JP2000326507A - アクチュエータ、インクジェット式記録ヘッド及びインクジェットプリンタ - Google Patents

アクチュエータ、インクジェット式記録ヘッド及びインクジェットプリンタ

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JP2000326507A
JP2000326507A JP11136066A JP13606699A JP2000326507A JP 2000326507 A JP2000326507 A JP 2000326507A JP 11136066 A JP11136066 A JP 11136066A JP 13606699 A JP13606699 A JP 13606699A JP 2000326507 A JP2000326507 A JP 2000326507A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の圧電アクチュエータよりも変位量が大
きく、駆動特性に優れたアクチュエータを提供する。 【解決手段】 本発明のアクチュエータ(13)は、膜
内部に生じた応力に起因して結晶構造が相転移し、歪み
を生じる相転移膜(8)と、逆圧電効果により圧電歪み
を生じ、相転移膜(8)に応力を与える圧電体膜(7)
との積層構造を有する。圧電体膜(7)は電圧の印加に
より圧電歪みを生じ、このときの歪みによって相転移膜
(8)に応力が掛かる。かかる応力により相転移膜
(8)は結晶構造が相転移するため、体積変化が生じ
る。相転移膜(8)の体積変化は効率良く縦歪みに変換
できるため、従来の圧電アクチュエータよりも大きな変
位を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は結晶構造の相転移に
起因する薄膜の体積変化を利用してアクチュエータ(ac
tuator)を構成する技術に係わる。特に、オンデマンド
方式のインクジェット式記録ヘッドに好適なアクチュエ
ータの構造に係わる。
【0002】
【従来の技術】オンデマンド方式のインクジェット式記
録ヘッドは、一般的に、多数の個別インク通路(インク
キャビティ、インク溜り等)が形成された加圧室基板
と、インク通路を覆うようにヘッド基台に取付けた振動
板膜と、振動板膜の個別インク通路上に対応して被着形
成された圧電アクチュエータ(圧電体素子)を備えて構
成されている。圧電アクチュエータはインクジェット式
記録ヘッドのインク吐出駆動源として機能する電気機械
変換素子であり、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニウム
酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ラン
タン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等
の圧電性セラミックスを主成分とする。中心対称性を持
たない結晶点群に属する物質、特に、ペロブスカイト結
晶構造を有する圧電性セラミックスはこの作用を顕著に
示すものが多いため、圧電アクチュエータに用いられて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、チタン酸バ
リウム、ジルコン酸鉛等は圧力や温度条件に応じて相転
移を示すことが知られている。このような相転移膜の体
積歪みと縦歪みには下式に示す関係がある。
【0004】 V+ΔV=a(1+ε)・a(1−νε)・a(1−νε) =a{1+(1−2ν)ε+(ν−2ν)ε+νε} ≒a{1+(1−2ν)ε} ここで、Vは相転移膜の単位格子の体積であり、aは結
晶系(立方晶系)の一辺の長さである。このため、V=
の関係を満たす。εは縦方向の歪みであり、νはポ
アソン比である。ε、ε≪1であるから上式のε
項、ε項を無視すると、体積歪み(ΔV/V)と縦歪
み(ε)の間には、ΔV/V=(1−2ν)εの関係が
ある。相転移膜に伴う体積歪みは0.3%〜0.4%程
度であるから、体積歪みを効率良く縦歪みに変換したと
すると、縦歪みは0.75%〜1.0%程度になる(但
し、νを0.3程度で計算)。圧電体膜の逆圧電効果で
得られる縦歪みはせいぜい0.4%程度であるから、相
転移膜の変位量は圧電体膜の変位量を大きく上回る。こ
のため、インク吐出駆動源として相転移膜を利用したア
クチュエータを用いることで、従来よりもインク吐出特
