JP2000233986A - めっき浴用部材およびその製造方法 - Google Patents

めっき浴用部材およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 寿命の長いめっき浴用部材およびそれの有利
な製造方法を提案すること。 【解決手段】 基材が、貫通気孔のないセラミックス焼
結または溶融成形部材で構成され、その基材表面には酸
化物系セラミックス溶射皮膜が形成されているめっき浴
用部材、および、前記セラミックス焼結または溶融成形
部材の表面を粗面化し、その後、このセラミックス焼結
または溶融成形部材からなる基材の表面に、 Al2O3, Ti
O2, ZrO2, MgO, CaO, CeO2およびSiO2のうちから選ば
れるいずれか1種以上の酸化物系セラミックスをプラズ
マ溶射するめっき浴用部材の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、めっき浴用部材
およびその製造方法に関し、特に、溶融亜鉛めっき, 溶
融亜鉛−アルミニウム合金めっき, 溶融アルミニウムめ
っきなどの分野で用いられる各種部材、たとえばロール
類, 軸受け, スリーブ, ブッシュ, めっき量調整用金具
などの溶融めっき金属に接する環境で用いられる部材と
その表面処理技術についての提案である。また、この発
明にかかるめっき浴用部材は、めっき浴だけに限らず、
鋳造設備などの金属の溶湯に接するような環境で使用さ
れる部材としても有用である。
【0002】
【従来の技術】金属めっき、とくに溶融亜鉛めっき、溶
融アルミニウムめっき、溶融亜鉛−アルミニウム合金め
っきなどは、優れた防錆、防食力が得られることから、
古くから、自動車、航空機、車輌、建築、家電製品など
の部材に施工されており、有用な表面処理技術である。
【0003】一般に、溶融亜鉛めっき鋼板は、多くの場
合、図1に示すような連続溶融亜鉛めっき装置によって
製造されている。この溶融亜鉛めっき装置には、めっき
浴1中に浸漬されるシンクロール2、めっき浴中の表面
近傍に配設されるサポートロール3、めっき後の鋼板4
を案内するガイドロール5、あるいは鋼板に付着した過
剰の亜鉛を窒素ガスや水蒸気で吹き飛ばすための噴射ノ
ズル6などの、いわゆる多くのめっき浴用部材が配設さ
れているのが普通である。
【0004】このように、めっき浴用部材というのは、
めっき浴中に浸漬されるか、溶融亜鉛が飛散付着しやす
い箇所に設置されており、また溶融亜鉛が付着した高温
の鋼板と接触するように使われるので、(1) 溶融亜鉛に
よる侵食が起こり難いこと、(2) 通板材 (鋼板) と接触
しても摩耗しにくいこと、(3) 付着した溶融亜鉛の剥離
ならびに保守点検が容易なこと、(4) めっき用部材とし
ての寿命が長く低コストであること、(5) 高温の溶融亜
鉛浴中に浸漬した際の熱衝撃によく耐えること、などの
性能が要求される。
【0005】このような要求に応えるために従来、シン
クロール用表面処理皮膜を例にとると、(1) 特開平1−
108334号公報や特開平2−125833号公報などに開示のよ
うな、JIS H8303 (1976)制定のCo基自溶合金の皮膜を形
成したもの、(2) 特公平3−54181 号公報や特公平4−
27290 号公報などに開示のような、ZrO2とAl2O3 からな
る酸化物系セラミックス皮膜を溶射被覆したもの、(3)
特開平4−13857 号公報や特開平4−346640号公報など
に開示のような、炭化物や窒化物,硼化物などの非酸化
物系セラミックスと、CrやNi, Coなどからなるサーメッ
ト溶射皮膜を形成したもの、(4) その他、耐溶融金属を
溶接肉盛したもの (特公昭52−22934 号公報) 、Wを溶
射したもの (特開昭53−128538号公報) 、あるいはCrを
溶射したもの (特開平4−165058号公報) 、などが提案
されている。
【0006】上記のような技術に対し、本発明者らもか
つて同種技術の研究開発を行なってきた。すなわち、
