JP2000338300A - 荷電粒子ビームの集群装置と集群方法 - Google Patents

荷電粒子ビームの集群装置と集群方法

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JP2000338300A
JP2000338300A JP11148573A JP14857399A JP2000338300A JP 2000338300 A JP2000338300 A JP 2000338300A JP 11148573 A JP11148573 A JP 11148573A JP 14857399 A JP14857399 A JP 14857399A JP 2000338300 A JP2000338300 A JP 2000338300A
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gap
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晃伸 中條
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雅文 廣瀬
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非相対論的エネルギを持つ荷電粒子ビーム
を、短パルス化することができる荷電粒子ビーム集群装
置を提供する。 【解決手段】 ビーム発生装置が、運動エネルギ1eV
〜1MeVの荷電粒子ビームを発生する。ビームダクト
の一端から荷電粒子ビームが入射し、軸方向に沿って進
行する。軸方向に垂直な仮想平面とビームダクトの側壁
との交線に沿ってギャップが形成されている。インダク
ションシステムが、このギャップに、時間に関して−2
次関数的に変化する電場を発生させる。この電場によ
り、荷電粒子ビームが集群される。冷却手段が、インダ
クションシステムを強制的に冷却する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、荷電粒子ビームの
集群方法、特に非相対論的エネルギを持つ荷電粒子ビー
ムの集群方法に関する。
【0002】低速陽電子ビームを物質に入射させて陽電
子の寿命を測定することにより、半導体や金属中の格子
欠陥の非破壊検査や、物質最表面層の元素分析及び構造
解析等、従来の電子顕微鏡では不可能であった微細な分
析が可能となる。低速陽電子ビームは、トランジスタや
太陽電池などの半導体材料や薄膜材料、原子炉や核融合
材料、高分子材料、高温超伝導材料などの分析、検査及
び開発に幅広く応用することができる。
【0003】陽電子の寿命を精密に測定するために、低
速陽電子ビームを安定に極短パルス化するビーム制御技
術が望まれている。
【0004】
【従来の技術】図10は、従来の低速陽電子ビームの極
短パルス化装置を示す。
【0005】ビームダクト50に図の左方から陽電子が
入射する。陽電子ビームをチョッパ51でチョップし、
時間幅が2〜30ns程度のパルス状ビームを形成す
る。このパルス状ビームをバンチャ52で集群する前
に、サブハーモニックプリバンチャ53でビームの時間
幅が2ns以下になるようにする。
【0006】サブハーモニックプリバンチャ53は、2
重の筒からなり、内側の筒に高周波を印加することによ
って、筒の両端の2つのギャップでビームを変調するも
のである。
【0007】RFキャビティからなるバンチャ52は、
このビームに更に変調を加えて最終的に試料位置54で
時間的なフォーカスを得る。バンチャ52には、バンチ
ャ効率を高めるために正弦波のみならずその高調波が与
えられる。三角らは、基本波に第3高調波を混合し、時
間幅150psec程度の極短パルスを得ている(三角
ら、放射線 vol.18,No.2(1992))。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来技術によると、時
間幅が150psec程度の荷電粒子ビームパルスを得
ることができるが、動作がより安定でコンパクトかつ取
扱容易なパルス装置が望まれている。
【0009】本発明の目的は、非相対論的エネルギを持
つ荷電粒子ビームを、短パルス化することができる荷電
粒子ビーム集群装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の一観点による
と、運動エネルギ1eV〜1MeVの荷電粒子ビーム発
生装置と、一端から前記荷電粒子ビームが入射し、軸方
