JP2000248352A - 低摩擦係数摺動部材 - Google Patents

低摩擦係数摺動部材

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JP2000248352A
JP2000248352A JP11049729A JP4972999A JP2000248352A JP 2000248352 A JP2000248352 A JP 2000248352A JP 11049729 A JP11049729 A JP 11049729A JP 4972999 A JP4972999 A JP 4972999A JP 2000248352 A JP2000248352 A JP 2000248352A
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JP
Japan
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powder
friction coefficient
sliding member
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low
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JP11049729A
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English (en)
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Takeo Hisada
建男 久田
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Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】自動車部品等の機械構造部品に適用した場合に
おいて摩擦係数が低く、メカニックロスの少ない低摩擦
係数摺動部材を提供する。 【解決手段】金属製部材の摺動面に、重量%でS:1〜
10%,Mo:3〜25%で1.67S+1≦Mo≦
1.67S+7を満たし、残部不可避的不純物及びFe
からなる組成を有する粉末の溶射層を形成して低摩擦係
数摺動部材を構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は低摩擦係数粉末を
溶射して成る溶射層を少なくともその摺動面に有する低
摩擦係数摺動部材に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】各種機
械構造部品、とりわけ自動車部品において、その構成材
の摩擦係数を低減することはメカニックロス(機械損
失)を低減し、エネルギーの有効利用を図る上で有用で
ある。
【0003】機械構造部品の摩擦係数を低減する手段と
して、その構成材中にMo型の化合物を微細析出
させ、そのMoの潤滑作用に基づいて摩擦係数を
低減することが考えられる。
【0004】従来Fe−Mo−S系の鋳造材においてこ
の種Mo型の化合物の析出が認められており、一
部では摩擦係数の低減が認められている。しかしながら
かかる鋳造材の場合、同時にFeSがネット状(網状)
に析出し、そのネット状に析出したFeSが赤熱脆性の
主原因となって、その後の熱間加工を行うことができ
ず、実際には工業的に利用されていないのが実情であ
る。
【0005】一方、粉末の焼結体にて自動車部品等の機
械構造部品を構成する場合において、その粉末中にMo
型の化合物を析出させた場合、同様に摩擦係数を
低減することができると考えられる。本発明者は所定の
組成を有する粉末を焼結することで上記鋳造材の問題点
を解決し、工業化を可能とした(特願平9−14726
6)。
【0006】この粉末の焼結体の場合、特性面では良好
な性能を示したが、焼結体から成る低摩擦係数摺動部材
の場合、その全体が高価な粉末を焼結して成っており、
コスト的に不利で高価格なものになるとともに、全体が
焼結体で構成されることから強度的にも不利であるとい
った問題点を内在する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願の発明はこのような
事情を背景としてなされたものである。而して請求項1
の低摩擦係数摺動部材は、金属製部材であって、重量%
でS:1〜10%,Mo:3〜25%で1.67S+1
≦Mo≦1.67S+7を満たし、残部不可避的不純物
及びFeからなる組成を有する粉末の溶射層が少なくと
もその摺動面において形成されていることを特徴とす
る。
【0008】請求項2の低摩擦係数摺動部材は、請求項
1において、前記粉末が重量%でS:1〜10%,M
o:3〜25%で1.67S+1≦Mo≦1.67S+
7を満たし、且つC:0.10〜1.2%,Si:≦
2.0%,Mn:≦2.0%,残部不可避的不純物及び
Feからなる組成を有していることを特徴とする。
【0009】請求項3の低摩擦係数摺動部材は、請求項
1,2の何れかにおいて、前記粉末が更にNi,Crの
何れか1種又は2種を重量%でNi:≦5.0%,C
r:≦1.50%を含有した組成とされていることを特
徴とする。
【0010】請求項4の低摩擦係数摺動部材は、請求項
1〜3の何れかにおいて、前記粉末が更にV,Wの何れ
か1種又は2種を重量%でV:≦3.0%,W:≦1.
