JPH11335731A - 耐硫化物応力割れ性に優れた高強度鋼材の製造方法 - Google Patents

耐硫化物応力割れ性に優れた高強度鋼材の製造方法

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JPH11335731A
JPH11335731A JP14000898A JP14000898A JPH11335731A JP H11335731 A JPH11335731 A JP H11335731A JP 14000898 A JP14000898 A JP 14000898A JP 14000898 A JP14000898 A JP 14000898A JP H11335731 A JPH11335731 A JP H11335731A
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朋彦 大村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】YSが110〜155ksiの高強度でありな
がら耐SSC性に優れた鋼材の製造方法を提供する。 【解決手段】C:0.2〜0.35%、Cr:0.1〜
1.2%、Mo、Vを基本成分とし、Mo、Vの含有量
を目標降伏強度に応じ所定の式で決定して焼入れ、焼戻
し処理する110kis級の耐硫化物応力割れ性に優れ
た高強度鋼材の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油井やガス井用の
ケーシングやチュービング、掘削用のドリルパイプ、輸
送用のラインパイプおよび化学プラント用配管などに用
いられる耐硫化物応力割れ性に優れた高強度鋼材の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のエネルギー事情の逼迫に伴い、こ
れまで敬遠されてきた硫化水素を多く含む原油や天然ガ
スが活用される情勢になってきており、それらの掘削、
輸送、貯蔵等が必要となってきた。その上、油井やガス
井の深井戸化に伴いこの分野で用いられる鋼材、特に鋼
管については、これまで以上に高強度化が要求されてい
る。
【0003】すなわち、従来広く用いられていた降伏応
力(以下、YSと記す)の80ksi級(80〜90k
si)や90ksi級(90超え、100ksi以下)
の耐硫化物応力割れ性に優れた鋼管に代わって、最近で
は110ksi級(110〜125ksi)や125k
si級(125超え、140ksi以下)の耐硫化物応
力割れ性に優れた高強度鋼管が使用されるようになっ
た。さらに、YSが140ksi以上の耐硫化物応力割
れ性に優れた超高強度鋼管に対する要求も高まりつつあ
る。
【0004】一般に、鋼材はその強度が増すほど耐硫化
物応力割れ性(以下、「硫化物応力割れ」を「SSC」
という)がわるくなる。したがって、硫化水素を多く含
む環境下で使用される鋼材の高強度化に対し、最も大き
な課題となるのは耐SSC性の改善である。
【0005】この耐SSC性を改善するため、鋼材の
組織をマルテンサイトが約80%以上を占める組織とす
る、高温で焼戻し処理する、鋼を高清浄度化する、
鋼材の組織を細粒組織とする、などの対策がこれまで
に講じられてきた。
【0006】これらのうちの組織を細粒化する方法
は、下記のような利点があるため特に注目され、研究、
開発が進められてきた。
【0007】すなわち、第一の利点は、鋼材の強度が高
くなるとその脆性割れは結晶粒単位あるいは所謂「破面
単位」で進展するので、組織を細粒化すると割れに対す
る抑止力が増すことである。第二に、細粒化そのものも
強度上昇に寄与すること、第三に細粒化すれば単位体積
当たりの粒界面積が増加するので間接的に不純物元素の
粒界偏析が軽減され粒界脆化が防止されることである。
【0008】鋼材組織の細粒化の一般的な手法として、
変態、加工変形を利用する方法および加工変形後の再結
晶時の粒成長を抑止する方法等がある。鋳造後の鋼塊を
熱間で鋼管など所定の形状の鋼材に成形する際は、必然
的に加工変形が加えられ、加工と再結晶の繰り返しによ
り細粒化される。
【0009】しかし、加工後の強度を調整する熱処理に
おける焼入れは一般にオーステナイト領域、つまり、A
c3点以上の温度に加熱しなければならないので、結晶
粒成長が起きやすく、結晶を細粒にしておくには、焼入
れ時の加熱温度を低くすることが望ましい。ところが、
細粒であること、および焼入れ温度を低くすることは、
焼入性を大きく低下させる要因となり、通常の冷却手段
では焼入れ時に80%以上がマルテンサイトである充分
な焼入れ組織を確保することが難しくなってくる。ま
た、細粒化のために焼入れ温度を低くすると、焼入れ時
に合金元素が基地に固溶し難くなって、鋼材を高強度化
するためには低温焼戻しが必要となる。低温での焼戻し
は後述するように耐SSC性を著しく低下させてしま
う。一方、焼入性確保のために合金元素を多量に添加す
れば、鋼の加工性を悪くし、製造コストの上昇の要因に
もなる。
【0010】特開昭61−9519号公報には、急速加
熱後に焼入れして細粒化する「耐硫化物腐食割れ性に優
れた高強度鋼の製法」が開示されている。
