JPH1150187A - 塗装後の耐食性及び耐衝撃特性に優れる高強度高加工性鋼板 - Google Patents

塗装後の耐食性及び耐衝撃特性に優れる高強度高加工性鋼板

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JPH1150187A
JPH1150187A JP15293898A JP15293898A JPH1150187A JP H1150187 A JPH1150187 A JP H1150187A JP 15293898 A JP15293898 A JP 15293898A JP 15293898 A JP15293898 A JP 15293898A JP H1150187 A JPH1150187 A JP H1150187A
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千香子 藤長
Tetsuo Shimizu
哲雄 清水
Shinjiro Kaneko
真次郎 金子
Shusaku Takagi
周作 高木
Osamu Furukimi
古君  修
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 十分な成形性と厳しい安全基準の両者を満足
する、耐衝撃特性に優れた高強度高加工性熱延鋼板を提
供する。 【解決手段】 C:0.05〜0.40mass%、Si:1.0 〜3.0
mass%、Mn:0.6 〜3.0mass%、Cr:0.2 〜2.0 mass%
を含有し、残部は実質的にFeの組成になり、かつ主相が
初析フェライトで、第2相がマルテンサイト、針状フェ
ライトおよび残留オーステナイトからなる鋼組織にな
り、鋼板表面と鋼板内部とのSi濃度比が1.3以下である
鋼板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車用鋼板と
しての用途に用いて好適な、塗装後の耐食性及び耐衝撃
特性に優れる高強度高加工性熱延鋼板及びその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の軽量化が指向される中、成形性
に優れる高強度薄鋼板に対する要求が殊の外強くなって
いる。また、最近では、自動車の安全性も重視され、そ
のためには衝突時における安全性の目安となる耐衝撃特
性の向上も要求されている。さらに、経済性に対する配
慮も必要とされ、かかる経済性を考慮した場合には、冷
延鋼板に比べると熱延鋼板の方が有利である。
【0003】上記の現状を背景として、これまでにも種
々の高強度熱延鋼板が開発されている。例えば、特公平
6-41617号公報、特公平5-65566号公報及び特公平5-6
7682号公報には、高加工性高強度熱延鋼板として、フェ
ライト、ベイナイト及び5%以上の残留オーステナイト
を含む、いわゆるTransformation Induced Plasticity
鋼(以下、TRIP鋼という)の製造方法が開示されて
いる。しかしながら、このTRIP鋼は、伸びが高く、
成形性は良好ではある(TS×El≧24000MPa・%) もの
の、現在の厳しい耐衝撃特性を満足するまでにはいかな
いところに問題を残していた。また、プレス成形性にお
ける加工硬化量(WH)及びその後の塗装焼付時におけ
る焼付硬化性(BH)が、70MPa 程度と低いという問題
もあった。この加工・焼付硬化量(WH+BH)が低い
と、加工・塗装後における強度保証の面での不利が大き
い。
【0004】一方、耐衝撃特性に優れた高強度熱延鋼板
としては、特開平9−111396号公報に開示されているよ
うに、フェライトとマルテンサイトの2相組織になるい
わゆるDual Phase鋼(以下DP鋼という)が開発されて
いる。しかしながら、このDP鋼は、耐衝撃特性には優
れるものの、伸びが十分とはいえず、成形性の点に問題
を残していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したとおり、現在
までのところ、十分な成形性と厳しい安全性の両者を満
足する熱延鋼板は見当たらず、その開発が望まれてい
た。また、TRIP鋼などにおいては、鋼板製造の際に
通常の酸洗を行っただけでは鋼板表面にSi酸化物が残存
する場合があり、このSi酸化物に由来して化成処理性が
劣化し、塗装後の耐食性が十分でない場合があった。自
動車用鋼板としての用途においては、塗装後において良
