JPH11509088A - 血管内皮増殖因子受容体をコードする遺伝子の転写調節 - Google Patents
血管内皮増殖因子受容体をコードする遺伝子の転写調節Info
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- JPH11509088A JPH11509088A JP9503975A JP50397597A JPH11509088A JP H11509088 A JPH11509088 A JP H11509088A JP 9503975 A JP9503975 A JP 9503975A JP 50397597 A JP50397597 A JP 50397597A JP H11509088 A JPH11509088 A JP H11509088A
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、下記DNAに機能的に連結されているポリペプチドコード配列またはアンチセンス鋳型の内皮細胞特異的転写を指令することができる内皮細胞特異的プロモーター配列を含んでなる実質的に純粋なDNAを特徴とする。本発明はまた、内皮細胞の増殖を抑制または増強する化合物の同定方法を特徴とする。
Description
【発明の詳細な説明】
血管内皮増殖因子受容体をコードする遺伝子の転写調節
発明の背景
本発明は内皮細胞特異的遺伝子転写およびTNF−αによる転写調節に係る。
血管内皮増殖因子(VEGF)は有力で特異的な内皮細胞マイトジェンである
(Connolly ら,1989,J.Clin.Invest.84:1470-1478; Leungら,1989,Scienc
e 246:1306-1309)。VEGFは、その受容体、すなわちキナーゼ−インサート
ドメイン含有受容体/胎児肝キナーゼ−1(KDR/flk−1)およびflt
1との相互作用を介して、血管内皮細胞の増殖および維持において、また新たな
血管の生理学的・病理学的状態における発生において重要な役割を果たす(Aiell
o ら,1994,New Engl.J.Med.331:1480-1487; Shweikiら,1992,Nature 359
:843-845; Berkman ら,1993,J.Clin.Invest.91:153-159)。VEGFの胚発
現のパターンは、血管芽細胞からの内皮細胞の分化および増殖のあらゆる段階に
おける血管の発生にVEGFが極めて重要であることを示唆している(Jakemanら
,1993,Endocrinology 133:848-859; Breier ら,1992,Development 114:521-
532)。多くの可能な血管新生因子の中でVEGFは、正常な発生において特異的
な血管新生機能を示唆する発現、分泌および活性のパターンをもつ唯一のもので
ある(Klagsbrunら,1993,Current Biology 3:699-702)。
VEGFに対する親和性が高い受容体は内皮細胞にのみ見られ、大血管および
微小血管の内皮細胞上で、また静止期および増殖期の内皮細胞においてVEGF
結合が立証されている(Jakemanら,1993,Endocrinology 133:848-859; Jakeman
ら,1992,Clin.Invest.89:244-253)。アフィニティークロスリンキングアッ
セイおよび競合結合検定法によってVEGF受容体の候補としてチロシンキナー
ゼのKDR/flk−1およびflt1が同定されている(de Vries ら,1992,
Science 255:989-991; Millauerら,1993,Cell 72:835-846; Terman ら,1992
,Biochem.Biophys.Res.Commun.187:1579-1586)。これら2つの受容体チロ
シンキナーゼは、類似する7つの細胞外免疫グロブリンドメインと、キナーゼイ
ン
サートによって中断された保存細胞内チロシンキナーゼドメインを含有しており
(de Vries ら,1992,Science 255:989-991; Matthews ら,1991,Proc.Natl.
Acad.Sci.U.S.A.88:9026-9030; Termanら,1001,Oncogene 6:1677-1683)、
またin vivoで内皮細胞によって特異的に発現される(Millauer ら,1993,Cell
72:835-846; Peters ら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8915-8919; Qu
innら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7533-7537; Yamaguchiら,1993
,Development 118:489498)。発育中のマウスにおけるin situハイブリダイゼ
ーションにより、発生のあらゆる段階の内皮細胞で、また内皮細胞前駆体が最初
に現れる血島でKDR/flk−1が発現されることが立証された(Milauerら,
1993,Cell 72:835-846)。KDR/flk−1は発生の最も初期の段階の内皮細
胞前駆体のマーカーである(Yamaguchiら,1993,Development 118:489-498)。
血管内皮は、血栓症や血栓崩壊を始めとする生理反応、リンパ球やマクロファ
ージのホーミング、免疫応答のモジュレーション、および血管トーヌスの調節に
とって極めて重要である。内皮はまた、アテローム性動脈硬化のような血管疾患
の病因とも密接に関連している(Ross,1993,Nature 362:801-809)。内皮で発現
されるいくつかの遺伝子が特性決定されているが(Collinsら,1991,J.Biol.C
hem.266:2466-2473; Iademarco ら,1992,J.Biol.Chem.267:16323-16329;
Jahroudiら,1994,Mol.Cell.Biol.14:999-1008; Lee ら,1990,J.Biol.C
hem.265:10446-10450)これらの遺伝子の発現は、血管内皮に限定されない(た
とえば、フォンビルブラント因子、エンドセリン−1、血管細胞接着分子−1を
コードする遺伝子)か、または内皮細胞の特定の亜集団(subpopulation)に限定
される(たとえば、内皮−白血球接着分子−1の遺伝子)。
発明の概要
本発明は、ポリペプチドをコードする配列と機能的に連結されたときにその配
列の内皮細胞特異的転写を調節する実質的に純粋なDNA、すなわちプロモータ
ー配列を特徴とする。本発明のDNAはKDR/flk−1プロモーターの−2
25から−164までのヌクレオチドと実質的に同一の配列、すなわち5′TTGT
TGCTCTGGGATGTTCTCTCCTGGGCGACTTGGGGCCCAGCGCAGTCCAGTTGTGTGGG3′(配列番号
1)を含有する。「実質的に同一の」とは、少なくとも80%が基準DNA配列
と等しいこと、すなわち、基準DNA配列の塩基対の20%までを他の塩基対で
置き換える(たとえば、G−Cの代わりに、A−T、T−AまたはC−Gとする
)ことができるが、そのように変化した配列の転写促進活性は基準配列の活性と
同じかそれ以上であることを意味する。またこのDNAは、KDR/flk−1
プロモーターの−95から−77までのヌクレオチドと実質的に同一の配列、す
なわち5′GCTGGCCGCACGGGAGAGC3′(配列番号2)、KDR/flk−1プロ
モーターの−95から−60までのヌクレオチドと実質的に同一の配列、すなわ
ち5′GCTGGCCGCACGGGAGAGCCCCTCCTCCGCCCCGGC3′(配列番号3)、KDR/f
lk−1プロモーターの+105から+127までのヌクレオチドと実質的に同
一の配列、すなわち5′GGATATCCTCTCCTACCGGCAC3′(配列番号4)、またはこ
れらの組合せを含んでいてもよい。配列は5′から3′に向かって配列番号1、
配列番号2、配列番号3および配列番号4の配向であるのが好ましい。しかし、
これらの配列の配向は、内皮細胞特異的転写を促進するものであればいずれも本
発明の範囲内である。本DNAは規定された配列の任意の2つの間、および/ま
たはその一端もしくは両端に非特異的配列を含んでいてもよい。この非特異的配
列(すなわち、配列番号1〜4以外の配列、はプロモーター配列全体の80%ま
でを構成しているのが好ましい。最も好ましいのは、表1(配列番号5)または
表2(配列番号6)に示した配列と実質的に等しいものである。
本明細書で使用する「実質的に純粋なDNA」とは、天然の状態では隣接して
いる(flank)配列から分離・精製されたDNA、すなわち、通常は隣接している
配列(たとえば、天然に存在するゲノム中で当該DNA断片に隣接する配列)か
ら分離・取出されたDNA断片をいう。
KDR/flk−1プロモーターの−225から+268までのヌクレオチド
(配列番号5、表1)またはKDR/flk−1プロモーターの−225から+
127までのヌクレオチド(配列番号6、表2)と実質的に同一の配列を含有す
る実質的に純粋なDNAであって、ポリペプチドコード配列または当該DNAが
機能的に連結されたアンチセンス鋳型の内皮細胞特異的転写を調節するものも本
発明の範囲内である。
本発明のDNAは、KDR/flk−1ではないポリペプチドをコードする配
列に機能的に連結することができ、その配列の内皮細胞特異的転写を調節するよ
うに機能する。そのようなポリペプチドの例としては、組織プラスミノーゲン活
性化因子(tPA)、p21細胞周期インヒビターおよび酸化窒素シンターゼが
ある。「機能的に連結する」とは、同じDNA鎖上で下流に位置するポリペプチ
ドコードまたはアンチセンス鋳型に対応するmRNAの転写を促進することがで
きるということを意味している。
また本発明は、本発明のDNAを含有するベクター、このベクターを内皮細胞
中に導入することによってポリペプチドを内皮細胞に特異的に発現させる方法、
およびそのベクターを含有する内皮細胞も包含する。
本発明のベクターは遺伝子療法に用いることができ、たとえば、動脈硬化症の
発生を低減または予防することができるポリペプチド(たとえば、平滑筋の増殖
を低減させるポリペプチド、たとえばインターフェロン−γや心房性ナトリウム
利尿ポリペプチド)を産生させる本発明のベクターを動物の動脈に接触させるこ
とを含む動物の動脈硬化症を抑制する方法に用いることができる。
さらに本発明はアンチセンス療法を実施するための組成物と方法も包含する。
たとえば、本発明は、機能的に連結されたときにアンチセンス鋳型(たとえば、
その転写産物がmRNAから内皮細胞ポリペプチドへの翻訳を抑制するようなア
ンチセンス鋳型)の内皮細胞特異的転写を調節する配列番号1と実質的に同一の
配列をもつ実質的に純粋なDNAを包含する。「アンチセンス鋳型」という用語
は、mRNAとハイブリダイズするRNAに転写されるDNAを意味する。上記
内皮細胞ポリペプチドはKDR/flk−1が好ましい。たとえば、血管新生に
関与するタンパク質であるKDR/flk−1をコードするmRNAに結合する
ことによってその翻訳を抑制または低減するアンチセンスRNA転写物を用いて
、動物の腫瘍部位と本発明のDNAとを接触させてその腫瘍部位における血管新
生を低減または抑制することによって癌を治療することができる。
この方法で他の内皮細胞ポリペプチドの翻訳も低減または抑制することができ
