JP2000342255A - 植物細胞への遺伝子導入の効率を向上させる方法 - Google Patents

植物細胞への遺伝子導入の効率を向上させる方法

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JP2000342255A
JP2000342255A JP11158024A JP15802499A JP2000342255A JP 2000342255 A JP2000342255 A JP 2000342255A JP 11158024 A JP11158024 A JP 11158024A JP 15802499 A JP15802499 A JP 15802499A JP 2000342255 A JP2000342255 A JP 2000342255A
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agrobacterium
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heat treatment
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Yoshihiro Hiei
祐弘 樋江井
Keisuke Kasaoka
啓介 笠岡
Yuji Ishida
祐二 石田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のアグロバクテリウム法による遺伝子導
入方法よりも高い効率で組織を付傷することなく簡便に
遺伝子導入を行うことができる、植物細胞への遺伝子導
入の効率を向上させる方法を提供すること。 【解決手段】 植物細胞又は植物組織を熱処理すること
を伴う、アグロバクテリウム属細菌を介して行われる植
物細胞への遺伝子導入の効率を向上させる方法を提供し
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物細胞への遺伝
子導入の効率を向上させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アグロバクテリウムによる形質転換法
は、一般的に、効率が高い、導入される遺伝子のコピー
数が少ない、T-DNAという特定の領域を断片化させるこ
となく導入できる、短期間の培養により形質転換体を得
ることができるため培養変異が少ないなど、多くの優れ
た特徴を持っている。このため、さまざまな植物種で最
も有用な形質転換の手段として広く用いられている。
【0003】このように、アグロバクテリウム法は非常
に優れた植物の形質転換方法であるが、形質転換の成否
ならびに効率は、植物種、遺伝子型ならびに用いる植物
組織に依存して大きく異なるのが実状である(Potrykus
et al. 1998(参考文献(35)))。すなわち、形質転換に
成功していない植物種があるほか、ごく一部の品種のみ
形質転換が可能な植物種も多い。また、利用可能な組織
が限定されており大量の材料を取り扱うことができない
植物種もある。遺伝子組換えにより実用的な品種を作出
するには、多数の形質転換植物を作出した上で、目的と
する形質を持った系統を選抜する必要がある。しかしな
がら、この目的に即し多数の形質転換体を容易に得るこ
とができる作物の種類は、現状では一部に限定されてい
る。したがって、このような問題点を解決することがで
きる改良手法の開発が強く望まれている。
【0004】アグロバクテリウムを介する形質転換方法
自体は、植物種により供試材料や培養に用いる培地の組
成などを異にするものの、材料となる組織にアグロバク
テリウムの懸濁液を接触させ、共存培養の後に形質転換
細胞の選抜を行い、形質転換植物を作出するという操作
ではほぼ共通している。材料となる植物組織に対して
は、通常、必要に応じ滅菌処理を行うがそれ以外に特別
な処理を施すことなくアグロバクテリウムの感染が行わ
れる(Rogers et al. 1988(参考文献(36)), Visser 199
1(参考文献(40)), McCormick 1991(参考文献(31)), Lin
dsey et al. 1991(参考文献(30)))。従って、形質転換
系の改良は、アグロバクテリウムの菌系、ベクター構
成、培地組成、選抜マーカー遺伝子やプロモーターの種
類、供試組織の種類などを中心に研究が行われてきた。
【0005】これに対し、アグロバクテリウムを接種す
る前の植物組織を、遺伝子導入が生じやすい生理的状態
に変換するという考え方に基づく研究は、ほとんど行わ
れていない。何らかの簡便な処理により、そのような生
理的状態に変換することができればたいへん利用価値が
高く、遺伝子導入効率の向上に加え、従来困難であった
植物種や遺伝子型の形質転換を可能にする顕著な効果も
期待される。これまでの植物組織への前処理に関する研
究例としては、パーティクルガン(Bidney et al., 1992
(参考文献(6)))および超音波(Trick et al., 1997(参考
文献(39)))処理が上げられる。どちらも物理的に組織を
付傷することでバクテリアの植物組織内への侵入を促
し、感染対象となる植物細胞を増加させることを目的と
している。しかしながら、これは従来より広く行われて
いるリーフディスク法(Horsch et al., 1985(参考文献
(19)))を発展させたものに過ぎず、新規な考え方に基づ
く処理法ではない。なお、効果の程度や汎用性は明らか
でなく、一般的な手法として用いられていないのが現状
である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、従来のアグロバクテリウム法による遺伝子導入方法
よりも高い効率で組織を付傷することなく簡便に遺伝子
導入を行うことができる、植物細胞への遺伝子導入の効
率を向上させる方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、鋭意研
究の結果、アグロバクテリウム属細菌を用いた遺伝子導
入方法において、遺伝子導入に供する植物細胞又は植物
組織を熱処理することにより、遺伝子導入効率を有意に
向上させることができることを見出し本発明を完成し
た。
【0008】すなわち、本発明は、植物細胞又は植物組
織を熱処理することを伴う、アグロバクテリウム属細菌
を介して行われる植物細胞への遺伝子導入の効率を向上
