JPH11341999A - 尿を用いる膀胱癌の遺伝子検査法 - Google Patents

尿を用いる膀胱癌の遺伝子検査法

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JPH11341999A
JPH11341999A JP10068219A JP6821998A JPH11341999A JP H11341999 A JPH11341999 A JP H11341999A JP 10068219 A JP10068219 A JP 10068219A JP 6821998 A JP6821998 A JP 6821998A JP H11341999 A JPH11341999 A JP H11341999A
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bladder cancer
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cancer
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 尿を用いて、膀胱癌を効率よくスクリーニン
グする方法を提供すること。 【解決手段】 尿中の細胞から抽出したDNAを用い
て、9番染色体上のいくつかの遺伝子多型の存在する部
位を、ポリメラーゼチェーンリアクション法(PCR)
で増幅後、該PCR産物の末端を平滑化処理し、得られ
たDNA断片を一本鎖DNA高次構造多型解析法(SS
CP)で分析し、該遺伝子多型部位のヘテロ接合性の消
失(LOH)を検出することにより、尿中に存在する細
胞の中に9番染色体を欠失した細胞が含まれるかどうか
を高感度に検出し、膀胱癌を効率良くスクリーニングす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、尿を用いる膀胱癌
のスクリーニングのための遺伝子検査法に関する。
【0002】
【従来の技術】膀胱癌の癌化では染色体の脱落が起こ
り、染色体、4p、8p、9p、9q、11p、や17
p部位における高頻度のヘテロ接合性の消失(loss of
heterozygosity:LOH)が報告されている(Cancer R
es. 54 p784-788 Spruck III等(1994 )、Cancer Gene
t. Cytogenet. 77 p118-124 Matsuya等(1994)、Lancet
342p469-471 Dalbagni等(1993)、Cancer Res. 54 p531-
538 Knowles 等(1994)、Cancer Res. 50 p7081-7083 Ol
umi 等(1990))。そのような変化の検出は、有用な膀胱
癌の検査方法になることが期待される。しかしながら、
この方法では膀胱癌から摘出した組織細胞を用いてお
り、より簡便な方法が切望されている。
【0003】又、最近、菅野等は、蛍光ラベル化したオ
リゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRを行った
後、PCR産物の3’末端側を平滑化処理し、蛍光自動
DNAシーケンサーを用い、single-stranded conforma
tion polymorphism 法(SSCP)でLOHを検出する
方法(blunt-end SSCP analysis :末端平滑化SSCP
法)を開発した(特開平9−201199、Genes. Chr
omosomes & Cancer 15 p157-164 Sugano等(1996)、Int.
J. Cancer 74 p403-406 Sugano 等(1997))。この方法
は、それぞれのアレルを分離するための解像度の向上
と、シグナル強度の定量的な分析を可能にした。
【0004】菅野等は、末端平滑化SSCP法で癌抑制