る。たとえば、細胞周期タンパク質、凝固因子(たとえばフォンビルブラント因
子)、および内皮細胞接着因子(たとえば細胞間接着分子−1(ICAM−1)
または血管細胞接着分子−1(VCAM−1))の翻訳を低減または抑制するこ
とができる。
本発明はまた、ある候補化合物が、TNF−αダウンレギュレーションVEG
F受容体(たとえば、KDR/flk−1またはflt1)遺伝子発現をモジュ
レートする能力を測定する方法も特徴とする。この方法では、機能的にリポータ
ー遺伝子に結合したVEGF受容体遺伝子のプロモーターを含有する細胞をTN
F−αおよび候補化合物の存在下で培養する。次いで、その候補化合物がVEG
F受容体遺伝子発現のTNF−αによるダウンレギュレーションをモジュレート
できる能力の尺度として、リポーター遺伝子の発現レベルを測定する。
本発明に包含される他の方法では、ある候補化合物がVEGFにより誘導され
る内皮細胞増殖のTNF−αによる抑制をモジュレートできる能力を測定する。
この方法では、TNF−α、VEGF、および候補化合物の存在下で内皮細胞を
培養する。その候補化合物がVEGFにより誘導される内皮細胞増殖のTNF−
αによる抑制をモジュレートできる能力の尺度として、内皮細胞増殖レベルを
(たとえば、[メチル−[3H]チミジンの取込みを測定することによって)決
定する。
また本発明は、VEGF受容体(たとえば、KDR/flk−1またはflt
1)遺伝子の内皮細胞内での発現をダウンレギュレートするTNF−α経路を活
性化する非TNF−α化合物を患者に投与することを含む、患者における血管新
生を抑制する方法も特徴とする。
患者における血管新生を抑制するための本発明の別の方法では、VEGF受容
体(たとえば、KDR/flk−1またはflt1)遺伝子のプロモーター中の
TNF−α応答性エレメントに結合することによってVEGF受容体遺伝子の内
皮細胞内での発現を抑制するポリペプチドを患者に投与することを含む。
さらに本発明は、内皮細胞内においてVEGF受容体(たとえば、KDR/f
lk−1またはflt1)遺伝子をダウンレギュレートするTNF−α経路を抑
制する非TNF−α化合物を患者に投与することを含む、患者における血管新生
を増強する方法も特徴とする。
本発明のその他の特徴と利点は、本発明の好ましい態様に関する以下の説明、
図面および請求の範囲から明らかとなるであろう。
詳細な説明
まず図面について説明する。
図面
図1Aは、ヒトKDR/flk−1プロモーターを示す。制限酵素部位はヌク
レオチド配列の上に示し、ヌクレオチド配列−780〜+487(配列番号7)
はヌクレオチド配列の左に番号を付した。転写開始部位は曲がった矢印で示して
ある。シス作用性エレメントとして可能性のある部分に下線を付した。リボプロ
ーブを作成するのに使用したPstI部位には二重の下線を付し、プライマー伸
長に用いたオリゴヌクレオチドに対応する配列は矢印の下線を付した。
図1Bは、マウスKDR/flk−1プロモーターを示す。制限酵素部位をヌ
クレオチド配列の上に示す。図1Aと同様にして、ヌクレオチド配列−295〜
+205(配列番号8)に番号を付し、可能なシス作用性エレメントを示す。星
印はcDNAの5′端を示す。
図2Aは、KDR/flk−1転写開始部位のプライマー伸長解析の結果を示
す電気泳動ゲルの写真である。図1Aの矢印で下線を付したオリゴヌクレオチド
を、ヒト腺静脈内皮細胞(HUVEC)およびHeLa細胞の全RNAの20μ
gまたはポリA+ HUVEC RNAおよび酵母tRNAの3μgとハイブリダ
イズさせた。伸長産物を8%ポリアクリルアミドゲル(レーン1〜4:酵母tR
NA、HeLa全RNA、HUVEC全RNA、およびHUVECポリA+ RN
A)で解析した。このプライマー伸長解析の次にプラスミドDNA鋳型上で(同
じオリゴヌクレオチドプライマーを用いて)開始した(primed)Sanger配列決定反
応を実施した(レーン5〜8:G、A、T、C)。
図2Bは、リボヌクレアーゼ保護によりKDR/flk−1遺伝子の転写開始
部位をマッピングする戦略を示す概略図である。
図2Cは、KDR/flk−1転写開始部位のリボヌクレアーゼ保護解析を示
す電気泳動ゲルの写真である。HUVECおよびHeLa細胞由来の全RNAま
たはポリA+ HUVEC RNAならびに酵母tRNAを、ヒトKDR/flk
−1遺伝子のすぐ5′領域を含む559bpの32P標識リボプローブと共にイン
キュベートした。アニーリング産物をRNaseで消化した。保護された断片を
4%ポリアクリルアミドゲル上で解析した。サイズマーカー(bp)は、Hae
IIIで消化したΦX174RF DNAを放射性標識することによって調製した
。
図3Aは、KDR/flk−1プロモーター中の5′欠失部位の位置を示す図
である。欠失部位の位置は既知の核タンパク質のコンセンサス配列に関連して示
す。
図3Bは、一連の5′欠失を含有するルシフェラーゼリポーター構築物をウシ
大動脈内皮細胞(BAEC)中にトランスフェクトすることによってヒトKDR
/flk−1プロモーターを機能解析した結果を示す棒グラフである。いずれの
構築物もトランスフェクション効率を補正するためにpSVβgalと共に同時
トランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性はpGL2コントロールに対するパー
セントとして表わした(平均±SEM)。
図4Aは、KDR/flk−1プロモーター中の3′欠失部位の位置を示す図
である。欠失部位の位置は既知の核タンパク質のコンセンサス配列に関連して示
す。
図4Bは、BAEC内のKDR/flk−1プロモーター活性に関する3′欠
失の機能解析の結果を示す棒グラフである。ルシフェラーゼ活性はpGL2コン
トロールのパーセントとして表わしてある。
図5は、KDR/flk−1プロモーター活性に対するGATA部位突然変異
の影響を示す棒グラフである。+107位のGATAモチーフの突然変異はKD
R/flk−1プロモーターが転写を指令する能力を低下させない。BAECに
トランスフェクトしたとき、プラスミドpGL2-225+268は、SV40プロモーター
およびエンハンサーを含有するpGL2コントロールによって指令される発現と
同程度にルシフェラーゼ発現を指令した。+107のGATA部分の3bpを変
異させてpGF2 GATA-MUTを創製したとき、プロモーター活性に大きな違いはなか
った。
図6Aは、KDR/flk−1 RNA発現が培養内皮細胞に制限されている
ことを示すノーザンブロット解析の写真である。培養細胞からRNAを抽出し、
ヒトKDR/flk−1 cDNAプローブを用いてノーザンブロットによって
解析した。次の細胞タイプを試験した。HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)、H
ASMC(ヒト大動脈平滑筋細胞)、HISMC(ヒト腸平滑筋細胞)、繊維芽
細胞(ヒト培養繊維芽細胞)、RD(ヒト胚性横紋筋肉腫細胞)、HeLa(ヒ
ト類表皮癌腫細胞)、HepG2(ヒト肝癌細胞)、MCF7(ヒト乳腺癌細胞
)およびU937(ヒト組織球リンパ腫細胞)。
図6Bは、各レーンに負荷されたRNAの量を示すために(リボソームRNA
を可視化するべく)臭化エチジウムで染色した図6Aに示したものと同じアガロ
ースゲルの写真である。
図7は、ルシフェラーゼアッセイの結果を示す棒グラフである。KDR/fl
k−1プロモーターの高レベルの活性が内皮細胞に特異的であることが判明した
。ルシフェラーゼリポーター構築物pGL2-4kb+296を培養細胞にトランスフェクト
し、pSVβgalによる同時トランスフェクションを追跡することによってト
ランスフェクション効率を評価した。結果はトランスフェクション効率に関して
補正
し、各細胞タイプについてpGL2コントロール活性に対するパーセントとして
表わしてある。次の細胞タイプを試験した。BAEC(ウシ大動脈内皮細胞)、
JEG−3(ヒト絨毛腺癌細胞)、Saos−2(ヒト骨肉腫細胞)、A7r5
(ラット胎児平滑筋細胞)、3T3(マウス繊維芽細胞)およびHeLa(ヒト
類表皮癌腫細胞)。
図8は、メチル−[3H]チミジンの取込み量として測定された、VEGFに
よって誘導されるHUVECの増殖に対するTNF‐αの影響を示す棒グラフで
ある。
図9Aは、HUVECにおけるKDR/flk−1 mRNA発現のTNF‐
αにより誘導されるダウンレギュレーションの経時的ノーザンブロット解析の写
真である。時間の点は、図9Bに示されているように左から右にかけて0時、1
時、2時、3時、6時、12時、24時である。
図9Bは、図9Aの写真に示したKDR/flk−1 mRNA発現のTNF
‐αにより誘導されるダウンレギュレーションの経時的結果を示す棒グラフであ
る。
図10Aは、HUVECにおけるKDR/flk−1 mRNA発現のTNF
‐αにより誘導されるダウンレギュレーションの用量‐応答実験のノーザンブロ
ット解析の写真である。図10Bに示されているように、左から右にかけて1ng
/ml、0.1ng/ml、1ng/ml、10ng/ml、50ng/ml、100ng/mlのTN
F−αを使用した。
図10Bは、図10Aの写真に示したHUVECにおけるKDR/flk−1
mRNA発現のTNF‐αにより誘導されるダウンレギュレーションの用量‐
応答実験の結果を示す棒グラフである。
図11は、アクチノマイシンD(ACD)がHUVECにおいてKDR/fl
k−1のRNAレベルに及ぼす影響を示すグラフである。
図12は、それぞれTNF−αで0時間、12時間、24時間処理したHUV
ECにおけるKDR/flk−1タンパク質の免疫沈降解析の写真である。KDR/flk−1ゲノムクローンの単離と特性決定
ヒトおよびマウスのゲノムライブラリーのスクリーニング
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって、HUVEC全R
NAから567bpのヒトKDR/flk−1cDNA断片を生成した。この断
片を[α‐32P]dCTPで放射標識し、ベクターλFixII(Stratagene,L
a Jolla,CA)中のヒト胎盤ゲノムDNAのファージライブラリーをスクリーニン
グするのに使用した。同様に、RT−PCRによってマウス肺全RNAから45
1bpのマウスKDR/flk−1 cDNAを生成し、ベクターλDashI
I(Stratagene)中のマウス胎盤ゲノムDNAのファージライブラリーをスクリー
ニングするのに使用した。ハイブリダイズするクローンを各ライブラリーから単
離・精製し、標準的手法に従ってファージDNAを調製した。
細胞培養およびmRNAの単離
BAECを単離し、10%ウシ胎児血清(HyClone,Logan,UT)、600μgの
グルタミン/ml、100ユニットのペニシリン/mlおよび100μgのストレプ
トマイシン/mlを補充したDulbecco改良Eagle培地(JRH Biosciences,Lenexa,K
S)で培養した。3〜5日毎に細胞を継代し、4〜8継代の細胞をトランスフェク
ション実験に用いた。Saos−2ヒト骨肉腫細胞(ATCC HTB−85)
、HeLaヒト類表皮癌腫細胞(ATCC CRL−7923)、HepG2ヒ
ト肝癌細胞(ATCC HB−8065)、ヒト繊維芽細胞(ATCC CRL
−1634)、U937ヒト組織球リンパ腫細胞(ATCC CRL−7939
)、RDヒト胚性横紋筋肉腫細胞(ATCC CCL−136)、MCF7ヒト
乳腺癌細胞(ATCC HTB−22)、JEG−3ヒト絨毛腺癌細胞(ATC