させる方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の方法では、アグロバクテ
リウム属細菌を介した遺伝子導入方法において、遺伝子
を導入する植物細胞又は植物組織を熱処理することを伴
う。植物細胞又は植物組織は、熱処理し、常温まで冷却
した後、アグロバクテリウム属細菌と接触させる方法で
あってもよいし、熱処理しながらアグロバクテリウム属
細菌と接触させる方法であってもよい。また、熱処理
し、常温まで冷却した後、熱処理しながらアグロバクテ
リウム属細菌と接触させる方法であってもよい。これら
の方法のうち、好ましい方法としては、熱処理し、常温
まで冷却した後、アグロバクテリウム属細菌と接触させ
る方法を挙げることができる。
【0010】熱処理条件は、用いる植物の種類や熱処理
する細胞又は組織の量等に応じて適宜選択されるが、通
常、33℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃、さら
に好ましくは37℃〜52℃程度の温度範囲で行われ
る。また、熱処理の時間は、熱処理温度、用いる植物の
種類及び熱処理する細胞又は組織の種類等に応じて適宜
選択されるが、通常5秒間〜24時間程度である。な
お、熱処理時間は、熱処理温度が高い場合には短くても
遺伝子導入効率を有意に向上させることができる。例え
ば、熱処理温度が60℃の場合には5秒間程度の熱処理
時間でも遺伝子導入効率を有意に向上させることができ
る場合がある。一方、熱処理温度が34℃程度の低温の
場合には、数十時間の熱処理により遺伝子導入効率を有
意に向上させることができる。特に好ましい熱処理条件
は、37℃〜52℃で1分間〜24時間程度の場合が多
いが、その植物細胞又は植物組織にとっての適切な熱処
理条件は、ルーチンな実験により容易に設定することが
できる。なお、植物細胞又は植物組織を55℃以上の温
度で長時間にわたって熱処理すると、植物細胞がダメー
ジを受け、形質転換効率が低下する場合があるので、熱
処理温度が55℃以上の場合には、熱処理時間を短く
し、例えば3分間以下、好ましくは1分間以下程度に設
定して植物細胞がダメージを受けないようにすることが
好ましい。
【0011】本発明の方法は、アグロバクテリウム属細
菌と接触させる植物細胞又は植物組織として熱処理した
ものを用いる、又は熱処理を行いながらアグロバクテリ
ウム属細菌と接触させることを特徴とするものであり、
アグロバクテリウム属細菌を用いた遺伝子導入あるいは
形質転換方法自体としては、周知の方法をそのまま適用
することができる。
【0012】アグロバクテリウム属細菌を用いた植物へ
の遺伝子導入あるいは形質転換方法自体は、この分野に
おいて周知であり、広く用いられている。
【0013】土壌細菌アグロバクテリウム(Agrobacter
ium tumefaciens)が多くの双子葉植物に根頭癌腫病(C
rown gall disease)を引き起こすことは古くから知ら
れており、1970年代には、Tiプラスミドが病原性に関与
すること、さらにTiプラスミドの一部であるT-DNAが植
物ゲノムに組み込まれることが発見された。その後この
T-DNAには癌腫の誘発に必要なホルモン(サイトカイニ
ンとオーキシン)の合成に関与する遺伝子が存在し、細
菌遺伝子でありながら植物中で発現することが明らかに
された。T-DNAの切り出しと植物への伝達にはTiプラス
ミド上のヴィルレンス領域(vir領域)に存在する遺伝
子群が必要であり、またT-DNAが切り出されるためにはT
-DNAの両端に存在するボーダー配列が必要である。他の
アグロバクテリウム属細菌であるAgrobacterium rhizog
enesもRiプラスミドによる同様なシステムを有している
(図3及び図4)。
【0014】アグロバクテリウムの感染によってT-DNA
が植物ゲノムに組み込まれるので、T-DNA上に所望の遺
伝子を挿入するとこの遺伝子も植物ゲノムに組み込まれ
ることが期待された。しかしながら、Tiプラスミドは19
0kb以上と巨大であるため、標準的な遺伝子工学手法で
はプラスミド上のT-DNA上に遺伝子を挿入することは困
難であった。そのため、T-DNA上に外来遺伝子を挿入す
るための方法が開発された。
【0015】まず、腫瘍性のTiプラスミドのT-DNAから
ホルモン合成遺伝子が除去されたディスアーム型の菌系
(disarmed strains)であるLBA4404(Hoekema et al.,
1983(参考文献(14))、C58C1(pGV3850) (Zambryski et
al., 1983(参考文献(43)))、GV3Ti11SE(Fraley et a
l., 1985(参考文献(10))などが作製された(図3)。こ
れらを用いることにより、所望の遺伝子をアグロバクテ
リウムのTiプラスミドのT-DNA中に、あるいは所望の遺
伝子を有するT-DNAをアグロバクテリウムに導入する2種
類の方法が開発された。このうちの一つは、遺伝子操作
が容易で所望の遺伝子の挿入が可能であり、大腸菌で複
製ができる中間ベクターを、アグロバクテリウムのディ
スアーム型TiプラスミドのT-DNA領域中に、三系交雑法
(triparental mating)(Ditta et al., 1980(参考文
献(9)))を介して相同組換えにより導入する方法であ
り、中間ベクター法と呼ばれる(Fraley et al., 1985
(参考文献(10)); Fraley et al., 1983(参考文献(1
1)); Zambryski et al., 1983(参考文献(43))、特開
昭59-140885号(EP116718))。もう一つは、バイナリー
ベクター(binary vector)法とよばれるもので(図
3)、T-DNAの植物への組み込みにvir領域が必要である
が、機能するために同じプラスミド上に存在する必要は
ないという結果(Hoekema et al., 1983(参考文献(14))
に基づいている。このvir領域にはvirA、virB、virC、v
irD、virE及びvirGが存在し、(植物バイオテクノロジ
ー事典(エンタプライズ株式会社発行(1989)))、vi
r領域とはこのvirA、virB、virC、virD、virE及びvirG
の全てを含むものをいう。したがって、バイナリーベク
ターは、T-DNAをアグロバクテリウムと大腸菌の両方で
複製可能な小さなプラスミドに組み込んだものであり、
