JPH11323577A - 合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金 - Google Patents

合金表面の処理方法及び表面経時劣化耐性に優れた合金

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JPH11323577A
JPH11323577A JP12785598A JP12785598A JPH11323577A JP H11323577 A JPH11323577 A JP H11323577A JP 12785598 A JP12785598 A JP 12785598A JP 12785598 A JP12785598 A JP 12785598A JP H11323577 A JPH11323577 A JP H11323577A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は材料表面の化合物内で、材料内部の
保護に有用な難溶性の化合物層を損なわず、吸湿性等の
表面の経時劣化上問題となる水溶性化合物のみを選択的
に溶出・除去し、より安定且つ高機能性表面を有する材
料を製造する表面処理方法及び同方法により作製した経
時劣化耐性に優れた合金材料を提供する。 【解決手段】 水溶性化合物を形成する金属元素を成分
として含有する合金をアルカリ系脱脂剤によって5〜5
0mg/m2 除去した後、pHが5から8であって且つ不純
物元素の総含有量濃度が100ppm 以下である水に浸漬
するか、または、その水を該合金に噴霧して、合金表面
に形成された水溶性化合物のみを選択的に溶出・除去
し、該合金の表面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶
性化合物中に含有される金属元素の原子分率が、同深さ
領域に存在するHを除く全元素に対して10 at.%以下
である表面経時劣化耐性に優れた合金を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に、金属産業分
野、特に自動車、建材、缶材等の分野で、それらの合金
材料の作製過程や作製後の使用環境下に於て、合金材料
表面に形成され、材料特性に大きな影響を与える水溶性
化合物を選択的に除去することで、表面経時劣化耐性に
優れた合金表面を形成する合金表面の処理方法、および
表面経時劣化耐性に優れた合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、合金表面に形成される酸化物層等
の表面層を除去する方法としては、研削等の機械的方
法、イオンスパタリングやアーク放電によるクリーニン
グ(例えば、アール エフ アシトン他:ウエルディン
グ ジャーナル 9月号(1976年)PP.1750
−59)(R. F. Ashton et al.:Welding Journal, Sep
t.(1976), pp. 1750-1759.)等の物理的方法、酸(特公
平7−116629)やアルカリ溶液(特開平4−21
4835)に浸漬する化学的方法が使用されてきた。
【0003】また、この様にして得られた材料表面の評
価法としては、主に化学分析等による元素分析法によ
り、表面の原子組成と表面性能の関係が問題にされてき
ただけで、表面に存在する元素の原子価数等での化学状
態別の存在比と表面性能の関係が問題にされることはな
かった。従って、例えば、表面酸化被膜の存在が原因
で、合金表面の経時劣化が生じたことが解った場合で
も、表面酸化被膜中のどの様な化合物が経時劣化の原因
となるかが明らかにされていなかったために、有効な対
策が講じられなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の合金表面に形成
される酸化物層を中心とした表面層を除去する方法は、
合金を酸に浸漬する方法等の様に、表面層を最表面から
ある一定の深さまで、その組成や化学状態に関係なく、
均一に除去していく方法である。然るに、発明者らがこ
れらの合金の表面層中に存在する様々な化合物の組成や
化学状態と表面性能との関係を詳細に検討した結果、表
面経時劣化の原因となるのは表面層中の化合物のうちで
も、特に水溶性化合物である事が判明した。即ち、水溶
