6822798A
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English (en)
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Tsurujiro Ise
弦二郎 伊勢
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Neturen Co Ltd
THK Co Ltd
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Neturen Co Ltd
THK Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性に乏しいステンレス鋼を熱処理し、そ
の後に高温に曝されても十分な表面硬度を維持させるこ
とができるステンレス鋼の熱処理方法、およびかかる熱
処理方法によって得られる耐熱ステンレス鋼を提供す
る。 【解決手段】 少なくとも炭素:0.10〜0.60重
量%、クロム:6.00〜18.00重量%、モリブデ
ン:4.00重量%以下を含有するステンレス鋼を、プ
ラズマ浸炭焼入れしてその表面部を硬化させ、次いで高
温焼戻しして前記表面部を二次硬化させるステンレス鋼
の熱処理方法によって、上記課題を解決する。このと
き、前記二次硬化後の表面部の硬度が、ロックウェル硬
さのCスケールで58以上であることが好ましく、耐熱
性、耐食性、加工性、耐摩耗性に優れ、尚且つ安価で経
済的なステンレス鋼を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温に曝されても
十分な表面硬度を維持することができるステンレス鋼の
熱処理方法およびかかる熱処理方法によって得られる耐
熱ステンレス鋼に関する。具体的には、例えば、図1に
示す直線案内装置、図2に示すボールねじまたは図示し
ないボールスプラインなど、ボールまたはローラ等の転
動体を介して軌道軸とスライド部材とを相対的に移動自
在に組み付けてなる直線運動装置の材料に適用させて好
ましいものに関する。
【0002】
【従来の技術】直線案内装置およびボールねじについて
簡単に説明する。なお、ボールスプラインに関しては、
直線案内装置と機能的にほぼ同様である故に説明を省略
する。
【0003】先ず、図1に示す直線案内装置は、長手方
向に沿ってボール転走面1aが形成された軌道レール
(軌道軸)1と、転動体としての多数のボール2を介し
てこの軌道レール1に嵌合すると共に内部に該ボールの
無限循環路を備えた摺動台(スライド部材)3とから構
成されており、ボール2の循環に伴って摺動台3が軌道
レール1上を往復運動する。但し、摺動台3を固定側と
して軌道レール1を往復運動させる場合もある。
【0004】上記摺動台3は、テーブル等(図示せず)
を取り付けるための取付面5aを有する略サドル状のブ
ロック5と、このブロック5の前後両端面に固定された
一対のエンドプレート6とから構成されている。上記無
限循環路は、このブロック5に軌道レール1のボール転
走面1aに対応して形成された負荷ボール転走面5bお
よびボール戻し孔5cと、両エンドプレート6に形成さ
れて該負荷ボール転走面5bおよびボール戻し孔5cを
連通する方向転換路(図示せず)とからなる。
【0005】次に、図2に示すボールネジは、上述した
直線案内装置と共に使用され、モータ(図示せず)の回
転量に応じた直線運動のストロークを上記摺動台3に対
して与えるものである。
【0006】図示したように、ボールねじは、各々螺旋
状のボール転走溝11a、12aが所定のリードで形成
されて互いに嵌挿されたねじ軸11およびナット12
と、該ボール転走溝11a、12a間に配列された転動
体としての多数のボール13とからなる。
【0007】上述した直線案内装置やボールねじ等の直
線運動装置においては、耐久性、耐摩耗性、寸法安定性
等の特性が要求される。特に、上記ボールが負荷を受け
ながら転走する部分についてはこれらの特性が重要であ
る。このため、通常その材料としては、軸受鋼である高
炭素低クロム鋼が用いられている。しかし、近年、直線
運動装置の製造工程または使用環境が多様化し、耐熱性
や耐食性が要求される場合が多い。
【0008】直線運動装置に耐熱性が要求される場合に
は、通常、冷間金型用合金工具鋼または高速度工具鋼な
どが用いられ、耐食性が要求される場合には、比較的硬
度の高いSUS440タイプのマルテンサイト系ステン
レス鋼が用いられている。
【0009】合金工具鋼または高速度工具鋼は、炭素
(C)との親和力の大きいタングステン(W)、モリブ
デン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)など
を含有し、焼入れすることによって硬い炭化物が生成し
て硬化するので耐摩耗性が大きい。さらに、高温焼戻し
によって二次析出炭化物が生成して二次硬化するので、
製造工程または使用環境での温度上昇による軟化を起こ
しにくい。そのため、耐熱性が要求される直線運動装置
に好ましく用いられている。
【0010】マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼入れ
によってマルテンサイトに変態した後、適当な温度で焼
戻しされるとクロム炭化物が析出するので、強さや靱性