遺伝子p53のアレルの消失を分析し、T1ステージを
越える浸潤性の膀胱癌のほとんど全ての症例で、p53
のLOHを検出した。また、癌組織でp53遺伝子のL
OHを示した膀胱癌患者の75%では、尿サンプルでも
同様の遺伝子変異を示した(Int. J. Cancer 74 p403-4
06 Sugano 等(1997))。膀胱癌のp53のLOHの検出
は、ハイリスクの侵襲性膀胱癌、特に膀胱全摘が適用と
なる膀胱癌のリスク評価の指標として応用できる可能性
が報告されている。一方、表在性膀胱癌の多くは、乳頭
状増殖を示す浸潤性の低い癌で、悪性度は低い。これら
は、通常、経尿道切除術(TUR)が適用となり、浸潤
性の膀胱癌と比較し、予後は良好である。しかし、表在
性膀胱癌の約10%では、より悪性度の高い浸潤性膀胱
癌に進展するものと思われるので、TUR後、膀胱癌の
術後フォローアップで、再発を早期検出する必要がある
(Int. J. Urol. 4 p74-78 Tsutsumi 等(1997))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】膀胱癌のスクリーニン
グには、尿を用いた細胞診が行われているが、癌細胞は
尿中でしばしば変成を受けるため(特に、低異型度の癌
細胞ではこの傾向が著しい)、細胞診の見逃しが多く、
信頼性は低くかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記した
ような問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、染色
体の欠失を高感度に検出し、正確かつ簡便に、膀胱癌を
スクリーニングする方法を見いだし、本発明に至ったも
のである。即ち、本発明は、尿を用いて、早期の膀胱癌
をも精度高くスクリーニングする方法を提供するもので
ある。
【0007】本発明の第1の要旨は、尿中の細胞から抽
出したDNAを用いて、9番染色体(相同染色体)のい
ずれか一方の少なくとも一部の欠損を検出することを特
徴とする膀胱癌の検査方法である。本発明の第2の要旨
は、尿中の細胞から抽出したDNAを用いて、9番染色
体の短腕部(9p)と長腕部(9q)の欠失を検出し、
これらを組み合わせて検査する膀胱癌の検査方法であ
る。本発明の第3の要旨は、染色体上の遺伝子多型の存
在する部位を、ポリメラーゼチェーンリアクション法
(PCR)で増幅後、該PCR産物の末端を平滑化処理
し、得られたDNA断片を一本鎖DNA高次構造多型解
析法(SSCP)で分析し、該遺伝子多型部位のヘテロ
接合性の消失(LOH)を検出する方法である第1又は
第2の要旨の検査方法である。本発明の第4の要旨は、
膀胱癌が、初期の膀胱癌である第1から第3の要旨の方
法である。本発明の第5の要旨は、尿中の細胞から抽出
したDNAを用いて相同染色体の一方の少なくとも一部
の欠失を、LOHにより検出し膀胱癌を検査する際に、
繰り返し単位の差が1単位以上であるマイクロサテライ
ト型多型部分を利用し、該部分の遺伝子をPCRで増幅
後、該PCR産物の末端を平滑化処理し、得られたDN
A断片をSSCPで分析し、該遺伝子多型部位のLOH
により検出する膀胱癌の検査方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
先ず、本発明における尿とは、集団検診、健康診断、ド
ック検診、郵送検診などの検診尿や、病院における外来
・入院患者尿で、膀胱癌のスクリーニングや再発など、
膀胱癌の早期発見を必要とするもの等が挙げられ、特に
限定されずこれらの全てが対象となる。また、採尿方法
を工夫した特殊なデバイスで、尿中に脱落してくる細胞
を効率よく集めたものも対象となる。本発明の尿中の細
胞から抽出したDNAとは、尿中に脱落してきた本人の
細胞由来のDNAを含むものであれば何でもよく、通
常、尿中に脱落した新陳代謝された正常細胞及び又は癌
