JPH11270677A - シリンダ装置及びそれに用いるピストンロッドの製造方法 - Google Patents

シリンダ装置及びそれに用いるピストンロッドの製造方法

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JPH11270677A
JPH11270677A JP10096652A JP9665298A JPH11270677A JP H11270677 A JPH11270677 A JP H11270677A JP 10096652 A JP10096652 A JP 10096652A JP 9665298 A JP9665298 A JP 9665298A JP H11270677 A JPH11270677 A JP H11270677A
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piston rod
tube
oxide film
seal member
piston
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JP10096652A
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Yuichi Kobayashi
裕一 小林
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Tokico Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピストンロッドの外周側に窒化膜と酸化膜を
形成した場合でも、ピストンロッドとシール部材との摺
動面間を常時潤滑状態に保持できるようにする。 【解決手段】 ピストンロッド4の基材となる金属体の
外表面には窒化膜を形成し、この窒化膜の表面には酸化
膜7を形成する。そして、ピストンロッド4に形成した
酸化膜7の表面にそのほぼ全長に亘って周方向のバフ研
磨を施すことにより、この酸化膜7には多数の横溝8を
形成する。また、横溝8が形成された酸化膜7の表面に
対しそのほぼ全長に亘って軸方向のバフ研磨を施すこと
により、この酸化膜7の表面には多数の縦溝9を形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばワゴン車の
バックドア等を開閉するのに用いられるガススプリング
等のシリンダ装置及びそれに用いるピストンロッドの製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、シリンダ装置としては、例えば
実開昭56−108036号公報(以下、第1の従来技
術という)等に記載のガススプリングが知られており、
このガススプリングは、内部に油液と共に圧縮ガスが封
入された筒状のチューブと、該チューブ内に摺動可能に
設けられ、該チューブ内を2つのガス室に画成したピス
トンと、一端側が該ピストンに設けられ、他端側が前記
チューブに設けられたロッドガイドを介して該チューブ
外に突出したピストンロッドと、前記ロッドガイドに設
けられピストンロッドの外周に摺接して該ピストンロッ
ドとロッドガイドとの間をシールし、前記チューブ内の
流体が外部に漏洩するのを防止するシール部材とから構
成されている。
【0003】この第1の従来技術によるガススプリング
は、例えばワゴン車のバックドア等に適用され、車体側
とバックドア側に取付けるようにし、バックドアの開,
閉扉に伴いピストンロッドをシリンダに対し伸,縮動作
させる。
【0004】そして、このようなピストンロッドの伸,
縮動作に応じてピストンロッドがシリンダ内に出入りす
ることにより、シリンダ内の各ガス室がそれぞれ拡,縮
し、これにより該各ガス室内で反発力(ばね力)を発生
させる。また、このときに、各ガス室間で圧縮ガスをピ
ストンに設けられたオリフィス等を介して流通させるこ
とにより減衰力(緩衝効果)を発生させる。
【0005】ここで、シリンダとピストンロッドとの間
に設けるシール部材の下部側には、該ピストンロッドの
外周側との間で油液を溜めるための空所が形成されてお
り、ピストンロッドが伸縮動作を行うときに、シリンダ
内で該ピストンロッドに付着した油液(油膜)の一部が