【0011】特開昭59−232220号公報には、鋼
を2回焼入れして細粒化する「耐硫化物腐食割れ性に優
れた高強度鋼の製法」が開示されている。
【0012】しかしながら、上記した公報に記載されて
いる方法は、いずれも降伏応力(YS)が90ksi級
(90超え、100ksi以下)や100ksi級(1
00超え、110ksi以下)の高強度鋼を対象とした
ものである。これらの方法では、YSが110ksi以
上の高強度になると、必ずしも所望の耐SSC性が得ら
れなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、YS
が110〜155ksi(758〜1068MPa)と
高強度でありながら耐SSC性に優れた油井やガス井及
びそれらに関連した諸設備や化学プラント設備などに好
適な鋼材の製造方法を提供することにある。
【0014】なお、耐SSC性の改善目標は、NACE
(National Association of Corrosion Engineers)T
M0177A法に規定された浴(1気圧の硫化水素で飽
和した25℃の0.5%酢酸+5%食塩水)中で定荷重
試験を行った時の割れ発生限界応力(σth)が鋼材の
YSの80%以上であることである。前記の条件を満た
せば、その鋼材は昨今の厳しい腐食環境下での使用に充
分耐え得ることが知られている
【0015】
【課題を解決するための手段】耐SSC性に優れた高強
度鋼材の製造方法に係わる本発明の要旨は以下の通りで
ある。
【0016】(1)質量%で、C:0.2〜0.35
%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1%、
Cr:0.1〜1.2%、Mo:0.1〜1%、Al:
0.005〜0.1%、B:0.0001〜0.01
%、Nb:0.005〜0.5%、V:0.005〜
0.5%、TiおよびZrの一種または二種をそれぞれ
0.1%以下で、かつTi+0.5Zr:0.005〜
0.15%、W:0〜1%、Ca:0〜0.01%を含
み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、不純物中
のP:0.025%以下、S:0.01%以下、Ni:
0.1%以下、N:0.01%以下、O(酸素):0.
01%以下であり、Mo、V含有量が下記式(1)を満
足する鋼を熱間加工し、次いで焼入れ焼戻しの熱処理を
施すことを特徴とする110〜155ksiの降伏応力
を有する耐硫化物応力割れ性に優れた高強度鋼材の製造
方法。
【0017】 2Mo+5V≦B×C−A+1.4 ・・・・・・ (1) ここで、A:4930e(-0.0133D) B:1.07×10-8(0.0187D) D:E−100e(-0.52Mo-5.15V+0.4) C、E:降伏応力が110以上、125ksi以下の鋼
材を製造する場合 C:150、E:770 降伏応力が125超え、140ksi以下の鋼材を製造
する場合 C:190、E:755 降伏応力が140超え、155ksi以下の鋼材を製造
する場合 C:270、E:740 e:自然対数の底数 Mo、Vは含有量(質量%) (2)質量%で、C:0.2〜0.35%、Si:0.
05〜0.5%、Mn:0.1〜1%、Cr:0.1〜
1.2%、Mo:0.1〜1%、Al:0.005〜
0.1%、B:0.0001〜0.01%、Nb:0.
005〜0.5%、V:0.005〜0.5%、Tiお
よびZrの一種または二種をそれぞれ0.1%以下で、
かつTi+0.5Zr:0.005〜0.15%、W:
0〜1%、Ca:0〜0.01%を含み、残部がFe及
び不可避的不純物からなり、不純物中のP:0.025
%以下、S:0.01%以下、Ni:0.1%以下、
N:0.01%以下、O(酸素):0.01%以下であ
り、Mo、VおよびNb含有量が下記式(2)を満足す
る鋼を熱間加工し、熱間加工終了後に直接焼入れを施
し、次いで焼戻し処理することを特徴とする110〜1
55ksiの降伏応力を有する耐硫化物応力割れ性に優
れた高強度鋼材の製造方法。
【0018】 2Mo+4Nb+5V≦B×C−A+1.4 ・・・・・・ (2) ここで、A:4930e(-0.0133D) B:1.07×10-8(0.0187D) D:E−100e(-0.52Mo-9.36Nb-5.15V+0.4) C、E:降伏応力が110以上、125ksi以下の鋼
材を製造する場合 C:150、E:770 降伏応力が125超え、140ksi以下の鋼材を製造
する場合 C:190、E:755 降伏応力が140超え、155ksi以下の鋼材を製造
する場合 C:270、E:740 e:自然対数の底数 Mo、VおよびNbは含有量(質量%) 本発明者らは、耐SSC性を向上させる結晶粒微細化の
効果につき検討した結果、結晶粒の微細化はYSが11
0ksi未満の鋼材には有効であるが、110ksi以
上の高強度鋼材に対しては耐SSC性を向上させる作用
が不安定になり、特にYSが120ksiを超える鋼材
に対しては、耐SSC性の向上効果が認められないこと
を確認した。
【0019】そこで、組織を細粒化する方法以外の方法
で、YSが110ksi以上の高強度で、耐SSC性に