が向上する。特に、SUS440タイプは、C量が多
く、ステンレス鋼のなかでは最高の硬さを持っているの
で、耐食性が要求される直線運動装置としても好ましく
用いられている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、合金工
具鋼または高速度工具鋼は、材料自体が高価であるこ
と、加工しにくく製造コストが高いこと等の難点があ
る。また、SUS440タイプのステンレス鋼は、製造
工程または使用環境で高温に曝されると軟化し、その硬
度が直線運動装置用としてはやや不十分となる。さら
に、通常の軸受鋼に比べて高価であるという問題があ
る。
【0012】一方、本件出願人は、直線運動装置用の材
料の一つとして独自に開発したSUS440C相当のス
テンレス鋼(以下「S鋼」という)を用いている。この
S鋼は、炭素:0.50〜0.55重量%、クロム:1
0.00〜11.00重量%、モリブデン:0.35〜
0.65重量%、シリコン:0.30重量%以下、マン
ガン:0.30重量%以下、リン:0.03重量%以
下、硫黄:0.03重量%以下、ニッケル:0.60重
量%以下、銅:0.20重量%以下、酸素:0.001
5重量%以下および不可避不純物を含有しており、耐食
性および加工性に優れること、安価であること、また、
真空焼入れ・焼戻しを行なうことにより、直線運動装置
用の材料として要求される特性、例えばロックウェル硬
度Cスケール(以下「HRC」という)で58以上の表
面部の硬度を得ることができること等の利点がある。こ
のため、上述した合金工具鋼、高速度工具鋼、SUS4
40タイプのステンレス鋼等を使用しなくても、直線運
動装置用の材料として好ましく用いることができる。
【0013】しかし、上述したように、近年の直線運動
装置の製造工程または使用環境の多様化の問題がある。
例えば、図2に示したボールねじのナット12がインサ
ート形式で通常の焼入れ・焼戻ししたS鋼を使用する場
合、このナット12は、S鋼で形成されたスリーブ12
cをアルミダイカストで鋳込んで製造されるため、S鋼
は約660℃の高温に短時間(十数秒)曝される場合が
ある。この時、S鋼は焼きなまされ、その表面部の硬度
は要求される58HRC以上の硬さを維持することがで
きないおそれがある。
【0014】そこで、表面部の硬度を上げるためにガス
浸炭焼入れを行なったが、S鋼はステンレス鋼であるた
めに、例えば1050℃程度の高温で浸炭焼入れしなけ
ればならず、その表面上に酸化被膜が生成して浸炭が妨
げられるという問題が起こった。また、真空浸炭焼入れ
では、その表面上に酸化被膜を生成させることなく浸炭
焼入れすることができる点では好ましいが、浸炭焼入れ
温度を、ステンレス鋼の浸炭焼入れ温度として最適な約
1050℃という高温に維持しなければならないので、
炉の寿命が短くなってしまい、実用上の問題があった。
【0015】本発明は、耐熱性に乏しいステンレス鋼を
熱処理し、その後に高温に曝されても十分な表面硬度を
維持させることができるステンレス鋼の効果的な熱処理
方法、およびかかる熱処理方法によって得られる経済性
に優れた耐熱ステンレス鋼を提供することを目的とす
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明のステン
レス鋼の熱処理方法は、少なくとも炭素:0.10〜
0.60重量%、クロム:6.00〜18.00重量
%、モリブデン:4.00重量%以下を含有するステン
レス鋼を、プラズマ浸炭焼入れしてその表面部を硬化さ
せ、次いで高温焼戻しして前記表面部を二次硬化させる
ことに特徴を有する。
【0017】この発明によれば、プラズマ浸炭焼入れに
よってステンレス鋼の表面部の炭素量を高めて硬化さ
せ、その後の高温焼戻しによってその表面部に鉄炭化物
および合金炭化物を析出させて二次硬化させることがで
きる。用いられるステンレス鋼は、炭素(C)を0.1
0重量%以上含有し、尚且つ、高温焼戻し時に二次析出
炭化物となるクロム(Cr)とモリブデン(Mo)を含
有するので、高温焼戻し時に容易に二次硬化が生じ、そ
の後に高温に曝されても軟化しにくく、十分な表面硬度
を維持した耐熱ステンレス鋼とすることができる。ま
た、浸炭によって炭素量が増した表面部の硬度を高くす
ることができるので、通常の焼入れ・焼戻しでは直線運
動装置用として必要な高い硬度が得られないステンレス
鋼であっても、必要とされる硬度を有する耐熱ステンレ
ス鋼とすることができる。
【0018】また、プラズマ浸炭により浸炭焼入れする
ので、酸化被膜が生成せず光輝性があり、難浸炭材であ
るステンレス鋼に容易に浸炭することができる。そのた
め、効果的な浸炭焼入れが行なえるので、浸炭時間を短
縮でき、真空浸炭焼入れのように炉の寿命を考慮する必
要がないので経済的であり、実用上にも優れている。
【0019】また、浸炭がグロー放電の時だけ行われる
ので、浸炭させる炭素量を容易に調節できる。そのた
め、その後に行なわれる高温焼戻しによって、二次析出
炭化物の生成する量を調節することができ、二次硬化後
のステンレス鋼の硬度を調節することができる。
【0020】請求項2の発明は、請求項1に記載のステ
ンレス鋼の熱処理方法において、前記ステンレス鋼の成
分組成が、さらに、シリコン:1.00重量%以下、マ
ンガン:1.00重量%以下、リン:0.03重量%以
下、硫黄:0.03重量%以下、ニッケル:0.60重