(5) 特願昭63−49846 号(特開平1−225761号) におい
て提案したWCサーメットにおいて、Coを5〜28%含み、
その皮膜の気孔率を1.8 %以下、膜厚を 0.040〜0.10mm
未満とした溶射皮膜、(6) 特願昭63−192753号(特開平
2−43352 号) において提案した、硼化物またはこれに
Coを5〜28%含ませた材料を減圧プラズマ溶射法によっ
て形成したもの、(7) 特願平1−54883 号(特開平2−
236266号) において提案した、ZrB2, TiB2および各種炭
化物に5〜40%のTa, Nbを含ませた材料を用い、減圧プ
ラズマ溶射法によって、その皮膜表面粗さRaを 0.01 〜
5μm 、気孔率1.8 %以下の皮膜を形成したもの、(8)
実願平1−124010号(実開平3−63565 号) において提
案した、炭化物を主体とするサーメット溶射皮膜上に、
化学的緻密化法によってCr3O3 を形成した皮膜、(9) 特
願平2−201187号(特開平4−88159 号) において提案
した、炭化物溶射皮膜の一部を硼化処理によって硼化物
に変化させた皮膜、(10) 特願平3−31448 号(特開平
4−254571号)において提案した、各種炭化物、硼化物
またはそのサーメット溶射皮膜にAlまたはAl−Zn合金を
加熱拡散することによって、耐溶融亜鉛性を向上させた
もの、(11) 特願平3−31448 号(特開平4−254571号)
において提案した、非酸化物系セラミックスの溶射皮
膜にAlまたはAl−Znを拡散浸透させたもの、(12) 特願
平3−222425号(特開平4−358055号) において提案し
た、非酸化物系セラミック粉末またはこれに金属を混合
してなる粉末に、AlまたはAl−Zn合金を添加してなる溶
射材料を用いて形成した溶射皮膜、(13) 特願平3−213
143号(特開平5−33113 号) において提案した、非酸
化物系セラミック粉末またはこれに金属を混合してなる
粉末に、Al−Fe合金またはAl−Fe−Zn合金を添加してな
る溶射材料を用いて形成した溶射皮膜、(14) 特願平3
−266874号(特開平5−78801 号) において提案した、
鋼製のロールの表面に、Al含有量22%以上のAl−Fe合金
層を形成したもの、などの諸技術および皮膜を提案して
きた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上の説明から判るよ
うに、従来の溶融亜鉛めっき浴用部材に形成する溶射皮
膜についての研究課題は、耐溶融亜鉛性皮膜材料の選
定、皮膜の密着性向上、皮膜の緻密性向上、皮膜
表面粗さの制御などの皮膜自身の特性の改善が主体であ
り、それぞれに改善の効果があった。しかしながら、溶
融亜鉛めっき鋼板については、最近、需要拡大に伴っ
て、めっきプラントの稼動率の向上およびめっき鋼板の
品質向上に対する要求は極めて強くなり、耐溶融亜鉛性
はもとより、めっき浴中に浮遊する微細なドロス成分
(Zn−Fe, Zn−Fe−Al合金) の溶射皮膜表面への付着、
ひいては付着したそのドロスによって鋼板に極微小な押
傷が発生することさえも嫌忌するような状況となつてき
た。そのうえ、さらに生産コストの低減のため、溶射皮
膜の長寿命化が強く要求されるようになってきた。
【0008】そこで、この発明の目的は、めっき浴用部
材としての上述した要求を十分に満たすにとどまらず、
一段と寿命の長いめっき浴用部材およびそれの有利な製
造方法を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、次のような考
え方に立脚して開発したものである。 (1) 被溶射体となる基材として、少なくともその表面部
分については貫通気孔のない多孔質のセラミックス焼結
成形部材または溶融成形部材を用い、そして基材となる
このような部材表面に対して、酸化物系セラミックスの
溶射皮膜を形成するようにした。このような基材と溶射
皮膜の組み合わせによって、たとえ溶射皮膜の気孔中に
溶融めっき金属が侵入しても、基材が従来のように鋼材
でないため、基材との冶金反応によって該基材が溶損し