これをディスアーム型Tiプラスミドを有するアグロバク
テリウムに導入して用いる。アグロバクテリウムへのバ
イナリーベクターの導入には、エレクトロポレーション
法や三系交雑法などの方法により行うことができる。バ
イナリーベクターには、pBIN19(Bevan, 1984(参考文献
(5)))、pBI121(Jefferson, 1987(参考文献(21)))、pGA4
82(An et al., 1988(参考文献(2)))、特開昭60-70080
号(EP120516))などがあり、これらをもとに数多くの
新たなバイナリーベクターが構築され、形質転換に用い
られている。また、Ri プラスミドのシステムにおいて
も、同様なベクターが構築され形質転換に用いられてい
る。
【0016】アグロバクテリウムA281(Watson et al.,
1975(参考文献(41)))は、強病原性(super-virulen
t)の菌系であり、その宿主範囲は広く、形質転換効率
も他の菌系より高い(Hood et al.,1987(参考文献(15));
Komari, 1989(参考文献(23)))。この特性は、A281が有
するTiプラスミドのpTiBo542によるものである(Hood et
al., 1984(参考文献(18)); Jin et al., 1987(参考文
献(22)); Komari et al., 1986(参考文献(26)))。
【0017】pTiBo542を用いて、これまでに2つの新し
いシステムが開発されている。一つはpTiBo542のディス
アーム型のTiプラスミドを有する菌系EHA101(Hood et a
l.,1986(参考文献(17)))およびEHA105(Hood et al., 19
93(参考文献(16)))を用いたものであり、これらを上述
のバイナリーベクターシステムに適用することにより、
形質転換能力の高いシステムとして種々の植物の形質転
換に利用されている。もう一つは、スーパーバイナリー
ベクター('super-binary' vector)(Hiei etal., 1994
(参考文献(13)); Ishida et al., 1996(参考文献(20));
Komari et al., 1999(参考文献(28))、WO94/00977号、
WO95/06722号)システムである(図4)。このシステム
は、vir領域(virA、virB、virC、virD、virE及びvirG
(以下、これらをぞれぞれ「vir断片領域」ということ
もある。))を持つディスアーム型のTiプラスミドおよ
びT-DNAを有するプラスミドからなることから、バイナ
リーベクターシステムの一種である。しかしながら、T-
DNAを有する側のプラスミド、即ちバイナリーベクター
にvir断片領域のうち、少なくとも一つのvir断片領域を
実質的に取除いたvir領域の断片(このうち好ましくは
少なくともvirB又はvirGを含む断片、さらに好ましくは
virB及びvirGを含む断片)を組み込んだ(Komari, 1990a
(参考文献(24)))スーパーバイナリーベクターを用いる
点で異なる。なお、スーパーバイナリーベクターを有す
るアグロバクテリウムに、所望の遺伝子を組み込んだT-
DNA領域を導入するには、三系交雑法を介した相同組換
えが容易な手法として利用できる(Komari et al., 1996
(参考文献(27)))。このスーパーバイナリーベクターシ
ステムは、上述の種々のベクターシステムと比べて、多
くの植物種で非常に高い形質転換効率をもたらすことが
明らかとなっている(Hieiet al., 1994(参考文献(13));
Ishida et al., 1996(参考文献(20)); Komari, 1990b
(参考文献(25)); Li et al.(参考文献(29)), 1996; Sai
to et al., 1992(参考文献(37)))。
【0018】本発明の方法においては、宿主となるアグ
ロバクテリウム属細菌としては、特に限定されないが、
Agrobacterium tumefaciens (例えば上述のAgrobacter
iumtumefaciens LBA4404(Hoekema et al., 1983(参考文
献(14))およびEHA101(Hoodet al., 1986(参考文献(1
7)))を好ましく用いることができる。
【0019】本発明の方法によれば、アグロバクテリウ
ム属細菌における病原性(vir)領域の遺伝子群の発現
に基づく遺伝子導入系であれば、特に限定されることな
く有意な効果を得ることができる。したがって、上述の
中間ベクター、バイナリーベクター、強病原性のバイナ
リーベクター、スーパーバイナリーベクターなどいずれ
のベクターシステムに対しても用いることができ、本発
明による効果を得ることができる。これらのベクター類
を改変した異なるベクターシステムを用いた場合におい
ても同様である(例えば、アグロバクテリウム属細菌の
vir領域の一部または全部を切り出し付加的にプラスミ
ド中に組み込む、vir領域の一部または全部を切り出し
新たなプラスミドの一部としてアグロバクテリウムに導
入するなど)。また、当然ではあるが本発明の方法によ
れば、野生型のアグロバクテリウム属細菌においても、
植物へ野生型のT-DNA領域の導入効率を高め、事実上感
染効率を向上することができる。
【0020】植物に導入しようとする所望の遺伝子は、
上記プラスミドのT-DNA領域中の制限酵素部位に常法に
より組み込むことができ、当該プラスミドに同時に若し
くは別途組込んだカナマイシン、パロモマイシン等の薬
剤に対する耐性を有する遺伝子等の適当な選択マーカー
に基づいて選択することができる。大型で多数の制限部
位を持つものは、通常のサブクローニングの手法では所
望のDNAをT-DNA領域内に導入することが必ずしも容易で
ないことがある。このような場合には、三系交雑法によ
り、アグロバクテリウム属細菌の細胞内での相同組換え
を利用することで目的のDNAを導入することができる。
【0021】また、プラスミドをAgrobacterium tumefa
ciens等のアグロバクテリウム属細菌に導入する操作は
従来法により行うことができ、例としては、上記した三
系交雑法やエレクトロポレーション法、エレクトロイン
ジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法な
どが含まれる。
【0022】植物に導入しようとする遺伝子は、従来の