性化合物は、吸湿性が強く、その様な吸湿した部分は、
反応性に富み、水分中に含まれるClやF等や、空気中
のCO2 等と化合して、有害な腐食生成物を形成しやす
く、材料表面の経時劣化を起こしやすいことが判った。
【0005】しかしながら、従来法である酸やアルカリ
に浸漬して表面層を除去する方法では、表面層中の化合
物を無差別に除去してしまうので、材料表面の保護等の
有用な表面機能を有する難溶性の化合物層も同時に除去
され、活性な金属層が表面に露出してしまい、かえって
表面性能を劣化させ易くすることも明らかとなった。本
発明は、材料表面層中の各種化合物の内で、材料表面の
保護等の有用な表面機能を有する難溶性の化合物を損な
うことなく、材料作製過程や作製後の使用環境中での吸
湿現象や、それらの雰囲気中に存在するClやF等の様
な表面経時劣化上で有害な元素との反応を起こす水溶性
化合物のみを選択的に溶出・除去し、より化学的に安定
で、且つ、高機能性表面を有する材料を作製するための
表面処理方法、及び同処理方法によって表面処理された
経時劣化耐性に優れた表面を有する合金材料を提供する
ことを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、水溶性化合物
を形成する金属元素を含有する合金の作製過程、あるい
は作製後の使用環境下で、合金表面に形成された水溶性
化合物を除去する方法であって、アルカリ系脱脂剤を用
いて該合金の表面層を5〜50mg/m2 除去した後、pH
が5から8であって且つ不純物元素の総含有量濃度が1
00ppm 以下である水に浸漬するか、または、該水を該
合金に噴霧して、合金表面に形成された水溶性化合物の
みを選択的に溶出させ、除去することを特徴とする合金
表面の処理方法を提供するものである。
【0007】その内でも特に、水溶性化合物を形成する
金属元素を含有する合金が、Mgを含有する合金であっ
て、該合金の表面に形成される水溶性化合物が水溶性マ
グネシウム化合物であることを特徴とする合金表面処理
方法を提供するものである。更に、その内でも特に、M
gを含有する合金が、Alを主成分とする合金であるこ
とを特徴とする合金表面処理方法を提供するものであ
る。
【0008】また、水溶性化合物を形成する金属元素を
含有する合金であって、該合金の表面から5nm迄の深さ
領域に存在する水溶性化合物中に含有される該金属元素
の原子分率が、該深さ領域に存在するHを除く全元素に
対して10 at.%以下であることを特徴とする表面経時
劣化耐性に優れた合金を提供するものである。その内で
も特に、水溶性化合物を形成する金属元素を含有する合
金が、Mgを含有する合金であって、該合金の表面に形
成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合物であ
ることを特徴とするMgを含有する表面経時劣化耐性に
優れた合金を提供するものである。
【0009】更にその内でも特に、Mgを含有する合金
が、Alを主成分とする合金であることを特徴とする表
面経時劣化耐性に優れた合金を提供するものである。ま
た、水溶性化合物を形成する金属元素を含有する合金
を、アルカリ系脱脂剤を用いて表面層を5〜50mg/m
2 除去した後、pHが5から8であり且つ不純物元素の総
含有量濃度が100ppm 以下である水に浸漬するか、ま
たは、該水を該合金に噴霧して、該合金の表面から5nm
迄の深さ領域に存在する水溶性化合物を溶出・除去し、
該深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される該金
属元素の原子分率が、Hを除く全元素に対して10 at.
%以下にしたことを特徴とする表面経時劣化耐性に優れ
た合金を提供するものである。
【0010】その内でも特に、水溶性化合物を形成する
金属元素を含有する合金が、Mgを含有する合金であっ
て、該合金の表面に形成される水溶性化合物が水溶性マ
グネシウム化合物であることを特徴とする表面経時劣化
耐性に優れた合金を提供するものである。更にその内で
も特に、Mgを含有する合金が、Alを主成分とする合
金であることを特徴とする表面経時劣化耐性に優れた合
金を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】前述のように、使用環境下で経時