たりドロスが付着する現象がなくなる。
【0010】(2) 基材であるセラミックス焼結成形部材
またはセラミックスの溶融成形部材は、気孔率を5〜2
0%の範囲に調整するとともに、とくに貫通気孔を消滅
させるために、特にセラミックス成形部材の基本構成成
分として、SiO2, B2O3およびP2O5のような、いわゆる高
温下でガラス質状態を呈するような成分からなる酸化物
粉体を含む部材を使用する。このような貫通気孔のな
い、いわゆる閉気孔のみからなる部材であれば、たとえ
その閉気孔に溶融金属が接触しても、その気孔中にはガ
スが充満していることから溶融金属 (めっき金属溶湯)
が侵入するようなことはない。しかも、一般に酸化物
は、熱膨張係数が小さいので、高温のめっき金属浴中に
浸漬されても熱衝撃によって破損するようなことがな
い。さらには、こうした部材ならびに溶射皮膜とも、酸
化物系セラミックスで構成されているため、両者の熱膨
張係数が近似しており、急激な温度変化を受けても界面
で発生する剪断応力が小さく、皮膜が剥離するようなこ
とが全くなくなる。なお、かかる成形部材は、たとえば
ロールの場合、その中心部に鋼鉄製のコア材を有し、そ
の外側に上記セラミックス製筒状の焼結成形部材もしく
は溶融成形部材を冷し嵌めなどによる嵌着または鋳造し
て成形したものであってもよい。
【0011】(3) 基材表面への酸化物系セラミックス溶
射皮膜形成後、該溶射皮膜の気孔内に酸化物, 硼化物あ
るいは窒化物などの微粉末やその溶液 (コロイド) を充
填しておくと、部材は空気中の水分を吸着することがな
くなり、ひいてはこの部材をめっき浴中に浸漬した場
合、該皮膜中には溶融めっき金属のみが侵入することか
ら、ドロス成分が付着する現象を効果的に防止できるよ
うになる。
【0012】(4) 貫通気孔のない多孔質酸化物系セラミ
ックス焼結または溶融成形部材の表面へ、同質系, 即ち
酸化物系セラミックスの溶射皮膜を形成させるには、基
材の表面が乾燥しかつ適度な表面粗さを有することが重
要である。このため、本発明では、その成形部材を機械
加工する際にクーラント (水) を使用した際には、必ず
100 ℃以上に加熱して水分を除去し、その後ブラスト処
理によってRa 2〜10μmの範囲に粗面化することによっ
て、良好な密着性を有する溶射皮膜を形成する方法を採
用することが好ましい。そして、必要に応じてブラスト
処理後にも乾燥処理を行ってもよい。なお、本発明にか
かる成形部材については、表面変化が起こらないので、
鋼鉄製基材のようにブラスト処理後に直ちに溶射施工す
る必要がなくなる。
【0013】このような着想の下に完成した本発明は、
基材が、貫通気孔のない多孔質な酸化物系のセラミック
ス成形部材で構成され、この基材表面には酸化物系セラ
ミックス溶射皮膜が形成されていることを特徴とするめ
っき浴用部材である。
【0014】なお、上記めっき浴用部材において、セラ
ミックス焼結または溶融成形部材は、少なくともSiO2,
B2O3およびP2O5のなかから選ばれたいずれか1種以上の
ガラス形成酸化物を必須成分として含み、 Al2O3, Y
2O3, Cr2O3 , MgO, ZrO2, TiO2などから選ばれるいず
れか1種以上の酸化物を添加成分として含むものであ
り、断面径が1〜 100μmの大きさの気孔が焼結体気孔
率で5〜20%を示す範囲内で互いに独立した関係の閉気
孔として存在していることが好ましく、また、上記酸化
物系セラミックス溶射皮膜は、Al2O3 , TiO2, ZrO2, Mg
O, CaO, Y2O3, CeO2およびSiO2のなかから選ばれたい
ずれか1種以上の酸化物からなり、膜厚が50〜800 μm
の範囲にあることが好ましく、さらに、酸化物系セラミ
ックス溶射皮膜は、気孔部が金属酸化物, 金属硼化物お
よび金属窒化物から選ばれたいずれか1種以上の微粉末
に封孔されていることが好ましい。
【0015】また、本発明は、SiO2, B2O3およびP2O5
なかから選ばれるいずれか1種以上のガラス形成酸化物