優れた鋼材を製造する方法を開発すべく、鋼の化学組成
につき検討し、種々実験を重ねた結果、以下の知見を得
た。
【0020】a)硫化水素環境で鋼中に吸蔵された拡散
性水素の量(以下吸蔵水素濃度と言う)は、鋼の組成に
応じて異なる。
【0021】b)硫化水素環境下で水素吸蔵に大きく影
響する元素はMoとVであり、どちらも含有量を増加さ
せれば焼戻し軟化抵抗が高まり高温焼戻しすることがで
きて内部歪みを低減することができるが、一方で吸蔵水
素濃度を増加させる働きがある。その理由は、焼戻し軟
化抵抗、すなわち析出強化に寄与するMo系やV系の微
細炭化物の界面に拡散性水素がトラップされることにあ
る。
【0022】c)通常の焼入れ熱処理では鋼中に固溶し
ないNbも、直接焼入れする場合に限り焼入れ時に完全
に鋼中に固溶し、その後の焼戻し時に微細炭化物として
析出し焼戻し軟化抵抗を高める。しかし、MoやVと同
様に吸蔵水素を増加させる働きを示す。従って、これら
の元素を含有させることにより高温焼戻しによる内部歪
みの低減を図ることができるが、一方で微細炭化物自身
が吸蔵水素濃度を増してしまう作用がある。ただし、直
接焼入れもしくは直接焼入れ焼戻し後に通常の焼入れ焼
戻しした場合は、Nb炭化物は粗大化し、焼戻し軟化抵
抗には効かない。
【0023】d)耐SSC性は、吸蔵水素の低減と高温
焼戻しの相乗効果で著しく改善される。すなわち、SS
Cが発生する場合には、欠陥や転位等で局部的に水素濃
度が増加し、その結果割れに至るのであるが、吸蔵水素
濃度を低減することに加え、さらに高温焼戻しにより内
部歪みを低減すれば、この水素の局部的な濃度上昇に伴
うSSCの発生が抑制される。
【0024】e)そのため、鋼中のMo、VおよびNb
(ただし、Nbは直接焼入れの場合のみ)含有量を鋼材
の強度レベルに応じて適切な量にするのがよい。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の製造方法で規定し
た条件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有
量の「%」は「質量%」を示す。
【0026】(A)鋼材の化学組成 C:0.2〜0.35% Cは焼入性を高め、強度を向上させるのに有効な元素で
ある。しかし、その含有量が0.2%未満では、焼入性
が低下すると共に耐SSC性が低下することがある。一
方、0.35%を超えると、炭化物が増加し、拡散性水
素のトラップサイトが多くなって耐SSC性が低下す
る。さらに、焼割れ感受性も増大する。したがって、C
の含有量は0.2〜0.35%とした。C含有量の好ま
しい上限は0.3%である。
【0027】ここでいうトラップサイトとは、拡散がで
きないほど強力に水素を固定するのではなく、鋼中に固
溶している水素が、その部分に存在する方がより安定で
あり、鋼の素地(基地)の水素濃度レベルよりは相対的
に濃度が高くなる局所的部分のことをいう。
【0028】Si:0.05〜0.5% Siは、鋼の脱酸に有効な元素であり、焼戻し軟化抵抗
を高めて耐SSC性を向上させる元素でもある。脱酸の
目的からは0.05%以上の含有量とする必要がある。
しかし、その含有量が0.5%を超えると靭性が低下す
ると共に、粒界強度が低くなるので耐SSC性も却って
低下してしまう。したがって、Siの含有量は0.05
〜0.5%とした。なお、Si含有量の好ましい上限は
0.3%である。
【0029】Mn:0.1〜1% Mnは、鋼の焼入性を確保するのに有効な元素である。
この目的からは0.1%以上の含有量が必要である。し
かし、1%を超えて含有させると粒界に偏析して耐SS
C性及び靭性の低下を招く。したがって、Mnの含有量
は0.1〜1%とした。なお、Mn含有量の上限は望ま
しくは0.5%である。
【0030】Cr:0.1〜1.2% Crは、焼入性を上げるとともに焼戻し軟化抵抗を高め
て高温焼戻しを可能にし、耐SSC性を向上させる作用
がある。前記の効果を確実に得るためにはCrの含有量
は0.1%以上とする必要がある。しかし、Crを1.
2%を超えて含有させると、硫化水素を含む酸性の湿潤
環境ではCrが活性溶解して腐食速度が大きくなり、却
って耐SSC性の低下を招く。したがって、Crの含有
量は0.1〜1.2%とした。なお、Cr含有量の好ま
しい上限は0.5%である。
【0031】Mo:0.1〜1% Moは、V、Nbとともに本発明において重要な元素で
あり、焼入性を向上させるとともに、焼戻し軟化抵抗を
高めて高温焼戻しを可能にし、耐SSC性を向上させる
作用を有する。しかし、その含有量が0.1%未満では
前記の効果が得られない。一方、1%を超えて含有させ
ると、焼戻しで針状のMo炭化物が析出して拡散性水素
をトラップして吸蔵水素濃度を増し、かつその周辺の応
力集中により耐SSC性を却って低下させる。したがっ
て、Moの含有量を0.1〜1%とした。
【0032】Al:0.005〜0.1% Alは、鋼の脱酸に必要な元素である。しかし、その含
有量が0.005%未満ではその効果を十分得ることが
できない。一方、0.1%を超えて含有させると粗大な
Al23のようなAl系介在物が多くなって靭性及び耐
SSC性が低下する。したがって、Alの含有量は0.