性に優れたインクジェット式記録ヘッドを提供すること
ができると考えられる。
【0005】そこで、本発明は従来の圧電アクチュエー
タよりも変位量が大きく、駆動特性に優れたアクチュエ
ータ、インクジェット式記録ヘッド及びインクジェット
プリンタを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題は、膜内部に生
じた応力に起因して結晶構造が相転移し、歪みを生じる
相転移膜と、逆圧電効果により圧電歪みを生じ、相転移
膜に応力を与える圧電体膜との積層構造を有するアクチ
ュエータによって解決できる。圧電体膜は電圧の印加に
より圧電歪みを生じ(逆圧電効果)、このときの歪みに
よって相転移膜に応力(引張り応力又は圧縮応力)が掛
かる。かかる応力により相転移膜は結晶構造が相転移
(強誘電的相転移)するため、体積変化が生じる。相転
移膜の体積変化は効率良く縦歪みに変換できるため、従
来の圧電アクチュエータよりも大きな変位を得ることが
できる。
【0007】ここで、相転移とは、多形(polymorphis
m)のことをいい、化学組成が同一で結晶構造が異なる
現象をいう。同質多形、同質異形、同質多像ともいう。
多形の原因は主に温度、圧力等の物理的化学的条件によ
る。
【0008】本発明のアクチュエータは、少なくとも上
記の積層構造を備えていればよく、圧電体膜と相転移膜
の積層順序や積層数等は問わない。例えば、上部電極/
相転移膜/圧電体膜/下部電極となる積層構造や、上部
電極/圧電体膜/相転移膜/下部電極となる積層構造、
更には、上部電極/圧電体膜/下部電極/相転移膜とな
る積層構造でもよい。尚、本明細書において下部電極と
は、アクチュエータの設置面(例えば、インクジェット
式記録ヘッドのアクチュエータであれば振動板膜)側に
形成されている電極をいい、上部電極とは圧電体膜又は
/及び相転移膜を介して下部電極に対向して配置された
電極をいうものとする。
【0009】本発明の好適な形態として、相転移膜の歪
みによって延びる方向を、電圧が印加されたときの圧電
体膜の歪みによって延びる方向と概略一致させる。かか
る構成により、相転移膜の体積変化を効率良く縦歪みに
変換できるため、従来の圧電アクチュエータよりも大き
な変位を得ることができる。
【0010】また、転移膜の歪みによって延びる方向
を、電圧が印加されたときの圧電体膜の歪みによって延
びる方向に概略直交させるように構成してもよい。かか
る構成によれば、後述する“引き打ち”を簡単な駆動制
御で実現することができる。
【0011】相転移膜の組成は、膜内部に生じる応力に
よって相転移する薄膜、例えば、チタン酸バリウム、ジ
ルコニウム酸鉛、チタン酸バリウム・ストロンチウム、
チタン酸バリウム・スズのうち何れかが好ましい。ま
た、圧電体膜は逆圧電効果を示す薄膜、例えば、チタン
酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジ
ルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジ
ルコニウムチタン酸鉛、又は、ジルコン酸チタン酸鉛に
タングステン、ニッケル、マンガン、亜鉛、コバルトの
うち何れか2つの元素を含む系のうち何れかが好まし
い。
【0012】本発明のインクジェット式記録ヘッドは、
加圧室(キャビティ)を複数備えた加圧室基板と、加圧
室に対応して設けられた本発明のアクチュエータとを備
える。好ましくは、加圧室とアクチュエータの間に振動
板膜を介在させる。
【0013】本発明のインクジェットプリンタは、本発
明のインクジェット式記録ヘッドを備えている。また、
他の形態における本発明のインクジェットプリンタは、
相転移膜の歪みによって延びる方向を、電圧が印加され
たときの圧電体膜の歪みによって延びる方向に概略直交
させるように構成された本発明のアクチュエータと、略
台形状の電圧変化特性を有する駆動信号で前記アクチュ
エータを駆動する制御回路とを備えている。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、各図を参照して本実施の形
態について説明する。図1にインクジェットプリンタの
構成図を示す。インクジェットプリンタは、主にインク
ジェット式記録ヘッド100、本体102、トレイ10
3、ヘッド駆動機構106を備えて構成されている。イ
ンクジェット式記録ヘッド100は、イエロー、マゼン
ダ、シアン、ブラックの計4色のインクカートリッジ1
