JP2000515760A - 基質トラッププロテインチロシンホスファターゼ - Google Patents

基質トラッププロテインチロシンホスファターゼ

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Abstract

(57)【要約】 不変なアスパラギン残基がアラニン残基に置換され、チロシンリン酸化基質に結合かつ触媒的に減じられる新規プロテインチロシンホスファターゼが記載される。さらに、記載されたプロテインチロシンホスファターゼと複合体化するチロシンリン酸化タンパク質を同定する方法が記載される。

Description

【発明の詳細な説明】 基質トラッププロテインチロシンホスファターゼ 発明の背景 プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーの酵素は、共通に高 く保存された250アミノ酸のPTP触媒ドメインを有するが、それらの非触媒 セグメントにおいて顕著な変異を示す、500を超える構造的に多様なタンパク 質からなる〔シャルボヌー(Charbonneau)およびトンクス(Ton ks),Annu.Rev.Cell Biol. 8:463−493(19 92);トンクス(Tonks),Semin.Cell Biol. 4:3 73−453(1993)〕。この構造的な多様性は、恐らく、個々のPTPフ ァミリーのメンバーの生理学的役割の多様性を反映し、そのことは、ある場合に は、増殖、発生および分化における特異的な機能を有することを示していた〔デ ザイ(Desai)ら,Cell 84:599−609(1996);キシハ ラ(Kishihara)ら,Cell 74:143−156(1993); パーキンス(Perkins)ら,Cell 70:225−236(1992 );ピンゲル(Pingel)およびトーマス(Thomas),Cell 5 8 :1055−1065,(1989);シュルツ(Shultz)ら,Cel l 73:1445−1454(1993)〕。近年の研究は、さらにPTPs の構造、発現および制御に関する有意な情報も生みだしたが、PTPsがそれら の効果を発揮するチロシンリン酸化基質の性質は決定すべきままである。限られ た数の合成ホスホペプチド基質による研究は、異なるPTPsの基質選択性にお ける幾つかの差を示し〔チョウ(Cho)ら,Protein Sci.2:9 77−984(1993);デケルト(Dechert)ら,Eur.J.Bi ochem. 231:673−681(1995)〕、リン酸化チロシン残 基の周辺の特定位置の一定のアミノ酸残基を好むことを示唆した〔ルッツェン( Ruzzene)ら,Eur.J.Biochem. 211:289−295 (1993);ツァング(Zhang)ら,Biochemistry 33: 2285−2290(1994)〕。これらの研究で使用された基質の生理学的 な関連性は不明であるが、このことは、PTPsがイン・ビトロにおける一定レ ベルの基質選択性を呈示することを示す。発明の要旨 本明細書記載のように、哺乳類プロテインチロシンホスファターゼ(PTPs )の基質特異性は、哺乳類PTPの変異体または改変型−基質トラップPTPs ともいう−を用い、PTPの1以上の基質を結合(トラップ)する新規な基質ト ラップアプローチを用いて調べられた。基質トラップPTPとPTPの基質との 結合は、容易に観察でき、所望により、単離し、キャラクタライズできる複合体 の形成を生じる。PTPsの変異体型は、野生型PTPに比べて触媒活性を減ず る(触媒活性を欠く、または減少した触媒活性を有する)が、野生型PTPの1 または複数のチロシンリン酸化基質を結合する能力を残す。 本発明の方法は、本明細書では、ホスファターゼPTP1BおよびPTP−P ESTに関して具体的に説明される;しかしながら、本発明はこれらの特定のP TPsに限定されず、PTPファミリーの全てのメンバーに適用しうる。PTP 1BおよびPTP−PESTの潜在的な基質を同定するため、触媒的には減ずる が、基質を結合する能力を保持したPTP1BおよびPTP−PESTの変異体 (即ち改変されたまたは基質をトラップする)型を生成させた。これらの変異体 PTPsは、それぞれp210 bcr:ablおよびp130casとしてイム ノブロッティングにより同定されたタンパク質との安定な複合体に会合した。こ れらの会合は、複数の細胞株由来のライゼートおよびトランスフェクトしたCO S細胞に観察され、p210 bcr:ablおよびp130casは主要な生理 学的に関連するPTP1BおよびPTP−PESTの基質を示す。 これらの結果は、本質的に限定されたイン・ビボにおける基質特異性を有する PTPsの最初の証明を提供する。p210 bcr:ablおよびp130ca s をPTP1BおよびPTP−PESTのそれぞれに特異的な基質として同定す るために使用された方法は、近年約500メンバーが報告されている、いかなる PTPファミリーのメンバーにも一般的に適用可能であり、PTPファミリーの 他のメンバーの生理学的基質を決定するために使用することができる。 本発明の1つの態様は、不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変 化を生じないが、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じ させるアミノ酸と置換される新規な変異PTPsに関する。これらのPTPsは 、PTPsのチロシンリン酸化基質と複合体を形成するまたは結合する能力を保 持するが、触媒的に減ずる。1つの態様として、本発明は、181位の不変なア スパラギン酸残基がアラニンと置換される(D181A)ホスファターゼPTP 1Bに関する。他の態様として、本発明は、199位の不変のアスパラギン酸残 基がアラニンに置換される(D199A)ホスファターゼPTP−PESTに関 する。本発明の他の態様は、231位のシステイン残基がセリン(C231S) に置換されるPTP−PESTホスファターゼに関する。さらに本発明は、不変 のアスパラギン酸残基がアラニンなどの他のアミノ酸に置換もしくは改変される 他の変異体または基質トラップPTPsに関する。PTPヌクレオチド配列を不 変なアスパラギン酸残基の位置が知られているPTPのヌクレオチド配列で整列 化することにより、他のPTPsにおいて不変なアスパラギン酸残基を同定する ことができる。 さらに本発明は、プロテインチロシンホスファターゼのチロシンリン酸化基質 を同定する方法に関する。本発明の1つの態様によれば、目的のチロシンリン酸 化タンパク質は、不変なアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化を引き起 こさないか、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じさせ るアミノ酸に置換される1以上のPTP(s)と組み合わされ、該タンパク質と 1もしくは複数のPTPとの複合体の存在または非存在が決定される。該組み合 わせにおける複合体の存在は、チロシンリン酸化タンパク質が、PTPの基質で あることを示唆する。PTP DA変異体は、その基質と結合または複合体化す るが、それを脱リン酸化せず(または非常に遅くリン酸化する)、それにより複 合体を観察すること、任意に単離および同定することを可能にする。本発明の特 別な態様として、不変なアスパラギン酸はアラニン残基に置換される(PTP DA変異または改変)。 本発明の別の態様としては、不変のアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な 変化を引き起こさないが、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減 少を生じさせるアミノ酸に置換される目的のPTPは1以上のチロシンリン酸化 タンパク質と組み合わされ、1もしくは複数のタンパク質と該PTPとの複合体 の存在または非存在が決定される。PTP DA変異体は、その基質と結合また は複合体化するが、それを脱リン酸化せず(または非常に遅くリン酸化する)、 それにより複合体を観察すること、ならびに任意に単離および同定することを可 能にする。本発明の1つの態様として、不変なアスパラギン酸はアラニン残基に 置換される(PTP DA変異または改変)。 さらに本発明は、1を超える目的のチロシンリン酸化タンパク質が、不変のア スパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化を引き起こさないが、1分あたり1 未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸に置換される( 例えば、不変なアスパラギン酸がアラニン残基に置換される)1を超える目的の PTPと組み合わされる、プロテインチロシンホスファターゼのチロシンリン酸 化基質を同定する方法に関する。該組み合わせで形成した複合体を単離すること かでき、成分PTPと基質とを同定することができる。 さらに本発明は、不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化を引 き起こさないが、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じ させるアミノ酸に置換され(例えば、不変なアスパラギン酸がアラニン残基に置 換される)、チロシンリン酸化タンパク質との複合体を形成するPTPの哺乳類 への投与を含む、チロシンリン酸化タンパク質の活性を減少させる方法に関する 。