005〜0.1%とした。Al含有量の望ましい範囲は
0.01〜0.05%である。なお、本発明でいうAl
とは所謂「sol.Al(酸可溶Al)」のことであ
る。
【0033】B:0.0001〜0.01% Bは、微量でも鋼の焼入性を向上させる作用を有する。
しかし、その含有量が0.0001%未満ではその効果
が充分でなく、0.01%を超えると靭性及び耐SSC
性が低下するため、Bの含有量は0.0001〜0.0
1%とした。なお、B含有量の望ましい範囲は、0.0
002〜0.002%である。
【0034】Nb:0.005〜0.5% Nbは、通常の焼入れ焼戻し熱処理では未固溶の炭化物
としてピニング効果により細粒化に有効な元素である。
また直接焼入れ法により焼入れ時に完全に固溶させれ
ば、焼戻し軟化抵抗に活用でき、耐SSC性を高めるこ
ともできる。この効果を得るためにはNbを0.005
%以上含有させる必要がある。一方、0.5%を超えて
含有させると、粗大なNb炭化物が拡散性水素のトラッ
プサイトとなって水素吸蔵量が増えるので耐SSC性が
低下する。したがって、Nbの含有量を0.005〜
0.5%とした。
【0035】V:0.005〜0.5% Vは、焼戻し時に微細な炭化物として析出して焼戻し軟
化抵抗を高め、高温焼戻しを可能とすることにより耐S
SC性を改善する作用を有する。この効果を確実に得る
には、Vは0.005%以上の含有量とする。一方、V
含有量が0.5%を超えるとV炭化物が粗大化して強化
に寄与しなくなることに加え、その粗大炭化物が拡散性
水素のトラップサイトとなって水素吸蔵量が増えるので
却って耐SSC性が低下する。したがって、Vの含有量
を0.005〜0.5%とした。
【0036】なお、上記Mo、VおよびNbに関して
は、熱処理法とYSの目標とする範囲に応じて後述する
所定の式(1)および(2)を満たす含有量としなけれ
ばならない。
【0037】TiおよびZr:一種または二種をそれぞ
れ0.1%以下、かつTi+0.5Zr:0.005〜
0.15% TiとZrは、それぞれ鋼中の不純物であるNをTiN
やZrNとして固定する目的で添加する。また、Nの固
定に必要とする量よりも過剰なTiやZrは、炭化物と
なって微細に析出し、焼戻し軟化抵抗を高める効果を有
する。Nを固定する必要があるのは、焼入性向上のため
に添加するBがBNとなるのを抑制し、Bを固溶状態に
維持して充分な焼入性を確保するためである。
【0038】こうした効果は、TiとZrの含有量に関
し、Ti+0.5Zrの値が0.005%以上の場合に
確実に得られる。しかし、Ti+0.5Zrの値で0.
15%を超えるTiとZrを添加しても前記の効果は飽
和するのでコストが嵩み、さらに、粗大な炭化物が増加
して靭性および耐SSC性が低下することがある。
【0039】なお、Ti+0.5Zrの値が0.005
〜0.15%でありさえすれば良いので、必ずしもTi
とZrを複合して含有させる必要はない。Zrを添加し
ない、つまりTiを単独で添加する場合、その含有量が
0.1%を超えると炭化物が増加し靭性および耐SSC
性が低下する。逆にTiを添加しない、つまりZrを単
独で添加する場合に、Zrを0.1%を超えて含有させ
ると炭化物が増加し靭性および耐SSC性が低下する。
【0040】W:0〜1% Wは必要により含有させるもので、含有させれば焼入性
を高めるとともに、焼戻し軟化抵抗を高めて高温焼戻し
に有利となり、耐SSC性を向上させる作用を有する。
前記の効果を確実に発揮させるには、Wの含有量は0.
3%以上とすることが好ましい。しかし、1%を超えて
含有させると析出炭化物の粗大化が起こって前記の効果
が飽和あるいは低下するのに加え、粗大化した炭化物が
拡散性水素のトラップサイトとなって却って耐SSC性
が低下する。したがって、Wを含有させる場合の上限は
1%とした。なお、W含有量の好ましい上限は0.7%
である。
【0041】Ca:0〜0.01% Caは必要により含有させるもので、鋼中のSと結合し
て硫化物を形成し、介在物の形状を改善して耐SSC性
を向上させる。したがって、前記の効果を確保したい場
合には、Caを含有させてもよい。なお、前記の効果を
確実に得るには、0.0001%以上の含有量とするこ
とが好ましい。しかし、その含有量が0.01%を超え
ると、却って耐SSC性が低下するばかりか靭性も低下
するし、鋼材表面に地疵などの欠陥が発生し易くなる。
したがって、Caを含有させる場合の上限は0.01%
とした。
【0042】P:0.025%以下 Pは不純物として鋼中に不可避的に存在するが、粒界に
偏析して耐SSC性を劣化させてしまう。特に、その含
有量が0.025%を超えると耐SSC性の劣化が著し
くなる。そのため、その含有量は0.025%以下にす
る必要がある。なお、耐SSC性を高めるためにPの含
有量はできるだけ低くすることが望ましい。
【0043】S:0.01%以下 SはPと同様に不純物として鋼中に不可避的に存在する
が、粒界に偏析することと、硫化物系の介在物を多量に
生成することによって耐SSC性を低下させてしまう。
特に、その含有量が0.01%を超えると耐SSC性の
低下が著しくなる。したがって、その含有量は0.01
%以下にする必要がある。なお、耐SSC性を高めるた
めにSの含有量はできるだけ低くすることが望ましい。
【0044】Ni:0.1%以下 Niは不純物として鋼中に存在し、本発明で規定する化
学組成範囲の鋼においては耐SSC性を低下させる。特
に、Niの含有量が0.1%を超えると耐SSC性の低
下が著しくなる。したがって、Niの含有量を0.1%
以下とした。なお、Niは、Cr原料中に不可避的に含
まれている場合は、Crを含有させる場合、Niの含有
量を0(ゼロ)にすることは工業的に極めて難しいが、
できるだけ少なくすることが望ましい。
【0045】N:0.01%以下 Nは不純物として鋼中に存在し、粒界に偏析して靭性及
び耐SSC性を低下させる。しかし、その含有量が0.