C HTB−36)、A7r5ラット胎児大動脈平滑筋細胞(ATCC CRL
−1444)、およびNIH3T3マウス繊維芽細胞(ATCC CRL−16
58)はAmerican Type Culture Collectionから入手した。一次培養HUVEC
はClonetics Corp.(San Diego,CA)から入手し、2%ウシ胎児血清(Clonetics)
を含有するEGM培地で増殖した。一次培養ヒト大動脈および腸平滑筋細胞もCl
onetics Corp.から入手した。細胞は、平滑筋細胞に用いた培地には25mMのH
EPES(Sigma,St.Louis,MO)を補充し、HUVECは2%のウシ胎児血
清を含有するEGM培地で培養した点を除いてすべてBAECと同じ条件下で培
養した。一次培養細胞を4〜6日毎に継代し、3〜5継代の細胞を解析した。グ
アニジニウムイソチオシアネート抽出および塩化セシウムによる遠心分離によっ
て、培養細胞の全RNAを調製した。
DNA配列決定
ヒトおよびマウスのKDR/flk−1ゲノムファージクローンに由来する制
限断片を、標準的な技術を用いてpSP72(Promega,Madison,WI)またはpBluescri
pt II SK(Stratagene)にサブクローニングし、SEQUENASE(登録商標)2.0
DNAポリメラーゼ(United States Biochemical,Cleveland,OH)を用いたジデ
オキシチェインターミネーション法によって、アルカリ変性した二本鎖プラスミ
ド鋳型から配列決定した。DNAは両方の方向から少なくとも二回配列決定し、
dGTPとdITPの両方の配列決定プロトコルを用いてヒトおよびマウスのK
DR/flk−1遺伝子の高度にGCに富む5′側フランキング領域の圧縮人工
構造を排除した。配列決定解析はGCGソフトウェアパッケージ(Genetics Comp
uter Group,Madison,WI)を用いて実施した。
プライマー伸長解析
プライマー伸長解析は公知の方法、たとえばFenら,1993,Biochemistry 32:7
932-7938の方法に従って実施した。ヒトKDR/flk−1 cDNA(図1A
)の5′端と相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマー(5′CTGTCTAGAGAAGG
AGGCGCGGAGGTGGAACT3′、配列番号9)の末端を[γ‐32P]ATPで標識し、
20μgの各RNAサンプルとハイブリダイズさせた後、これを逆転写にかけた
。伸長産物は8%変性用ポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析した。
リボヌクレアーゼ保護アッセイ
T7 RNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)を用い
たα‐32P標識アンチセンスRNAのin vitro転写のための鋳型として、ヒトK
DR/flk−1遺伝子の559bpのPstI−PstI断片(図2B)をpS
P72でクローン化した。ゲル精製したリボプローブ(5×105 cpm)を20μg
の全RNAまたは3μgのポリA RNA+17μgの酵母tRNAと、20mM
のTris−HCl、pH7.40、400mMのNaCl、1mMのEDTAおよ
び0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを75%ホルムアミド中に含有するアニー
リングバッファー中において55℃で16時間ハイブリダイズさせた。RNAが
アニーリングした後、ハイブリダイズしたRNAを、10mMのTris−HCl
、pH7.50、300mMのNaCl、5mMのEDTAを含有するバッファー中
において、200UのRNAseT1(Boehringer Mannheim)および0.3Uの
RNAseA(Boehringer Mannheim)により室温で45分間消化した。次いで、
消化生成物をプロテイナーゼKで処理し、フェノール:クロロホルムで抽出し、
4%変性用ポリアクリルアミドゲルで電気泳動させることによって解析した。
ノーザン解析
培養細胞の全RNA(10μg)を1.3%ホルムアルデヒド‐アガロースゲ
ルで分画し、ニトロセルロースフィルターに移した。ヒトKDR/flk−1
cDNAプローブをランダムプライミングにより32Pで標識した後、この標識し
たプローブを用いてフィルターにハイブリダイズさせた。次いでフィルターをKo
dak XARフィルム上で−80℃で16時間オートラジオグラフィーにかけた。
プラスミド
プラスミドpGL2 BasicおよびpGL2 Controlはホタルルシフェラーゼ遺伝子(Pro
mega)をもっていた。pGL2 Basicはプロモーターをもっていなかったが、pGL2 Co
ntrolはSV40のプロモーターおよびエンハンサーによって駆動されていた。
プラスミドpSV73GAL(Promega)はSV40のプロモーターおよびエンハンサーに
よって駆動されるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子をもっていた。
ヒトKDR/flk−1の5′側フランキング領域の断片を含有するリポータ
ー構築物をpGL2 Basicに挿入し、5′および3′方向の(転写開始部位からの)
断片の長さに従って名前を付けた。たとえば、プラスミドpGL2-4kb+296では、転
写開始部位の5′側約−4kbから位置+296まで伸びるヒトKDR/flk
−1プロモーター断片がpGL2 Basicに挿入されていた。精製したファージDNA
を、5′のBamHI部位およびPvuII部位と3′の位置+296にあるX
hoI部位とを用いて制限消化することによって、プラスミドpGL2-4kb+296およ
びpGL2-900+296をそれぞれ創製した。プラスミドpGL2-716+268、pGL2-570+268、
pGL2-323+268、pGL2-225+268、pGL2-164+268、pGL2-37+268、pGL2-225+127、pGL
2-225+105、pGL2-225+56、およびpGL2-225+5は、ヒトKDR/flk−1のPC
Rによって生成したプロモーター断片から創製した。プラスミドpGL2-116+268、
pGL2-95+268、pGL2-77+268、pGL2-60+268、およびpGL2-12+268は、プラスミドpG
L2-164+268中に含まれているプロモーター断片を、エキソヌクレアーゼIII(Phar
macia Biotech,Piscataway,NJ)により5′端から消化することによって創製し
た。プラスミドpGL2 GATA-MUTは、プラスミドpGL2 GATA-MUTではbp+108か
ら+110までが変異していることを除いて、pGL2-225+268と同一であった。す
べての構築物を5′端から3′端まで配列決定して配向と配列を確認した。
突然変異誘発
Higushi ら,1988,Nucleic Acids Res.16:7351-7367の方法を用いたPCR
によって、ヒトKDR/flk−1の5′フランキング領域の最初のエキソン内
に位置する異型GATA配列の位置指定突然変異誘発を実施した。ヒトKDR/
flk−1の−225〜+268bpまでを含有するDNA断片を鋳型として用
いた。一組のミスマッチプライマー5′TCTGGCAGCCTGGTCGTCCTCTCCTA3′(配列
番号10)および5′TAGGAGAGGACGACCAGGCTGCCAGA3′(配列番号11)ならび
に鋳型の両端につながる一組のプライマー5′TGCCTCGAGTTGTTGCTCTGGGATGTT3
′(配列番号12)および5′TGTAAGCTTGGGAGCCGGTTCTTTCTC3′(配列番号1
3)を用いて配列TGGATATCをTGGTCGTCに変異させた。突然変異させたPCR断片
の配列はジデオキシチェインターミネーション法によって確認した。
トランスフェクション
A7r5細胞を除いてすべての細胞タイプは業界で公知のリン酸カルシウム法
によってトランスフェクトした。A7r5細胞はDOTAP(Boehringer Mannhe
im)を用い、製造業者の指示通りにしてトランスフェクトした。いずれの場合も
、20μgの適当なリポーター構築物を2.5μgのpSVβgalと共にトランスフ
ェクトしてトランスフェクション効率の相違を補正した。トランスフェクション
の48時間後洗剤溶解法(Promega)によって細胞抽出物を調製した。EG&G Autolu
mat 953測光器(Gaithersberg,MD)とPromegaルシフェラーゼアッセイ系により、
すべてのサンプルについて二度ずつルシフェラーゼ活性を測定した。β‐ガラク
トシダーゼ活性は公知の方法、たとえばLee ら,1990,J.Biol.Chem.265:104
46-10450を用いてアッセイした。
各サンプルにおけるルシフェラーゼ活性とβ‐ガラクトシダーゼ活性との比を
、規格化されたルシフェラーゼ活性の尺度として用いた。この規格化されたルシ
フェラーゼ活性をpGL2 Controlの活性で除算し、相対ルシフェラーゼ活性として
表わした。各構築物を少なくとも六回トランスフェクトし、各構築物のデータを
平均±SEMとして表わす。構築物間の相対ルシフェラーゼ活性を分散の要因解
析の後Fisherの最小有意差試験によって比較した。統計的有意差はp<0.05
で許容された。
ヒトおよびマウスのKDR/flk−1ゲノムクローンの単離と特性決定
ヒト胎盤ファージライブラリーのヒトKDR/flk−1cDNAプローブに
よる最初のスクリーニングによって陽性クローンが得られ、これを制限酵素DN
Aマッピング、サブクローニングおよび配列決定によって検査した。プロモータ
ーと最初のエキソンの780bp配列を図1Aに示す。同様に、マウスKDR/
flk−IcDNAプローブを用いてマウス胎盤ファージライブラリーをスクリ
ーニングし、ひとつのクローンを同定して特性決定した。マウスKDR/flk
−1プロモーターの配列を図1Bに示す。
ヒトKDR/flk−1の転写開始部位の同定
ヒトKDR/flk−1遺伝子の転写開始部位を同定するために、+212〜
+243bpまでに相当する相補的オリゴヌクレオチドプローブ(図1Aで矢印
の下線を付した)を用いてプライマー伸長を実施した。HUVECおよびHeL
a細胞の全RNAならびにHUVECのポリA RNAについてプライマー伸長
を実施した。遺伝子転写は内皮細胞でのみ開始されることが判明した(図2A)
。翻訳開始部位、すなわちメチオニン開始コドンの5′側303bpに位置する
ヌクレオチドに対応する単一の転写開始部位が同定された。このヌクレオチドを
+
1とした。この転写開始部位を配列CCCTGCACTGA(配列番号14)中
で太字にして強調して示す(図1Aおよび2A参照)。この位置の5′CA3′
ヌクレオチド対は転写開始に関して最も良く見られる部位である。
このプライマー伸長研究の結果を確認するために、位置+146から伸びる5
59bpのゲノムPstI−PstI断片(図2B、このPstI部位は図1A
で二重の下線を付した)から生成したアンチセンスリボプローブを用いてリボヌ
クレアーゼ保護解析を実施した。このプローブを、HUVECポリA RNAお
よびHUVEC全RNAと共に、HeLa細胞の全RNAは非存在下で、インキ
ュベーションしたところ、3′PstI部位とプライマー伸長で同定された転写
開始部位との間の距離に相当する長さの単一の断片が保護された(図2C)。T