PTP変異体は、リン酸化タンパク質を脱リン酸化することなく、リン酸化タ ンパク質と結合し、それにより該タンパク質の活性を阻害し、その下流の効果を 減少させる。 例えば、本発明は、野生型PTP−PESTまたは不変なアスパラギン酸がア ラニン残基に置換されるPTP−PESTの哺乳類への投与を含む、PTP−P ESTの基質であるp130casに関連したオンコジーンの形質転換効果を減少 させる方法に関する。野生型PTP−PESTはp130casに結合し、脱リン 酸化して、それによりその下流の効果を負に制御する。PTP−PESTのDA 変異体は、p130casと結合するが、脱リン酸化しない(または減少した速度 で脱リン酸化する);したがって、基質はPTP−PESTの基質トラップ型と の複合体に結びつき、その下流の効果を発揮できない。同様に、本発明は、野生 型PTP−PESTまたは不変なアスパラギン酸残基がアラニン残基に置換され るPTP−PESTの哺乳類への投与を含む、p130casに関連したシグナル 伝達複合体、特に分裂促進経路を誘導するシグナル伝達複合体の形成を減少させ る方法に関する。 さらに本発明は、PTPとそのリン酸化基質との相互作用を変化、例えば増大 または阻害する試薬を同定するためのアッセイに関する。これらのアッセイによ り同定された試薬は、PTP活性のアゴニスト(例えば、PTPの活性を促進ま たは増加させる試薬等)またはアンタゴニスト(例えば、PTPの活性を阻害ま たは減少させる試薬等)であってもよい。該試薬は、内因性の生理学的物質であ ってもよく、あるいは小さい有機分子を含む、天然または合成薬物であってもよ い。 例えば、PTPのチロシンリン酸化基質を本明細書記載の方法により同定する ことができる。野生型PTPを用いる酵素活性アッセイは、試験対象の試薬の存 在下に行なうことができ、得られた酵素活性量を試験対象の試薬の非存在下の酵 素活性の量と比較することができる。試験対象の試薬の存在下の酵素活性の減少 は、該試薬がPTPとその基質間の相互作用を阻害することを示唆する。逆に、 試験対象の試薬の存在下の酵素活性の増加は、該試薬がPTPとその基質間の相 互作用を促進させることを示す。 一方、競合結合アッセイは、試験対象の試薬の存在下に変異PTPを利用して ことにより行なうことができ、生じた変異PTPとその基質との結合の程度を試 験対象の試薬の非存在下における結合の程度と比較することができる。試験対象 の試薬の存在下の結合の程度の減少は、PTPとその基質間の相互作用を阻害す ることを示す。逆に、試験対象の試薬の存在下の結合の程度の増加は、PTPと その基質間の相互作用を促進させることを示唆する。 したがって、本明細書記載の組成物および方法は、ホスファターゼのPTPフ ァミリーのメンバーのチロシンリン酸化基質を同定すること、ならびに同定され た基質の活性を制御することに有用である。さらに、本明細書記載の組成物およ び方法は、特定の疾患または不調、および治療の投与における使用のために、P TP/基質相互作用を促進または阻害するモジュレーターのスクリーニング方法 に関するチロシンリン酸化タンパク質を同定するために有用である。図面の簡単な説明 図1Aおよび1Bは、PTPsの触媒ドメインの多重配列整列を示す。図1A においては、細胞質の真核生物のPTPsおよびRPTPsのドメイン1を1つ のグループに、RPTPsのドメイン2を第2グループに、エルニシア(Yer sinia)PTPを3番目に組み合わせる。3つの全てのグループに渡って所 有された不変残基を赤で示す。グループ内に不変でおよび高度に保存された残基 は、それぞれ青および緑で示した。エルニシアPTP配列内で、細胞質およびR PTPドメイン配列間に不変または高度に保存された残基を、それぞれ青および 緑で色付けする。該ペプチドと相互作用するPTP1Bの残基の位置を赤矢印で 示し、整列の下に番号を付した残基はPTP1Bの残基に対応する。図1Bは色 つけした領域を標識した矢印で示す図1Aの白黒の光学コピーである。 図2はRCMLに対する多種のPTP1B変異体のVmaxおよびKmを示す 。発明の詳細な説明 酵素のPTPファミリーは、PTP触媒ドメインとして知られている約250 アミノ酸の共通の進化的に保存されたセグメントを含む。全PTPsに渡って不 変である独自の特有の配列モチーフ、〔I/V)HCXAGXXR〔S/T〕G はこの保存されたドメイン内にある。このモチーフの中のシステイン残基は該フ ァミリーのメンバーにおいて不変であり、触媒に必須であることが知られている 。それは、入ってくる基質のリン酸部分を攻撃する求核分子として作用する。部 位特異的変異導入により、システイン残基をセリン(CS変異体)またはアラニ ン(CA変異体)に変えた場合、得られるPTPは触媒的に減ずるが、少なくと もイン・ビドロで、その基質と複合体化または結合する能力を保持している。こ れらの結果は、PTPファミリーのメンバーであるMKP−1〔サン(Sun) ら,Cell 75:487−493(1993)〕、ならびに他のPTPsに 比較して確認されている。しかしながら、これらのCS変異体は、一般的にイン ・ビトロでホスホチロシル基質に効果的に結合することができるが、多くの場合 、かかる複合体はイン・ビボで単離することができない。したがって、該CS変 異体は、それらの適用性において限定され、PTPsと基質との全ての組合わせ を単離するために使用されえない。 PTP1B単独〔バーフォード(Barford)ら,Science 26 3 :1397−1404(1994)〕およびホスホチロシン−含有ペプチドと の複合体〔ジア(Jia)ら,Science 268:1754−1758 (1995)〕の結晶構造が最近決定された。27の不変残基を示したこれら の構造〔バーフォード(Barford)ら,1994〕のうち、1つはアスパ ラギン酸残基である。このアスパラギン酸残基は、PTPファミリーメンバーの 触媒ドメインにわたって不変である。即ち、PTPファミリーメンバーのアミノ 酸配列を整列させると、多様なPTP配列の整列に対して、整列を極大化するこ とを要求するシフトによって位置番号は異なるであろうが、アスパラギン酸残基 は、各PTP中、対応する位置に存在する〔図(バーフォード(Barford )ら,Nature Struc.Biol. 2:1043−1053(19 95)由来)を参照のこと)。整列がいまだに公表されていない配列は、例えば 、GENEWORKSなどの入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、 他の公知のPTP配列で直ちに整列化しうる。 したかって、本明細書に具体的に記載されたもの以外の変異体PTPsは、P TP触媒ドメインのアミノ酸配列を本明細書に記載されたものと整列化し、不変 のアスパラギン酸残基を同定し、該残基を部位特異的変異導入により変えること により直ちに作製されうる。本明細書に記載のPTP変異体の具体例はアスパラ ギン酸からアラニンへの変異体(DA変異体)であるが、本発明はアスパラギン 酸からアラニンへの改変に限定されない。不変のアスパラギン酸残基は、例えば 、部位特異的変異導入方法等により、酵素のKmの顕著な変化を引き起こさない か、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じさせるいかな るアミノ酸にも変化させることができる。例えば、不変のアスパラギン酸残基を 、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、 トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チ ロシン、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、またはヒスチジンに 改変または変異することができる。 本明細書記載のように、過バナジウム酸−処理細胞をチロシンリン酸化タンパ ク質の豊富な供給源として用いて、PTP−PESTの基質特異性を調べた。P TP−PESTは、哺乳類組織中でユビキタスに発現〔イー(Yi)ら,Blo od 78:2222−2228(1991)〕する88kDa細胞質PTP〔 チャレスト(Charest)ら,Biochem.J. 308:425−4 32(1995);デン ハートッグ(den Hertog)ら,Bioch em.Biophys.Res.Commun. 184:1241−1249 (1992);タケカワ(Takekawa)ら,Biochem.Bioph ys.Res.Commun. 189:1223−1230(1992);ヤ ング(Yang)ら,J.Biol.Chem. 268:6622−6628 (1993);ヤング(Yang)ら,J.Biol.Chem. 268:1 7650(1993)〕であり、それは人工的なチロシンリン酸化基質を用いて イン・ビトロでアッセイした場合、高い比活性を発揮する〔ガートン(Gart on)およびトンクス(Tonks),EMBO J. 13:3763−37 71(1994)〕。PTP−PESTがイン・ビトロおよびイン・ビボにおけ るSer39のリン酸化を介する制御に付されることが明らかに示された。