好な耐食性を有することも求められることから、塗装後
の耐食性を改善することもまた、望まれていた。
【0006】この発明は、上記の要望に有利に応えるも
ので、優れた成形性、耐衝撃特性、加工・塗装硬化量を
そなえ、かつ塗装後の耐食性に優れる高強度高加工性熱
延鋼板を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】以下、この発明の解明経
緯について説明する。さて、発明者らは上記の目的を達
成すべく、まず高強度高加工性熱延鋼板に関して、優れ
た耐衝撃特性を具備させるための方策についての開発を
進めた。その結果、耐衝突安全性、換言すれば耐衝撃特
性については従来、強度との関連で考察され、単に強度
が大きければ耐衝突安全性も高いと考えられてきたが、
強度と耐衝突安全性とは必ずしも一義的な関係にあるわ
けではないことが判明した。そこで、この点につき、鋭
意研究を重ねた結果、耐衝突安全性を向上させる、つま
り高速での変形時(自動車の衝突時にはひずみ速度
【外1】 が2×103/s まで増加)におけるエネルギーを、鋼板で
より多く吸収するためには、鋼板を
【外2】 の条件で引張変形させた時のn値(以下、動的n値とい
う)を高くすることが有効であることが解明されたので
ある。ここでは、伸び10%における瞬間n値を、動的n
値の代表とする。しかも、この動的n値を高くすること
は、高速変形時における強度向上にも有効であることが
併せて見出された。
【0008】そこで、具体的な鋼板の目標特性として、
強度−伸びバランス(TS×El)を 24000 MPa・%以上と
する他に、発明者らが耐衝撃特性の指標として新たに見
出した、動的n値を0.35以上にすること、加工・焼付硬
化量(WH+BH)を100 MPa 以上にすることを目指し
て、更に研究開発を進めた(この動的n値を用いること
によって、耐衝撃特性を従来よりも一層的確に評価する
ことができる。)。ここに、従来鋼であるTRIP鋼に
ついて、その組織と特性との関係について調査した結
果、TRIP鋼では、成形性に有利な残留オーステナイ
トを十分な両で得るには、ベイナイト相を生成させるこ
とがが不可欠とされてきたが、このベイナイト相が耐衝
撃特性を劣化させる原因になっていることがわかった。
また、DP鋼におけるフェライト,マルテンサイト相の
他に、針状フェライト相を含む組織にすれば、DP鋼の
強度−伸びバランスを効果的に向上させ得ることを見い
だした。
【0009】そこで、発明者らは、かようなベイナイト
相、特に炭化物の生成を抑制したところ、すなわち、主
相である初析フェライト以外の第2相を針状フェライト
+マルテンサイト+残留オーステナイトの混合組織に変
更したところ、動的n値が0.30以上という、優れた耐衝
撃特性の達成に関して望外の成果が得られたのである。
【0010】しかしながら、かような初析フェライト以
外の第2相を針状フェライト+マルテンサイト+残留オ
ーステナイトの混合組織にした場合であっても、鋼板製
造の際に通常の酸洗を行っただけでは鋼板表面にSi酸化
物が残存する場合があり、このSi酸化物に由来して化成
処理性が劣化し、塗装後の耐食性が十分でない場合があ
った。そこから、かかる鋼板の塗装後の耐食性を向上さ
せることについて研究開発を行った結果、鋼板表面と鋼
板内部とのSi濃度比が1.3 以下にすることにより、塗装
後の耐食性が効果的に向上することを見いだした。この
発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0011】すなわち、この発明は、C:0.05〜0.40ma
ss%、Si:1.0 〜3.0 mass%、Mn:0.6 〜3.0 mass%及
びCr:0.2 〜2.0 mass%を含有し、残部は実質的にFeの
組成になり、初析フェライトを主相として、マルテンサ
イト、針状フェライト及び残留オーステナイトからなる
第2相を有する組織になり、鋼板表面と鋼板内部とのSi
濃度比が1.3 以下であることを特徴とする塗装後の耐食
性及び耐衝撃特性に優れる高強度高加工性熱延鋼板であ
る。
【0012】この発明では、鋼の成分組成につき、上記
した基本組成の他、オーステナイト生成成分としてP:
0.01〜0.2 mass%、 Al:0.01〜0.3 mass%のうち
から選んだ少なくとも一種を、またさらには強度改善成
分としてTi:0.005 〜0.25mass%、 Nb:0.003 〜0.