を含み、その他にも Al2O3, Y2O3, Cr2O3 , MgO, Zr
O2, TiO2などから選ばれるいずれか1種以上の酸化物を
含有する原料粉末を混合し成形したのち1100℃以上の温
度で焼成または溶融することにより、貫通気孔のない酸
化物系のセラミックス焼結成形部材もしくはセラミック
ス溶融成形部材を形成し、これらのセラミックス成形部
材の表面を研削した後、100 ℃以上の温度に加熱して乾
燥し、引き続きブラスト処理もしくは研削によってその
表面を粗面化し、さらにその後、これらのセラミックス
成形部材からなる基材の表面に、 Al2O3,TiO2, ZrO2, M
gO, CaO, CeO2およびSiO2のうちから選ばれたいずれ
か1種以上の酸化物系セラミックスをプラズマ溶射する
ことを特徴とするめっき浴用部材の製造方法を提案す
る。
【0016】なお、本発明において、上記酸化物系セラ
ミックスのプラズマ溶射に当たっては、膜厚が50〜800
μmになるように施工し、得られた酸化物系セラミック
ス溶射皮膜の表面をRa 2〜10μmの粗さに調整すること
が好ましく、また、上記酸化物系セラミックス溶射皮膜
の表面および該皮膜内気孔部中に、酸化物, 硼化物およ
び窒化物のうちから選ばれるいずれか1種以上の水溶液
またはスラリーを塗布して封孔処理を行うことが好まし
い方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】さて、発明者らは、溶融めっき金
属浴中に浸漬されたシンクロールの表面に形成した溶射
皮膜の挙動について種々実験研究を行った結果、次のよ
うな事実を把んだ。 (1) 溶射皮膜が金属や合金質の場合、その寿命は、該皮
膜と溶融めっき金属との冶金反応に加え、溶融金属との
反応生成物の影響によって耐久性が決定される。例え
ば、シンクロール用皮膜として形成された自溶合金皮膜
の場合、溶融金属と反応するものの、その速度が遅いた
め、初期のうちは必要な性能を発揮した。しかし、この
皮膜は、溶融めっき金属との反応物 (合金) が、めっき
膜を傷つけるという欠点があった。
【0018】(2) 溶射皮膜が炭化物サーメット皮膜の場
合、このサーメット構成成分であるCo, Cr, Ni−Crなど
が溶融金属と反応してドロス付着の原因となる。また、
この種の溶射皮膜は硬くかつ延性に欠けるため、室温か
ら溶融金属中へ一挙に浸漬すると熱衝撃によって局部的
に剥離するという欠点があった。さらに、使用した部材
表面には一般に、薄い金属層がドロスとともに付着する
ので、これを酸によって溶解除去するときに、皮膜中の
金属成分が選択的に溶解して皮膜そのものが破壊される
ことがある。
【0019】(3) 溶射皮膜がAl2O3 , ZrO2などの酸化物
の場合、溶融金属とは冶金反応をしないが、皮膜そのも
のが多孔質 (気孔率5〜15%) であるため、溶融金属が
簡単に内部へ侵入して、基材金属と冶金反応を起こし、
溶射皮膜を根底から破壊するという現象が見られた。従
って、現在の技術では、鋼鉄製ロールの表面に直接、緻
密質酸化物系溶射皮膜を形成することは困難であり、実
用化されていない。
【0020】こうした従来技術の問題点というのは、従
来の溶射皮膜の研究開発はすべて、鋼鉄製基材を使用す
ることを前提としているため、酸化物系セラミックス材
料を直接その上に施工することができず、またこうした
皮膜を形成できたとしても、皮膜の開気孔部を通して溶
融金属が内部へ侵入することによりロール基材を侵食す
るため、実用化することができないということに起因し
ているものであることがわかった。
【0021】そこで、本発明は、基材 (ロール) を、鋼
鉄製ではなく、少なくともその表面部分については酸化
物系のセラミックス焼結または溶融成形体にてロールを
つくり、この代替基材に対し、その表面に直接、酸化物
系セラミックスを溶射被覆することを提案するものであ
る。このようにすれば、たとえ溶射皮膜の気孔中に溶融
めっき金属が侵入したとしても、基材の方もセラミック
スでつくられているため反応することがなく、酸化物系
セラミックス皮膜は長期間にわたって健全な状態を維持
