【発明の詳細な説明】
光保護剤としてのポリポジウム抽出物
発明の分野
本発明は、一般には皮膚科学の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、皮
膚に対して光保護や酸化防止剤保護を可能にすることに関する。さらに詳細には
、本発明は、太陽または人工的な供給源からの紫外線照射に対する保護を可能に
することに関する。
発明の背景
個体を適度の太陽光線にさらすことは、ビタミンDの合成やある特定の病原体
の死滅を含めて多くの有益な効果をもたらすけれども、ヒトの皮膚を太陽光線に
(特に、スペクトルの紫外線帯域に)暴露しすぎると、日焼け、光毒性、光アレ
ルギー反応、光エージング(photoaging)、および皮膚ガンの促進などを含めて
皮膚は多くの有害な影響をこうむる。太陽光線への過剰暴露の有害な影響につい
て関心が高まっていることから、多くの研究者は、局所用光保護剤や全身用光保
護剤の開発、および化粧品や日焼け止め剤に使用するための製剤に注力している
(レビューには、M.A.Pathakによる“Dermatologic Clinics 4(2):321-334(1986)
”;H.W.LimとN.A.Soterの編集による“Clinical Photomedicine,NewYork,Marc
el Dekker社(1993)”中のM.A.Pathakによる“Topical and Systemic Photoprote
c-tion of Human Skin Against Solar Radiation”;およびT.B.Fitzpatrickらの
編集による“Dermatology in General Medicine,4th Edition,New York,McGra
w-Hill,(1994)”中のM.A.PathakとT.B.Fitzpatrickによる“Preventive Treatme
nt of Sunburn,Dermatoheliosis,and Skin Cancer with Sun-Protective Agen
ts”を参照のこと)。
局所用の光保護剤または“日焼け止め剤”は一般に、化学的製剤、物理的製剤
、あるいはこれらの混合製剤として分類することができる。局所用の化学的日焼
け止め剤は通常、1種以上の紫外線吸収化合物を含有した半透明の製剤である。
局所用の物理的日焼け止め剤は通常、必ずしも紫外線を吸収せずに、むしろそれ
らの不透明度および粒径(30〜100nm)のために紫外線を反射または散乱させる
化合
物を含有した不透明または半透明の製剤である。局所用の混合日焼け止め剤は、
化学的日焼け止め剤と物理的日焼け止め剤の混合物を含有する。局所用日焼け止
め剤は一般に、溶液(たとえば、アルコール溶液;アルコールとグリセロールま
たはアルコールとプロピレングリコールの溶液)、ローション、クリーム、およ
び軟膏(たとえば、水中油形エマルジョンまたは油中水形エマルジョン)として
調製される。局所用日焼け止め剤はさらに、色素、香料、およびこれらの類似物
等の化粧用薬剤と共に化粧品中に組み込むこともできる。
多くの薬剤が、経口投与の後に全身性の光保護をもたらすとされているけれど
も、これらの有効性の証拠は依然としてほとんどが逸話的であるか又は推定によ
るものである(上記したM.A.PathakとT.B.Fitzpatrick(1994)の文献を参照)。
これらの薬剤の多くが作用するメカニズムでさえ、光学的濾過や表皮の厚肉化か
ら、膜脂質の過酸化に対する抑制やDNAの光損傷に対する保護まで、いずれも
思わく的である。
ポリポジウム(Polypodium)は、シダ科であるウラボシ科(Polypodiaceae)
の代表的植物をなす一属である。1967年にHorvathらは、シダの1種であるPolvp odium leucotomos
の抽出物または浸出液(北ホンジュラスの現地人によって、従
来より悪性腫瘍に対する治療薬として使用されている)が生体外でも生体内でも
抗腫瘍効果を有することがわかった、と報告している。それ以来、種々のシダ植
物からの抽出物〔あるものはポリポジウム抽出物と呼ばれ、あるものはキャラグ
アリン(calagualine)と呼ばれる〕は、多くの皮膚科学的、免疫調節的、およ
び作用的な効果を有することが見いだされた。
Polypodium leucotomosの抽出物は、乾癬、アトピー性皮膚炎、および他の皮
膚障害の治療に有効であることが知られている〔たとえば、H.Corrales Padilla
らによる“Int.J.Dermatol.13(5):276-282(1974)”;およびD.Jimenezらによる“Allergol.et Immunopathol
15(4):185-189(1987)”を参照〕。これらの治療状況
においては、該抽出物は、角質増殖症、錯角化症、表皮有糸分裂、表皮厚肉化(
epidermal thickening)、表皮延長(epidermal prolongation)、および表皮障
害の悪化程度を緩和することが見いだされた。
Dryopteris crassirhizoma,Polypodium Vulgare ,Linn,Polypodium Ieucoto mos
,Phlebodium decumanum J.Smith,Polypodium decumanum,およびCyathea t aiwaniana
等のシダ類、あるいはPolypodium aureum ,LinnやPolypodim triseria les
の根茎の極性抽出物を製造する方法が、RamonらによるGB特許2,024,622A(
1979年5月24日付け出願)に開示された。該特許はさらに、このような抽出物か
ら得られる薬物を特許請求しており、乾癬や類乾癬の治療における経口使用につ
いて説明している。
同様に、ウラボシ科の種々のシダ類から極性抽出物を製造する方法が、Ramon
らによるGB2,075,843A(1981年3月26日付け出願)に開示された。該特許は、
骨の動きに関する疾患(たとえば関節炎)の治療にこうした抽出物を経口使用す
ることについて説明している。
Valetasによる米国特許第4,206,222号(1980年6月3日付け取得)も、ウラボ シ
科の種々のシダ類からの抽出物を製造する方法を開示している。Valetasはさ
らに、特定の化学構造を有する活性薬剤(これらのシダ類から単離されるC8δ
−ラクトン)を特許請求している。この薬剤は、コラーゲン疾患(たとえば関節
炎)の治療に有用であることが開示されている。
Polypodium leucotomosの抽出物はさらに、T8リンパ球の数を増大させ、血
液中のT4/T8比を減少させ、マウスにおける皮膚の同種移植片の生存を延ば
し、マウスの脾臓細胞の増殖反応を抑制し、そしてTリンパ球の有糸分裂促進物
質への増殖反応を抑制することが見いだされた〔たとえば、J.Vargasらによる“Ann.Immunol.(Inst.Pasteur)
134(C):393-400(1983)”;D.Jimenezらによる“All ergol.et Immunopathol
,15(4):185-189(1987)”;M.Tuominenらによる“Phytot her.Res
,5:234-236(1991)”;D.Fernandezらによる“Book of Abstracts:First World Cong .Medicinal and Aromatic Plants for Human Welfare
,Maastricht
,Netherlands,Poster 84(1992)”;及びJ.Raywardらによる“Second Int .Cong .on Biol.Response Modifiers.
