【発明の詳細な説明】
細胞質性チロシンキナーゼ
発明の分野
本発明は一般に、新規細胞質性チロシンキナーゼ、これをコードする遺伝子、
ならびに診断および治療方法におけるその使用に関するものである。
発明の背景
細胞および組織の維持、分化および修復に関与する細胞プロセスは、一つには
、成長因子および他のリガンドがそれらの受容体へ結合することにより制御され
る細胞間および細胞内シグナルにより調節される。遺伝子発現の調節および生化
学的経路の活性化と不活性化とを調節するために細胞により利用される最も重要
なシグナルの様式はチロシンリン酸化である。多数のチロシン・キナーゼが知ら
れており、通常これらは、上皮増殖因子、インスリン、インスリン様増殖因子I
)血小板由来増殖因子、および繊維芽細胞増殖因子等のポリペプチド増殖因子に
対するトランスメンブラン受容体として存在する。概論は、ウルリッヒ(Ull
rich)らによるCell,61・243−254(1990);およびヘル
ジン(Heldin)らによるCell Regulation,1:555−
556(1990)を参照のこと。中でも本発明にとり重要なのは、それらのリ
ガンドとしての造血増殖因子を認識する幾つかの受容体チロシン・キナーゼであ
る。これらの中には、コロニー刺激因子1に対する受容体であるc−fms受容
体チロシン・キナーゼ[シェル(Sherr)らによるCell 41665−
676(1985)]、およびヒユアング(Huang)らによるCell 6
3:225−233(1990)中に報告された原始的で十分特徴化していない
造血増殖因子であるc−kit、が包含される。
一般的にチロシン・キナーゼは、構造的特徴に準拠してフアミリー、サブフア
ミリー、およびクラスに分けられる。一般には2つの広い分類があり、これらの
中には膜結合チロシン受容体キナーゼおよび非受容体チロシン・キナーゼが包含
され、これらには細胞質および核性チロシン・キナーゼが包含される。チロシン
受容体キナーゼの1例は表皮増殖因子受容体キナーゼのフアミリーであり、これ
らは細胞外ドメインと共にトランスメンブラン受容体キナーゼのサブフアミリー
を形成する。このサブフアミリーは、インスリン受容体キナーゼ等の他のものに
加えて、相同性でシステインに富む繰り返し体をそれらの細胞外ドメイン中に含
む。ヒライ(Hirai)らのScience,238:1717−1720(
1987)参照。他の膜結合型受容体チロシンキナーゼは、免疫グロブリン上科
の特徴である細胞外折りたたみを含んでいる。上記非受容体チロシン・キナーゼ
は、しばしばSrc様キナーゼを含む単一グループとして言及されてきたが、現
在では、この非受容体チロシン・キナーゼは幾つかのフアミリーに分けられ得る
ことが認識されている。[ボレン(Bo1en),Oncogene,8:20
25−2031(1993);ワング(Wang),TIBS 19,373−
376(1994)]。
例えば、新規に同定された非受容体チロシンキナーゼフアミリーは、TECN
ITK(同時にTSKまたはEMTとしても知られている)およびBTK(以前
はATKまたはEMBとして知られる)の3つの独立クローン化遺伝子を含んで
いる。これらの遺伝子によりコードされるタンパク質は一般的にキイロシヨウジ
ョウバエ(Drosophila melanogaster)Src28Cチ
ロシン・キナーゼに相同である。かかるペプチド類は一般に、そのチロシン・キ
ナーゼドメインの上流にSH3 およびSH2 ドメインを含んでいる。しかしTE
C/ITK/BTKによりコードされるぺプチド類は、典型的には長いN−末端
領域も含んでおり、この領域は一般的にSrc様キナーゼ中に保存され
ている共通ミリスチル化(myristylation)残基を保有していない
。そのかわり、このTEC/ITK/BTKフアミリーのタンパク質のN末端領
域は、ムサチオ(Musacchio)らによるTIBS,18:343−34
8(1993)中に記載されるプレックストリンホモロジー
(pleckstrin homology)(PH)ドメインを含んでいる。
最後に上記TEC/ITK/BTKフアミリーは一般的にペプチド類からなり、