向に沿って進行するビームダクトであって、前記軸方向
に垂直な仮想平面と前記ビームダクトの側壁との交線に
沿って形成されたギャップを有する前記ビームダクト
と、前記ギャップを介して高周波電流を流す第1の電流
路、該第1の電流路に接続された少なくとも一つの第2
の電流路、及び該第2の電流路に鎖交する磁路を画定す
る少なくとも一つのコアとを含んで構成されたインダク
ションシステムと、前記インダクションシステムに、前
記荷電粒子ビームを集群するための電場を発生させる電
圧を印加する電圧印加手段であって、該電圧が時間に関
して−2次関数的に変化する前記電圧印加手段と、前記
インダクションシステムを強制的に冷却する冷却手段と
を有する荷電粒子ビーム集群装置が提供される。
【0011】本発明の他の観点によると、運動エネルギ
1eV〜1MeVの荷電粒子ビームの進行方向にほぼ平
行であり、強さが時間に関して−2次関数的に変化する
電場をある期間発生するとともに、冷却装置により前記
電場を発生する装置を強制的に冷却しながら前記荷電粒
子ビームを集群する荷電粒子ビームの集群方法が提供さ
れる。
【0012】荷電粒子ビームに、インダクションシステ
ムによる電場を作用させることにより、荷電粒子を集群
することができる。その場合、荷電粒子集群装置を強制
的に冷却することによって、発熱を吸収して熱の影響を
受けずに安定的に集群作用を行わせることが可能にな
る。インダクションシステムに与える電圧を、時間に関
して−2次関数的に変化させることにより、理想的には
荷電粒子ビームを時間に関してほぼ一点に集群すること
が可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】図1を参照して、本発明の実施例
による低速陽電子ビームを集群する集群装置について説
明する。なお、陽電子に限らずその他の荷電粒子ビーム
に適用することもできる。
【0014】図1は、実施例による陽電子ビーム集群装
置の正面図を示す。支持台30の上に円筒状のビームダ
クト1が取り付けられている。ビームダクト1は、両端
にフランジを有する複数の円筒状ダクトがフランジ部で
接続されて構成されている。
【0015】ビームダクト1と中心軸を共有するように
その外側に10個のヘルムホルツコイル2がほぼ等間隔
に配置されている。ヘルムホルツコイル2により、ビー
ムダクト1の内部にほぼ一様の軸方向のビーム輸送用磁
場が発生する。ビームダクト1の図の左端からビームダ
クト1内に入射した荷電粒子は、ビーム輸送用磁場によ
り軸方向に対して垂直な方向に力を受ける。この力によ
り荷電粒子はらせん運動しながら軸方向に輸送される。
【0016】ビームダクト1の入射端からやや後方(下
流側)には、チョッパ3が取り付けられている。連続的
に入射する陽電子ビームはチョッパ3によりチョップさ
れ、所定の時間幅にパルス化される。チョッパ3は、複
数枚のグリッドによってパルス電場を発生するものでも
よいし、機械的にチョップするものでもよい。
【0017】チョッパ3よりも距離L1だけ後方に、イ
ンダクションシステム10が取り付けられている。イン
ダクションシステム10については、後に図2を参照し
て詳説する。チョッパ3によってパルス化された陽電子
ビームは、インダクションシステム10によって集群さ
れ、パルスの時間幅が圧縮される。
【0018】インダクションシステム10よりも距離L
2だけ後方に、試料を配置するための試料室4が取り付
けられている。試料室4内に配置された試料表面に、イ
ンダクションシステム10で極短パルス化された陽電子
ビームが入射する。
【0019】次に、図2を参照して、インダクションシ
ステム10の構成及び動作原理について説明する。
【0020】図2は、ビームダクト1の中心軸を含む平
面における断面図を示す。陽電子ビームの集群を行う位
置に対応したビームダクト1の側壁に、円周方向のギャ
ップ16が形成されている。ギャップ16は、絶縁物か
らなる円環状部材14により塞がれ、ビームダクト1内
の気密性が保たれている。また、ギャップ16に接続す
るように、円環状のインダクションシステム10が取り
付けられている。
【0021】インダクションシステム10は、ビームダ
クト1と中心軸を共有する円環状空洞を画定する導電性
部材12、この円環状空洞内に配置され、ビームダクト
1の外周を1周する閉磁路を画定する強磁性体からなる
コア11、及び導電性部材12に電圧を印加するための
同軸ケーブル15から構成されている。円環状空洞は、
導電性部材12の内周側の側壁に設けられたギャップ1