0%を含有した組成とされていることを特徴とする。
【0011】請求項5の低摩擦係数摺動部材は、請求項
1〜4の何れかにおいて、前記粉末には更に耐摩耗粒子
が重量%且つ合計量で1〜15%の範囲で含まれている
ことを特徴とする。
【0012】請求項6の低摩擦係数摺動部材は、請求項
5において、前記耐摩耗粒子が金属炭化物粒子,金属窒
化物粒子,金属酸化物粒子の何れか1種又は2種以上か
ら成ることを特徴とする。
【0013】
【作用及び発明の効果】本発明は、金属製部材の少なく
とも摺動面に固溶限以上のMoと固溶限を超えたMoの
量に見合った量のSを含有する組成、詳しくは重量%で
Mo:3〜25%,S:1〜10%を含有し且つ1.6
7S+1≦Mo≦1.67S+7の関係を満たす組成の
粉末の溶射層を形成したもので、本発明の低摩擦係数摺
動部材の場合、溶射層内部にMo型の化合物(F
eMo)が微細に析出しており、そのMo
の潤滑作用に基づいて溶射層自体、ひいては摺動面の摩
擦係数を効果的に低減することができる。
【0014】従って本発明の低摩擦係数摺動部材を機械
構造部品に適用した場合、機械構造部品の摩擦係数を低
減してメカニックロスを効果的に低減することができ
る。
【0015】また本発明は金属製部材の摺動面に粉末の
溶射層を形成して低摩擦係数摺動部材を構成するもので
あることから、即ち少なくとも表面にのみ溶射層を形成
するだけで良いことから、低摩擦係数摺動部材のコスト
を安価となすことができるとともに、溶射層以外の部分
については溶製材を用いて表面の溶射層との複合構造と
でき、従って全体を焼結体で構成した場合に比べて低摩
擦係数摺動部材の強度の低下を防止できる利点が得られ
る。尚溶射層の厚みは2mm以下としておくのが良い。
2mmよりも厚みが厚くなると溶射層が剥離し易く、摺
動面として不適切である。本発明は、各種の機械構造部
品への適用が可能であるが、特に自動車部品に対して好
適に適用することができる。
【0016】ここで1.67S+1≦Mo≦1.67S
+7としているのは、この組成範囲においてMoS
近い形態の化合物が生成し易いことによる。
【0017】本発明においては、溶射層内部において鋳
造材のようにFeSがネット状に析出するといったこと
はなく、溶射層中に微細に分散した形態で析出する。従
って本発明においては生成したFeSが溶射部材(低摩
擦係数摺動部材)に対し何等悪影響は及ぼさない。
【0018】本発明においては、粉末の成分元素として
C,Si,MnをそれぞれC:0.10〜1.2%,S
i:≦2.0%,Mn:≦2.0%の範囲で含有させる
ことができる(請求項2)。
【0019】更にはまた、必要に応じて焼入れ性を向上
しまた機械的性質を向上させるためにNi,Crの何れ
か1種又は2種を、Ni:≦5.0%,Cr:≦1.5
0%の範囲で含有させることができる(請求項3)。
【0020】また更に、必要に応じて耐摩耗性を更に向
上させる目的でV,Wの何れか1種又は2種をV:≦
3.0%,W:≦1.0%の範囲で含有させることがで
きる(請求項4)。
【0021】本発明においては、粉末の製造方法として
溶鋼にガスを噴霧して粉末を製造する方法或いは水を噴
霧して粉末を製造する方法或いは回転電極法の何れも用
いることができるが、溶射粉末については球状のものが
良好であり、従ってそのような球状の粉末の得られるガ
ス噴霧法を用いることが望ましい。
【0022】本発明ではまた、金属炭化物粒子,金属窒
化物粒子,金属酸化物粒子等の耐摩耗粒子の粉末を所定
量添加することによって、溶射層の耐摩耗性を効果的に
高めることができる(請求項5,請求項6)。
【0023】次に本発明における化学成分等の限定理由
を以下に詳述する。 S:1〜10% SはMo硫化物形成に不可欠な成分であり、1%未満で
はMo型化合物の量が少なく、摩擦係数の改善効
果が少ない。また10%でその効果が飽和するため、本
発明では上限を10%とする。
【0024】Mo:3〜25% MoはSとともにMo硫化物形成に不可欠な成分であ