これらのペプチドは短いC末端を有し、殆どのSrc様キナーゼ中に見いだされ
る調節チロシンリン酸化部位が欠失している。
上記プレックストリン・ドメインのコアは7つの鎖からなる逆平行βシートで
ある。このC末端は折りたたまれて長いαヘリックスを形成している。このドメ
インは静電的に極性化され、かつペプチドまたは小タンパク質等のリガンドへの
結合に関与し得るポケットを含んでいる。このコア構造は全てのPHドメイン中
に保存されるが、これらのドメインは推定の結合ポケットを取り囲むループに関
して多くの変化が見られる。プレックストリン・ドメインの機能については未だ
知られていないが、これらは複合G−タンパク質のβおよびγサブユニットに結
合することが判った。
TECチロシン・キナーゼをコードする遺伝子は、ネズミ肝癌細胞中に同定さ
れ、後程、試験された全てのネズミ造血細胞ライン中に発現されることが判明し
た。[マノ(Mano)らのOncogene,8:417−424(1993
)]。上記フアミリーの他の2つのメンバーのITKおよびBTKは、T細胞お
よびB細胞それぞれの発展のある段階で選択的に発現される。ITK mRNA
の発現は、T細胞活性化に際してIL−2により誘導され、かつBTKにおける
突然変異はX連鎖無ガンマグロブリン血症(バートン病、XLA)の原因である
と考えられており、この病気は、冒された雄中での成熟B細胞の循環が欠失して
いることに特徴がある。他のタンパク質との、機能的に重要な相互作用に関与し
得
るPHまたはSH2 ドメインにおける点変異を包含する、各種の異なったBTK
突然変異がXLAのネズミモデル中に記載されている。細胞質チロシン・キナー
ゼは、リガンド活性化トランスメンブラン受容体と会合して、リガンド誘発シグ
ナルの開始または増幅をするらしいことが報告されている。例えば、造血細胞中
のT細胞およびB細胞受容体ならびにサイトカイン受容体は、それらのシグナル
を変換する目的でSrcチロシンキナーゼフアミリーの、ある種のメンバーと結
合する。これらの受容体へのリガンド結合に際しては、特定細胞内基質のチロシ
ン・リン酸化が急速に増加することが観測される。したがって、これらのシグナ
ル経路は、刺激された受容体により補充され、かつ活性化された、特定の細胞内
チロシン・キナーゼに依存するように見える。このSrcフアミリーのメンバー
は細胞系統選択的態様で発現され、このことは上記仮説とは矛盾しない。種々の
サイトカイン受容体もキナーゼのJAKフアミリーと相互作用してこれを活性化
し、一方では転写レギユレータを直接的にリン酸化する。
サイトカイン受容体とは対照的に、殆どの増殖因子受容体は固有のチロシン・
キナーゼ活性を含んでいる。血小板由来増殖因子受容体および肝細胞増殖因子/
散乱因子(scatter factor)受容体等の、これら受容体の或る種
の受容体の自己リン酸化(autophosphorylated)チロシル残
基は、c−Src等の細胞質チロシン・キナーゼのSH2 ドメインに結合する。
細胞質チロシン・キナーゼの活性化受容体複合体への補充は、他のSH2 ドメイ
ン含有シグナル変換器と共同して、および恐らくSH3 ドメインに結合するタン
パク質と共同してシグナルを増幅することができる。
本発明は、特性をTEC/ITK/BTKサブフアミリーと共有する新規細胞
質性受容体チロシンキナーゼの提供にあり、このキナーゼは細胞の成長および分
化ならびに各種タイプの腫瘍形成に対するマーカーとして有用で、かつ脱調節(
deregulated)チロシンリン酸化が原因の疾患の診断と治療に有用
である。本発明における細胞質チロシン・キナーゼを使用すると、成長因子また
はサイトカイン受容体を単離することが可能であり、これらのシグナルは当分野
の標準法により、かかるキナーゼを介して媒介される。
発明の概要
本発明は、造血細胞の成長および/または増殖を刺激することができる新規細
胞質性チロシンキナーゼを提供する。好ましい実施態様における本発明のタンパ
ク質は、SEQ ID NO:3中に示されるアミノ酸配列を含むBMXタンパ
クである。好ましい実施態様ではまた、本発明はBMXをコードするcDANを