01%以下であれば許容できることから、Nの含有量を
0.01%以下とした。なお、Nは溶製中に大気などか
らも鋼中に溶解するので、その含有量を0(ゼロ)にす
ることは工業的に極めて難しいが、できるだけ少なくす
ることが望ましい。
【0046】O(酸素):0.01%以下 Oは不純物として鋼中に存在し、粒界に偏析して靭性及
び耐SSC性を低下させる。しかし、その含有量が0.
01%以下であれば許容できることから、Oの含有量を
0.01%以下とした。なお、Oは溶製中に大気などか
らも鋼中に溶解するので、その含有量を0(ゼロ)にす
ることは工業的に極めて難しいが、できるだけ少なくす
ることが望ましい。
【0047】次に、Mo、Nb、Vに関しては、前記し
たように熱処理法とYSの目標とする範囲に応じて、下
記式(1)および(2)を満たす必要がある。
【0048】通常の焼入れ焼戻し熱処理の場合 2Mo+5V≦B×C−A+1.4 ・・・・・・ (1) ここで、A:4930e(-0.0133D) B:1.07×10-8(0.0187D) D:E−100e(-0.52Mo-5.15V+0.4) C、E:降伏応力が110以上、125ksi以下の鋼
材を製造する場合 C:150、E:770 降伏応力が125超え、140ksi以下の鋼材を製造
する場合 C:190、E:755 降伏応力が140超え、155ksi以下の鋼材を製造
する場合 C:270、E:740 e:自然対数の底数 直接焼入れの場合 2Mo+4Nb+5V≦B×C−A+1.4 ・・・・・・ (2) ここで、A:4930e(-0.0133D) B:1.07×10-8(0.0187D) D:E−100e(-0.52Mo-9.36Nb-5.15V+0.4) C、E:降伏応力が110以上、125ksi以下の鋼
材を製造する場合 C:150、E:770 降伏応力が125超え、140ksi以下の鋼材を製造
する場合 C:190、E:755 降伏応力が140超え、155ksi以下の鋼材を製造
する場合 C:270、E:740 e:自然対数の底数 耐SSC性能は、前述したように吸蔵水素濃度の低減と
高温焼戻しの相乗効果により改善され、種々試験を繰り
返した結果求めた下記式の指標値(以下、耐SSC指標
と記す)でよく整理できる。
【0049】耐SSC指標=(吸蔵水素濃度)/1.07×
10-8(0.0187D) Dは、焼鈍温度で℃を示す。また、吸蔵水素濃度は種々
の測定法により実測可能で、単位はppmである。
【0050】e(0.0187D)の値は、焼戻し温度Dが低く
なるほど小さくなる。すなわち、高温焼戻しになるほど
転位が拡散移動により消滅して内部歪が解消され、拡散
性水素がそうした転位に集まりにくくなるからである。
【0051】図1は、YSが140ksi級(140〜
155ksi)の鋼の耐SSC指標と耐SSC性との関
係を示す図である。
【0052】横軸は、種々の鋼種における吸蔵水素濃度
の測定値を、上式で求めた1.07×10-8(0.0187D)で除
した値(耐SSC指標)である。一方、縦軸は後述する
NACE TM0177A法に従う定荷重試験による破
断限界応力の実測YSに対する比である。耐SSC性を
改善するには耐SSC指標を小さくすればよいことが分
かる。すなわち、耐SSC指標は、(吸蔵水素濃度)/
1.07×10-8(0.0187D)であるから吸蔵水素濃度が小さ
くなる成分系の鋼とするのがよい。
【0053】硫化水素環境での吸蔵水素濃度は、Mo、
VおよびNbの含有量により、通常の焼入れ焼戻し熱処
理と直接焼入れ焼戻しの場合に応じて下記式(4)およ
び(5)で表せる。
【0054】通常の焼入れ焼戻し熱処理の場合 吸蔵水素濃度=A+2Mo+5V−1.4 ・・・・(4) 直接焼入れの場合 吸蔵水素濃度=A+2Mo+4Nb+5V−1.4 ・・・・(5) A:4930e(-0.0133D) D:焼戻し温度(℃) 第1項のAは内部歪みにトラップされる水素濃度に相当
し、高温焼戻しに伴い低減される。一方、第2項以下は
焼戻し軟化抵抗、すなわち析出強化に寄与する微細炭化
物の界面にトラップされる水素濃度に相当する。直接焼
入れプロセスの場合はNbが析出強化に寄与するので、