量%以下、銅:0.20重量%以下、酸素:0.002
0重量%および不可避不純物を含有している。
【0021】この発明によれば、安価で耐食性および加
工性に優れているが、耐熱性が不十分なステンレス鋼で
あっても、プラズマ浸炭焼入れと高温焼戻しによって、
高温に曝されても軟化しにくく、必要とされる十分な硬
度を維持する耐熱ステンレス鋼を得ることができる。
【0022】請求項3の発明は、請求項1または請求項
2に記載のステンレス鋼の熱処理方法において、前記プ
ラズマ浸炭焼入れが1000〜1100℃で行われ、前
記高温焼戻しが400〜600℃で行われることに特徴
を有する。
【0023】この発明によれば、プラズマ浸炭焼入れが
1000〜1100℃で行われるので、ステンレス鋼に
十分な浸炭焼入れをすることができるとともに、必要と
する浸炭を短時間で行なうことができる。さらに、高温
焼戻しが400〜600℃で行われるので、その後に、
高温焼戻し温度以下の温度に曝されても焼きなまること
はなく、また、高温焼戻し温度以上の温度に曝された場
合であっても、短時間であれば硬度の低下が起こりにく
く、必要とされる十分な硬度を維持することができる。
【0024】請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3
の何れかに記載のステンレス鋼の熱処理方法において、
前記二次硬化後の前記表面部の硬度が、ロックウェル硬
さのCスケールで58以上であることに特徴を有する。
【0025】この発明によれば、ロックウェル硬さのC
スケールで58以上の硬さを有するステンレス鋼とする
ことができるので、この方法によって得られるステンレ
ス鋼は、耐熱性、耐食性、加工性、耐摩耗性に優れ、尚
且つ安価で経済的な直線運動装置用の材料として好まし
く用いることができる。
【0026】請求項5の発明の耐熱ステンレス鋼は、少
なくとも炭素:0.10〜0.60重量%、クロム:
6.00〜18.00重量%、モリブデン:4.00重
量%以下を含有するステンレス鋼であって、前記ステン
レス鋼の表面部が、1000〜1100℃のプラズマ浸
炭焼入れによって硬化され、さらに400〜600℃の
高温焼戻しとによって二次硬化され、二次硬化後の前記
表面部の硬度が、ロックウェル硬さのCスケールで58
以上であることに特徴を有する。
【0027】この発明によれば、少なくとも炭素:0.
10〜0.60重量%、クロム:6.00〜18.00
重量%、モリブデン:4.00重量%以下を含有するス
テンレス鋼を、1000〜1100℃でプラズマ浸炭焼
入れし、400〜600℃で高温焼戻しすることによっ
て、ステンレス鋼の表面が二次硬化するので、高温にさ
れされても軟化しにくく、耐熱性を有したステンレス鋼
とすることができる。また、その硬度が、ロックウェル
硬さのCスケールで58以上なので、耐熱性を有する直
線運動装置用の材料として好ましく用いることができ
る。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明のステンレス鋼の熱処理方
法、およびかかる熱処理法方法によって得られた耐熱ス
テンレス鋼について具体的に説明する。
【0029】本発明の熱処理方法は、少なくとも炭素:
0.10〜0.60重量%、クロム:6.00〜18.
00重量%、モリブデン:4.00重量%以下を含有し
ているステンレス鋼を、プラズマ浸炭焼入れしてその表
面部を硬化させ、次いで高温焼戻ししてその表面部を二
次硬化させるものである。
【0030】高温焼戻し時に、ステンレス鋼の表面部を
二次硬化させるためには、ステンレス鋼の表面部に二次
析出炭化物を生成する成分組成を含有していることが必
要である。炭化物の形成に必須な元素である炭素は、プ
ラズマ浸炭によって浸炭量を容易に調節することができ
る。そのため、高温焼戻し時に析出する二次析出炭化物
の生成量が変わるので、二次硬化後の表面部の硬度を容
易に調節することができる。
【0031】以下に、本発明のステンレス鋼の熱処理方
法で用いられるステンレス鋼、および熱処理条件である
プラズマ浸炭焼入れと高温焼戻しについて説明し、さら
に、かかる熱処理法方法によって得られた耐熱ステンレ
ス鋼について説明する。
【0032】(1)ステンレス鋼 この方法で用いられるステンレス鋼としては、高温焼戻
しによって微細な二次析出炭化物を生じて硬度が大きく
なる(いわゆる二次硬化する)ための、クロム(C
r)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナ
ジウム(V)などの炭化物形成能の強い元素を多く含有
しているものが好ましい。これらのうち、特に耐食性と
加工性を考慮する場合には、クロムとモリブデンを含有
していることが好ましい。
【0033】耐食性、加工性に優れたステンレス鋼を直
線運動装置用の材料として用いる場合には、熱処理前に
は持ち得なかった硬度を超えるステンレス鋼を、プラズ
マ浸炭焼入れと高温焼戻しとによる熱処理によって、熱
処理前の硬度以上にすることができるものであれば如何
なる成分組成のステンレス鋼をも用いることができる。
このようなステンレス鋼のうちでも、少なくとも炭素:
0.10〜0.60重量%、クロム:6.00〜18.
00重量%、モリブデン:4.00重量%以下を含有し
ているものが好ましく、さらに、シリコン:1.00重
量%以下、マンガン:1.00重量%以下、リン:0.