前記シール部材により掻き落されると、この掻き落され
た油液が前記空所内で一時的に貯留(捕獲)される。
【0006】そして、この空所内に貯留された油液によ
って、シリンダ内の加圧ガスの漏洩を防止すると共に、
ピストンロッドの伸長行程では、前記空所内で油液を予
めピストンロッドに付着させて、該ピストンロッドとシ
ール部材との摺動面間に油液を含ませた状態、所謂「湿
り接触」の状態でピストンロッドをシール部材に対し摺
動させ、前記各摺動面間の摺動抵抗等を小さくして良好
な摺動特性を得るようにしている。
【0007】また、第2の従来技術として実開昭56−
72945号公報に記載のガススプリングが知られてい
る。この第2の従来技術では、シリンダとピストンロッ
ドとの間に第1のシール部材を設け、該第1のシール部
材により圧縮ガスからのガス圧を直接受圧させると共
に、前記シリンダとピストンロッドとの間には該第1の
シール部材を挟んでシリンダ内の各ガス室とは反対側と
なる大気側に第2のシール部材を配設し、該第1,第2
のシール部材間でピストンロッドの外周側に油液を充填
する油溜り空間を形成する構成としている。
【0008】この場合には、ピストンロッドの縮小行程
で、ピストンロッドが第1のシール部材に対して摺動す
るときに、油溜り空間内で油液を予めピストンロッドに
付着させることができ、これによっても前記第1の従来
技術と同様にピストンロッドをシール部材に対し「湿り
接触」の状態で摺動させることができ、良好な摺動特性
が得られる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した第
1の従来技術では、ピストンロッドをシリンダから伸長
させたままの状態で、該ピストンロッドを外気と長く接
触させた場合には、ピストンロッドの外周面の油膜(極
めて薄い膜)が大気中で蒸発してしまうことがある。こ
のため、この状態で次の縮小行程を行うと、ピストンロ
ッドとシール部材との摺動面間に油液がほとんど含まれ
ない状態、所謂「乾き接触」の状態でピストンロッドを
シリンダ内に縮小移動させてしまう。
【0010】この結果、ピストンロッドとシール部材と
の間の摺動抵抗が非常に大きくなってしまい、該シール
部材が早期に摩耗、損傷等し、該シール部材の寿命を早
めてしまうという問題がある。
【0011】一方、第2の従来技術では、シリンダ内の
ガス圧を直接受圧する第1のシール部材よりも上側(大
気側)に第2のシール部材を設け、該各シール部材間で
油液が充填される油溜り空間を形成することにより、縮
小行程でもピストンロッドを前記油溜り空間内の油液に
より第1のシール部材に対し「湿り接触」の状態で摺動
させることができ、これにより前記第1の従来技術によ
る問題点を解決をすることができる。
【0012】しかし、このような従来技術にあっては、
前記第1のシール部材の他に第2のシール部材等を新た
に設ける必要があり、部品点数が増加してしまう上に、
全体の構造等が複雑化してしまうという問題がある。
【0013】また、ピストンロッドの表面に硬質クロム
メッキ処理等を施することにより、該ピストンロッドの
耐食性や耐摩耗性等を高めることも検討されている。そ
して、該硬質クロムメッキ層の表面にはチャンネルクラ
ックと称される複数の微細な「割れ」が形成されるか
ら、前記シール部材側に滞留したシリンダ内の油液の一
部は、前記硬質クロムメッキの「割れ」を介してシール
部材とピストンロッドとの摺動面にガススプリングの寿
命を左右しない程度で滲み出すようになる。
【0014】これにより、ピストンロッドの伸長行程で
も縮小行程でも、シール部材とピストンロッドとの間の
摺動面間を常時潤滑状態に保持することが可能になるも
のである。従って、この場合には、前記第2の従来技術
で述べたような第2のシール部材等を特別に設ける必要
をなくすことができ、全体の構造を簡略化できるという
利点がある。
【0015】一方、最近の傾向としては、環境上の配慮
からピストンロッドの耐食性や耐摩耗性を高めるため
に、前述のような硬質クロムメッキ処理に替え、該ピス
トンロッドの外周面にガス軟窒化処理と酸化処理とを施
し、ピストンロッドの摺動(外周)面を保護する方法が
検討されている。
【0016】しかし、ガス軟窒化処理と酸化処理とを施