劣化を起こす合金の表面には、合金作製時の高温での圧
延や焼鈍等の材料作製過程に於て、経時劣化の原因とな
る水溶性化合物が生成する。このような合金は、合金表
面に水溶性化合物を形成する金属元素を含んでおり、そ
の様な金属元素としては、Li,Mg,Ca,Ba等が
ある。またそれらの金属元素を成分として含有する合金
としては、Al−Mg,Al−Li,Cu−Mg,Fe
−Mg合金等がある。これらの合金表面に生成する水溶
性化合物の内、現在、工業的に問題になる化合物として
は、Li2 O,MgO,CaO,BaO等が挙げられ
る。
【0012】ところで、この様な合金材料の最表面に
は、高温での圧延や焼鈍等の材料作製過程に於て、潤滑
油や圧延油として使用された油脂成分が付着している場
合が多い。この様な油脂成分は難溶性化合物であるか
ら、合金材料をそのまま水溶性化合物を除去するのと同
じ条件で処理して、除去することは困難である。更にこ
の様な油脂成分は合金最表面に不均一に付着している場
合が多いので、油脂成分を除去する為に何らかの前処理
を施すことなく、いきなり、水溶性化合物を除去するの
と同じ条件で処理すると、油脂成分が付着している部分
は撥水してしまうので除去されずに、油脂成分が付着し
ていない部分の水溶性化合物のみを溶解してしまい、結
果的に酸化膜厚が不均一になり、色調むら等の表面性能
にとって好ましくない現象を生じる場合がある。そこで
この様に最表面層に油脂成分が不均一に付着している合
金材料の場合は、前処理として、アルカリ系脱脂剤を用
いて、不均一な最表面層の難溶性油脂成分を除去した後
(以下、前処理と呼ぶ。)、合金板をpH5から8であっ
て且つ不純物元素の総含有量濃度が100ppm 以下であ
る処理水浴中に浸漬するか、合金表面にこの処理水を噴
霧すれば(以下、本処理と呼ぶ。)、表面層中の水溶性
化合物を均一に除去することが可能であり、色調むら等
の表面性能にとって好ましくない現象が発生しないこと
が解った。この様な前処理工程のアルカリ脱脂剤による
最表面層の除去量は5〜50mg/m2 程度が良いことが
実験の結果から解った。尚、前処理の場合も、本処理の
場合も、合金が厚板のような切り板の場合は、合金板を
加工などのために、搬送ロール上に載せて搬送する途中
に、ロールの上下にノズルを設けて、処理水を噴霧する
のが最も効果的である。また薄板のようにコイル状のも
のは、浸漬水槽を設けて、その中にコイルを通すのが良
い。
【0013】一般的にアルカリ脱脂剤としては市販の苛
性ソーダー系、燐酸ソーダー系、珪酸ソーダー系のどの
脱脂剤でも良い。しかし、特にMgを含有するAl合金
の表面酸化層はアルカリにも、酸にも溶出するので、苛
性ソーダー系、燐酸ソーダー系の脱脂剤の様に同表面酸
化層に対する溶出速度の速い脱脂剤を用いると、短時間
の間に同表面酸化層全体を溶出・除去してしまい、表面
層の除去量を5〜50mg/m2 に制御し、最表面層中の
油脂成分のみを除去することが技術的に難しくなる。従
って、Mgを含有するAl合金を、これらの溶出速度の
速い脱脂剤を用いてアルカリ脱脂処理を行う場合は、脱
脂液のpHを下げ、処理温度も低くしなければならないの
で、除去量を精密に制御することが難しい。その点、珪
酸ソーダー系の脱脂剤はMgを含有するAl合金の表面
酸化層の溶出速度が遅く、特にAl2 O3 等の難溶性化
合物は殆どエッチングしないので、最表面層の除去量を
5〜50mg/m2 に管理することが比較的容易であり、
Mgを含有するAl合金の表面酸化層の最表面層の油脂
成分を除去するためのアルカリ脱脂剤として最も適して
いる。
【0014】ところで、この様なアルカリ脱脂処理によ
る除去量は処理前後の重量差の測定により容易に求める
ことが可能である。また色調むらの判定は、目視でも十
分できるが、光学顕微鏡、特に偏光顕微鏡を用いれば更
に正確に行うことができる。アルカリ脱脂後の処理に用
いる浸漬水または噴霧水は、pHが5から8の水であれ
ば、蒸留水である必要はなく、各種のイオンや有機物質
を不純物として含む通常の上水道水でも十分な効果を上
げることが可能である。しかしながら、水中の含有不純
物の総量含有濃度は100ppm 以下のものを用いる必要
がある。
【0015】この処理水のpHが5未満または8を越えて
酸やアルカリ領域になると、水溶性化合物ばかりでな