り、上記Sの量に対応してその下限を3%,上限を25
%とする。
【0025】1.67S+1≦Mo≦1.67S+7 Mo硫化物を効果的に生成させるためにMoとSの量は
この範囲に限定する必要がある。1.67S+7を超え
てMoを添加すると過剰のMoが脆いFe−Mo化合物
を形成する。また逆にMoが1.67S+1よりも少な
いと過剰のSが脆いFe−S化合物を形成する。
【0026】C(粉末中含有成分):0.10〜1.2
% Cは強度を確保するのに有用な元素である。但し0.1
0%未満では効果が乏しく、逆に過剰添加はMo炭化物
の析出を過度に促進し、Mo硫化物の形成に悪影響を与
えるため上限を1.2%とする。
【0027】Si:≦2.0% Siは溶鋼中の酸素低減に有効で湯流れを改善し、生地
を強化する元素である。2.0%でその効果が飽和する
のでこれを上限とする。
【0028】Mn:≦2.0% Mnは鋼の焼入れ性を確保するのに有効な元素である
が、過度の添加は粉末の酸化を促進するため上限を2.
0%とする。
【0029】Ni:≦5.0% Niは焼入れ性を与え、焼入れ・焼戻し後の機械的性質
を向上させる。但し過度の添加は残留オーステナイト生
成の原因となり、硬さを低下させるので上限を5.0%
とする。
【0030】Cr:≦1.50% Crは鋼の焼入れ性を確保するのに有効であるが、過度
の添加はMoと副炭化物を作り、Mo硫化物の生成に悪
影響を与えるので上限を1.50%とする。
【0031】V:≦3.0% Vは単独でVCを形成し、耐摩耗性を与えるのに有効で
ある。但し過度の添加は粉末製造時の注湯ノズル閉塞等
のトラブルの要因となるので上限を3.0%とする。
【0032】W:≦1.0% Wは炭化物を形成して耐摩耗性を与えるのに有効であ
る。但し過度の添加はMoと副炭化物を作り、Mo硫化
物の生成に悪影響を与えるので上限を1.0%とする。
【0033】粉末に添加するC粉量:混合粉全体に占め
る合計量で0.10〜1.2% 本発明では上記組成の粉末に対し更に黒鉛粉末等のC粉
末を添加混合した上で、これを用いて溶射層を形成する
ことができる。ここでC粉末の添加は溶射層の強度を確
保するのに有効である。但し0.10%未満では効果が
乏しく、逆に1.2%超の過剰添加はMo炭化物の析出
を過度に促進し、Mo硫化物の形成に悪影響を与えるの
で0.10〜1.2%の範囲が良い。
【0034】金属炭化物,金属窒化物,金属酸化物粉末
等の耐摩耗粒子粉末の添加量:合計で1〜15% これらの粉末は耐摩耗性を得るために添加するのが望ま
しく、その際1%未満では効果が少ないため1%以上す
る。但し15%を超えると混合が難しく、偏析を起こし
て溶射層の強度低下を来すため上限を15%とする。
【0035】
【実施例】次に本発明の実施例を以下に詳述する。 [実施例1]30kg誘導炉を用いてFe−23%Mo
−4.1%Sの粉末をガス噴霧法により製造した。得ら
れた粉末を乾燥後200メッシュ以下に分級し、試験に
供した。この粉末を高速フレーム溶射機でS45C板の
上に溶射し、表面に溶射層を形成した。
【0036】ここで溶射条件は下記の条件とした。 ガス:酸素,H,空気の混合ガス スプレーディスタンス:200mm スプレーレイト:30g/min 溶射層厚み:0.5mm
【0037】一方比較のために粉末に潤滑剤としてZn
−St(ステアリン酸亜鉛)を0.5重量%添加し、1
0×10×50mmの大きさに、金型を用いて5t/c
の圧力で成形し、その圧粉体を1100℃×1h
r,真空中で焼結し、試験に供した。
【0038】更に同じく比較のために市販のS45Cを
用い、削り出しによって同形状の試験片を得、試験に供
した。そして定荷重,往復運動下における摩擦係数測定
を無潤滑と油塗布の条件下で測定した。ここで荷重は5
kg/mm,摩擦係数測定は100往復後の安定した
時点で行った。尚試験は試験片表面に油塗布し、室温と
300℃の2つの温度条件下で測定を行った。結果が表