この 修飾は、プロテインキナーゼC(PKC)およびプロテインキナーゼA(PKA )の両方により触媒され、脱リン酸化反応のKmにおける増加の結果として減少 した酵素活性を生じる(ガートン(Garton)およびトンクス(Tonks ),EMBO J.,13:3763−3771(1994)〕。本酵素はチロ シンキナーゼの細胞質基質のチロシンリン酸化段階に有意に負の影響を発揮する ことが期待されるので、さらなる制御機構がPTP−PESTに存在することが 明らかであろう。1つの可能性はこの影響がPTP−PESTの基質特異性によ り制限することができることである。 PTP1Bの基質特異性は、細胞を過バナジウム酸で処理しないことを除いて 、PTP−PESTのために概説された同じ方法を用いて調べられた。イン・ビ トロにおける脱リン酸化と基質トラップ実験との組み合わせを用いて、PTP1 BとPTP−PESTとの相互作用を研究した。本明細書に概説された基質トラ ップ方法は、共有された不変のアスパラギン酸残基によって、一般的にいかなる PTPにも適用可能であり、したがって、他のPTPファミリーメンバーの基質 選択を詳述することに有用であることを証明するであろう。特に、変異体、触媒 的に減じたPTPsを用いて、潜在的な基質をトラップし、それにより単離する ことは、個々のPTPTsの生理学的に重要な基質をすこぶる同定し易くし、細 胞内の過程の制御におけるこれらの酵素の役割の理解を進歩させるであろう。 本発明の1つの態様は、不変なアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化 を起こさないが、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じ させるアミノ酸に置換される新規なPTPsに関する。これらのPTPsはそれ らのチロシンリン酸化基質と複合体化または結合する能力を残しているが、触媒 的に減ずる。本明細書記載のように、「減じられた」活性は、ホスファターゼが 野生型のホスファターゼのKmと類似のKmを保持しているが、野生型の酵素に 比較して少なくとも104の係数により減少されたVmaxを有することを意味 することを意図する。これは、野生型PTPに比較して減少または完全に破壊さ れた触媒活性を含む。例えば、不変なアスパラギン酸残基はアラニン、バリン、 ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチ オニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン 、グルタミン、リジン、アルギニンまたはヒスチジンに変えるまたは変異させる ことができる。 不変なアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化を起こさないが、1分あ たり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸に置換さ れる、本明細書記載の新規PTPsは、さらに、他の変異、具体的には、PTP /基質複合体を安定化することを助けるものを含有することができる。例えば、 特有のモチーフにおける〔セリン/スレオニン〕残基のアラニン残基への変異は 、遷移状態の形成から遷移状態の破壊への脱リン酸化反応の律速段階を変え、そ れによりPTP/基質複合体を安定化させる。かかる変異は、不変なアスパラギ ン酸残基の置換、具体的には、複合体の安定化を助けること、複合体の観察およ び単離をし易くすることとを価値評価可能に組み合わせてもよい。 本発明に使用するために適切なPTPsは対応する位置に不変なアスパラギン 酸残基を有するいかなるPTPをも含む。本明細書で規定するように、特有のモ チーフ、〔I/V)HCXAGXXR〔S/T〕Gを含む場合、ホスファターゼ は、PTPファミリーのメンバーである。2重の特異性PTPs、即ち、リン酸 化チロシンとリン酸化セリンまたはスレオニンとの両方を脱リン酸化するPTP sは、さらに、本発明における使用に適切である。適切なPTPsとしては、限 定されないか、PTP1B、PTP−PEST、PTPγ、MKP−1、DEP −1、PTPμ、PTPX1、PTPX10およびPTPH1が挙げられる。 1つの態様として、本発明は、181位のアスパラギン酸残基がアラニンに置 換されるホスファターゼPTP1B(D181A)に関する。別の態様として、 本発明は、199位の不変なアスパラギン酸残基がアラニンに置換されるホスフ ァターゼPTP−PEST(D199A)に関する。本発明の別の態様は、23 1位のシステイン残基がセリンに置換されるPTP−PESTホスファターゼ( C231S)に関する。 さらに本発明は、特定のプロテインチロシンホスファターゼの基質であるチロ シンリン酸化タンパク質を同定する方法に関する。本発明の1つの態様によれば 、目的のチロシンリン酸化タンパク質は、不変なアスパラギン酸残基が、酵素の Kmの顕著な変化を引き起こさないが、1分あたり1未満(1分-1未満)までの Kcatの減少を生じさせるアミノ酸(例えば、アラニン残基)に置換される少 なくとも1つのPTPと組み合わされ、タンパク質とPTPとの複合体の存在ま たは非存在が決定される。該組み合わせにおける複合体の存在は、チロシンリン 酸化タンパク質がPTPの基質であることを示す。PTP DA変異体(基質ト ラップ変異体)はその基質と結合または複合体化するが、それを脱リン酸化せず (または非常に遅くリン酸化する)、それにより、複合体を単離することおよび 同定することが可能になる。 リン酸化タンパク質/PTP複合体は、塩析、クロマトグラフィー、電気泳動 、ゲル濾過、分画、吸着、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、凝集、またはそれ らの組み合わせを含む、米国特許第5,352,660号明細書に記載の慣用の 単離技術により単離することができる。さらにタンパク質/PTP複合体の存在 の決定を行ないやすくするために、PTPまたはリン酸化タンパク質に対する抗 体、ならびに標識PTPsおよび/または標識リン酸化基質を使用することがで きる。PTPまたはリン酸化タンパク質は、様々な酵素、蛍光物質、発光物質お よび放射活性物質で標識できる。適切な酵素としては、限定されないが、例えば 、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ビオチン、アルカリホスファターゼ、β−ガラ クトシダーゼおよびアセチルコリンエステラーゼなどが挙げられる。適切な蛍光 物質としては、限定されないが、例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、 フルオレセイン イソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミ ン フルオレセイン、ダンシルクロリド、フィコエリスリンなどが挙げられる。 適切な発光物質としては、ルミノールが挙げられ、適切な放射活性物質としては 放射活性リン32P、ヨードI125、I131またはトリチウムが挙げられる。 あるいは、本発明は、不変なアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化を 引き起こさないが、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生 じさせるアミノ酸(例えば、アラニン残基)に置換される目的のPTPと少なく とも1種のチロシンリン酸化タンパク質とを組み合わせ、それによりコンビネー ションを生じる工程:およびチロシンリン酸化タンパク質とPTPとのコンビネ ーションにおける複合体の存在がチロシンリン酸化タンパク質がPTPの基質で あることを示唆するものである、該コンビネーションにおける複合体の存在また は非存在を決定する工程を含む、PTPの基質であるチロシンリン酸化タンパク 質を同定する方法に関する。 さらに、本発明の基質トラップPTPsを野生型PTPsの代わりに用いて、 ソンギャン(Songyang)ら〔Nature 373:536−539( 1995);Cell 72:767−778(1993)〕に記載のようにP TPに結合するペプチドのホスホチロシルペプチドライブラリーをスクリーニン グすることもできる。ついで、かかるペプチドライブラリーから同定されたペプ チドは、これらのペプチドを含むチロシンリン酸化タンパク質が天然に存在する かどうかを決定するために評価されうる。 本発明において、いかなるチロシンリン酸化タンパク質も潜在的な基質として 適切である。チロシンリン酸化タンパク質は、当該分野において良く熟知されて いる。適切な基質の具体例としては、限定されないが、例えば、p130cas、 EGFレセプター、p210 bcr:abl、MAPキナーゼ、インシュリン レセプターなどが挙げられる。哺乳類疾患または不調に係わるチロシンリン酸化 タンパク質は、特に興味深いものである。 さらに本発明は、不変なアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化を引き 起こさないが、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じさ せるアミノ酸(例えば、アラニン残基)に置換され、それがチロシンリン酸化タ ンパク質との複合体を形成するPTPを哺乳類に投与する工程を含む、チロシン リン酸化タンパク質の活性を減少させる方法に関する。