03重量%以下、硫黄:0.03重量%以下、ニッケ
ル:0.60重量%以下、銅:0.20重量%、酸素:
0.0020重量%以下および不可避不純物を含有して
いるものがより好ましい。
【0034】次に、好ましいステンレス鋼の成分組成を
上述の範囲に限定した理由を説明する。
【0035】炭素(C)は、炭化物の形成に必須な元素
であり、ステンレス鋼の表面に多く存在させることによ
り、炭化物形成能の強い元素と結合して二次析出炭化物
をより多く生成させることができる。炭素はプラズマ浸
炭によってステンレス鋼の表面部に多く含有させること
ができるので、炭素含有量の小さいステンレス鋼を用い
ることができる。しかし、炭素含有量が0.10重量%
より小さいと、ステンレス鋼中の酸素(O2) 濃度を0.
0020重量%以下に保つことができないため、熱処理
後のステンレス鋼を直線運動装置等に用いた場合に疲れ
寿命が低下する。そのため、炭素含有量の下限は、0.
10重量%以上、特に0.20重量%以上とすることが
好ましい。また、炭素含有量が0.60重量%を超える
と、得られる硬度が飽和して十分な浸炭効果を得ること
ができないばかりか、被切削性や冷間加工性に劣り、さ
らに高温焼戻し時に生ずる表面部の二次析出炭化物が粗
大な結晶となって疲労破壊の起点となりやすい。従っ
て、炭素含有量の上限は0.60重量%以下、特に0.
5重量%以下とすることが好ましい。
【0036】クロム(Cr)は、鉄(Fe)より酸化し
やすく、その酸化物は緻密で、大気中はもちろん、硝酸
などの酸化性の酸に対しても腐食されにくく、また、高
温での耐酸化性も改善されるのでステンレス鋼には必要
不可欠の元素であると共に、二次析出炭化物の形成元素
であるため、その含有量は、二次硬化後の硬度、耐食
性、加工性、耐熱性に大きな影響を及ぼす。クロム含有
量を多くすると、耐食性が向上する。また、プラズマ浸
炭により、その表面部に多く含有させた炭素と結合する
ことによって、多くの微細なクロム炭化物が析出するの
で、表面部の硬度をより向上させることができる。クロ
ム含有量が18.00重量%を超えた場合には、高温焼
戻し時に生ずる表面部の二次析出炭化物が巨大な結晶と
なって必要とされる所望の硬さを得ることができなくな
る。そのため、クロム含有量の上限は、18.00重量
%以下、特に11.00重量%以下とすることが好まし
い。また、クロム含有量を6.00重量%未満にする
と、耐食性が低下したり、十分な量のクロム炭化物を析
出させることができないため、表面部を所望の硬度(例
えば、58HRC)にすることができない。そのため、
クロム含有量の下限は、6.00重量%以上、特に1
0.00重量%以上とすることが好ましい。
【0037】モリブデン(Mo)は、二次析出炭化物の
形成元素であり、さらに炭化物の微細化を促進して焼戻
し脆さも低下させることができるので、二次硬化により
高硬度のステンレス鋼が得られる点、および、高温での
耐熱性が得られるという点で重要な元素である。しか
し、その含有量が4.00重量%を超えると、モリブデ
ンが粒界に偏析し易くなって、炭化物が均一に析出した
表面層が得られず、さらに、高温焼戻し時に生ずる表面
部の二次析出炭化物の粗大化を助長して、所望の硬さ
(例えば、58HRC)を得ることができなくなる。従
って、モリブデン含有量の上限は、4.00重量%以
下、特に1.00重量%以下とすることが好ましい。ま
た、クロムによって十分な二次硬化を示すことができる
場合は、モリブデンはあえて含有させなくともよいが、
0.50重量%以上とすることが好ましい。
【0038】以下の元素は、高温焼戻しによる耐熱性の
向上という点では、ステンレス鋼に直接関与しないが、
実用上においては種々の特性を付与するために好ましく
添加されているものである。
【0039】ケイ素(Si)は、脱酸剤として添加され
る。炭素との親和力は小さいので炭化物を作らず、フェ
ライトに固溶して硬さおよび強さを高めるが、1.00
重量%を超えて含有させると、被切削性と冷間加工性が
低下する。そのため、ケイ素含有量は1.00重量%以
下に限定した。
【0040】マンガン(Mn)は、脱酸剤として添加さ
れる。また、硫黄と結合して赤熱脆さを防ぐとともに、
固溶して変態点を下げて焼入れ性を向上させたり、強度
や靱性を増す効果を有している。しかし、1.00重量
%を超えて添加した場合、被切削性と冷間加工性が低下
する。そのため、マンガン含有量は1.00重量%以下
に限定した。
【0041】リン(P)は、耐食性を向上させるという
効果がある。しかし、0.03重量%を超えて添加した
場合、粒界に偏析して二次加工性および疲労寿命を低下
させる。そのため、リン含有量は0.03重量%以下に
限定した。
【0042】硫黄(S)は、マンガンと結合してMnS
となり、赤熱脆さを防ぐ。しかし、MnSは軟らかくて
脆く、機械的性質を低下させる原因となるため、0.0
5重量%以下が好ましい。しかし、高温での製造工程や
使用環境に曝される直線運動装置用の材料を考慮した場
合、硫黄含有量を0.03重量%以下に限定することが
特に好ましい。
【0043】ニッケル(Ni)は、フェライトを微細に
し、また、焼入性を大きくするので、その添加によって
強さと靱性を容易に高めることができる。しかし、高価
であること、焼戻し脆さを大きくするという欠点がある
ことを考慮して、ニッケル含有量を0.60重量%以下
に限定した。
【0044】銅(Cu)は、ステンレス鋼において、析
出硬化や耐硫酸性の改善に有効である。しかし、赤熱脆
さの原因となるので、通常0.35重量%以下が好まし
いが、高温での製造工程や使用環境を考慮して、銅含有
量を0.20重量%以下に限定した。
【0045】酸素(O)は、他の金属元素と酸化物を生
じて粒界に偏析して赤熱脆さの要因となる。特に、0.