San Diego,USA(1993)”を参照のこと〕。
X.A.Alvarezらは、ラットの挙動と脳細胞分裂に及ぼすポリポジウム抽出物の
影
響を調べた。彼らのデータによれば、該抽出物は、オープンフィールドでの精神
運動に関する活動性試験において、精神運動的な常用癖に対して影響を及ぼすこ
となく適度〜多量の投与量にて運動低下症を引き起こし;受動的な回避性挙動試
験において学習性を向上させ;前頭頂骨皮質におけるシトキニン(cytokines)I
L-1βとIL-2のレベルを減少させ;海馬においてIL-1βを減少させ;そして皮質
においてTNF-αを増大させた〔X.A.Alvarezらによる“Annals of Psychiatry 3:
329-341(1992)”〕。
別の研究においては、Polypodium decumanum〔“キャラグアラ(Calaguala)”
〕の抽出物が、血小板活性化因子(PAF)によって引き起こされる、ヒトの好中
球におけるタンパク質分解酵素エラスターゼの放出を抑制し、そしてPAFの生合
成を抑制することが示された(M.Tuominenらによる“Planta Med.58::306-310(1
992)”)。乾癬の病因論にPAFが関与しうるので、本研究の報告者らは、乾癬の
治療において抽出物の抗PAF活性がその臨床有効性に寄与するかもしれない、と
推測した。
しかしながら、本発明以前においては、通常の皮膚に対して局所施用・全身投
与されるポリポジウム抽出物の光保護特性や酸化防止特性は知られていなかった
。したがって、本発明以前においては、ポリポジウム抽出物の局所施用または全
身投与によって光保護および酸化防止保護を可能にする方法も知られていなかっ
た。
発明の要約
ポリポジウム属のシダ類の抽出物を含んだ製剤を提供する。特に、抽出物は、Polypodium aureum
,Polypodium crassifolium,Polypodium decumanum,Polypo dium lanceolatum
,Polypodium leucotomos,Polypodium percussum,Polypodiu m triseriale
,またはPolypodium vulgare等のシダ類のいずれからの抽出物であ
ってもよい。製剤は、局所施用向け又は経口投与向けに調製することができる。
局所施用の場合、本発明の製剤は、医薬用として許容しうる局所施用のための
キャリヤーを含む。局所用製剤はさらに、物理的日焼け止め剤、化学的日焼け止
め剤、および/または化粧品的薬剤を含んでもよい。具体的には、二酸化チタン
、シリコーン処理した二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化第一鉄、塩化第二鉄、タル
ク、
酸化クロム、またはコバルト酸化物等の物理的日焼け止め剤を含んでもよい。こ
れとは別に、あるいは追加の形で、p−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸エ
ステル、サリチル酸エステル、ケイ皮酸エステル、ベンゾフェノン、ジヒドロキ
シアセトン、パーソル(parsol)1789、またはメラニン等の化学的日焼け止め剤
を含んでもよい。本発明の製剤は、少なくとも1重量%、10重量%、25重量%、
または50重量%のポリポジウム抽出物を含有することができる。本発明の製剤は
さらに、タイプI〜タイプIVの正常な皮膚に2μl/cm2にて施用したときに、24
時間にて評価される最少紅斑投与量に関して、少なくとも2、5、10、または15
の太陽光保護因子(sun protection factor;SPF)を示す。本発明によれば、使
用のための指示書を含んだ、局所施用のためのパッケージ品も提供される。本発
明のパッケージ品を使用して、正常な皮膚をもった個体に対する光保護を可能に
する方法も提供される。
経口投与用としては、製剤は、医薬用として許容しうる経口使用のためのキャ
リヤーを含む。本発明によれば、使用のための指示書を含んだ、経口投与のため
のパッケージ品も提供される。本発明のこのパッケージ品を使用して、正常な皮
膚をもった個体に対する光保護を可能にする方法も提供される。これらの方法は
、紫外線に暴露する前の24時間以内に720mg〜1440mgの投与量のポリポジウム抽
出物を大人に経口投与すること、および紫外線に暴露する前の3時間以内に360m
g〜720mgの投与量を経口投与することを含む。
図面の簡単な説明
図1は、超酸化物アニオンの生成量をUVA線量の関数としてプロットしたもの
である。超酸化物アニオンの生成量は、超酸化物アニオンとの反応によって NB
TがNBFに転化することから生じる、560nmでの光学密度の変化によって測定する
。リボフラビン(RF)を光増感剤として使用した。上から下に向かって、3つの
グラフは、RF単独、ポリポジウム抽出物(PE)の存在下でのRF、およびPE単独に
よる超酸化物アニオンの生成量を示している。
図2は、超酸化物アニオンの生成量をUVB線量の関数としてプロットしたもの
である。超酸化物アニオンの生成量は、超酸化物アニオンとの反応によって NB
Tが
NBFに転化することから生じる、560nmでの光学密度の変化によって測定する。リ
ボフラビン(RP)を光増感剤として使用した。上から下に向かって、3つのグラ
フは、RF単独、ポリポジウム抽出物(PE)の存在下でのRF、およびPE単独による
超酸化物アニオンの生成量を示している。
図3は、一重項酸素の生成量をUVA線量の関数としてプロットしたものである
。一重項酸素の生成量は、N,N−ジメチル−p−ニトロソアニリン(RNO)のブ
リーチングにより生じる、440nmでの光学密度の変化によって測定する。ヒスチ
ジン(HIS)を一重項酸素の選択的受容体として使用した。ローズベンガル(RB
)を光増感剤として使用した。上から下に向かって、4つのグラフは、RB単独、
0.01%のポリポジウム抽出物(PE)の存在下でのRB、0.02%のPEの存在下でのRB
、および0.05%のPEの存在下でのRBによる一重項酸素の生成量を示している。底
部の2つのグラフは、RBと公知の一重項酸素スキャベンジャー(NaN3およびDABC
O)の存在下での一重項酸素の生成量を示している。
発明の詳細な説明
本発明は、光保護および酸化防止保護のために、ポリポジウム属のシダ植物の
抽出物を使用することに関する。本発明はさらに、このような抽出物を含んだ光
保護用製剤および酸化防止用製剤に関する。ある一組の実施態様においては、方
法と製剤は抽出物の局所使用のみに関するものであるが、他の組の実施態様にお
いては、抽出物は全身的に投与することができる。
I.ポリポジウム抽出物
従来技術と本発明のポリポジウム抽出物は水溶性又は親水性の抽出物であり、
これらの抽出物は、ポリポジウム属のシダ類の乾燥葉および/または根茎の標準
的なアルコール抽出または極性抽出(polar extraction)によって得ることがで
きる。極性抽出は、非極性分離もしくは脂質分離の前に行っても後に行ってもよ
く、次いで極性抽出物を濾過して濃縮することができる。色素やカチオンを除去
するために、さらなる工程を付け加えてもよい。ウラボシ科に対する極性抽出物
を得るための一般的なプロトコルが、GB2,024,622AおよびGB2,075,834Aに記載さ
れている。さらに、2種のPolypodium leucotomos抽出物(1種はエタノール性
、
1種はメタノール性)を得るためのプロトコルが、Tuominenらによる“Phytothe
rapy Research 5:234-236(1991)”に記載されている。これらとは別のそして好
ましい抽出法が、後記の実施例1に示されている。
ポリポジウムの1種であるPolypodium leucotomosの抽出物は、スペイン、ポ
ルトガル、ホンジュラス、およびドミニカ共和国において、経口投与用のカプセ
ルの形ですでに市販されている。経口投与のための好ましい市販製剤は、スペイ
ン、マドリードのIndustrial Farmaceutica Cantabria S.A.からDIFURRとして市
販されているものである。
以後、本明細書で使用する“ポリポジウム抽出物”および略語“PE”は、ポリ ポジウム
属のシダ類の葉および/または根茎から抽出され、光保護特性および酸
化防止特性を有する極性(または水溶性または親水性または水性アルコール性)
フラクションを意味するものとする。
この属中のシダ類としては、“Index Londinensis,Vol.5,Oxford,1921”に
記載のPolypodium leucotomos(Polypodium aureumおよびPhlebodium aureumと
しても知られている);“Ann .Bot.,Vol.31,1917”に記載のPolypodium decu manum
(Phlebodium multiserialeおよびChrysopteris dictyocallisとしても知
られている);“Species Plantarum,Stockholm,1753-63”に記載のPolypodiu m crassifolium
(Dipteris crassifoliaおよびPolypodium enocarpumとしても知