01を備えており、フルカラー印刷が可能なように構成
されている。また、このインクジェットプリンタは、内
部にイメージ生成部、ワークメモリ、プリントエンジン
部等を備えている。イメージ生成部等は図示していない
が、専用のコントローラボード等で構成されている。イ
メージ生成部は外部から供給された印刷ジョブデータを
ワークメモリにバッファリングし、ラスタイメージデー
タを生成する。プリントエンジン部はラスタイメージデ
ータを基に、インクジェット式記録ヘッド100のイン
ク吐出タイミング、及び、ヘッド駆動機構106の走査
を制御し、高精度なインクドット制御、ハーフトーン処
理等を実現する。また、本体102は背面にトレイ10
3を備えるとともに、その内部にオートシートフィーダ
(自動連続給紙機構)105を備え、記録用紙107を
自動的に送り出し、正面の排出口104から記録用紙1
07を排紙する。
【0015】次に、インクジェット式記録ヘッドの分解
斜視図を図2に示す。ここではインクの共通通路が加圧
室基板内に設けられるタイプを示す。同図に示すよう
に、インクジェット式記録ヘッドは加圧室基板1、ノズ
ルプレート2及び基体3から構成される。加圧室基板1
はシリコン単結晶基板がエッチング加工された後、各々
に分離される。加圧室基板1には複数の短冊状の加圧室
10が設けられ、全ての加圧室10にインクを供給する
ための共通通路12を備える。加圧室10の間は側壁1
1により隔てられている。加圧室基板1の基体3側には
インク吐出駆動源としてアクチュエータが設けられてい
る。また、各アクチュエータからの配線はフレキシブル
ケーブルである配線基板4に収束され、インク吐出制御
回路(図示せず)に接続される。インク吐出制御回路は
プリントエンジン部により制御され、所定の駆動信号で
アクチュエータを駆動する。駆動信号の詳細については
後述する。
【0016】ノズルプレート2は加圧室基板1に貼り合
わされる。ノズルプレート2における加圧室10の対応
する位置にはインク滴を吐出するためのノズル21が形
成されている。ノズル21間のピッチは印刷精度に応じ
て適宜設定され、例えば、400dpi等の解像度が設
定されている。基体3はプラスチック等で形成されてお
り、加圧室基板1の取付台となる。
【0017】インクジェット式記録ヘッドの主要部の断
面図を図3に示す。加圧室基板1には加圧室10がエッ
チング加工により形成されている。加圧室10の上面に
は振動板膜5を介してアクチュエータ13が形成されて
いる。アクチュエータ13の振動は振動板膜5を介して
加圧室10内のインクに伝達される。アクチュエータ1
3はインク圧を瞬時に高めることでインク滴をノズル2
1から吐出する。同図に図示してないが、アクチュエー
タ13及び表面に露出している下部電極6の全面を覆う
ようにパッシベーション膜で被覆してもよい。パッシベ
ーション膜としてフッ素樹脂、シリコン酸化膜、エポキ
シ樹脂等が好適である。
【0018】同図に示すアクチュエータ13は、振動板
膜5側から順に下部電極6、圧電体膜7、相転移膜8及
び上部電極9の積層構造を構成している。圧電体膜7は
電圧の印加により圧電歪みの生じる薄膜、例えば、チタ
ン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb
(Zr,Ti)O)、チタン酸鉛ランタン((Pb,
La),TiO)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン
((Pb,La)(Zr,Ti)O)又は、マグネシ
ウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,T
i)(Mg,Nb)O)、ニッケル・ニオブ酸ジルコ
ニウムチタン酸鉛(Pb(Ni,Nb)O−Pb(Z
r,Ti)O(PNN−PZT))、又は、ジルコン
酸チタン酸鉛にW、Ni、Mn、Zn、Coのうち何れ
か2つの元素を含む系等を使用できる。また、相転移膜
8として、応力(引張り応力又は圧縮応力)の印加によ
り結晶構造が相転移する薄膜、例えば、チタン酸バリウ
ム(BaTiO)、ジルコニウム酸鉛(PbZr
)、チタン酸バリウム・ストロンチウム((Ba,
Sr)TiO)、チタン酸バリウム・スズ(Ba(T
i,Sn)O)等を使用できる。相転移膜の種類とし
ては、例えば、正方晶系から菱面体晶系へ(或は菱面体
晶系から正方晶系へ)又は菱面体晶系から立方晶系へ
(或は立方晶系から菱面体晶系へ)転移する薄膜を用い