0020重量%を超えると、疲れ寿命が低下する場合が
あるので、酸素含有量を0.0020重量%以下、特に
0.0015重量%以下に限定することが好ましい。
【0046】以上述べたステンレス鋼は、クロム(C
r)とモリブデン(Mo)を含有するので、プラズマ浸
炭焼入れと高温焼戻しによって、その表面部に二次析出
炭化物が生成して二次硬化するので、その後に高温に曝
されても軟化しにくく、十分な表面硬度(例えば、58
HRC)を維持した耐熱ステンレス鋼とすることができ
る。また、浸炭によって表面部の炭素量を増すことがで
きるので、通常の焼入れ・焼戻しでは直線運動装置用と
して必要な高い硬度(例えば、58HRC)が得られな
いステンレス鋼であっても、表面部の硬度を高くするこ
とができるので、必要とされる硬度(例えば、58HR
C)を有する耐熱ステンレス鋼とすることができる。
【0047】(2)プラズマ浸炭焼入れ プラズマ浸炭は、通常、プロパンガス(C38)など炭
化水素ガス系の雰囲気中で1〜10Torr(133〜
1333Pa)に減圧し、加熱しながら処理すべきステ
ンレス鋼を陰極とし、電極を陽極とした間にグロー放電
を起こさせる。このとき発生する炭素イオンを加速し、
ステンレス鋼の表面に衝突させることによって行なわれ
る。
【0048】浸炭は、グロー放電時にのみ行われるの
で、放電時間を調節するという簡単な方法によって、ス
テンレス鋼の表面の炭素濃度を容易に調節することがで
き、この点で真空浸炭に比べて優れている。表面の炭素
濃度の相違は、高温焼戻し時に析出する二次析出炭化物
の生成量にも大きく影響するので、熱処理後に得られた
ステンレス鋼の表面部の硬さを容易に調節することがで
きる。本発明の耐熱ステンレス鋼において、好ましい表
面の炭素濃度は、1.3〜2.3重量%である。
【0049】また、プラズマ雰囲気中に水素イオンが存
在するので、その還元作用により、ステンレス鋼中のク
ロムによってその表面にクロム酸化物が生成するのを防
止しながら浸炭することができる。浸炭後のステンレス
鋼は光輝性を有するとともに、難浸炭材であるステンレ
ス鋼に対する浸炭としては、真空浸炭よりも効果的に浸
炭することができるので、浸炭時間が短く、真空浸炭焼
入れのように炉の寿命を考慮する必要がないので経済的
であり、実用上にも優れている。
【0050】図3は、プラズマ浸炭焼入れ条件の一例を
示したものである。プラズマ浸炭焼入れ処理は、通常8
00〜1100℃に1〜24時間保持されている間に行
われる。この間、先ず、窒素等の不活性雰囲気中で第一
均熱処理が行われ、次いで、水素による還元ガス雰囲気
中でステンレス鋼表面の還元処理(クリーンアップ処
理)が行われ、その後、プロパンガス等の雰囲気中で所
定の炭素量となるようにプラズマ浸炭処理が行なわれ、
最後に、再び窒素等の不活性ガス雰囲気中で拡散処理さ
れる。その後、焼入れ処理してもよいが、ステンレス鋼
の場合には、十分な焼入れを行なうために、一旦窒素等
の不活性雰囲気中に1000〜1100℃で0.5〜3
時間保持して第二均熱処理した後、焼入れすることが好
ましい。焼入れ時の冷却速度は、通常の油冷程度の冷却
速度で行なうのが好ましい。焼入れによってマルテンサ
イト組織が生成する。
【0051】(3)高温焼戻し 高温焼戻しは、焼入れされたステンレス鋼に靱性を回復
させるため、および、表面部を二次硬化させるために、
プラズマ浸炭焼入れされたステンレス鋼に対して行なわ
れる。
【0052】高温焼戻しによって、過飽和に固溶したマ
ルテンサイト組織から炭化物などを析出させて安定な組
織に近づけ、靱性を回復させることができる。
【0053】ステンレス鋼に要求される所望の硬度(例
えば、58HRC)は、高温焼戻し時の二次硬化によっ
てもたらされる。熱処理後のステンレス鋼は、その後
に、高温焼戻し温度以下の温度に曝されても焼きなまし
されることはなく、また、高温焼戻し温度以上の温度に
曝された場合であっても、短時間であれば硬度の低下が
起こりにくく、所望の表面硬度(例えば、58HRC)
を維持した耐熱ステンレス鋼とすることができる。
【0054】高温焼戻しの温度は、400〜600℃が
好ましく、特に450〜530℃が好ましい。また、高
温焼戻し時間としては、通常1〜3時間である。
【0055】(4)硬度 プラズマ浸炭焼入れと高温焼戻しによって得られたステ
ンレス鋼は、その表面に二次析出炭化物が生成するの
で、その表面部の硬度は、通常の焼入れ・焼戻しや浸炭
焼入れ・焼戻しを行なったものよりも、高い硬度とな
る。さらに、その硬度は、高温に曝されても容易に低下
せず、耐熱性を有するステンレス鋼を得ることができ
る。このような熱処理によって得られるステンレス鋼の