技術と同様に基本的にはT-DNAの左右境界配列の間に配
置されるものである。しかし、プラスミドが環状である
ため、境界配列の数は1つでもよく、複数の遺伝子を異
なる部位に配置しようとする場合には、境界配列が3個
以上あってもよい。また、アグロバクテリウム属細菌中
で、TiまたはRiプラスミド上に配置されてもよく、また
は他のプラスミド上に配置されてもよい。さらには、複
数の種類のプラスミド上に配置されてもよい。
【0023】アグロバクテリウム属細菌を介して遺伝子
導入を行う方法は、植物細胞又は植物組織をアグロバク
テリウム属細菌と単に接触させることにより行うことが
できる。例えば、106 〜1011細胞/ml程度の細胞
濃度のアグロバクテリウム属細菌懸濁液を調製し、この
懸濁液中に植物細胞又は植物組織を3〜10分間程度浸
漬後、固体培地上で数日間共存培養することにより行う
ことができる。
【0024】遺伝子導入に供される細胞又は組織は、何
ら限定されるものではなく、葉、根、茎、実、その他い
ずれの部位であってもよいし、カルスのような脱分化し
たものでも脱分化していない胚等であってもよい。ま
た、植物の種類も何ら限定されないが、被子植物が好ま
しく、被子植物ならば双子葉植物でも単子葉植物でもよ
い。
【0025】下記実施例において具体的に示されるよう
に、本発明の方法によれば、従来のアグロバクテリウム
法に比較して、遺伝子導入の効率が有意に向上する。ま
た、従来からアグロバクテリウム法により遺伝子導入が
可能であった植物の遺伝子導入効率が向上するだけでは
なく、従来のアグロバクテリウム法によっては遺伝子導
入することができなかった植物に対しても本発明の方法
により遺伝子導入が初めて可能になった。従って、本発
明における「遺伝子導入の効率の向上」には、従来の方
法では遺伝子導入が不可能であったものを可能にするこ
とも包含される(すなわち、従来0%であった遺伝子導
入効率を向上させたと考える)。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づきより具体的に
説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定される
ものではない。
【0027】実施例1 (1) 供試組織および供試菌系 ジャポニカイネの朝の光およびインディカイネのIR72を
供試品種とし、未熟胚および未熟胚由来のカルスを材料
として用いた。供試未熟胚は、開花後1〜2週間の未熟種
子から採取し、Hiei et al., 1994(参考文献(13))の方
法により調製した。すなわち、開花後、7〜12日目の
未熟種子を頴を除去した後、70% エタノールに30秒、
1%次亜塩素酸ナトリウムに10分間浸漬することにより
消毒した後、未熟胚を取り出し供試材料とした。また、
未熟胚由来カルスは、未熟胚を4g/l Gelriteを含む2N6
培地(Hiei et al. 1994(参考文献(13)))上で2週間培
養することにより得た。
【0028】アグロバクテリウムの菌系及びプラスミド
ベクターとして、LBA4404(pIG121Hm)(Hiei et al., 199
4(参考文献(13)))、LBA4404(pNB131)(図2参照)、LBA
4404(pTOK233) (Hiei et al., 1994(参考文献(13)))を
用いた。
【0029】pNB131の構築は、以下のように行った。pS
B31(Ishida et al., 1996(参考文献(20))を大腸菌LE392
株に導入した後、Triparental mating法(Ditta et al.,
1980 (参考文献(9)))により、pNB1(Komari et al., 19
96(参考文献(27)))を有するアグロバクテリウムLBA4404
株に導入した。アグロバクテリウム内でpNB1とpSB31の
間の相同組換えによりpNB131を得た。
【0030】pIG121HmのT-DNA領域には、ノパリン合成
酵素(nos)遺伝子のプロモーターにより制御されるカナ
マイシン耐性(nptII)遺伝子、カリフラワーモザイクウ
イルス(CaMV)の35Sプロモーターにより制御されるハ
イグロマイシン耐性(hpt)遺伝子、35Sプロモーター
により制御されヒマのカタラーゼ遺伝子のイントロンが
介在するGUS遺伝子(Ohta et al, 1990(参考文献(33)))
を有する。
【0031】pNB131のT-DNA領域には、35Sプロモー
ターにより制御されるbar遺伝子、35Sプロモーター
により制御されイントロンが介在するGUS遺伝子(上
述)を有する。
【0032】pTOK233のT-DNA領域には、nosプロモータ
ーにより制御されるnptII遺伝子、35Sプロモーター
により制御されるhpt遺伝子、35Sプロモーターによ
り制御されイントロンが介在するGUS遺伝子(上述)を
有する。pTOK233は形質転換能力が高いスーパーバイナ
リーベクター(Komari et al., 1999(参考文献(28)))で
ある。
【0033】(2) 熱処理 供試組織(5〜200 mg)を1 mlの滅菌水の入ったチュー
ブに浸漬した。チューブを各処理温度に設定したウォー
ターバスに1分 - 数十時間浸漬することにより熱処理を
行った。対照処理区は、室温(25℃)で静置することに
よった。熱処理終了後、チューブを流水で冷却した。
【0034】(3) 接種および共存培養 熱処理後、チューブ内部の滅菌水を除き、アグロバクテ
リウムの懸濁液を加え、5〜30秒間ボルテックスミキサ
ーにより攪拌した。 バクテリア懸濁液の調製はHiei et
al.(1994)((参考文献(13))によった。すなわち、A
B培地(ChiltonM-D et al., 1974(参考文献(8)))上で
3〜10日間培養したアグロバクテリウムのコロニーを
白金耳でかきとり、修正AA培地(AA主要無機塩類、
AAアミノ酸及びAAビタミン類(Toriyama K, 1985
(参考文献(38)))、MS微量塩類(Murashige T.,1962
(参考文献(32)))、1.0 g/l カザミノ酸、100 μMアセ
トシリンゴン、0.2 M ショ糖、0.2 M グルコース)に懸
濁した。また、懸濁液の菌密度は、約0.3〜1 x 109 cfu
/mlに調整した。約5分間室温で静置した後、共存培養用
の培地に置床した。未熟胚の共存培養の培地には、8 g/
l アガロースを培地固化剤とした2N6-AS(Hiei et al.
