JP2000243331A - 冷陰極電子放出素子の駆動方法並びに製造方法 - Google Patents

冷陰極電子放出素子の駆動方法並びに製造方法

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JP2000243331A
JP2000243331A JP4600099A JP4600099A JP2000243331A JP 2000243331 A JP2000243331 A JP 2000243331A JP 4600099 A JP4600099 A JP 4600099A JP 4600099 A JP4600099 A JP 4600099A JP 2000243331 A JP2000243331 A JP 2000243331A
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JP
Japan
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electron
emitting device
peak value
voltage
driving
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JP4600099A
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English (en)
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Yasuhiro Hamamoto
康弘 浜元
Miki Tamura
美樹 田村
Keisuke Yamamoto
敬介 山本
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Original Assignee
Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子放出素子の電子放出特性をより安定化す
る。 【解決手段】 通常の駆動電圧がVf 以下の電圧にて駆
動される冷陰極電子放出素子を、通常の駆動に先立ち、
最初に、波高値が波高値がVf 以下の電圧Vs であるパ
ルス電圧を印加し、その後、波高値がVf 以上の電圧V
max となるまで、波高値が変化するパルス電圧を印加
し、波高値がVmax であるパルス電圧を1回以上印加し
た後、通常の駆動を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷陰極電子放出素
子の駆動方法及び製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては大別し
て熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類
のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界放
出型(以下、「FE型」という)、金属/絶縁層/金属
型(以下、「MIM型」という)や表面伝導型電子放出
素子型等がある。
【0003】FE型の例としてはW.P.Dyke &
W.W.Dolan, ”Field emissi
on”, Advance in Electron
Physics, 8, 89(1956)あるいは
C.A.Spindt, ”PHYSICAL Pro
perties of thin−film fiel
d emission cathodes with
molybdeniumcones”, J.App
l.Phys.,47,5248(1976)等に開示
されたものが知られている。
【0004】MIM型の例としてはC.A.Mea
d,”Operation of Tunnel−Em
ission Devices”,J.Apply.P
hys.,32,646 (1961)等に開示された
ものが知られている。
【0005】表面伝導型電子放出素子の例としては、
M.I.Elinson, Radio Eng.El
ectron Phys.,10,1290,(196
5)等に開示されたものがある。
【0006】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より、電子放出が生ずる現象を利用するものである。こ
の表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等
によるSnO2 薄膜を用いたもの[M.I.Elins
on, Radio Eng. ElectronPh
ys.,10,1290,(1965)]、Au薄膜に
よるもの[G.Dittmer, ”Thin Sol
id Films”,9,317(1972)]、In
23 /SnO2 薄膜によるもの[M.Hartwel
l andC.G.Fonstad, ”IEEE T
rans. ED Conf.”,519(197
5)]、カーボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、
第26巻、第1号、22頁(1983)]等が報告され
ている。
【0007】上述のFE型、MIM型、表面伝導型等の
電子放出素子は、基板上に多数素子を配列形成できる利
点があり、これらを応用した様々な画像表示装置の提案
がなされている。
【0008】基板上に形成された小面積の導電性薄膜
に、膜面に平行に電流を流すことにより、導電性薄膜内
に形成された電子放出部より電子を放出する表面伝導型
電子放出素子は、構造が単純で製造も容易であることか
ら、大面積にわたり多数の素子を形成することができ、
例えば画像表示装置等への応用が研究されている。
【0009】表面伝導型電子放出素子を画像表示装置へ
と応用した例としては、本出願人によるUSP5,06
6,883や特開平6−342636号公報等が挙げら
れる。これらの公報では、基板上に設けられた一対の素
子電極とこれら素子電極対に接続する導電膜と、導電膜
内に形成した電子放出部からなる表面伝導型電子放出素
子を2次元的に複数配置し、それぞれの電子放出素子か
ら放出される放出電子を個別に選択するように電気的な
選択手段を設け、入力信号に応じて画像を形成する手段
と製造方法が記載されている。
【0010】また、本出願人による特開平7−2352
55では、有機物の存在下において表面伝導型電子放出
素子に電圧を印加する等により、電子放出部近傍に炭素
を主成分とする堆積物を形成し、表面伝導型電子放出素
子の電子放出特性を向上させるための手法が開示されて
いる。
【0011】また、本出願人による特開平7−2352
75では、電子放出素子が形成された環境における有機
物の残留分圧を、1.3×10-6Pa以下にするなどの
手段により、電子放出特性を安定化する手法が開示され
ている。
【0012】また、本出願人による特開平9−2597
53では、2次元的に複数配置したそれぞれの表面伝導
型電子放出素子に対し、有機ガスの分圧が1.3×10
-6Pa以下の雰囲気中で、予め通常の駆動電圧の最大値
と、表面伝導型電子放出素子に入り得るノイズ電圧とを
加算した電圧よりも高い電圧パルスを印加することで、
通常駆動時の駆動回路の温度特性や外乱によって発生す
る放出電流の不可逆的な不安定性を抑制し、輝度むらを
低減する手法が開示されている。
【0013】上述の手法を応用して作成される表面伝導
型電子放出素子を用いた画像表示装置は、従来の他の方