硬度は、プラズマ浸炭焼入れ・高温焼戻しによってのみ
得られるものであって、他の浸炭焼入れ・常温焼戻しに
よっては得られない。
【0056】ステンレス鋼の硬度としては、ロックウェ
ル硬さのCスケールで、58以上の硬度であることが、
図1または図2に示したような直線運動装置用の材料と
しては好ましい。また、他の用途として用いる場合は、
それ以外の硬度(例えば、56HRC、57HCRな
ど)であってもよい。
【0057】また、本発明は、ステンレス鋼の熱処理方
法としているが、プラズマ浸炭焼入れと高温焼戻しによ
ってその表面部が二次硬化し、その結果として、高温に
曝されても軟化しにくい性質(硬度の低下があまり起こ
らない性質)を付与することができれば、ステンレス鋼
に限らず、他の鋼であってもよい。
【0058】例えば、SKD61やSKD62のような
熱間金型用工具鋼は、通常の焼入れをした後に高温焼戻
ししても、58HRC以上の硬度を得ることができない
が、本発明の熱処理方法によって、プラズマ浸炭焼入れ
と高温焼戻しを行なえば、容易にその硬度を58HRC
以上に調節することができ、その後に高温雰囲気に曝さ
れても軟化しにくい性質を付与することができる。
【0059】また、SKD4およびSKD5のように、
通常の焼入れをした後に高温焼戻ししても、その硬度が
50HRCにも満たない熱間金型用工具鋼であっても、
本発明の熱処理方法によって、その硬度を58HRC以
上に調節することができ、その後に高温雰囲気に曝され
ても軟化しにくい性質を付与することができる。
【0060】また、3Cr−3Mo鋼や3Ni−Mo鋼
のような熱間金型用工具鋼であっても同様である。
【0061】したがって、上述したステンレス鋼以外の
鋼であっても、その鋼中に高温焼戻しによって二次析出
炭化物を生成することができる成分、即ちクロム、モリ
ブデン、タングステン、バナジウム等を含有しているも
のであれば、プラズマ浸炭によって表面部に浸炭した炭
素と炭化物を生成して二次硬化し、その結果として、高
温に曝されても軟化しにくい性質(耐熱性)を付与する
ことができる。そのため、安価であるが、直線運動装置
用材料としては従来使用に耐えなかった材料および耐熱
性に乏しい材料であっても直線運動装置用に使用するこ
とができるので、極めて経済的である。但し、本発明に
係るステンレス鋼の熱処理方法および耐熱ステンレス鋼
は、直線運動装置用に限らず、他の用途にも適用可能で
ある。
【0062】
【実施例】次に、本発明の実施例および比較例を挙げ
て、本発明をさらに具体的に説明する。
【0063】(実施例1)表1に示す成分組成のステン
レス鋼を用いて試験片(外径φ33mm×内径φ27m
m×長さ30mm)を作製し、下記の条件でプラズマ浸
炭焼入れおよび高温焼戻しを行ない、本発明ステンレス
鋼片を得た。
【0064】
【表1】
【0065】 プラズマ浸炭焼入れ条件; プラズマ浸炭条件 960℃、60分間、C38 ガス雰囲気 放電電流:7A、放電電圧:490V 第二均熱処理条件 1050℃、30分間、窒素ガス雰囲気 焼入れ 1050℃→60℃、冷却媒:油 高温焼戻し条件; 焼戻し温度、時間 500℃、2時間 雰囲気 空気中
【0066】一方、同じく表1に示す成分組成のステン
レス鋼を用いて試験片(外径φ33mm×内径φ27m
m×長さ30mm)を作製し、下記の条件で真空焼入れ
および常温焼戻しを行ない、比較用ステンレス鋼片を得
た。
【0067】 真空焼入れ条件; 加熱温度(焼入れ時) 1030℃ 加熱時間(焼入れ時) 1.5時間 雰囲気 真空 焼入れ 1030℃→常温、冷却媒:窒素ガス 常温焼戻し条件; 焼戻し温度、時間 170℃、2時間 雰囲気 空気中
【0068】得られた本発明ステンレス鋼片と比較用ス
テンレス鋼片を、アルミダイカストで鋳込んだ。鋳込み
温度は639℃、鋳込み時間は6秒とし、室温に冷却し
た後のそれぞれの表面硬度を測定した。表面硬度は、ビ
ッカース硬度計を使用し、荷重300gfで測定した。
また得られた値をロックウエルCスケール(HRC)の
値に換算した。
【0069】本発明ステンレス鋼片の硬度は、700±
20Hv(60HRC相当)であり、直線案内装置用の
材料として十分な硬度を得ることができたが、比較用ス
テンレス鋼片は、600±20Hv(55HRC相当)
であった。
【0070】(実施例2)表1に示す成分組成のステン
レス鋼を用いて試験片(外径φ33mm×内径φ27m
m×長さ30mm)を作製し、実施例1と同じ条件でプ
ラズマ浸炭焼入れを行ない、次いで、種々の温度で1時
間の焼戻しを行なった。
【0071】一方、同じく表1に示す成分組成のステン
レス鋼を用いて試験片(約15mm×10mm)を作製
し、実施例1と同じ条件で真空焼入れを行ない、次い