く、表面の保護層である難溶性の化合物も溶出するの
で、好ましくない。また、処理水に含まれる不純物の種
類は、微量であれば、水溶性化合物の溶出速度に殆ど影
響しないが、含有不純物の総含有濃度が100ppm を越
える場合は、逆にこれらの不純物が、表面に析出してし
まい、水溶性化合物の溶出速度が遅くなり、効果がなく
なってしまう。従来、材料表面に物理的に付着した汚染
物質等を除去するために利用されてきた工業用水には、
Si,P,Ca,Mg,SO4 ,Cl,F等の多量の不
純物を含むため、水溶性化合物が溶出する前に、水の中
に含まれた不純物元素が合金表面に付着してしまうの
で、本発明の処理水としてこのような工業用水は適しな
い。
【0016】浸漬水または噴霧水の水温は特に制限はな
いが、溶解度の温度係数によって、反応速度が異なるの
で、実用的な時間内に溶出させるためには、通常50℃
以上の温水を用いるのが好ましい。また、噴霧ではなく
浸漬する場合は、水として安定な90℃以下で使用する
のが望ましい。ところで、材料表面の化合物層の内で
も、特に経時劣化との関連に於て問題となるのは、環境
と直接接触、反応する材料最表層部である。そこで、最
表層中に存在する元素の化学状態と経時劣化との相関を
調べたところ、水溶性化合物を形成する可能性のある元
素の内でも、ある特定の化学状態にある原子の最表層の
存在量が、経時劣化現象に影響を及ぼすことを見いだし
た。即ち、合金の表面から5nm迄の深さ領域に存在する
水溶性化合物中に含有される元素の存在量が、同深さ領
域に存在するHを除く全元素に対する原子分率で10 a
t.%以下のとき、優れた経時劣化耐性を示すことが判明
した。
【0017】本発明の表面処理方法を施し、経時劣化試
験によって経時劣化が進行しないことを確認した数種の
合金について、合金表面から5nm程度の深さ領域の原子
組成と化学状態をX線光電子分光法によって解析したと
ころ、同深さ領域内に存在する経時劣化の原因となる水
溶性化合物中に含まれる金属元素の存在量が、Hを除く
全元素に対する原子分率で10 at.%以下になってい
た。(尚、X線光電子分光法によって、合金表面の原子
組成や化学状態を解析する方法については後述する。)
また、同一材料の最表層5nm程度の層をアルゴンイオン
によってスパタリングして除去し、表面からの深さが5
〜10nm程度の領域を最表面層と同様の方法で解析した
ところ、同層に於ける水溶性化合物中に含まれる金属元
素の存在量が、Hを除く全元素に対する原子分率で10
at.%以上のものもあった。つまり、合金表面から5nm
迄の層に存在する水溶性化合物に含有される金属元素の
存在量が、Hを除く全元素に対する原子分率で10 at.
%以下であれば、内部の層に水溶性化合物が10 at.%
以上存在しても、吸湿や表面反応などの経時劣化現象が
進行しないことを示している。これは、本発明の表面処
理方法によって、最表面層の水溶性化合物を除去した際
にも、除去されずに残っていた最表面に存在する難溶性
化合物が保護層となり、それ以上の吸湿や表面反応など
の経時劣化現象が進行しないことによるものである。更
に、比較のために、経時劣化耐性が低い無処理材につい
て同一の解析を行ったところ、表面からの深さが5〜1
0nm程度の領域では、経時劣化耐性に優れた合金とあま
り変わらないが、表面から5nm迄の深さに存在する水溶
性化合物に含有される金属の存在量は、Hを除く全元素
に対する原子分率で10 at.%を越えていた。
【0018】以上のことから、合金の表面から5nm迄の
深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有される金属元
素の存在量が、同深さ領域に存在するHを除く全元素に
対する原子分率で10 at.%以下の合金が、経時劣化耐
性に優れた合金であることがわかる。このような合金表
面に生成した化合物が、水溶性であるか、或は難溶性で
あるかは、その化合物に含まれる元素の種類だけでな
く、その化合状態によって異なる。例えば、Mgの場
合、水溶性を有し、表面性状にとって有害なのは、Mg
を含有する化合物のうちでもMgOやMgCl2 ,Mg
CO3 のみであって、他の酸化物であるMgAl2 O4
(スピネル)やMgFe2 O4 (マグネシウムフェライ
ト)にはこの様な性質がない。
【0019】この様な水溶性化合物の内でも、特に、A