式の画像表示装置よりも優れた特性が期待されている。
例えば、近年普及してきた液晶表示装置と比較しても、
自発光型であるためバックライトを必要としない点や、
視野角が広い点が優れている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、表面
伝導型電子放出素子は構造が単純で製造も容易であり、
また、優れた電子放出特性を有するため、画像形成部材
として螢光体を用いた画像形成装置、例えば、大型の自
発光型フラットディスプレイを構成するのに好適な電子
放出素子である。また、電子源を利用した、各種分析装
置、加工装置等への応用も期待される。このように、画
像形成装置等への応用を考慮すると、電子放出素子に対
しては、期待される電子ビーム量を安定して放出し続け
ることが求められる。更に信頼性の高い画像形成装置や
分析装置等を提供するためには、従来の電子放出素子に
対し、更に安定した電子放出特性を有する電子放出素子
が求められてきた。
【0015】従って、本発明の目的は、電子放出素子の
電子放出特性を更に安定化する、電子放出素子の駆動方
法並びに製造方法を提供することにある。
【0016】
【発明を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の駆動方法並びに製造方法は以下の通りであ
る。即ち、本発明の駆動方法は、冷陰極電子放出素子の
駆動方法であり、通常の駆動電圧がVf 以下の電圧にて
駆動される冷陰極電子放出素子の駆動方法であって、通
常の駆動に先立ち、最初に、波高値がVs であるパルス
電圧を印加し、その後、波高値がVf 以上の電圧Vmax
となるまで、波高値が変化するパルス電圧を印加し、波
高値がVmax であるパルス電圧を1回以上印加した後、
通常の駆動を行う電子放出素子の駆動方法である。
【0017】ここで、電圧Vs はVf 以下、前記電子放
出素子の電子放出しきい値電圧以上の電圧であることが
好ましい。また、前記パルス電圧の波高値がVs からV
max まで変化する間の各パルス電圧の波高値を、Nを2
以上の整数として、V1 、V2 、・・・、VN とする
時、1≦i<Nなるiについて、各パルス電圧の波高値
【0018】
【数2】 となっても良い。
【0019】また、Vmax の波高値で印加される各パル
スの印加時間の合計が、500μsec以上であっても
良く、60sec以下であっても良く、また、500μ
sec以上で且つ60sec以下であっても良い。ま
た、波高値がVs からVmax まで変化する間に印加され
る各パルスの印加時間の合計が、500μsec以上で
あっても良く、60sec以下であっても良く、また、
500μsec以上で且つ60sec以下であっても良
い。また、波高値がVs からVmax まで変化する間に印
加される各パルスの印加時間の合計と、Vmax の波高値
で印加されるパルスの印加時間の合計との和が、500
μsec以上であっても良く、60sec以下であって
も良く、また、500μsec以上で且つ60sec以
下であっても良い。
【0020】また、上記駆動方法が電子放出部に炭素乃
至炭素化合物を有する冷陰極電子放出素子の駆動方法で
あっても良く、基体上に、対向する一対の素子電極と、
該素子電極に連絡して形成された導電性薄膜と、前記一
対の素子電極間の前記導電性薄膜の一部に形成された電
子放出部を有する表面伝導型電子放出素子の駆動方法で
あっても良い。
【0021】また、本発明の冷陰極素子の製造方法は、
電子放出部を形成する工程と、電子放出部に炭素乃至炭
素化合物を有する膜を形成する工程を有し、前記炭素乃
至炭素化合物を有する膜を形成した後、上記駆動方法を
適用する製造方法である。
【0022】また、本発明は、表面伝導型電子放出素子
の予備駆動及び製造に好適に適用される。この表面伝導
型電子放出素子の製造方法は、基体上に、対向する一対
の素子電極と該素子電極に連絡する導電性薄膜を形成す
る工程と、前記電極対を介して前記導電性薄膜に通電す
ることにより前記表面伝導型電子放出素子の電子放出部
を形成するフォーミング工程と、前記フォーミング工程
の終了後に、有機物質が存在する環境下で、前記表面伝
導型電子放出素子に通電する活性化工程と、前記活性化
工程の終了後に、前記表面伝導型電子放出素子が存在す
る環境から、前記有機物質の分圧を1×10-6Pa以下
まで低減する安定化工程とを有し、この安定化工程後
に、上記駆動方法を適用する製造方法である。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に、上記課題を解決するため
の手段を詳しく説明する。本発明の駆動方法の説明に先
立ち、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子が有
する電気特性について説明する。図2に、本発明を適用
可能な表面伝導型電子放出素子の典型的な構成例の概略
図を示す。図2(a)は平面型表面伝導型電子放出素子
の平面図、図2(b)は平面型表面伝導型電子放出素子
の断面図、図2(c)は垂直型表面伝導型電子放出素子
の断面図である。図2(a)〜(c)中、同一の記号は
同種の構成部材を示す。図2において、1は絶縁性の基
板、2及び3は素子電極、4は素子電極2、3に電気的
に連絡した導電性薄膜、5は導電性薄膜中に形成した電
子放出部、21は絶縁性の材料からなる段差形成部であ
る。
【0024】図6は、次に説明する表面伝導型電子放出
素子の電気特性を測定するための測定系を示す概略図で
あり、図6中、図2と同一の記号で示したものは、図2
と同一の構成部材を示す。尚、図6に示す装置は、後述
する表面伝導型電子放出素子の製造工程で使用される場
合もある。ここで、54は電子放出部5から放出した電
子を捕捉するためのアノード電極、51は素子電極2、
3間に印加する電圧(以降、素子電圧Vf と呼ぶ)を発
生するための電源、50は素子電極2、3間を流れる素
子電流If を計測するための電流計、53はアノード電
極に印加する高電圧を発生するための高圧電源、52は
アノード電極に流れる放出電流Ie を計測するための電
流計、55は真空槽、57は真空槽55と真空ポンプ5
6との間に設けたゲートバルブである。また、当該装置
を後述する活性化工程でも使用する場合は、活性化物質
の収容容器58と、活性化物質の真空槽への導入量を制
御する制御バルブ59を有する。
【0025】表面伝導型電子放出素子の電気特性は、通
常、放出電流Ie と素子電圧Vf との関係、並びに、素
子電流If と素子電圧Vf との関係により代表される。
これらの関係を求めるためには、図6に示すように、表
面伝導型電子放出素子を真空に排気された環境下に配置
し、素子の2mm〜8mm上方にアノード電極を配置す
る。そして、アノード電極に対して100V〜10kV
程度の電圧を印加し、素子電極間には素子電圧Vf を印
加して、この時流れる素子電流If と放出電流Ie を計
測する。
【0026】以上のようにして求めた電気特性の代表的
な例を図7に示す。ここで、放出電流Ie は素子電流I
f に比べて著しく小さいので、任意単位で示している。
なお、縦軸・横軸ともリニアスケールである。図中に示
されるように、表面伝導型電子放出素子はある電圧(し
きい値電圧V th)以上の素子電圧Vf を印加すると、急
激に放出電流Ie が単調増加し、また、後述する安定化
処理を行った表面伝導型電子放出素子においては、素子
電流I f も素子電圧Vf の増加に伴い急激に単調増加す