することができるようになる。また、酸化物系セラミッ
クス溶射皮膜は、溶融金属はもとよりドロス成分とも全
く反応しないので、ドロスに起因する従来の問題点も発
生しない。さらに、鋼基材表面に酸化物系セラミックス
をトップコートとして被覆するために、サーメット, ア
ンダーコートなどを施工する必要もなくなる。
【0022】本発明では、このような考えから、ロール
(少なくともその外周面) を酸化物系セラミックス焼結
または溶融成形体にて構成することとして、しかも、開
気孔をなくす意味から、次に示すような酸化物を使用す
る。すなわち、必須成分として、SiO2, B2O3およびP2O5
のうちから選ばれたいずれか1種以上のガラス形成酸化
物を含み、そして、選択的添加成分として、Al2O3, Y2O
3, Cr2O3 , MgO , ZrO2, TiO2などのうちから選ばれる
いずれか1種以上の酸化物との混合粉末を使用する。そ
して、その混合粉末を所定の形状 (ロール等) に成形
し、この成形体を1100℃以上の温度で焼成することによ
りロール状の焼結成形体とする。なお、上掲の酸化物か
らなる成形体を焼成したり溶融したりすると、ガラス形
成成分であるSiO2, B2O3あるいはP2O5はいずれもがガラ
ス状物質となって酸化物粒子の粒界を埋めるとともに、
粒子間結合力を向上させる。また、ガラス状物質の存在
によって成形品には貫通気孔が消失するため、溶融金属
が基材の内部に侵入するようなことがなくなるととも
に、成形品内部に残留する気孔は独立したものとなる。
その気孔はいずれも、径:5 〜80μm程度の閉気孔とな
って全体に分散して散在し、気孔率は5〜20%程度とな
る。このため、こうした基材はセラミックスであるが、
強い熱衝撃を受けても破壊することがなく、溶融金属め
っき浴用部材として必要な機械的強度を有するものとな
る。さらに、酸化物系セラミックス焼結または溶融成形
部材表面に直接施工する上記セラミックス溶射皮膜の材
料もまた同質の酸化物系セラミックスであるため、両者
に熱膨張係数に起因する剪断応力の発生が極めて小さい
ため、熱衝撃による剥離の危険性は極めて少なくなる。
【0023】次に、本発明の製造方法について説明す
る。まず、基材である上述したセラミックス焼結または
溶融成形した部材を準備し、この酸化物系セラミックス
焼結または溶融成形部材の表面に、酸化物系セラミック
スを直接、溶射施工する。この溶射に当たっては、次に
示すような工程を採用する。即ち、酸化物系セラミック
ス粉末の溶射施工に際しては、前記セラミックス焼結ま
たは溶融成形部材である基材の表面を機械研削によって
平滑化し、その後、Al2O3 粒子を用いてブラスト処理に
よる粗面化を行うことにより、その表面粗さをRa:2〜
10μmに調整する。その後、大気プラズマ溶射法によっ
て上述した酸化物系セラミックスを、基材上に直接80〜
800 μmの厚さに施工する。ただ、前記基材が多孔質な
酸化物系セラミックス焼結または溶融成形部材であるた
め、その表面を機械研削するとき、水あるいは水溶性の
クーラントを使用すると、基材の気孔部にこれらが残留
するため、ブラスト処理に先立っては約 100℃以上の温
度に加熱して水分の除去を行うことが好ましい。そし
て、ブラスト処理後においても、湿度の高い環境に置か
れていると気孔内に水分が凝縮する場合があるので、必
要に応じ 100℃以上で乾燥することが望ましい。
【0024】なお、酸化物系セラミックス焼結または溶
融成形部材の粗面化処理がRa:2μmよりも平滑面にな
ると、その上に形成する溶射皮膜の密着性が悪くなり、
一方、Ra:10μm以上の粗面になると基材の“へこみ”
や“うねり”が不規則に発生したり、局部的に大きな
“凹み”が発生する欠点がある。
【0025】以上説明したような方法によって形成され
た酸化物系セラミックスの溶射皮膜は、一般に5〜20
%の気孔を有しているため、これをめっき浴中に浸漬す
ると皮膜の気孔を通って溶融金属が内部へ侵入するが、
反応する金属成分が存在しないため、溶射皮膜は健全な