6により円環状部材14に連続している。導電性部材1
2は、コア11の内周面と一方の端面に接する内側部材
12a、及びコア11の外周面に接し、他方の端面との
間にギャップ16に連続する空洞13を画定する外側部
材12bから構成されている。
【0022】外側部材12bの外周面に設けられた貫通
孔を通して同軸ケーブル15の芯線15aが空洞13内
に挿入され、内側部材12aの内周面側の端部に接続さ
れている。同軸ケーブル15の外側導体15bは、外側
部材12bの貫通孔近傍に接続されている。
【0023】次に、図6(A)を参照してインダクショ
ンシステム10の動作を説明する。
【0024】図6(A)は、インダクションシステム1
0の電気的接続に着目した概略図である。インダクショ
ンシステム10には、ギャップ16を介して高周波電流
を流す電流路i1、及びコア11と鎖交する電流路i2
が画定されている。同軸ケーブル15から高周波電圧を
印加する。コア11は、強磁性体により形成されている
ため、電流路i2のインダクタンスは高い。従って、印
加する電圧の周波数が十分高ければ、電流路i2のイン
ピーダンスが高くなり電流はほとんど流れない。電流路
i2は、ギャップ16の両端を直流的に同電位にする。
【0025】同軸ケーブル15から印加された電圧によ
り、電流路i1に電流が流れ、ギャップ16の両端に電
位差が生じる。これにより、ビームダクト1内に軸方向
に垂直な等電位面が発生する。すなわち、軸方向に平行
な電場が発生する。この電位差により、ビームダクト1
内を移動する荷電粒子は軸方向の加速度を受け、減速あ
るいは加速される。パルス化された陽電子ビームの先頭
近傍の陽電子を減速し、後尾近傍の陽電子を加速するこ
とにより、陽電子ビームの時間幅を圧縮することができ
る。
【0026】図2に示すインダクションシステムは、加
速エネルギ10〜30MeV程度の大電流荷電粒子ビー
ムの加速器として知られているものであり、インダクシ
ョンシステムを非相対論的荷電粒子ビームの速度変調に
利用した例はない。
【0027】図10に示す従来の集群システムは、予備
集群を行うためのサブハーモニックプリバンチャと集群
を行うためのRFキャビティを必要とする。サブハーモ
ニックプリバンチャには、2重の円筒状導体の両端にそ
れぞれギャップが存在する。一方のギャップに予備集群
のための適当な信号を印加しても、ビームが他方のギャ
ップの影響を受けると十分な予備集群を行うことができ
ない。他方のギャップの影響を廃し十分な集群を行うた
めには、2重円筒状導体の長さに制限が加わる上、予期
しない浮遊の容量が発生する恐れがあり、電気回路上、
組立の困難がともなう。これに対し、インダクションシ
ステムはビームダクトの1か所に配置されたギャップに
より集群用の電場を発生するため、このような問題は発
生しない。
【0028】また、インダクションシステムのギャップ
前後のビームダクトをアースレベルに落とすことができ
るため、外部からの雑音等に対して安定である。
【0029】次に、図3、図4を参照してインダクショ
ンシステムに印加する信号波形について説明する。
【0030】図3は、低速陽電子ビームが集群される様
子を表すグラフである。横軸は、時間tを表し、縦軸
は、図1に示すビームダクト1の軸方向の位置を、図2
のギャップ16の位置を基準として表す。図1のチョッ
パ3を通過した陽電子ギャップ16まで到達する。ギャ
ップ16に到達するすべての陽電子は、理想的には同一
のエネルギE0を有する。
【0031】陽電子は、ギャップ16に発生した電場に
より加減速を受け、試料表面4aに達する。比較的早い
時刻−t0にギャップ16に到達した陽電子は減速さ
れ、そのエネルギがE00まで低下する。比較的遅い時刻
−t2にギャップ16に到達した陽電子は加速され、そ
のエネルギがE02まで上昇する。その中間の時刻−t1
にギャップ16に到達した陽電子のエネルギは、エネル
ギE00とE02との中間のエネルギE01になる。最終的
に、これらの陽電子は、時刻−t3の時点で試料表面4
aに到達する。すなわち、ギャップ16の位置では、時
刻−t0から−t2まで分布していた陽電子ビームが、試
料表面4aの位置ではほぼ一点に集群される。
【0032】ギャップ16に印加される最適な電圧波形
V(t)は、
【0033】
【数1】V(t)=−m(L2)2/(2et2)+E0 と表される。ここで、mは陽電子の静止質量、eは電気
素量、tは陽電子が試料表面に到達する時刻を基準(t
=0)とした時間を表す。すなわち、最適な電圧V
(t)は、時間tの−2次関数になる。
