JP2007299570A - イオンビームの飛行制御装置,イオンビームの飛行制御方法及び散乱イオン分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオンビームの先端及び/もしくは後端にかける電位を変化させることで,イオンビームを圧縮或いは伸張させることのできる飛行イオンビーム制御装置及び方法或いは,上記イオンビームの長さ△tを電子的制御により短くすることで,エネルギー分解能を高めることのできる散乱イオン分析装置を提供すること。
【解決手段】分析対象物に向けて飛行するイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に与える電位を,そこを通過するイオンビームの位置に応じて変化させるようにしたことを特徴とするイオンビームの飛行制御装置。
【選択図】図1
【解決手段】分析対象物に向けて飛行するイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に与える電位を,そこを通過するイオンビームの位置に応じて変化させるようにしたことを特徴とするイオンビームの飛行制御装置。
【選択図】図1
Description
本発明は,パルス化されたイオンビームの飛行状態を制御するためのイオンビームの飛行制御装置,イオンビームの飛行制御方法及び上記制御装置を用いた散乱イオン分析装置に係り,特にパルス状イオンビームの飛行方向の長さを圧縮することで,イオンビームの飛行時間の測定精度を向上させることのできるイオンビームの飛行制御装置及び方法,並びに試料組成の深さ方向の分解能を向上させることのできる散乱イオン分析装置に関するものである。
図5は,非特許文献1に示された従来技術にかかる中エネルギー同軸型直衝突イオン散乱分光装置の概念図である。
図において,イオン源1から発生した直流イオンビームは,加速管2やレンズ3,ステアラ4,偏向マグネット5などによりエネルギー付与,軌道調整,整形,不要イオンの除去などの手順を経て,チョッピング電極6に入射される。チョッピング電極6においては,パルス的に変化する電圧が印加されることでビームが進行方向に対して水平方向に軌道を曲げられることになる。したがって,チョッピング電極下流に設置されたチョッピングアパーチヤ7を通り抜けた直流のビームの一部のみがチョッピングアパーチャ7の下流に通過することになり,ビームがパルス化される。
パルス化されたビームはPoschenrieder電極8により収束とパルスの圧縮を経て試料9上に照射され,更に,試料9から発生する散乱イオンはMCP検出器10で捕捉される。その結果,散乱イオンのMCP検出器10上での検出位置と,試料からMCP検出器までの飛行時間とが測定される。
図において,イオン源1から発生した直流イオンビームは,加速管2やレンズ3,ステアラ4,偏向マグネット5などによりエネルギー付与,軌道調整,整形,不要イオンの除去などの手順を経て,チョッピング電極6に入射される。チョッピング電極6においては,パルス的に変化する電圧が印加されることでビームが進行方向に対して水平方向に軌道を曲げられることになる。したがって,チョッピング電極下流に設置されたチョッピングアパーチヤ7を通り抜けた直流のビームの一部のみがチョッピングアパーチャ7の下流に通過することになり,ビームがパルス化される。
パルス化されたビームはPoschenrieder電極8により収束とパルスの圧縮を経て試料9上に照射され,更に,試料9から発生する散乱イオンはMCP検出器10で捕捉される。その結果,散乱イオンのMCP検出器10上での検出位置と,試料からMCP検出器までの飛行時間とが測定される。
この測定時間はサンプルからMCP検出器10までの距離と散乱イオンのエネルギーにより決まり,上記試料からMCP検出器10まで距離は既知であるため散乱イオンのエネルギーを求め,これにより試料を分析することが可能となる。
しかしながら,上記非特許文献1に記載の従来技術においては,ビームのパルスを圧縮するためにPoschenrieder電極を用いているため装置が非常に大がかりとなる欠点がある。
しかしながら,上記非特許文献1に記載の従来技術においては,ビームのパルスを圧縮するためにPoschenrieder電極を用いているため装置が非常に大がかりとなる欠点がある。
一方,図6は,特許文献1の従来技術として紹介された散乱イオン分析装置の概念図であり,イオン源31からでたイオンはアパーチャ21と電極22を通過し,加速されてチョッピング電極13に至る。