られている);“Index Londinensis,Vol.5,Oxford,1921”に記載のPolypodi um lanceolatum
;“Index Londinensis,Vol.5,Oxford,1921”に記載のPolypo dium percussum
;“Index Filicum,Copenhagen,1906”に記載のPolypodium tr iseriale
;および“Index Londinensis,Vol.5,Oxford,1921”に記載のPolypo dium vulgare
;などがある。これらのうち、本発明の抽出物を得るための好まし
いシダはPolypodium leucotomosである。
実施例1に記載してあるように(1つの例としてのみ)、このような抽出物は
、ポリポジウムの葉および/または根茎のエタノール抽出またはメタノール抽出
によって得ることができる。好ましい実施態様においては、植物の地上部分のみ
を使用する。エタノールやメタノールの代わりに他の親水性溶媒(たとえば、水
や
低級アルキルアルコール)を使用できることは言うまでもない。疎水性抽出工程
または“脱脂”工程を使用して、極性抽出物から疎水性成分または脂質成分を除
去することもできる。当業者には周知のことであるが、このような疎水性抽出ま
たは脂質抽出を施すのは、極性抽出または親水性抽出の前でも後でもよい。同様
に、マルチプル抽出を施して、極性もしくは親水性フラクションをさらに精製す
ることができる。実際、当業者には周知のことであるが、種々の分別法および分
離法(たとえばクロマトグラフィー、透析、濾過、および電気泳動など)を種々
のオーダーおよび複数回にて施して、極性抽出物をさらに精製し、活性成分を単
離することができる。このような分別または分離の各工程において、過度の実験
を行うことなく、どのフラクションがPEの活性成分を含有しているかを決定する
ために、実施例6および/または実施例7に記載の簡単な酸化防止アッセイを施
す。ポリポジウムの葉および/または根茎から得られ、光保護特性と酸化防止特
性を有する抽出物のこうした極性もしくは親水性フラクションが、本明細書およ
び請求の範囲において使用している“ポリポジウム抽出物”または“PE”を構成
している。
揮発性溶媒を蒸発除去した後、このような抽出物は一般に、コンシステンシー
がシロップ状となり、色は琥珀色〜褐色となる(しかしながら、活性炭で処理す
ることによって無色透明にすることができる)。当然のことながら、コンシステ
ンシーと色は、抽出物が水または他の溶媒で希釈される程度によって変わる。
製剤中のPEの量を定量化するために、また請求の範囲を明確にするために、PE
は濃縮したり又は希釈したりすることができ、したがって、ある量の濃縮抽出物
と同じ有用性を達成するにはより多くの量の希釈抽出物が必要とされる、という
点を認識する必要がある。したがって、x重量%のPEを含んだ製剤とは、ポリポ ジウム
抽出物(濃縮されている場合)がx重量%を構成している製剤と定義され
る。濃縮ポリポジウム抽出物とは、乾燥するとその重量の25%以下を失うような
抽出物であると定義する。
II .PEの光保護特性
紫外線は、長波長から短波長まで3つのバンドに分けられる。これら3つのバ
ンドは、UVA、UVB、およびUVCと呼ばれる。UVC領域は約290nmの未満の波長を含
むが、上層大気圏でのオゾンによる濾過により、地表面においてはほとんど存在
しない。UVB領域は約290〜320nmから広がっており、UVA領域は約320〜400nmから
広がっている。
ヒトの皮膚に及ぼす紫外線の影響は幾つかある。したがって、光保護剤として
の組成物の有効性は、幾つかの異なった規準によって評価することができる。こ
れらの規準の中には以下のようなものがある。
(1) 組成物の吸収スペクトルの測定
組成物の吸収スペクトルが290〜400nmの紫外線バンドにおいて特定の吸収を示
す場合(特に、290〜320nmにおいてピーク吸収がある場合)、組成物は日焼け反
応(通常は290〜320nmの太陽輻射線によって引き起こされる)に対する光保護剤
と見なすことができる。
(2) 組成物を施用/投与した場合としない場合に対する、速やかな色素暗
色化を引き起こすのに必要な太陽輻射線の最少線量の測定
速やかな色素暗色化(immediate pigment drakening;TPD)の反応は、長波紫
外線(320〜400nm)によって引き起こすことができる。この反応(淡褐色もしく
は日焼けした皮膚において最も顕著である)は、皮膚の一時的な暗色化であり、
UVAの暴露を停止するとはっきりする。暗色化反応は、皮膚中にあらかじめ存在
するメラニンの酸化反応により生じる。IPD反応は、酸化防止剤を使用すること
によって、あるいはこの反応が酸素を必要とするので、皮膚から酸素を取り去る
ことによって抑制することができる。皮膚の視認可能な暗色化を起こすUVA輻射
線の最少線量は、0.5〜10J/cm2の範囲の等級分けした線量のUVA輻射線に皮膚を
暴露することによって決定することができる。照射の直後に視認可能な皮膚の暗
色化を起こすUVA輻射線の最少線量を、IPDのための最少線量として記録する。
(3) 組成物を施用/投与した場合としない場合に対する、最少紅斑線量の
測定
最少紅斑線量(MED)とは、暴露後20〜24時間にて、検知しうる境界を生成し
た状態で、ヒトの皮膚に知覚しうる日焼け反応を起こさせるような290〜320nmの
紫
外線の最少線量と定義される。MEDは、等級分けした線量のUVB輻射線に皮膚を暴
露することによって求めることができる。MEDは、色白の皮膚の個体に対しては
約20〜80mJ/cm2のUVB輻射線という範囲であり、褐色または暗色の色素処理した
個体に対しては約70〜120mJ/cm2の範囲である。MED値は紫外スペクトルの波長に
よって変わる、という点に留意しなければならない。より短い波長(290〜320nm
)の輻射線は、より長い波長(320〜400nm)の輻射線より紅斑を500〜1000倍多
く発生させる。したがって、より長い波長の輻射線に対するMED値はより大きく
なる(たとえば、20〜50J/cm2)。
(4) 組成物を施用/与した場合としない場合に対する、最少メラノゲン
線量の測定
最少メラノゲン線量(MMD)とは、暴露後72〜120時間にて視認可能であってす
ぐには消失しないような皮膚の持続的または永続的な色素沈着を起こさせる紫外
線(UVBまたはUVA)の最少線量であると定義される。皮膚を顕微鏡により調べる
と、色素細胞は、細胞密度の増大(1cm2当たりのメラニン細胞)、樹脂状プロ
セスの増大、およびメラニン色素沈着レベルの増大を示す。MMDは、等級分けし
た線量の紫外線(290〜400nm)に皮膚を暴露し、持続的な色素沈着を引き起こす
最少の線量を調べることによって求めることができる。
(5) 組成物を施用/投与した場合としない場合に対する、最少光毒性線量
の測定
MEDの測定においては、より短い波長(290〜320nm)の輻射線のほうが、より
長い波長(320〜400nm)の輻射線よりエリセモゲンが多い、ということが知られ
ている。しかしながら、光反応性の化学物質または薬物(たとえば、8−メトキ
シプソラレンや5−メトキシプソラレン)の存在下では、より長い波長のUVA輻
射線のほうがエリセモゲンがはるかに多くなりうる。これは、かなり少ない線量
のUVA輻射線にて皮膚が赤み(紅斑)を示すという光毒性反応によるためである
。光反応性の化学物質または薬物を施用/投与した後に、光毒性反応を起こさせ
るのに必要なUVA輻射線の最少線量を最少光毒性線量(MPD)と定義する。MPDは
、等級分けした線量のUVA輻射線に皮膚を暴露する前に光反応性の化学物質また
は薬物を局
所施用もしくは経口投与することによって、そして暴露後48〜72時間で光毒性反
応を引き起こす最少の線量を調べることによって求めることができる。
本明細書で使用している“光保護”とは、(1)皮膚に対する紅斑反応もしく
は日焼け反応および組織損傷の抑制と阻止、および/または(2)速やかな色素
暗色化反応の抑制と阻止、および/または(3)遅延日焼け反応またはMMD反応
の抑制と阻止、および/または(4)プソラレン類(psoralens)によって起こ
される光毒性反応の抑制と阻止、を意味する。このような光保護をもたらす化合
物は“光保護性がある”と言われ、“光保護剤”と呼ばれる。
市販製品の場合、光保護製剤の有効性は通常“太陽光保護因子(SPF)”とし
て表される。SPFは、保護および非保護の皮膚のMEDに関して、下記の式にしたが
って定義される。
米国食品医薬局は、SPFを決定するための基準を設定している。この基準によれ
ば、被験者の背中(肩甲骨下の部分)に試験物質を2μl/cm2または2mg/cm2に
て施用する。各試験物質の評価に対して100cm2の皮膚エリア(50×2cm)が選定
される。試験結果を実証するための内部標準として、標準的な日焼け止め剤(8
%ホモサラート)が使用される。
上記にて定義したSPFと同様に、IPDとMMDに対する“保護因子”を定義するこ
とができる。SPFの場合、これらの保護因子は、単に、保護処理された皮膚に必