提供する。
好ましい実施態様では、本発明によるBMXチロシンキナーゼは、in vi
voまたは in vitroのいずれかで、造血細胞の成長および/または分
化を刺激し得るBMXタンパク質断片を含む。好ましい実施態様では、本発明は
BMXタンパク質断片をコードするDNAも提供し、この断片は造血細胞の成長
および/または分化を刺激し得るものである。
また本発明は、モノクロナール抗体を包含する、本発明のタンパク質に向かっ
て指向する抗体およびそれを生産するハイブリドーマも提供する。
本発明による方法は、組織を本発明による検出可能ラベル化DNAまたは抗体
にさらし;この組織を洗浄し、かつ洗浄後に組織中に残留しているラベルを検出
する工程を含む、造血細胞の成長および/または分化を検出する手段を含むもの
である。DNAおよびタンパク質のラベル化方法ならびにハイブリッド形成(h
ybridization)および免疫組織化学用の組織を調製する方法は当分
野で周知である。また本発明はユニークなチロシン・キナーゼを提供するもので
あり、このキナーゼの活性が特定インヒビターにより阻害される結果、BMXを
発現する細胞の成長または分化に影響を及ぼす。
本発明のその他の態様および特徴は、次の詳細な記載を考慮することにより当
業者には明瞭になるはずである。
図面の説明
図1は、BMX(SEQ ID NO:3)、BTX(SEQ ID NO:4)
、ITK(SEQ ID NO:5)、TEC(SEQ ID NO:6)、D
Src28C(SEQ ID NO:8)および共通配列(SEQ ID NO
:7)を示す。
図2Aは、ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)およびHT−1080ヒト繊維肉
腫細胞からのポリA+RNAのノーザンブロットおよびハイブリッド形成分析を
示す。
図2Bは、HUVEC細胞からの抗BMXおよび抗SEX免疫沈降物(対照)
のウエスタンブロツトを示す。
図2Cは、BMX含有ベクターまたはエンプテイ・ベクター(MOCK)を用
いてトランスフエクションしたCOS細胞からのBMX免疫沈降物の抗PTyr
ウエスタン分析を示す。
図2Dは、in vitroでキナーゼ反応に処したCOS−トランスフエク
ション細胞(BMX)からの免疫沈降物のSDS−PAGE分析を示す。
図3は、BMXレトロウイルス発現BMXまたは抗BMX抗血清を用いて直接
的に溶解(”−”にて表示のレーン)または免疫沈降(IP)させたコントロー
ルウイルス感染(c)NIH3 T3細胞のウエスタンブロットを示す。
図4は、染色体の略図表示と共に、BMXコード遺伝子の極在化
(localization)を示す、正常の中期ヒト染色体およびX染色体の
拡大図を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、SEQ ID NO:3に示すBMXチロシン・キナーゼ等の新規
チロシンキナーゼ;上記キナーゼの断片;および上記キナーゼおよび上記断片を
コードするDNAを提供する。かかるcDNAは骨髄および内皮細胞源から構築
されたゲノムライブラリーから単離された。このBMXコードcDNAはアミノ
酸675をコードする2025bpの読み取り枠を含む。このタンパク質産物は
単一チロシン・キナーゼドメイン、SH2 ドメイン、およびSH3 ドメインを含
む。このチロシン・キナーゼドメインはBTKNITK)およびTECのチロシ
ン・キナーゼドメインに約70%相同であることは、SEQ ID NO:3を
SEQ ID NO:4、5、および6とそれぞれと比較することにより判る。
本発明による断片は、造血細胞の成長および/または分化を刺激または阻害する
能力を保持している、元のままのキナーゼの1次構造の任意の部分である。
本発明によるBMX細胞質性チロシンキナーゼは、Btk)Itk、Tec、
およびキイロショウジョウバエSrc28Cチロシンキナーゼのアミノ酸配列に
極めて相同な演繹アミノ酸配列(SEQ ID NO:3に示される)を有して
いる。その密接相同配列を有する上記BMX配列のアラインメント