1に示してある。
【0039】
【表1】
【0040】表1の結果から、本発明材は比較材(S4
5C)よりも摩擦係数が低くなっていることが分かる。
また同一成分の焼結材と本発明材とは、無潤滑,油塗布
下で同じ摩擦係数であり、300℃の下でもその効果は
変らない。この結果から、溶射により低コストで且つ焼
結材と同じ効果の得られることが明らかになった。
【0041】以上本発明の実施例を詳述したがこれはあ
くまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範
囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年9月7日(1999.9.7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 低摩擦係数摺動部材
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は低摩擦係数粉末を
溶射して成る溶射層を少なくともその摺動面に有する低
摩擦係数摺動部材に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】各種機
械構造部品、とりわけ自動車部品において、その構成材
の摩擦係数を低減することはメカニックロス(機械損
失)を低減し、エネルギーの有効利用を図る上で有用で
ある。
【0003】機械構造部品の摩擦係数を低減する手段と
して、その構成材中にMo型の化合物を微細析出
させ、そのMoの潤滑作用に基づいて摩擦係数を
低減することが考えられる。
【0004】従来Fe−Mo−S系の鋳造材においてこ
の種Mo型の化合物の析出が認められており、一
部では摩擦係数の低減が認められている。しかしながら
かかる鋳造材の場合、同時にFeSがネット状(網状)
に析出し、そのネット状に析出したFeSが赤熱脆性の
主原因となって、その後の熱間加工を行うことができ
ず、実際には工業的に利用されていないのが実情であ
る。
【0005】一方、粉末の焼結体にて自動車部品等の機
械構造部品を構成する場合において、その粉末中にMo
型の化合物を析出させた場合、同様に摩擦係数を
低減することができると考えられる。本発明者は所定の
組成を有する粉末を焼結することで上記鋳造材の問題点
を解決し、工業化を可能とした(特願平9−14726
6)。
【0006】この粉末の焼結体の場合、特性面では良好
な性能を示したが、焼結体から成る低摩擦係数摺動部材
の場合、その全体が高価な粉末を焼結して成っており、
コスト的に不利で高価格なものになるとともに、全体が
焼結体で構成されることから強度的にも不利であるとい
った問題点を内在する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願の発明はこのような
事情を背景としてなされたものである。而して請求項1
の低摩擦係数摺動部材は、金属製部材であって、重量%
でS:1〜10%,Mo:3〜25%で1.67S+1
≦Mo≦1.67S+17を満たし、残部不可避的不純
物及びFeからなる組成を有する粉末の溶射層が少なく
ともその摺動面において形成されていることを特徴とす
る。
【0008】請求項2の低摩擦係数摺動部材は、請求項
1において、前記粉末が重量%でS:1〜10%,M
o:3〜25%で1.67S+1≦Mo≦1.67S+
17を満たし、且つC:0.10〜1.2%,Si:≦
2.0%,Mn:≦2.0%,残部不可避的不純物及び
Feからなる組成を有していることを特徴とする。
【0009】請求項3の低摩擦係数摺動部材は、請求項
1,2の何れかにおいて、前記粉末が更にNi,Crの
何れか1種又は2種を重量%でNi:≦5.0%,C
r:≦1.50%を含有した組成とされていることを特
徴とする。
【0010】請求項4の低摩擦係数摺動部材は、請求項
1〜3の何れかにおいて、前記粉末が更にV,Wの何れ
か1種又は2種を重量%でV:≦3.0%,W:≦1.