したピストンロッドは、硬質クロムメッキ処理を施した
ときに生じていた「割れ」が全く存在しなくなる。この
ため、シリンダ内からシール部材とピストンロッドとの
摺動面間への油液の滲み出し量(供給量)が著しく減少
してしまう。この結果、前記摺動面間の摺動抵抗が大き
くなり、これによってもシール部材を早期に摩耗、損傷
させてしまうという問題がある。
【0017】本発明は上述した従来技術の問題点に鑑み
なされたもので、本発明は、ガス軟窒化処理と酸化処理
とを施したピストンロッドを用いた場合でも、シール部
材とピストンロッドとの摺動面間を常時潤滑状態に保持
して該摺動面間の摺動抵抗を大幅に小さくでき、該シー
ル部材の寿命等を大幅に延ばすことができるようにした
シリンダ装置及びそれに用いるピストンロッドの製造方
法を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、本発明は、内部に油液が封入された筒状のチュ
ーブと、該チューブ内に摺動可能に設けられたピストン
と、一端側が該ピストンに接続され、他端側が前記チュ
ーブに設けられたロッドガイドを介して該チューブ外に
突出したピストンロッドと、前記ロッドガイドに設けら
れピストンロッドの外周に摺接して該ピストンロッドと
ロッドガイドとの間をシールし、前記チューブ内の油液
が外部に漏洩するのを防止するシール部材とからなるシ
リンダ装置に適用される。
【0019】そして、請求項1の発明が採用する構成の
特徴は、ピストンロッドは、円柱状の金属体と、該金属
体の外表面に設けられた窒化膜と、該窒化膜の外表面に
設けられた酸化膜と、該酸化膜の外表面に形成された周
方向の横溝および軸方向の縦溝とから構成したことを特
徴とするシリンダ装置。
【0020】このように構成したことにより、ピストン
ロッドは、金属体の外表面を窒化膜によって被覆できる
と共に、該窒化膜の表面を酸化膜によって被覆でき、こ
れらの窒化膜および酸化膜によりピストンロッドの耐食
性および耐摩耗性等を高めることができる。
【0021】また、ピストンロッドには、酸化膜の表面
に周方向の横溝と軸方向の縦溝とを形成したから、シリ
ンダ装置を倒立状態で用いた場合には、シリンダ内の油
液の一部を前記横溝および縦溝を通じて該ピストンロッ
ドとシール部材との摺接面に導くことができ、該摺接面
を常に潤滑状態に保持しておくことができる。
【0022】また、請求項2の発明では、横溝は、前記
ピストンロッドの外周のほぼ全長に亘って設け、縦溝
は、前記ピストンロッドが最伸長位置になったときに少
なくともシール部材と対面する部位に設けている。
【0023】このように構成したことにより、ピストン
ロッドを最伸長位置まで伸長させたときに、ピストンロ
ッドにはシール部材と対面する部位に縦溝と横溝とが設
けられるから、シリンダ内の油液の一部をこれらの縦溝
および横溝を通じてピストンロッドとシール部材との摺
接面に導くことができる。これにより、ピストンロッド
を最伸長位置から縮小させるときには、シール部材とピ
ストンロッドとの摺接面を潤滑状態に保持しておくこと
ができる。
【0024】また、請求項3の発明では、酸化膜は、周
方向の表面粗さRaが、0.06〜0.15μmであ
り、軸方向の表面粗さRaが、0.03〜0.07μm
である。
【0025】このように構成したことにより、チューブ
内の油液の一部を横溝および縦溝を通じてピストンロッ
ドとシール部材との摺接面に良好に導くことができる。
【0026】さらに、請求項4の発明では、内部に油液
が封入された筒状のチューブと、該チューブ内に摺動可
能に設けられたピストンと、一端側が該ピストンに接続
され、他端側が前記チューブに設けられたロッドガイド
を介して該チューブ外に突出したピストンロッドと、前
記ロッドガイドに設けられピストンロッドの外周に摺接
して該ピストンロッドとロッドガイドとの間をシール
し、前記チューブ内の油液が外部に漏洩するのを防止す
るシール部材とからなるシリンダ装置に用いるピストン
ロッドの製造方法に適用される。
【0027】そして、本発明による製造方法は、ピスト
ンロッドの外表面にガス軟窒化処理を施し、窒化膜を形
成する軟窒化処理工程と、軟窒化処理が施された前記ピ
ストンロッドの外表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工