チョッピング電極13内では,磁石12によって定磁場がかけられていて,イオンビームは図中矢印Cのように軌道を曲げられる。そこで,チョッピング電極13によって電場を形成すると,イオンの進行方向は曲げられ,所定の質量数のイオンのみがイオンビームとして試料5に導入される。
上記チョッピング電極13の電位を変えることで,目的のイオンを偏向させて試料方向へ進行させたり遮断したりできる,いわゆるチョッピングできる構成となっている。
試料の分析原理は,前記非特許文献1に記載されたものと同じである。
チョッピング電極13内では,磁石12によって定磁場がかけられていて,イオンビームは図中矢印Cのように軌道を曲げられる。そこで,チョッピング電極13によって電場を形成すると,イオンの進行方向は曲げられ,所定の質量数のイオンのみがイオンビームとして試料5に導入される。
上記チョッピング電極13の電位を変えることで,目的のイオンを偏向させて試料方向へ進行させたり遮断したりできる,いわゆるチョッピングできる構成となっている。
試料の分析原理は,前記非特許文献1に記載されたものと同じである。
上記特許文献1の図2に記載の散乱イオン分析装置では,加速器により引出されたイオンビームは途中の平行平板電極(チョッピング電極)を通過する。この平行平板電極には,チョッピング電源からの高圧パルスが両電極間に印加されており周期的に変化する強電界がかかっている。従って,イオンビームは電界によって軌道を曲げられるが,所定のパルス電位の時に平行平板電極を通過したイオンビームのみが,下流の試料に導かれることになる。チョッピング電源のパルス出力はチョッピング回路の信号により制御される。
このようにパルス化されたイオンビームがそのまま試料に衝突し散乱され,検出器14で散乱イオンの飛行時間が測定される。
小林峰,青野正和,「中エネルギー同軸型直衝突イオン散乱分光装置(ME−CAICISS):特性と今後の展望」,Isotop News1997年4月号,P10〜15 特開平7−43325号公報
このようにパルス化されたイオンビームがそのまま試料に衝突し散乱され,検出器14で散乱イオンの飛行時間が測定される。
小林峰,青野正和,「中エネルギー同軸型直衝突イオン散乱分光装置(ME−CAICISS):特性と今後の展望」,Isotop News1997年4月号,P10〜15
ここでビームの長さΔtについて考える。実際にはΔtは1〜5ns程度である。ビームはこの時間の間試料に照射され続け,また散乱はどのタイミングでも起こりえるが,散乱の発生した時間は測定できないため時間分解能には,測定系の分解能などを考慮すると上記Δt以上となる。後述するように,時間幅Δtによる測定エネルギーの誤差ΔEは下式で表すことができる。
ΔE=2(6920.6/L)E√EΔt[s]
これよりエネルギー分解能は距離に反比例し時間分解能に比例することが判る。
パラメータとしてビーム幅Δtを1〜5ns,L=0.25m,0.5mとし,この式から散乱イオンエネルギーに対するエネルギー分解能を計算した結果を図4に示す。
これによると検出器までの距離Lが0.5m,80keVの場合,ビーム長さが1ns異なるとエネルギー分解能は1keV程度と大きく変わることがわかる。
このようにエネルギー分解能を高めるには,例えば前記特許文献1の図1に記載のチョッパ板を高速で回転させればよいが,このような機械的な方法では高速化に限度がある。
ΔE=2(6920.6/L)E√EΔt[s]
これよりエネルギー分解能は距離に反比例し時間分解能に比例することが判る。
パラメータとしてビーム幅Δtを1〜5ns,L=0.25m,0.5mとし,この式から散乱イオンエネルギーに対するエネルギー分解能を計算した結果を図4に示す。
これによると検出器までの距離Lが0.5m,80keVの場合,ビーム長さが1ns異なるとエネルギー分解能は1keV程度と大きく変わることがわかる。
このようにエネルギー分解能を高めるには,例えば前記特許文献1の図1に記載のチョッパ板を高速で回転させればよいが,このような機械的な方法では高速化に限度がある。
従って,本発明が目的とするところは,イオンビームの先端及び/もしくは後端にかける電位を変化させることで,イオンビームを圧縮或いは伸張させることのできる飛行イオンビーム制御装置及び方法或いは,上記イオンビームの長さΔtを電子的制御により短くすることで,エネルギー分解能を高めることのできる散乱イオン分析装置を提供することである。
すなわち,上記のように散乱イオン分析装置において,エネルギー分解能を高めるには,測定対象物である試料に入射されるイオンビームの長さΔtを短くすることが有効であり,本発明はそのような目的を,電子制御により達成することのできる散乱イオン分析装置を提供しようとするものである。