【0034】図4に、最適な電圧V(t)の一例を示
す。横軸は経過時間tを表し、縦軸は電圧V(t)を表
す。なお、陽電子の初期エネルギE0を668eV、ギ
ャップ16から試料表面4aまでの距離を102cmと
している。
【0035】なお、時間に関して−2次関数的に変化す
る最適波形を、他の波形で近似してもよい。例えば線型
に変化する波形及び正弦波、余弦波を重ね合わせた波形
を発生させてもよい。
【0036】次に、図4に示された電圧波形を、インダ
クションシステムに印加して陽電子ビームを集群した実
験結果について説明する。
【0037】実験に使用した集群装置は、図1及び図2
に示すものである。インダクションシステムのコアに
は、ファインメットコア(日立金属(株)製)を使用し
た。ファインメットコアは飽和磁束密度が1.3T以上
と高く、また磁気歪が低いという特徴を有している。
【0038】インダクションシステムは、ヘルムホルツ
コイルによるビーム輸送用磁場内に配置されて使用され
るため、飽和磁束密度が高い材料が好ましい。飽和磁束
密度が0.5T以上の材料を使用することが好ましい。
より具体的には、飽和磁束密度が1T以上であることが
好ましい。また、印加した電圧に比例した電場を発生す
る必要があるため、磁気歪の少ない材料であることが好
ましい。例えば、フェライト系のコア、アモルファスコ
ア等を使用してもよい。
【0039】図4に示す波形をインダクションシステム
に印加して陽電子ビームを集群した。印加した波形は、
−80Vから+80Vまで時間8nsをかけて変化する
有効部分と、+80Vから−80Vまで時間10nsを
かけて戻るの無効部分からなるものである。すなわち、
波形の周期は18nsである。波形の無効部分が印可さ
れている期間に陽電子ビームがギャップ16の位置に到
達しないように、チョッパ3で連続的な陽電子ビームを
チョップすることが好ましい。このようにチョップする
ことにより、バックグラウンドの陽電子ビームを少なく
するとともに、良好なパルス幅の陽電子ビームを得るこ
とが可能になる。
【0040】初期の低速陽電子ビームのエネルギにばら
つきがない場合、図4に示すt-2に比例して変化する波
形を用いることにより理想的には一点に集群することが
できる。しかしながら、実際に使用可能な低速陽電子ビ
ームのエネルギは、3eV程度のばらつきを持ってい
る。
【0041】図3に破線で示すように、初期のエネルギ
(E0+dE)の陽電子がギャップ16に到達した場合
を考える。このエネルギの相違分dEのために、試料表
面4aに到達する時刻は、
【0042】
【数2】dt=t(1−(1+2et2dE/m(L
2)2-1/2) と表される。ここで、tは陽電子がギャップ16を通過
した時刻を表す。すなわち、初期のエネルギにdEだけ
のばらつきがあると、試料表面に到達する時刻にdtだ
けのばらつきが生ずる。
【0043】例えば、初期エネルギを668eV、エネ
ルギのばらつきを3eV、インダクションシステムに印
加する電圧波形を図4に示す波形とした場合、図2のギ
ャップ16から1m離れた試料表面への到達時刻のばら
つきが約200psになるという計算結果が得られた。
【0044】チョッパでチョップされたパルス状の陽電
子ビームを一定距離ドリフトさせると、エネルギのばら
つきによりパルス幅が広がる。幅の広がったパルスの中
心部分の陽電子のみを対象に集群を行うことにより、実
質的に集群対象となる陽電子のエネルギのばらつきを少
なくすることができる。具体的には、図1の集群装置に
おいて、チョッパ3とインダクションシステム10のギ
ャップとの距離L1を確保すればよい。
【0045】距離L1を100cmにして、陽電子ビー
ムの集群を行った。陽電子ビームの初期エネルギは8e
V、エネルギのばらつきは±0.5V、チョップ直後の
時間幅が30nsである。インダクションシステムに印
加した電圧は、鋸波と正の正弦波を重ね合わせたもので
ある。このとき、インダクションシステムのギャップか
ら206cm後方で半値幅200psの集束されたビー
ムを得ることができた。
【0046】上記実験では、距離L1が100cmの場
合を示したが、100cmに限らずその他の適切な距離
を確保するようにしてもよい。距離L1はエネルギの拡
がりによって適切に選ぶことが好ましい。現実的には、
10〜200cm程度が好ましいであろう。
【0047】また、複数枚のグリッドによってパルス電
場を発生させるチョッパを用いる場合、チョッパに印加
する電圧の振幅を小さくすることによっても、チョップ