で、上記と同様に、種々の温度で1時間の焼戻しを行な
った。
【0072】得られた試験片の硬度を測定し、図4に示
した。表面硬度は、ロックウェル硬度計を使用し、Cス
ケール(HRC)での値を測定した。
【0073】プラズマ浸炭焼入れした試験片は、500
℃の焼戻し温度で、二次硬化により60.5HRCまで
硬度が上昇し、直線案内装置用として十分な硬度であっ
た。一方、真空焼入れした試験片は、500℃の焼戻し
温度で二次硬化により硬度が上昇したが、その硬度は5
6HRCであった。
【0074】(実施例3)表1に示す成分組成のステン
レス鋼を用い、実施例1と同じ条件でプラズマ浸炭焼入
れ・高温焼戻しして得られた試験片(約15mm×10
mm)と、1050℃で真空焼入れし、500℃・2時
間で高温焼戻しして得られた試験片(約15mm×10
mm)とを準備した。
【0075】図5は、これらの各試験片を100〜70
0℃の高温雰囲気中に5分間保持しながら測定した高温
硬さの測定結果のグラフである。このとき、それぞれの
温度に5分間保持し、300gfの荷重を10秒間加え
てビッカース硬度(Hv)を測定した。尚、ロックウェ
ル硬度(HRC)は、得られたビッカース硬度(Hv)
から換算して示した。
【0076】この結果より、高温焼戻しした後、常温ま
で冷却したときに660Hv(58HRC相当)以上の
硬度となるプラズマ浸炭焼入・高温焼戻ししたステンレ
ス鋼であっても、高温に保持されているときには、変形
抵抗が小さくなり低い硬さを示している。しかしなが
ら、プラズマ浸炭焼入れ・高温焼戻しした試験片は、真
空焼入・高温焼戻しした試験片よりも、高温硬度が著し
く高くなっていた。このことは、本発明の耐熱ステンレ
ス鋼が、比較的高温の雰囲気中であっても、連続的に使
用することができるという優れた効果を示すものであ
る。
【0077】(実施例4)表2に示す成分組成のステン
レス鋼を用いて試験片(外径φ60×内径φ25×長さ
10mm)を作製し、下記の条件でプラズマ浸炭焼入れ
および高温焼戻しを行ない、本発明ステンレス鋼片を得
た。
【0078】
【表2】
【0079】 プラズマ浸炭焼入れ条件; 第一均熱処理 960℃、0.5時間 プラズマ浸炭 960℃、1.5時間、C38 ガス雰囲気 放電電流:7A、放電電圧:490V 拡散処理 960℃、1.5時間 第二均熱処理 1050℃、0.5時間、窒素ガス雰囲気 焼入れ 1050℃→60℃、冷却媒:油 高温焼戻し条件; 焼戻し温度、時間 550℃、2時間 雰囲気 空気中
【0080】一方、同じく表2に示す成分組成のステン
レス鋼を用いて試験片(外径φ60mm×内径φ25m
m×長さ10mm)を作製し、下記の条件で真空焼入れ
および常温焼戻しを行ない、比較用ステンレス鋼片を得
た。
【0081】 真空焼入れ条件; 加熱温度(焼入れ時) 1030℃ 加熱時間(焼入れ時) 3.0時間 雰囲気 真空 焼入れ 1030℃→常温、冷却媒:油 常温焼戻し条件; 焼戻し温度、時間 150℃、2時間 雰囲気 空気中
【0082】得られた本発明ステンレス鋼片と比較用ス
テンレス鋼片を用い、スラスト転がり寿命試験を行なっ
た。スラスト転がり寿命試験は、スラスト寿命試験機を
使用し、下記の条件で試験を行なった。
【0083】 スラスト転がり寿命試験条件; 負荷ボール直径 :9.525mm 負荷ボール数 :6個 負荷ボールピッチ径:φ45mm 負荷ボール材質 :SUJ2 潤滑油量 :80cm3/分 潤滑油 :スパーマルチ68オイル(出光興産) 回転数 :800rpm 負荷荷重 :627.2N/ボール1個
【0084】転がり寿命として、試験片の転動面にフレ
ーキングが発生した時点で試験中止とし、その時の回転
回数をワイブル分布にとり、L10、L50寿命を算出し
た。図6は、回転回数と破損寿命との関係のワイブル分
布を示す。
【0085】本発明ステンレス鋼片は、L10=1.7×
106回、L50=3.9×106回であり、比較用ステン
レス鋼片のL10=0.6×106回、L50=2.1×1
6回に比べて優れた転がり寿命を示した。
【0086】また、本発明ステンレス鋼片の表面層の炭
素濃度をEPMA分析により測定した結果、約1.5重
量%と浸炭焼入れの影響により高くなっていた。すなわ
ち、本発明ステンレス鋼片は、浸炭焼入れによりその表
面に多くの炭素を含有することができ、その後の高温焼
戻しによって二次析出炭化物を多く生成して二次硬化す
るので、高温に曝されても十分な表面硬度を維持させる
ことができると共に、転がり寿命にも優れるという好ま
しい特性を有していた。
【0087】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のステンレ