ATAコンセンサス配列がないにもかかわらず、ヒトKDR/flk−1遺伝子
の転写は翻訳開始コドンの5′側303bpに位置する単一の部位(図1A、曲
がった矢印)から始まることが判明した。
シス作用性配列の同定
ヒトKDR/flk−1遺伝子の5′フランキング配列はG残基とC残基に富
む領域を含有しており、転写開始部位の近くのTATAボックスとCCAATボ
ックスを欠いている(図1A)。この5′フランキング配列と転写因子データベ
ース(Transcription Factors Database)内の配列と比較したところ、ヒトKDR
/flk−1のヌクレオチド−124と−39との間に位置する一連の5つのS
p1部位が明らかになった。2つのAP−2コンセンサス部位が−95および−
68の位置にあり、2つの逆方向NFκB結合エレメントがSp1部位の間にあ
る−130と−83の位置にある。2つの異型GATAコンセンサス配列(いず
れもGGATAT)がKDR/flk−1プロモーター中に存在しているが、ひ
とつは−759の位置に、もうひとつは最初のエキソンの非翻訳部分内の+10
7の位置にある。加えて、多数のCANNTGエレメントがプロモーター内の一
591,−175、+71、および+184の位置にある。このCANNTGエ
レメントにはE−box結合タンパク質が結合することができる。角質細胞内で
優先的に発現する遺伝子の中に保存されている配列AAACCAAAがヒトKD
R/flk−1の−508の位置に存在する。
ヒトとマウスのKDR/flk−1プロモーターを比較して核タンパク質で保
存されているコンセンサス配列を同定した(図1B)。2種間で保存されている
エレメントとしては、報告されたマウスcDNA配列の5′端に対して−244
と−124の位置にある2つのSp1部位、−168と−148の位置にある2
つのAP−2部位、−153の位置にある非逆方向NFκB部位、および−19
5の位置にある角質細胞エレメントAAACCAAAがある。異型のGATAエ
レメント(GGATAA)がマウスプロモーターの最初のエキソンの非翻訳部分
内で+18の位置にあり、異型のGATAエレメント(GGATAT)がヒトプ
ロモーター内に同様に位置している。また、CANNTG配列が、ヒトプロモー
ターの−175の位置にあるCANNTGエレメントの位置に類似するマウスK
DR/flk−1の位置−257にあるプロモーターのGとCに富む配列の12
bp5′側に存在する。これらのエレメントの種にまたがった保存は、これらの
調節エレメントが機能上の意義をもっていることを示唆している。
ヒトKDR/flk−1プロモーターの欠失解析
内皮細胞におけるKDR/flk−1の基底発現にとって重要なDNAエレメ
ントを同定するために、プロモーター領域に順次の5′欠失を含む一連のルシフ
ェラーゼリポータープラスミドを構築した(図3Aおよび3B)。pGL2 Basic中
のこれらのプラスミド構築物を(トランスフェクション効率の相違を補正するた
めに)pSVβgalと共にBAECにトランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性をS
V40プロモーター/エンハンサーによって駆動されるpGL2 Controlベクターの
活性に対して規格化した。−4kb〜+296bpにまたがっている最長のヒト
KDR/flk−1ゲノム断片の活性は強力なSV40プロモーター/エンハン
サーの活性と類似しており、内皮細胞における高レベルのKDR/flk−1m
RNA発現と一致している。同様なレベルの活性が、15.5kbの5′フラン
キング配列を含有する構築物で生じた。−4kb〜−225bpから順次5′欠
失させたものは、プロモーター活性が有意に変化することなく、この領域のエレ
メントがKDR/flk−1プロモーターの基底活性に重要ではないことを示し
ている。−225〜−164bpの間から配列を欠失させると、KDR/flk
−1プロモーター活性は、完全なプロモーター断片の活性の63%にまで大幅
に低下した(p<0.05)。これらのデータは、この領域に正の調節エレメン
トが存在することを示している。AP−2部位をひとつとNFκB部位をひとつ
含有する配列である−95〜−77bpの間から欠失させると、さらに活性が大
きく低下してpGL2-4kb+296の活性の20%にまでなった。(p<0.05)。オ
ーバーラップするAP−2/Sp1部位を含有する領域である−77〜−60か
らさらに塩基対を欠失させると、KDR/flk−1プロモーター活性は大きく
低下してpGL2-4kb+296の5%未満であった(p<0.05)。このように、5′
欠失解析により、KDR/flk−1プロモーター中の多くの正の調節エレメン
トがこの遺伝子の高レベル発現に必要であることが判明した。
上記欠失解析は、KDR/flk−1遺伝子の5′フランキング領域内の3つ
の配列が内皮細胞における発現に重要なエレメントを含有していることを示して
いる。ヒトKDR/flk−1遺伝子中のこれら3つの正の調節エレメント内に
位置するSp1、AP−2、NFκB、およびE−boxタンパク質に対して可
能な結合部位はまた、マウスの5′フランキング配列中にも存在しており、した
がってこれらが機能的な結合ドメインであることを示唆している。AP−2は内
皮細胞遺伝子調節において立証された役割を果たすことなく発生上調節されるト
ランス作用性因子である(Mitchell ら,1991,Genes & Dev.5:105-119)。NF
κBは内皮細胞において血管細胞接着分子−1および組織因子の誘導可能な発現
をトランス活性化する(Iademarco,1992,J.Biol.Chem.267:16323-16329; Mo
ll ら,1995,J.Biol.Chem.270:3849-3857)と考えられ、組織特異的遺伝子調
節のメディエーターであることが知られている(Lenardo ら,1989,Cell 58:22
7-229)。E−boxモチーフに結合する核タンパク質にはトランス作用性因子
の基本的なヘリックス−ループ−ヘリックスファミリーが包含される。E−bo
x結合性タンパク質は内皮細胞遺伝子発現と明らかに関連してはいないが、この
ファミリーのメンバーは骨格筋およびBリンパ球を含めて多くの細胞タイプの適
格な成熟化にとって極めて重要である(Buskin ら,1989,Mol.Cell.Bio.9:26
27-2640; Murre ら,1989,Cell 58:537-544)。
ヒトKDR/flk−1の最初のエキソン内の配列が基底発現にとって重要で
あるかどうかを決定するために、完全なプロモーター活性を保有している最小の
構築物であるベクターpGL2-225+268から3′を欠失させた一連の構築物を作成し
た(図4Aおよび4B)。+105〜+127bpにわたる断片(配列番号4)
の欠失によりプロモーター活性が5倍低下した(p<0.05)が、これはこの
領域に正の調節エレメントが存在していることを示している。
ヒトKDR/flk−1の+105〜+127bp間に位置する異型GATA
部位の機能上の重要性も検査した。断片−225〜+268内のGATAモチー
フの3つの塩基対をPCRによってGTCGに変異させて変異体pGL2GAT
A−MUTを創製した。GATAモチーフ中のこれらの塩基対の変異により、エ
ンドセリン−1遺伝子プロモーターにおけるGATA−2結合活性が失われる。
対照的に、天然のpGL2-225+268プロモーター構築物と比較して、突然変異させた
異型GATA配列を含有するpGL2 GATA-MUT構築物を有するBAECではプロモ
ーター活性が大きく低下することはなかった(p<0.05、図5)。
GATAタンパク質ファミリーの4種の亜鉛フィンガー含有転写因子は、コンセン
サス配列(A/T)GATA(A/G)に結合し、多くの細胞系譜において細胞型特異的遺伝子
発現を調節する(Orkin,1992,Blood 80:575:581)。これらの中でも、GATA-2は
、内皮細胞の遺伝子発現に最も密接に関連している。GATA-2は、エエンドセリン
−1遺伝子発現のエンハンサーとして機能し、内皮細胞へのフォンビルブラント
因子の発現を制限するように作用する。ヒトKDR/flk-1 の5′側フランキング領
域は、-759位および+107位に2つの潜在的なGATA結合配列を有することがわかっ
た。-759位に位置するエレメントの欠失は、内皮細胞におけるKDR/flk-1の発現
に何の影響も及ぼさなかった。+107位にある潜在的なGATAエレメントは、現在で
は強力な正の調節エレメントとして同定されている第1エクソンの領域に位置す
る(配列番号4)。このGATA結合配列(GGATAT)は、エンドセリン−1およびビ
ルブラント因子のGATA結合配列およびコンセンサスGATA配列(A/T)GATA(A/G)とは
異なるが、このデータは、そのGATA結合配列が、+105〜+127の領域における機能
性モチーフであることを示唆する。その理由は、フォンビルブランド因子遺伝子
中の機能性GATA部位が同様に第1エクソンに位置すること、および同じようなGAT
AエレメントがマウスKDR/flk-1遺伝子の第1エクソンに見出されることによる。
このエレメントにおける3kbの突然変異(GATA→GTCG)は、エンドセリン−1プ
ロモーターにおけるでGATAシス作用性エレメントのトランス活性化を阻害するこ
とが観察されているが、この突然変異は、KDR/flk-1プロモーター活性に対して
著しい効果を全く有さないことがわかった(図5)。したがって、欠失分析およ
び突然変異誘発の研究からは、ヒト・プロモーター中の上記2つのGATA配列の、
内皮細胞における高レベル活性における機能的役割は支持されない。これらの観
察から、ヒトのKDR/flk-1遺伝子の発現にはGATAタンパク質以外の転写因子が必
要であることが示唆される。
KDR/flk-1プロモーターにより誘発される高レベルの発現は内皮細胞に特異的で
ある
KDR/flk-1発現はin vivoでは内皮細胞にかぎられているが、だからといって、
必ずしも培養下ではその発現が内皮細胞に限定されるであろう、ということには
ならない。或る組織培養系が、KDR/flk-1遺伝子の細胞型特異的調節の研究に好
適であるか否かを調べるために、培養下で種々の細胞から抽出されたRNAのノー
ザン分析を行った。KDR/flk-1のメッセージはHUVECでは検出されたが、初代培養
細胞(ヒト大動脈および腸平滑筋細胞および繊維芽細胞)またはヒト細胞系(RD
、HeLa、HepG2、MCF7、およびU937)では検出されなかった(図6Aおよび6Bを
参照)。同様に、KDR/flk-1メッセージは、HeLa、A7r5または3T3細胞ではRT-PC
Rによって検出されなかった。したがって、組織培養下でのKDR/flk-1メッセージ
の発現は、in vivoにおいてと同様に、内皮細胞に限られると思われる。
KDR/flk-1遺伝子の5′側フランキング配列が、培養細胞において内皮細胞特
異的発現を付与するできるか否かを調べるために、pGL2-4kb+296(4kb以上のヒ
トKDR/flk-1 の5′側フランキング配列を含有し、かつ、第1エクソンの非翻訳
部分の大部分を含有する)を、培養下で種々の細胞型にトランスフェクトした(
図7)。PGL2-4kb+296プロモーター断片によって駆動されるリポーター遺伝子の
発現は、強力なSV40プロモーター/エンハンサーによって駆動されるものと類似
していた。しかし、JEG-3、Saos-2、A7r5、3T3、およびHeLa細胞では、pGL2-4k