後の陽電子ビームのエネルギのばらつきを少なくするこ
とができる。例えば、チョッパに入射する陽電子ビーム
の中心エネルギに、エネルギのばらつき幅を足し合わせ
たエネルギに相当するオフセット電圧をチョッパに印加
し、電圧の振幅を0.5Vとすると、チョップ後の陽電
子ビームのエネルギのばらつきを0.5eV程度にする
ことができる。この方法では、高いエネルギを有する陽
電子が取り出される。
【0048】図3及び図4では、−2次関数的に変化す
る電圧波形を印加する場合を説明したが、図4に示す波
形に近似した波形を印加してもよい。図5に、近似波形
の例を示す。なお、図5では、縦軸の正負を図4のそれ
と反転させて表している。
【0049】図5(A)は、鋸波で近似した場合を示
す。図5(A)に示すように、1周期内で電圧は線型に
単調増加する。
【0050】図5(B)は、正弦波の位相π〜2πの半
周期分の波形が図5(A)の鋸波と同一周期で繰り返す
波形を、図5(A)の鋸波に重ね合わせた場合を示す。
図中の破線a1は鋸波、破線a2は正弦波の位相π〜2
πの波形を示す。この2つの波形を重ね合わせると図中
の実線b1が得られる。図5(B)に示すように、この
波形は図4に示す理想的な波形に、より近似している。
【0051】図5(C)は、余弦波の位相0〜πの半周
期分の波形が図5(A)の鋸波と同一周期で繰り返す波
形を、図5(B)の波形に重ね合わせた場合を示す。図
中の破線b1は図5(B)の波形、破線b2は余弦波の
位相0〜πの波形を示す。この2つの波形を重ね合わせ
ると図中の実線cが得られる。図5(C)に示すよう
に、この波形も図4に示す理想的な波形に近似してい
る。
【0052】図5(A)に示す波形をインダクションシ
ステムに印加して陽電子ビームを集群した。印加した鋸
波は、−0.275〜+0.275Vの間で周期100
nsで変化する波形である。なお、鋸波の有効部分は8
0nsであり、その前後に合計20nsの無効部分があ
る。陽電子ビームの初期エネルギは8eV、パルス幅は
40ns、チョップ周波数は10MHzである。このと
き、インダクションシステムのギャップから190cm
後方で時間幅165psの集群されたビームを得ること
ができた。
【0053】図5(B)に示す電圧波形をインダクショ
ンシステムに印加して、初期エネルギ20eV、パルス
幅80ns、チョップ周波数10MHzの陽電子ビーム
を集群した。鋸波は、−2.05〜+2.05Vの間で
周期100ns(有効部分80ns)で変化する波形で
ある。正弦波は、位相π〜2πの波形が周期100ns
で繰り返す波形であり、振幅は0.3Vである。また、
鋸波に対して位相を1ns遅らせて重ね合わせた。
【0054】このとき、インダクションシステムのギャ
ップから90cm後方で時間幅138psの集群された
ビームを得ることができた。
【0055】なお、負の正弦波の位相を遅らせたのは、
鋸波の立ち下がり時間が0ではないこと、インダクショ
ンシステムのギャップ幅が0ではないこと等、理想的な
条件からのずれを補正するためである。なお、適切な位
相遅れ量は、装置により異なると思われるため、実験を
繰り返して最適条件を見つけることが好ましい。
【0056】図5(B)に示す電圧波形を、条件を変え
て重ね合わせて集群を行った。陽電子ビームは、初期エ
ネルギ200eV、パルス幅30ns、チョップ周波数
10MHzである。鋸波は、−20〜+20Vの間で周
期100ns(有効部分30ns)で変化する波形であ
る。負の正弦波は、位相0〜πの波形が周期30nsで
繰り返す波形であり、振幅は5Vである。また、鋸波と
負の正弦波は同相で重ね合わせた。
【0057】このとき、インダクションシステムのギャ
ップから207cm後方で時間幅40psの集群された
ビームを得ることができた。
【0058】次に、図5(C)に示す電圧波形をインダ
クションシステムに印加して集群を行った。陽電子ビー
ム、鋸波及び負の正弦波は、上記3番目の実験例と同条
件である。余弦波は、位相0〜πの波形が周期30ns
で繰り返す波形であり、振幅は0.1Vである。このと
き、インダクションシステムのギャップから207cm
後方で時間幅20psの集群されたビームを得ることが
できた。
【0059】上記実験例の結果が示すように、インダク
ションシステムに鋸波形の電圧を印加してパルス状の陽
電子ビームを集群することができる。また、鋸波に正弦
波の位相π〜2πの波形、さらには余弦波の位相0〜π
の波形を重ね合わせることにより集群効率を高めること
ができる。
【0060】上記実験例では、重畳する正弦波及び余弦