程とを実施し、その後、周方向のバフ研磨により酸化膜
の表面に周方向の横溝を形成する周方向バフ研磨工程お
よび軸方向のバフ研磨により酸化膜の表面に軸方向の縦
溝を形成する軸方向バフ研磨工程のうち、一方の工程を
先に実施し、他方の工程を後に実施することにある。
【0028】このように構成したことにより、ガス軟窒
化処理工程では、ピストンロッドの外周に窒化膜を形成
できると共に、酸化膜工程では、この窒化膜の表面に酸
化膜を形成することができる。そして、周方向バフ研磨
工程では、酸化膜の表面に周方向のバフ研磨を施すこと
により、この酸化膜には周方向に多数の横溝を容易に形
成することができる。また、軸方向バフ研磨工程では、
酸化膜の表面に軸方向のバフ研磨を施すことにより、こ
の酸化膜には軸方向に多数の縦溝を容易に形成すること
ができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態による
シリンダ装置を倒立型(チューブのロッド突出端を下に
向けた)のガススプリングに適用した場合を例に挙げて
説明する。
【0030】ここで、図1ないし図6は本発明の第1の
実施の形態を示している。図中、1は有蓋筒状のチュー
ブで、該チューブ1内には、加圧ガスと一定量の油液2
とが封入され、該油液2を後述のシール部材11によっ
て封止させる構成となっている。また、チューブ1に
は、図2に示すようにその下端側に位置して後述のピス
トン3が係合する環状のストッパ部1Aが形成され、該
ストッパ部1Aはピストンロッド4の最伸長位置を規制
するものである。
【0031】3はチューブ1内に摺動可能に設けられた
ピストンで、該ピストン3は、チューブ1内を上,下で
2つのガス室A,Bに画成している。そして、該ピスト
ン3にはガス室A,B間を互いに連通するオリフィス通
路3Aが形成されている。
【0032】4はピストンロッドで、該ピストンロッド
4は、一端側となる上端側がピストン3に一体に設けら
れ、他端側となる下端側は後述のロッドガイド10を介
してチューブ1外へと突出している。
【0033】ここで、ピストンロッド4は、図3ないし
図6に示す如く、円柱状に形成された金属体5と、該金
属体5の外表面に全周に亘って形成された窒化膜6と、
該窒化膜6の表面上に全周に亘って形成され、後述する
シール部材11のリップ部11Aが摺接する酸化膜7
と、該酸化膜7の表面にほぼ全長に亘って形成された周
方向の横溝8,8,…と、酸化膜7の表面にほぼ全長に
亘って形成された軸方向の縦溝9,9,…とから構成さ
れている。
【0034】そして、各横溝8および各縦溝9は、チュ
ーブ1内の油液2の一部を酸化膜7とシール部材11の
リップ部11Aとの摺接面に導く構成となっている。ま
た、これらの各横溝8および各縦溝9が形成された酸化
膜7は、周方向の表面粗さRaが0.06〜0.15μ
m程度であり、軸方向の表面粗さRaが0.03〜0.
07μm程度であることが好ましい。
【0035】10はチューブ1の開口端側(下端側)に
設けられたロッドガイドで、該ロッドガイド10は、短
軸の筒状体として形成され、その外周側はチューブ1の
開口端側内周に嵌着されている。そして、ロッドガイド
10はその内周側に微小な隙間を介してピストンロッド
4を挿通させ、該ピストンロッド4をチューブ1の軸方
向(上,下方向)に移動可能に案内している。
【0036】11はチューブ1とピストンロッド4との
間に設けられたシール部材を示し、該シール部材11
は、図2に示す如く外周側がチューブ1の内周面に嵌着
され、内周側はリップ部11Aとなってピストンロッド
4の酸化膜7表面に締代をもって摺接している。そし
て、このシール部材11のリップ部11Aは、ピストン
ロッド4の酸化膜7との間を液密にシールし、チューブ
1内の油液2が外部に漏洩するのを最小限に抑える構成
になっている。
【0037】本実施の形態によるガススプリングは上述
の如き構成を有するもので、当該ガススプリングを例え
ばワゴン車のバックドア等に装着する場合には、チュー
ブ1の上端側に設けられた取付ブラケット12をワゴン
車のボデー側に取付け、ピストンロッド4の下端側に設
けられた取付ブラケット13をバックドア側に取付け
る。