細胞由来の遺伝子DNAを、種々の方法で効率よく抽出
したものが対象となる。この抽出は公知の方法によって
行なうことができる。
【0009】本発明の9番染色体のいずれか一方の少な
くとも一部の欠損とは、ペアとなる9番染色体の一方が
完全に欠失したり、部分的に欠失した場合や、ペアとな
る染色体で、お互いに異なる遺伝子部位に部分的な欠失
を起こした場合を含むものである。本発明の9番染色体
の短腕部(9p)と長腕部(9q)の欠失を検出しこれ
らを組み合わせて検査する膀胱癌の検査方法とは、9p
の欠失の検出と9qの欠失の検出を行ない、これらを組
み合せることにより、スクリーニングの感度を上げた
り、癌の悪性度の評価をするものである。本発明のDN
Aを用いる検査方法としては、目的の遺伝子変異を高感
度に分析できる方法であれば何れであってもよく、各種
の遺伝子診断法が用いられる。通常、DNAの高感度検
出のためには、ポリメラーゼチェーンリアクション法
(PCR)やブランチドDNAハイブリダイゼーション
法(b−DNA)等の方法が利用できる。
【0010】本発明の遺伝子多型とは、ヒト染色体上の
遺伝的多型であり、遺伝子上の塩基配列の個体差に由来
する。一塩基置換型の多型は、平均して数百塩基に1ヶ
所程度そのような遺伝子多型が存在すると言われてい
る。例えば、9番染色体上のヒトのアルドラーゼB遺伝
子(ALDOB)のイントロン8における1塩基置換の
遺伝子多型は、9q22上と同定され、Brooks等が報告
している(Am. J. Hum.Genet. 52 p835-840 Brooks 等
(1993))。また、9q34上と同定されたVAV2遺伝
子上のT/C置換の遺伝子多型は、コスミドクローンL
196C8株の塩基配列の測定データ(Gene Bank 登録
番号AC002111)に基づいており、国立がんセン
ター中央病院で見出されたものである。4塩基単位の繰
り返しのマイクロサテライト型の多型として、9番染色
体上では、D9S775,D9S304とD9S303
などが知られており、ゲノムデータベース(インターネ
ット上のアドレス:http://gdbwww.gdb.prg/)から情報
入手できる。
【0011】これらの遺伝子多型を解析することによ
り、父方由来の染色体(アレル)と母方由来の染色体
(アレル)を区別することができる。従って、ある遺伝
子多型部位のヘテロ接合体(父方と母方のアレルが異な
る個体)で、一方のアレルの消失(LOH)を測定すれ
ば、その遺伝子の欠失を検出することができる。しか
し、一塩基置換型の多型を利用する場合は、ヘテロ接合
体である頻度が最大でも50%であり、1つの遺伝子の欠
失を調べるためには、ヘテロ接合体の出現頻度の高い複
数の遺伝子多型を組み合わせる必要がある。また、遺伝
子多型には民族間差が存在するので、欠失を診断したい
遺伝子のなかから、その民族で出現頻度の高い遺伝子多
型部位を選択する必要がある。
【0012】本発明の遺伝子多型部位をPCRで増幅
後、このPCR産物の末端を平滑化処理し、得られたD
NA断片をSSCPで分析するヘテロ接合性の消失(L
OH)の検出方法としては、特開平9−201199等
に示されている方法が利用できる。即ち、末端平滑化処
理とは、2本鎖DNA断片の末端1本鎖部分を平滑にす
ることであり、KlenowフラグメントやT4DNAポリメ
ラーゼのような3→5’エキソヌクレアーゼ活性を有
し、1本鎖部分を修復する酵素で処理するか、平滑に切
断する制限酵素で処理して1本鎖部分を含む末端部を取
り除けばよい。3′→5′エクソヌクレアーゼ活性有す
る耐熱性ポリメラーゼを用いてPCR法を施行する等の
方法を用いることが可能である。分析しようとする2本
鎖DNA断片のセンス鎖とアンチセンス鎖の長さが異な
ったり不揃いの場合、熱変成して1本鎖にして分析する
と、DNA断片に由来するピークは分裂し、多重とな
る。これに対し、2本鎖DNA断片を平滑化して分析す