b+296プロモーターによって駆動される発現は著しく低い。このことから、これ
らのプロモーター配列による高レベルの発現の誘発が、内皮細胞に特異的である
ことが実証される。同じような発現パターンが、15.5kbのKDR/flk-1 5′側フラ
ンキング配列を含有するリポーター・プラスミドを用いて観察された。
これらのデータは、内皮細胞におけるKDR/flk-1プロモーターの活性が上記の
強力なSV40プロモーター/エンハンサーの活性と類似していること、および、こ
の高レベルの活性は内皮細胞に特異的であり、他の細胞型での活性は著しく低い
ことを示す。KDR/flk-1遺伝子を発現しない細胞型のin vitroでの一過性トラン
スフェクション・アッセイにおいて、低いが検出可能なプロモーター活性が観察
された。したがって、上記15.5kbの5′側フランキング領域の外側にある他のサ
イレンサー・エレメントは、内皮細胞以外の細胞においてプロモーター活性を完
全に阻止するのに必要でありうる。あるいはまた、正常なクロマチン構造に関し
てのプロモーターの状況が遺伝子の正確な調節にとって重要であるかもしれない
。上記の結果から、KDR/flk-1の組織特異性の調節には、既知で広範に分布する
核
因子と他の未確定のエレメントとの複雑な相互作用が含まれることが示唆される
。TNF- αはKDR/flk-1およびflt1の発現をダウンレギュレートする
細胞培養およびmRNAの単離
初代培養HUVECおよびHEECをClonetics Corp.(San Diego,CA)から入手し、ゼラ
チンでコートした組織培養プレートに入れた、20%ウシ胎児血清(Hyclone,Loga
n,UT)、30mgの内皮細胞増殖物質(ECGS,Collaborative Biomedical,Bedford
,MA)、25mgのヘパリン、600(g/mlのグルタミン、100ユニット/mlのペニシリン
、および100(g/mlのストレプトマイシンを補足したM199培地で増殖させた。ウシ
大動脈内皮細胞(BAEC)を単離し、10%のウシ胎児血清を補足したダルベッコの改
良イーグル培地(JRH Bioschiences,Lenexa,KS)で培養した。初代培養細胞を
4〜6日毎に継代し、初代培養から3〜6代目の細胞について実験を行った。こ
れらの細胞を密集するまで増殖させた後、それらを無血清(serum-deprived)培地
(5%ウシ胎児血清を補足し、ECGSを含有しないM199培地)に入れた。組換えヒト
TNF-α(Genzyme,Cambridge,MA)をアリコートに分け、使用するまで-80℃で
保存した。培養細胞からの全RNAは、グアニジウムイソチオシアネート抽出お
よび塩化セシウムによる遠心分離によって調製した(Sambrookら、1989,Molecu
lar Cloning: A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory P
ress,Cold Spring Harbor,New York)。
ノーザン分析
RNAブロットは記載のようにしてハイブリダイズした(Liら、1995,J.Biol
.Chem.270:308-312)。培養細胞からの全RNA(10(g)を1.3%ホルムアルデヒ
ド−アガロースゲル上で分画し、ニトロセルロース・フィルターに移した。cD
NAプローブは、ランダム・プライミングによって32Pで標識し、上記フィルタ
ーにハイブリダイズするのに用いた。次いでフィルターを洗浄し、コダック(Ko
dak)XARフィルム上で4〜8時間にわたって-80℃でオートラジオグラフィーに供
した。フィルターは、50%ホルムアルデヒド溶液中で80℃で放射活性プローブ
を外し、末端標識した18SリボゾームRNAオリゴヌクレオチドで再度ハイブリ
ダイスして、ローディングのための補正を行った。フィルターをスキャンし、Im
ageQuantソフトウエアで処理するPhosphorlmager(Molecular Dynamics,Sunnyv
ale,CA)で放射活性を測定した。RNAローディングにおける差を補正するため
に、上記cDNAプローブにハイブリダイズするRNAサンプルの各々について
のシグナル強度を、18SリボゾームRNAプローブにハイブリダイズするサン
プルの各々についてのシグナル強度で除した。
プラスミド
567bpのヒトKDR/flk-1 のcDNA断片を、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-
PCR)(Sambrookら,1989,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版,C
old Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)により
、先述したようにして(Pattersonら,1995,J.Biol.Chem.270:2311-23118)
、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の完全RNAから作製した。このヒトflt1のCD
NAクローンは、寛大にも、Timothy Quinn博士(University of California,S
an Francisco)より提供していただいた。
核ラン・オン(nuclear run-on)分析
密集したHUVECをビヒクル(対照)またはTNF-α(1ng/ml)のいずれかで18時間
にわたって処理した。続いて、Perrellaら(Perrellaら、1994,J.Biol.Chem.
269:14595-14600)に記載されているようにして、これらの細胞を溶解し、核を
単離した。核懸濁液(200(l)を、CTP、ATPおよびGTPの各0.5mMおよび20(Ciの32
P標識UTP(3000 Ci/mmol,DuPont/NEN,Boston,MA)と一緒にインキュベートし
た。サンプルをフェノール/クロロホルムで抽出し、沈殿させ、ハイブリダイゼ
ーション緩衝液に同じカウント/分/mlで再懸濁した(15x106カウント/分
/ml)。ニトロセルロース・フィルター上にドット・ブロットした変性プローブ
(1(g)を、そのサンプルと、40℃で4日間にわたってホルムアミドの存在下で
ハイブリダイズした。KDR/flk-1およびβ−アクチン遺伝子に対するcDNAを
プローブとして用いた。これらのフィルターをスキャンし、ImageQuantソフトウ
エアで処理するPhosphorlmageで放射活性を測定した。KDR/flk-1プローブにハ
イブリダイズしているサンプルの量を、β−アクチン・プローブにハイブリダイ
ズしているサンプルの量で除し、補正した密度を、対照からの変化(%)として
報告した。
免疫沈降
密集した単層になっているHUVECを、24時間にわたって血清除去し、所定の
時間にわたってTNF-α(1ng/ml)またはビヒクルで処理した。これらの細胞を35
S−メチオニン(100(Ci/ml、DuPont/NEN)と一緒に2時間にわたってインキュベー
トし、RIPA緩衝液中で4℃で10分間にわたって溶解した。不溶性画分を沈殿させ
た後、タンパク質抽出物をプロテインAセファロース(0.1(g/(1,Pharmacia Bi
otech,Piscataway,NJ)で1時間にわたって4℃で前洗浄し、続いて遠心分離
し、上清を回収した。全部の細胞溶菌液中のタンパク質濃度を、改変ローリー法
(midified Lowry Procedur; DCプロテインアッセイ; BioRad,Melville,NY)に
より測定し、サンプルのSDS-ポリアクリルアミドゲル分画および続いて行われる
クーマシー・ブルー染色により確認した。タンパク質のサンプル(500(g)を、免
疫沈降緩衝液(50mM Tris-Cl,pH8.0、150mM NaCl、0.1% SDS、1NP40、0.5%ソジ
ウムデオキシコレート、2mM EDTA、0.5mM DTT、0.02% アジ化ナトリウム)+4
mg/ml BSAで1(g/(lに希釈し、4℃で1時間にわたって穏やかに振盪した。特
異的な抗体を50(g/(lの濃度になるように添加し、サンプルを4℃で1.5時間にわ
たって振盪した。プロテインAセファロース(10(g)を添加し、振盪を1.5時間に
わたって継続した。遠心分離により抗原−抗体−プロテインAセファロース結合
体を取り出し、免疫沈降緩衝液で4回洗浄した。この結合体をLaemmli緩衝液中
で100℃で5分間にわたって変性し、7%SDS-ポリアクリルアミドゲル上でサイ
ズ分画し、次いで、減圧乾燥し、オートラジオグラフィーに供した。オートラジ
オグラムは、Howtek Scanmaster 3+(Hudson,NH)により、Adobe Photoshop 3.
0を用いてスキャンし、Scion Image 1.55を用いて、免疫沈降したタンパク質を
定量した。
[3H]チミジンの取込み
ゼラチンでコートした24穴組織培養プレート中でほぼ密集するまで増殖させたHU
VECから血清除去し、ビヒクルまたはTNF-α(1ng/ml)で12時間にわたって前処
理した後で、組換えヒトVEGF(10ng/ml、Collaborative)またはビヒクルを添加し
た。細胞をVEGFで24時間にわたって処理し、VEGF処理の最後の3時間の間にメチ
ルー[3H]チミジン(DuPont/NEN)で1(Ci/mlで標識した。標識した後、細胞
をリン酸緩衝液で洗浄し、冷却した10%トリクロロ酢酸中に固定し、95%エタノ
ールで洗浄した。取り込まれた[3H]チミジンを0.2M NaOHに抽出し、液体シ
ンチレーション・カウンターで測定した。値は、2つの別個の実験からの6個の
ウエルの平均値±SEMとして表した。
統計学的分析
適切である場合、画像分析および[3H]チミジン取込みからのデータは、平
均値±SEMとして表した。複数の処理群の統計学的分析は、平方偏差の階乗分析(
factorial analysis)、および続いて行われるフィッシャーの最下位差分検定法(
least significant difference test)によって行った。統計学的有意性はp<0.
05で認めた。
VEGF誘発内皮細胞増殖に対するTNF-αの効果
TNF-αは、ウシ大動脈内皮細胞に対する酸性および塩基性の繊維芽細胞生長因
子のマイトジェン作用を鈍化することが以前に実証されている(Frater-Schrode
rら、1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5277-5281)。TNF-αがさらに、ヒ
ト内皮細胞に対するVEGFの増殖効果も阻止するか否かを調べるために、HUVECを
ヒト組換えVEGFで刺激した後で、DNA合成用マーカーとしての[3H]チミジ
ン取込みを測定した。無血清HUVECでは、TNF-α単独によりFrater-Schroderらが
用いたのと同様の濃度で前処理することにより(Frater-Schroderら、1987,Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA84:5277-5281)、[3H]チミジンの取込みは、ビヒク
ルで前処理したHUVECと比較してわずかに低下した(図8)。対照の細胞と比較
して、VEGF処理単独では、先に実証されているように(Connollyら,1989,J.Cl
in.Invest.84:1470-1478)、HUVECにおける[3H]チミジンの取込みは2.