0%を含有した組成とされていることを特徴とする。
【0011】請求項5の低摩擦係数摺動部材は、請求項
1〜4の何れかにおいて、前記粉末には更に耐摩耗粒子
が重量%且つ合計量で1〜15%の範囲で含まれている
ことを特徴とする。
【0012】請求項6の低摩擦係数摺動部材は、請求項
5において、前記耐摩耗粒子が金属炭化物粒子,金属窒
化物粒子,金属酸化物粒子の何れか1種又は2種以上か
ら成ることを特徴とする。
【0013】
【作用及び発明の効果】本発明は、金属製部材の少なく
とも摺動面に固溶限以上のMoと固溶限を超えたMoの
量に見合った量のSを含有する組成、詳しくは重量%で
Mo:3〜25%,S:1〜10%を含有し且つ1.6
7S+1≦Mo≦1.67S+17の関係を満たす組成
の粉末の溶射層を形成したもので、本発明の低摩擦係数
摺動部材の場合、溶射層内部にMo型の化合物
(FeMo)が微細に析出しており、そのMo
の潤滑作用に基づいて溶射層自体、ひいては摺動面
の摩擦係数を効果的に低減することができる。
【0014】従って本発明の低摩擦係数摺動部材を機械
構造部品に適用した場合、機械構造部品の摩擦係数を低
減してメカニックロスを効果的に低減することができ
る。
【0015】また本発明は金属製部材の摺動面に粉末の
溶射層を形成して低摩擦係数摺動部材を構成するもので
あることから、即ち少なくとも表面にのみ溶射層を形成
するだけで良いことから、低摩擦係数摺動部材のコスト
を安価となすことができるとともに、溶射層以外の部分
については溶製材を用いて表面の溶射層との複合構造と
でき、従って全体を焼結体で構成した場合に比べて低摩
擦係数摺動部材の強度の低下を防止できる利点が得られ
る。尚溶射層の厚みは2mm以下としておくのが良い。
2mmよりも厚みが厚くなると溶射層が剥離し易く、摺
動面として不適切である。本発明は、各種の機械構造部
品への適用が可能であるが、特に自動車部品に対して好
適に適用することができる。
【0016】ここで1.67S+1≦Mo≦1.67S
17としているのは、この組成範囲においてMoS
に近い形態の化合物が生成し易いことによる。
【0017】本発明においては、溶射層内部において鋳
造材のようにFeSがネット状に析出するといったこと
はなく、溶射層中に微細に分散した形態で析出する。従
って本発明においては生成したFeSが溶射部材(低摩
擦係数摺動部材)に対し何等悪影響は及ぼさない。
【0018】本発明においては、粉末の成分元素として
C,Si,MnをそれぞれC:0.10〜1.2%,S
i:≦2.0%,Mn:≦2.0%の範囲で含有させる
ことができる(請求項2)。
【0019】更にはまた、必要に応じて焼入れ性を向上
しまた機械的性質を向上させるためにNi,Crの何れ
か1種又は2種を、Ni:≦5.0%,Cr:≦1.5
0%の範囲で含有させることができる(請求項3)。
【0020】また更に、必要に応じて耐摩耗性を更に向
上させる目的でV,Wの何れか1種又は2種をV:≦
3.0%,W:≦1.0%の範囲で含有させることがで
きる(請求項4)。
【0021】本発明においては、粉末の製造方法として
溶鋼にガスを噴霧して粉末を製造する方法或いは水を噴
霧して粉末を製造する方法或いは回転電極法の何れも用
いることができるが、溶射粉末については球状のものが
良好であり、従ってそのような球状の粉末の得られるガ
ス噴霧法を用いることが望ましい。
【0022】本発明ではまた、金属炭化物粒子,金属窒
化物粒子,金属酸化物粒子等の耐摩耗粒子の粉末を所定
量添加することによって、溶射層の耐摩耗性を効果的に
高めることができる(請求項5,請求項6)。
【0023】次に本発明における化学成分等の限定理由
を以下に詳述する。 S:1〜10% SはMo硫化物形成に不可欠な成分であり、1%未満で
はMo型化合物の量が少なく、摩擦係数の改善効