ると単一ピークに収束し、遺伝子変異を起こしたDNA
断片との識別が、極めて容易となる。PCRで増幅すべ
き遺伝子の領域は、1つの遺伝子多型を含む範囲であれ
ば特に制限はないが、PCRで増幅し易い長さと範囲を
選ぶ必要がある。長さは通常 100〜200bp で、範囲はP
CRに適したオリゴヌクレオチドプライマーの設計から
決めればよい。DNA断片の検出のためにDNA断片の
ラベル化をすることもできる。DNA断片のラベル化と
しては、プライマーとして予めラベル化したプライマー
を使用する方法、又は、PCRを実施する際にラベル化
した塩基成分(例えば燐の放射性ラベル)を用いる方
法、又は、PCRを実施した後にラベル化する方法があ
る。ラベル化処理方法としては、SSCP後に検出し易
いものであれば特に制限はなく、放射性物質、蛍光物
質、化学発光物質、ビオチン(酵素標識アビジンで検
出)などで例えば、DNAの5’末端側を標識化すれば
よい。特に好ましくは、PCR用のオリゴヌクレオチド
プライマーの5’末端をあらかじめA.L.F.red
(Cy5TM)amidite試薬(ファルマシア社)で
蛍光ラベル化したものを用いればよい。
【0013】本発明の初期の膀胱癌とは、一部修正して
行ったWHOのグレード分類ではG1 以下の初期癌を、
TMN分類(tumor-nodes-metastasis pathological st
aging system:American joint Committee on Cancer(1
988))では pTa あるいは pTis等の初期ステージの癌
を意味している。本発明の繰り返し単位の差が1単位以
上であるマイクロサテライト型多型部分とは、例えば、
繰り返し単位を特定の4塩基対とすると、遺伝子上のあ
る特定の領域に、この塩基対の単位を多数繰り返す領域
が存在し、その繰り返し数が、各アレル毎に異なってい
る。このため、遺伝子多型を形成する。この場合、アレ
ル間の繰り返し単位数の差が無い場合を除き、理論的に
はLOH分析は可能である。末端平滑化SSCP法を用
いると、ピークの分離がシャープになり分析精度が向上
し、繰り返し単位の差が1単位以上であれば分析でき
る。
【0014】
【実施例】以下に、実験例及び実施例により本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。 実験例1 1.検体の入手 膀胱癌患者のそれぞれの検体は、次のようにして入手し
て処理後、LOHを分析するまで保存した。経尿道切除
術(TUR)やバイオプシィーで入手した新鮮な組織の
一部は、1.5mLのエッペンドルフチューブに入れ、
−80℃で凍結保存した。尿は、内視鏡検査前に、自然
排尿で、50mLの遠心チューブに採取した。この尿
を、1, 000rpmで5分間遠心後、上清を捨て、沈
渣を集めた。この沈渣に、40mLの生理食塩水を加え
て再分散し、再度1, 000rpmで5分間遠心後、上
清を捨て、残ったペレットを−80℃で凍結保存した。
正常組織DNAには、末梢血の白血球(PBL)を用い
た。10mLの静脈血をヘパリン入りの採血管に採取
し、3, 000rpmで15分間遠心後、血漿を廃棄し
た。この採血管に、0.2%の食塩水40mLを加えて
溶血し、再度3, 000rpmで15分間遠心後、上清
液を捨て、同様の操作を2回繰り返した。残ったペレッ
トは、−80℃で凍結保存した。陰性対照には、良性の
尿路疾患患者20例の尿と血液を採取し、膀胱癌患者の
検体と同様に処理して、−80℃に凍結して保存した。
【0015】2.尿、組織、PBLからジェノムDNA
の抽出 凍結保存検体からのDNAの抽出は、プロテナーゼKで
消化後、フェノール・クロロフォルムで抽出するデイビ
スら(Basic Method in Moleular Biology, Elsevir S
cience Publishing 社出版)や菅野らの(Lab. Invest.