PTP DA変異体は、 リン酸化タンパク質を脱リン酸化することなく(または非常に減少した速度で脱 リン酸化する)、該リン酸化タンパク質と結合し、それによりタンパク質の活性 を阻害し、その下流の効果を減少させる。本明細書に用いられるように、「減少 させる」は、例えば、リン酸化タンパク質の1以上の活性または機能の減少と完 全な破壊との両方を含む。 例えば、本発明は、哺乳類への、野生型PTP−PESTまたは不変なアスパ ラギン酸残基がアラニン残基に置換されるPTP−PESTを投与する工程を含 む、PTP−PESTの基質であるp130casに関連したオンコジーンの形質 転換効果を減少させる方法に関する。野生型PTP−PESTはp130casに 結合し、脱リン酸化し、それにより、その下流の効果を負に制御する。PTP− PESTのDA変異体は、p130casと結合するが、脱リン酸化しない(また は非常に減少した速度で脱リン酸化する);したがって、基質はPTP−PES Tの基質トラップ型との複合体に結びつき、その下流の効果を発揮できない。同 様に、本発明は、野生型PTP−PESTまたは不変なアスパラギン酸がアラニ ン残基に置換されるPTP−PESTを哺乳類へ投与する工程を含有する、p1 30casに関連したシグナル伝達複合体、特に分裂促進経路を誘導するシグナル 伝達複合体の形成を減少させる方法に関する。PTPはp130casと結合およ ひ/または脱リン酸化し、それによりその下流のp130casの効果を負に制御 し、p130casに関連したシグナル伝達複合体の形成を減少させる。 本発明の基質トラップ変異体PTPsは、対応する野生型PTPの代わりにま たは加えて、実質的にいかなる適用にも使用されうる。かかる使用の利点は、変 異体PTPが野生型酵素の機能を疑似する能力、例えば、野生型PTPの投与ま たは過剰発現で共通して観察される有害な細胞毒性効果を誘導することなく、そ のチロシンリン酸化基質の活性を減少させることにある。したがって、本発明は 、野生型PTPの投与または過剰発現に関連する細胞毒性効果を減少させる方法 に関する。例えば、潜在的に有害な副作用を誘導することなく、MKP−1CS 変異体は野生型MKP−1と同じ機能的な効果を有することが示された。したが って、不変なアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化を引き起こさないが 、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸 (例えば、アラニン残基)に置換される、本明細書記載のPTPsは、対応する 野生型酵素の代わりの多くの適用に使用されうる。本明細書記載のように、「対 応する」酵素は変異体PTPと同じもの(例えば、PTP−PESTおよびPT P−PEST D199A)、または変異体PTPと異なるが、変異体PTPと 同じ基質を認識するものである。 さらに本明細書記載の変異体PTPsは、本明細書記載の変異体PTP、また はそのチロシンリン酸化基質への結合能力を保持している変異体PTPの機能部 分を患者に導入するおよび患者の中で該変異体PTPを発現する遺伝子治療など により、チロシンリン酸化タンパク質の活性を治療的に減少するために使用され うる。該変異体PTPは、通常生産される野生型PTPと部分的にもしくは全体 的に置き換えるまたは野生型PTPの基質への結合に競合する。例えば、特定の 疾患または不調に係わる、特別のチロシンリン酸化タンパク質(プロテインチロ シンキナーゼなど)を同定しうる。本発明の選択されたチロシンリン酸化タンパ ク質を脱リン酸化する作用をする少なくとも1種のPTPを本明細書記載の方法 により同定しうる。チロシンリン酸化基質とタイアップまたは結合するため、P TPの野生型または変異体型を処置の必要な患者に投与し、それによりリン酸化 タンパク質の機能を阻害または減少することができる。好ましい態様として、野 生型酵素の過剰発現に関連した細胞毒性効果を減少させるために、変異体PTP を野生型酵素の代わりに投与する。遺伝子治療の手法は、当該分野に公知であり (アンダーソン(Anderson)らに付与された米国特許第5,399,3 46号明細書を参照のこと)、当該分野に公知の方法により改変し、本発明の特 別の変異体および野生型PTPsを適切に発現されうる。 本発明は、さらに、PTPとそのリン酸化基質との相互作用を変える、例えば 、促進するまたは阻害する試薬を同定するためのアッセイに関する。これらのア ッセイにより同定された試薬は、PTP活性のアゴニスト(例えば、PTPの活 性を促進または増加させる試薬等)またはアンタゴニスト(例えば、PTPの活 性を阻害または減少させる試薬等)であってもよい。該試薬は、内因性の生理学 的物質であってもよく、あるいは小さい有機分子を含む、天然または合成薬物で あってもよい。 例えば、PTPのチロシンリン酸化基質を本明細書記載の方法により同定する ことができる。野生型PTPを用いる酵素活性アッセイは、試験対象の試薬の存 在下に行なうことができ、酵素活性の得られた量を試験対象の試薬の非存在下の 酵素活性の量と比較することができる。酵素の活性アッセイは当該分野に公知で ある;例えば、チロシンリン酸化32P−標識基質を用いるPTP活性のアッセイ は、フリント(Flint)ら〔EMBO J. 12:1937−1946( 1993)〕に記載される。試験対象の試薬の存在下の酵素活性の減少は、該試 薬がPTPとその基質の相互作用を阻害することを示唆する。逆に、試験対象の 試薬の存在下の酵素活性の増加は、該試薬がPTPとその基質間の相互作用を促 進させることを示す。 一方、競合結合アッセイは、試験対象の試薬の存在下に変異PTPを使用する ことにより行なうことができ、生じた変異PTPとその基質との結合の程度を試 験対象の試薬の非存在下における結合の程度と比較することができる。競合結合 アッセイは当該分野に公知である;例えば、パウソン(Pawson)に付与さ れた米国特許第5,352,660明細書は、本発明における使用に適切な方法 を記載する。試験対象の試薬の存在下の結合の程度の減少は、PTPとその基質 間の相互作用を阻害することを示す。逆に、試験対象の試薬の存在下の結合の程 度の増加は、PTPとその基質間の相互作用を促進させることを示唆する。 本発明によれば、ソンギャン(Songyang)らの方法〔Nature 373 :536−539(1995);Cell 72:767−778(19 93)〕によるペプチドライブラリー由来の変異PTPsで同定されたチロシン リン酸化ペプチドを、本明細書において競合結合アッセイの完全なチロシンリン 酸化タンパク質の代わりに用いうる。 さらに本発明は、不変なアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化を引き 起こさないが、1分あたり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じさ せるアミノ酸(例えば、アラニン残基)に置換されるPTPを含有した医薬組成 物に関する。例えば、本発明のPTPを、生理学的に許容されうる媒質で処方し て、医薬組成物を調製することができる。具体的な生理学的媒質は、限定されな いが、水、緩衝化生理学的食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピ レングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびデキストロース溶液 が含まれてもよい。選択した媒質における1または複数の活性成分の至適濃度は 、医薬化学者に良く熟知された手法により、経験的に決めることができ、かつ最 終的な所望の医薬処方に依存するであろう。処置の部位への外来PTPsの導入 方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、 および鼻腔内が挙げられる。さらに、他の適切な導入方法としては、再装薬可能 なまたは生分解可能なデバイスおよび除放性の重合体のデバイスを含むことがで きる。さらに、本発明の医薬組成物は、他の試薬との組み合わせの治療法の一部 としても投与しうる。 下記実施例は本発明を説明する目的のために提示されるが、本発明の範囲を限 定することを意図したものではない。本明細書に述べられた全ての参考文献の教 示は、その全てにおいて参照により本明細書に取り込まれる。実施例 試薬と方法 以下は、本明細書記載の研究に用いられた試薬と方法の記載である。変異体PTPタンパク質の生成、発現および精製 PTP−PEST(D199A,C231S)およびPTP1B(D181A ,C215S)の触媒ドメイン内の点変異を、Muta−GeneTMイン・ビト ロ ミュータジェネシスキット(Bio−Rad,Richmond,CA)を 用いた部位特異的変異により導入した。ついで、要求される点変異を含む領域を 適当な発現ベクター内の野生型配列と交換し、置換した変異領域を、その全部に 渡ってシークエンスし、さらなる変異がないことを証明した。 全長のPTP−PESTタンパク質(野生型、およびAsp199からAla またはCys231からSerへの変異を含む変異体タンパク質)ならびに野生 型PTP−PEST触媒ドメイン(アミノ酸1−305)を、組み換えバキュロ ウイルス(BaculoGoldTM,Pharmingen,San Dieg o,CA)を用いて、Sf9細胞で発現し、ガートン(Garton)およびト ンクス(Tonks)〔EMBO J. 13:3763−3771(1994 )〕に記載のように精製した。