(alignment)を図1に示す。この図を検討すると、このBMX cD
NAの位置36におけるコドンATGはその翻訳開始部位であることを暗示して
いる。このコドンはkozak共通翻訳開始配列(AATATGG)中に含まれ
ている。
キナーゼ類のSrcフアミリーのメンバーの可変N末端ドメインは、トランス
メンブラン受容体と相互作用することが報告されている[ムステリン(Must
elin)らのTIBS:18:215−220(1993)]。図1に示すよ
うに、BMXのN末端領域はTEC、ITK、およびBTKのものと有意の相同
性を有する。
BMXのN末端ドメインはまた、各種GPTアーゼ活性化(GAP)タンパク
質中および他のキナーゼ中ならびに細胞骨格タンパク質中に見いだされるP
H(プレックストリン相同)共通配列に匹敵する領域を有している。このプレク
ス
トリン・ドメインのコアは7つの鎖からなる逆平行βシートであり、そのC末端
部分は折りたたまれて長いαヘリックスを形成している。このプレックストリン
・ドメインは静電的に極性化され、かつ推定のリガンド結合ドメインを含んでい
る。
サイトカイン受容体とは対照的に、殆どの増殖因子受容体は固有のチロシンキ
ナーゼ活性を含んでいる。ある種の増殖因子受容体(例えば、血小板由来増殖因
子受容体)の自己リン酸化チロシル残基は、c−Src等の細胞質チロシン・キ
ナーゼのSH2 ドメインと結合する。細胞質チロシン・キナーゼの活性化増殖因
子受容体複合体への補充は、シグナル変換器(transducers)を含有
する他のSH3 およびSH2 と上記チロシン・キナーゼがこの複合体を介して結
合することにより、シグナルを増幅する。
本発明のBMXタンパク質はSH2 およびSH3 ドメインの両方を有している
。しかし、このBMX SH3 ドメインは、この共通配列から変化して、そのC
末端にSerおよびGIu残基に富む2つの強い親水性部分を含むようになる。
この相違はスプライスの変動に起因できる。上記のことは、本発明チロシンキナ
ーゼが増殖因子受容体の活性部分に結合し、かつ、本発明のタンパク質の極在性
に起因して、造血細胞ライン中でそれを行うという実質的証拠を提供する。
したがって、本発明タンパク質は造血細胞ラインの刺激に有用である。その上
、本発明DNAは造血細胞増殖および発癌の検出における診断試薬としても有用
である。また本発明の抗体およびペプチドは成長因子の活性を阻害するのにも有
用である。次の実施例は、本発明タンパク質、DNAの単離、特性化、極在化お
よび用途の詳細、ならびにその使用方法の詳細を提供するものである。
実施例 1
本発明のタンパク質をコードするcDNAのクローニングおよび分析
グアニジウムチオシアナート抽出法により正常のヒト骨髄から全RNAを調製
した。次いでトリ骨髄芽球症(myeloblastosis)ウイルス逆転写
酵素10Uを用いて、オリゴ−dTプライマー0.5μg)デオキシアデノシン
三リン酸、デオキシグアニン三リン酸、デオキシシトシン三リン酸、およびデオ
キシチミジン三リン酸の各1μM、ならびにRNAsin(Promega、M
adison、WI)10Uの存在下、2μgのRNAのアリクウォット逆転写
した。この反応緩衝液は50mM トリス Tris・HCl(pH8.1)、
6mM MgCl2、40mM KClおよび1mM ジチオスレイトールを含
有した。反応内容物を42℃で1時間保温し、次いで52℃で30分、さらに9
5℃で5分間保温した。
次いでこの逆転写cDNAの約3%を、3U Dynazyme(Finnz
ymes)Helinki、FI)を用いて、1.5mM MgCl2含有反応緩
衝液中で、かつデオキシアデノシン三リン酸、デオキシシトシン三リン酸、デオ
キシグアニン三リン酸、およびデオキシチミジン三リン酸の各200 5μmの
存在下、反応容量100mL中でPCR法により増幅した。これらのプライマー
は、
5’−GGTCTAGAA(A/g)AA(A/G)TT(C/T)GT(C/
G)CAC(A/C)G(G/A)GAC−3’(O.1 5m)(SEQ I
D NO:1)および
5’−GCTCTAGA(G/A)GGCCATCCA(T/C)TT(G/C