l−Mg,Fe−Mg,Cu−Mg合金等のMgを含有
する合金の表面に形成されるMgOを中心とする水溶性
マグネシウム化合物は吸湿性、反応性が強いことが知ら
れている。このような合金系の材料を、珪酸ソーダー系
の脱脂剤で温度70℃の溶液に浸漬して5〜50mg/m
2 除去した後、水洗して、処理水温度50〜90℃、不
純物総含有濃度が50〜100ppm のイオン交換水中
で、15sec 浸漬した後、X線光電子分光法によって、
最表面層5nm程度のMgの原子組成と化学状態を測定し
た結果、表面に形成された水溶性マグネシウム化合物で
あるMgO中に含まれるMgは総ての合金材料に於て、
10 at.%以下になっており、MgO以外では各合金系
とも、それぞれAl2 O3 ,Fe2 O3 ,CuOのみが
表面に存在していた。これらの表面処理を施した合金に
経時劣化試験を施したところ、吸湿や表面反応等の経時
劣化現象が進行しなかった。即ち、処理後の表面に存在
する化合物はすべて難溶性化合物であり、様々な経時劣
化の原因となる水溶性マグネシウム化合物のみが溶出・
除去されたために、経時劣化現象が起こるのが抑制され
たためと考えられる。
【0020】更に、Mgを含有する合金の内でも、特
に、Alを主成分とする合金(Al−Mg−X、ここ
で、X=Si,Cu,Zn、以下この様な合金をAl−
Mg合金と記す。)は工業的にも、自動車用車体等の構
造材料、缶材等に広範囲に利用されているが、表面は何
れもMgを主成分とする表面層に被覆されている。この
様な表面層中のMgOは、その吸湿性のため、経時劣化
以外にもその後の材料の使用目的によっては、接着性、
溶接性、化成性等の重要な表面機能を阻害する原因とな
ることが判明した。Alを主成分とする合金系に於て
は、これまでも、この様なMg酸化層を除去する方法と
して様々な方法が考案され、使用されてきたが、何れ
も、酸化層全体を無差別的に損壊、除去してしまうため
に、重要な保護層(例えばAl2 O3 )をも一緒に除去
してしまい、以下の理由によって、かえって経時劣化耐
性が低下する。即ち、通常、Al−Mg合金系では、熱
処理等の作製過程において、表面酸化層とバルク合金層
との界面に、金属マグネシウムの原子組成がバルク合金
組成よりも高くなった層が存在する場合が多い。酸洗等
によって、無差別的に酸化層を取り除いてしまうと、こ
の様な金属的なマグネシウムが濃縮された界面層が表面
に露出してしまう。この様な金属的マグネシウムの濃縮
量は合金の作製条件や雰囲気によって異なるが、最大で
表面酸化層中のマグネシウムと同程度に達することもあ
る。このような金属的なマグネシウムは極めて活性であ
るから、酸洗直後には金属的なマグネシウムも、酸洗し
た合金を大気中に放置しておくと、室温でも急速に酸化
し、酸化マグネシウムになり、再び表面経時劣化の原因
となる。従って、難溶性の保護層も損なう様な従来の表
面処理法は、経時劣化耐性をかえって損なうことになる
が、本発明の方法であれば、保護層を損なうことなく水
溶性のマグネシウムを除去することができるので、経時
劣化耐性に優れたAl−Mg合金を製造することができ
る。
【0021】以上述べたように、最表層に存在する特定
の化学状態での元素の存在量が経時劣化耐性を左右して
いるわけであるが、合金中の最表層領域での元素の化学
状態と存在比の定量的な判定は、X線光電子分光法やオ
ージェ電子分光法等によって容易に行うことができる。
特に、X線光電子分光法では、同一の元素でもその化学
状態、例えば、金属的であるか、化合物を形成している
か、等が異なれば、電子の結合エネルギーが異なるの
で、色々な化学状態の物質が表面層中に混在する場合に
は、結合エネルギースペクトルは幾つかのピークに分か
れる。従って、目的とする化学状態のピーク位置とピー
クの形状(対称か非対称か等)が、予め標準物質の測定
や文献などから解っていれば、目的とする化合物の原子
分率を求めることができる。
【0022】以下に、Al−Mg合金の表面に生成した
Mg化合物を例として、X線光電子分光法によって測定
したMgに固有な内殻電子準位のスペクトルから、Mg
元素を含有する化合物毎の原子分率を求める定量法につ
いて具体的に説明する。図1は、X線光電子分光法によ
るAl−Mg合金の表面でのMg2p状態におけるスペ
クトルの模式図である。まず、図1に示した様な実測さ