【0038】そして、バックドアを開,閉扉するときに
は、ガススプリング本体は回転し、さらにピストンロッ
ド4をチューブ1に対し伸,縮動作させる。また、バッ
クドアを閉じた状態では、ピストンロッド4の突出端側
が下向きに倒立した状態となるが、バックドアを開いた
ときにはピストンロッド4の突出端側が上向きに正立し
た状態となる。
【0039】そして、バックドアの開,閉扉時にピスト
ンロッド4の伸,縮動作に応じてピストン3がチューブ
1内を移動(摺動)すると、チューブ1内の各ガス室
A,Bが拡,縮し、これにより該各ガス室A,B内で反
発力(ばね力)を発生させる。また、このときには、各
ガス室A,B間を加圧ガスがピストン3のオリフィス通
路3A等を介して流通することにより減衰力を発生させ
る。
【0040】次にガススプリングに用いるピストンロッ
ド4の製造方法について説明する。
【0041】まず、軟窒化処理工程では、金属体5の外
周にガス軟窒化処理を施すことにより、この金属体5の
外表面には窒化膜6を例えば20μm程度の厚みをもっ
て形成する(図3)。
【0042】次に、酸化膜形成工程では、窒化膜6が形
成された金属体5の外周に酸化処理を施すことにより、
窒化膜6の表面には酸化膜7を例えば1μm程度の厚み
をもって形成する(図4)。
【0043】次に、周方向バフ研磨工程では、酸化膜7
の表面に対しそのほぼ全長に亘って周方向のバフ研磨を
施すことにより多数の横溝8を形成する(図5)。ここ
で、バフ研磨に用いる研磨材は、砥粉の最大粒子径が例
えば36〜46μm程度であることが好ましい。そし
て、この研磨材を用いた場合には、酸化膜7の周方向で
の表面粗さRa(以下、周方向表面粗さRaという)を
0.06〜0.15μm程度に形成することができる。
【0044】さらに、軸方向バフ研磨工程では、各横溝
8が形成された酸化膜7に対しそのほぼ全長に亘って軸
方向のバフ研磨を施すことにより、多数の縦溝9,9,
…を形成する(図6)。そして、この軸方向バフ研磨工
程でも、前述した周方向バフ研磨と同様の研磨材を用い
ることにより、酸化膜7の軸方向での表面粗さRa(以
下、軸方向表面粗さRaという)を0.03〜0.07
μm程度に形成することができる。
【0045】なお、上記製造方法では、周方向バフ研磨
工程を先に、軸方向バフ研磨工程を後に実施している
が、軸方向バフ研磨工程を先に、周方向バフ研磨工程を
後に実施してもよい。
【0046】かくして、本実施の形態では、ピストンロ
ッド4の金属体5を窒化膜6と酸化膜7とによって二重
に被覆(保護)することができ、この金属体5の耐摩耗
性および耐食性を高めことができると共に、環境面への
配慮を図ることができる。
【0047】また、バックドアの閉扉時にガススプリン
グが倒立状態となるように取付けることによって、チュ
ーブ1内の油液2の一部を、酸化膜7に形成した各横溝
8と各縦溝9とを通じてピストンロッド4とシール部材
11のリップ部11Aとの摺接面に導くことができ、両
者の摺接面を油液2により互いに「湿り接触」の状態で
接触させることができる。
【0048】そこで、次に酸化膜7の周方向表面粗さR
aおよび軸方向表面粗さRaが、ピストンロッド4とシ
ール部材11との間の摺動特性に与える影響について調
査するため、実験を、実施の形態の実施例1,2と比較
例1〜4とに基づいて行い、表1に示す実験結果を得る
ことができた。
【0049】なお、本実験では、ピストンロッド4を
0.17Hz(100mm/s)の周期で、50000
回まで伸,縮動作させた後に、ピストンロッド4とシー
ル部材11との間の摺動抵抗を測定した。また、この摺
動抵抗はピストンロッド4の伸長時と縮小時とで、ガス
室A内のガス圧をそれぞれ測定することにより、両者の
ガス圧の差として算出した。
【0050】
【表1】
【0051】まず、実施例1では、軟窒化処理工程、酸
化膜形成工程、周方向バフ研磨工程および軸方向バフ研
磨工程をそれぞれ実施し、酸化膜の周方向表面粗さRa
を0.12μm、軸方向表面粗さRaを0.06μmに
設定した。これにより、実施例1では、ピストンロッド
とシール部材11との間の摺動抵抗が85Nになった。
【0052】また、実施例2についても、実施例1と同
様の工程を実施し、酸化膜の周方向表面粗さRaを0.