状態を長期間に亘って維持することができる。しかも、
本発明にかかるめっき浴用部材は、これを長期間に亘っ
て空気中に保管していても、環境成分 (例えば、湿度、
SOx , NOx などの酸性ガス) の腐食作用を受けるような
ことがない。ただ、表面の酸化物系セラミックス溶射皮
膜や焼結成形部材に存在する気孔部に水分が凝縮し、こ
れが高温の溶融金属浴中に浸漬された際、一挙に水蒸気
となって皮膜を破壊するおそれがある。このような場合
には、溶射皮膜の形成後、シール剤を用いて皮膜の気孔
部を充填しておけば、上記のような問題は避けることが
できる。同時に、これらのシール剤成分はそのままめっ
き浴中へ浸漬しても作業上の問題となることはない。
【0026】かかる溶射皮膜のシール方法としては、下
記のような方法が好適である。 (1) 皮膜表面に、無水クロム酸 (CrO3) , クロム酸アン
モン (NH4)2CrO4 , 重クロム酸アンモン (NH4)2Cr2O7
水溶液を塗布し、そして 350℃〜550 ℃に加熱焼成す
る。その後、再び上記水溶液中に浸漬した後、加熱焼成
する操作を複数回繰返す方法。 (2) (1) の水溶液中にSiO2, Al2O3 , Cr2O3 , MgO , Zr
O2, Y2O3, TiO2などの酸化物の微粉末、あるいはTiB2,
ZrB2, HfB2, VB2, TaB2, NbB2, NiB2, W2B5,CrB2など
の硼化物の微粉末、またはTiN, ZrN, VN, TaN, Al
N, BN, NbN, Si3N4 などの窒化物の微粉末のそれぞ
れ1種以上からなるものを用いて加熱焼成する方法。 (3) 上記以外の方法として、SiO2, ZrO2, TiO2, Al
2O3 , Y2O3などの酸化物を1種以上含むゾル−ゲルシー
ル剤を基材上に直接塗布した後、乾燥する方法であって
もよい。
【0027】
【実施例】実施例1 この実施例では、Al2O3 , MgO 粉末を1200〜1250℃の温
度に加熱焼成して基材を製作するに際し、SiO2, B2O3
よびP2O5のいずれかのガラス質形成物質をそれぞれ5wt
%添加した成形品をつくり、貫通気孔の有無をガラス質
形成物質無添加焼結部材と比較した。供試焼結成形部材
は、幅50mm、長さ50mm、厚さ4mmの平板であり、これを
水平に静置した後、上面から青色のインキ液を5cm3
布して、裏面に現出される青色斑点の有無を目視により
観察した。その結果、ガラス状物質を添加していないAl
2O3 およびMgO 焼結板は、青色インキ液を滴下後1時間
以内に板厚を貫通して裏面に青色が認められた。しか
し、SiO2, B2O3, P2O5を添加した焼結成形板は、24時間
後も青色インキ液の貫通は見られなかった。
【0028】実施例2 この実施例では、セラミックス成形部材として、直径30
mm、長さ300 mmの98wt%SiO2材および98.5wt%のZrSiO2
材の丸棒状の焼結成形試験片を用いて、その表面を機械
加工によって粗さ10〜25μmに仕上げた。そして、その
表面にそれぞれAl2O3 または8wt%Y2O3−92wt%ZrO2
それぞれ大気プラズマ溶射法によって膜厚300 μm厚に
施工した。なお、成膜の工程において、基材の表面研削
時にクーラントとして水を使用したため、ブラスト処理
に先立って予熱乾燥の有無の条件を加え、溶射皮膜の密
着性、特に溶融亜鉛めっき浴への適用を考慮して、常温
から直接500 ℃に保持した電気炉中への挿入と室温への
取り出しの操作を繰返して皮膜の耐久性を調査した。表
1は、この結果を示したものである。この結果から明ら
かなように、熱衝撃による溶射皮膜の密着力は基材の予
熱の影響を強く受けることが判明した。すなわち、成形
部材の表面に存在する気孔中に機械研削時のクーラント
(水) が残っていると、熱衝撃試験時に水蒸気となって
気散するため、これによって皮膜が剥離することがわか
った。従って、基材は少なくとも100 ℃以上、好ましく
は150℃以上の温度に予熱する必要がある。
【0029】
【表1】
【0030】実施例3 この実施例では、SiO2焼結基材 (直径15mm、長さ200 m