3倍へと大きく促進された。しかし、TNF-αによるHUVECの前処理は、DNA合成
におけるVEGAの効果を全体的に破壊する。これらの結果から、TNF-αがHUVECのV
EGFへの増殖応答を阻止することが実証される。
HUVEC におけるTNF-αによるVEGF受容体mRNAのダウンレギュレーション
5.7kbのKDR/flk-1mRNAはHUVEC内に構成的に発現される(Pattersonら.,199
5,J.Biol.Chem.270:2311-23118)。また7.0kbのflt1mRNAは培養中のHUVECにより
豊富に発現される。HUVECをTNF-α(10ng/ml)で処理すると、両受容体(KDR/flk-1
およびflt1)のmRNAが減少した。この減少は6時間以内に明らかとなり、24時間
処理後には、KDR/flk-1およびflt1はそれぞれ0時での値の23%および33%となっ
た(図9A及び図9B)。この作用がTNF-αのみによるものであり、血清の欠乏による
ものではないということが、血清欠乏下で24時間ビヒクルとのみ処理した対照サ
ンプルと比較して示された。すなわち、血清の欠乏のみでは実際にKDR/flk-1お
よびflt1のどちらのメッセージもわずかに誘導された。これら2つの受容体のダ
ウンレギュレーションがTNF-αにより誘導されるmRNA産生の一般的な減少によ
るものであるという可能性を除外するために、同様のブロットをヒトヘパリン結
合上皮増殖因子様因子(HB-EGF)プローブとハイブリダイズさせた。これらの条件
下で、TNF-αはHB-EGFメッセージの2相的な増加を誘導した。この結果は以前の
実験の結果と一致する(Yoshizumiら.,1992,J.Biol.Chem.267(14):9467-9469)
。TNF-αの作用は静脈起源の内皮細胞に特異的なものではないことを示すために
、ヒト大動脈内皮細胞(HEAC)を用いて同様の実験を行なった。HEACにおいても両
受容体についてそのメッセージが同様に激しく減少することがわかった。KDR/fl
k-1のメッセージはまたウシ大動脈内皮細胞においてもTNF-αにより減少し、こ
れによりTNF-αの作用が種特異的でないことが分かる。
TNF-αはまたKDR/flk-1およびflt1のメッセージをその投与量に依存する形で
減少させた(図10Aおよび図10B)。1ng/mlという少量のTNF-αが両受容体のmRNA
をほぼ最大レベルまで阻害し、またKDR/flk-1はHUVECにおいてTNF-αの作用に対
しflt1より僅かに感受性が高い。従って、TNF-αはヒト内皮細胞において時間お
よび投与量依存的にVEGF受容体KDR/flk-1およびflt1のmRNAを特異的にダウンレ
ギュレートする。
TNF- αはKDR/flk-1の転写率を低下させるが、KDR/flk-1の半減期には何の影 響も及ぼさない。
TNF-αがmRNAの分解率を上げることによりKDR/flk-1mRNAの定常状態レベル
に影響を与えているかどうかを調べるために、KDR/flk-1mRNAをアクチノマイ
シンD(ACD;5μg/ml)の存在下で測定した。KDR/flk-1mRNAの半減期はTNF-α
非存在下で1.9時間であり、TNF-α存在下でわずかに2.6時間まで延長した(図11)
。同様の実験において、flt1のmRNA半減期はHUVECにおいてはTNF-αにより減少
しないことが分かった。従って、HUVECにおけるKDR/flk-1およびflt1のmRNAレ
ベルでのTNF-α誘導による減少はmRNAの安定性の低下によるものではない。
TNF-αの存在下もしくは非存在下でのKDR/flk-1遺伝子の転写率を測定するた
めに、またこの値を構成的に発現されたβ-アクチン遺伝子の転写率と比較する
ために、核のラン-オン(run-on)実験を行なった。TNF-αはKDR/flk-1遺伝子の転
写率(Phosphorlmager装置で測定)を基準線の40%まで低下させたが、β-アクチ
ンの転写には何の影響も及ぼさなかった。従って、KDR/flk-1mRNAのTNF-α誘
導による減少はHUVECにおける遺伝子転写率の低下によるものであり、mRNAの安
定性の変化によるものではない。TNF- αによるKDR/flk-1mRNAの減少はそのタンパク質の合成に依存する。
KDR/flk-1mRNAの減少にはタンパク質合成が必要かどうかをタンパク質合成
阻害剤アニソマイシンを用いて試験した。HUVECにおいて95%以上([3H]ロイシン
の取り込みにより測定)のタンパク質合成を阻害する濃度の5倍濃いアニソマイ
シン濃度(50μmol)を使用した。アニソマイシンのみではこの投与量ではKDR/flk
-1発現にほとんど影響を及ぼさなかった。しかし、アニソマイシンによる前処理
はKDR/flk-1発現に対するTNF-αの効力を顕著に鈍らせ(29%対65%、p<0.05)
、HUVECにおいてKDR/flk-1に対するTNF-αの作用は少なくとも一部は新たなタン
パク質合成に依存することを示した。これらの結果は、シクロヘキシミドもTNF-
αの効力を同様に阻害したので、使用するタンパク質合成阻害剤に左右されるも
のではなかった。本研究はまた、TNF-αのflt1発現に対する作用も同様にHUVEC
においてはタンパク質合成依存的であることを示す。TNF- αはHUVECにおいて新たなKDR/flk-1タンパク質合成を低下させる。
HUVECでの免疫反応性KDR/flk-1タンパク質の産生を確かめるために、およびKD
R/flk-1mRNAの減少がタンパク質合成の低下に付随するものかどうかを決定す
るために35S標識HUVEC溶解物の免疫沈降を行なった。ウサギ抗ヒトKDR/flk-1抗
体(Santa Cruz SC-xxx)はKDR/flk-1タンパク質がNIH3T3またはCOS7細胞で発現さ
れ、それから免疫沈降されたときのその全長に等しい、約205kDaの分子量を有す
る単一種の物質を免疫沈降した(Quinnら.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(16
):7533-7537;Millauerら.,1994,Nature 367(6463):576-579)。同じ大きさの物質
種が、異なるKDR/flk-1エピトープに対する抗体(Santa Cruz SC-xxy)によって検
出されたが、同じようにして転写因子Sp1に対して誘導したウサギ抗体では検
出されず、これはこの相互作用の特異性を示している。HUVECをTNF-αで12時間
処理すると、35S標識KDR/flk-1タンパク質レベルが僅かに(<40%)、しかし再
現可能に上昇するが、このことはTNF-αがKDR/flk-1を翻訳または翻訳後のレベ
ルでも調節するという興味深い可能性を生じさせる。24時間のTNF-α処理後、35
S標識KDR/flk-1タンパク質レベルは対照のレベルの18%まで減少し、これによ
りTNF-αに誘導されるKDR/flk-1 mRNAの減少はKDR/flk-1タンパク質発現にお
ける同様の低下に付随することが確認された(図12)。使用
本発明のDNAはそれが機能的に結合されているDNA配列の内皮細胞特異的
な転写を促進する。これらのプロモーター配列は内皮細胞に特異的な遺伝子の発
現を指令する、または阻害するのに有用である。本発明は実施例1および2で後述
するような、動脈硬化といった血管の疾病、並びに癌、例えば固形腫瘍のような
非血管性の疾病、リウマチ様関節炎のような炎症性の疾病および糖尿病性網膜症
への新規の治療的アプローチの基礎を提供する。
本発明はまた次の化合物を同定する方法を提供する。すなわち、(1)VEGF受容
体(例えばKDR/flk-1またはflt1)遺伝子発現のTNF-αによるダウンレギュレーシ
ョン(実施例3、後述)をモジュレートする、または(2)VEGF誘導内皮細胞増殖の
TNF-αによる阻害をモジュレートする(実施例4)、化合物である。VEGF受容体
遺伝子の発現のTNF-αによるダウンレギュレーションを増強する、またはVEGF誘
導内皮細胞増殖においてTNF-αによる阻害を促進することが判明した化合物は、
血管新生を阻害する方法に使用できる。また同時にTNF-αによるKDR/flk-1のダ
ウンレギュレーションを増強するかまたはTNF-αによるVEGF誘導内皮細胞増殖の
阻害
を促進することが判明した化合物は、血管新生を促進する方法、例えば創傷の治
癒(例えば骨折、火傷、糖尿病性潰瘍、外傷もしくは手術上の傷の治療)を促進す
る方法、または末梢血管の疾病、動脈硬化、脳血管疾患、低酸素性組織障害(例
えば心臓組織の低酸素障害)、慢性的な皮膚疾患のような糖尿病性病因、または
心臓血管の疾患を治療する方法に使用できる。これらの化合物はまた一過性の虚
血発作、血管移植手術、バルーン血管形成、凍傷、壊疽、または循環血不良(poo
r circulation)といった状態を有する、もしくは有していた患者の治療に使用で
きる。実施例5に記載するように、TNF-αによるダウンレギュレーションに必要
なKDR/flk-1遺伝子のシス作用性配列の同定によりこれらの症状のさらなる治療
法の基礎が提供される。実施例1:遺伝子治療
本発明は血管性疾患の遺伝子治療処置に使用できる。本発明のDNAは単独で
、または血管壁の細胞、すなわち内皮細胞中で異種遺伝子(例えばKDR/flk-1以外
のタンパク質をコードする遺伝子)を発現するベクターの一部として、動脈硬化
のような血管性疾患の遺伝子治療に使用できる。このDNAまたは対象物のポリ
ペプチドをコードする配列を含むベクターを内皮細胞に導入すると、この内皮細
胞が対象物のポリペプチドを産生する。例えば、t-PAをコードする配列(Pennica
ら.,1982,Nature301:214)、p21細胞周期インヒビター(El-Deiryら.,199 3,Cell
75:817-823)、または酸化窒素シンターゼ(Bredtら.,1990,Nature 347: 768-770
)は本発明の内皮細胞特異的プロモーター配列に機能的に結合し、内皮細胞にお
いて発現され得る。例えば、血栓溶解剤は血管内(例えば異所凝血塊により閉塞
した血管内)で血管内皮細胞により発現させるために、内皮細胞特異的プロモー
ター配列の制御下で発現させることができる。他の異種タンパク質、例えば平滑
筋細胞の増殖を阻害するタンパク質、例えばインターフェロン-γおよび心房性
ナトリウム尿排泄増加ポリペプチドは内皮細胞に特異的に発現し、これらの治療
用ペプチドを動脈硬化病変または動脈硬化病変となる危険性のある部位(例えば
傷ついた血管)へ確実に送達し得る。
本発明の内皮細胞特異的プロモーター配列は末梢血管の疾病または冠動脈疾患
などの疾患を治療するために血管新生を促進する遺伝子治療にも使用できる(Isn
erら.,1995,Circulation 91:2687-2692)。例えば、本発明のDNAを血管新生を
促進する細胞増殖因子(例えばVEGF、酸性繊維芽細胞増殖因子、または塩基性繊
維芽細胞増殖因子)をコードする配列に機能的に連結させることができる。