1994(参考文献(13)))を用いた。カルスの共存培養の培
地には、4 g/lGelriteを含む2N6-AS(Hiei et al. 1994
(参考文献(13)))を用いた。25℃、暗黒下で3〜7日間共
存培養した後、未熟胚またはカルスの一部を、Hieiら
(1994)(参考文献(13))の方法によりX-Gluc処理によ
るGUS遺伝子の発現調査に供した。すなわち、共存培養
処理直後、組織を0.1% Triton X-100 を含む0.1 M リン
酸緩衝液(pH6.8) に浸漬し、37℃で1時間静置した。
リン酸緩衝液でアグロバクテリウムを除去した後、1.0
mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D
−グルクロン酸(X-gluc)および20% メタノールを含むリ
ン酸緩衝液を添加した。37℃で24時間処理した後、
青色の呈色を示す組織を顕微鏡下で観察した。
【0035】(4) 日本稲における形質転換細胞の選抜 共存培養後、未熟胚については肥大生長した胚盤部位を
メスにより4〜7分割した後、カルスについては分割は行
わずに、選抜薬剤を含まない2N6培地(上述)で数日間3
0℃明条件下で培養した。次に、50〜100 mg/lハイグロ
マイシン, 200mg/l パロモマイシンのいずれかを含む2N
6培地上に移植し、30℃明条件下で約2〜3週間培養し
た。なお、10mg/lフォスフィノスリシン(PPT)を選抜薬
剤に含む培地には、 2 mg/lの2.4-Dを含みココナッツ
水を除いたCC培地(Potrykus et al.1979(参考文献(3
4)))を用いた。培地上に形成された薬剤耐性カルス
を、それぞれ同濃度の選抜薬剤を含むN6-7培地(Hiei e
t al. 1994(参考文献(13)))に移植し、7日間30℃明条
件下で2次選抜を行った。各培地には250 mg/l セフォタ
キシムと250 mg/l カルベニシリン二ナトリウムを組み
合わせもしくは250 mg/lセフォタキシムを単独で添加し
た。また培地固化剤には、4g/l Gelriteを用いた。培地
上で増殖した薬剤耐性カルスに X-Gluc処理を行い、GUS
遺伝子の発現を調査した。
【0036】(5) 結果 各種処理温度で未熟胚を10分間処理し、LBA4404(pTOK23
3)との共存培養を行い、GUS遺伝子の一過性発現を調査
した結果を表1および表2に示した。無処理区に比べ46
℃前後の熱処理をした場合に、胚盤におけるGUS発現領
域は明らかに広く、より高頻度で遺伝子導入が生じたも
のと理解された。一方、52℃以上の熱処理は植物組織に
ダメージを与えることがあり、55℃処理では未熟胚の生
長を抑制し、GUS発現も観察されなかった。10分間の短
時間処理では、43℃試験区における明瞭なGUS発現領域
の拡大は認められなかった。
【0037】イネ未熟胚とアグロバクテリウムを共存培
養した後、選抜薬剤を含む培地上で培養して得られた形
質転換カルスの選抜結果を表3および表4に示した。LB
A4404(pIG121Hm)を接種した試験では、熱処理していな
い未熟胚の分割切片からは、12.0 %の効率でハイグロマ
イシン耐性かつ一様なGUS遺伝子の発現を示す形質転換
カルスが得られた(表4)。これに対し、46℃、5分間
の熱処理を行った未熟胚の分割切片では、形質転換カル
スが29 %の効率で得られた(表3)。 また、パロモマ
イシンによる選抜では、熱処理していない未熟胚の切片
からは、2.0 %の低効率で形質転換カルスが得られたの
に対し、46℃、5分間の熱処理を行った未熟胚切片で
は、12.0 %の効率で得られた(表4)。 LBA4404(pNB13
1)を接種した試験では、熱処理していない未熟胚の切片
からは、29.0 %の効率でPPT耐性かつ一様なGUS遺伝子の
発現を示す形質転換カルスが得られた(表5)。これに
対し、46℃、5分間の熱処理を行った未熟胚の切片で
は、形質転換カルスが50.0%の効率で得られた(表
5)。いずれも未熟胚への熱処理により、顕著な形質転
換効率の向上が認められた。
【0038】イネ未熟胚由来カルスとアグロバクテリウ
ムLBA4404(pTOK233)を共存培養した後、ハイグロマイシ
ンを含む培地上で培養して得られた形質転換カルスの選
抜結果を表6に示した。熱処理していないカルスから
は、24.1 %の効率でハイグロマイシン耐性かつ一様なGU
S遺伝子の発現を示す形質転換カルスが得られた(表
6)。これに対し、46℃、3分もしくは10分間の熱処理
を行ったカルスでは、形質転換カルスが36.2〜36.9 %の
効率で得られた(表6)。以上のように、イネカルスへ
の熱処理においても、顕著な形質転換効率の向上が認め
られた。
【0039】未熟胚およびカルスを用いて、共存培養後
のGUS発現を指標に処理温度と処理時間の関係について
さらに検討を加えたところ、より高温の場合には短時間
の処理が、比較的低い温度の場合には長時間の処理が、
遺伝子導入の効率を高めた。すなわち、60℃の熱処理区
では数秒の処理により、35℃では数時間から数十時間の
処理により、遺伝子導入効率を向上させる明瞭な効果が
認められた。
【0040】Hiei et al. (1994)(参考文献(13))は、
イネのカルスを材料として比較的高い効率で形質転換が
行うことができることを報告している。また、Aldemita
RR.et al., 1996(参考文献(1))は、イネの未熟胚を用
いた形質転換例を報告している。これらの形質転換手法
をより効率よく安定して実施するために、上述した熱処
理法は非常に有効である。特に、未熟胚は栽培環境に左
右されやすく形質転換に好適な未熟胚材料を常時得るこ
とは容易ではないが、熱処理を施すことにより安定した
高い形質転換効率を維持することが可能である。Hiei e
t al. (1994)(参考文献(13)) は、形質転換能力の高