10μm、軸方向表面粗さRaを0.04μmに設定し
た。これにより、実施例2では、ピストンロッドとシー
ル部材11との間の摺動抵抗が65Nになった。
【0053】一方、比較例1では、実施例1,2と同様
に軟窒化処理工程および酸化膜形成工程を実施している
ものの、周方向バフ研磨工程および軸方向バフ研磨工程
は省略している。
【0054】これにより、比較例1では、表1に示すよ
うに酸化膜の周方向表面粗さRaおよび軸方向表面粗さ
Raは共に実施例1,2のものに比較して大きい値を示
した。そして、この比較例1では、摺動抵抗値が実施例
1,2のものに比べて3〜4倍程度にまで大きくなるこ
とが分かり、不合格と判定された。
【0055】また、比較例2〜4では、実施例1,2と
同様に軟窒化処理工程、酸化膜形成工程および周方向バ
フ研磨工程は実施しているものの、軸方向研磨工程は省
略している。
【0056】これにより、比較例2〜4では、表1に示
すように酸化膜の周方向表面粗さRaは実施例1,2の
ものよりも小さいか、または同程度の大きさに設定され
たが、軸方向表面粗さRaは実施例1,2のものよりも
大きい値を示した。そして、この比較例2〜4でも、摺
動抵抗値が実施例1,2のものに比べて1.5〜2倍程
度にまで大きくなることが分かり、不合格と判定され
た。
【0057】従って、本実施の形態によれば、ピストン
ロッド4の酸化膜7に横溝8および縦溝9を設けること
によって、各溝内に油液を貯えることができ、ピストン
ロッド4とシール部材11のリップ部11Aとの摺接面
間には安定した油膜を形成することができ、両者間の摺
動抵抗を小さくすることができる。
【0058】これによって、シール部材11の耐久性、
耐摩耗性等を高めて、寿命等を延ばすことができ、ガス
軟窒化処理と酸化処理とを施したピストンロッド4を当
該ガススプリングに容易に適用することができる。ま
た、前記第1の従来技術で述べたような「乾き接触」を
確実に防止し得ると共に、前記第2の従来技術で述べた
ような第2のシール部材等を追加して設ける必要もなく
なり、全体の構造等を簡略化することができる。
【0059】次に、図7は本発明の第2の実施の形態を
示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同様
の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するも
のとする。しかし、本実施の形態の特徴は、前記第1の
実施の形態で述べたピストンロッド4に替えてピストン
ロッド21を設け、このピストンロッド21に設けた酸
化膜22の表面には、その外周のほぼ全長に亘って周方
向の横溝23,23,…を設けると共に、この酸化膜2
2の表面には、ピストンロッド21が最伸長位置になっ
たときに少なくともシール部材11と対面する部位にの
み軸方向の縦溝24,24,…を設ける構成としたこと
にある。
【0060】ここで、ピストンロッド21は、第1の実
施の形態で述べたピストンロッド4とほぼ同様に、金属
体、窒化膜(いずれも図示せず)、酸化膜22、横溝2
3および縦溝24とから構成されている。そして、ピス
トンロッド21の横溝23は、酸化膜22の表面にほぼ
全長に亘って形成されている。
【0061】しかし、前記縦溝24は、ピストンロッド
21が最伸長位置まで伸長したときにチューブ1内に収
容された部位にのみ形成されている点で、第1の実施の
ものとは異なっている。
【0062】次に、本実施の形態によるピストンロッド
21の製造方法について説明するに、本実施例では、ピ
ストンロッド21の金属体に対して軟窒化処理を施す軟
窒化処理工程と、窒化膜が形成された金属体の外表面に
酸化膜22を形成する酸化膜形成工程と、酸化膜22の
表面に周方向のバフ研磨を施すことによって各横溝23
を形成する周方向バフ研磨工程までは、前記第1の実施
の形態のものと同様である。
【0063】しかし、本実施の形態による軸方向バフ研
磨工程では、ピストンロッド21が最伸長位置にあると
きにチューブ1内に収容される部位にのみ軸方向のバフ
研磨を施すことにより各縦溝24を形成している点で、
第1の実施の形態のものとは異なっている。
【0064】そこで、次に酸化膜22の周方向表面粗さ
Raおよび軸方向表面粗さRaが、ピストンロッド21
とシール部材11との間の摺動特性に与える影響につい
て調査するため、実験を、実施の形態の実施例3と比較
例5とに基づいて行い、表2に示す実験結果を得ること
ができた。
【0065】なお、本実験ではピストンロッド21を
0.17Hz(100mm/s)の周期で、ピストンロ
ッドの全ストローク(最伸長から最縮小)で伸,縮動作
させた。また、表2に示す摺動抵抗は前記第1の実施の
形態で述べた実験の場合と同様の手法を用いて算出して
いる。
【0066】
【表2】
【0067】まず、実施例3では、軟窒化処理工程、酸
化膜形成工程、周方向バフ研磨工程および軸方向バフ研
磨工程をそれぞれ実施し、酸化膜の周方向表面粗さRa
を0.11μm、軸方向表面粗さRaを0.04μmに
設定した。