る。
【0027】安定化処理とは、後述する活性化処理時に
見られるような、表面伝導型電子放出素子への通電によ
って電子放出部やその近傍に更に新たな炭素もしくは炭
素化合物が堆積する現象を抑制するため、表面伝導型電
子放出素子周辺の空間に存在する、もしくは表面上に吸
着している、有機ガスの残留量を低減させる処理であ
る。安定化処理の具体的な手法としては、新たな有機ガ
スの流入がない状態で、例えば、真空槽並びに表面伝導
型電子放出素子を加熱しながら真空排気を継続すること
で行うことができる。
【0028】上述の電気特性について、図7に示した手
法とは異なる表示手法にて、表示した例を図8に示す。
図8に示すグラフの表現方法は、所謂Fowler−N
ordheimプロットと呼ばれる表現方法であり、電
子放出素子から放出される電子が電界放出によるもので
ある時、右下がりの直線となる。
【0029】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素
子の電気特性を、図8のFowler−Nordhei
mプロットで表現すると、図8中に示すように、放出電
流I e および素子電流If 共に右下がりの直線となって
表される。尚、素子電流から求めた直線と、放出電流か
ら求めた直線の傾きは、ほぼ同じ値となる。これより、
素子電流If の伝導機構は電界放出によるものであるこ
と、また、A.Asaiら〔SID Intl.Sym
p.Digest Tech.Papers,127
(1997)〕によれば、放出電流Ie は素子電流If
の一部が多重の弾性散乱を行った後にアノード電極へ到
達したものであるから、電界放出による素子電流If
伝導機構を反映して、放出電流Ie もFowler−N
ordheimプロットで右下がりの直線として表され
ることが言える。素子電流If は電界放出によるので、
φを電子放出部の仕事関数とすると、
【0030】
【数3】 と表すことができる。ここで、αは電子放出領域であ
り、βは電界換算係数であって、電子放出部近傍の形状
を反映するパラメータである。尚、βVf が電界放出を
行う領域の電界強度に相当する。従って、仕事関数φの
値を指定すれば、図8の直線の傾きとy軸との切片か
ら、放出領域αと電界換算係数βを得ることができる。
【0031】ここで、電子放出素子を一定の素子電圧V
f で駆動する時、駆動中に仕事関数φと電界換算係数β
が変化しないならば、素子電流If の変動は放出領域α
の変動であるということができる。更に、放出電流Ie
は素子電流If の一部であるので、放出電流Ie の変動
は放出領域αの変動に起因すると言ってもよい。詳しく
は後述するが、本発明の駆動方法はこの放出領域αの変
動を抑えることで、放出電流Ie を安定化させる駆動方
法である。
【0032】次に、本発明を適用可能な表面伝導型電子
放出素子が有する別の特性である「メモリ特性」につい
て説明する。「メモリ特性」とは、表面伝導型電子放出
素子の電気特性カーブ(放出電流と駆動電圧、並びに素
子電流と駆動電圧の関係)が、それまで経験した印加電
圧の最大値よりも大きな電圧を新たに経験すると、異な
る特性へとシフトし、以降、更に大きな駆動電圧を経験
するまでそれが維持されるという特性である。
【0033】メモリ特性は、先述した安定化処理を施し
た表面伝導型電子放出素子に顕著に見られる特性であ
る。これを、図9を用いて説明する。図9(a)は、表
面伝導型電子放出素子に印加する素子電圧Vf と、アノ
ード電極にて捕捉される放出電流Ie との関係を表す図
である。図中、グラフの横軸は素子電圧Vf を、縦軸は
放出電流Ie の大きさを表す。図中の電気特性曲線A
は、安定化処理後に初めて印加される素子電圧の最大値
(以降、最大素子電圧V max と呼ぶ)がVf3f1である
時の特性曲線であり、同様に、特性曲線BはVma x がV
f2(>Vf1)の時、特性曲線CはVmax がVf3(>
f2)の時の特性曲線である。
【0034】図で示すように、最大素子電圧がVf1であ
る時、印加電圧がVf1以下であれば、経時劣化が無視で
きる範囲の時間において、素子電圧Vf と放出電流Ie
の関係は常に特性曲線A上にある。ところが、ひとたび
f1以上の最大素子電圧、例えばVf2を経験させると、
特性曲線はBにシフトし、再びVf1以下の素子電圧を印
加しても、放出電流Ie は特性曲線Aで得られた時の値
よりも小さな値になる。更に大きな最大素子電圧、例え
ばVf3を経験させると、特性曲線はCにシフトし同様の
傾向を示す。尚、素子電流If と素子電圧Vf との関係
においても、同様の特性を有している。
【0035】上記特性曲線A、B、Cに対応する素子電
流If と素子電圧Vf の関係をFowler−Nord
heimプロットで表し、その傾きから電界換算係数β
A 、βB 、βC 、を求めたところ、βA >βB >βC
あり、更に、βAf1≒βBf2≒βCf3という結果
が得られる。これは即ち、最大素子電圧Vmax が大きく
なるに伴い、電子放出部近傍の最大電界強度βVmax
一定となるように、電子放出部近傍の形状が変化し、そ
れがβの変化となって現れていることを表している。
【0036】このように、安定化工程後に、それまで経
験したことの無いVmax を初めて経験する時、電子放出
部近傍の形状変化を伴う。尚、一度Vmax を経験した
後、V max 以下の素子電圧Vf にて駆動を行うと、電界
換算係数βの変化はほとんど無く、従って、電子放出部
近傍の形状変化も少ない。また、Vf <Vmax なる素子
電圧で駆動するため、電気放出部近傍に印加される電界
強度βVf は、最大素子電圧印加時に規定される電界強
度βVmax よりも低くなる。
【0037】一方で、電子放出部に炭素ないし炭素化合
物の膜を有する冷陰極電子放出素子、とりわけ、表面伝
導型電子放出素子において、電子放出部が経験する最大
電界強度を維持した状態で駆動を継続すると、強い電界
強度の影響で、駆動に伴い電子放出領域αが減少してい
く。
【0038】本発明の駆動方法で行われるように、電子
放出素子の駆動を、最大電界強度βVmax よりも低い電
界強度で駆動すると、駆動に伴う放出領域αの減少を抑
えることができるため、放出電流Ie を安定させること
ができる。
【0039】一方で、安定化工程後に最初に経験するV
max がある値以上(例えば、電子放出しきい値電圧以
上)である時、瞬間的に大きな素子電流If 並びに、放
出電流Ie が流れる場合がある。この様子を図10に示
す。図10(a)は、素子電圧Vf の時間変化であり、
図10(b)はこれに対応する素子電流If の時間変化
である。なお、図中には示していないが、放出電流Ie
も素子電流If と同様な傾向を示す。このように、電圧
印加の初期に極めて大きな電流が流れると、電子放出部
近傍にダメージを与え、放出電流の減少や素子の破壊等
を引き起こす場合がある。
【0040】これに対し、本発明の駆動方法は、上記電
圧印加初期の瞬間的な電流増大を抑制し、最大素子電圧
max を経験させた後、Vmax よりも低い素子電圧で駆
動を行うことで放出電流を安定させる駆動方法である。
以下、図1を用いて本発明の駆動方法を説明する。図1
は、本発明の駆動方法の一例を示す図であり、安定化工
程を経た電子放出素子に対して、通常の駆動に先立ち印
加する、パルス状電圧を示す図である。図で示すよう
に、最初Vs なる波高値のパルス電圧を印加した後、V
max まで、徐々に波高値を上昇させながらパルスを印加