Nbの水素吸蔵効果を考慮する必要がある。
【0055】また、焼戻し温度は強度ごとに各合金元素
の影響を受け、回帰計算により求めた下式で表せる。
【0056】 通常の焼入れ焼戻し熱処理の場合 焼戻し温度、D(℃)=E−100e
(-1.5Mo-5.15V+0.4) 直接焼入れの場合 焼戻し温度、D(℃)=E−100e
(-1.5Mo-9.36Nb-5.15V+0.4) ここでEは、 110以上、125ksi以下の鋼材を製造する場合 E=770 125超え、140ksi以下の鋼材を製造する場合 E=755 140超え、155ksi以下の鋼材を製造する場合 E=740 従って、耐SSC指標は、YSの範囲に応じて下式で表
せ、Mo、VおよびNbの含有量により影響される。
【0057】(1)通常の焼入れ焼戻し熱処理の場合 耐SSC指標=(A+2Mo+5V−1.4)/B A=4930e(-0.0133D) B=1.07×10-8(0.0187D) D=E−100e(-0.52Mo-5.15V+0.4)・・・(焼戻し温
度、℃) Eは、上記の通りである。
【0058】(2)直接焼入れの場合 耐SSC指標=(A+2Mo+4Nb+5V−1.4)
/B A=4930e(-0.0133D) B=1.07×10-8(0.0187D) D=E−100e(-0.52Mo-9.36Nb-5.15V+0.4) Eは、上記の通りである。
【0059】吸蔵水素濃度を低減できる成分系を選択す
れば、上記式の分子を小さくすることができ、一方、高
温焼戻しを実現できる成分系を選択すれば分母を大きく
し内部歪みを低減することができ、どちらの方法でも耐
SSC性を改善することができる。しかし吸蔵水素濃度
と焼戻し温度は独立ではなく密接に相関しており、最適
な成分バランスが実際には存在する。
【0060】図2は、通常の焼入れ焼戻し熱処理でYS
が140ksi超の鋼の場合で、MoとVの含有量を変
化させた場合の耐SSC指標の変化を示す図である。
【0061】耐SSC性を向上させるMoとVの最適組
合せ範囲が存在し、所望の耐SSC性を満足するには耐
SSC指標をある値以下にする成分系を選択すればよい
ことがわかる。この値は、種々の試験により求めた結
果、YSが110級(110〜125ksi)であれば
150、125級(125〜140ksi)であれば1
90、140級(140〜155ksi)では270と
なった。また、MoとV過剰添加は吸蔵水素濃度を増
す効果が大きくなり、耐SSC性をかえって低下させる
方向に向かう。
【0062】したがって、上記目標とする各耐SSC指
標をCとすると、下式を満足する成分系とすればよい。
【0063】・通常の焼入れ焼戻し熱処理の場合は、 (A+2Mo+5V−1.4)/B≦C すなわち、 2Mo+5V≦B×C−A+1.4 ・直接焼入れの場合は、 (A+2Mo+4Nb+5V−1.4)/B≦C すなわち、 2Mo+4Nb+5V≦B×C−A+1.4 Nbは吸蔵水素濃度を増さず耐SSC性を高めるのに最
も有効な元素である。しかし焼戻し軟化抵抗に有効活用
するには直接焼入れによって焼入れ時に一度完全固溶さ
せることが必須であり、通常の焼入れ焼戻し処理に適用
することはできない。
【0064】化学成分を上記の式にしたがい最適化すれ
ば、結晶粒の微細化は耐SSC性の改善に必ずしも必要
でない。直接焼入れ法では一般的に結晶粒の粗大化が問
題であるが、最適成分範囲を満足していれば、粗粒であ
っても所望の耐SSC性を満足する。その理由は、SS
Cの破断形態が、従来の低温焼戻し鋼とは異なり粒内破
断型となるためである。したがって、本発明では製造時
の熱処理や加工度の影響はほとんど受けず、主に成分系
のみで耐SSC性が決定される。もちろん、数回熱処理
を施す等の手段で細粒化を試みても耐SSC性を低下さ
せることはなく問題ない。例えば、ある程度の靭性を確
保したければ過度の粗粒化は避けた方が望ましい。
【0065】(B)熱処理条件 (B-1)焼入れ条件 上記の化学組成を有する鋼は通常の方法で溶製された
後、例えば、通常の方法による熱間での鍛造、穿孔や圧
延などの熱間加工によって鋼管や鋼板など所定の形状の
鋼材に成形された後、焼入れ焼戻し処理して所望の強度
に調整される。