ることができる。特に、後者の相転移は強誘電体と常誘
電体間の相転移に相当する。また、キュリー点を境に存
在する強誘電相(ferroelectric phase)と常誘電相
(paraelectricphase)の間で相転移する強誘電体も使
用することができる。
【0019】ここで、本明細書における膜応力の定義を
する。薄い基板に膜が成膜されると、基板には膜応力に
よる反りが現れるのが一般的である。この反りの基板に
対する方向により引張り応力と圧縮応力を区別する。例
えば、図9(A)に示すように、基板が膜を内側にして
反る場合を膜内に引張り応力(T応力)が存在すると定
義し、同図(B)に示すように、基板が膜を外側にして
反る場合を膜内に圧縮応力(C応力)が存在すると定義
する。基板を加圧室に喩えると、膜に引張り応力が存在
する場合には膜は加圧室を加圧する方向に反り、膜に圧
縮応力が存在する場合には膜は加圧室を減圧する方向に
反ることになる。以上の定義は、“薄膜の力学的特性評
価技術(株)リアライズ社 第218頁〜219頁 平
成4年3月19日発行”に基づいている。
【0020】本発明のアクチュエータ13の駆動方法に
ついて説明する。相転移膜8として、例えば、(11
1)方向に引張り応力を受けると正方晶系から菱面体晶
系へ転移する任意のペロブスカイト型結晶を選んだ場合
を説明する。この相転移膜8は、(111)方向に圧縮
応力を受けると菱面体晶系から正方晶系へ転移する性質
をも備える。この相転移膜8は正方晶系の結晶構造を
(100)配向(a軸配向)処理をして成膜される。下
部電極6と上部電極9に電圧を印加すると、圧電体膜7
は電界方向に延び、その影響で振動板膜5及び相転移膜
8は膜面方向(膜厚方向と垂直方向)に引張り応力を受
ける。すると、振動板膜5は引張り応力の影響により加
圧室10側に撓む。一方、相転移膜8に生じる引張り応
力の方向(膜面方向)は(111)方向と35°の角度
があるものの、引張り応力の影響により結晶系は(10
0)配向した菱面体晶系へ相転移を起こす。この結果、
相転移膜8は膜厚方向に延び、振動板膜5に生じる引張
り応力を増大させるため、振動板膜5の撓みをより一層
増大させることができる。相転移膜8の体積変化は効率
良く縦歪みに変換できるため、圧電体膜7の歪みによっ
て延びる方向と相転移膜8の歪みによって延びる方向を
概略一致させることで、振動板膜5の変位量を従来のア
クチュエータ(圧電体膜のみを使用した圧電アクチュエ
ータ)よりも大幅に増大させることができる。
【0021】一方、相転移膜8の歪みによって延びる方
向を圧電体膜7の歪みによって延びる方向と概略直交さ
せることでいわゆる“引き打ち”を実現することができ
る。“引き打ち”とは、インク滴を吐出する前に一旦加
圧室を減圧する方向に振動板膜を変位させ、次の瞬間に
加圧室を加圧してインク滴を吐出することをいう。従来
の圧電アクチュエータで“引き打ち”を実現するために
は、図6(B)に示す駆動波形で圧電アクチュエータを
駆動していた。圧電アクチュエータの“引き打ち”動作
を図8と併せて説明する。時刻0≦T≦Tでは、圧電
アクチュエータ14にオフセット電圧Vが印加されて
おり、振動板膜5は微少距離dxだけ変位した位置でイ
ンク吐出の待機状態になっている(図8(A))。イン
ク吐出の直前、即ち、時刻T≦T≦Tでは、圧電ア
クチュエータ14に印加される電圧を0Vにまで減少さ
せ、加圧室内の圧力を瞬時に低下させる。このステップ
により、振動板膜5は元の位置に戻り、変位量は0にな
る。このときノズル21近傍にはメニスカス61が形成
される(同図(B))。時刻T≦T≦Tでは、印加
電圧をVまで瞬時に上昇させることで、圧電アクチュ
エータ14は膜厚方向に延びる向きに歪みが生じる。す
ると、振動板膜5は引張り応力により、加圧室側に撓
み、インク滴62を吐出する(同図(C))。時刻T
≦T≦Tにおいて圧電アクチュエータ14の印加電圧
を保持した後、時刻T≦T≦Tにおいて印加電
圧をオフセット電圧Vに戻す。
【0022】次に、簡単な駆動波形で“引き打ち”を容
易に実現する本実施の形態のアクチュエータについて説
明する。前述したように、相転移膜8はその歪みによっ
て延びる方向が圧電体膜7の歪みによって延びる方向と
概略直交するように成膜する。例えば、正方晶系の結晶
を(001)配向(c軸配向)処理をして相転移層8を
成膜する。圧電体膜7に電圧を印加すると、圧電体膜7
が電界方向(膜厚方向)に延びることにより相転移膜8