【0068】一方、比較例5では、実施例3と同様に軟
窒化処理工程、酸化膜形成工程および周方向バフ研磨工
程を実施しているものの、軸方向研磨工程は省略してい
る。そして、この比較例5による周方向バフ研磨工程で
は、酸化膜22の周方向表面粗さRaが0.05μmに
設定されたが、軸方向表面粗さRaは0.08μmと大
きい値を示した。
【0069】この結果、比較例5によるピストンロッド
を用いた場合には、表2に示すようにピストンロッドを
最初の数回から10回まで伸,縮動作させる間に、摺動
抵抗値はそれぞれ100N,80Nとなり、実施例3に
よるピストンロッドとほぼ同様の摺動特性が得られるこ
とが分かった。
【0070】しかし、この比較例5の場合には、ピスト
ンロッドの伸,縮動作をさらに続けるうちにこのピスト
ンロッドとシール部材11との間の摺動抵抗が高くな
り、50000回の耐久試験後にはシール部材11にむ
しれ等が発生し、ガススプリングのガス反力が低下する
ことが分かった。
【0071】これに対し、実施例3によるピストンロッ
ドを用いた場合には、50000回の耐久試験後でも、
シール部材11にはむしれ等の異常は発生せず、該シー
ル部材11の機能を十分に発揮することができ、このシ
ール部材11によってガススプリングのガス反力の低下
を抑えられることが分かった。
【0072】かくして、このように構成される本実施の
形態でも、ピストンロッド21を最伸長位置まで伸長さ
せたときには、チューブ1内の油液2の一部を酸化膜2
2に形成した横溝23および縦溝24を通じてシール部
材11のリップ部11Aとピストンロッド21の酸化膜
22との間に導くことができ、前記第1の実施の形態と
ほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0073】特に本実施の形態では、ピストンロッド2
1の全ストロークで使用することが多い、自動車のボン
ネットやバックドア等に好適に用いることができる。ま
た、横溝23および縦溝24のうち縦溝24をピストン
ロッド21の上端側にのみ部分的に形成する構成とした
から、縦溝24を形成する軸方向バフ研磨工程では、縦
溝24を形成するときの作業の手間を省くことができ、
全体の作業性等を向上することができる。
【0074】なお、前記第2の実施の形態では、縦溝2
4はピストンロッド21が最伸長位置まで伸長したとき
にチューブ1内に収容された部位全体に形成するものと
して述べたが、本発明はこれに限らず、縦溝24はピス
トンロッド21が最伸長位置まで伸長したときにシール
部材11のリップ部11Aが摺接する部位にのみ設ける
構成としてもよい。
【0075】また、前記各実施の形態では、ガススプリ
ングを倒立状態で適用するものとして述べたが、これに
替えて、正立状態に適用してもよい。
【0076】また、前記各実施の形態では、ガススプリ
ングをバックドア用の開扉装置に適用するものとして述
べたが、本発明はこれに限らず、自動車のボンネット、
リヤウインド、または自動車以外の開扉装置等に適用し
てもよい。
【0077】さらに、前記各実施の形態では、シリンダ
装置としてガススプリングを例に挙げて述べたが、本発
明はこれに限らず、例えば油圧緩衝器等からなる他のシ
リンダ装置にも広く適用されるものである。
【0078】
【発明の効果】以上詳述した通り本発明によれば、請求
項1に記載の如く、ピストンロッドを構成する金属体の
外表面に窒化膜を設け、この窒化膜の外表面には酸化膜
を形成する構成としたから、金属体の耐摩耗性および耐
食性を高めことができると共に、環境面への配慮を図る
ことができる。また、酸化膜の外表面には周方向の横溝
および軸方向の縦溝を形成する構成としたから、チュー
ブ内の油液の一部をこれらの横溝および縦溝を通じてピ
ストンロッドとシール部材との摺接面間に導き、各溝に
油液を貯えることができ、この摺接面間の摺動抵抗を小
さくすることができる。
【0079】これによって、シール部材の耐久性、耐摩
耗性等を高めて、寿命等を延ばすことができ、ガス軟窒
化処理と酸化処理とを施したピストンロッドを当該ガス
スプリングに容易に適用することができる。また、前記
第1の従来技術で述べたような「乾き接触」を確実に防
止し得ると共に、前記第2の従来技術で述べたような第
2のシール部材等を追加して設ける必要もなくなり、全
体の構造等を簡略化することができる。
【0080】また、請求項2の発明のように、横溝をピ
ストンロッドの外周のほぼ全長に亘って設け、縦溝をピ
ストンロッドが最伸長位置になったときに少なくともシ
ール部材と対面する部位に設ける構成とした場合でも、
ピストンロッドを最伸長位置まで伸長させたときには、
チューブ内の油液の一部を横溝および縦溝を通じてシー
ル部材とピストンロッドとの間に導くことができ、請求
項1の発明とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0081】さらに、請求項3の発明では、酸化膜の周
方向での表面粗さRaを、0.06〜0.15μm程度
に設定し、軸方向での表面粗さRaを、0.03〜0.