68 p361-366 Sugano等(1993))の方法で行った。要
約すると、65℃で15分間処理した検体に、プロテナ
ーゼK1mg/mL、EDTA10mmol/L、ドデ
シル硫酸ナトリウム(SDS)0.4%、食塩150m
mol/Lを含む10mmol/Lトリス−塩酸緩衝液
を加えて37℃で一夜インキュベート後、この反応液に
等量のフェノール:クロロフォルム=1:1溶液を加え
て2回DNAを抽出した。抽出液に、0.1容の3mo
l/L酢酸ナトリウム溶液と2.5容の冷無水エタノー
ルを加え、−20℃で2時間冷却し、DNAを沈殿させ
た。尿と癌組織のサンプルには、エタノール沈殿のキャ
リアーとして20μgのグリコーゲンを加え、DNAの
回収率を向上させた。この溶液を遠心して沈殿物を集
め、さらに、1mLの80%エタノールを加えて洗浄
後、真空遠心濃縮機で沈殿を乾固した。このDNAを含
む沈殿物は、TE緩衝液で再溶解した。
【0016】3.蛍光標識オリゴヌクレオチドプライマ
ーの調製 第9染色体上の遺伝子多型マーカー増幅用のプライマー
鎖、PCR増幅及び末端平滑化SSCP法の条件と、そ
れぞれのマーカーに対するヘテロ接合性の割合を、表1
にまとめた。
【0017】
【表1】
【0018】A.L.F.redTM(Cy5TM)ami
dite試薬(ファルマシア社)を用いて、前向きと後
ろ向きのPCR用プライマーの5’末端側のそれぞれ
を、indodicarbocyanine(Cy5)蛍光色素で標識し
た。第9染色体上のアレル消失のマーカーとして、5つ
の遺伝子多型を用いた。このうちの3つは、4塩基繰り
返しの、2つは1塩基置換の多型であった。3つの4塩
基の繰り返しのマイクロサテライト型マーカー、D9S
775,D9S304とD9S303は、それぞれ、9
p23−p22、9p21、9q13−q22.3と同
定され、ゲノムデータベース(インターネット上のアド
レス:http://gdbwww.gdb.prg/)から入手した。ヒトの
アルドラーゼB遺伝子(ALDOB)のイントロン8に
おける1塩基置換の遺伝子多型は、9q22上と同定さ
れ、Brooks等から報告された(Am. J.Hum. Genet. 52 p
835-840 Brooks 等(1993))。9q34上と同定された
VAV2遺伝子上のT/C置換の遺伝子多型は、コスミ
ドクローンL196C8株の塩基配列の測定データ(Ge
ne Bank 登録番号AC002111)に基づいており、
国立がんセンターで見出されたものである。
【0019】4.PCR 組織や血球より抽出したゲノムDNA(鋳型) 0.1μg
、各プライマーを1.6pMずつ、各ヌクレオチド3リン
酸(dNTP)を10nMずつ、トリス塩酸緩衝液(pH
8.3)10μM、KCl 50 mM、MgCl2 1.5 mM、
ゼラチン 0.001%(w/v) 、TaqDNAポリメラーゼ
(Perkin Elmer社)1.25 unit を加え、全液量を 25 μ
l とした。この溶液について、表1に示した条件でPC
Rを行った。最初の変成条件のみは95℃で5分間、その
後は、それぞれ次の反応条件下で増幅反応を行った。変
成条件は95℃で30秒間、アニーリングは、D9S775
とVAV2に対しては55℃で30秒間、D9S303、D
9S304とALDOBについては57℃で30秒間、延長
反応は72℃で30秒間のサイクルを30回繰り返し、最後
に、72℃で7分間の延長反応を行った。
【0020】5.PCR産物の3’末端平滑化 PCRで増幅したDNAフラグメントは、Klenow fragm
ent (宝酒造(株)製)で処理し、末端を平滑化した。
5μL のPCR産物に、0.5 units の Klenowfragment
を加え、37℃で30分間反応した(Genes. Chromosomes &
Cancer 15 p157-164 Sugano等(1996))。
【0021】6.末端平滑化SSCP解析 分析には、A.L.F.redTMDNAsequenc