果が少ない。また10%でその効果が飽和するため、本
発明では上限を10%とする。
【0024】Mo:3〜25% MoはSとともにMo硫化物形成に不可欠な成分であ
り、上記Sの量に対応してその下限を3%,上限を25
%とする。
【0025】1.67S+1≦Mo≦1.67S+17 Mo硫化物を効果的に生成させるためにMoとSの量は
この範囲に限定する必要がある。1.67S+17を超
えてMoを添加すると過剰のMoが脆いFe−Mo化合
物を形成する。また逆にMoが1.67S+1よりも少
ないと過剰のSが脆いFe−S化合物を形成する。
【0026】C(粉末中含有成分):0.10〜1.2
% Cは強度を確保するのに有用な元素である。但し0.1
0%未満では効果が乏しく、逆に過剰添加はMo炭化物
の析出を過度に促進し、Mo硫化物の形成に悪影響を与
えるため上限を1.2%とする。
【0027】Si:≦2.0% Siは溶鋼中の酸素低減に有効で湯流れを改善し、生地
を強化する元素である。2.0%でその効果が飽和する
のでこれを上限とする。
【0028】Mn:≦2.0% Mnは鋼の焼入れ性を確保するのに有効な元素である
が、過度の添加は粉末の酸化を促進するため上限を2.
0%とする。
【0029】Ni:≦5.0% Niは焼入れ性を与え、焼入れ・焼戻し後の機械的性質
を向上させる。但し過度の添加は残留オーステナイト生
成の原因となり、硬さを低下させるので上限を5.0%
とする。
【0030】Cr:≦1.50% Crは鋼の焼入れ性を確保するのに有効であるが、過度
の添加はMoと副炭化物を作り、Mo硫化物の生成に悪
影響を与えるので上限を1.50%とする。
【0031】V:≦3.0% Vは単独でVCを形成し、耐摩耗性を与えるのに有効で
ある。但し過度の添加は粉末製造時の注湯ノズル閉塞等
のトラブルの要因となるので上限を3.0%とする。
【0032】W:≦1.0% Wは炭化物を形成して耐摩耗性を与えるのに有効であ
る。但し過度の添加はMoと副炭化物を作り、Mo硫化
物の生成に悪影響を与えるので上限を1.0%とする。
【0033】粉末に添加するC粉量:混合粉全体に占め
る合計量で0.10〜1.2% 本発明では上記組成の粉末に対し更に黒鉛粉末等のC粉
末を添加混合した上で、これを用いて溶射層を形成する
ことができる。ここでC粉末の添加は溶射層の強度を確
保するのに有効である。但し0.10%未満では効果が
乏しく、逆に1.2%超の過剰添加はMo炭化物の析出
を過度に促進し、Mo硫化物の形成に悪影響を与えるの
で0.10〜1.2%の範囲が良い。
【0034】金属炭化物,金属窒化物,金属酸化物粉末
等の耐摩耗粒子粉末の添加量:合計で1〜15% これらの粉末は耐摩耗性を得るために添加するのが望ま
しく、その際1%未満では効果が少ないため1%以上と
する。但し15%を超えると混合が難しく、偏析を起こ
して溶射層の強度低下を来すため上限を15%とする。
【0035】
【実施例】次に本発明の実施例を以下に詳述する。30
kg誘導炉を用いてFe−23%Mo−4.1%Sの粉
末をガス噴霧法により製造した。得られた粉末を乾燥後
200メッシュ以下に分級し、試験に供した。この粉末
を高速フレーム溶射機でS45C板の上に溶射し、表面
に溶射層を形成した。
【0036】ここで溶射条件は下記の条件とした。 ガス:酸素,H,空気の混合ガス スプレーディスタンス:200mm スプレーレイト:30g/min 溶射層厚み:0.5mm
【0037】一方比較のために粉末に潤滑剤としてZn
−St(ステアリン酸亜鉛)を0.5重量%添加し、1
0×10×50mmの大きさに、金型を用いて5t/c
の圧力で成形し、その圧粉体を1100℃×1h
r,真空中で焼結し、試験に供した。
【0038】更に同じく比較のために市販のS45Cを
用い、削り出しによって同形状の試験片を得、試験に供
した。そして定荷重,往復運動下における摩擦係数測定