し、パルスの波高値がVmax に達した時点で波高値の上
昇を止め、Vmax の波高値で1回以上パルス印加を繰り
返す。この時点までの電圧パルス印加を総称して、以
降、予備駆動と呼ぶ。この予備駆動を行った後、Vmax
よりも低く、且つ電子放出しきい値電圧以上の素子電圧
drv の波高値のパルスで駆動を行うことで、安定して
電子放出を行うことができる。
【0041】ここで、Vs の値は最終的な駆動電圧V
drv 並びに、活性化時に最終的に印加した電圧よりも低
い電圧であることが好ましい。これにより、従来電圧印
加初期に流れていた大きな電流を抑制することができ
る。なお、Vs は電子放出しきい値電圧Vth以上に設定
してもよい。安定化工程後に初めて印加される電圧の値
がVth以下である場合、電圧印加の有無は、予備駆動並
びにその後の電子放出素子の特性にほとんど影響を与え
ないからである。また、波高値をVs からVmax まで変
化させる際の、1回毎の波高値の変化量は20%以内で
あることが好ましい。即ち、波高値がVs からVmax
でN個のパルス、V1 ≦V2 ≦V3 ≦…≦V N で構成さ
れるとすると、1≦i≦N−1なる任意のiについて、
i+1 /Vi≦1.2であることが好ましい。これによ
り、各パルス印加毎の電子放出部近傍における急激な電
界強度の変化を抑え、素子へのダメージを抑制できる。
また、Vmax の値は、表面伝導型電子放出素子を損傷さ
せない程度の値を上限とする。
【0042】予備駆動中、波高値がVmax にて駆動され
る時間の総和、例えば、(パルス幅)×(パルス数)
は、500μsec以上であることが望ましい。これに
より、Vdrv による通常駆動時において放出領域αが安
定し、従って、放出電流Ie が安定する。また、波高値
がVmax にて駆動される時間の総和は、60sec以下
であることが好ましい。この値以上の時間Vmax による
駆動を行うと、予備駆動中に放出領域αが大きく減少
し、通常駆動時の放出電流Ie が少なくなってしまうた
めである。尚、波高値がVs からVmax まで変化する間
のパルスの印加時間の総和も、500μsec以上で6
0sec以下であることが好ましい。
【0043】以下、本発明を適用可能な表面伝導型電子
放出素子の構成と作成方法、これを用いた電子源の構
成、並びにこの電子源を用いた画像表示装置について述
べた後、本発明の特徴である予備駆動処理を、上記電子
源並びに画像表示装置に対して適用するための方法につ
いて述べる。
【0044】<表面伝導型電子放出素子の構成と製法>
図2を用いて、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出
素子について説明する。本発明を適用し得る表面伝導型
電子放出素子の基本的構成には大別して、平面型及び垂
直型の2つがある。先ず、平面型表面伝導型電子放出素
子について説明する。図2は、本発明を適用可能な平面
型表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式図であり、
図2(a)は平面図、図2(b)は断面図である。
【0045】図2において、1は基板、2と3は素子電
極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。基板1と
しては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少した
ガラス、ソーダライムガラス、及びソーダライムガラス
にスパッタ法等により形成したSiO 2 を積層したガラ
ス基板、アルミナ等のセラミックス基板、並びにSi基
板等を用いることができる。
【0046】対向する素子電極2、3の材料としては、
一般的な導体材料を用いることができる。これは例えば
Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、C
u、Pd等の金属或は合金及びPd、Ag、Au、Ru
2 、Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等か
ら構成されるの印刷導体、In23 −SnO2 等の透
明導電体及びポリシリコン等の半導体導体材料等から適
宜選択することができる。
【0047】素子電極間隔L、素子電極長さW、導電性
薄膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して設計さ
れる。素子電極間隔Lは、好ましくは数百nmから数百
μmの範囲とすることができ、より好ましくは、数μm
から数十μmの範囲とすることができる。素子電極長さ
Wは、電極の抵抗値、電子放出特性を考慮して、数μm
から数百μmの範囲とすることができる。素子電極2、
3の膜厚dは、数十nmから数μmの範囲とすることが
できる。尚、図2に示した構成だけでなく、基板1上
に、導電性薄膜4、対向する素子電極2、3の順に積層
した構成とすることもできる。
【0048】導電性薄膜4には、良好な電子放出特性を
得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが
好ましい。その膜厚は、素子電極2、3へのステップカ
バレージ、素子電極2、3間の抵抗値及び後述するフォ
ーミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は、
数百pmから数百nmの範囲とするのが好ましく、より
好ましくは1nmより50nmの範囲とするのが良い。
その抵抗値は、Rsが102 から107 Ω/□の値であ
る。なおRsは、厚さがt、幅がwで長さがlの薄膜の
抵抗Rを、R=Rs(l/w)とおいたときに現れる量
である。本明細書において、フォーミング処理について
は、通電処理を例に挙げて説明するが、フォーミング処
理はこれに限られるものではなく、膜に亀裂を生じさせ
て高抵抗状態を形成する処理を包含するものである。
【0049】導電性薄膜4を構成する材料は、Pd、P
t、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、F
e、Zn、Sn、Ta、W、Pd等の金属、PdO、S
nO2、In23 、PbO、Sb23 等の酸化物、
HfB2 、ZrB2 、LaB6、CeB6 、YB4 、G
dB4 等の硼化物、TiC、ZrC、HfC、Ta、
C、SiC、WC等の炭化物、TiN、ZrN、HfN
等の窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボン等の中か
ら適宜選択される。
【0050】ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子
が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子が個々に
分散配置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あるい
は重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体
として島状構造を形成している場合も含む)をとってい
る。微粒子の粒径は、0.1nmの数倍から数百nmの
範囲、好ましくは、1nmから20nmの範囲である。
【0051】電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形