/A)AC(T/C/A)GG−3’(0.15m)(SEQ ID NO:2
)であり、センスおよびアンチセンスプライマーそれぞれを表わした。両プライ
マーは、公知キナーゼからの保存チロシン・キナーゼドメインから得られた。増
幅のためのプロトコールは「パーキン・エルマー(Perkin Elmer)
DNA Thermo Cycler 480」を用いて、容量100μL中、
35サイクルで、95℃で90秒;42℃で120秒;68℃で180秒であっ
た。新規BMXコード配列を表す150bp(7)cDNA産物が得られた。こ
の生成物をメーカーの指示に従ってTAクローニング・キット
(Invitrogen)を用いてpCRベクターへとサブクローニングした。
上記PCR増幅BMX産物(B1 と呼称)をランダムプライミングを使用した
32pCTPで放射性ラベル化し、ヒト骨髄RNA(Clontech)から構
築したオリゴ−dT−プライマーλgt10 cDNAライブラリーのスクリー
ニングに用いた。このB1cDNAは、PCR増幅およびフランキング読み取り
枠により得られた配列を包んでおり、細胞質チロシン・キナーゼが、新規に同定
されたBtkキナーゼと極めて密接に関連することを予言していた。このB1c
DNAをノーザンブロット法のプローブに使用した場合、いずれの試験細胞ライ
ン中にも特定シグナルは検出されなかった。それにもかかわらず、RNAの逆転
写PCR増幅により得られた結果によれば、BMXは骨髄中のみならず、内皮細
胞中にも発現されると思われた。したがって、全長cDNAを得る目的で内皮細
胞RNA由来のヒトcDNAライブラリーをスクリ−ニングした。いくつかの陽
性プラークを選び、最も長い約2.4kb(E7)のBMXcDNAインサート
をpGEMプラスミド(Promega)中にサブクローンし、次いでサンガー
(Sanger)のジデオキシ鎖終端法を用いて両鎖について配列決定した。上
記E7 クローンは、受託番号No.ATCC 75907として1994年10
月5日付で the American Type Culture Coll
ection,12301(Parklawn Drive,Rockvill
e,MD 20852)に寄託されたものである。上記配列のコンピユーター分
析は、デベロー(Devereux)らのNucl.Acids Res.,1
2:387−395(1984)中に報告されたようなGCGプログラムを用い
て遂行した(上記文献を本明細書中に包含する)。得られた上記BMX配列を図
1およびSEQID NO:3中に示す。
このE7サブクローンは675のアミノ酸をコードし得る読み取り枠を含んで
いた。この演繹アミノ酸配列はTEC、ITK、およびBTKの配列に極めて相
同性であり、ならびにキイロショウジョウバエSrc28Cチロシンキナーゼに
極めて相同性であった。
配列アラインメントは、このcDNAの位置36のATGが翻訳開始部位であ
ることを暗示した。
上記BMXタンパク質は、PHドメイン(図1の暗い領域)を含む210残基
のN末端領域を有しているが、共通ミリスチル化部位は含まれていない。このS
rcフアミリーの可変アミノ末端ドメインはトランスメンブラン受容体との相互
作用に関与する。したがって、BMXの長いN末端領域がBtk、Itkおよび
Tecキナーゼと高度の相同性を共有することを指摘するのは興味深い。上記分
子の当該部分は、未だ知られていない受容体またはシグナル変換器と共同して、
ある役割りを有し得る。この領域では、これらの4つのチロシン・キナーゼの配
列は塩基性アミノ酸残基に富み、かつそれらはsARKおよびRAC等のキナー
ゼ中の、およびダイナミン(dynamin)、キネシンおよびスペクトリン中
の、ある種のGTPアーゼ活性化タンパク(GAP)およびGDP−GTP交換
因子(SOS1等)等の多数のタンパク中に見いだされるPHドメインに対する
コンセンサスに適合する。
上記PHドメインの次に、SH3 およびSH2 ドメイン(図1の囲み領域)が
続く。比較のために、キイロショウジョウバエSrc28C TK配列の対応領
域も図1に示す。BMXのアミノ酸残基185−206と207−228(図1