また本発明は,上記のような散乱イオン分析装置のみでなく,飛行するイオンビームを飛行中において飛行方向に圧縮することのできるイオンビーム飛行制御装置及び方法を提供する。このイオンビーム飛行制御装置は,上記散乱イオン分析装置はもちろん,それ以外のイオンビームの飛行状態における飛行方向の長さを調整するあらゆる用途に適用可能であいり,イオンビームを圧縮する場合のみでなく,伸張する場合のも適用可能であることは言うまでも無い。
また本発明は,上記のような散乱イオン分析装置のみでなく,飛行するイオンビームを飛行中において飛行方向に圧縮することのできるイオンビーム飛行制御装置及び方法を提供する。このイオンビーム飛行制御装置は,上記散乱イオン分析装置はもちろん,それ以外のイオンビームの飛行状態における飛行方向の長さを調整するあらゆる用途に適用可能であいり,イオンビームを圧縮する場合のみでなく,伸張する場合のも適用可能であることは言うまでも無い。
上記目的を達成するべく本発明は,分析対象物に向けて飛行するイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設ける。そして,上記パルス圧縮電極に与える電位を,そこを通過するイオンビームの位置に応じて変化させるようにしたイオンビームの飛行制御装置が提供される。
この発明では,イオンビームを上記電極間を通過する間においてその先端及び/もしくは後端の速度を変化させるものであるので,イオンビームを前後或いはそのいずれかに伸張或いは圧縮させることで,飛行中のイオンビームの長さを変化させることが可能である。
この発明では,イオンビームを上記電極間を通過する間においてその先端及び/もしくは後端の速度を変化させるものであるので,イオンビームを前後或いはそのいずれかに伸張或いは圧縮させることで,飛行中のイオンビームの長さを変化させることが可能である。
先端のイオンを減速させると共に,イオンビームの後端を加速させることでイオンビームを圧縮させる具体的態様としては,上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極に入射されかつ上記イオンビームの全体が上記パルス圧縮電極の開口部ビーム通路にすべて入射されるまでは第1の電位に維持し,上記イオンビーム先端が上記開口部ビーム通路から出射するまでに上記第1の電位よりも低い第2の電位に変化させるようにし,更に上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極の開口部ビーム通路出口よりビーム全体が出射するまでに第2の低電位から上記第2の電位より高い第3の電位にまで上昇させ,上記イオンビーム全体が下流にある接地電極を通過するまで上記第3の電位に維持するようにしたイオンビームの飛行制御装置が挙げられる。
このように構成することで,イオンビームの前端が減速されると共に後端部が加速され,イオンビームの長さΔtを短くすることができる。これを散乱イオン分析装置に適用すれば,エネルギー分解能を高めることのできる。
このように構成することで,イオンビームの前端が減速されると共に後端部が加速され,イオンビームの長さΔtを短くすることができる。これを散乱イオン分析装置に適用すれば,エネルギー分解能を高めることのできる。
上記したイオンビームの先端を減速させることと,イオンビームの後端部を加速させることの両方を実行すれば更にイオンビームの長さΔtを短くすることができる。
そのための構成としては,上記パルス圧縮電極に与える電位を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極の開口部ビーム通路入り口に差し掛かってからビーム全体が上記開口ビーム通路に入射するまでは第1の電位を保ち,ビーム全体が上記開口ビーム通路内にある間に上記第1の電位より低い第2の電位まで低下させ,その後ビーム全体が上記開口ビーム通路出口より出射するまでに上記第2の電位より高い第3の電位に上昇させ,上記イオンビーム先端が上記接地電極の出口に差し掛かるまで上記第3の電位を維持するようにしたイオンビームの飛行制御装置が提供される。
そのための構成としては,上記パルス圧縮電極に与える電位を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極の開口部ビーム通路入り口に差し掛かってからビーム全体が上記開口ビーム通路に入射するまでは第1の電位を保ち,ビーム全体が上記開口ビーム通路内にある間に上記第1の電位より低い第2の電位まで低下させ,その後ビーム全体が上記開口ビーム通路出口より出射するまでに上記第2の電位より高い第3の電位に上昇させ,上記イオンビーム先端が上記接地電極の出口に差し掛かるまで上記第3の電位を維持するようにしたイオンビームの飛行制御装置が提供される。