成された高抵抗の亀裂により構成され、導電性薄膜4の
膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミング等の手
法等に依存したものとなる。電子放出部5の内部には、
0.1nmの数倍から数十nmの範囲の粒径の導電性微
粒子が存在する場合もある。この導電性微粒子は、導電
性薄膜4を構成する材料の元素の一部、あるいは全ての
元素を含有するものとなる。電子放出部5及びその近傍
の導電性薄膜4には、炭素及び炭素化合物を有すること
もできる。
【0052】次に、垂直型表面伝導型電子放出素子につ
いて説明する。図2(c)は、本発明の表面伝導型電子
放出素子を適用できる垂直型表面伝導型電子放出素子の
一例を示す模式図である。図2(c)においては、図2
(a)ならび(b)に示した部位と同じ部位には図2
(a)ならび(b)に付した符号と同一の符号を付して
いる。図において、21は段差形成部である。基板1、
素子電極2及び3、導電性薄膜4、電子放出部5は、前
述した平面型表面伝導型電子放出素子の場合と同様の材
料で構成することができる。段差形成部21は、真空蒸
着法、印刷法、スパッタ法等で形成されたSiO2 等の
絶縁性材料で構成することができる。段差形成部21の
膜厚は、先に述べた平面型表面伝導型電子放出素子の素
子電極間隔Lに対応し、数百nmから数十μmの範囲と
することができる。この膜厚は、段差形成部の製法、及
び、素子電極間に印加する電圧を考慮して設定される
が、数十nmから数μmの範囲が好ましい。
【0053】導電性薄膜4は、素子電極2及び3と段差
形成部21作成後に、該素子電極2、3の上に積層され
る。電子放出部5は、図2(c)においては、段差形成
部21に形成されているが、作成条件、フォーミング条
件等に依存し、形状、位置ともこれに限られるものでな
い。
【0054】上述の表面伝導型電子放出素子の製造方法
としては様々な方法があるが、その一例を図3に模式的
に示す。以下、図2及び図3を参照しながら製造方法の
一例について説明する。図3においても、図2に示した
部位と同じ部位には図2に付した符号と同一の符号を付
している。 1)基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を用いて十分
に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により素子電極材
料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて
基板1上に素子電極2、3を形成する(図3(a))。 2)素子電極2、3を設けた基板1に、有機金属溶液を
塗布して、有機金属薄膜を形成する。有機金属溶液に
は、前述の導電性膜4の材料の金属を主元素とする有機
金属化合物の溶液を用いることができる。有機金属薄膜
を加熱焼成処理し、例えば導電性薄膜形状に対応したマ
スクを用いてリフトオフを行う方法や、エッチング等に
よりパターニングし、導電性薄膜4を形成する(図3
(c))。ここでは、有機金属溶液の塗布法を挙げて説
明したが、導電性薄膜4の形成法はこれに限られるもの
でなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積法、
分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用いる
こともでき、インクジェット法等により直接パターニン
グを行うことも出来る。
【0055】3)続いて、フォーミング工程を施す。こ
のフォーミング工程の方法の一例として、図6を用いて
真空容器内での通電処理による方法を説明する。図6に
おいて、55は真空容器であり、ゲートバルブ57を通
じてターボ分子ポンプやスパッターイオンポンプ、クラ
イオポンプなどからなる真空ポンプ56により排気され
る。なお、必要に応じてスクロールポンプやロータリー
ポンプ、ソープションポンプ等からなる補助ポンプが設
けられる場合もある。58は以降で説明する活性化工程
で用いる活性化ガスを収容する容器であり、バリアブル
リークバルブやニードルバルブ等のスローリークバルブ
からなる調節バルブ59を通じて真空容器55に接続し
ている。
【0056】素子電極2、3には電圧印加手段を接続す
る。例えば、図6に示すように、素子電極2をグランド
電位に接続し、素子電極3を電流導入端子を通じて電源
51に接続する。尚、素子電極2、3間を流れる電流値
をモニターするために、電流計50を設ける。54はこ
の後の工程で用いられるアノード電極であり、電流計5
2を通じて高圧電源53に接続している。
【0057】真空容器内を排気した後、素子電極2、3
間に、電源51を用いて通電を行うと、導電性薄膜4の
部位に、構造の変化した電子放出部5が形成される(図
3(c))。通電フォーミングによれば導電性薄膜4に
局所的に破壊、変形もしくは変質等の構造の変化した部
位が形成される。該部位が電子放出部5を構成する。通
電フォーミングの電圧波形の例を図4に示す。電圧波形
は、パルス波形が、好ましい。これにはパルス波高値を
定電圧としたパルスを連続的に印加する図4(a)に示
した手法とパルス波高値を増加させながら、電圧パルス
を印加する図4(b)に示した手法がある。
【0058】図4(a)におけるT1及びT2は電圧波
形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μse
c〜10msec、T2は、10μsec〜10mse
cの範囲で設定される。パルスの波高値は、表面伝導型
電子放出素形態に応じて適宜選択される。このような条
件のもと、例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。
パルス波形は矩形波に限定されるものではなく、三角波
など所望の波形を採用することができる。
【0059】図4(b)におけるT1及びT2は、図4
(a)に示したのと同様とすることができる。パルスの
波高値は、例えば0.1Vステップ程度ずつ、増加させ
ることができる。通電フォーミング処理の終了は、例え
ば導電性薄膜2が局所的に破壊、変形することによって
生じる抵抗値の変化を読み取ることで判断することが出
来、一例として、パルス間隔T2中に、導電性薄膜2を
局所的に破壊、変形しない程度の電圧を印加し、電流を
測定して検知することができる。例えば0.1V程度の
電圧印加により流れる素子電流を測定し、抵抗値を求め
て、1MΩ以上の抵抗を示した時、通電フォーミングを
終了させる。
【0060】4)フォーミングを終えた素子には活性化
工程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活性化工程と
は、この工程により、素子電流If 及び放出電流Ie
著しく変化する工程である。活性化工程は、例えば、有
機物質のガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミング
と同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことがで
きる。パルス電圧としては、図4(a)に示した電圧パ
ルスの他、図5に示す両極性の電圧パルスを用いること
ができる。
【0061】活性化工程時の真空容器内の雰囲気は、例
えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空