要とされる最少線量と未処理の皮膚に必要とされる最少線量との比である。
当然のことながら、必要とされる太陽光保護の程度は、輻射線の線量だけでな
く個人々々の皮膚のタイプによっても異なる。正常なヒトの皮膚は一般に、本質
的なメラニン化の程度、および皮膚が紫外線に反応して暗色化または日焼けする
許容的能力をベースとして、太陽光反応性タイプI-VI(タイプIは最も色白で最
も感受性が高く、タイプVIは最も色黒で最も感受性が低い)に分類することがで
きる。これらの皮膚タイプの説明に関しては、M.A.Pathakによる“Annals New Y ork Academy of Sciences
,453:328-339(1985)”を参照のこと。
本明細書で使用している“正常な皮膚”とは、皮膚科学的な疾病(たとえば乾
癬、アトピー性皮膚炎、および白斑など)に罹っていない、且つ光感作されない
ヒトの皮膚を意味している。本明細書で使用している“光感作された”とは、プ
ソラレン等の化合物の摂取または局所施用によって、より光損傷(photodamage
)を受けやすくされていることを意味している。
PEの光保護特性を評価するために、PEの局所用製剤および経口用製剤を使用し
て、また正常な皮膚をもった被験者(皮膚の光増感剤で処理した場合とそうでな
い場合)を使用して、種々の実験を行った。これらの実験の詳細が、後述の実施
例2〜5において示されている。
PEの局所施用に対しては、4種の異なった製剤を試験した。これらの製剤はそ
れぞれ、濃縮したPEを実施例8に記載のローション中に混合して得たものである
。これらの製剤は、製剤中のPEの重量%に関してのみ互いに(および実施例8の
ローションと)異なる。各製剤について、100cm2の皮膚表面に200μlを下記のよ
うに1回または2回施した。
“10%” : 10%PEを1回施用
“25%” : 25%PEを1回施用
“50%1x” : 50%PEを1回施用
“50%2x” : 50%PEを2回施用
経口投与に関しては、市販のPEカプセル(DIFURR,Industrial Farmaceutica
Cantabria,S.A.,Madrid,Spain)を使用して、一日当たり最大720mgの投与量
を試験した(全投与量は、2日で1440mg〜5日で3600mgの範囲)。
これらの実験により、タイプIIIまたはタイプIVの皮膚をもった個体において
以下のようなことが明らかとなった。
(1) 正常な皮膚に局所的に施されたPEは、濃度に応じて、IPD反応に関し
ては2.20〜3.55の保護因子を示し、MEDに関しては少なくとも2.35〜3.00以上の
保護因子(SPF)を示し、そしてMMDに関しては少なくとも1.96〜2.23以上の保護
因子
を示した。実施例2を参照。
(2) 正常な皮膚をもった患者に経口的に投与されたPEは、全身性の光保護
剤として作用し、投与量に応じて、IPD反応に関しては2.70〜3.09の保護因子を
示し、MEDに関しては2.65〜2.94の保護因子(SPF)を示し、そしてMMDに関して
は1.67〜2.00の保護因子を示した。実施例3を参照。
(3) 経口のプソラレンによって光感作された皮膚に局所的に施されたPEは
、72時間にて評価されるMPDに関しては、PEの濃度に応じて、経口の5-MOPの場合
に1.5〜2.2以上の、あるいは最も低い濃度でも、経口の8-MOPの場合に4.0以上の
保護因子を示した。実施例4を参照。
(4) プソラレンによって光感作された皮膚をもつ被験者に経口的に投与さ
れたPEは、72時間にて測定したMPDに関しては、3.0(経口の5-MOPの場合)〜7.0
(経口の8-MOPの場合)の範囲の保護因子を示した。実施例5を参照。
III .PEの酸化防止特性
PEが、プソラレンやUVA(“PUVA”,実施例4と5を参照)に対する光毒性反応
を遅延させるだけでなくIPD反応も遅延させるという事実は、作用のメカニズム
が、ラジカルおよび反応性の酸素化学種の消滅を含んでいる、ということを示し
ている。ラジカルと反応性酸素化学種は、種々の程度の細胞損傷を引き起こす上
で、またプソラレンに対する炎症性反応(紅斑、浮腫、小胞形成)を永続させる
上で重要な役割を果たす、ということが知られている〔CarraroとPathakによる
“J .Invest.Dermatol.90:267-275(1988)”〕。これらの研究により、(1)
プソラレンが表皮細胞のDNAと相互作用してピリミジン塩基との光化学的付加物
(単一ストランドで架橋した光化学的付加物を含む)を生成すること、および(
2)プソラレンは、反応性酸素化学種(一重項酸素を含む)、超酸化物アニオン
、およびヒドロキシルラジカルを生成し、これらは表皮細胞膜の損傷、脂質の過
酸化、および炎症性反応の生成の原因となることが明らかとなった。同様に、作
用スペクトル(action spectra)の研究に基づいた証拠により、波長と紫外線損
傷の特質に応じて、UVRの作用には2つの全く異なったメカニズムが存在するこ
とがわかった:(1)DNAによる光子の直接吸収により作用し、DNA塩基の光化学
生成物(た
とえば、シクロブチルピリミジンダイマーおよびシトシンの6-4ピリミジン−ビ
リミドン光化学生成物)の形でDNAに対する損傷が起こる、UVB輻射線(290〜320
nm)の関与するより短い波長のメカニズム;および(2)非DNA中間体〔たとえ
ば、内因性の増感剤(たとえば、NADH、NADPH、リボフラビン、およびキノンな
ど)または外因性の増感剤(たとえば、プソラレン+UVA)により生成される反
応性の酸素化学種(1O2,O2 ・-,および・OHなど)〕により作用するより長い波長
のUVメカニズム。より長い波長はさらに、炎症、ならびにDNA、膜脂質、及び細
胞質小器官に対して損傷を引き起こす他の酸化ストレス反応(oxidative stress
reaction)の原因となる。最も反応性の高いラジカルは、超酸化物アニオン(O2 ・ -
)の生成により生じるヒドロキシルラジカル(・OH)である。一重項酸素(1O2
)とO2 ・-はどちらも、真皮だけでなく表皮において、膜脂質の過酸化、DNAの損
傷、およびタンパク質の架橋形成を引き起こすことがある。
PEのラジカル消滅特性または酸化防止特性を調べるために、(UVA/UVB+リボ
フラビン)および(UVA+ローズベンガル)による光増感反応を含んだ一連の生
体外実験を行った。これらの実験により以下のようなことがわかった。
(1) 0.01%のPEを使用すると、(UVA+リボフラビン)および(UVB+リボ
フラビン)により、O2 ・-の生成量がそれぞれ42.2%および55%減少した(実施
例6を参照)。
(2) 0.01%のPEを使用すると、UVAおよび公知の光増感剤によって1O2の生
成量が減少した(実施例7を参照)。
現在得られるPEはUVBまたはUVA領域においていかなる特徴的な吸収ピークも示
さないけれども、粗製の抽出物はこれらの領域において単調に増大する吸収値を
示した。したがってPEは2つの仕方で、すなわち、(a)UVBとUVA領域における
吸収剤として、および(b)反応性の酸素化学種に対するクエンチ剤として作用
するようである。抽出物を、希釈せずに粗製形態のままで使用すると、ある程度
は紫外線遮断層として作用する。PEを希釈形態または無色形態にて使用すると、
PEはUVBおよびUVAスペクトルにおいて殆どもしくは全く吸収を示さないが、それ
でもなお、O2 ・-に対しては相当のラジカル消滅特性またはラジカル掃去特性を示
す。
したがってPEは、光保護剤としてだけでなく、酸化防止剤としても作用する。
酸化防止剤としての役割においては、PEを他の公知の酸化防止剤(たとえば、ビ
タミンC、ビタミンE、β−カロチン)と同様に使用して、細胞膜の損傷、DNA
の損傷、および皮膚の光感作や光エージングによる炎症反応を引き起こす酸化ス
トレスを受けないよう、皮膚または他の組織を保護することができる。
IV .局所投与用製剤
ある一組の実施態様においては、本発明の光保護製剤は、PEの他に、局所施用
のための医薬用として許容しうるキャリヤーを含有する。このような医薬用とし
て許容しうるキャリヤーは当業界によく知られており、本質的に、現在使用され
ていて市販のいかなる局所用日焼け止め剤、化粧用製剤、およびこれらの組合せ
物を含んでもよい。したがって、PEを加えることによって、そして必要に応じて
水性成分と非水性成分との比を調節して局所施用に適したコンシステンシーを保
持することによって、市販の日焼け止め剤または化粧用製剤に簡単に変性を施す
ことができる。
局所施用のための光保護製剤中に使用されている医薬用として許容しうるキャ
リヤー中に通常見られる化合物、および化合物の種類の例に関しては、Martino
らによる米国特許第5,256,404号(1993年10月26日)およびMcCookらによる米国
特許第5,306,486号(1994年4月29日)を参照のこと。
本明細書で使用している“局所施用のための医薬用として許容しうるキャリヤ
ー”とは、広げたり擦ったりすることによってヒトの皮膚に局所施用するのに適
した組成物を意味しており、こうした組成物は、ヒトの皮膚に炎症を引き起こす