本発明によると、本発明のDNAは転写されるべきコード配列に十分に近接し
て位置しており、このため内皮細胞におけるポリペプチドの直接発現を指令する
ように機能する。例えば、配列番号1,2および3は転写開始部位の5'側に位置する
のが好ましく、配列番号4は転写開始部位の3'側に位置するのが好ましい。しか
し、これらの配列は内皮細胞特異的プロモーター活性が保持される限りは転写開
始部位に対して任意の位置にあってよい。実施例2:アンチセンス治療
本発明のDNAはまたアンチセンス治療にも使用できる。アンチセンス治療は
動物、例えばヒト患者に本発明の内皮細胞特異的プロモーター配列を含有するD
NAを投与して行われ、このプロモーター配列はDNA配列、すなわち(転写さ
れてアンチセンスRNAとなる)アンチセンス鋳型に機能的に連結されている。
該アンチセンスRNAは特定のmRNA配列の一部に相補的となるように設計され
た短い(一般的には10以上のヌクレオチド、好ましくは14以上で、100までまたは
それ以上のヌクレオチドからなる)ヌクレオチド配列でありうる。このアンチセ
ンス鋳型は本発明のプロモーター配列より下流に位置するのが好ましい。ポリA
テイルは典型的にはアンチセンス配列の末端に位置してこの配列の終結のシグナ
ルとなる。アンチセンス技術に関する標準的な方法はMelaniら(Cancer Res.51:
2897-2901,1991)により記載されている。DNA配列がアンチセンスRNAに転
写された後、該アンチセンスRNAは細胞内でその標的となるmRNA分子に結合
してその翻訳を阻害し、該mRNAでコードされるタンパク質の発現をダウンレギ
ュレートする。例えば、KDR/flk-1 mRNAに一部または全体的に相補的なアン
チセンス配列(Termanら.,1991,Oncogene 6:1677-1683)は、KDR/flk-1の発現を阻
害し、次いで血管新生も阻害するだろう。こうしたアンチセンス治療は癌の治療
に使用することが可能で、特に固形腫瘍部位、並びに血管新生により引き起こさ
れる、もしくは血管新生により悪化する他の病理的症状(例えばリウマチ性関節
炎のような炎症性疾患、および糖尿病性網膜症)における血管新生を阻害するた
めに使用できる。
他の内皮細胞タンパク質の発現もまた同様の方法で阻害され得る。例えば、本
発明のDNAを以下の内皮細胞タンパク質(すなわち細胞周期タンパク質(内皮細
胞の増殖を阻害することで血管新生も阻害する);フォンウィルブラント因子の
ような凝固因子;並びにICAM-1およびVCAM-1といった内皮細胞接着因子
(Bennettら.,1994,J.Immunol.152:3530-3540)の発現を阻害し得るアンチセン
スRNAに転写される、アンチセンス鋳型に機能的に連結できる。
遺伝子治療またはアンチセンス治療のために、標準的なベクターおよび/また
は遺伝子送達系を用いて、本発明のDNAを動物、例えば患者の標的細胞中に導
入することができる。適切な遺伝子送達系はリポソーム、受容体媒介送達系、裸
DNA、並びにヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびア
デノ-随伴ウイルスなどのウイルスベクターを含み得る。遺伝子治療またはアン
チセンス治療のために体内の特定の部位へ核酸を送達するには、Williamsら(199
1,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:2726-2729)によって記載されるようなバイオリス
ティック(biolistic)送達系を使用することができる。単離DNAを用いて細胞
をトランスフェクトする一般的な方法は、当分子生物学分野における当業者に公
知である。動脈硬化の進行を阻止するかもしくは軽減させるための、または血管
新生を阻止するための遺伝子治療もしくはアンチセンス治療は本発明のDNAを
患者に直接投与することにより、またはex vivoで本発明のDNAを用いて内皮
細胞をトランスフェクトし、このトランスフェクトした細胞を患者に投与するこ
とにより行なうことができる。
DNAまたはトランスフェクトした細胞を製剤学的に許容可能な担体と共に投
与しても良い。製剤学的に許容可能な担体は動物に投与するのに適した生物学的
に適合性のビヒクル、例えば生理食塩水である。治療に有効な量とは、処置した
動物において医学的に所望の結果をもたらし得る本発明のDNAの量を指す。医
学分野で公知のように、いずれの患者への投与量も患者の体重、体表面積、年齢
、投与されるべき特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、罹病時の健康
状
態、および他の同時に投与される薬剤を含む、多くの因子に左右される。投与量
は様々であるが、DNAの静脈内投与に好適な投与量はDNA分子およそ106〜1
022コピーである。本発明の組成物は局所的に、または全身に投与され得る。投
与は一般に非経口的に(例えば静脈内投与)行われるが、例えば内部もしくは外部
標的部位へのバイオリスティック送達により、または動脈内の部位へのカテーテ
ルによりDNAを直接的に標的部位に投与してもよい。実施例3:VEGF受容体(KDR/flk−1またはflt1)遺伝子の発現 のTNF−αによるダウンレギュレーションをモジュレートする化合物の同定
上述したように、TNF−αは、KDR/flk−1及びflt1遺伝子(各
々VEGF受容体をコードする)の発現をダウンレギュレートする。従って、K
DR/flk−1またはflt1の発現のTNF−αによるダウンレギュレーシ
ョンを増強することは、内皮細胞の増殖を低下させ、その結果、血管新生等のプ
ロセスを抑制するのに有効である。逆に、KDR/flk−1またはflt1の
発現のTNF−αによるダウンレギュレーションを抑制することは、血管新生を
促進するために内皮細胞の増殖を増加させるのに有効であり、傷の治癒を促進す
るのに望ましく、また、末梢血管疾患の治療にとって望ましいと思われる。
内皮細胞の増殖のモジュレーションは、KDR/flk−1またはflt1の
発現のTNF−αによる抑制を阻止または増強する化合物を投与することにより
達成できる。そのような化合物は、合理的な薬剤設計からランダムな化合物のス
クリーニングまで様々な方法により同定することが可能である。後者の方法を実
施するための簡単でなお且つ迅速なアッセイが利用可能であるため、後者の方法
が好ましい。この分析に対しては、小さい有機分子が望ましい候補化合物である
。これは、多くの場合においてこれらの分子が原形質膜を通過できるためであり
、その結果KDR/flk−1またはflt1遺伝子の細胞内発現のTNF−α
によるダウンレギュレーションをモジュレートできる可能性を有するからである
。
KDR/flk−1またはflt1のTNF−αによるダウンレギュレーショ
ンをモジュレートする能力について、小さな膜透過性有機分子を以下のようにス
クリーニングする。KDR/flk−1またはflt1を発現している細胞(例
えば、HUVEC)をTNF−α及び候補化合物の存在下にて培養する。(リポータ
ー遺伝子に機能的に連結されたKDR/flk−1(またはflt1)プロモー
ターを含む細胞も、このプロモーターがTNF−αの不在下にて細胞内で活性で
あるという条件で、この方法に使用できる。)これらの細胞におけるKDR/f
lk−1(またはflt1)の発現レベル(例えば、ノーザンブロット分析(先
の記載を参照)、RNアーゼプロテクション分析、または他の標準的な方法にて
測定)を、候補化合物は用いないが、TNF−αの存在下にて培養した細胞にお
ける発現レベルと比較する。
KDR/flk−1(またはflt1)の発現が増加すれば、KDR/flk
−1(またはflt1)の発現のTNF−αによるダウンレギュレーションを阻
止する化合物が同定されたことになる。上述したように、このような化合物は、
傷の治癒を促進させるために用いることができるだけでなく、内皮細胞の増殖ま
たは血管新生の増強が望まれる症状(例えば、末梢血管疾患)の治療にも用いる
ことができる。血管新生が望まれる特定の症状の一つは、心臓血流の中断を伴う
ものである。このような状況下では、心臓組織に対する損傷を防御すると思われ
る自然の血管新生プロセスがTNF−αによって妨げられることがある。
KDR/flk−1(またはflt1)の発現が低下すれば、KDR/flk
−1の発現のTNF−αによるダウンレギュレーションを増強する化合物が同定
されたことになる。このような化合物は、内皮細胞の増殖低下または血管新生の
低下が望まれる症状の治療に用いることができる。例えば、このような化合物で
治療することにより、腫瘍の増殖を抑制することができる。
所望の効果(即ち、KDR/flk−1またはflt1の発現のTNF−αに
よるダウンレギュレーションの増強または抑制)を有すると同定された化合物を
、当業者に公知の適切な内皮細胞増殖モデル及び血管新生モデルにおいてさらに
試験することができる。
本発明の方法を用いて同定された治療用化合物を、個々の化合物に対して適切
な任意の方法(例えば、経口、静注、非経口、経皮、経粘膜)で患者に投与して
もよいし、化合物の効果が望まれる部位またはその近傍へ手術または埋め込みに
より(例えば、生体適合性かつ再吸収性の固体または半固体マトリックスの形状
に化合物を成形して)投与してもよい。例えば、充分な量の化合物を吸収させて
血管新生を局所的に増加させるべく皮膚へ直接塗布できる軟膏や経皮パッチを使
用してもよい。この方法は、皮膚の傷に適用するのに最も一般的である。化合物
を含む軟膏は局所的に塗布でき、新しい血管の形成を局所的に誘導することによ
って、その領域の酸素添加を向上させ、傷の治癒を早める。治療量は、各化合物
に対して具体的に決定されるが、多くの場合0.001〜100.0mg/kg体重
の範囲で投与するか、あるいは当業者によって臨床上適切であると見なされた範
囲で投与する。実施例4:VEGFにより誘導される内皮細胞の増殖に及ぼすTNF−αの効果 をモジュレートする化合物の同定
上述したように、TNF−αはVEGFにより誘導される内皮細胞の増殖を抑
制する(例えば、図8及びこれに対応する本文参照)。従って、VEGFにより
誘導される内皮細胞の増殖に及ぼすTNF−αの効果をモジュレートする化合物
を、血管新生等の内皮細胞の増殖に関連する症状の治療に使用することができる
。このような化合物は、上述の方法を用いて同定できる。例えば、候補化合物の
存在下または不在下にてVEGF及びTNF−αと共に内皮細胞を培養し、候補
化合物が内皮細胞の増殖に影響を与えるかどうかを、例えば、[3H]チミジンの取
り込みをモニターすることで測定することにより、判定できる。上述したように
、所望の効果(即ち、VEGFにより誘導される内皮細胞の増殖のTNF−αに
よる抑制を増強または抑制する効果)を有することが判明した化合物を、当業者
に公知の適切な内皮細胞増殖モデル及び血管新生モデルにおいてさらに試験する
ことができる。この方法を用いて同定した化合物を、実施例3で述べたように患
者に投与する。VEGFの不在下における内皮細胞の増殖に及ぼすTNF−αの