の水平矢印)との間の配列はヌクレオチドおよびアミノ酸レベルの両方で互いに
約80%同一であり、この区間(stretch)がBMX DNA配列の重複
に由来することを暗示している。後者区間(207−228)は、このBMXS
H3 ドメインのN末端部分に属している。
SH3ドメインの特徴はBMX/BTK/ITK/TECチロシン・キナーゼ
フアミリーの全てのメンバーに共通であるが、配列のいくつかは上記コンセンサ
スと異なっている。このBMX SH3 配列(位置243におけるWWモチーフ
の下流)のC末端部分は他のキナーゼのものと異なっており、かつSerおよび
Glu残基に富む、2つの強い親水性区間を含んでいる。対照的に、上記SH2
ドメインは、他のチロシンキナーゼ(図1)と比較すると、BMX配列中によく
に保存されている。このチロシン・キナーゼドメイン(矢印)内で、Gly(4
34)XGlyXXGly配列を含有するATP結合モチーフおよびLys43
5残基を図1中にマークする。BMX(7)Tyr566残基はc−Srcの保
存Tyr416自己リン酸化部位に相当する。この触媒ドメインの次に短いC末
端尾部が続き、ここに非保存自己リン酸化部位が見いだされる。多重停止コドン
は、このBMX配列のコドン675の後に見いだされた。
いくつかのヒト胎児および成人組織からのポリアデニル化RNAをBMX R
NAの場合についてノザンブロット法およびハイブリッド形成hybridiz
ation)により分析した。BMX転写物は胎児および成人の心臓の両方で顕
著であった。一層弱いシグナルが胎児肺および腎臓から得られ;また成人の骨格
筋、胎盤、肺、肝臓、睾丸、卵巣、小腸および大腸から得られた。成人腎臓、膵
臓および前立腺はオートラジオグラムの長時間露出後にのみシグナルを与え、一
方胎児もしくは成人の脳または胎児肝臓もしくは腎臓からはなんらのシグナルも
得ることができなかった。このように、BMXは関連Btk、ItkおよびTe
cチロシン・キナーゼよりも一層広く発現されるように思われる。これらのハイ
ブリッド形成シグナルの少なくとも一部は、これら器官中の造血細胞に由来する
可能性がある。
実施例 2
BMXタンパク質の発現および分析
BMXレトロウイルスをpBABEpuroベクター中に構築させた。このp
BABEpuroベクターはモルゲンステルン(Morgenstern)らに
よるNucl.Acids Res.,12:387−395(1990)中に
報告がある。次いで生成ベクターを、ペア(Pear)らのProc.Natl
.Acad.Sci. (USA),90:8392−8396(1993)(
引用により本明細書に包含する)に報告されているようなBOSC23細胞中に
トランスフエクションした。次いで48時間後に上澄みを収集し、NIH3 T3
細胞の感染に用いた。ピユーロマイシン中の2週間の増殖により上記感染細胞を
選択した。上記BMX cDNAインサートを含むpMT2 ベクター10μgに
よりCOS細胞をリン酸カルシウム法を用いてトランスフエクションした(この
ベクターはカウフマン(Kaufman)らのCell.Biol,9946−9
58に報告があり、この文献を引用により本明細書中に包含する)。成長の36
−48時間後、ウエスタンブロット法の場合には、この細胞を電気泳動サンプル
緩衝液:2.5% ドデシル硫酸ナトリウム、0.125M トリスTris・
HC1(pH6.8)を用い、または免疫沈降の場合には氷冷RIPA緩衝液[
50mM トリスTris・HCl(pH7.5)、NaCl 150mM)1
% Triton X100)1% デオキシコール酸ナトリウム、0.1% S
DS)10mg/mL ペプスタチン含有、100 5g/mLロイペプチン(
leupeptin)、0.05TIU/mL アプロチニン、1mM PMS
Fおよび1mM 活性化オルトバナジウム酸ナトリウム]を用いて抽出した。上
記透明上澄みは、BMXアミノ酸残基599−675を発現するように工作した
GST融合タンパク質(Pharmacia)を用いてウサギ中で生じた抗BM
X抗血清5μLを用いて免疫沈降させた。対照としては無関連タンパク質(L.