er(ファルマシア社)を用いた。前記の末端平滑化し
たPCR反応液1μL を、10μL のローディング液(組
成は、EDTA 20 mM、ブロムフェノールブルー 0.0
5 %を含む脱塩した90%ホルムアミド溶液)で希釈し
た。80℃で5分間加熱変成後、このうちの1μL を、ト
リス・グリシン緩衝液(トリス25mM、グリシン 192m
M)を含む15%アクリルアミド(ビスアクリルアミド/
アクリルアミド=1/30)ゲル(高さ 300mm×幅 350mm
×厚さ 0.52mm 、1回の泳動で最大40検体の分析が可
能)にアプライし分析した。電気泳動は、ゲルと同一の
緩衝液系で、表1に示した条件、20W又は30Wで1,000
分間、恒温水槽で18℃又は28℃に保ちながら行った。測
定データの解析には、解析用のソフトはFragmen
t ManagerTM(ファルマシア社)を用いた(Ge
nes. Chromosomes & Cancer 15 p157-164 Sugano等(199
6))。
【0022】7.癌細胞割合の定量化とLOHのカット
オフ値 健常対象者の父方と母方アレルのシグナル(ピーク高
さ)を比較して、一方のアレルのピーク高さが著しく減
少した場合、LOHと定義された。サンプル中の癌由来
DNAの割合、即ち、癌細胞の割合は、次の式で推定で
きた(Genes. Chromosomes & Cancer 15 p157-164 Suga
no等(1996))。 検体中の癌細胞割合(%)=(NA1/ NA2−TA1/ TA
2)×100/NA1/ NA2 A1とA2アレルを持つヘテロ接合性のヒトで、A1ア
レルが失われたとすると、Tは、癌患者の組織又は尿サ
ンプルからのシグナルのピーク高さを、Nは、正常対象
者からのシグナルのピーク高さを示す。測定の再現性
は、健常者のPBLからのDNAサンプルを、同時に繰
り返し測定した場合、2つのアレルからのシグナル比の
変動係数(CV)として評価した。さらに、尿路疾患患
者20例の尿を分析し、それぞれのマーカーの癌細胞割
合のカットオフ値を決めるための、陰性コントロールと
して用いた。
【0023】8.組織病理学的診断 膀胱癌患者の尿とバイオプシーの検体の一部は、通常の
細胞診や組織病理診断を行った。癌組織の病理診断のグ
レードは、WHO分類を一部修正して、ステージは、T
MN分類(tumor-nodes-metastasis pathological stag
ing system:American joint Committee on Cancer(198
8))に従って分類した。
【0024】実験例2 LOHに対する測定の再現性と
カットオフ値 1人のドナーの同じPCR産物、又は、同じ遺伝子型を
持つ複数のドナーからのPCR産物の末端平滑化SSC
P分析値からアレルのシグナル比を計算して、正常な二
倍体(一対の染色体)DNAのCV値を求めた。同一ド
ナーの遺伝子上の各々の位置における同時再現性のCV
値は、それぞれ、D9S775が0.9%(n=9)、
D9S304が4.9%(n=14)、D9S303が
1.2%(n=16)、ALDOBが3.0%(n=1
3)、VAV2が1.4%(n=16)であった。ま
た、複数のドナーからのPCR産物の同時測定時のCV
値は、それぞれ、D9S775が3.7%(n=7)、
D9S304が3.6%(n=7)、D9S303が
3.9%(n=12)、ALDOBが2.7%(n=
8)、VAV2が2.5%(n=7)であった。良性尿
路疾患患者の尿サンプルを用いて同様の測定を行い、ア
レル比の異常の程度を、癌細胞割合として計算した。遺
伝子の各位置におけるLOH陽性(癌陽性)のカットオ
フ値を、この良性尿路疾患群の癌細胞割合の+3SD
(標準偏差)とした。癌細胞割合のそれぞれのカットオ
フ値は、D9S775が13%(n=15)、D9S3
04が19%(n=18)、D9S303が12%(n
=17)、ALDOBが10%(n=8)、VAV2が
13%(n=11)であった。このカットオフ値を用い
ると、良性尿路疾患でLOH陽性となるものは、全く無