ことがなく、PEと混合して溶液、エマルジョン、ゲル、ローション、軟膏、香膏
、クリーム、または広げることのできる固体もしくはペーストを形成させること
ができる。医薬用として許容しうるこのようなキャリヤーとしては、皮膚軟化薬
、界面活性剤、湿潤剤、滑剤、増粘剤、防水剤、殺菌剤、経皮浸透剤、および防
腐剤などがある。さらに、種々の化粧用薬剤(たとえば芳香剤や顔料など)も、
局所施用のための医薬用として許容しうるキャリヤー中に含めてもよい。経口投
与
されるPEは酸性条件下にて最も効果的であるという確証が得られているので、キ
ャリヤーは、局所投与に対しても、やや酸性であるか又は少なくとも非アルカリ
性であるのが好ましい。製剤は、5を越えるが8未満のpHを有するのが好ましい
。
局所施用のための医薬用として許容しうるキャリヤーとしてさらに、PEの光保
護特性を補足する光保護剤がある。具体的には、化学的日焼け止め剤、物理的日
焼け止め剤、および/またはヒトに対する使用が認可(たとえば、米国医薬品局
や化粧品・芳香剤協会によって)されている化粧用薬剤などがある。
本明細書で使用している“物理的日焼け止め剤”とは、局所施用のための医薬
用として許容しうるキャリヤーの一成分として使用したときに、紫外線を反射お
よび/または回折および/または散乱するよう作用し、また2μl/cm2もしくは
2mg/cm2の濃度で施用したときに、少なくとも2のSPF(タイプI〜IVの皮膚に
関して、暴露後24時間にてMEDを測定したとき)を示すような化合物を意味して
いる。代表的な物理的日焼け止め剤は、二酸化チタン、シリコーン処理した二酸
化チタン、酸化亜鉛、酸化第一鉄、塩化第二鉄、タルク、酸化クロム、コバルト
酸化物、カオリン、イヒチオール(ichthyol)、およびスターチである。物理的
日焼け止め剤は通常、直径30〜100nm(好ましくは30〜50nm)の粒子の形態をと
っている。当業界では他の多くの物理的日焼け止め剤が知られているが、ここに
列挙する必要はない。本明細書で使用している“物理的日焼け止め剤”がPEを含
まないのは明らかである。
本明細書で使用している“化学的日焼け止め剤”とは、局所施用のための医薬
用として許容しうるキャリヤーの一成分として使用したときに、紫外線スペクト
ル中のある輻射線を吸収するよう作用し、また2μl/cm2もしくは2mg/cm2の濃
度で施用したときに、少なくとも2のSPF(タイプI〜IVの皮膚に関して、暴露
後24時間にてMEDを測定したとき)を示すような化合物を意味している。代表的
な化学的日焼け止め剤としては、p-アミノ安息香酸(PABA)とそのエステル誘
導体、サリチル酸エステル、ケイ皮酸エステル、ベンゾフェノン、ジヒドロキシ
アセトン、パーソル1789、メラニン、および種々の炭化水素などがある。当業界
では他の多くの化学的日焼け止め剤が知られているが、ここに列挙する必要はな
い。本
明細書で使用している“化学的日焼け止め剤”がPEを含まないのは明らかである
。
本明細書で使用している“化粧用薬剤”とは、ヒトの皮膚に局所施用してエス
テティックな効果を得ることができて、しかも炎症を引き起こさないような顔料
または芳香剤を意味している。化粧用薬剤は当業界においてよく知られており、
口紅、アイシャドー、ルージュ、ファウンデーション、および他の形態の化粧品
等の製品中に含まれている。本明細書で使用している“化粧用薬剤”は、ヒトの
皮膚に色や芳香を付与するために使用されるものに限定される。“化粧用薬剤”
は、爪や毛髪のケア製品中に使用されるもののようなタイプの薬剤は含まないも
のとする。本発明にて使用している“化粧用薬剤”がPEを含まないことは明らか
である。
本発明の局所施用のための光保護製剤は、一般には少なくとも約1容量%のPE
を含んでいなければならない。しかしながら、当業者には周知のように、より少
ない量でも使用することができる。但しこの場合は、利点も少なくなる。毛のな
いマウスでの実験では、DMSO中0.5%という低い濃度のPEに対して光保護効果が
観察された。しかしながら、好ましい実施態様においては、製剤は少なくとも約
5容量%または10容量%のPEを含んでいなければならない。25%、50%、または
それ以上の濃度のPEも含めたより高い濃度も可能であり、こうした濃度も請求の
範囲の精神と範囲内に含まれる。当業者には周知のことであるが、PEの容量パー
セントは、UVAやUVBに対して保護したいという要望;日焼けを抑えたいという要
望;光毒性反応を抑えたいという要望;種々の薬剤の相対的なコスト;異なった
光保護特性を有する複数の薬剤(たとえば、化学的日焼け止め剤や物理的日焼け
止め剤)を組み込みたいという要望;そして美的感覚の面から快くて且つ使用す
るのが簡単な物品(たとえば化粧用顔料、皮膚軟化薬、香料、アロエ、およびジ
ヒドロキシアセトンのような日の射さない“日焼け”剤など)をもたらすような
化合物を組み込みたいという要望;を含めた種々のファクターを基にして商業的
用途にて決定される。
代表的な実施態様として、局所施用のための光保護製剤は実施例8に記載の物
質を含んでもよい(但し、これらの物質に限定されない)。
V.全身投与用製剤
経口投与を容易にするために、PEを医薬用として許容しうる種々の経口投与用
キャリヤーと混合することができる。“医薬用として許容しうる経口投与用キャ
リヤー”とは、無毒性でヒトの胃腸系を刺激せず、PEと混合して溶液、シロップ
、エマルジョン、ゲル、または固形物を形成できるような組成物を意味している
。静脈投与、筋内投与、皮下投与、あるいは一般的に非経口投与のための製剤も
、当業界において知られている方法によって製造することができる。医薬用とし
て許容しうる経口投与用キャリヤーとして作用できる物質の幾つかの例としては
、糖類(たとえばラクトース、グルコース、およびスクロース);スターチ(た
とえばコーンスターチやポテトスターチ);セルロースとその誘導体(たとえば
カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびセルロース
アセテート);粉末状トラガカントゴム;モルト;ゼラチン;タルク;ステアリ
ン酸;ステアリン酸マグネシウム;硫酸カルシウム;植物油(たとえば落花生油
、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、およびトウモロコシ油);ポリオール(たとえ
ばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポ
リエチレングリコール);ポリビニルビロリドン;アルギン酸;発熱物質非含有
水(pyrogen-free water);等張性塩水;リン酸塩緩衝液;ココアバター;乳化剤
;ならびに医薬製剤において使用される他の無毒性の相容性物質;などがある。
湿潤剤や滑剤(たとえばステアリン酸マグネシウム)の他に、着色剤、風味剤、
賦形剤、錠剤用薬剤、安定剤、酸化防止剤、および防腐剤も存在してよい。相容
性のある他の医薬用添加剤や活性剤を、本発明の組成物に使用するための医薬用
として許容しうるキャリヤー中に組み込んでもよい。
経口投与用製剤は、放出遅延化製剤または徐放性製剤、分散性の粉末またはグ
ラニュール、トローチ剤、サッシェ、カシェ剤、エリキシル、懸濁液、エマルジ
ョン、溶液、シロップ、エーロゾル(固体として、あるいは液体媒体中に)、お
よびこれらの類似物も含めて、錠剤、カプレット(caplet)、ソフトゼラチンカ
プセル、ハードゼラチンカプセル、およびピル等のいかなる形態であってもよい
。
1つの好ましい実施態様においては、PEを、ラクトースやステアリン酸マグネ
シウム(滑剤)を医薬用として許容しうる経口投与用キャリヤーとして含んだカ
プセルにする。しかしながら、ラクトースに対して耐性のない人もいるので、こ
れに代わるキャリヤー(たとえば、スターチまたは植物油)が好ましい。
代表的な実施態様として、経口投与用の光保護製剤は実施例9に記載のキャリ
ヤーを含んでもよい(但し、これらに限定されない)。
VI .光保護を得る方法
1.PEによる局所光保護
本発明の1つの実施態様においては、局所施用のためのPE製剤を使用する、光
保護(光エージング、光化学作用による損傷、および皮膚ガンに対する保護また
は防止を含む)を得る方法が開示される。
好ましい実施態様においては、PE製剤は、溶液、エマルジョン、ゲル、軟膏、
ローション、香膏、クリーム、あるいは個体の皮膚に施用することができ、皮膚
に塗りつけて薄い層を形成させることのできる延ばしやすい固体もしくはペース
トとして調製される。本製剤は、紫外線に暴露する前に施用しなければならず、
また水泳、水浴、又はかなりの発汗後にも再施用しなければならない。
PE製剤はさらに、他の日焼け止め剤(物理的または化学的)、皮膚軟化薬、界
面活性剤、湿潤剤、滑剤、増粘剤、防水剤、および/または保存剤を含むのが好
ましい。PE製剤によって得られる全体としてのSPFは、少なくとも2でなければ
ならない。皮膚タイプと推定暴露時間が異なる個体に対しては異なった製剤を使
用することができ、したがって5、10、15、20、および30以上のSPFを有する製
剤の使用が考えられる。光過敏性の高い皮膚をもった個体に対しては、40以上ま