容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを
利用して形成することができる他、イオンポンプなどに
より一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質のガス
を導入することによっても得られる。このときの好まし
い有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の
形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応
じ適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカ
ン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭
化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、ア
ミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸
類等を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタ
ン、プロパン等の飽和炭化水素、エチレン、プロピレン
等の不飽和炭化水素、ブタジエン、n−ヘキサン、l−
ヘキセン、ベンゼン、トルエン、O−キシレン、ベンゾ
ニトリル、トルニトリル、クロロエチレン、トリクロロ
エチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノー
ル、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、
メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルアミン、
エチルアミン、酢酸、プロピオン酸等あるいはこれらの
混合物が使用できる。この処理により、雰囲気中に存在
する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に
堆積し、素子電流I f 、及び放出電流Ie が著しく変化
するようになる。活性化工程の終了判定は、素子電流I
f や放出電流Ie を測定しながら、適宜行う。なおパル
ス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定され
る。
【0062】5)このような工程を経て得られた電子放
出素子に対して、安定化工程を行うことが好ましい。こ
の工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程であ
る。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生
するオイル等の有機物質が素子の特性に影響を与えない
ように、オイルを使用しないものを用いるのが好まし
い。具体的には、磁気浮上型ターボ分子ポンプ、クライ
オポンプ、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空
排気装置を挙げることが出来る。
【0063】前記活性化の工程で、排気装置として油拡
散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生する
オイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成
分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有
機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新た
に堆積しない分圧で1×10-6Pa以下が好ましく、さ
らには1×10-8Pa以下が特に好ましい。さらに真空
容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、
真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有機物質分子
を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件
は、80〜250℃好ましくは150℃以上で、できる
だけ長時間処理するのが望ましいが、特にこの条件に限
るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素
子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行
う。真空容器内の圧力は極力低くすることが必要で、1
×10-5Pa以下が好ましく、さらに1×10-6Pa以
下が特に好ましい。
【0064】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空容器の圧力は多少上昇してもある程
度安定な特性を維持することが出来る。このような真空
雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素
化合物の堆積を抑制でき、また真空容器や基板などに吸
着したH2 OやO2 なども除去でき、結果として素子電
流If 、放出電流Ie が安定する。
【0065】6)上記安定化工程を行った後、通常の駆
動を行う前に、素子電極2、3間に先述した予備駆動電
圧パルスを印加する予備駆動工程を行う。以上により、
本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子の製造工程
を終了する。
【0066】完成した電子放出素子に対して、素子電極
2、3間に、予備駆動工程で印加したVmax 以下の駆動
電圧Vdrv を印加し、電子放出素子の上方に配置したア
ノード電極54に高圧電源53を用いて高電圧を印加す
ることで、安定した電子放出を得ることができる。
【0067】なお、この予備駆動は、通常、製造工程の
最終段階、例えば安定化工程の後または安定化工程の一
環として行われるが、在庫後出荷前のリフレッシュ工程
として、または電子放出素子の使用開始後的適宜のリフ
レッシュモードとして行うことも可能である。
【0068】
【実施例】以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を説
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
なく、本発明の目的が達成される範囲内で、各要素の置
換えや設計変更がなされたものを包含するものである。 [実施例1]本実施例は、図2に模式的に示したものと
同様の構成を有する表面伝導型電子放出素子に対して、
本発明の駆動方法を適用した例である。図3に基づき、
本実施例で用いられる電子放出素子の製造方法を説明す
る。
【0069】工程−a(図3の(a)) 石英基板からなる基板1を洗浄後、スパッタ法により基
板1上に5nmのTiと50nmのPtを堆積した。そ
の後、堆積膜上にフォトレジストを塗布し、素子電極対
2並びに3に対応する形状のパターンを形成した後、エ
ッチングにより不要な部分のPtとTiを除去し、その
後レジストを除去することで基板1上に素子電極2、3
を形成した。尚、素子電極2、3間の間隔Lは3μm、
素子電極の長さWは500μmとした。
【0070】工程−b(図3の(b)) 素子電極2、3を設けた基板1上に、真空蒸着により厚
さ50nmのCrを堆積し、このCr膜に対してフォト