またこの装置をイオンビームの飛行制御方法として捉えると,分析対象物に向けて照射されたイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極に入射されかつ上記イオンビームの全体が上記パルス圧縮電極の開口部ビーム通路にすべて入射されるまでは第1の電位に維持し,上記イオンビーム先端が上記開口部ビーム通路から出射するまでに上記第1の電位よりも低い第2の電位に変化させるようにし,上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極の開口部ビーム通路出口よりビーム全体が出射するまでに第2の低電位から上記第2の電位より高い 第3の電位にまで上昇させ,上記イオンビーム全体が下流にある接地電極を通過するまで上記第3の電位に維持するようにしたことを特徴とするイオンビームの飛行制御方法が把握される。
作用効果としては,前記イオンビームの飛行制御装置と同様である。
作用効果としては,前記イオンビームの飛行制御装置と同様である。
上記イオンビームの飛行制御装置の適用例として,典型的には次に記載する散乱イオン分析装置が挙げられる。但し,このイオンビーム飛行制御装置や方法の適用範囲は,上記散乱イオン分析装置に限らず,イオンビームを飛行させて行う各種の検査装置,各種の駆動装置そのほかにも適用可能であることは,いうまでもない。
上記イオンビーム飛行制御装置を適用した散乱イオン分析装置としては,加速器からの入射イオンビームのビーム軸と平行に設置され,パルス電圧を印加される2枚の平行平板電極と,上記平行平板電極の下流に設置されたアパーチヤとを備え,上記アパーチヤによってパルス化された後分析対象物に入射し,分析対象物表面の元素により散乱される該イオンの飛行時間を測定することで,分析対象物の深さ方向の元素組成分析を行う散乱イオン分析装置において,前記分析対象物に向けて飛行するイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に与える電位を,そこを通過するイオンビームの位置に応じて変化させるようにしたことを特徴とする散乱イオン分析装置が考えられる。
或いは,これを更に具体化させた,加速器からの入射イオンビームのビーム軸と平行に設置され,パルス電圧を印加される2枚の平行平板電極と,上記平行平板電極の下流に設置されたアパーチヤとを備え,上記アパーチヤによってパルス化された後分析対象物に入射し,分析対象物表面の元素により散乱される該イオンの飛行時間を測定することで,分析対象物の深さ方向の元素組成分析を行う散乱イオン分析装置において,前記分析対象物に向けて飛行するイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極に入射されかつ上記イオンビームの全体が上記パルス圧縮電極の開口部ビーム通路にすべて入射されるまでは第1の電位に維持し,上記イオンビーム先端が上記開口部ビーム通路から出射するまでに上記第1の電位よりも低い第2の電位に変化させるようにし,上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極の開口部ビーム通路出口よりビーム全体が出射するまでに第2の低電位から上記第2の電位より高い第3の電位にまで上昇させ,上記イオンビーム全体が下流にある接地電極を通過するまで上記第3の電位に維持するようにした散乱イオン分析装置が考えられる。
本発明は,上記のように構成されているので,イオンビームに速度差をつけ(速度分布をもたせ)イオンビームの長さΔtを電子的制御により短くすることで,簡単にイオンビームの圧縮を行うことができる。この場合,機械的構成によらないので,極めて高速化することができる。またそれによりエネルギー分解能を高めることのできる散乱イオン分析装置を提供することができる。
以下,本発明を具体化した実施形態に基づいて,本発明を詳しく説明する。
ここに図1は,本発明の一実施形態にかかる散乱イオン分析装置の概念図,図2,図3は,上記散乱イオン分析装置を構成するパルス圧縮電極におけるイオンビームの移動位置と,その時々のパルス圧縮電極への印加電圧の変化を示す概念図である。
図1に示された散乱イオン分析装置では,図示しない加速器により引出されたイオンビームは,途中の平行平板電極41を通過する。この平行平板電極41にはチョッピング電源43からの高圧パルスが両電極間に印加されている。これによって上記平行平板電極41には周期的に変化する強電界が発生する。