波の波形を半周期分の波形としたが、必ずしも半周期分
の波形である必要はない。正弦波の位相0〜πの波形の
代わりに、正弦波の上に凸の部分の波形を切り出しても
よい。同様に、位相π〜2πの波形の代わりに、下に凸
の部分の波形を切り出してもよい。また、余弦波の位相
0〜π、位相π〜2πの波形の代わりに、それぞれ余弦
波の傾きが負の部分の波形、余弦波の傾きが正の部分の
波形を切り出してもよい。このとき、実験を繰り返し、
適切な波形を選択することが好ましい。
【0061】図2及び図6(A)では、インダクション
システム10の2つの電流路が並列に接続されている場
合について示したが、直列接続構成にしてもよい。ま
た、コアを複数配置してもよい。
【0062】図6(B)は、インダクションシステム1
0の2つの電流路に直列に電流が流れる構成とした場合
を示す。図6(B)の構成では、同軸ケーブル15の芯
線がコア11を取り巻いている。芯線により形成された
電流路i2に高周波電流がながれると、コア11内の磁
場変化を打ち消すように導電性部材12とギャップ16
により形成された電流路i1に電流が流れる。この電流
により、ギャップ16の両端に電位差が生ずる。
【0063】図6(C)は、コア11a、11bと同軸
ケーブル15a、15bを配置し、コア11a、11b
にそれぞれ同軸ケーブル15a、15bの芯線を巻き付
けた場合を示す。コア15aの芯線により電流回路i2
が形成され、電流回路i2を流れた電流は同軸ケーブル
15bの外部導体に流出する。
【0064】同軸ケーブル15bの芯線により形成され
た電流路i3を流れた電流は、導電性部材12とギャッ
プ16により形成された電流路i1に流れ、同軸ケーブ
ル15aの外部導体に流出する。
【0065】電流路i2、i3のコア11aと11bと
に挟まれた部分には、相互に逆向きの電流が流れるた
め、実質的に電流が流れないことと等価である。従っ
て、電流路i2とi3に流れる電流と、電流路i1に流
れる電流により、コア11a、11b内の磁場変化が打
ち消される。
【0066】図6(D)は、1つの同軸ケーブル15の
芯線を並列に2つのコア11a、11bにそれぞれ巻き
付けた場合を示す。図6(C)と同様の電流路i1、i
2、i3が形成され、電流路i1を流れる電流によりギ
ャップ16の両端に電位差が発生する。
【0067】図6(B)の回路は、図6(A)の回路に
比べて渦電流によるインダクタンスが大きくなるという
特徴を有するが、基本的な特性は同じである。
【0068】図6(C)の回路は、2ケ所の入力端子か
ら別々の信号を入力できるので、ギャップ16に極めて
多様な電場を発生させることができる。
【0069】図6(D)の回路は、入力の電圧が充分大
きく取れない場合、例えば入力装置側のアンプの最大出
力電圧が不足している場合等に有効な回路である。
【0070】図2で説明したインダクションシステム1
0の構造では、インダクションシステム10に与えるパ
ルス電圧(例えば図5(A)〜(D)に示す波形)によ
り供給される電力が大きくなるにつれ、コア11の発熱
が増大する。その結果、コアの性能が低下して安定した
短パルス化が困難になるおそれがある。
【0071】例えば、コアの温度がキューリー点に達す
ると、コアの強磁性状態が維持できなくなる。あるいは
キューリー点に達しないまでもそれに近い温度まで上昇
した場合には、熱による磁性性質の低下が起こる。その
為に、荷電粒子ビームの短パルス化のための集群作用の
所期の性能が発揮されなくなる場合が生じる。
【0072】以下、コアの発熱の問題を解決するための
第1〜第3の実施例について説明する。
【0073】図7(A)は,第1の実施例による陽電子
ビーム集群装置のインダクションシステムの断面図を示
す。インダクションシステムの基本構成は、図2に示す
ものと同様である。図7(A)に示すインダクションシ
ステムの各構成部分には、図2のインダクションシステ
ムの対応する構成部分と同一の参照符号が付されてい
る。
【0074】図7(B)は、図7(A)に示すインダク
ションシステムを、同軸ケーブル15の取り付け部側か
ら見た側面図を示し、図7(C)は,その反対側から見
た側面図を示す。
【0075】導電性部材12は、熱伝導性の良い例えば
銅などの材料で形成される。その外側部材12bの外周
に接して冷却装置20が設けられている。冷却装置20
は、外側部材12bの外周を取り巻く水路21を含む
【0076】図7(B)及び図7(C)に示すように、
水路21は、外側部材12bの外周面を半周巡る水路2