いベクターであるスーパーバイナリーベクターがイネの
形質転換効率を向上させることを示した。また、Aldemi
ta and Hodges (1996)(参考文献(1))によれば、スー
パーバイナリーベクターのLBA4404(pTOK233)を用いた試
験においてのみ、形質転換体を得ている。本研究におけ
る熱処理法は、通常のバイナリーベクターを用いた場合
においても、スーパーバイナリーベクターに匹敵する
か、それ以上の遺伝子導入効率を得ることができる。ま
た、スーパーバイナリーベクターと熱処理法を併用する
ことにより、より一層効率を向上させることが可能であ
る。さらに、熱処理法を用いることにより、これまで全
く形質転換体を得ることができなかった品種においても
形質転換体を得ることができるものと推察される。
【0041】
【表1】表1 処理温度と未熟胚胚盤におけるGUS遺伝子
の一過性発現(品種:IR72) 供試菌系:LBA4404(pTOK233), 熱処理時間:10分, 共存
培養期間:4日
【0042】
【表2】表2 処理温度と未熟胚胚盤におけるGUS遺伝子
の一過性発現(品種:朝の光) 供試菌系:LBA4404(pTOK233), 熱処理時間:10分, 共存
培養期間:3日
【0043】
【表3】表3 未熟胚への熱処理と形質転換カルスの選
抜効率(品種:朝の光) 供試菌系:LBA4404(pIG121Hm), 共存培養期間:5日,H
m:ハイグロマイシン
【0044】
【表4】表4 未熟胚への熱処理と形質転換カルスの選
抜効率(品種:朝の光) 供試菌系:LBA4404(pIG121Hm), 共存培養期間:5日,P
m:パロモマイシン
【0045】
【表5】表5 未熟胚への熱処理と形質転換カルスの選
抜効率(品種:朝の光) 供試菌系:LBA4404(pNB131), 共存培養期間:6日
【0046】
【表6】表6 カルスへの熱処理と形質転換カルスの選
抜効率(品種:朝の光) 供試菌系:LBA4404(pTOK233), 共存培養期間:3日
【0047】実施例2 大きさ約1.2 mmのトウモロコシ未熟胚(品種A188、農林
水産省生物資源研究所より入手)を無菌的に取り出し、
LS-inf液体培地を含む2 mlのチューブに入れた。同液体
培地で一回洗浄した後、新たに同液体培地2.0 mlを加え
た。46℃のウォーターバスにチューブを1 - 10分間浸漬
した。対照は、室温で同時間静置した。培地を除き、10
0 mMのアセトシリンゴンを含むLS-inf液体培地に約1 x
109 cfu/mlの濃度で、Agrobacterium tumefaciens LBA4
404(pIG121Hm)、EHA101(pIG121Hm)、LBA4404(pTOK233)
(以上、Hiei et al.,1994(参考文献(13))に記載)、LB
A4404(pSB131)(Ishida et al., 1996(参考文献(20)))ま
たはLBA4404(pNB131)(実施例1及び図2に記載)を懸
濁した液1.0 mlを加え、30秒間ボルテックスミキサーに
より攪拌した。5分間室温で静置した後、胚軸面が培地
に接するように10 μMAgNO3を含むLS-AS培地に置床し
た。25℃、暗黒下で3日間培養した後、一部の未熟胚を
採取し、X-glucによりGUS遺伝子のトランジェントな発
現を調査した。LBA4404(pSB131)及びLBA4404(pNB131)を
接種した未熟胚については、共存培養後、フォスフィノ
スリシン(PPT)及び10 μM AgNO3を含む培地で培養
し、形質転換細胞の選抜を行った。選抜培地上で増殖し
たカルスをPPTを含む再分化培地に置床し、形質転換植
物の再分化を行った。再分化した植物の葉の一部を切り
取り、実施例1と同様にしてX-glucによりGUS遺伝子の
発現を調査した。なお、上記の培地および培養法は、Is
hida et al. 1996(参考文献(20))に記載の方法に従っ
た。pSB131とpTOK233は形質転換能力の高いスーパーバ
イナリーベクターである。
【0048】46℃で1 10分間処理した未熟胚にLBA4404
(pSB131)を接種したときのGUS遺伝子のトランジェント
な発現の結果を表7に示す。無処理の対照を含め試験に
供した全ての未熟胚でGUS遺伝子の発現が認められた。
しかし、その発現部位は対照に比べ熱処理した場合に強
く見られた。特に3分間以上熱処理した場合には、未熟
胚の胚盤表面の広い部位でGUS遺伝子の発現を示すもの
が多く見られた。アグロバクテリウムの種々の菌株を接
種したときのGUS遺伝子のトランジェントな発現の結果
を表8に示す。熱処理した未熟胚ではいずれの菌株を接
種した場合でも、全ての未熟胚がGUS遺伝子の発現を示
した。これに対し、無処理の未熟胚では、いずれの菌株
でも熱処理した場合に比べ弱い発現を示した。特に強病
原性の遺伝子をもたない通常のバイナリーベクターであ
るLBA4404(pIG121Hm)およびLBA4404(pNB131)を接種した
場合には、ほとんどの未熟胚がGUS遺伝子の発現を全く
示さなかった。
【0049】スーパーバイナリーベクターであるLBA440
4(pSB131)を接種したA188未熟胚での形質転換結果を表
9に示す。熱処理していない対照の未熟胚からは、10.7
%の効率で形質転換植物が得られた。これに対し、46
℃、3分間の熱処理を行った未熟胚では、形質転換効率
は20%で、無処理の約2倍に効率が向上した。強病原性の
遺伝子をもたない通常のバイナリーベクターであるLBA4
404(pNB131)を接種したA188未熟胚での形質転換結果を
表-4に示す。熱処理していない対照の未熟胚からは、形
質転換植物は得られなかった。これに対し、46℃、5分
間の熱処理を行った未熟胚では、2個体の独立な形質転
換植物が得られた。形質転換効率は2.4%であった。
【0050】以上の結果から、スーパーバイナリーベク
ターを用いた場合、材料の未熟胚を接種前に熱処理する