たは50以上のSPFを有する製剤も使用することができる。
2.PEによる経口光保護
本発明の他の実施態様においては、経口投与のためのPE製剤を使用する、光保
護(光エージング、光化学作用による損傷、および皮膚ガンに対する保護または
防止を含む)を得る方法が開示される。
好ましい実施態様においては、ラクトースやステアリン酸マグネシウムが医薬
用として許容しうるキャリヤーとして機能するカプセルの形でPEを調製する。し
かしながら、ラクトースに対して耐性のない人もいるので、これに代わるキャリ
ヤー(たとえば、スターチまたは植物油)が好ましい。カプセルは、約100〜150
mgのPEを含有するのが好ましく、120mgのPEを含有するのが最も好ましい。
PEは酸性条件下においてより良く吸収されるようなので、カプセルは制酸剤を
使用しないで摂取するのが好ましく、食前少なくとも30分にて摂取するのが最も
好ましい。同様に、アルコールはPEの吸収と有効性を低下させるようなので、製
剤はアルコール性飲料と一緒に投与しないのが好ましい。
PEはジギタリス薬の効果を高めるようなので、ジギタリスを摂取している人は
、経口投与のPE製剤を使用する前に医師と相談すべきであり、必要に応じてジギ
タリスの投与量を減少させなければならない。ジギタリスを摂取している人には
PEを使用しないのが好ましい。
大人の場合、PEの投与量は、太陽暴露または他の紫外線暴露の前3時間以内に
て少なくとも120mgである。投与量は、暴露前の3時間以内にて360〜720mgであ
るのがさらに好ましい。PEは最高1200mg/日の投与量までは安全であることが明
らかとなっており、したがって暴露前24時間以内にて最高1200mgまでの投与量を
摂取することができる。PEの投与量は、暴露前24時間以内にて少なくとも360mg
であるのが好ましい。投与量は、暴露前24時間以内にて720〜1440mgであるのが
さらに好ましい。さらに、暴露の前の数日にて360〜720mg/日の日用量を摂取す
ることもできるが、効果は二日後にて実質的に累積的とは言えないようである。
6才を越える子供に対しては、投与量は、一日当たり120〜240mgに制限しなけ
ればならない。
経口PE製剤の投与により消化に不快感が生じる場合は、製剤の使用を止めるべ
きである。ラクトース不耐性の人に対しては、少量(たとえば120〜180mg)のラ
クトースの摂取であれば不耐性の徴候を引き起こすほどではないが、下痢が起こ
った場合には、製剤の使用を中止すべきである。この代わりに、ラクトースを組
み込んでいないPE製剤(たとえば、キャリヤーとして、ラクトースをスターチや
植物油で置き換えた製剤)を使用することができる。
VII .実施例
1.PEの調製
共生的に生長しているアフリカヤシの木(African Palm trees)から生長したPolyposium leucotomos
の根茎を分離し、土壌と気候条件が好適である農場(た
とえば、ホンジュラスのYojoa Lake)に移植する。葉が十分に生長し、胞子が形
成された後、この植物の地上部分を収穫し、60〜70℃の温度で24時間乾燥する。
乾燥した葉の160kgバッチを微粉砕し、メタノール/水(全容積1430リットル)中
、10時間の低還流抽出(low reflux extraction)にて3回処理する。こうして
得られる希釈抽出物を、25〜50℃にて減圧蒸発させることにより濃縮して殆どの
アルコールを除去し、その容積を初期の約20%にまで減少させる。必要に応じて
(こうするのが好ましいが)、n-ヘキサン等の疎水性溶媒を使用して濃縮抽出
物から脂質を除去し、またイオン交換樹脂を使用してカチオンを除去する。必要
に応じて(こうするのが好ましいが)、活性炭を使用して(初期乾燥葉1kg当た
り200〜300g)、タンニン、クロロフィル、および他の色素をある程度除去する
。最後に、抽出物を濾過し、減圧にて濃縮して約16kgの濃縮PEを得る。こうして
得られるPEは、琥珀色〜褐色でシロップ状のコンシステンシーを有するはずであ
る。
下記の実験において使用されているPEは、Polypodium leucotomosから誘導さ
れたもので、スペイン,マドリードのIndustrial Farmaceutica Cantabria S.A.
から市販されているものである。
2.正常な個体へのPEの局所施用
30人の健康な男性および女性ボランティアの群から5人の被験者をランダムに
選定した。彼らは、タイプIIIまたはタイプIVの皮膚を有する普通の皮膚のボラ
ンティアであり、年齢は18〜35才であって全身性もしくは皮膚の疾患に罹ってお
らず、薬物による光過敏性の事実がなく、太陽光に対する異常な反応性を示さず
、そして他の薬物治療を受けていなかった。被験者はいずれも、太陽光への暴露
後、良好な日焼け反応を示すことができた。
太陽光暴露に対し、ポランティアを以下のように調整した。
複数の暴露ウインドー(exposure windows)の付いた接着テンプレートを被験
者の背中に貼り付けた。各ウインドーのサイズは2×2cmであった。肩甲骨下の
区域の脊柱の左側と右側にテンプレートを貼り付けた。
各被験者に対し、一列に並んだ6個の暴露ウインドーを使用して、被験者の未
処理(非保護)皮膚のMEDを決定した。この列のウインドーを、太陽光線に12.5
分、15分、20分、25分、30分、および35分もしくは40分暴露した。
他の列はすべて、20分、40分、60分、80分、100分、またはそれ以上暴露した
。これらの列のうち、1つの列をネガティブ対照標準(negative control)(局
所施用なし)として使用した。別の列をポジティブ対照標準〔15のSPF(“Std S
PF15”は、3%のパーソル1789と3〜5%のベンゾフェノン-3を含有する)を
有する市販の日焼け止め剤で局所施用〕として使用した。残りの4列は、10%、
25%、50%1x、および50%2xのPE使用に対して使用した。試験物質の施用は
、太陽光への暴露前30分にて行った。施用した物質を周囲温度で自然乾燥した。
被験者を開放した場所に集めた。被験者に対し、個々に割り当てられたエアー
マットレス上にうつ伏せ状態で横たわるように命じた。太陽光に対する暴露は、
11:30a.m.〜1:30p.m.にて行った。較正済みの放射計(International Light Co.
,Newburyport,MA)を使用して太陽光の強度を測定し、平均27w/m2であった。こ
のレベルのフラックスは、未処理の皮膚に30分当てた場合は、約50mJ/cm2の太陽
輻射線に等しく、これは、ごくわずかではあるが知覚しうる日焼け反応を生成さ
せるのに十分な線量である。太陽光への暴露時間は以下の通りであった。
適切な太陽光暴露線量を供給した後、試験部位を紫外線不透過性の接着テープ
で覆った。以下の時点にて、全ての暴露部位の観察を行った:(1)IPDの決定の
ために暴露直後;(2)MEDの決定とSPFの評価のために暴露後24時間にて;そして
(3)MMDの決定のために暴露後6日にて。
速やかな色素暗色化(IPD)反応に必要なUV線量の増分は、明らかに局所的に
施用されるPEの濃度に関係している。局所施用されたPEは、既に皮膚中に存在し
ているメラニン色素の光酸化反応を遅延することによって保護する。
MEDに及ぼすPEの影響を調べるために、太陽光暴露した被験者を24時間時点に
て紅斑に関して評価した。PE-処理した皮膚部位に、最大100分の太陽光暴露(約
3MEDに等しい線量)を行った。この3MEDという線量は、軽度〜中程度の日焼け
反応(ピンクレッド色で痛みはない)を起こすことができる。下記の表に、MED
値および試験製剤の種々の施用に対する太陽光保護因子(SPF)の算出値を示す
。
4つのPE含有試験物のそれぞれが効果的な保護を示し、PE-保護した部位はい
ずれも視認可能な日焼け反応を示さなかった。すべての被験者に対する実質的な
日焼けのリスクを避けるために、トータルの暴露時間を約100'に制限したので、
50%1x、50%2x、およびStd SPF15の日焼け止め剤に関しては紅斑を引き起
こすのには暴露が不充分であった。したがって、これらの施用の実際のMED値、
およびこれら製剤のSPF値は変わらない(しかしながら、2.94より大きいのは明
らかである)。
局所用PEの光保護効果を実証するための第三の規準は、未処理の対照標準にお
ける遅延化された色素沈着または新しいメラニンの形成印焼け反応)をシミュレ
ートするのに必要とされる紫外線の最少メラノゲン線量(MMD)を測定すること
、およびPE処理した皮膚の遅延化された色素沈着をシミュレートするのに必要な
UV線量を測定することである。色素沈着の遅延化反応は、長波紫外線(>320nm)
の累積効果によるものと考えられる。
下記の表には、対照標準(非保護もしくは未処理)部位、ならびに10%、25%
、50%1x、および50%2xPEによって保護された部位における、遅延化された色
素沈着(焼け)反応をシミュレートするのに必要な最少メラノゲン線量(MMD)
が示されている。下記の実測の最少メラノゲン線量値は、PEの光保護特性と矛盾
しない。
この場合も、PE製剤のそれぞれが実質的な保護をもたらした。すべての被験者