【0066】鍛造、穿孔および圧延などの熱間加工は通
常の条件でおこなえばよいが、例えば、鋼塊、ビレット
やスラブといった鋼片を1000〜1250℃の温度域
の温度に加熱し、表面疵などの発生防止の点から900
〜1100℃の温度で鋼管や鋼板など所定の形状の鋼材
に仕上げることが望ましい。
【0067】焼入れ温度や保持時間については特に制限
は無いが、靭性を確保したい場合は粗粒化を避ける観点
から850℃以上1000℃以下の温度で焼入れ熱処理
を実施するのが望ましい。
【0068】焼入れ方法についても特に制限しなくても
よい。鋼材の化学組成に応じて適宜油焼入れや水焼入れ
など通常の焼入れ方法を用いればよい。すなわち、例え
ば、予め鋼材の化学組成に応じて予備調査した結果に基
づいて充分な焼入れ組織(例えば、マルテンサイトが約
80%以上であるような組織)となるように焼入れ方法
を決定すればよい。
【0069】また、熱間圧延直後に焼入れする直接焼入
れ法を適用してもよい。この際の加熱温度、加工度につ
いても特に制限は無いが、一般的な鍛造、圧延と同様1
000℃〜1250℃の温度に加熱し、900〜110
0℃の温度で仕上げるのが望ましい。焼入れ方法につい
ても特に制限はない。また、直接焼入れもしくは直接焼
入れ焼戻し後に通常の焼入れ焼戻しを施してもよい。こ
の場合は、Nbの析出軟化抵抗は効かないので通常の焼
入れ焼戻しの処理の場合と同じとなる。
【0070】(B-2)焼戻し条件 焼戻し方法は特に規定されない。焼き戻しの時間も特に
制限はないが、通常は鋼材全体に均質な熱処理を施す観
点から10分以上保持するのが望ましい。焼戻し後の冷
却方法も特に限定されるものではなく、放冷、風冷、ミ
スト水冷や水冷など通常の冷却方法で行えばよい。
【0071】なお、吸蔵水素濃度の測定方法も特に指定
されるものはなく、後述するNACE TM0177A
法の試験液中で吸蔵される水素濃度を、鋼材間で精度良
く比較できるものであれば良い。例えば、鋼材を試験液
中に24時間以上浸漬後、取り出して45℃のグリセリ
ン液中に72時間以上浸漬して放出される水素濃度を測
定する方法等が一般的である。
【0072】その他、最近用いられる簡便法の昇温水素
分析法を用いてもよい。鋼材を試験液中に24時間以上
浸漬した後、取り出して常温から一定速度で温度を上
げ、放出される水素量を分析する方法である。この場合
は拡散性水素は400℃以下ですべて放出されると言わ
れており、この水素量を測定して比較すればよい。
【0073】
【実施例】表1〜3に示す化学組成の150kg鋼塊を
真空溶解炉を用いて通常の方法により溶製した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】これらの鋼塊を1250℃に加熱してから
熱間鍛造して40mm厚さ×80mm幅×250mm長
さの鋼片とした。この鋼片を下記(1)(2)の方法で
熱間圧延後に焼入れ、焼戻しの熱処理をおこない強度調
整した。
【0078】(1)鋼片を1250℃に1時間加熱して
から圧延仕上げ温度950℃で厚さ14mmに熱間圧延
し、さらに表面を研削して厚さ12mmに仕上げた。
【0079】この厚さ12mmの鋼板を850℃〜95
0℃の温度域に加熱して焼入れをおこなった後、表4〜
7に記した種種の温度で焼戻し処理をおこなった。な
お、焼入れは水焼入れとした。表4〜7中の「熱処理方
法」の欄に記載した「QT」は、この焼入れ、焼戻し処
理を示す。
【0080】(2)1250℃の温度に加熱して熱間圧
延を施し厚さ14mmに仕上げた後直接焼入れし、その
後表4〜7に併記した種種の温度で焼戻し処理を行っ
た。焼入れは水焼入れとした。表4〜7中の「熱処理方
法」の欄の「DQT」は、この焼入れ、焼戻し処理を示
す。
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】上記(1)(2)の熱間圧延、熱処理後の
厚さ12mmの鋼板から圧延方向に平行に引張試験片を
採取し、常温(室温)で引張試験をおこなって、YSを
測定した。
【0086】焼戻し後の厚さ12mmの鋼板の厚さ方向
の中央部から、圧延方向に平行に、平行部の直径が6.