1a、その反対側の外周面を半周巡る水路21b、及び
水路21aと21bとに平走するように外側部材12b
の外周面をほぼ1周する水路21cを含んで構成され
る。水路21a及び21bの相互に対向する一対の端部
には、それぞれ注水口22及び排水口23が設けられて
いる。水路21aの他方の端部は水路21cの一端に接
続され、水路21bの他方の端部は水路21cの他端に
接続されている。
【0077】注水口22から水路21a内に注入された
冷却水は、水路21a、21c、及び21bを通って排
水口23から排出される。冷却水が水路21内を流れる
ときに、コア11からの発熱を吸収し、温度上昇を抑制
する。
【0078】なお、冷却水を冷却するチラー等の装置を
外部に設けて注水口22と排水口23に接続してもよ
い。また、水路は図7のように2回巻きに限らず、装置
の大きさや発熱量に応じて適宜巻数を増減してもよい。
さらに、冷却装置20に冷却効率を高めるための放熱フ
ィンを設けてもよい。
【0079】次に、第2の実施例について説明する。
【0080】図8(A)は、第2の実施例による陽電子
ビーム集群装置のインダクションシステムの断面図を示
す。インダクションシステムの基本構成は、図2に示す
ものと同様である。図8(A)に示すインダクションシ
ステムの各構成部分には、図2のインダクションシステ
ムの対応する構成部分と同一の参照符号が付されてい
る。図8(B)及び図8(C)は、それぞれ図8(A)
のインダクションシステムを矢印B及びCの方向からみ
た側面図を示す。
【0081】第2の実施例では、インダクションシステ
ムと冷却装置とを一体に形成している。すなわち、導電
性部材12が、コア11を収容する内周側空洞と、その
外周を取り囲む外周側空洞24を画定している。外周側
空洞24には、冷却水の注水口25と排水口26とが設
けられ、両者の中間の位置に隔壁24aが設けられてい
る。外周側空洞24を同軸ケーブル15が貫通するた
め、その貫通部に、絶縁と気密を兼ねたシール部材28
が設けられている。注水口25から外周側空洞24内に
注入された冷却水は、コア11に沿って1周し、排水口
26から排出される。
【0082】図8に示す第2の実施例においても、外周
側空洞24内に冷却水を流すことにより、コア11から
の発熱を吸収し、温度上昇を抑制することができる。
【0083】次に、第3の実施例について説明する。
【0084】図9(A)は、第3の実施例による陽電子
ビーム集群装置のインダクションシステムの断面図を示
す。インダクションシステムの基本構成は、図2に示す
ものと同様である。図9(A)に示すインダクションシ
ステムの各構成部分には、図2のインダクションシステ
ムの対応する構成部分と同一の参照符号が付されてい
る。図9(B)及び図9(C)は、それぞれ図9(A)
のインダクションシステムを矢印B及びCの方向からみ
た側面図を示す。
【0085】図9に示す第3の実施例では、インダクシ
ョンシステム10の空洞13内に冷却水を直接流す。冷
却水の注水口31と排水口32とが、空洞13に連通
し、注水口31と排水口32との中間の位置に隔壁13
aが設けられている。外側部材12aを同軸ケーブル1
5が貫通する部分に、絶縁と気密を兼ねたシール部材3
8が設けられている。
【0086】第3の実施例においては、コア11が直接
冷却水に接触するため、高い冷却効率を得られる。
【0087】以上の実施例においては冷却媒体として水
以外に、オイルや他の冷却液を使用することもできる。
これらの実施例においては、注水口から入った冷却水が
コアを冷却した後排水口から排出される。冷却水を流す
ことでコアが冷却され、運転中のコアの温度上昇が効果
的に抑制され、所望の陽電子ビームの集群作用が得られ
る。
【0088】以上実施例に沿って本発明を説明したが、
本発明はこれたに制限されるものではない。例えば、種
々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に
自明であろう。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
パルス化された荷電粒子ビームの時間幅を、インダクシ
ョンシステムを用いて効率的に圧縮することができる。
さらに、インダクションシステムのコアの発熱が効果的
に冷却されて安定的に荷電粒子ビームの短パルス化が可
能となる。インダクションシステムに印加する電圧を、
時間に関して−2次関数的に変化させることにより、集
群の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例による陽電子ビーム集群装置の正面図で