m) を実施例1の要領によって150 ℃の予熱を施し、Al2
O3 によるブラスト処理後、大気プラズマ溶射法によっ
てAl2O3, Al2O3−15wt%TiO2, ZrSiO2, 8 wt%Y2O3・Zr
O2, 10wt%CeO ・ZrO2などの酸化物系セラミックスを25
0 μm厚に成膜し、これを0.12wt%Al−Zn浴(470℃) 中
に1週間連続的に浸漬して引き上げ、その外観状況を観
察した。なお、比較試験用として鋼鉄製の基材 (直径15
mm, 長さ200 mm) の表面に、自溶合金を0.5 mm厚に施工
したものや、WC−12wt%Coを180 μm形成した溶射皮膜
を同条件で浸漬した。表2は、この結果を示したもの
で、比較例 (No.6, 7)の皮膜では、その表面に溶融亜鉛
との合金生成物をつくって亜鉛が強固に付着するととも
に、皮膜が局部的に侵食を受けたり、またWC−12wt%Co
(No.7)皮膜のように、亜鉛による侵食は認められないも
のの、その表面には亜鉛の薄膜とともにドロス成分の付
着が点在していた。これに対し、本発明の皮膜 (No. 1
〜5)は、いずれも溶融亜鉛の付着は全く認められず、浸
漬前の状態を呈し、溶融亜鉛にはほぼ完全な耐久性を示
していることがわかった。
【0031】
【表2】
【0032】実施例4 この実施例では、実機の溶融亜鉛浴中にてSiO2溶融成形
した部材:ロール (直径300 mm、長さ1900mm) 上に8wt
%Y2O3・ZrO2皮膜を250 μm厚に施工し、サポートロー
ルとして使用した (475 ℃, 0.11wt%Al) 。その結果、
従来技術によるWC−12wt%Co溶射皮膜ロールでは、その
表面にドロス成分の付着があるため、これが原因でめっ
き鋼板の表面にしばしば品質欠陥としての異物の付着が
認められたが、本発明の皮膜を形成させたロールは全く
異常は見られなかった。なお、WC−12wt%Co溶射ロール
は、その表面に付着している亜鉛やドロス成分を希塩酸
(15wt%HCl)や燐酸 (30wt%H3PO4)によって化学的に除
去しているが、これらの酸は亜鉛の溶解反応とともに、
健全な皮膜中の金属成分 (Co) も腐食するので、これら
の処理によっても皮膜寿命が短くなる欠点がある。本発
明の皮膜は、これらの酸に対しても全く変化しないた
め、長期にわたって使用できる見通しが得られた。
【0033】実施例5 この実施例では、実施例4で用いた本発明の皮膜 (8wt
%Y2O3・92wt%ZrO2)を形成後、次に示すようなシール
剤により封孔処理をした。 (1) CrO3の濃厚水溶液 (48wt%) を塗布後、480 ℃×30
分焼成の操作を5回繰返したもの (2) (1) のCrO3水溶液中にNB微粉末を5wt%添加した
ものを(1) と同様な操作によって焼成したもの (3) SiO2・ZrO2を主成分とするゾルゲルを塗布後、180
℃×2時間乾燥したもの これらのロール類は、室内に放置していても水分の吸着
は認められず、また、5〜10wt%HCl, 20wt%H3PO4
溶液中においても安定した状態を示した。また、溶融亜
鉛浴中でサポートロールとして使用してもめっき鋼板の
品質に問題となるような現象は発生せず、長期間にわた
って使用することができた。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、従
来のような鋼鉄製基材に代えて、酸化物系セラミックス
の焼結または溶融成形部材を基材として用い、しかもこ
れらの成形部材の構成成分としてガラス形成成分である
SiO2, B2O3およびP2O5のいずれかを含有させることによ
って、部材に貫通気孔のないものにした後、その上に直
接酸化物系セラミックスのプラズマ溶射皮膜を施工した
ことにより、基材ならびに溶射皮膜の両者ともに溶融金
属と反応しない耐溶融金属性に優れた部材とすることが
できる。また、本発明方法の適用によって得られた溶融
亜鉛めっき浴用のシンクロール, サポートロール類など
の部材は、溶融亜鉛と反応しないうえ、優れた耐熱衝撃