は膜面方向に引張り応力を受けて(100)配向した菱
面体晶系へ相転移する。この結果、相転移膜8は膜厚方
向に縮み、膜面方向に延びる。即ち、相転移膜8の歪み
によって延びる方向は圧電体膜7の歪みによって延びる
方向と概略直交することになる。
【0023】本アクチュエータの“引き打ち”の動作説
明を図6(A)及び図7を参照して説明する。加圧室1
0内にはインク70が充填されている。時刻T≦T
おいてはアクチュエータ13には電圧が印加されておら
ず、インク吐出待機時にある(図7(A))。時刻T
≦T≦Tにおいて印加電圧を0からVまで上昇させ
ると、圧電体膜7が電界方向(膜厚方向)に延びる影響
で振動板膜5及び相転移膜8は引張り応力を受ける。振
動板膜5内に生じる引張り応力により振動板膜5は加圧
室10を加圧する方向に撓む(同図(B))。さらに印
加電圧を上昇させると、時刻T≦T≦Tにおいて、
膜面方向に引張り応力を受けた相転移膜8は(100)
配向した菱面体晶系へ相転移し、膜厚方向に縮み、膜面
方向に延びる。この結果、相転移膜8には膜面方向に圧
縮応力が掛かり、加圧室を減圧する方向に撓む。このと
き、ノズル21にはメニスカス71が形成される(同図
(C))。時刻T≦T≦Tにおいて、印加電圧を0
にすると、振動板膜5等に掛かっている圧縮応力が開放
され、振動板膜5は元の状態に戻る。このとき加圧室1
0内のインク圧は瞬時に高められ、ノズル21からイン
ク滴72が吐出される(同図(D))。
【0024】このように、本実施の形態のアクチュエー
タによれば、“引き打ち”のような複雑な制御を略台形
状の電圧変化特性を有する駆動信号で実現することがで
きる。このため、制御回路の部品点数を減少させること
ができ、インクジェットプリンタの製造コストを下げる
ことができる。また、従来のようにインク吐出の待機時
にオフセット電圧を印加する必要はないため、アクチュ
エータの寿命が短くなる問題を解消できる。
【0025】アクチュエータ13の変形例を図4に示
す。図4(A)はアクチュエータ13を構成する各薄膜
の積層順序を下部電極6/相転移膜8/圧電体膜7/上
部電極9としたものであり、相転移膜8と圧電体膜7の
積層順序が逆になっているが、図3に示したアクチュエ
ータ13と同様の動作特性を備えている。図4(B)に
示すアクチュエータ13では、圧電体膜7を上部電極9
と下部電極6で挟んだ積層構造をなしているため、圧電
体膜7に直接電圧を印加することができる。また、“引
き打ち”を実現する相転移膜8として、(111)配向
した菱面体晶系を(111)配向した正方晶系に相転移
させる薄膜を選ぶこともできる。
【0026】また、本発明のアクチュエータでは、相転
移膜と圧電体膜の積層構造を備えていればよく、積層順
序や積層数等に制限はない。例えば、下部電極/圧電体
膜/相転移膜/圧電体膜/相転移膜/上部電極、となる
積層構造でもよく、下部電極/相転移膜/圧電体膜/相
転移膜/圧電体膜/上部電極、となる積層構造でもよ
い。また、これら複数の圧電体膜及び相転移膜は組成の
異なる膜を選んでもよい。また、圧電体膜を上部電極と
下部電極で直接挟む構成以外では、相転移膜における電
界のロスを減少させるため、相転移膜に導電性を与える
ことが好ましい。
【0027】尚、本発明のアクチュエータはインクジェ
ット式記録ヘッドのインク吐出駆動源の他に、マイクロ
ポンプ、マイクロスイッチ等の各種精密機器のアクチュ
エータとして使用することもできる。
【0028】次に、図5を参照してインクジェット式記
録ヘッドの製造プロセスについて説明する。まず、同図
(A)に示すように、加圧室基板1に振動板膜5及び下
部電極6を成膜する。加圧室基板として、例えば、直径
100mm、厚さ220μmのシリコン単結晶基板を用
いる。振動板膜5は、例えば、1100℃の炉の中で、
乾燥酸素を流して22時間程度熱酸化させ、約1μmの
膜厚の熱酸化膜とすることで成膜する。あるいは、11
00℃の炉の中で、水蒸気を含む酸素を流して5時間程
度熱酸化させ、約1μmの膜厚の熱酸化膜を形成しても
よい。その他、CVD法等の成膜法を適宜選択して成膜
してもよい。振動板膜5として、二酸化珪素膜に限られ
ず、酸化ジルコニウム膜、酸化タンタル膜、窒化シリコ
ン膜、酸化アルミニウム膜でもよい。但し、振動板膜5
は必ずしも必要ではなく、これを省略して下部電極自体
に振動板膜の役割を兼ねてもよい。次に、金、白金又は
アルミニウム等の導電性物質をターゲットとして振動板
膜5の全面に下部電極をスパッタ成膜する。膜厚は0.