07μm程度に設定する構成としたから、チューブ内の
油液の一部を横溝および縦溝を通じてピストンロッドと
シール部材との摺接面間に良好に導くことができ、この
摺接面間に安定した油膜を形成することができる。これ
によってシール部材の耐久性、耐摩耗性等をさらに高め
ることができる。
【0082】さらに、請求項4では、横溝を周方向のバ
フ研磨によって形成すると共に、縦溝を軸方向のバフ研
磨によって形成したから、これらのバフ研磨によって多
数の横溝と多数の縦溝を容易に形成することができ、こ
の横溝および縦溝の形成時における全体の作業性等を向
上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるガススプリン
グを示す縦断面図である。
【図2】図1中のピストンロッドおよびシール部材等を
拡大して示す部分断面図である。
【図3】金属体の外表面に窒化膜を形成する軟窒化処理
工程を実施したピストンロッドの部分拡大図である。
【図4】窒化膜の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成工
程を実施したピストンロッドの部分拡大図である。
【図5】酸化膜の表面に周方向のバフ研磨を施すことに
より横溝を形成する周方向バフ研磨工程を実施したピス
トンロッドの部分拡大図である。
【図6】縦溝を形成した酸化膜の表面に軸方向のバフ研
磨を施すことにより縦溝を形成する軸方向バフ研磨工程
を実施したピストンロッドの部分拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態によるガススプリン
グのピストンロッドおよびシール部材等を示す部分断面
図である。
【符号の説明】
1 チューブ 2 油液 3 ピストン 4,21 ピストンロッド 5 金属体 6 窒化膜 7,22 酸化膜 8,23 横溝 9,24 縦溝 11 シール部材

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部に油液が封入された筒状のチューブ
    と、該チューブ内に摺動可能に設けられたピストンと、
    一端側が該ピストンに接続され、他端側が前記チューブ
    に設けられたロッドガイドを介して該チューブ外に突出
    したピストンロッドと、前記ロッドガイドに設けられピ
    ストンロッドの外周に摺接して該ピストンロッドとロッ
    ドガイドとの間をシールし、前記チューブ内の油液が外
    部に漏洩するのを防止するシール部材とからなるシリン
    ダ装置において、 前記ピストンロッドは、円柱状の金属体と、該金属体の
    外表面に設けられた窒化膜と、該窒化膜の外表面に設け
    られた酸化膜と、該酸化膜の外表面に形成された周方向
    の横溝および軸方向の縦溝とから構成したことを特徴と
    するシリンダ装置。
  2. 【請求項2】 前記横溝は、前記ピストンロッドの外周
    のほぼ全長に亘って設け、前記縦溝は、前記ピストンロ
    ッドが最伸長位置になったときに少なくとも前記シール
    部材と対面する部位に設けてなる請求項1に記載のシリ
    ンダ装置。
  3. 【請求項3】 前記酸化膜は、周方向の表面粗さRaが
    0.06〜0.15μmであり、軸方向の表面粗さRa
    が0.03〜0.07μmである請求項1または2に記
    載のシリンダ装置。
  4. 【請求項4】 内部に油液が封入された筒状のチューブ
    と、該チューブ内に摺動可能に設けられたピストンと、
    一端側が該ピストンに接続され、他端側が前記チューブ
    に設けられたロッドガイドを介して該チューブ外に突出
    したピストンロッドと、前記ロッドガイドに設けられピ
    ストンロッドの外周に摺接して該ピストンロッドとロッ
    ドガイドとの間をシールし、前記チューブ内の油液が外
    部に漏洩するのを防止するシール部材とからなるシリン
    ダ装置に用いるピストンロッドの製造方法であって、 前記ピストンロッドの外表面にガス軟窒化処理を施し、
    窒化膜を形成する軟窒化処理工程と、軟窒化処理が施さ
    れた前記ピストンロッドの外表面に酸化膜を形成する酸
    化膜形成工程とを実施し、その後、周方向のバフ研磨に
    より酸化膜の表面に周方向の横溝を形成する周方向バフ
    研磨工程および軸方向のバフ研磨により酸化膜の表面に
    軸方向の縦溝を形成する軸方向バフ研磨工程のうち、一
    方の工程を先に実施し、他方の工程を後に実施すること
    を特徴とするシリンダ装置に用いるピストンロッドの製
    造方法。
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