平行平板電極を通過するイオンビームは,上記電界によって軌道を曲げられるが,パルス電位が0Vの時はそのまま直進する。実際には0±ΔV程度の電圧印加時のビームが通過することになるためパルスは数ns程度の幅を持つ。
ここに図1は,本発明の一実施形態にかかる散乱イオン分析装置の概念図,図2,図3は,上記散乱イオン分析装置を構成するパルス圧縮電極におけるイオンビームの移動位置と,その時々のパルス圧縮電極への印加電圧の変化を示す概念図である。
図1に示された散乱イオン分析装置では,図示しない加速器により引出されたイオンビームは,途中の平行平板電極41を通過する。この平行平板電極41にはチョッピング電源43からの高圧パルスが両電極間に印加されている。これによって上記平行平板電極41には周期的に変化する強電界が発生する。
平行平板電極を通過するイオンビームは,上記電界によって軌道を曲げられるが,パルス電位が0Vの時はそのまま直進する。実際には0±ΔV程度の電圧印加時のビームが通過することになるためパルスは数ns程度の幅を持つ。
上記平行平板電極41を通過したイオンビームは,その下流にあるスリットを備えたアパーチャ45で選別されることになり,パルス電位が0V近辺の短い時間帯に通過したパルスイオンビームのみが,下流に導かれることになる。
上記チョッピング電源43のパルス出力は別に設けた図外の同期回路の信号により制御される。
上記チョッピング電源43のパルス出力は別に設けた図外の同期回路の信号により制御される。
ここでイオンをHe+,エネルギーE0を100keVと仮定すると,ビームの速度は2,188,470m/sであり,1nsあたりのビーム長さは2.19mmである。
なお,この実施形態では,時間分解能が装置の性能に直接関与する。このように,性能の把握を容易とするために,パルス化したビーム長さについては,時間で表している。
このようにパルス化されたイオンビームがそのまま試料47に衝突し散乱され,イオン検出器49で検出される。この時の散乱イオンの飛行時間を測定した場合のエネルギー分解能について考察する。
イオンの速度は
ν=√((2eE)/m) …(1)
と表せる。ここに,e:電荷,E:散乱イオンエネルギー,m:イオン質量である。
なお,この実施形態では,時間分解能が装置の性能に直接関与する。このように,性能の把握を容易とするために,パルス化したビーム長さについては,時間で表している。
このようにパルス化されたイオンビームがそのまま試料47に衝突し散乱され,イオン検出器49で検出される。この時の散乱イオンの飛行時間を測定した場合のエネルギー分解能について考察する。
イオンの速度は
ν=√((2eE)/m) …(1)
と表せる。ここに,e:電荷,E:散乱イオンエネルギー,m:イオン質量である。
He+のe,mの値を入れると,上式は
ν=6920.6√E[m/s] …(2)
である。ここで試料から検出器までの距離をLとすると,その間の飛行時間は
t=L/ν=L/(6920.6√E)[s] …(3)
となる。エネルギーがΔE大きな粒子の飛行時間は同様に
t´=L/ν´=L/(6920.6√(E+ΔE))[s] …(4)
である。従って,飛行時間の差Δtは
Δt=L/6920.6((1/√E)−(1/(√(E+ΔE))…(5)
である。ここで(5)式を近似すると
Δt=(L/6920.6)・(ΔE/(2E√E) …(6)
となる。時間差は距離およびエネルギー差に比例し,イオンエネルギーの1.5乗に反比例する。
ν=6920.6√E[m/s] …(2)
である。ここで試料から検出器までの距離をLとすると,その間の飛行時間は
t=L/ν=L/(6920.6√E)[s] …(3)
となる。エネルギーがΔE大きな粒子の飛行時間は同様に
t´=L/ν´=L/(6920.6√(E+ΔE))[s] …(4)
である。従って,飛行時間の差Δtは
Δt=L/6920.6((1/√E)−(1/(√(E+ΔE))…(5)
である。ここで(5)式を近似すると
Δt=(L/6920.6)・(ΔE/(2E√E) …(6)
となる。時間差は距離およびエネルギー差に比例し,イオンエネルギーの1.5乗に反比例する。
この近似式は,30keV以上で(5)式に対して3%以下,75keV以上で1%以下の誤差である。
ここでビームの長さΔtと考える。実際には1〜5ns程度である。ビームはこの時間の間試料に照射され続け,また,散乱はどのタイミングでも起こりえるが,散乱の発生した時間は測定できないため,時間分解能は,測定系の分解能などを考慮すると上記Δt以上となる。(6)式を変形すると,時間幅Δtによる測定エネルギーの誤差ΔEは(7)式で表すことができる。