3μm程度とする。この場合、振動板膜5と下部電極6
間の密着力を高めるために、極薄のチタン、クロム等を
中間層として介在させてもよい。
【0029】次に、同図(B)に示すように、下部電極
6上に圧電体膜7を成膜する。成膜例として例えば、チ
タン酸鉛とジルコン酸鉛のモル混合比が44%:56%
となるようなPZT系圧電体膜の前駆体(金属アルコキ
シド溶液)をゾル・ゲル法にて、最終的な膜厚が1.0
μmとなるまで6回の塗工/乾燥/脱脂を繰り返して成
膜する。次に、圧電体膜前駆体を結晶させるため、基板
全体を加熱する。本例では、赤外線輻射光源を用いて基
板の両面から酸素雰囲気中で650℃に5分間保持した
後、900℃で1分間加熱し、自然降温させることで圧
電体膜7の結晶化を行った。尚、圧電体膜前駆体の結晶
化は水熱処理で行ってもよい。水熱処理とは、例えば、
論文"Application of Hydrothermal Mechanism for Tai
lor-making Perovskite Titanate Films", IEEE Proc.
of the 9th Int'l Symp. on Electrets, Shanghai, Chi
na, Sept. 25-30, pp. 617-622(1996), W-ping Xu, Mas
anori Okuyama, et al.,に記述されているように、アル
カリ水溶液に強誘電体膜前駆体を浸漬し、結晶化させる
工程である。この水熱法によれば、比較的低温(例え
ば、200℃以下)で圧電体膜前駆体を結晶化させるこ
とができる。また、ゾル・ゲル法の他に、高周波スパッ
タ成膜法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)
法、MOD(Metal Organic Decomposition Proces
s)法、レーザアブレーション法、印刷法等を用いるこ
とができる。
【0030】次に、同図(C)に示すように、圧電体膜
7上に相転移膜8及び上部電極9を成膜する。本例で
は、チタン酸バリウムをMOD法で成膜する方法を説明
する。まず、相転移膜8の前駆体となるゾルを調整す
る。酢酸バリウム(Ba(CHCOOH))を酢酸
に溶解させた溶液と、テトライソプロポキシチタン(T
i(O−i−C)をブトキシエタノールに溶
解させた溶液とを混合し、溶質濃度を1M、BaとTi
のモル比を1:1としたゾルを調整する。このゾルを1
500rpmで0.1μmの厚さにスピンコーティング
し、400℃の温度環境下で脱脂する。この工程を5回
繰り返し、膜厚0.5μmのゲルとする。最後にRTA
(Rapid Thermal Annealing)で結晶化する。この処
理は650℃で5分、又は、900℃で1分とする。以
上の工程を経て圧電体膜7上に膜厚0.5μmの相転移
膜8が成膜される。次に、相転移膜8上に白金をスパッ
タ成膜して上部電極9を得る。
【0031】次に、同図(D)に示すように、上部電極
9上にレジストをスピンコートし、加圧室が形成される
べき位置に合わせて露光・現像してパターニングする。
残ったレジストをマスクとして上部電極9、相転移膜8
及び圧電体膜7をエッチングしてアクチュエータ13を
形成する。次に、加圧室が形成されるべき位置に合わせ
てエッチングマスク(図示せず)を施し、平行平板型反
応性イオンエッチング等の活性気体を用いたドライエッ
チング、或は、5重量%〜40重量%の水酸化カリウム
水溶液等の高濃度アルカリ水溶液によるウエットエッチ
ングで加圧室10を形成する。エッチングされずに残っ
た部分は側壁11となる。最後に樹脂等を用いてノズル
プレート2を加圧室基板1に接合する。このとき、各ノ
ズル21が加圧室10の各々の空間に対応して配置され
るよう位置合せする。ノズルプレート2を接合した加圧
室基板1を基体3に取り付ければ、インクジェット式記
録ヘッドが完成する
【発明の効果】本発明によれば、圧電体膜の歪みを利用
して相転移膜を相転移させ、このときの体積変化を利用
してアクチュエータを駆動するため、従来の圧電アクチ
ュエータよりも大きな変位を得ることができる。また、
相転移膜の歪み方向と圧電体膜の歪み方向を概略直交さ
せることで、簡単な駆動信号で“引き打ち”を実現する
ことができる。また、応答速度が速いため、インク吐出
スピードを向上させることができ、印字品質を向上させ
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェットプリンタの構成図である。
【図2】インクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であ