の日焼けを避けるためにトータルの暴露時間を約100'に制限したので、50%1x
、50%2x、およびStd SPF15の日焼け止め剤に関しては新たなメラニンの形成
を引き起こすのには暴露が不充分であった。したがって、これらの施用の実際の
MMD値は変わらない(しかしながら、167mJ/cm2より大きいのは明らかである)。
3.正常な個体に対するPEの経口投与
一日当たり1000mg以上の投与量における経口PEの安全性と無毒性を確認した後
、我々は、皮膚タイプIIIとIVのボランティアに一日2回、PEを経口投与するこ
とを決めた。被験者を2つの試験グループに分けた。被験者の第1のグループ〔
“2日(two day)”グループ〕においては、3人の正常な被験者に対し、太陽光
暴露の一日前の日に720mgのPEを、そして太陽光暴露の3時間前にさらに720mgの
PE(合計投与量1440mg)を投与した。第2のグループ(“5日”グループ)にお
いては、5人の正常な被験者に対し、太陽光暴露前の連続した4日のそれぞれの
日に720mgのPEを、そして5日目の太陽光暴露の3時間前に720mgのPEを投与した
。さらにそれぞれ8人の被験者からなる2つのグループ、PEを投与しない対照標
準グループ、およびStd SPF15日焼け止め剤を使用するグループも試験した。
全ての被験者を、同一の条件下にて、11:00a.m.から2:00p.m.まで太陽光紫外
線に暴露した。5つの暴露ウインドー(それぞれ2cm×2cmのサイズ)で構成さ
れたプレカット列を有する接着テンプレートをボランティアの背中(肩甲骨下の
区域)に貼り付けた。各ボランティアは、脊柱の左側と右側に対称形に配置され
た少なくとも5つの暴露列を有した。各列には、2×2cmサイズの5個または6
個の暴露ウインドーが設けられた。それぞれの測定暴露線量の照射が完了すると
、太陽光暴露部位を紫外線不透過性の接着テープで覆った。
30分(約1MED)から45、60、90、120、150、または180分までの範囲で等級分
けした太陽光暴露線量に対する反応を、以下の項目に関して評価した:(1)暴
露時間の終了時に測定される速やかな色素暗色化(IPD)反応に必要な太陽光輻
射線の最少線量;(2)暴露時間後24時間にて測定される最少紅斑反応に必要な
太陽光輻射線の最少紅斑線量(MED);および(3)暴露時間後3日(72時間)に
て測定される遅延化色素反応(delayed pigment response)に必要な最少メラノ
ゲン線
量(MMD)。
対照標準被験者(PE投与なし)、PE-処理した被験者、および日焼け止め剤で
保護した被験者の速やかな色素暗色化(IPD)反応に対する結果は以下の通りで
あった。
表記のデータから、経口投与したPEに光保護性があることがわかる。PEの経口
投与の5日後(総投与量3600mg)のほうが、2日後(総投与量1440mg)よりやや
良好な保護が観察された。SPF値の差はそれほど大きくはない。したがって、720
mg/日の経口投与量にて2日を越えると、光保護効果の実質的な増大はみられな
い。PEの光保護成分は長時間にわたって血液や皮膚中に留まらず、むしろ代謝さ
れて、尿中に速やかに排出されると考えられる。
MEDに及ぼす経口PEの影響を評価するために、対照標準として同じ被験者を使
用することができた。従って、未処理の対照標準皮膚の日焼け反応に対するMED
値を得るために、8人の被験者(3人は2日グループから、5人は5日グループ
から)のそれぞれに対する最少紅斑線量(MED)をPEの投与前に測定した。次い
で、同じ8人の試験ボランティアに対し、2日または5日間PEを経口投与した後
にMED値を測定した。得られた結果を以下に示す。
上記のデータから、経口投与したPEがMED値をほぼ3倍高めていることがわか
る。PE(3600mg)を連続した5日にわたって経口投与すると2.94という保護因子
が得られるが、PE(1440mg)を2日にわたって経口投与すると2.65という保護因
子が得られた。このことから、PEが、わずか2日ばかりの経口投与後でも光保護
性を示すということがわかる。これらのデータはさらに、PEの投与を毎日で5日
繰り返しても、光保護のさらなる大幅なアップは認められない、ということを示
している。したがってこれらのデータは、PEの経口摂取後3〜24時間以内におい
てPEの最大の光保護効果が得られること、および、この時間後においては、PEの
光保護効果が累加的ではないことを示している。
等級分けした線量の太陽光輻射線に被験者を暴露(150分または180分という長
時間にわたって)したときに、PE-処理した被験者の皮膚は日焼け反応の徴候を
示さなかった、という点に留意することが重要である。これとは対照的に、経口
PEを投与していない対照標準皮膚の反応は、真昼の太陽光輻射線にわずか30〜34
分暴露した後に日焼け反応の徴候を示した。非保護の対照標準皮膚を60分にわた
って太陽光暴露すると、触れると痛みのある中程度の日焼け反応を起こした。
遅延化日焼け反応(delayed tanning response)または新たなメラニン形成に
及ぼす経口投与PEの影響を評価するために、健康な被験者をランダムに選定した
。これらの被験者に対し、(a)遅延化日焼け反応を起こさせるのに必要な最少
メラノゲン線量(MMD)を、PEを投与することなく評価し、そして(b)同じボ
ランティアのMMDを、連続した2日または連続した5日にわたってPEを経口投与
(720mg/日)した後に測定した。ポジティブ対照標準として、我々はさらに、St
d SPF15日焼け止め剤によって充分に保護された皮膚において、遅延化日焼け反
応を起こさせるのに必要な線量を測定した。時間の制約により、遅延化色素反応
の生起は、太陽光暴露後の5日(120時間)よりむしろ72時間にて評価した。得
られた結果を下記の表に示す。
上記のデータは、経口PEが光保護性を有すること、およびPE保護された皮膚に
おいて遅延化日焼け反応を起こさせるのに必要な線量は、非保護の皮膚において
遅延化日焼け反応を起こさせるのに必要な線量よりはるかに多いということを示
している。
したがって、経口投与のPEによって保護された皮膚に遅延化日焼け反応を起こ
させるのに必要な線量を測定することによって、我々は、PEが日焼け反応とメラ
ニン色素沈着の生起(遅延化日焼け反応)に対して実際に光保護性を有すること
を示した。
4.光感作された個体に対するPEの局所施用
PEの光保護特性を評価する他の手段として、プソラレンの経口投与によって故
意に光感作性にした被験者に対してPEの局所施用を試験した。プソラレン類〔8
-メトキシプソラレン(8-MOP)および5-メトキシプソラレン(5-MOP)〕は、
人工的な光源または太陽光輻射からのUVA輻射線(320〜400nm)に対する暴露に
より起こる乾癬と白斑の治療に対して米国および世界中で広く使用されている。
これらの薬物は、紫外線との光毒性反応に関与することによって皮膚の光感受性
(photosensitivity)を増大させ、これよって皮膚の紅斑、浮腫、および圧痛を
引き起こすことが知られている。
PUVA(P=プソラレン;UVA=紫外線A)は、プソラレンの経口摂取、およびそれに
続く紫外線への皮膚の暴露を含んだ標準的なプロトコルである。薬物8-MOPまた
は5-MOPを使用することなく、正常なタイプIIIまたはタイプIVの皮膚を最大45
分にわたって太陽光輻射線(320〜400nm)に暴露した場合、暴露後48〜72時間に
て
調べると、赤みや光毒性反応(すなわち“日焼け”)を示さない。しかしながら
、経口8-MOP主たは経口5-MOPで光感作された皮膚においては、わずか10分にわ
たって皮膚を太陽光輻射線に暴露すると、暴露後48〜72時間にて調べたときに光
毒性または日焼けの程度が徐々に増大することがある。皮膚の光感作と光毒性を
起こさせるのに必要な紫外線の線量を最少光毒性線量(MPD)と定義する。した
がって、プソラレン8-MOPと5-MOPは皮膚を光感作し、測定可能な程度の光毒性
反応を引き起こす。具体的に言えば、5-MOPまたは8-MOPを経口投与すると、赤
みや光毒性を生成させるのに必要なUVA輻射線の線量がはるかに少なくなる(1/
3〜1/5)ということである。PUVAをアッセイとして使用し、8-MOPまたは5-
MOPで光感作された皮膚において光毒性を抑制する能力を測定することによって
、ある製剤の光保護特性を確認することができる。
前述のように、我々は、PEが8-MOPまたは5-MOPの光毒性反応を遅らせる能力
を調べるために、皮膚タイプIIIまたはIVの4人の正常な被験者を選定した。8-
MOPを2人の被験者に、太陽光のUVA輻射線に暴露する約1.5〜2時間前に、0.45
〜0.6mg/kgの投与量にて投与した。5-MOP(8-MOPより弱い光毒性薬物)は2人
の被験者に、太陽光のUVA輻射線に暴露する約1.5〜2時間前に、1.0〜1.2mg/kg
というより多い投与量にて投与した。次いで、各グループの被験者に対し、太陽
光暴露後72時間にて赤みと光損傷を調べることによって最少光毒性線量(MPD)
を求めた。
次いで我々は、真昼の太陽光への暴露の1.5〜2時間前に8-MOP(0.6mg/kg)
または5-MOP(1.0〜1.2mg/kg)を経口投与した後にPEの局所施用を受けた被験