さらに、末端がない野生型およびPTP−PES Tのアミノ酸残基1−305を含有する変異体PTP−PESTタンパク質をp GEXベクター(Pharmacia Biotech Inc.,Uppsa la,Sweden)のGSTの下流にフレームを合わせてPTP−PESTD NAのサブクローニングの後、E.coli内でGST融合タンパク質として発 現した。適当なベクターで形質転換した25mlのE.coliを対数増殖(l og)期(OD600約0.5)まで生育させた。ついで融合タンパク質発現を0 .2mMイソプロピル−1−チオ−b−D−ガラクトピラノシドの添加により誘 導し、該菌体を2−4時間30℃で生育させた。菌体を遠心分離により集め、5 0mM Tris−HCl、pH7.4、5mM EDTA、1mM PMSF 、1mM ベンズアミジン、5mg/ml ロイペプシン、5mg/ml アプ ロチニン、0.1% Triton X−100および150mM NaClを 含む3ml緩衝液中50mg/mlリゾチームとインキュベートし、ついで、音 波処理(3×10秒)により溶解した。遠心分離(300,000×gで、20 分)により不溶性物質の除去を行なったのち、融合タンパク質を100mlグル タチオン−セファロースビーズ(Pharmacia Biotech Inc .,Uppsala,Sweden)とともに4℃で30分間のインキュベーシ ョンにより分離し、ついで該ビーズを遠心分離により集め、緩衝液A(20mM Tris−HCl,pH7.4,1mM EDTA,1mM ベンズアミジン ,1mg/ml ロイペプシン,1mg/ml アプロチニン,10% ギリセ ロール、1% Triton X−100および100mM NaCl)で3回 洗浄した。この手法により、本質的に均一の融合タンパク質を1mgタンパ ク質/mlグルタチオン−セファロースビーズの濃度で得た。アミノ酸1−32 1を含有するPTP1Bタンパク質(野生型および変異体型)をE.coli内 で発現し、バーフォード(Barford)ら〔J.Mol.Biol. 23 9 :726−730(1994)〕に記載のように均一まで精製した。細胞培養、トランスフェクション、ライゼートの調製および分画 HeLaおよびCOS細胞を、5%ウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ の改変イーグル培地(DMEM)で生育した;Wi28、C2C12およびMv Lu細胞を10%FBSを含むDMEMで生育した;293細胞を10%子ウシ 血清を含むDMEMで生育した;MCF10A細胞を5%ウマ血清、20ng/ ml表皮成長因子、10mg/mlインシュリン、0.5mg/mlハイドロコ ルチゾンおよび0.25mg/mlファンギゾンを含む50%DMEM、50% ハムのF−12で生育した。さらに全ての培地は、ペニシリンおよびストレプト ンマイシンをそれぞれ100U/mlおよび100mg/mlで含み、全細胞を 37℃で生育した。カルシウムホスフェート−媒介トランスフェクションを用い 、野生型および変異体PTP−PESTタンパク質をコードするcDNAをCO S細胞に導入した。これらは、発現がアデノウイルス主要後期プロモーターによ り制御されるプラスミドPMT2にサブクローン化されたPTP−PEST c DNAによりコードされた;各10cmプレートの細胞のトランスフェクション のために20mgのDNAを用いた。PTP−PEST構築物の発現のレベルは 全ケースで類似していた。 細胞溶解に先立ち、70−90%コンフルエント培養細胞を0.1mM過バナ ジウム酸塩(50mM メタバナジウム酸ナトリウム(NaVO3)および50 mM H2O2を含む20mlの新鮮な溶液を10ml培地に添加した)で30分 間処理した。恐らくバナジウム酸塩による細胞内PTPの阻害により、過バナジ ウム酸塩とH2O2による細胞の処理は、ホスホチロシンレベルにおける共同 的増加を導く。過バナジウム酸塩とH2O2との共同作用により、バナジウム酸塩 自体と比較した場合、細胞内に得られた酸化バナジウム酸(過バナジウム酸)の 向上した蓄積の結果が以前示唆されている〔ヘッフェッツ(Heffetz)ら ,J.Biol.Chem.,265:2896−2902(1990)〕。細 胞ライゼートの調製の間、PTP作用におけるバナジウム酸の阻害効果が失われ るように希釈がおこることに注意することが重要である。未処理の細胞は、実際 に検出できないレベルのホスホチロシンを含んだが(データ未開示)、過バナジ ウム酸塩処理は、全細胞型において、少なくとも50の顕著なホスホチロシンタ ンパク質バンドの出現に帰した。 細胞のPTPを不可逆的に阻害するために、5mMヨード酢酸を含む緩衝液A 中で細胞を溶解した。4℃で30分間のインキュベーションののち、10mM DTTを添加し、いかなる未反応のヨード酢酸をも不活化した。ついで不溶性物 質を20分間300,000×gの遠心分離により除去した。−70℃での長期 間(数ヶ月)保存の間および外来の添加したPTPsの非存在下での延長した( 少なくとも20時間)4℃のインキュベーションの間、得られたライゼートは、 それらのホスホチロシン含有量に関して安定であった。 MonoQ FPLCカラム(Pharmacia)を用いて、アニオン交換 クロマトグラフィーで過バナジウム酸−処理HeLa細胞ライゼートを分画した 。ローディングに先立ち、試料(緩衝液A中、3mg/mlで50mgの全タン パク質)を3倍量の緩衝液B(20mM tris−HCl,pH7.4,1m M EDTA,1mM ベンズアミジン,1mg/mlロイペプシン,1mg/ ml アプロチニンおよび0.1% Triton X−100)で希釈した。 タンパク質を1ml/分の流速で緩衝液B中0−0.5M NaClのリニアグ ラジェントで20画分(1ml画分体積)にわたって溶出し、ついで緩衝液B中 0.5−1.0M NaClの2次グラジエントを5画分にわたって行なった。 ホスホチロシン含有タンパク質を抗ホスホチロシンイムノブロッティングにより 、フラクション7−21内で検出した。細胞を過バナジウム酸塩で処理しないこ とを除いて、同じ手法をPTP1Bで行なった。脱リン酸化反応 チロシンリン酸化タンパク質を含む過バナジウム酸塩処理HeLa細胞のライ ゼート(1−2mgタンパク質/ml)を2nMの濃度の精製した活性PTPs の非存在下または存在下に氷上でインキュベートした。脱リン酸化をSDS−P AGE試料緩衝液へアリコート(30mgタンパク質)を除去することにより終 了し、脱リン酸化の程度をモノクローナル抗体G104を用いたイムノブロッテ ィングにより決定した。チロシンリン酸化32P−標識RCM−リゾチームを基質 として用いたPTP活性のアッセイをフリント(Flint)ら〔EMBO J . 12:1937−1946(1993)〕記載のように行なった。抗体およびイムノブロッティング PTP−PESTモノクローナル抗体AG25をバキュロウイルス−発現精製 全長PTP−PESTに対して生じさせた。抗原として、最初にカンプス(Ka mps)およびセフトン(Sefton)〔Oncogene 2:305−3 15,(1998)〕に記載された方法でカギアナカサガイのヘモシアニン存在 下に1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドで1: 1:1の割合で重合させたホスホチロシン、アラニンおよびグリシンを用いて、 抗ホスホチロシンモノクローナル抗体G104を生成した。p130casモノク ローナル抗体はトランスダクション ラボラトリーズ(Transductio n Laboratories)(Lexington,Ky)製であった。P TP1Bに対するモノクローナル抗体FG6はデビッド・ヒル(David H ill)博士〔Calbiochem Oncogene Reseach P roducts,Cambridge,MA)により提供された。イムノブロッ ティングによるタンパク質の視覚化は、HRP−コンジュゲート2次抗体(Am ersham Life Science Inc.,Arlington H eights,I1)とスーパーシグナルTMCL−HRP基質システム(Pie rce,Rockford,Il)とを用いて、エンハンスドケミルミネッセン ス(ECL)により達成された。免疫沈降および基質トラップ 化学クロスリンキング試薬であるジメチルピメルイミデート〔シュナイダー( Schneider)ら,J.Biol.Chem. 257:10766−1 0769(1982)〕を用いたプロテインA−セファロースビーズ(Phar macia Biotech Inc.,Uppsala,Sweden)への モノクローナル抗体AG25の共有結合的なカップリングを行なった後、トラン スフェクトCOS細胞由来のPTP−PESTの免疫沈降を行なった。まず、1 mg/mlビーズ体積の濃度でプロテインA−セファロースに抗体を結合させ、 ついで未結合物質を0.2M ホウ酸ナトリウム、pH 9で3回洗浄により除 去した。0.2M ホウ酸ナトリウム、pH 9中20mM ジメチルピメルイ ミデートの存在下、室温で30分間のインキュベーションにより、共有結合的な カップリングを達成した。ついで、ビーズを1時間、0.2M エタノールアミ ン,pH8の過剰量でインキュベートして、いかなる未反応クロスーリンカーを もブロックし、4℃での保存に先立ち、PBSで3回洗浄した。