ΔE=2(6920.6/L)E√EΔt[s] …(7)
この式からエネルギー分解能は距離に反比例し時間分解能に比例することが判る。
ここでビームの長さΔtと考える。実際には1〜5ns程度である。ビームはこの時間の間試料に照射され続け,また,散乱はどのタイミングでも起こりえるが,散乱の発生した時間は測定できないため,時間分解能は,測定系の分解能などを考慮すると上記Δt以上となる。(6)式を変形すると,時間幅Δtによる測定エネルギーの誤差ΔEは(7)式で表すことができる。
ΔE=2(6920.6/L)E√EΔt[s] …(7)
この式からエネルギー分解能は距離に反比例し時間分解能に比例することが判る。
この式から散乱イオンエネルギーに対するエネルギー分解能を計算しする。パラメータとしてビーム幅Δtを1〜5ns,L=0.25m及び0.5mの2段階とした結果が図4に示されている。
これによると検出器までの距離Lが0.5m,80keVの場合,ビーム長さが1ns異なるとエネルギー分解能は1keV程度変わる。
上記のようにエネルギー分解能が,飛行中のイオンビーム長さによることから,本発明では,以下に述べるように,上記飛行中のイオンビームに電界を作用させて,イオンビームを圧縮しその長さを短くして,エネルギー分解能を向上させる。
これによると検出器までの距離Lが0.5m,80keVの場合,ビーム長さが1ns異なるとエネルギー分解能は1keV程度変わる。
上記のようにエネルギー分解能が,飛行中のイオンビーム長さによることから,本発明では,以下に述べるように,上記飛行中のイオンビームに電界を作用させて,イオンビームを圧縮しその長さを短くして,エネルギー分解能を向上させる。
すなわち,図1に示すように,アパーチャ45の下流にパルス圧縮電極51およびこれと所定の間隔をあけて接地電極53を設ける。
また,それに対して図2及び図3に示すように,上記エネルギーE0で入射する長さ数nsのイオンビーム先端が,上記パルス圧縮電極51の開口部ビーム通路55の入り口51aに差し掛かってから,イオンビーム全体が開口部ビーム通路55に入射するまで,および,イオンビームがパルス圧縮電極51内に完全に入ってしまうまでは,上記パルス圧縮電極51に印加される電圧を,ずっと0Vの状態(aの状態)に維持する。
イオンビームが上記パルス圧縮電極51内に完全に入ってしまった後に,上記電圧を低下させ(bの状態),ビームの先端が上記パルス圧縮電極51から顔を出すまでの間(イオンビーム全体が開口部ビーム通路55内にすべて収まっている間)に最低の,例えば−100Vまで低下させる(cの状態)。
その後イオンビームの先端が上記パルス圧縮電極51の出口51bから出る直前から,電圧を例えば+100Vまで上昇させ(dの状態),イオンビームのすべてが上記接地電極53内に入りきるまでは,電圧上昇状態を保つ。上昇速度は,イオンビームの長さと同じ程度とする。イオンビームは,上記電圧がマイナスの場合減速し,+の場合加速される。イオンビームが上記接地電極53内に完全に入ってしまった後は,電圧を一定又は低下させる。
最後に,イオンビームが上記接地電極53から出て行くとき(eの状態)に電圧は低下していき,やがて最初の状態に戻る。
なお,上記実施形態では,第3の電位は,第1の電位より高電位としているが,第1の電位より低くしてもよく,負電位とすることも可能である。また,第1の電位は,0電位以外であっても良い。
また,それに対して図2及び図3に示すように,上記エネルギーE0で入射する長さ数nsのイオンビーム先端が,上記パルス圧縮電極51の開口部ビーム通路55の入り口51aに差し掛かってから,イオンビーム全体が開口部ビーム通路55に入射するまで,および,イオンビームがパルス圧縮電極51内に完全に入ってしまうまでは,上記パルス圧縮電極51に印加される電圧を,ずっと0Vの状態(aの状態)に維持する。
イオンビームが上記パルス圧縮電極51内に完全に入ってしまった後に,上記電圧を低下させ(bの状態),ビームの先端が上記パルス圧縮電極51から顔を出すまでの間(イオンビーム全体が開口部ビーム通路55内にすべて収まっている間)に最低の,例えば−100Vまで低下させる(cの状態)。
その後イオンビームの先端が上記パルス圧縮電極51の出口51bから出る直前から,電圧を例えば+100Vまで上昇させ(dの状態),イオンビームのすべてが上記接地電極53内に入りきるまでは,電圧上昇状態を保つ。上昇速度は,イオンビームの長さと同じ程度とする。イオンビームは,上記電圧がマイナスの場合減速し,+の場合加速される。イオンビームが上記接地電極53内に完全に入ってしまった後は,電圧を一定又は低下させる。