かった(表3)。
【0025】実施例1 膀胱癌患者9番染色体のLOH
の分析 膀胱癌患者34例の尿と組織を対象として、9番染色体
上の5ヶ所の遺伝子多型部位、D9S775、D9S3
04、D9S303、ALDOB、VAV2を、実験例
1の方法で分析した。分析例として、膀胱癌の症例No
33の電気泳動パターンを図1に示した。それぞれ、B
はPBLでの、Tは癌組織での、Uは尿でのパターンを
示す。また、各遺伝子多型部位でのピーク高さの比から
計算した、癌組織と尿での癌細胞割合(%)を括弧内に
示した。この例では、分析した全ての遺伝子多型部位
で、尿と組織の両方ともLOHが陽性であった。
【0026】全例の分析結果をまとめ、図2に示した。
Tは癌組織での、Uは尿での結果を示す。それぞれ、●
はLOH陽性、○は保持(LOH陰性)、NAはPCR
不能、縦線はホモ接合体で遺伝子多型の解析が不能を示
す。9番染色体上の5つの遺伝子多型マーカーを組み合
わせることで、少なくとも1つ以上の遺伝子多型部位が
有効(情報供給可能:ヘテロ接合性で、父方と母方でピ
ークの位置がずれ、LOHの分析に使える)となった。
有効な遺伝子多型部位は、3/34(8.8%)が1ヶ
所のみ、5/34(14.7%)が2ヶ所、残りの26
/34(76.5%)が3ヶ所以上であった。9番染色
体のLOHは、癌組織では26/34(76%)が陽
性、尿サンプルからでは24/33(72.7%)が陽
性であった(表2〜3)。
【0027】癌サンプルにおけるLOH陽性の頻度と、
癌のステージ、組織学的グレードとの相関をまとめ、表
2に示した。各遺伝子多型部位におけるLOH陽性の頻
度は60.0%(D9S775とVAV2)から66.
7%(D9S303)で、分析した9番染色体上の5つ
の多型部位のLOHを組み合わせると26/34(7
6.5%)がLOH陽性であった。癌のステージ毎のL
OHをみると、 pTa が12/15(80%)、 pT1
が10/14(71.4%)、 pT2 以上4/5(80
%)であった。また、グレード別では、G1 が7/10
(70%)、G2が8/10(80%)、G3 が11/
14(78.6%)であった。
【0028】
【表2】
【0029】同じ患者からの癌組織と尿検体のアレルの
状態を比較した(図2)。尿検体では、癌患者34例の
うち33例が分析可能で、24/33(72.7%)が
LOH陽性であった。尿を分析した場合のLOH陽性の
頻度と、癌のステージ、組織学的グレードの間の相関
を、表3にまとめた。各遺伝子多型部位におけるLOH
陽性の頻度は46.7%(VAV2)から69.2%
(D9S303)で、分析した9番染色体上の5つの多
型部位のLOHを組み合わせると24/33(72.7
%)がLOH陽性であった。癌のステージ毎のLOH
は、 pTa が11/15(73.3%)、 pT1 が8/
13(61.5%)、 pT2 以上5/5(100%)で
あった。また、グレード別では、G1 が6/10(60
%)、G2 が6/9(66.7%)、G3 が12/14
(85.7%)であった。17番染色体上の癌抑制遺伝
子p53中の遺伝子多型部位のLOHを分析した場合、
初期の膀胱癌は検出できなかった(特開平9−2011
99)が、9番染色体の欠失を検出することにより、 p
Ta ステージ、G1 グレードの初期の膀胱癌まで高率に
検出できるようになった。
【0030】
【表3】
【0031】尿と癌組織とも測定できた症例で比較する
と、22/33(66.7%)が両方ともLOH陽性
で、5例(15%)が、尿、癌組織ともLOH陰性で、
9番染色体は保持されていた。診断精度は81.7%で
あった。癌組織では26例が、尿では24例がそれぞれ
LOH陽性であった。2例(患者No. 1とNo. 3
0)では、尿のみLOH陽性であった(表4)。
【0032】