る。
【図3】本発明のインクジェット式記録ヘッドの断面図
である。
【図4】本発明の他の形態に係わるインクジェット式記
録ヘッドの断面図である。
【図5】本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造工
程断面図である。
【図6】アクチュエータの駆動信号波形である。
【図7】本発明のアクチュエータの“引き打ち”の説明
図である。
【図8】従来の圧電アクチュエータの“引き打ち”の説
明図である。
【図9】膜応力の説明図である。
【符号の説明】 1…加圧室基板、2…ノズルプレート、3…基体、4…
配線基板、5…振動板膜、6…下部電極、7…圧電体
膜、8…相転移膜、9…上部電極、10…加圧室、11
…側壁、12…共通流路、13…アクチュエータ、14
…圧電アクチュエータ

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 膜内部に生じた応力に起因して結晶構造
    が相転移し、歪みを生じる相転移膜と、逆圧電効果によ
    り圧電歪みを生じ、前記相転移膜に応力を与える圧電体
    膜との積層構造を有するアクチュエータ。
  2. 【請求項2】 前記相転移膜の歪みによって延びる方向
    は、電圧が印加されたときの前記圧電体膜の歪みによっ
    て延びる方向に概略一致することを特徴とする請求項1
    に記載のアクチュエータ。
  3. 【請求項3】 前記相転移膜の歪みによって延びる方向
    は、電圧が印加されたときの前記圧電体膜の歪みによっ
    て延びる方向に概略直交することを特徴とする請求項1
    に記載のアクチュエータ。
  4. 【請求項4】 前記相転移膜の組成は、チタン酸バリウ
    ム、ジルコニウム酸鉛、チタン酸バリウム・ストロンチ
    ウム、チタン酸バリウム・スズうち何れかであることを
    特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記
    載のアクチュエータ。
  5. 【請求項5】 前記圧電体膜の組成は、チタン酸鉛、ジ
    ルコン酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸
    チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウ
    ムチタン酸鉛、又は、ジルコン酸チタン酸鉛にタングス
    テン、ニッケル、マンガン、亜鉛、コバルトのうち何れ
    か2つの元素を含む系のうち何れかであることを特徴と
    する請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載のア
    クチュエータ。
  6. 【請求項6】 前記薄膜の積層構造は、上部電極/相転
    移膜/圧電体膜/下部電極であることを特徴とする請求
    項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載のアクチュエ
    ータ。
  7. 【請求項7】 前記薄膜の積層構造は、上部電極/圧電
    体膜/相転移膜/下部電極であることを特徴とする請求
    項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載のアクチュエ
    ータ。
  8. 【請求項8】 前記薄膜の積層構造は、上部電極/圧電
    体膜/下部電極/相転移膜であることを特徴とする請求
    項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載のアクチュエ
    ータ。
  9. 【請求項9】 加圧室を複数備えた加圧室基板と、前記
    加圧室に対応して設けられた請求項1乃至請求項8のう
    ち何れか1項に記載のアクチュエータと、を備えるイン
    クジェット式記録ヘッド。
  10. 【請求項10】 前記加圧室と前記アクチュエータの間
    に振動板膜を介在させたことを特徴とする請求項9に記
    載のインクジェット式記録ヘッド。
  11. 【請求項11】 請求項9又は請求項10に記載のイン
    クジェット式記録ヘッドを備えたインクジェットプリン
    タ。
  12. 【請求項12】 請求項3に記載のアクチュエータと、
    略台形状の電圧変化特性を有する駆動信号で前記アクチ
    ュエータを駆動する制御回路と、を備えたインクジェッ
    トプリンタ。
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