リソグラフィー技術を用いて導電性薄膜を形成する位置
に対応した開口部を形成する。その後、有機Pd化合物
の溶液(ccp−4230:奥野製薬(株)製)を塗布
し、大気中で300℃の加熱処理を施した。 工程−c(図3の(c)) 次に、工程−bで形成したCr膜をウエットエッチによ
り除去し、純水で洗浄後乾燥し、導電性薄膜4を形成し
た。
【0071】以降の工程は、図6に示すように、製造工
程中の電子放出素子を真空容器55内に配置し、電気的
接続を行った後実施した。図に示すように、素子電極2
はグランド電位に接続し、素子電極3は電流導入端子を
通じて電流計50並びに素子電圧電源51に接続してい
る。また、基板1の5mm上方にアノード電極54を配
置し、アノード電極54は電流導入端子を通じて電流計
52並びに高圧電源53に接続している。 工程−d 真空容器55内を、スクロールポンプ(不図示)並びに
磁気浮上型ターボ分子ポンプ56を用いて、1×10-3
Pa以下程度まで排気した後、素子電圧電源51で発生
させた電圧を素子電極3に印加し、フォーミング処理を
施し電子放出部5を形成した。印加した電圧は図4の
(b)に示すようにパルス状の電圧であり、時間の経過
とともに波高値の漸増するパルスである。パルス幅T1
は1msecとし、パルス間隔T2は16.7msec
とした。フォーミング処理中、パルス波高値が5Vに達
した時点で電流計50を流れる電流値が激減した。その
後、パルス波高値が5.5Vになるまでパルス電圧を印
加した後、電圧の印加を停止し、素子電極2、3間の抵
抗値を測定したところ、1MΩ以上の値を示したため、
フォーミング処理を終了した。
【0072】工程−e 真空容器55内の排気を更に継続し、容器内圧力が10
-6Pa以下まで減少した後、スローリークバルブ59を
調節して、活性化ガス収容容器58より真空容器55内
にベンゾニトリルガスを導入して活性化工程を行った。
活性化工程は、活性化ガスを導入した真空容器内圧力が
10-4Paになるように調節し、素子電圧電源51で発
生させた電圧を素子電極3に印加することで行った。印
加した電圧は図5に示すように両極性のパルス状の電圧
であり、VfpとVfnの絶対値が等しい一定のパルスであ
る。パルス波高値は16Vとし、パルス幅T3は1ms
ecとし、パルス間隔T4は16.7msecとした。
活性化処理は1時間行い、その後電圧の印加を停止し、
活性化ガスの導入を停止して真空容器内より活性化ガス
を排気した。
【0073】工程−f 不図示のヒーターを用いて真空容器55全体並びに電子
放出素子を一旦250℃に10時間加熱し更に排気を継
続することで、その後の室温時における真空容器内圧力
を1×10-8Pa程度まで低下させた。
【0074】以上のように、真空容器内圧力を調整した
後、本発明の駆動方法の特徴である予備駆動を行った。
予備駆動時のパルス電圧波形を図1に示す。図1中、V
s は1Vとし、Vmax は16Vとした。パルス波高値が
s からV max に変化する間、パルス幅は20μsec
とし、パルス間隔は100msecとした。また、パル
ス波高値は0.2Vステップで1パルス毎に増加させ
た。パルス波高値がVs からVmax まで変化する間に印
加された各パルスの印加時間の合計は、500μsec
である。パルス波高値がVmax に達した後、波高値をV
max のまま維持してパルス電圧の印加を行った。ここ
で、パルス幅を100μsec、パルス間隔を100m
secとし、パルス波高値がVmax であるパルス電圧を
合計5発印加した。
【0075】その後、素子電圧をVf =15Vに設定し
て駆動を行った。一方、比較のために、全く同様の製法
にて作成した電子放出素子に対して、予備駆動を行わず
に最初から駆動電圧を15Vに設定して駆動を行った。
両者を比較したところ、予備駆動を行った素子は、予備
駆動を行わなかった素子に比べて、駆動中の放出電流並
びに素子電流の減少と変動が少なく安定な電子放出特性
が得られた。
【0076】尚、電子放出素子の駆動中の素子電流の電
気特性から、放出領域αと電界換算係数βを観測したと
ころ、本発明を適用した電子放出素子は、駆動期間内に
おいて、両者とも変動が少なく安定しており、とりわけ
放出領域αの安定性が、比較対象の電子放出素子に比べ
優れていた。
【0077】[実施例2]本実施例は、実施例1の工程
−fまで同様の工程を行った素子に対して、本発明の駆
動方法を適用した第2の例である。実施例1の安定化工
程(工程−f)まで終了した素子に対し、以下の予備駆
動を適用した。尚、工程−dで行われた活性化工程中に
印加するパルス電圧波高値は15Vとした。
【0078】予備駆動時のパルス電圧波形を図1に示
す。図1中、Vs は8Vとし、Vmax は15.5Vとし
た。パルス波高値がVs からVmax に変化する間、パル
ス幅は1msecとし、パルス間隔は10msecとし
た。また、パルス波高値は0.1Vステップで800パ
ルス毎に増加させた。パルス波高値がVs からVmax
で変化する間に印加された各パルスの印加時間の合計
は、60secである。
【0079】パルス波高値がVmax に達した後、波高値
をVmax のまま維持してパルス電圧の印加を行った。こ
こで、パルス幅を1msec、パルス間隔を10mse
cとし、パルス波高値がVmax であるパルス電圧を合計
60000発印加した。パルス波高値がVmax であるパ
ルス印加時間の合計は、60secである。
【0080】その後、素子電圧をVf =15Vに設定し
て駆動を行った。一方、比較のために、全く同様の製法
にて作成した電子放出素子に対して、予備駆動を行わず
に最初から駆動電圧を15Vに設定して駆動を行った。
両者を比較したところ、予備駆動を行った素子は、予備
駆動を行わなかった素子に比べて、駆動中の放出電流並
びに素子電流の減少と変動が少なく安定な電子放出特性
が得られた。
【0081】尚、電子放出素子の駆動中の素子電流の電
気特性から、放出領域αと電界換算係数βを観測したと
ころ、本発明を適用した電子放出素子は、駆動期間内に
おいて、両者とも変動が少なく安定しており、とりわけ
放出領域αの安定性が、比較対象の電子放出素子に比べ
優れていた。
【0082】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
電子放出素子からの放出電流を、長期に渡り安定させる
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の駆動方法並びに製造方法で使用され
る電圧パルスを説明する図である。
【図2】 本発明を適用可能な電子放出素子を示す概略
平面図、並びに概略断面図である。
【図3】 本発明を適用可能な電子放出素子の製造工程
を示す図である。
【図4】 本発明を適用可能な電子放出素子のフォーミ
ング工程中に使用する電圧パルスを示す図である。
【図5】 本発明を適用可能な電子放出素子の活性化工
程中に使用する電圧パルスを示す図である。
【図6】 本発明を適用可能な電子放出素子の製造なら
びに電気特性の測定に使用する真空装置並びに駆動及び
測定装置を示す図である。
【図7】 本発明を適用可能な電子放出素子の電気特性
を示す図である。
【図8】 本発明を適用可能な電子放出素子の電気特性
を示す図である。
【図9】 本発明を適用可能な電子放出素子のメモリ特
性を説明する図である。
【図10】 本発明を適用可能な電子放出素子に電圧を
印加した際の素子電流の変化を説明する図である。