1 mass%のうちから選んだ少なくとも一種を含有させる
こともできる。
【0013】また、この発明においては、鋼組織中に占
める第2相の比率を3〜40%とすることが好ましく、さ
らに第2相における各相の比率については、マルテンサ
イト:10〜80%、残留オーステナイト:8〜30%、針状
フェライト:5〜60%とすることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体的に説明す
る。図1に、従来のTRIP鋼の代表的な連続冷却変態
曲線図(CCT図)を示す。同図に示したとおり、従来
のTRIP鋼は、熱間圧延後、初析フェライト域に若干
保持して初析フェライト(ポリゴナルフェライト)を析
出させ、同時に未変態のオーステナイト相への固溶炭素
の濃縮を促進して、オーステナイト相の安定度を増した
のち、ベイナイト域に導き、この領域を徐冷することに
よって、ベイナイト変態を生じさせつつ所定量のオース
テナイトを残留させていた。しかしながら、このように
して製造されたTRIP鋼は、強度及び加工性の面では
優れるものの、十分な耐衝撃特性が得られないことは前
述したとおりである。
【0015】そこで、発明者らは、ベイナイト変態を回
避すべく数多くの実験と検討を重ねた結果、(1) 鋼成分
としてCrを少量含有させると、上記CCT図におけるベ
イナイト変態域のノーズが後退して、ベイナイトの析出
(特に炭化物の析出)が抑制され、代わりに針状フェラ
イト(アシキュラーフェライトともいう)が析出するこ
と、及び(2) かようにして形成された、針状フェライ
ト、残留オーステナイト及びマルテンサイトからなる第
2相は、成形性を阻害することなしに、耐衝撃特性を格
段に向上させること、を究明したのである。
【0016】図2に、この発明の成分系における代表的
CCT図を示す。同図に示したとおり、Crを少量添加す
ることによってベイナイト変態域のノーズが後退し、代
わりに針状フェライト域が顕著に出現するので、この針
状フェライト域に短時間保持し、好ましくはその後に急
冷することによって、第2相を針状フェライト、残留オ
ーステナイト及びマルテンサイトからなる混合組織とす
ることができ、かくして優れた成形性と耐衝撃特性とを
兼ね備えた熱延鋼板を得ることができたのである。
【0017】ここに、針状フェライトとは、結晶粒の長
径がおおむね10μm 以下、アスペクト比が1:1.5 以
上、そして第2相中のセメンタイト析出量が5%以下の
ものをいう。なお、従来のTRIP鋼のベイナイト中に
は、セメンタイトの析出が多く認められる(10%以上)
ので、この発明の針状フェライトとTRIP鋼のベイナ
イトとは明確に区別されるものである。
【0018】図3(a) に、この発明に従い得られる第2
相の特徴的な相構成を、また図3(b) には、従来のTR
IP鋼の第2相の相構成を、それぞれ模式で示す。従来
のTRIP鋼の第2相は、ベイナイト中に残留オーステ
ナイトが点在する相構成になっているのに対し、この発
明の第2相は、針状フェライトとマルテンサイトが層状
にならび、その界面(マルテンサイト側)に残留オース
テナイトが点在する形態になっている。このように、第
2相中に針状フェライトを析出させたことが、この発明
の特徴の一つであり、この針状フェライト相がTS×Elを
増加させると共に、動的n値を向上させるものと考えら
れる。なお、発明者らの知見によれば、針状フェライト
とマルテンサイトの界面面積率が大きくなるほど、動的
n値は大きくなる傾向にあることが確認されている。
【0019】この発明において、上記した第2相の鋼組
織中に占める比率は3〜40%とすることが好ましい。と
いうのは、相比率が3%に満たないと十分な耐衝撃特性
が得られず、一方40%を超えると伸びが低下するからで
ある。より好ましい比率は10〜30%である。なお、この
発明において、相比率は、鋼試料を研磨後、2%硝酸+
エチルアルコール溶液でエッチングし、顕微鏡写真を画
像解析することによって測定した。
【0020】また、第2相における各相の比率について
は、マルテンサイト:10〜80%(好ましくは30〜60
%)、残留オーステナイト:8〜30%(好ましくは10〜
20%)、針状フェライト:5〜60%(好ましくは20〜5