最後に,イオンビームが上記接地電極53から出て行くとき(eの状態)に電圧は低下していき,やがて最初の状態に戻る。
なお,上記実施形態では,第3の電位は,第1の電位より高電位としているが,第1の電位より低くしてもよく,負電位とすることも可能である。また,第1の電位は,0電位以外であっても良い。
従って,ビームの先端部ではビームエネルギーは100eV減り,後端部では100eV増えることになる。これは,イオンビームの速度が先端部で遅くなり後端部で早くなる,すなわちイオンビーム長が前後に圧縮されることであり,1mイオンビームが進行した場合に,イオンビーム長さは0.9ns短くなる。すなわち,図1におけるLlの距離進行したときにはLl*0.9nsのパルス圧縮が図られることになる。
この時イオンビームは±100V=200Vのエネルギーの広がりを持つことになり,散乱イオンも200eVエネルギー幅が大きくなることになるが,ビーム圧縮の効果でたとえば1ns圧縮されると1keVエネルギー幅が小さくなるため測定の分解能は大幅に向上する。
なお,上記の説明では,パルス圧縮電極と接地電極を1組だけ設けた場合について説明したが,これらの電極の組を複数組設けて,イオンビームを多段に圧縮或いは伸張するようなことも可能である。
以上の説明では,イオンビームの圧縮によるエネルギー分解能向上にだけ着目したが,元の切り出すパルス幅を長くしておき,圧縮により数nsにすることでビーム電流密度を上げ,散乱イオンの収量を増加させるという利用法も考えられることを付記しておく。
なお,上記の説明では,パルス圧縮電極と接地電極を1組だけ設けた場合について説明したが,これらの電極の組を複数組設けて,イオンビームを多段に圧縮或いは伸張するようなことも可能である。
以上の説明では,イオンビームの圧縮によるエネルギー分解能向上にだけ着目したが,元の切り出すパルス幅を長くしておき,圧縮により数nsにすることでビーム電流密度を上げ,散乱イオンの収量を増加させるという利用法も考えられることを付記しておく。
41…平行平板電極
43…チョッピング電極
45…アパーチャ
47…試料(分析対象物)
49…イオン検出器
51…パルス圧縮電極
51a…出口
53…接地電極
55…開口部ビーム通路
43…チョッピング電極
45…アパーチャ
47…試料(分析対象物)
49…イオン検出器
51…パルス圧縮電極
51a…出口
53…接地電極
55…開口部ビーム通路
Claims (5)
- 分析対象物に向けて飛行するイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に与える電位を,そこを通過するイオンビームの位置に応じて変化させるようにしたことを特徴とするイオンビームの飛行制御装置。
- 上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極に入射されかつ上記イオンビームの全体が上記パルス圧縮電極の開口部ビーム通路にすべて入射されるまでは第1の電位に維持し,上記イオンビーム先端が上記開口部ビーム通路から出射するまでに上記第1の電位よりも低い第2の電位に変化させるようにし、上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極の開口部ビーム通路出口よりビーム全体が出射するまでに第2の低電位から上記第2の電位より高い第3の電位にまで上昇させ,上記イオンビーム全体が下流にある接地電極を通過するまで上記第3の電位に維持するようにした請求項1記載のイオンビームの飛行制御装置。
- 分析対象物に向けて照射されたイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過し開口ビーム通路を形成するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極に入射されかつ上記イオンビームの全体が上記パルス圧縮電極の開口部ビーム通路にすべて入射されるまでは第1の電位に維持し,上記イオンビーム先端が上記開口部ビーム通路から出射するまでに上記第1の電位よりも低い第2の電位に変化させるようにし、上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極の開口部ビーム通路出口よりビーム全体が出射するまでに第2の低電位から上記第2の電位より高い第3の電位にまで上昇させ,上記イオンビーム全体が下流にある接地電極を通過するまで上記第3の電位に維持するようにしたことを特徴とするイオンビームの飛行制御方法。
- 加速器からの入射イオンビームのビーム軸と平行に設置され,パルス電圧を印加される2枚の平行平板電極と,