T.,調製において)に対するプレ免疫血清および抗SEX抗血清を使用した。
試料を7.5% SDS−PAGE中で分析し、次いで抗BMX抗血清(図2
B)の1:1000希釈液または図2C(Zymed)に示されるようなPY2
0抗ホスホチロシン・モノクロナール抗体を用いたウエスタンブロット法および
検出により、さらにマウス免疫グロブリンに対するペルオキシダーゼ複合抗体お
よびメーカー(Amersham)の指示に従ったECL検出によって分析した
。
別法として、上記免疫沈降物を25mM HEPES(pH7.2)、100
mM NaCl、5mM MgCl2、10mM MnCl2、および10mCi
[32P]−ATP中、室温で10分間キナーゼ反応に処し、次いでSDS−PA
GEおよびオートラジオグラフイーにかけた。
結果を図2A−2Dに示す。図2Aは、ヒト臍帯静脈内皮細胞からのRNAの
、BMXプローブを用いた、ノーザンブロット分析を示す(図中ではラベル化B
MX NB)。2.7kb(7)mRNAバンドが見られる。このBMXタンパ
ク質の免疫沈降に続く抗BMX抗体を用いた免疫ブロット法により、図2Bおよ
び図3にみられるような見かけ分子量80kDの弱いバンドが検出された。かか
るバンドは対照免疫沈降物中には見られなかった。BMXレトロウイルスを発現
するNIH3 T3 細胞からの、およびBMXプラスミド発現ベクターを用いてト
ランスフエクションしたCOS細胞からのBMXの免疫沈降および免疫ブロット
法でも、80kDポリペプチドが検出され、このペプチドは図2C(α−PTy
r WB)に示すように、チロシルリン酸化されたものであった。しかし、かか
るポリペプチドは図2Dに示すように免疫複合体キナーゼ反応[32P]−ATP
では、ほんの僅かにラベル化されただけであった。
実施例 3
BMX遺伝子の染色体局在化
24種間の体細胞ハイブリッドからなされたサザンブロットをCoriell
Institute(Camden,NJ)のMutant Cell Re
positoryから得た。
BMX遺伝子の染色体局在性を決定するために、ヒト染色体の画定のセットを
含むヒト・ネズミ(rodent)体細胞ハイブリッドからのDNAをBMXプ
ローブを用いるサザンブロット法およびハイブリッド形成により分析した。DN
A試料24中、ヒト特定シグナルが2つのヒト/チヤイニーズハムスターハイブ
リッド中に観察され、1つはヒト染色体1およびXを含み、他はヒトX染色体の
みを含むことが観察された。この分析によれば、上記BMX遺伝子はX染色体中
に局在化していることを示していた。このようX染色体上の所謂骨髄キナーゼ遺
伝子であるBMXが選択された。pWE15におけるヒト胎盤コスミド・ライ
(1988)中に記載]、およびヒトX染色体酵母人工染色体(YAC)ライブ
ラリーを上記BMX cDNAの[32P]ラベル化インサートを用いてスクリー
ニングした。純粋になるまで陽性クローンを再スクリーニングし、サザンブロッ
ト法およびハイブリッド形成により確認した。
5−ブロモデオキシウリジン同調リンパ球培養物から調製した、ヒト中期染色
体を伴うスライドをプレハイブリッド形成し(prehybridized)、
次いでリヒター(Lichter)らのHuman Genet.,80:22
4−234(1988)中に記載のように実質的にハイブリダイゼーション形成
させた(この文献を引用により本明細書中に含める)。このBMXコスミドの4
つのEcoRI断片(1、1.5、2.3、および2.5kb)をニックトラン
スレーションによりビオチン−16−dUTPを用いてラベル化後、プローブと
して用いた。この4つのプローブを50%ホルムアミド、2xSSC、1% T
ween 20、10% デキストラン硫酸、Cot−I DNA 25μgお
よびサケ精子DNA 8mgの混合物(75℃で5分間変性および次いで
37℃で30分間プレアニーリングした)中にプールした。ハイブリド形成後、
上記スライドをストリンジェントに洗浄し、シグナルを蛍光させ、増幅させ、か
つ上記染色体をプロピジウム・ヨウ化物およびDAPIを用いて対比染色させた
。結果を分析し、かつ共焦レーザー走査型顕微鏡(Zeiss)で写真撮影した
。
このBMX cDNAを用いたハイブリッド形成により単離されたゲノムコス
ミドクローンはハイブリッドパネル中の染色体Xおよび18からのシグナルを与
えた。したがって、このクローンの全ての4つのBMX陽性EcoRI断片はラ
ベル化され、かつBMX遺伝子をさらに局在化するための in situでの
ハイブリッド形成の蛍光に使用された。このプローブはXp22.2−p21(
図4)において特定シグナルを与えた。次いでこのBMX cDNAをXp21
およびXp22領域からYACsへとハイブリッド形成した。400kb IC
RF YAC900G1096および350kb CEPH YAC244G7
はBMXに対して陽性であった。FISHでの分析によると、これら両方のYA
Cは非キメラであった;前者はDXS207およびDXS197遺伝子座に対し
て陽性であり、後者はDXS197のみに対して陽性であった。BMXは、DX
S197およびDXS43に対して陽性のYACに対して陰性であったから、こ
れはBMXをバンドXp22.2におけるDXSI97とDXS207遺伝子座
の間に位置づけるものである。
好ましい態様によってこの発明を説明してきた。したがって、本発明のさらな
る局面は、本明細書の記載により当業者には明らかになるはずである。
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