効果をモジュレートする化合物を同定するために、この方法をVEGFを添加せ
ずに行うこともできる。実施例5:TNF−αによるダウンレギュレーションに必要なKDR/flk− 1遺伝子に含まれるシス作用性エレメントの同定
TNF−αによるダウンレギュレーションに必要なKDR/flk−1遺伝子
に含まれるシス作用性エレメント(TNF−α応答性エレメント)の同定、並び
にTNF−α応答性エレメントと相互作用するトランス作用因子の同定は、血管
新生、血管疾患及び傷の治癒等の内皮細胞の増殖に関連する症状をモジュレート
する新規な治療法の開発の基礎になると思われる。
遺伝子のシス作用性エレメントの同定、並びに対応するトランス作用因子の同
定は、当該技術分野において標準的な方法を用いて行う(例えば、Sambrookら,
1989,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Sprin
g Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York; Ausubelら編,Cu
rrent Protocols in Molecular Biology,Wiley & Sons,New York,1989を参照
)。例えば、出発点として、調節因子と結合する可能性のある遺伝子の領域を同
定するために、DNAse I高感受性実験を行うことができる。シス作用性エ
レメント(例えば、KDR/flk−1遺伝子に含まれるTNF−α応答性エレ
メント)の正確な配列の同定は、標準的なプロモーター欠失分析を用いて行うこ
とができる。KDR/flk−1配列(この配列に機能的に連結されているリポ
ーター遺伝子にTNF−αによるダウンレギュレーションを付与する)を含む構
築物は、トランスフェクトされた細胞においてリポーター遺伝子の発現に及ぼす
TNF−αの影響が低減するまで、5’欠失、3’欠失、及び/またはネステッ
ド欠失(nested deletion)により順次欠失させることができる。上述のようなプ
ロモーター欠失構築物を用いて、この分析を開始することができる。欠失試験に
より同定したTNF−α応答性エレメントの正体を確認するために、全長プロモ
ーターの状況下で標準的な方法を用いてこのエレメントに点突然変異を導入する
ことができる。
次いでKDR/flk−1のTNF−α応答性エレメントを、該エレメントに
結合し、そのためKDR/flk−1のTNF−αによるダウンレギュレーショ
ン経路の構成要素と考えられるトランス作用因子を同定するための道具として用
いることができる。タンパク質がこのエレメントに結合するかどうかの判定には
、標準的なDNAフットプリント法及び/または朱変性のゲルシフト分析を行う
ことができる。TNF−α応答性エレメントに結合するトランス作用因子を同定
するために、該エレメントを標準的なタンパク質精製法においてアフィニティー
性試薬として用いるか、あるいは発現ライブラリーをスクリーニングするための
プローブとして用いることができる。トランス作用因子が同定されたら、例えば
、トランス作用因子の結合抑制剤のスクリーニングより開始して、KDR/fl
k−1遺伝子に含まれるTNF−α応答性エレメントへの結合のモジュレーショ
ンを検討することができる。トランス作用因子またはそれをコートする遺伝子(
例
えば、遺伝子治療用のベクターに含まれる)を投与することにより、患者におけ
るKDR/flk−1発現のTNF−αによるダウンレギュレーションを増強し
、血管新生を抑制することが可能となる。さらに、トランス作用因子の活性型が
二量体である場合、その活性を抑制するためにトランス作用因子のドミナントネ
ガティブ突然変異体とすることもできる。さらに、KDR/flk−1遺伝子に
含まれるTNF−α応答性エレメントを同定し、その対応するトランス作用因子
を同定する際に、KDR/flk−1のTNF−αによるダウンレギュレーショ
ンの経路に含まれるさらに別の構成要素を同定することができる。これらの構成
要素の活性のモジュレーションをさらに検討することにより、内皮細胞の増殖や
血管新生をモジュレートする別の薬剤と方法を開発することが可能である。本実
施例で記載した方法はflt1遺伝子を用いて行うこともできる。
その他の態様
血管新生を抑制するためのアンチセンス療法の他に、本発明のプロモーター配
列に含まれるシス作用性結合部位への転写因子(例えば、AP-2、SP-1及びNFκB
)の結合を抑制することにより、内皮細胞においてKDR/flk−1を発現さ
せることもできる。例えば、転写因子のドミナントネガティブ突然変異体(例え
ば、AP-1結合部位へ結合するが転写を活性化できないAP-2のドミナントネガティ
ブ突然変異体)を用いて転写を抑制することができる。あるいは、転写因子の生
成をダウンレギュレートする化合物(例えば、AP-2及びNFκBの生成をダウンレ
ギュレートするレチノイン酸またはデキサメタゾン)を投与して、KDR/fl
k−1の発現を抑制することにより血管新生を抑制することができる。
その他の実施態様は次の請求の範囲に含まれるものである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 48/00 ABN C07K 14/71
C12N 5/10 C12N 5/00 B
C12Q 1/02 A61K 37/02 ABX
// C07K 14/71 ADU
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),AU,CA,IL,J
P,MX,NO
(72)発明者 リー,ム−エン
アメリカ合衆国 02159 マサチューセッ
ツ州 ニュートン,ナーデル ロード,
102
(72)発明者 ヘーバー,エドガー
アメリカ合衆国 03268 ニューハンプシ
ャー州 サリスベリー,サウス ロード,
ピー.オー.ボックス 161
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.配列番号1と実質的に同一の配列を含んでなる実質的に純粋なDNAであっ て、該DNAに機能的に連結されているポリペプチドコード配列の内皮細胞特異 的転写を調節することを特徴とするDNA。 2.前記DNAが配列番号2と実質的に同一の配列または配列番号3と実質的に 同一の配列をさらに含んでなる、請求項1に記載のDNA。 3.前記DNAが配列番号4と実質的に同一の配列をさらに含んでなる、請求項 1に記載のDNA。 4.前記DNAが配列番号4と実質的に同一の配列をさらに含んでなる、請求項 2に記載のDNA。 5.配列番号6と実質的に同一の配列を含んでなる実質的に純粋なDNAであっ て、該DNAに機能的に連結されているポリペプチドコード配列の内皮細胞特異 的転写を調節することを特徴とするDNA。 6.配列番号5と実質的に同一の配列を含んでなる実質的に純粋なDNAであっ て、該DNAに機能的に連結されているポリペプチドコード配列の内皮細胞特異 的転写を調節することを特徴とするDNA。 7.前記DNAがポリペプチドコード配列に機能的に連結されていて、ポリペプ チドコード配列の内皮細胞特異的転写を調節するように機能する、請求項1に記 載のDNA。 8.前記ポリペプチドコード配列がKDR/flk−1をコードするものではな い、請求項7に記載のDNA。 9.前記ポリペプチドが組織プラスミノーゲン活性化因子、p21細胞周期イン ヒビター、酸化窒素シンターゼ、インターフェロン−γおよび心房性ナトリウム 利尿ポリペプチドよりなる群から選択される、請求項8に記載のDNA。 10.請求項8に記載のDNAを含有するベクター。 11.内皮細胞に請求項10に記載のベクターを導入することを含んでなる、ポリペ プチドの内皮細胞特異的発現を指令する方法。 12.請求項10に記載のベクターを含有する内皮細胞。 13.動物の動脈を請求項10に記載のベクターと接触させることを含んでなる動物 における動脈硬化症の抑制方法であって、前記ポリペプチドが動脈硬化症の発生 を低減または予防することを特徴とする方法。 14.前記ポリペプチドが平滑筋細胞の増殖を低減させる、請求項13に記載の方法 。 15.配列番号1と実質的に同一の配列を含んでなる実質的に純粋なDNAであっ て、該DNAに機能的に連結されているアンチセンス鋳型の内皮細胞特異的転写 を調節することを特徴とするDNA。 16.前記DNAがアンチセンス鋳型に機能的に連結されていて、アンチセンス鋳 型の内皮細胞特異的転写を調節するように機能する、請求項15に記載のDNA。 17.アンチセンス鋳型が内皮細胞ポリペプチドをコードするmRNAと相補的で ある、請求項16に記載のDNA。 18.内皮細胞ポリペプチドがKDR/flk−1である、請求項14に記載のDN A。 19.内皮細胞ポリペプチドが細胞周期タンパク質、凝固因子および細胞接着因子 よりなる群から選択される、請求項17に記載のDNA。 20.動物の腫瘍部位に請求項18に記載のDNAを接触させることを含んでなる動 物における癌の治療方法であって、該DNAが腫瘍部位における血管新生を低減 または抑制することを特徴とする方法。 21.血管内皮細胞増殖因子受容体遺伝子の発現のTNF−αによるダウンレギュ レーションをモジュレートする候補化合物の能力を測定する方法であって、 (a) リポーター遺伝子に機能的に連結された血管内皮細胞増殖因子受容体遺 伝子のプロモーターを含有する細胞を用意し、 (b) TNF−αと候補化合物の存在下で該細胞を培養し、そして (c) 血管内皮細胞増殖因子受容体遺伝子の発現のTNF−αによるダウンレ ギュレーションをモジュレートする候補化合物の能力の尺度として該リポーター 遺伝子の発現レベルを測定する、 ことを特徴とする方法。 22.VEGFにより誘導される内皮細胞増殖のTNF−αによる抑制をモジュレ ートする候補化合物の能力を測定する方法であって、 (a) 内皮細胞を用意し、 (b) TNF−α、VEGFおよび候補化合物の存在下で該細胞を培養し、そ して (c) VEGFにより誘導される内皮細胞増殖のTNF−αによる抑制をモジ ュレートする候補化合物の能力の尺度として内皮細胞増殖のレベルを測定する、 ことを特徴とする方法。 23.患者における血管新生を抑制する方法であって、該患者に、内皮細胞内での 血管内皮細胞増殖因子受容体遺伝子の発現をダウンレギュレートするTNF−α 経路を活性化する非TNF−α化合物を投与することを特徴とする方法。 24.患者における血管新生を増強する方法であって、該患者に、内皮細胞内での 血管内皮細胞増殖因子受容体遺伝子の発現をダウンレギュレートするTNF−α 経路を抑制する非TNF−α化合物を投与することを特徴とする方法。 25.患者における血管新生を抑制する方法であって、該患者に、血管内皮細胞増 殖因子受容体遺伝子のプロモーター中のTNF−α応答性エレメントに結合する ことによって内皮細胞内での血管内皮増殖因子受容体遺伝子の発現を抑制するポ リペプチドを投与することを特徴とする方法。
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