ス鋼の熱処理方法によれば、所定の成分組成を含有する
ステンレス鋼の表面部を、プラズマ浸炭焼入れと高温焼
戻しにより二次硬化することができるので、通常の焼入
れ・焼戻しでは十分な硬度を得ることができないステン
レス鋼であっても、所望の硬度(例えば、58HRC)
以上とすることができる。また、難浸炭材であるステン
レス鋼に容易に浸炭できるので、浸炭時間を短縮でき、
さらに、浸炭量を変えることができるので、二次硬化後
の硬度を調節することができる。本発明の熱処理方法に
よって、高温に曝されても十分な硬度(例えば、58H
RC)を維持した耐熱ステンレス鋼を容易に得ることが
できる。
【0088】また、安価で耐食性および加工性に優れて
いるが、耐熱性が不十分なステンレス鋼であっても耐熱
性を付与することができ、耐熱性、耐食性、加工性、耐
摩耗性に優れ尚且つ安価で経済的な耐熱ステンレス鋼を
容易に得ることができる。
【0089】また、本発明の耐熱ステンレス鋼によれ
ば、ステンレス鋼に施される通常の浸炭焼入れ・焼戻し
では得ることができない耐熱性(高温に曝されても軟化
しにくい性質)を有して、所望の硬度(例えば、58H
RC)以上となるよう処理されているので、耐摩耗性お
よび靱性が要求される材料として好適に用いることがで
きると共に、さらに、耐食性、耐熱性に優れているの
で、製造工程や使用環境の多様化による悪環境にも十分
耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】直線案内装置の要部を示す一部断面を含む斜視
図である。
【図2】ボールねじの要部を示す一部断面を含む側面図
である。
【図3】プラズマ浸炭焼入れ条件の一例を示すグラフで
ある。
【図4】プラズマ浸炭焼入れした試験片と真空焼入れし
た試験片において、焼戻し温度と硬度との関係を示すグ
ラフである。
【図5】高温雰囲気中で測定した硬度(高温硬度)の測
定結果を示すグラフである。
【図6】寿命と破損確率との関係のワイブル分布を示す
グラフである。
【符号の説明】
1 軌道レール 1a ボール転走面 2 ボール 3 摺動台 5 ブロック 5a 取付け面 5b 負荷ボール転走面 5c ボール戻し孔 6 エンドプレート 11 ねじ軸 11a ボール転送溝 12 ナット 12a ボール転送溝 12c スリーブ 13 ボール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C22C 38/44 C22C 38/44

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも炭素:0.10〜0.60重
    量%、クロム:6.00〜18.00重量%、モリブデ
    ン:4.00重量%以下を含有するステンレス鋼を、プ
    ラズマ浸炭焼入れしてその表面部を硬化させ、次いで高
    温焼戻しして前記表面部を二次硬化させることを特徴と
    するステンレス鋼の熱処理方法。
  2. 【請求項2】 前記ステンレス鋼の成分組成が、さら
    に、シリコン:1.00重量%以下、マンガン:1.0
    0重量%以下、リン:0.03重量%以下、硫黄:0.
    03重量%以下、ニッケル:0.60重量%以下、銅:
    0.20重量%以下、酸素:0.0020重量%以下お
    よび不可避不純物を含有することを特徴とする請求項1
    に記載のステンレス鋼の熱処理方法。
  3. 【請求項3】 前記プラズマ浸炭焼入れが1000〜1
    100℃で行われ、前記高温焼戻しが400〜600℃
    で行われることを特徴とする請求項1または請求項2に
    記載のステンレス鋼の熱処理方法。
  4. 【請求項4】 前記二次硬化後の前記表面部の硬度が、
    ロックウェル硬さのCスケールで58以上であることを
    特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のステ
    ンレス鋼の熱処理方法。
  5. 【請求項5】 少なくとも炭素:0.10〜0.60重
    量%、クロム:6.00〜18.00重量%、モリブデ
    ン:4.00重量%以下を含有するステンレス鋼であっ
    て、 前記ステンレス鋼の表面部が、1000〜1100℃の
    プラズマ浸炭焼入れによって硬化され、さらに400〜
    600℃の高温焼戻しとによって二次硬化され、 二次硬化後の前記表面部の硬度が、ロックウェル硬さの
    Cスケールで58以上であることを特徴とする耐熱ステ
    ンレス鋼。
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