ことにより、従来法に比べ遺伝子導入効率が増大し、ま
た、形質転換効率も向上することが明らかとなった。さ
らに、今までにトウモロコシでは成功例のない通常のバ
イナリーベクターにおいても熱処理することにより初め
て形質転換植物が得られた。これらのことから、従来の
アグロバクテリウム法では形質転換できなかったA188以
外のトウモロコシ品種(Ishida et al. 1996(参考文献
(20)))についても熱処理することにより形質転換植物
の得られる可能性が示唆された。
【0051】
【表7】表7 熱処理時間の遺伝子導入効率に及ぼす影
響(LBA4404(pSB131)を接種) 共存培養後の未熟胚でのGUS遺伝子のトランジェントな
発現の結果
【0052】
【表8】表8 熱処理の遺伝子導入効率に及ぼす影響 共存培養後の未熟胚でのGUS遺伝子のトランジェントな
発現の結果
【0053】
【表9】表9 熱処理の形質転換効率に及ぼす影響(LB
A4404(pSB131)を導入) カルス数、植物数はいずれもクローンを含まない。
【0054】
【表10】表10 熱処理の形質転換効率に及ぼす影響
(LBA4404(pNB131)を導入) カルス数、植物数はいずれもクローンを含まない。トラ
ンジェント発現は、共存培養後一部のカルスを採取して
調査した。
【0055】実施例3 クリーピングベントグラス(Agrostis palustris cv. P
encross、雪印種苗(株))の完熟種子を滅菌後、MS無
機塩、MSビタミン、4 mg/l dicamba、0.5 mg/l6BA、0.7
g/lプロリン、 0.5 g/l MES、 20 g/l ショ糖、 3 g/l
gelrite (pH5.8)を含む培地(TG2培地)に置床し、25
℃、暗黒下で培養した。誘導されたカルスを同組成の培
地で継代培養し、エンブリオジェニックなカルスを増殖
した。継代後、2 3週間目のカルス約0.3gをTG2L培地
を含む2 mlのチューブに入れた。同液体培地で一回洗浄
した後、新たに液体培地2 mlを加えた。46℃のウォータ
ーバスにチューブを5分間浸漬した。対照は、室温で同
時間静置した。培地を除き、100μMのアセトシリンゴ
ンを含むTG2-inf培地(TG2培地からプロリン、MES、gel
riteを除き、48.46 g/lショ糖、36.04 g/l グルコース
を添加(pH 5.2))に約1 x 109 cfu/mlの濃度で、LBA440
4(pTOK233)(Hiei et al., 1994(参考文献(13)))を懸
濁した液1.0 mlを加え、30秒間ボルテックスミキサーに
より攪拌した。5分間室温で静置した後、TG2L培地に10
g/lグルコース、100μMアセトシリンゴン、4 g/l タイ
プIアガロース (pH5.8)を添加した培地(TG2-AS培地)
に置床した。25℃、暗黒下で3日間培養した後、一部の
カルスを採取し、実施例1と同様にしてX-glucによりGU
S遺伝子のトランジェントな発現を調査した。
【0056】LBA4404(pTOK233)を接種したカルスでのGU
S遺伝子のトランジェントな発現を表11に示す。熱処
理していない対照のカルスでは、全く発現を示さなかっ
たのに対し、熱処理した場合、25%のカルスでGUS遺伝子
のトランジェントな発現が認められた。
【0057】今までに報告されているシバの形質転換は
パーティクルガン(Zhong et al. 1993(参考文献(44)),
Hartman et al. 1994(参考文献(12)), Xiao and Ha 19
97(参考文献(42)))やエレクトロポーレーション(Asan
o and Ugaki 1994(参考文献(3)), Asano et al. 1998
(参考文献(4)))による直接導入法によるもので、アグ
ロバクテリウムによる形質転換の成功例はみられない。
本実施例でもみられたように、従来法による遺伝子導入
の効率の低さが、アグロバクテリウム法によるシバの形
質転換を困難にしている原因であれば、高頻度で遺伝子
導入のなされる本願発明の熱処理により、形質転換植物
の得られる可能性が示された。
【0058】
【表11】表11 シバカルスへの遺伝導入結果(LBA4
404(pTOK233)を接種)
【0059】実施例4 (1) 供試組織および供試菌系 タバコ品種ブライトイエロー2号の懸濁培養細胞株BY2
を供試材料として用いた。懸濁培養細胞は0.2mg/l 2,4-
Dを含むLS液体培地で25℃暗条件下で培養し、1週間毎
に継代することにより維持した。アグロバクテリウムお
よびそのベクターには、LBA4404(pTOK233)(Hiei et a
l., 1994(参考文献(13)))を用いた。
【0060】(2) 熱処理 継代後4日目の懸濁培養細胞約0.3 gを1 mlの滅菌水の
入ったチューブに浸漬した。チューブを43℃または46℃
に設定したウォーターバスに10分 〜20分浸漬すること
により熱処理を行った。対照処理区は、室温(25℃)で
静置することによった。熱処理終了後は、チューブを流
水で冷却した。
【0061】(3) 接種および共存培養 懸濁培養細胞へのアグロバクテリウムの接種および共存
培養は、Komari(1989)(参考文献(23))の方法により実
施した。25℃暗黒下で2日間共存培養した後、懸濁培養
細胞を、 Hiei et al.(1994)(参考文献(13))の方法に
より実施例1と同様にしてX-Gluc処理によるGUS遺伝子
の発現調査に供した。
【0062】(4) 結果 懸濁培養細胞を熱処理し、LBA4404(pTOK233)との共存培
養を行い、GUS遺伝子の一過性発現を調査した結果を表
12に示した。無処理区に比べ熱処理をした場合に、GU
S発現を示す細胞の頻度は明らかに高く、より高頻度で
遺伝子導入が生じたものと理解された。熱処理は、イ
ネ、トウモロコシおよびシバなどの単子葉植物だけでは