者に必要なUVの最少光毒性線量(MPD)を求めることによって、PEの光保護特性
を評価した。
10%、25%、および50%のPEを含有した製剤(ローションの形態)を、2×2
cmの暴露ウインドーの付いた接着テンプレートによって画定された所定の部位に
て各被験者に局所施用(2μl/cm2)した。内部標準として作用させるために、
テンプレート部位の1つをStd SPF 15日焼け止め剤施用のために使用した。さら
に1つのテンプレート部位にはいかなる局所施用も行わず、この部位は、いかな
る光保護も施さない皮膚のMPD値を評価するための、無処理の対照標準部位とし
て作用させた。
経口投与した8-MOPと局所施用したPEに対する結果を下記の表に示す。
経口投与した5-MOPと局所施用したPEに対する結果を下記の表に示す。
これらのデータは、局所投与されたPEが、8-MOPまたは5-MOPによって光感作
された皮膚に対して光保護性を有することを示している。ここで、経口投与され
た5-MOPのほうが経口投与された8-MOPより光毒性が弱いという点を思い起こさ
なければならない。このことは、8-MOPの場合のMPD測定に対してより、5-MOP
の場合のMPD測定に対してのほうがより多くの線量を必要とすることを表してい
る。従来の実験のように、被験者に対して火ぶくれ反応を含めたひどい日焼けを
引き起こす危険性を避けるため、暴露時間は故意に制限した。その結果、実際の
MPDおよび保護因子は不変のままであった(しかしながら、PEは明らかに少なく
とも
1.5〜少なくとも4.0の保護因子を示した)。
5.光感作された個体に対するPEの経口投与
経口投与したPEの光保護効果を、皮膚の光感作用薬物8-MOPおよび5-MOPを摂
取した被験者において以下のように評価した。
皮膚タイプIIIとIVの4人の被験者を選定した。これら4人のうちの2人に対
し、太陽光暴露の2時間前に8-MOP(0.6mg/kg)を経口投与した。他の2人の被
験者には、太陽光暴露の2時間前に5-MOP(1.0〜1.2mg/kg)を経口投与した。P
Eを使用しない場合の対照標準MPD値を得るために、これら被験者の非保護皮膚の
最少光毒性線量(MPD)を72時間にて評価した。
これら同じ被験者のそれぞれを、それまでに暴露していない皮膚に関して、PE
を光保護剤として使用して再び試験した。彼らに対し、1440mgのPEを経口投与し
た(720mgのPEは太陽光暴露の18時間前に、そして720mgは太陽光暴露の3時間前
に)。次いで前述したように、彼らに対し、8-MOP(0.6mg/kg)または5-MOP(
1.0〜1.2mg/kg)を太陽光暴露の2時間前に経口投与した。暴露後72時間にて被
験者を調べて、経口投与したPEとプソラレンの存在下でのMPDを求めた。
経口投与した8-MOPと経口投与したPEとが関与する試験の結果を以下に示す。
経口投与した5-MOPと経口投与したPEとが関与する試験の結果を以下に示す。
これらの結果により、経口投与したPEの光毒性に対する光保護特性が確認され
る。この天然抽出物は、プソラレン5-MOPまたは8-MOPによって引き起こされる
皮膚の光感作に対して、MPDの値をそれぞれ3倍または7倍に増大させた。
6.PEによる超酸化物アニオンのクエンチ
超酸化物アニオンを得るためのよく知られた発生剤であるリボフラビン(RF)
を使用することによって、O2 ・-ラジカル(超酸化物アニオン)を形成操作を行
った(CarraroとPathakによる“J .Invest.Dermatol.90:267-275,1988”;お
よびBeauchampとFridovichによる“Anal .Biochem.44:276-287,1971”を参照
)。560nmでのNBT+4O2 ・-→NBF+4O2という反応による、ニトロブルーテトラゾリ
ウム(nitro blue tetrazolium)(NBT)からニトロブルージホルマザン(nitro b
lue diformazan)(NBF)へのリボフラビン光増感還元(riboflavin photosensiti
zed reduction)をモニターすることによって、O2 ・-の生成を分光光度法に従っ
て確認した。O2 ・-の生成は、UVAの増大する暴露線量(1〜10J/cm2)の関数と
して、また照射された溶液に対する560nmでの光学濃度の増大を記録することに
よって、定量的に評価した。生成O2 ・-のクエンチは、超酸化物ジスムターゼ(5
0ユニット/mL)及びPE(0.01%以下)の無色希薄溶液のアリコートを使用するこ
とにより確実に行った。PEの掃去ポテンシャル(scavenging potential)は、UV
Aの照射線量(0.5〜10J/cm2)を増大させることによって、そして反応系にPEの
アリコートを加えることにより生成O2 ・-のクエンチ%を観察することによって
評価した。
本検討に関する結果が図1と図2に示されている。使用した輻射線源は多色の
線源であり、UVBの主要フラクションだけでなく、UVA輻射線の一部のフラクショ
ンも生成した。紫外線によりO2 ・-が生成し、照射線量を増大させると、明らか
にO2 ・-の生成量が増大した。PE単独では、O2 ・-の生成に殆ど寄与しなかった。
しかしながら、リボフラビンが存在すると、O2 ・-の生成がかなり認められた。
リボフラビンとPE(0.01%)の存在下でO2 ・-の生成を調べると、O2 ・-の生成量
の実質的な減少が認められた。O2 ・-の生成に対して(リボフラビン+UVA)系ま
たは(リボフラビン+UVB)系を使用した場合、PEを加えると、O2 ・-の生成量が
それぞれ42.2%および55%減少した。より高い濃度のPEの場合に起こる不透明性
と濁
りのために(分光光度法による測定ができない)、我々はO2 ・-の生成において1
00%のクエンチを行うことはできなかった。
7.PEによる一重項酸素のクエンチ
1O2(一重項酸素)の生成と検出を公知の方法にしたがって行った(Kraljic
とMohsniによる“Photochem .Photobiol.28:577-581,1978”を参照)。N,N−
ジメチル−p−ニトロソアニリン(RNO,0.35-9.4×10-5M)を0.05Mのリン酸塩緩
衝液(pH7.0)中に溶解して得た溶液5mlを、10-2Mのヒスチジン(HIS,1O2の
選択的受容体として使用される)および10-5M濃度の公知の光増感剤〔たとえば
、ヘマトポルフィリン誘導体、ローズベンガル、メチレンブルー、またはプソラ
レン(3−カルベトキシプソラレン)と混合した。RNOと光増感剤を含んだこれ
らの溶液にUVAを照射し(1〜10J/cm2)、引き続きRNOのブリーチングを440nmに
て分光光度法により記録した。PEの掃去ポテンシャルを、対照標準化合物として
使用される公知の1O2スキャベンジャー〔たとえば、NaN3または1,4-ジアザビシ
クロ(2.2.2)オクタン(DABCO)〕と比較した。1O2生成の抑制率を対照標準値(
NaN3またはDABCOが存在しない場合)のパーセントとして表した。
PEが存在する場合としない場合について、ローズベンガル(RB10-5M)を使用
して得られた1O2の生成に関するデータを表3に示す。よく知られている1O2の
クエンチ剤であり、1O2の生成をほとんど100%抑止したNaN3やDABCOと異なって
、1O2生成の抑止に及ぼすPEの影響はそれほど顕著なものではなかった。1O2の
生成における抑止率は10%未満であった。
8.局所施用のための配合処方
9.経口投与のための配合処方
18kgのコーンスターチを12.6kgの濃縮PEシロップに加え、均質なマスが得られ
るまで混合する。このマスを、ヒートキャビネット中35〜40℃で8時間乾燥する
。次いで、マスをメッシュN 40 DINを通して濾過する。45分ミキシングした後、
18kgのラクトースと1.5kgのステアリン酸マグネシウムを加える。こうして得ら
れる粉末を硬質ゼラチンカプセル(サイズ0)に充填する。平均的なカプセルの
重量は495mgであり、下記の成分を含有する。
PE 126mg*
コーンスターチ 180mg
ラクトース 180mg
ステアリン酸マグネシウム 15mg
* 製造プロセス時の潜在的な損失を補償するために5%過剰量を使用する
。
上記の代わりに、18kgのラクトースを10kgの微結晶質セルロースと8kgのポリ
ビニルピロリドンで置き換えることができる。
種々の好ましい実施態様に関して本発明を説明してきたが、当業者にとっては
、多くの変形や改良形を提供することが可能であることは言うまでもない。した
がって、本発明は本明細書に挙げた特定の実施態様に限定されるものではなく、
むしろ請求の範囲の精神と範囲内に含まれる全ての変形と改良形を含むものと理
解しなければならない。
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フロントページの続き
(72)発明者 フィッツパトリック,トーマス・ビー
アメリカ合衆国マサチューセッツ州02193,
ウエストン,ニュートン・ストリート
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