35mmで長さが25.4mmの丸棒引張試験片を採取
し、NACETM0177A法に準拠した方法で耐SS
C性の評価を行った。
【0087】すなわち、1気圧の硫化水素で飽和した2
5℃の0.5%酢酸+5%食塩水中で定荷重試験をおこ
ない耐SSC性を評価した。負荷応力を変化させ、72
0時間の試験時間中に破断しなかった最大応力が80%
YS以上のものを耐SSC性良好と認定した。
【0088】また上記の硫化水素で飽和した25℃の
0.5%酢酸+5%食塩水中に24時間浸漬した後、取
り出して昇温水素分析法により400℃以下で放出され
る水素濃度を吸蔵水素濃度として測定した。
【0089】上記の各種試験結果を表4〜7に併せて示
す。
【0090】表4〜5から明らかなように、各YSの範
囲に強度調整した後、化学組成が本発明で規定する範囲
にある鋼材は、いずれも定荷重試験において実測YSの
80%以上の負荷応力でも破断をせず、耐SSC性は良
好である。
【0091】これに対し、本発明で規定する範囲から外
れた場合には、すべて定荷重試験での破断限界応力が8
0%未満であり、耐SSC性に劣っている。
【0092】例えば、表1中の鋼Dは通常の焼入れ焼戻
し処理によってC110級に強度調整した場合は、表4
中の試験番号4に示すように所望の耐SSC性を満足す
るが、C125級に調整した表4中の試験番号20や、
C140級に強度調整した表5中の試験番号36では、
MoとVのバランスが不適なため所望の耐SSC性を満
足しない。またこのD鋼は直接焼入れ法を適用すればN
bの析出強化が有効活用でき、C125級(表5中の試
験番号28)やC140級(表6中の試験番号44)で
も良好な耐SSC性を示す。
【0093】表1中のI鋼およびJ鋼は各々の成分は本
発明の規定内にあるが、表6中の試験番号49〜60に
示すように、いずれのYSの範囲でも耐SSC指標が本
発明の規定を外れるため所望の耐SSC性を満足しな
い。
【0094】表2〜3中のK鋼〜11鋼は、表6〜7中
の試験番号61〜87に示すように各々の成分が本発明
の規定を外れるため耐SSC性は不芳である。試験番号
61〜87には直接焼入れによりYSを110ksi級
に調整した例しか記載していないが、より高強度の12
5ksi級、140ksi級になればさらにSSCに対
する感受性は高まり、耐SSC性は不芳となることは言
うまでもない。また、通常のQTではNbによる焼戻し
軟化抵抗の効果が期待できず、さらに耐SSC性は不芳
なことも言うまでも無い。
【0095】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、YSが11
0〜155ksiの高強度であっても耐SSC性に優れ
た鋼材が容易に得られ、硫化水素を多量に含んでいる油
井やガス井用のケーシングやチュービング、掘削用のド
リルパイプ、輸送用のラインパイプ、さらには化学プラ
ント用配管などに用いることができ産業上の効果は極め
て大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐SSC指標と定荷重試験による限界破断応力
の相関を示した図である。
【図2】MoとVの含有バランスと耐SSC指標の相関
を示した図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.2〜0.35%、S
    i:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1%、Cr:
    0.1〜1.2%、Mo:0.1〜1%、Al:0.0
    05〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、N
    b:0.005〜0.5%、V:0.005〜0.5
    %、TiおよびZrの一種または二種をそれぞれ0.1
    %以下で、かつTi+0.5Zr:0.005〜0.1
    5%、W:0〜1%、Ca:0〜0.01%を含み、残
    部がFe及び不可避的不純物からなり、不純物中のP:
    0.025%以下、S:0.01%以下、Ni:0.1
    %以下、N:0.01%以下、O(酸素):0.01%
    以下であり、Mo、V含有量が下記式(1)を満足する
    鋼を熱間加工し、次いで焼入れ焼戻しの熱処理を施すこ
    とを特徴とする110〜155ksiの降伏応力を有す
    る耐硫化物応力割れ性に優れた高強度鋼材の製造方法。 2Mo+5V≦B×C−A+1.4 ・・・・・・ (1) ここで、A:4930e(-0.0133D) B:1.07×10-8(0.0187D) D:E−100e(-0.52Mo-5.15V+0.4) C、E:降伏応力が110以上、125ksi以下の鋼
    材を製造する場合 C:150、E:770 降伏応力が125超え、140ksi以下の鋼材を製造
    する場合 C:190、E:755 降伏応力が140超え、155ksi以下の鋼材を製造
    する場合 C:270、E:740 e:自然対数の底数 Mo、Vは含有量(質量%)
  2. 【請求項2】質量%で、C:0.2〜0.35%、S
    i:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜1%、Cr:
    0.1〜1.2%、Mo:0.1〜1%、Al:0.0
    05〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、N
    b:0.005〜0.5%、V:0.005〜0.5
    %、TiおよびZrの一種または二種をそれぞれ0.1
    %以下で、かつTi+0.5Zr:0.005〜0.1
    5%、W:0〜1%、Ca:0〜0.01%を含み、残
    部がFe及び不可避的不純物からなり、不純物中のP:
    0.025%以下、S:0.01%以下、Ni:0.1
    %以下、N:0.01%以下、O(酸素):0.01%
    以下であり、Mo、VおよびNb含有量が下記式(2)
    を満足する鋼を熱間加工し、熱間加工終了後に直接焼入
    れを施し、次いで焼戻し処理することを特徴とする11
    0〜155ksiの降伏応力を有する耐硫化物応力割れ
    性に優れた高強度鋼材の製造方法。 2Mo+4Nb+5V≦B×C−A+1.4 ・・・・・・ (2) ここで、A:4930e(-0.0133D) B:1.07×10-8(0.0187D) D:E−100e(-0.52Mo-9.36Nb-5.15V+0.4) C、E:降伏応力が110以上、125ksi以下の鋼
    材を製造する場合 C:150、E:770 降伏応力が125超え、140ksi以下の鋼材を製造
    する場合 C:190、E:755 降伏応力が140超え、155ksi以下の鋼材を製造
    する場合 C:270、E:740 e:自然対数の底数 Mo、VおよびNbは含有量(質量%)
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