10mlのAG 25ビーズを用い、約0.375mgのタンパク質を含むライゼート由来のトラ ンスフェクトPTP−PESTを沈澱させた。 種々のPTPアフィニティーマトリックスを用いて基質トラップを行なった。 全長のPTP−PESTマトリックスは、精製バキュロウイルス−発現PTP− PESTタンパク質を結合した共有結合的にカップリングしたAG25−プロテ インA−セファロースビーズを利用した。AG25ビーズのアリコート(10m l)を2時間4℃で5mgの精製PTP−PEST(野生型または変異体型)の 存在下に100mlの緩衝液Aでインキュベートした;ついで、未結合のPTP −PESTを1ml緩衝液Aで3回洗浄することにより除去した。得られたPT P−PEST−AG25−プロテインA−セファロースビーズは、10mlアリ コートあたり約2mgのPTP−PESTを含んだ。さらに基質トラップを、細 菌で発現した、PTP−PESTの触媒ドメインを含むGST融合タンパク質に 結合したグルタチオン−セファロースで行なった。 さらに、PTP1Bを基質トラップ実験に使用した。この場合、モノクロナー ル抗体FG6をクロスリンカーの非存在下にプロテインA−セファロースと予め カップリングし(2mg抗体/10mlビーズ)、ついで、精製したPTP1B タンパク質を過剰に添加し、4℃で2時間インキュベートした。未結合のPTP 1Bの除去ののち、10mlビーズは約2mgのPTP1Bを含んだ。 過バナジウム酸塩−処理細胞ライゼート、またはカラムフラクションは、基質 トラップ実験のためのホスホチロシン含有タンパク質の供給源として使用した。 一般的に、0.5ml緩衝液A(5mMヨード酢酸,10mM DTTを含む) 中0.25−0.5mgのタンパク質を含むライゼートを約2mgの適当なPT Pタンパク質を含む10mlのアフィニティーマトリックスの存在下、4℃で2 時間インキュベートした。ついで、未結合のタンパク質を1ml緩衝液Aで3回 洗浄することにより試料から除去し、結合物質を50mlのSDS−PAGE試 料緩衝液を添加した後、95℃で5分間の加熱により集めた;ついで、ビーズに 結合したタンパク質はSDS−PAGE後、イムノブロッティングすることによ り解析した。結果 下記に、前記のように行なわれた本明細書記載の研究の結果を詳述する。PTP1Bおよびp210 bcr:abl 慢性骨髄性白血病(CML)は、PTKをコードする染色体9上のc−Abl プロト−オンコジーンが染色体22上のbcr遺伝子に結合するようになる、フ ィラデルフィア染色体によりキャラクタライズされる造血幹細胞のクローン異常 である。このことは、PTK活性がc−Ablの活性に比較して促進されるbc r:able融合タンパク質であるp210 bcr:ablの生成に帰する。 現在のデータは、この細胞遺伝学的な異常性がCMLにおける初期かつ単独の原 因となる事象であることを示唆する。p210 bcr:ablの発現は、CM Lの特徴である造血幹細胞の異常な成熟に起因するチロシンリン酸化の異常なパ ターンを生じる。 PTP1B mRNAおよびタンパク質の発現は、Rat1、Mo7およびB aF3細胞におけるp210 bcr:abl発現の結果として促進される。酵 素タンパク質における変化と比例した、PTP1B活性における変化も観察され た。これらの変化は、PTP1Bに特異的であり、密接に関連したホモログ(6 5%の同一性)TC−PTPまたは、SHP−1、LSHP−2およびPTP− PESTを含む他の試験されたPTPsには見られなかった。さらに、CML患 者由来のPh+ B−リンパ系細胞において、同じ患者由来のPh− 細胞と比 較してPTP1Bの発現増加が観察された。 PTP1Bレベルにおける変化は、p210 bcr:ablにより特異的に 誘導され、v−abl、v−src、またはmycなどの他のオンコプロテイン を含む他のPTKsを発現する細胞に見られなかった。Rat1細胞におけるp 210 bcr:ablのリジンからアルギニンへの不活性な変異体型の発現が 、PTP1Bレベルを変えなかったので、p210 bcr:ablのPTK活 性は、PTP1Bの発現増加に必須であった。PTP1Bレベルにおける増加は 、p210 bcr:ablの誘導に対する迅速な応答である。p210 bc r:ablの温度感受性変異体型を発現するBaF3細胞が、PTKに関して許 容される温度へシフトされる場合、PTP1Bレベルは、PTKの活性型の出現 に一致して12〜24時間以内に増加することが観察された。これらの(THe se)データはPTP1Bレベルを変えることが、細胞の長期順応より、むしろ p210 bcr:ablの出現に対する相対的に迅速な応答であることを示す 。 COS細胞における一過性コトランスフェクション実験において、PTP1B は、p210 bcr:ablを脱リン酸化するが、v−ablを脱リン酸化し ない。PTP1B D181A変異体をGST融合タンパク質として発現させ、 精製し、(p210 bcr:ablを過剰発現する)Mo7−p210細胞の ライゼートとインキュベートした場合、変異体PTPとp210 bcr:ab lとの複合体が単離された。対照的に、ライゼートにも存在するチロシンリン酸 化c−ablは変異体PTPと結合しなかった。PTP1Bとp210 bcr :ablとの相互作用は、バナジウム酸によりブロックされ、該相互作用がPT Pの活性部位に関与することを示唆した。 COS細胞における一過性共発現ののち、PTP1B D181Aはp210 bcr:ablと複合体を形成した。初期のデータは、p210 bcr:a blのY177F変異体型がPTP1b D181Aと相互作用しなかったこと を示し、このチロシン残基がPTKにおける結合部位の構成要素であることを示 唆した。p210 bcr:ablにおけるこのチロシン残基は、イン・ビボで リン酸化され、かつGRB2に対するドッキング部位として役に立つことを示し た。p210 bcr:ablにおけるpTyrとGRB2のSH2ドメインに おける直接の相互作用は、PTKの形質転換活性に必須である。PTP1B D 181Aとp210 bcr:ablとの相互作用は、PTKとGRB2との関 連に干渉する。要約すると、これらのデータはp210 bcr:ablがPT P1Bの生理学的基質であり、PTP1Bがイン・ビボでオンコプロテインPT Kのアンタゴニストとして機能するであろうことを示唆する。RCMLに対する 37kDa PTP1B変異体のVmax、KmおよびKcatを図2に示す。PTP1BおよびEGFレセプター COS細胞におけるPTP1B D181Aの発現は、180kDaタンパク 質ならびに120および70kDaのタンパク質におけるチロシル残基の促進さ れたリン酸化を導く。GST−PTP1B D181A融合タンパク質をCOS 細胞で発現し、グルタチオン−セファロースで沈澱した場合、180kDa、な らびにより少量のp120およびp70を共沈殿した。該p180タンパク質を イムノブロッティングにより、上皮成長因子(EGF)レセプターとして同定し た。該p120およびp70タンパク質の同定は明らかではない;しかしながら 、後者はsrc、p62またはパキシリンではない。 COS細胞におけるPTP1B D181Aの発現は、そのリガンドであるE GFの非存在下にEGFレセプターのチロシンリン酸化を誘導し、変異体PTP がインタクト細胞において、その効果を発揮し、溶解後には発揮していないこと を示唆する。均等なD199A PTP−PEST変異体はEGFレセプターと 相互作用せす、この基質相互作用の特異性を示唆する。 EGFレセプターの自己リン酸化はPTP1B D181Aとの相互作用のた めに要求される。キナーゼが作用しないまたは自己リン酸化部位が欠失されたレ セプターの変異体はPTP1B D181Aと相互作用しない。v−src発現 細胞において、過度のチロシンリン酸化タンパク質が観察されたが、EGFレセ プターのリン酸化は検出されなかった。これらの条件下で、PTP1B D18 1Aは、70kDaチロシンリン酸化タンパク質に優勢に結合した。 本研究の結果、PTP1Bは、おそらく乳癌を含む多くの疾患の経路を含む、 EGF誘導シグナル伝達経路を調節することができると思われる。PTP−PESTによる130kDaホスホチロシン含有タンパク質の選択的な 脱リン酸化 イン・ビトロのPTP−PESTの基質特異性を調べるため、過バナジウム酸 塩処理HeLa細胞ライゼートのアリコートを氷上でインキュベートし、モノク ローナル抗ホスホチロシン抗体G104を用いて細胞ライゼートのイムノブロッ ティングにより判断されたように50−100の異なるホスホチロシン含有タン パク質を生じた。ついで、精製全長PTP−PEST(組換えバキュロウイルス を用いてSf9細胞で発現した)、PTP−PEST触媒ドメイン、またはPT P1B触媒ドメイン(37kDa型)をライゼートに添加し、アリコートを種々 の時点で除去し、SDS−PAGE後、抗ホスホチロシンイムノブロッティング により解析した。 他のすべてのバンドの強度は、60分のPTP−PESTとのインキュベーシ ョン後でさえ、基本的には変化しなかったが、驚くべきことに、顕著な130k Daホスホチロシンバンド(p130)が、10分以内にPTP−PESTによ り選択的に脱リン酸化された。より高濃度(100倍を超える)のPTP−PE STとの長いインキュベーションは、ライゼートから全ホスホチロシンバンドの 完全な除去に帰した。