性能を保有しているため、溶射皮膜表面は長期間にわた
って健全な状態を維持し、ドロス成分の付着も阻止でき
る。このため、製造される溶融亜鉛めっき鋼板は高い品
質を有し、この状態を長く続けることができるので、高
品質めっき鋼板を効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、連続的に溶融亜鉛めっき鋼板を製造す
る代表的なめっき浴の概要を示した図である。
【符号の説明】
1 めっき浴 2 シンクロール 3 サポートロール 4 めっき鋼板 5 ガイドロール 6 噴射ノズル

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材が、セラミックス成形部材で構成さ
    れ、この基材表面には酸化物系セラミックス溶射皮膜が
    形成されていることを特徴とするめっき浴用部材。
  2. 【請求項2】 上記セラミックス成形部材は、少なくと
    もSiO2, B2O3およびP2O5のなかから選ばれたいずれか1
    種以上のガラス形成酸化物を必須成分として含み、 Al2
    O3, Y2O3, Cr2O3 , MgO, ZrO2, TiO2などから選ばれる
    いずれか1種以上の酸化物を添加成分として含む焼結成
    形部材もしくは溶融成形部材であり、断面径が1〜 100
    μmの大きさの気孔が焼結体気孔率で5〜20%を示す範
    囲内で互いに独立した関係の閉気孔として存在している
    ことを特徴とする請求項1記載のめっき浴用部材。
  3. 【請求項3】 上記酸化物系セラミックス溶射皮膜は、
    Al2O3 , TiO2, ZrO2, MgO, CaO, Y2O3, CeO2およびSi
    O2のなかから選ばれたいずれか1種以上の酸化物からな
    り、膜厚が50〜800 μmの範囲にあることを特徴とする
    請求項1または2記載のめっき浴用部材。
  4. 【請求項4】 上記酸化物系セラミックス溶射皮膜は、
    気孔部が金属酸化物, 金属硼化物および金属窒化物から
    選ばれたいずれか1種以上の微粉末にて封孔されている
    ことを特徴とする請求項1または3に記載のめっき浴用
    部材。
  5. 【請求項5】 SiO2, B2O3およびP2O5のなかから選ばれ
    たいずれか1種以上のガラス形成酸化物を含み、その他
    Al2O3, Y2O3, Cr2O3 , MgO, ZrO2, TiO2などから選ば
    れるいずれか1種以上の酸化物を含有する原料粉末を混
    合し成形したのち1100℃以上の温度で焼成または溶融す
    ることにより、貫通気孔のないセラミックス焼結成形部
    材またはセラミックス溶融成形部材を形成し、これらの
    成形部材の表面を粗面化し、その後、このセラミックス
    成形部材からなる基材の表面に、 Al2O3, TiO2, ZrO2,
    MgO, CaO, CeO2およびSiO2のうちから選ばれたいずれ
    か1種以上の酸化物系セラミックスをプラズマ溶射して
    被覆することを特徴とするめっき浴用部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記酸化物系セラミックスのプラズマ溶
    射に当たっては膜厚厚が50〜800 μmになるように施工
    し、得られた酸化物系セラミックス溶射皮膜の表面をRa
    2〜10μmの粗さに調整することを特徴とする請求項5
    に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 上記酸化物系セラミックス溶射皮膜の表
    面および該皮膜内気孔部中に、酸化物, 硼化物および窒
    化物のうちから選ばれるいずれか1種以上の水溶液また
    はスラリーを塗布して封孔処理を行うことを特徴とする
    請求項5に記載の製造方法。
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