0)とすることが望ましい。というのは、マルテンサイ
トの比率が10%に満たないと十分な耐衝撃特性が得られ
ず、一方80%を超えると伸びが低下するからである。ま
た、残留オーステナイトの比率が8%に満たないと十分
な伸びが得られず、一方30%を超えると耐衝撃特性が低
下する。更に、針状フェライトの比率が5%に満たない
と耐衝撃特性が低下し、一方、60%を超えると伸びが低
下する。
【0021】なお、鋼組織全体に占める各相の比率とし
ては、マルテンサイト、針状フェライトは、それぞれ5
〜15%程度、残留オーステナイトは2〜10%程度とする
のが好適である。また、この発明において、鋼組織は主
相である初析フェライトと、第2相であるマルテンサイ
ト、針状フェライト及び残留オーステナイトの混合相か
らなっている場合の他に、ベイナイト相などが若干析出
する場合もあるが、かような第3相が混入してもその比
率が第2相全体の10%以下であれば特性上何ら問題はな
い。
【0022】次に、この発明において、鋼板の成分組成
を前記の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.05〜0.40mass% Cは、鋼の強化に有効に寄与するだけでなく、残留オー
ステナイトを得る上でも有用な成分である。しかしなが
ら、含有量が0.05mass%未満では、その効果に乏しく、
一方0.40mass%を超えると延性を低下させるので、C量
は0.05〜0.40mass%の範囲に限定した。
【0023】Si:1.0 〜3.0 mass% Siは、残留オーステナイトの生成に不可欠な成分であ
り、そのためには少なくとも 1.0mass%の添加を必要と
するが、 3.0mass%を超える添加は、延性の低下を招く
だけでなく、スケール性状を低下させ表面品質上も問題
となるので、Si含有量は 1.0〜3.0 mass%の範囲に限定
した。
【0024】Mn:0.6 〜3.0 mass% Mnは、鋼の強化成分として有用なだけでなく、残留オー
ステナイトを得る上でも有用な成分である。しかしなが
ら、含有量が 0.6mass%未満ではその効果に乏しく、一
方 3.0mass%を超えると延性の低下を招くので、Mn量は
0.6〜3.0 mass%の範囲に限定した。
【0025】Cr:0.2 〜2.0 mass% このCr添加は、この発明の特徴の一つである。Crを添加
することにより、前述したように、第2相が針状フェラ
イト化する。そのためには、0.2 mass%以上の添加が必
要であるが、 2.0mass%を超えて添加すると粗大Cr炭化
物が生成して延性が阻害され、強度−伸びバランス及び
動的n値とも劣化するので、Cr量は 0.2〜2.0 mass%の
範囲に限定した。好ましくは0.3 mass%以上1.8 mass%
以下である。
【0026】図4及び図5に、Cr量と強度−伸びバラン
ス及び動的n値との関係について調べた結果をそれぞれ
示す。図4,5より明らかなように、Cr含有量が 0.2ma
ss%以上、 2.0mass%以下の範囲で、TS×El≧24000 (M
Pa・%)、動的n値≧0.35の優れた加工性及び耐衝撃特性
が得られている。
【0027】以上、基本成分について説明したが、この
発明では、オーステナイト生成成分としてPやAl、また
強度改善成分としてTiやNbを、以下の範囲で適宜含有さ
せることができる。 P:0.01〜0.2 mass% Pは、残留オーステナイト生成成分として有用である
が、含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏
しく、一方 0.2mass%を超えると耐二次加工性が劣化す
るので、添加する場合には0.01〜0.2 mass%の範囲とす
ることが望ましい。
【0028】Al:0.01〜0.3 mass% Alも、Pと同様、残留オーステナイト生成成分として有
用なものであるが、含有量が0.01mass%に満たないとそ
の添加効果に乏しく、一方 0.3mass%を超えると延性の
低下を招くので、添加する場合には0.01〜0.3 mass%の
範囲とすることが望ましい。
【0029】Ti:0.005 〜0.25mass%、Nb:0.003 〜0.