しかしながら、試験した全条件下で、p130が他のすべ ての存在するバンドよりも迅速に脱リン酸化されることが見出された。 さらに、PTP−PESTによるp130の選択的な脱リン酸化は、基本的に 酵素の触媒ドメインのみを含むホスファターゼの末端型(アミノ酸残基1−30 5)を用いて観察された。この結果は、この解析でPTP−PESTにより呈示 された厳密な基質選択性がホスファターゼ触媒ドメインの本質的な性質であるこ とを示唆し、一方C−末端の500アミノ酸残基は酵素の基質特異性への認識で きる影響をほとんどもたない。 PTP−PESTとp130との相互作用の特異性が、脱リン酸化反応におけ るPTP1Bの触媒ドメイン(アミノ酸残基1−321)を用いて扱われた。P TP−PESTに使用された濃度と同様のモル濃度で添加した場合、PTP1B は、完全かつ迅速に(15分以内に)過バナジウム酸塩処理HeLaライゼート に存在するホスホチロシン含有タンパク質の多くを脱リン酸化することが見出さ れた。さらに、p130の脱リン酸化のタイムコースは、PTP1Bにより脱リ ン酸化された他のホスホチロシンのタイムコースよりも、有意により迅速ではな かった。しかしながら、これらのイン・ビトロでの脱リン酸化の結果は、複数の 理由のため、イン・ビボでのPTPB1の基質特異性の本当の説明ではないこと を注意すべきである。まず、単離された触媒サブユニットのみを、この特別実験 に用いた。さらに、イン・ビボの基質特異性は、PTPと潜在的な基質の両方の 細胞内分布によって、かなり異なるであろう。すなわち、イン・ビトロでの脱リ ン酸化実験は、PTPは脱リン酸化することができるが、イン・ビボで接近する ことができないであろう基質を利用するであろう。異なる生理学的な情況に依存 して基質特異性が相違する現象は、このデータとPTP1Bが3つのタンパク質 のみに特異性を示した前記イン・ビボでのPTP1Bの研究との比較により説明 される。p130casとしてのホスホチロシン含有p130タンパク質の基質トラップに よる同定 過バナジウム酸塩処理HeLa細胞ライゼートをアニオン交換クロマトグラフ ィーで分画し、画分のアリコートをSDS−PAGE後、抗ホスホチロシンまた は抗p130cas抗体とのイムノブロッティングにより解析した。ついで、解析 した全試料のアリコートを、共有結合的にカップリングしたプロテインA−セフ ァロース/抗体(AG25)ビーズと結合した、Asp199をアラニンに改変 した全長PTP−PEST(D199A)を含有した、基質トラップPTP−P EST変異体を含むアフィニティーマトリックスとインキュベートした。ついで 、PTP−PESTに関連したタンパク質を、SDS−PAGE後、抗ホスホチ ロシンまたは抗p130cas抗体とのイムノブロッティングにより解析した。 カラム画分の抗ホスホチロシンイムノブロッティングにより、p130ホスホ チロシンタンパク質バンドが画分11−14(約0.3M NaCl)で1つの ピークとして溶出したことが示された。HeLaライゼートにおけるチロシンリ ン酸化p130の発生量の観点から、おそらくp130が以前に同定されたホス ホチロシン含有130kDaタンパク質を示すであろうと思われる。複数の潜在 的な候補が、文献で同定され、フォーカルアドヒーションキナーゼp125FAK 、ras−GAP、gp130およびp130casを含む。これらの候補のなか で、p130casは、v−crk〔マイヤー(Mayer)およびハナフサ(H anafusa),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2 638−2642(1990);マイヤー(Mayer)ら,Nature 3 32 :272−275(1988)〕およびsrc〔カンナー(Kanner) ,Proc.Nat1.Acad.Sci.USA 87:3328−3332 (1990);レイノルズ(Reynolds)ら,Mol.Cell.Bio l. 9:3951−3958(1989)〕形質転換繊維芽細胞、インテグリ ン媒介細胞接着〔ノジマ(Nojima)ら,J.Biol.Chem. 27 0 :15398−15402(1995);ペッチ(Petch)ら,J.Ce ll Science 108:1371−1379(1995);ブオリ(V uori)およびルオスラーチ(Ruoslahti),J.Biol.Che m. 270:22259−22262(1995)〕およびPDGF刺激3T 3細胞〔ランキン(Rankin)およびロゼンガート(Rozengurt) ,J.Biol.Chem. 269:704−710(1994)〕を含む広 く多様な系で特定の顕著なホスホチロシンバンドとして同定された。 したがって、p130casに対応するp130ホスホチロシンバンドをp13 0casに対する抗体を用いてMonoQ画分をイムノブロットすることにより試 験した。p130casに対応する130kDaバンドはp130チロシンリン酸 化バンドとして同じ画分に溶出し、類似のみかけの分子量を呈示し、それらが同 じタンパク質を示すであろうと示唆される。さらに、これらの画分由来の免疫沈 降したp130casは、チロシル残基でリン酸化されることが見出された。 PTP−PEST(D199A)の変異体型は、部位特異的変異導入により生 成され、該変異体酵素は組み換えバキュロウイルスを用いて発現後、精製された 。基質として、チロシンリン酸化RCM−リゾチームを用いてアッセイした場合 、精製変異体酵素は、野生型酵素の比活性〔ガートン(Garton)およびト ンクス(Tonks)ら,未公開データ〕よりも約10,000倍低い比活性を 示した。この精製タンパク質を、プロテインA−セファロースビーズに共有結合 的にカップリングした抗PTP−PESTモノクローナル抗体(AG25)を含 有したアフィニティーマトリックスと結合し、ついで各MonoQ画分とインキ ュベートした。インキュベーション45分後、変異体PTP−PESTに関連す るタンパク質を遠心分離により回収し、ビーズを洗浄し、SDS−PAGE試料 緩衝液を添加した。ついで、関連タンパク質をモノクローナル抗ホスホチロシン 抗体G104を用いてイムノブロッティングにより解析した。 変異体PTP−PESTタンパク質は、p130casと一致する分子量(13 0kDa)およびMonoQ溶出画分(画分11−14)の単一のホスホチロシ ン含有タンパク質と関連することが見出された。p130cas抗体を用いたPT P−PEST関連タンパク質のイムノブロッティングは、変異体PTP−PES Tによりトラップされた130kDaチロシンリン酸化タンパク質が実際にp1 30casであることを示した。さらに、これらのデータは、p130casが潜在的 に生理学的に関連するPTP−PESTの基質であるという仮説を支持する。チロシンリン酸化p130casとの特異的な相互作用に関するPTP−PEST の構造的特徴の決定 さらに、PTP−PESTの種々の精製した変異体型を用いた基質トラップ実 験で、過バナジウム酸塩処理HeLaライゼート由来のタンパク質を沈澱させて 、p130casとPTP−PESTとの相互作用を調べた。複数のアフィニティ ーマトリックスを過バナジウム酸処理HeLa細胞ライゼートとインキュベート し、ブーズに関連するタンパク質をSDS−PAGE後、抗ホスホチロシンまた は抗p130cas抗体でイムノブロッティングすることにより解析した。 野生型全長ホスファターゼは、チロシンリン酸化p130casとの安定な関連 ができないことが見出されたが、一方、PTP−PEST(D199A)変異体 タンパク質と活性部位システイン残基を欠く(C231S)変異体の両方がライ ゼート由来のp130casを特異的に沈澱した。野生型ホスファターゼがチロシ ンリン酸化p130casを沈澱させることができないことは、p130casがPT P−PESTにより脱リン酸化されてすぐ終わるであろうPTP−PESTとチ ロシンリン酸化p130casとの正常の相互作用の一過性の性質をおそらく反映 するであろう。 PTP−PESTの末端の500アミノ酸は、srcホモロジー−3(SH3 )ドメイン結合配列と似た複数のプロリン−リッチ領域を含むので、PTP−P ESTとp130casとの相互作用の特異性がこれらのセグメントのp130cas のSH3ドメインとの関連にある程度依存するであろうことがもっともらしい。 したがって、PTP−PESTとp130casとの観察された特異的な相互作用 におけるPTP−PESTのC−末端セグメントの可能な貢献は、野生型と変異 体(D199A)型との両方において、PTP−PESTの触媒ドメインのみを 含むGST融合タンパク質を用いたさらなる基質トラップ実験で扱われた。野生 型融合タンパク質とGST単独の両方がp130casを沈澱しなかったが、GS Tと融合したPTP−PESTの変異体触媒ドメインは、p130casホスホチ ロシンバンドを特異的に沈澱することが見出された。したがって、これらの実験 で観察されたPTP−PESTとp130casとの特異的な相互作用は、 PTP−PESTの触媒ドメインの固有の性質であるように思われ、イン・ビト ロでのp130casの脱リン酸化に対して活性なPTP−PEST触媒ドメイン の観察された選択性を推定する。