なく、双子葉植物への遺伝子導入にも効率を向上させる
効果があることが確認された。
【0063】
【表12】表12 処理温度と懸濁培養細胞BY2におけ
るGUS遺伝子の一過性発現 * +:低い,++:やや高い,+++:高い 供試菌系:LBA4404(pTOK233),共存培養期間:2日
【0064】
【発明の効果】本発明により、従来のアグロバクテリウ
ム法による遺伝子導入方法よりも高い効率で、組織を付
傷することなく簡便に遺伝子導入を行うことができる、
植物細胞への遺伝子導入の効率を向上させる方法が提供
された。本発明の方法は、単子葉植物に対しても双子葉
植物に対しても適用可能である。また、シバのように、
従来のアグロバクテリウム法では形質転換することがで
きなかった植物も、本発明の方法により形質転換が可能
になった。
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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に好ましく用いることができるス
ーパーバイナリーベクターの例であるpTOK233の構築方
法を示す図である。
【図2】本発明の方法に好ましく用いることができるバ
イナリーベクターの例であるpNB131の遺伝子地図を示す
図である。
【図3】アグロバクテリウム属細菌の主要な2種類のベ
クターシステムである中間ベクターシステムとバイナリ
ーベクターシステムの構築過程を示す模式図である。
【図4】アグロバクテリウム ツメファシエンスの強病
原性菌株A281に由来する2種類のバイナリーベクターシ
ステムを示す模式図である。
【符号の説明】
BL アグロバクテリウム属細菌のT−DNAの左ボーダ
ー配列 BR アグロバクテリウム属細菌のT−DNAの右ボーダ
ー配列 TC テトラサイクリン抵抗性遺伝子 SP スペクチノマイシン抵抗性遺伝子 IG イントロンGUS遺伝子 HPT ハイグロマイシン抵抗性遺伝子 NPT カナマイシン抵抗性遺伝子 K 制限酵素KpnI部位 H 制限酵素HindIII 部位 Ampr アンピシリン耐性遺伝子 BAR bar遺伝子 COS, cos ラムダファージのCOS部位 ORI, ori ColE1の複製開始点 P35S CaMV 35Sプロモーター Tnos ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター virB Agrobacterium tumefaciens A281に含まれるTiプ
ラスミドpTiBo542のヴィルレンス領域中のvirB遺伝子 virC Agrobacterium tumefaciens A281に含まれるTiプ
ラスミドpTiBo542のヴィルレンス領域中のvirC遺伝子 virG Agrobacterium tumefaciens A281に含まれるTiプ
ラスミドpTiBo542のヴィルレンス領域中のvirG遺伝子 Vir アグロバクテリウム属細菌のTiプラスミドの全vir
領域 S Vir 強病原性アグロバクテリウム属細菌のTiプラス
ミドpTiBo542の全vir領域 s vir* TiプラスミドpTiBo542のvir領域の一部を含む
断片
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石田 祐二 静岡県磐田郡豊田町東原700番地 日本た ばこ産業株式会社遺伝育種研究所内 Fターム(参考) 2B030 AA02 AB03 AD20 CA19 CB03 CD03 CD06 CD09 CD13 CD14 CD17 4B024 AA08 DA01 GA11 HA20

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 植物細胞又は植物組織を熱処理すること
    を伴う、アグロバクテリウム属細菌を介して行われる植
    物細胞への遺伝子導入の効率を向上させる方法。
  2. 【請求項2】 植物細胞又は植物組織を熱処理した後、
    遺伝子導入処理を行う請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 熱処理が33℃〜60℃の温度範囲で行
    われる請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 熱処理が35℃〜55℃の温度範囲で行
    われる請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 熱処理が37℃〜52℃の温度範囲で行
    われる請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 熱処理が5秒間〜24時間の範囲で行わ
    れる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 37℃〜52℃の温度下で1分間〜24
    時間熱処理を行う請求項1又は2記載の方法。
  8. 【請求項8】 用いる植物細胞又は植物組織が被子植物
    由来である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方
    法。
  9. 【請求項9】 用いる植物細胞又は植物組織が単子葉植
    物由来である請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 用いる植物細胞又は植物組織がイネ科
    植物由来である請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 用いる植物細胞又は植物組織がイネ、
    トウモロコシ、シバ及びタバコから成る群より選ばれる
    植物由来である請求項8記載の方法。
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