【符号の説明】
1:基板、2及び3:素子電極、4:導電性薄、5:電
子放出部、21:段差形成部、50:電流計、51:電
源、52:電流計、53:高圧電源、54:アノード電
極、55:真空容器、56:真空ポンプ、57:ゲート
バルブ、58:活性化ガス収容容器、59:スローリー
クバルブ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 敬介 東京都大田区下丸子3丁目30番2号キヤノ ン株式会社内 Fターム(参考) 5C036 EE01 EE02 EE14 EF01 EF06 EF09 EG12 EG48 EH26 5C080 AA08 BB05 CC03 DD05 DD29 FF10 HH17 JJ04 JJ06 KK02 KK43

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 通常の駆動電圧としてVf 以下の電圧を
    印加される冷陰極電子放出素子の駆動方法であって、 通常の駆動に先立ち、最初に、波高値がVs であるパル
    ス電圧を印加し、その後、波高値がVs 及びVf より高
    い電圧Vmax となるまで、波高値が変化するパルス電圧
    を印加し、 波高値がVmax であるパルス電圧を1回以上印加した
    後、 通常の駆動を行うことを特徴とする、電子放出素子の駆
    動方法。
  2. 【請求項2】 前記電圧Vs がVf 以下の電圧であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子の駆動方
    法。
  3. 【請求項3】 前記パルス電圧波高値Vs が、前記電子
    放出素子の電子放出しきい値電圧以上であることを特徴
    とする請求項1に記載の電子放出素子の駆動方法。
  4. 【請求項4】 前記パルス電圧の波高値がVs からV
    max まで変化する間の各パルス電圧の波高値を、Nを2
    以上の整数として、V1 、V2 、・・・、VNとする
    時、1≦i<Nなるiについて、各パルス電圧の波高値
    が 【数1】 の関係を満たすことを特徴とする請求項2または3に記
    載の電子放出素子の駆動方法。
  5. 【請求項5】 波高値がVmax である単数または複数個
    のパルスの印加時間の合計が、500μsec以上であ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載
    の電子放出素子の駆動方法。
  6. 【請求項6】 波高値がVmax である単数または複数個
    のパルスの印加時間の合計が、60sec以下であるこ
    とを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の電
    子放出素子の駆動方法。
  7. 【請求項7】 波高値がVs からVmax まで変化する間
    に印加される各パルスの印加時間の合計が、500μs
    ec以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
    か1つに記載の電子放出素子の駆動方法。
  8. 【請求項8】 波高値がVs からVmax まで変化する間
    に印加される各パルスの印加時間の合計が、60sec
    以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1
    つに記載の電子放出素子の駆動方法。
  9. 【請求項9】 波高値がVs からVmax まで変化する間
    に印加される各パルスの印加時間の合計が、500μs
    ec以上で且つ60sec以下であることを特徴とする
    請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子放出素子の駆
    動方法。
  10. 【請求項10】 波高値がVs からVmax まで変化する
    間に印加される各パルスの印加時間の合計と、Vmax
    波高値で印加される単数または複数個のパルスの印加時
    間の合計との和が、500μsec以上であることを特
    徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子放出
    素子の駆動方法。
  11. 【請求項11】 波高値がVs からVmax まで変化する
    間に印加される各パルスの印加時間の合計と、Vmax
    波高値で印加される単数または複数個のパルスの印加時
    間の合計との和が、60sec以下であることを特徴と
    する請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子放出素子
    の駆動方法。
  12. 【請求項12】 波高値がVs からVmax まで変化する
    間に印加される各パルスの印加時間の合計と、Vmax
    波高値で印加される単数または複数個のパルスの印加時
    間の合計との和が、500μsec以上で且つ60se
    c以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか
    1つに記載の電子放出素子の駆動方法。
  13. 【請求項13】 前記冷陰極電子放出素子が、基体上
    に、対向する一対の素子電極と、該素子電極に連絡して
    形成された導電性薄膜と、前記一対の素子電極間の前記
    導電性薄膜の一部に形成された電子放出部を有する表面
    伝導型電子放出素子であることを特徴とする請求項1〜
    12のいずれか1つに記載の電子放出素子の駆動方法。
  14. 【請求項14】 前記冷陰極電子放出素子が、電子放出
    部に炭素乃至炭素化合物を有する冷陰極電子放出素子で
    あることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに
    記載の電子放出素子の駆動方法。
  15. 【請求項15】 冷陰極電子放出素子の製造方法であっ
    て、 電子放出部を形成する工程と、電子放出部に炭素乃至炭
    素化合物を有する膜を形成する工程を有し、 前記炭素乃至炭素化合物を有する膜を形成した後、請求
    項1〜12のいずれか1つに記載の駆動方法による通電
    を行うことを特徴とする冷陰極電子放出素子の製造方
    法。
  16. 【請求項16】 冷陰極電子放出素子の1種である表面
    伝導型電子放出素子の製造方法であって、 基体上に、対向する一対の素子電極と、該素子電極に連
    絡する導電性薄膜を形成する工程と、 前記電極対を介して前記導電性薄膜に通電することによ
    り前記表面伝導型電子放出素子の電子放出部を形成する
    フォーミング工程と、 前記フォーミング工程の終了後に、有機物質が存在する
    環境下で、前記表面伝導型電子放出素子に通電する活性
    化工程と、 前記活性化工程の終了後に、前記表面伝導型電子放出素
    子が存在する環境から、前記有機物質の分圧を1×10
    -6Pa以下まで低減する安定化工程とを有し、前記安定
    化工程後に、請求項1〜12のいずれか1つに記載の駆
    動方法による通電を行うことを特徴とする冷陰極電子放
    出素子の製造方法。
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