ある。
【図2】図1の陽電子ビーム集群装置のインダクション
システムの断面図である。
【図3】図1の陽電子ビーム集群装置のビームダクト内
を進行する陽電子の位置を時間の関数として示すグラフ
である。
【図4】インダクションシステムに印加する理想的な電
圧波形を示すグラフである。
【図5】インダクションシステムに印加する理想的な電
圧波形に近似した波形の例を示すグラフである。
【図6】図2のインダクションシステム及び他の構成例
によるインダクションシステムを電気的接続に着目して
示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例による陽電子ビーム集群
装置のインダクションシステムの断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例による陽電子ビーム集群
装置のインダクションシステムの断面図である。
【図9】本発明の第3の実施例による陽電子ビーム集群
装置のインダクションシステムの断面図である。
【図10】従来例による陽電子ビーム集群装置の正面図
である。
【符号の説明】
1 ビームダクト 2 ヘルムホルツコイル 3 チョッパ 4 試料室 10 インダクションシステム 11 コア 12 導電性部材 13 空間 13a 隔壁 14 絶縁性円環状部材 15 同軸ケーブル 16 ギャップ 20 冷却装置 21a、21b、21c 水路 22、25、31 注水口 23、26、32 排水口 24 外周側空洞 24a 隔壁 28、38 シール部材 30 支持台

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 運動エネルギ1eV〜1MeVの荷電粒
    子ビーム発生装置と、 一端から前記荷電粒子ビームが入射し、軸方向に沿って
    進行するビームダクトであって、前記軸方向に垂直な仮
    想平面と前記ビームダクトの側壁との交線に沿って形成
    されたギャップを有する前記ビームダクトと、 前記ギャップを介して高周波電流を流す第1の電流路、
    該第1の電流路に接続された少なくとも一つの第2の電
    流路、及び該第2の電流路に鎖交する磁路を画定する少
    なくとも一つのコアとを含んで構成されたインダクショ
    ンシステムと、 前記インダクションシステムに、前記荷電粒子ビームを
    集群するための電場を発生させる電圧を印加する電圧印
    加手段であって、該電圧が時間に関して−2次関数的に
    変化する前記電圧印加手段と、 前記インダクションシステムを強制的に冷却する冷却手
    段とを有する荷電粒子ビーム集群装置。
  2. 【請求項2】 前記荷電粒子ビームの行路内であって、
    前記ギャップよりも上流側に配置され、荷電粒子ビーム
    をチョップしてパルス状の荷電粒子ビームを形成するチ
    ョッパを有する請求項1に記載の荷電粒子ビーム集群装
    置。
  3. 【請求項3】 前記チョッパと前記ギャップとの間の距
    離が、10〜200cmである請求項2に記載の荷電粒
    子ビーム集群装置。
  4. 【請求項4】 運動エネルギ1eV〜1MeVの荷電粒
    子ビームの進行方向にほぼ平行であり、強さが時間に関
    して−2次関数的に変化する電場をある期間発生すると
    ともに、冷却装置により前記電場を発生する装置を強制
    的に冷却しながら前記荷電粒子ビームを集群する荷電粒
    子ビームの集群方法。
  5. 【請求項5】 さらに、前記荷電粒子ビームに、前記電
    場を発生する位置よりも10〜200cm上流において
    荷電粒子ビームをチョップし、パルス状の荷電粒子ビー
    ムを形成する工程を含む請求項4に記載の荷電粒子ビー
    ムの集群方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007299570A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Kobe Steel Ltd イオンビームの飛行制御装置,イオンビームの飛行制御方法及び散乱イオン分析装置
CN110690093A (zh) * 2018-07-06 2020-01-14 Fei 公司 具有改进的成像分辨率的电子显微镜

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