1 mass% Ti及びNbはいずれも、主相であるフェライトの細粒化に
より強度の向上に有効に寄与するので、必要に応じて添
加することができる。さらに、Tiにおいては針状フェラ
イトのノーズが短時間側に移動し、コイルミドル部と比
較して冷却速度が早くなるコイル端部でも十分針状フェ
ライトが析出するので、歩留まりが向上する効果もあ
る。しかしながら、含有量があまりに少ないとその添加
効果に乏しく、一方、過度の添加は延性の低下を招くの
で、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。な
お、その他の元素については、成形性を維持するために
Sは0.01%以下、Nは0.01%以下とすることが好まし
い。
【0030】次に、この発明において、鋼板表面と鋼板
内部とのSi濃度比を1.3 以下に限定した理由について説
明する。この発明の鋼のように、Siを1.0 %以上含有す
る鋼においては、熱間圧延中にSi酸化物が表面に形成さ
れ易い。このSi酸化物は、通常の酸洗では完全に除去さ
れずに残存することがあり、これが製品の塗装後の耐食
性を劣化させる原因となっていた。鋼板表面にSi酸化物
が残存すると、鋼板表面のSi濃度が上昇する。そこで、
この発明では、鋼板表面と鋼板内部とのSi濃度比を1.3
以下にすることにより、鋼板表面にSi酸化物が塗装後の
耐食性を劣化させる程に残存させないようにして、優れ
た塗装後の耐食性を得るのである。この発明の成分組成
になる種々の鋼について、酸洗後の鋼板のSi濃化比を鋼
板表面を砥粒入りナイロンブラシにより軽く研削するこ
とによって種々に変化させた場合の、酸洗後の鋼板表面
及び酸洗後の鋼板を0.5 mm研削した表面(地鉄のSi濃度
に対応)の各Si強度(cps) を、蛍光X線分析により測定
してSi濃度比を求めるとともに、塗装後の耐食性につい
て、化成処理後、電着塗装を行った後塗膜部に傷を入れ
るクロスカットを行い、その後55℃、5%のNaCl溶液に
10日間浸漬させ、クロスカット部に幅25mmの粘着性のセ
ロファンテープを張りつけてはがす、塗膜のテープ剥離
試験を行った。剥離幅が両側で5mm以内であれば実用上
問題のない範囲である。結果を表1に示す。なお、表中
の評価において、○印が剥離幅(両側)5mm、以下、×
印が剥離幅5mmを超えを示す。この表1より、鋼板表面
と鋼板内部とのSi濃度比を1.3 以下にすることにより、
良好な塗装後の耐食性が得られることが明らかである。
【0031】
【表1】
【0032】鋼板表面と鋼板内部とのSi濃度比は、酸洗
後の鋼板表面及び酸洗後の鋼板を0.5 mm研削した表面の
それぞれについて、蛍光X線分析により各々同一面積で
Si強度(cps) を測定してSi濃度とし、その値の比により
求める。また、鋼板表面と鋼板内部とのSi濃度比を1.3
以下にする具体的手段については、特に限定するもので
はないが、例えば、(1) 粗圧延と仕上圧延との間に衝突
圧25kgf/cm2 以上の高圧デスケーリングを行うこと、
(2) 巻取から酸洗までの間にショットブラスト処理及び
/又はテンションレベラあるいはスキンパスで1〜3%
程度の軽圧下処理を行うこと、(3) 酸洗後に研削を行う
こと、を単独で又は適宜組み合わせて行えばよい。
【0033】次に、この発明鋼の製造方法について説明
すると、この発明鋼は、要するに、第2相としてマルテ
ンサイト、針状フェライト及び残留オーステナイトから
なる混合組織を形成させれば良いのであるから、所定の
成分組成範囲になる鋼を前掲図2に示した冷却曲線に沿
って、冷却させれば良い。すなわち、 780〜980 ℃程度
で熱間仕上げ圧延後、 620〜780 ℃の初析フェライト域
のノーズ近傍まで冷却したのち、この温度域に1〜10秒
程度保持(又は緩冷却)することにより、主相である初
析フェライトを析出させると共にγ相への固溶Cの濃化
を促進し、ついで 350〜500 ℃の針状フェライト域まで
冷却し、この領域に2〜60分程度保持(又は緩冷却)
後、50℃/h以上の温度で室温まで冷却することにより、
針状フェライト、マルテンサイト及び残留オーステナイ
トからなる第2相を形成させるのである。そして、鋼板
表面と鋼板内部とのSi濃度比を1.3 以下にするために、
上述したような、(1) 粗圧延と仕上圧延との間の衝突圧
25kgf/cm2 以上の高圧デスケーリング、(2) 巻取から酸
洗までの間のショットブラスト処理及び/又はテンショ
ンレベラあるいはスキンパスで軽圧下処理、(3) 酸洗後
の研削を単独で又は組み合わせて行う。
【0034】
【実施例】表2に示す種々の成分組成になる鋼スラブ
を、1200℃に加熱後、粗圧延し、ついで仕上げ温度:86
0 ℃で熱間仕上げ圧延を終了したのち、60℃/sの速度で
700℃まで冷却し、この温度に10秒保持してから、同じ
く60℃/sの速度で450 ℃まで冷却したのち、コイルに巻
取り、巻取り後15分間保持してから、100 ℃/hr の速度
で室温まで冷却した。なお、各鋼ともSは10〜20ppm 、
Nは20〜30ppm の範囲内であった。かかる製造工程中、