れたスペクトル1から積分法等の適当な方法で、バック
グラウンド2を差し引いた後に、適当なフィッティング
曲線4を用いて、最小二乗法等を利用して、差し引かれ
たスペクトルを幾つかの単一な化学状態のスペクトル3
a〜3cに分解する。
【0023】次に、文献や、標準物質の測定によって、
分解したスペクトルの結合エネルギーがこれまで知られ
ているどの化合物のものと最も近いかを判断し、スペク
トルの同定を行う。例えば、3aがMgOのスペクトル
とすると、分析領域におけるMgOのMg全体に対する
原子分率は、(3aのピークでの面積1)/(Mg全体
のスペクトルの面積1)として、容易に求められる。
【0024】更に、他の元素との原子分率を求めるに
は、装置関数や、感度係数などが必要であるが、いずれ
もX線光電子分光法に於ては、既にH以外の表面原子組
成の定量法として広く行なわれている方法を容易に適用
できる。また本発明の方法によって表面処理された材料
表面に残存する表面酸化膜厚はグロー放電発光分光法
(Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy:G
D−OES)(以下、GD−OESと略称)によるデプ
スプロファイル (depth profile ) の測定によって、比
較的容易に確認することが可能である。
【0025】
【実施例】厚さ1mmのMg含有Al合金薄板(4.5 w
t.%−Mg含有合金(5182(JIS規格)))の表
面に形成された水溶性酸化物を除去する目的で、該合金
薄板を、前処理として、珪酸ソーダー系の脱脂剤(FC
−315(日本パーカー製))2%で温度70℃の溶液
に浸漬して5〜50mg/m2 除去した後、水洗し、本処
理として、処理水温度50〜90℃、不純物総含有濃度
が50〜120ppmのイオン交換水中で、15sec 浸漬
した後、乾燥処理して試験片とした。アルカリ脱脂での
除去量測定は処理前後の重量差より求めた。また、各試
験片の表面酸化膜厚はGD−OESによるデプスプロフ
ァイルの結果より求めた。(尚、GD−OESによって
決定された膜厚は、直径数mm程度の表面領域の平均値で
ある。)処理前後の材料の表面から5nmの深さ迄のMg
の化学状態別での原子組成の変化をX線光電子分光法
(以下、XPSと略称)によって測定し、更に処理した
試料を表1に示す様な条件で暴露試験を行った。結果を
表2に示す。尚、同様な条件で噴霧処理も行ったが、ほ
ぼ同様の結果を得た。
【0026】各試料について、XPSによって測定した
材料の表面から5nmの深さ迄のMg2p準位のスペクト
ルデータのピーク分離を行ったところ、いずれの試料に
おいても、金属MgまたはMgOのピークのみが観測さ
れた。本発明の処理方法で処理したものは、前処理によ
って、表面の油脂成分は完全に除去されているので、色
調むらが発生することはなく、また本処理によって、材
料表面の水溶性化合物が選択的に除去されるので、本発
明の処理を行った試料は、無処理材に較べて、表面のM
gO中のMg濃度が大幅に減少していることがXPSの
解析結果から解った。以上の結果から、表面のMgOを
形成しているMgの原子分率が、同領域のHを除く全元
素の10 at.%以下であれば、何れも良好な経時劣化耐
性を示すことが明らかである。
【0027】次に、本発明の条件より外れた条件で、処
理された材料に関して比較例として説明する。前処理と
して、アルカリ脱脂での除去量が50mg/m2 以上にな
った材料(比較例1)はその後の本処理で、本発明の条
件内で処理しても、色調むらは発生しないものの、経時
劣化度は良くないことが分かる。これは酸化膜厚が、1
nmと極薄になっていることからも容易に分かるように、
前処理の段階で殆どの酸化膜が溶出してしまい、合金表
面の金属マグネシウムが濃縮した層(Mg総量:20 a
t.%)が露出してしまい、処理後に金属マグネシウムが
酸化されて、再び殆どがMgO(20 at.%)となって
しまったためであることがXPSの結果から判る。
【0028】また前処理は適切(除去量:36mg/
m2 )でも、本処理の処理水がpH4(比較例2)、pH9
(比較例3)と本発明の条件を外れた処理板では比較例
1と同様に、色調むらは発生しないものの、経時劣化度
は良くないことがわかる。これは酸化被膜の膜厚が1nm