【表4】 表4.尿と癌組織のLOHの比較 ─────────────────────────────────── 尿検体 ───────────────────── LOH陽性 保持(LOH陰性) ─────────────────────────────────── LOH陽性 22 4 癌組織 ────────────────────────────── 保持(LOH陰性) 2 5 ─────────────────────────────────── p =0.0086
【0033】実施例2 尿のLOHと細胞診の感度の比
較 膀胱患者33例の尿の細胞診を行い、実施例1の尿のL
OH分析結果と比較した(表5)。尿の9番染色体のL
OHでは24例が陽性であるのに対し、細胞診では12
例が陽性で、尿LOH分析法の僅か50%であった。ま
た、LOH陰性の9例のうち、2例(22%)が細胞診
で陽性であった。癌組織で9番染色体のLOH陽性の2
6例をみると、22例(85%)は尿のLOHが陽性
で、4例(15%)がLOH陰性であった。この尿LO
H陽性22例のうちで、僅か11例(50%)が細胞診
陽性であった。また、この尿LOH陰性4例の全ては、
細胞診でも陰性だった。17番染色体上の癌抑制遺伝子
p53中の遺伝子多型部位のLOHを用いた場合、尿の
細胞診より膀胱癌のスクリーニング性能は劣っていた
(特開平9−201199)が、9番染色体の欠失を検
出することにより、スクリーニング性能は大幅に向上し
た。
【0034】
【表5】 表5.尿のLOHと細胞診の比較 ─────────────────────────────────── 尿の細胞診 ─────────────────── 陽性 陰性 ─────────────────────────────────── LOH陽性 12 12 尿検体 ───────────────────────────── 保持(LOH陰性) 2 7 ─────────────────────────────────── p =0.2409
【0035】
【発明の効果】本発明の尿を検体とする染色体の欠失を
検出する膀胱癌の遺伝子検査法を用いると、膀胱癌を、
初期の段階から効率よくスクリーニングできるようにな
った。
【図面の簡単な説明】
【図1】膀胱癌症例の末端平滑化SSCP分析の電気泳
動パターン
【図2】膀胱癌患者の癌組織と尿について、9番染色体
上のLOHの分析結果

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 尿中の細胞から抽出したDNAを用い
    て、9番染色体(相同染色体)のいずれか一方の少なく
    とも一部の欠損を検出することを特徴とする膀胱癌の検
    査方法。
  2. 【請求項2】 尿中の細胞から抽出したDNAを用い
    て、9番染色体の短腕部(9p)と長腕部(9q)の欠
    失を検出し、これらを組み合わせて検査する膀胱癌の検
    査方法。
  3. 【請求項3】 染色体上の遺伝子多型の存在する部位
    を、ポリメラーゼチェーンリアクション法(PCR)で
    増幅後、該PCR産物の末端を平滑化処理し、得られた
    DNA断片を一本鎖DNA高次構造多型解析法(SSC
    P)で分析し、該遺伝子多型部位のヘテロ接合性の消失
    (LOH)を検出する方法である請求項1又は2記載の
    検査方法。
  4. 【請求項4】 膀胱癌が、初期の膀胱癌である請求項1
    から3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 尿中の細胞から抽出したDNAを用いて
    相同染色体の一方の少なくとも一部の欠失を、LOHに
    より検出し膀胱癌を検査する際に、繰り返し単位の差が
    1単位以上であるマイクロサテライト型多型部分を利用
    し、該部分の遺伝子をPCRで増幅後、該PCR産物の
    末端を平滑化処理し、得られたDNA断片をSSCPで
    分析し、該遺伝子多型部位のLOHにより検出する膀胱
    癌の検査方法。
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