幾つかの試料については、鋼板表面と鋼板内部とのSi濃
度比を1.3 以下にするために、酸洗後、砥粒入りナイロ
ンブラシによる研削あるいは酸洗前にスキンパス圧延を
行った。得られた鋼板から、引張試験片を切り出し、そ
れらの試験片について、ひずみ速度:2×10-2/sの条件
で引張試験を実施し、降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)及び
伸び(El)を求めた。次に、ホプキンソンプレッシャーバ
ー試験材を用いて、(参照:材料とプロセスvol.9 (199
6) p.1108-1111)ひずみ速度:2×103/s の条件で引張
試験を実施し、伸びが10%の時の瞬間n値(動的n値)
を求めた。さらに、プレス成形時における加工硬化量
(WH)およびその後の塗装焼付(170 ℃)後における
焼付硬化量(BH)についても測定した。なお、WH、
BHは、ひずみ速度: 2×10-2/sの引張試験機を用
い、図6により求めた。また、Si濃化比を酸洗後あるい
は研削後の鋼板表面及びこれらの鋼板を0.5mm研削した
表面のそれぞれについて、蛍光X線分析によりSi強度(c
ps) を測定し、その値の比により求めた。更に、塗装後
の耐食性について、りん酸亜鉛の化成処理後、電着塗装
を行い、その後55℃、5%%のNaCl溶液に10日間浸漬さ
せ、ブリスターの発生にて評価した。これらの結果を整
理して表3に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】表3に示したとおり、この発明に従い、第
2相として、マルテンサイト、針状フェライト及び残留
オーステナイトの混合組織を形成させ、かつ、Si濃度比
を1.3 以下にしたものはいずれも、TS×El≧24000MPa・
%の優れた強度−伸びバランス、動的n値≧0.35の優れ
た耐衝撃特性及びWH+BH≧100 MPa の優れた加工・
焼付硬化性が得られているとともに、優れた塗装後の耐
食性が工業的に安定して得られている。
【0038】
【発明の効果】かくして、この発明に従い、主相を初析
フェライトとし、かつ第2相をマルテンサイト、針状フ
ェライト及び残留オーステナイトの混合組織とし、鋼板
表面と鋼板内部とのSi濃度比が1.3 以下とするすること
により、優れた成形性と耐衝撃特性とを兼ね備え、優れ
た塗装後の耐食性を有する熱延鋼板を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のTRIP鋼の代表的な連続冷却変態曲線
図(CCT図)である。
【図2】この発明の成分系における代表的連続冷却変態
曲線図(CCT図)である。
【図3】(a) この発明に従い得られる第2相の特徴的な
相構成及び(b) 従来のTRIP鋼の第2相の相構成を示
す模式図である。
【図4】Cr量と強度−伸びバランスとの関係を示すグラ
フである。
【図5】Cr量と動的n値との関係を示すグラフである。
【図6】加工硬化量(WH)および焼付硬化量(BH)
の説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金子 真次郎 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 高木 周作 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 古君 修 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.05〜0.40mass%、 Si:1.0 〜3.0 mass%、 Mn:0.6 〜3.0 mass%及び Cr:0.2 〜2.0 mass% を含有し、残部は実質的にFeの組成になり、初析フェラ
    イトを主相として、マルテンサイト、針状フェライト及
    び残留オーステナイトからなる第2相を有する組織にな
    り、鋼板表面と鋼板内部とのSi濃度比が1.3 以下である
    ことを特徴とする塗装後の耐食性及び耐衝撃特性に優れ
    る高強度高加工性熱延鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1において、鋼組成が、さらに P:0.01〜0.2 mass%及び Al:0.01〜0.3 mass% のうちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になる
    ことを特徴とする塗装後の耐食性及び耐衝撃特性に優れ
    る高強度高加工性熱延鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、鋼組成が、さ
    らに Ti:0.005 〜0.25mass%及び Nb:0.003 〜0.1 mass% うちから選んだ少なくとも一種を含有する組成になるこ
    とを特徴とする塗装後の耐食性及び耐衝撃特性に優れる
    高強度高加工性熱延鋼板。
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