と極薄になっていることからも容易に分かるように、前
処理では油脂成分が適切に除去されたものの、その後の
本処理で、前処理の時には残存していた酸化膜がすべて
無差別に溶出・除去されてしまい、比較例1の場合と同
様に、表面に合金層が露出した部分が多くなり、合金層
中のMgが処理後に、再び急速に酸化マグネシウムを形
成するためと考えられる。
【0029】また前処理のアルカリ脱脂による除去量
が、5mg/m2 以下のもの(比較例4)はその後の本処
理で、本発明の条件内で適切な処理をしても、色調むら
が発生し、経時劣化耐性も劣る。これは酸化被膜の膜厚
が10nmと比較的厚いことからも判るように、前処理で
十分に油脂成分が除去できなかったために、その後の本
処理でも、油脂成分が付着したままの部分のMgOは撥
水のために十分除去できず、MgO中に含まれるMgが
16 at.%も残っているためであると考えられる。
【0030】さらに比較例5に示すように、比較例4と
同様な前処理(アルカリ脱脂による除去量:5mg/m2
以下)を施し、本処理の条件が、pH4と本発明の条件外
の場合でも、色調むらが発生しない場合もある。これは
酸化膜厚が1nmであることからも解るように、前処理に
よっては十分に油脂成分が除去されなかったものの、そ
の後の本処理の条件が、酸洗の場合に近く、水溶性のM
gOだけでなく、前処理で十分除去できなかった油脂成
分も含めて、すべての酸化膜成分が除去されてしまった
ためである。しかしながら、この様な条件では、比較例
1〜3の場合と同様に合金層が露出してしまい、経時劣
化耐性は劣る結果になることが判る。
【0031】また比較例6に示す様に、適切な条件で前
処理を行っても、本処理の処理水に含まれる不純物総量
が100ppm を越える場合には、表面の油脂成分は除去
されるために、色調むらは発生しないが、その後の本処
理では、不純物が表面に急速に付着して、水溶性化合物
の溶出が殆ど進まないために、酸化膜厚も厚く(6n
m)、また表面のMgO中に含まれるMgも11 at.%
と本発明の範囲外となるために、経時劣化耐性が劣って
いる。
【0032】さらに比較例7に示す様に、前処理におい
ても、除去量が少なく、また本処理においても処理水に
含まれる不純物総量が100ppm を越える場合には、前
処理で、油脂成分も除去されず、また本処理において
も、MgOが十分除去できないために、色調むらが発生
し、経時劣化耐性も劣る結果となる。また比較例8に示
した様に、無処理材に関しては、表面のMgOを構成す
るMgが20 at.%存在するので、経時劣化耐性は劣る
が、色調むらに関しては、むらがあるものとないものが
ある。これは材料によって、油脂成分の付着の不均一性
が異なるために発生する現象で、本発明の方法とは直接
関係がない。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、材料表面に形成されて
いる表面層中に存在する各種の化合物の内で、表面保護
などの為に有用な難水溶性化合物層を損なうことなく、
吸湿性等の性質を有し、材料の表面経時劣化の上で問題
となる水溶性化合物のみを選択的に除去し、より安定且
つ高機能性表面を有する材料を簡便且つ安価に製造する
ことが可能である。また、本発明の方法によって製造さ
れた合金は、経時劣化耐性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】X線光電子分光法によるMgを含有したAl合
金表面のMg2p状態でのスペクトルの模式図である。
【符号の説明】
1…測定された光電子スペクトル 2…バックグラウンド(非弾性散乱光電子成分等) 3…ピーク分離フィッティングによる存在状態毎に分離
されたスペクトル 3a…MgO成分(水溶性化合物成分) 3b…MgAl2 O4 (スピネル)成分(難溶性化合物
成分) 3c…金属的Mg(合金成分)(難溶性化合物成分) 4…3のそれぞれの成分に対応するフィッティング曲線
【表1】
【表2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 康夫 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 加田 好実 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