を無潤滑と油塗布の条件下で測定した。ここで荷重は5
kg/mm,摩擦係数測定は100往復後の安定した
時点で行った。尚試験は試験片表面に油塗布し、室温と
300℃の2つの温度条件下で測定を行った。結果が表
1に示してある。
【0039】
【表1】
【0040】表1の結果から、本発明材は比較材(S4
5C)よりも摩擦係数が低くなっていることが分かる。
また同一成分の焼結材と本発明材とは、無潤滑,油塗布
下で同じ摩擦係数であり、300℃の下でもその効果は
変らない。この結果から、溶射により低コストで且つ焼
結材と同じ効果の得られることが明らかになった。
【0041】以上本発明の実施例を詳述したがこれはあ
くまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範
囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製部材であって、重量%でS:1〜
    10%,Mo:3〜25%で1.67S+1≦Mo≦
    1.67S+7を満たし、残部不可避的不純物及びFe
    からなる組成を有する粉末の溶射層が少なくともその摺
    動面において形成されていることを特徴とする低摩擦係
    数摺動部材。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記粉末が重量%で
    S:1〜10%,Mo:3〜25%で1.67S+1≦
    Mo≦1.67S+7を満たし、且つ C :0.10〜1.2% Si:≦2.0% Mn:≦2.0% 残部不可避的不純物及びFeからなる組成を有している
    ことを特徴とする低摩擦係数摺動部材。
  3. 【請求項3】 請求項1,2の何れかにおいて、前記粉
    末が更にNi,Crの何れか1種又は2種を重量%で Ni:≦5.0% Cr:≦1.50% を含有した組成とされていることを特徴とする低摩擦係
    数摺動部材。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れかにおいて、前記粉
    末が更にV,Wの何れか1種又は2種を重量%で V :≦3.0% W :≦1.0% を含有した組成とされていることを特徴とする低摩擦係
    数摺動部材。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4の何れかにおいて、前記粉
    末には更に耐摩耗粒子が重量%且つ合計量で1〜15%
    の範囲で含まれていることを特徴とする低摩擦係数摺動
    部材。
  6. 【請求項6】 請求項5において、前記耐摩耗粒子が金
    属炭化物粒子,金属窒化物粒子,金属酸化物粒子の何れ
    か1種又は2種以上から成ることを特徴とする低摩擦係
    数摺動部材。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001192803A (ja) * 1999-11-02 2001-07-17 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 溶射部材及び溶射用合金粉末
US7404866B2 (en) * 2001-06-26 2008-07-29 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho Sliding member and method for manufacture thereof
CN111778471A (zh) * 2020-07-03 2020-10-16 扬州大学 一种耐磨减摩铁基非晶复合涂层及其制备方法

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