上記平行平板電極の下流に設置されたアパーチヤとを備え,
上記アパーチヤによってパルス化された後分析対象物に入射し,分析対象物表面の元素により散乱される該イオンの飛行時間を測定することで,分析対象物の深さ方向の元素組成分析を行う散乱イオン分析装置において,
前記分析対象物に向けて飛行するイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に与える電位を,そこを通過するイオンビームの位置に応じて変化させるようにしたことを特徴とする散乱イオン分析装置。 - 加速器からの入射イオンビームのビーム軸と平行に設置され,パルス電圧を印加される2枚の平行平板電極と,
上記平行平板電極の下流に設置されたアパーチヤとを備え,
上記アパーチヤによってパルス化された後分析対象物に入射し,分析対象物表面の元素により散乱される該イオンの飛行時間を測定することで,分析対象物の深さ方向の元素組成分析を行う散乱イオン分析装置において,
分析対象物に向けて照射されたイオンビームの飛行経路に,上記イオンビームが通過し開口ビーム通路を形成するパルス圧縮電極と,該パルス圧縮電極との間に所定の間隔をあけて上記イオンビームが通過する接地電極を設け,上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極に入射されかつ上記イオンビームの全体が上記パルス圧縮電極の開口部ビーム通路にすべて入射されるまでは第1の電位に維持し,上記イオンビーム先端が上記開口部ビーム通路から出射するまでに上記第1の電位よりも低い第2の電位に変化させるようにし、上記パルス圧縮電極に印加される電圧を,上記イオンビームが該パルス圧縮電極の開口部ビーム通路出口よりビーム全体が出射するまでに第2の低電位から上記第2の電位より高い第3の電位にまで上昇させ,上記イオンビーム全体が下流にある接地電極を通過するまで上記第3の電位に維持するようにしたことを特徴とする散乱イオン分析装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2006125277A JP2007299570A (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | イオンビームの飛行制御装置,イオンビームの飛行制御方法及び散乱イオン分析装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2006125277A JP2007299570A (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | イオンビームの飛行制御装置,イオンビームの飛行制御方法及び散乱イオン分析装置 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2007299570A true JP2007299570A (ja) | 2007-11-15 |
Family
ID=38768901
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2006125277A Pending JP2007299570A (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | イオンビームの飛行制御装置,イオンビームの飛行制御方法及び散乱イオン分析装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2007299570A (ja) |
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2012099221A (ja) * | 2010-10-29 | 2012-05-24 | Ulvac Japan Ltd | Gcib(ガスクラスターイオンビーム)銃、表面分析装置および表面分析方法 |
| CN119880972A (zh) * | 2025-02-25 | 2025-04-25 | 上海交通大学 | 一种太赫兹驱动的飞秒级电子脉冲斩波与压缩装置 |
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-
2006
- 2006-04-28 JP JP2006125277A patent/JP2007299570A/ja active Pending
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