    する合金の作製過程、あるいは作製後の使用環境下で、
    合金表面に形成された水溶性化合物を除去する方法であ
    って、アルカリ系脱脂剤を用いて該合金の表面層を5〜
    50mg/m2除去した後、pHが5から8であり且つ不純
    物元素の総含有量濃度が100ppm 以下である水に浸漬
    するか、または、該水を該合金に噴霧して、合金表面に
    形成された水溶性化合物のみを選択的に溶出・除去する
    ことを特徴とする合金表面の処理方法。
  2. 【請求項2】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
    する合金が、Mgを含有する合金であって、該合金の表
    面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合
    物であることを特徴とする請求項1記載の合金表面の処
    理方法。
  3. 【請求項3】 Mgを含有する合金が、Alを主成分と
    する合金であることを特徴とする請求項2記載の合金表
    面の処理方法。
  4. 【請求項4】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
    する合金であって、該合金の表面から5nm迄の深さ領域
    に存在する水溶性化合物中に含有される該金属元素の原
    子分率が、該深さ領域に存在するHを除く全元素に対し
    て10 at.%以下であることを特徴とする表面経時劣化
    耐性に優れた合金。
  5. 【請求項5】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
    する合金が、Mgを含有する合金であって、該合金の表
    面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合
    物であることを特徴とする請求項4記載の表面経時劣化
    耐性に優れた合金。
  6. 【請求項6】 Mgを含有する合金が、Alを主成分と
    する合金であることを特徴とする請求項5記載の表面経
    時劣化耐性に優れた合金。
  7. 【請求項7】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
    する合金を、アルカリ系脱脂剤を用いて表面層を5〜5
    0mg/m2 除去した後、pHが5から8であり且つ不純物
    元素の総含有量濃度が100ppm 以下である水に浸漬す
    るか、または、その水を該合金に噴霧して、該合金の表
    面から5nm迄の深さ領域に存在する水溶性化合物を溶出
    ・除去し、該深さ領域に存在する水溶性化合物中に含有
    される該金属元素の原子分率が、Hを除く全元素に対し
    て10 at.%以下にしたことを特徴とする表面経時劣化
    耐性に優れた合金。
  8. 【請求項8】 水溶性化合物を形成する金属元素を含有
    する合金が、Mgを含有する合金であって、該合金の表
    面に形成される水溶性化合物が水溶性マグネシウム化合
    物であることを特徴とする請求項7記載の表面経時劣化
    耐性に優れた合金。
  9. 【請求項9】 Mgを含有する合金が、Alを主成分と
    する合金であることを特徴とする請求項8記載の表面経
    時劣化耐性に優れた合金。
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JP2006200007A (ja) * 2005-01-21 2006-08-03 Furukawa Sky Kk 脱脂後水濡れ性及び接着性に優れた自動車ボディーシート用アルミニウム合金板
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JP2017128810A (ja) * 2012-04-25 2017-07-27 アルセロルミタル・インベステイガシオン・イ・デサロジヨ・エセ・エレ 油を塗ったZn−Al−Mgコーティングを有する金属シートを製造する方法および対応する金属シート

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