変異体PTP−PESTとチロシンリン酸化p130casとの相互作用の特異性 過バナジウム酸塩処理HeLa細胞ライゼートにおけるチロシンリン酸化p1 30casの相対的な豊富さの観点から、PTP−PEST不活性変異体タンパク 質とp130casとの観察された選択的結合が、酵素に指示された(PTP−P ESTの本来の基質選択性を反映する)よりむしろ基質に指示された(ライゼー トに存在する他のホスホチロシン含有タンパク質と比較してこの潜在的な基質の 豊富さを反映する)可能性が考えられた;この可能性が2つの方法で扱われた。 まず、PTP1Bの触媒ドメインの不活性な変異体型を用いて、過バナジウム酸 塩処理HeLaライゼート由来の酵素の潜在的な基質をトラップした。再び、P TP1Bホスファターゼドメイン(PTP−PESTのものと類似したCysま たはAsp変異を含有した)の変異体改変体は、多くのチロシンリン酸化タンパ ク質と関連したが、野生型ホスファターゼがいかなるホスホチロシン含有タンパ ク質との安定な相互作用をできないことが見出された。これは、類似の効力を有 するライゼート由来の全ホスホチロシン含有タンパク質を基本的に沈澱するよう に思われるPTP1Bのアスパラギン酸変異体(D181A)に対して特に明ら かである。これらのデータは、全PTPの触媒ドメインにより共有された特徴よ りもむしろPTP−PEST触媒ドメインに独特の性質であると思われるPTP −PESTとp130casとの相互作用の特別の性質を強調する。 さらに、PTP−PESTとp130casとの相互作用の特異性は、複数の異 なる細胞株(Wi38、293、COS、MCF10A、C2C12、MvLu )の過バナジウム酸塩処理後に扱い、それぞれの場合におけるチロシンリン酸化 タンパク質の異なる整列を生じた;得られたライゼートは、SDS−PAGE後 、抗ホスホチロシンイムノブロッティングにより解析した。アリコートをPTP −PEST(D199A)アフィニティーマトリックスまたは対照マトリックス とインキュベートし、PTP−PESTと関連するチロシンリン酸化タンパク質 は、SDS−PAGEと前記抗ホスホチロシンまたは抗p130cas抗体でのイ ムノブロッティングで解析した。 それぞれの場合、アフィニティーマトリックス単独ではいかなるホスホチロシ ン含有タンパク質をも沈澱しないが、D199A変異体PTP−PESTタンパ ク質は、ことなる細胞株において、120〜150kDaの間の見かけの分子量 を有する1つの幅広いホスホチロシンバンドを沈澱した。 p130cas抗体との沈殿物のイムノブロッティングは、全ての細胞ライゼー ト由来の沈澱したタンパク質がp130casに対応したことを表した;異なる細 胞株間の観察された分子量の多様性は、おそらくp130casの分子量の種間の 相違または異なる一方のスプライスされた型の発現のいずれかを反映するだろう 〔サカイ(Sakai)ら,EMBO J. 13:3748−3756(19 94)〕。 PTP−PEST沈殿物におけるチロシンリン酸化p130casの相対的な発 生量は、ライゼートにおけるp13oca’タンパク質の発生量とおおよそ関連す るように思われる(データ未開示)。驚くべきことに、ライゼート中のチロシン リン酸化p130casの発生量にもかかわらず、ほとんどp130casタンパク質 を含まないが、他の過剰なチロシンリン酸化タンパク質の広い多様性を呈示した 293細胞ライゼートにおいてさえ、p130casは、不変に、沈殿物中の唯一 のホスホチロシン含有タンパク質であった。同様に、(ライゼートの抗ホスホチ ロシンイムノブロッティングにより検出できない量で、チロシンリン酸化p13 0casを含む)過バナジウム酸塩処理293細胞のライゼートを活性なPTP− PESTとインキュベートした場合、いかなるホスホチロシンバンドの目に見え る脱リン酸化をも生じなかった〔ガートン(Garton)およびトンクス( Tonks),未公開データ〕。これらの結果は、PTP−PESTのp130cas に対するアフィニティーが存在するいかなる他の基質に対するよりも実質的 に大きいことを示し、さらに、PTP−PESTのp130casに対する驚くべ き基質選択性を強調する。変異体PTP−PESTに関連するチロシンリン酸化p130casのバナジウム 酸塩阻害 本研究の一貫した観察は、不活性な変異体PTP−PESTとは対照的に、野 生型酵素がチロシンリン酸化p130casとの安定な複合体に関連せず、観察さ れた関連が活性な部位特異的であることを示した。この可能性を調べるため、変 異体PTP−PEST(D199A)を、過バナジウム酸塩処理HeLa細胞ラ イゼートの添加に先立ち、種々の濃度でPTP阻害剤バナジウム酸塩とインキュ ベートした。ついで、p130casのPTP−PESTとの関連の程度を解析し た。共有結合的にカップリングしたプロテインA−セファロース/抗体(AG2 5)ビーズと結合した全長PTP−PEST(D199A)を含有したPTP- PESTアフィニティーマトリックスを、様々に変化させた濃度のオルトバナジ ウム酸ナトリウムの存在下に氷上で10分間インキュベートした。ついで試料を アリコートの過バナジウム酸塩処理HeLa細胞ライゼートでインキュベートし た;関連タンパク質をSDS−PAGEおよび抗ホスホチロシンまたは抗p13 0cas抗体とのイムノブロッティングで解析した。さらに、野生型PTP−PE STの活性をチロシンリン酸化32P標識RCM−リゾチームを基質として用いて 同じ条件下に決定した。 関連は、野生型PTP−PESTのバナジウム酸塩阻害の濃度依存性と同様の 濃度依存性で、バナジウム酸塩により強く破壊されることが見出され、完全な破 壊は10mMバナジウム酸塩で観察された。バナジウム酸塩によるPTP阻害は 、おそらくバナジウム酸と酵素の活性部位システイン残基との直接の相互作用に 起因するので〔デニュ(Denu)ら,Proc.Natl.Acad.Sci .USA 93:2493−2498(1996)〕、この結果は、変異体PT P−PESTとチロシンリン酸化p130casとの安定な関連がPTP−PES Tの中の活性部位残基、具体的には活性部位システイン残基とp130cas内の ホスホチロシン部分との直接の相互作用により仲介されるという仮説を支持する 。COS細胞中における内因性p130casとトランスフェクト変異体PTP−P ESTとの関連 前記記載の研究はp130casがPTP−PESTの潜在的で生理学的に有意 な基質を表わすことを強く示唆する。インタクト細胞において、PTP−PES Tがp130casと相互作用するかどうかを評価するために、COS細胞をPT P−PESTの野生型または変異体型(D199AまたはC215S)をコード するプラスミドでトランスフェクトした。溶解に30分先立ち、過バナジウム酸 塩で該細胞を処理し、PTP−PESTタンパク質を免疫沈降させ、得られた沈 降物の抗ホスホチロシンイムノブロッティングにより関連チロシンリン酸化タン パク質を解析した。さらに、ライゼートを共有結合的にカップリングしたプロテ インA−セファロース/抗PTP−PEST(AG25)ビーズとインキュベー トし、関連タンパク質をSDS−PAGEと抗ホスホチロシン抗体でのイムノブ ロッティングとで解析した。 これらの条件下で、p130casに対応するホスホチロシン含有バンドは、再 びC231S PTP−PESTタンパク質と関連する能力に特有であり、p1 30casが多くの別の可能な基質の存在下での細胞内情況において基質としてP TP−PESTにより特異的に選択されうることが示唆された。PTP−PES Tの野生型またはD199A型のいずれも過バナジウム処理COS細胞でのチロ シンリン酸化p130casと安定な相互作用ができなかった。 これらの条件下に野生型およびD199A PTP−PESTの両方のチロシ ンリン酸化p130casとの結合は、p130casのホスホチロシン残基の結合を 効果的に排除する、PTP−PESTの活性部位システイン残基に結合した過バ ナジウム酸の存在により、ほとんど妨げられるようである〔デニュー(Denu )ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:2493−24 98(1996)〕。C231S変異体PTP−PESTが過バナジウム酸の存 在下のp130casとの安定な複合体で会合する能力は、この変異体タンパク質 が過バナジウム酸塩により大きく影響を受けないことを示唆し、バナジウム酸イ オンによるPTPsの阻害の通常段階が、バナジウム酸とPTP活性部位のシス テイン残基のチオレートアニオンとの直接的な相互作用に決定的に依存すること を示唆する。したがって、これらの考察は、完全な活性な部位指向性であると思 われ、それゆえにp130casに対するPTP−PESTの本来の本質的な高度 に限定された基質選択性を反映するPTP−PESTとp130casとの排他的 相互作用の存在へのさらなる支持を与える。 本明細書記載の結果は、PTP−PESTの生理学的に関連した基質としてp 130casに係わる。さらに、広く多様な細胞株におけるPTP−PESTとp 130casとの相互作用の観察されたストリンジェンシーおよび排他性は、他の 有意なPTP−PEST基質が存在するであろう可能性が現時点では除外できな いが、PTP−PESTに対する特有の高度なアフィニティー基質であろうこと を示唆する。特に、過バナジウム酸塩処理細胞が、総ての可能なチロシンリン酸 化タンパク質の完全なスペクトラムを呈示するかどうかは明らかではない;過バ ナジウム酸塩処理が、細胞内では、ある程度まで構成的にリン酸化されるが通常 迅速に脱リン酸化されるタンパク質のチロシンリン酸化における増加にのみ、お そらく帰するであろうため、実際に、これは有りそうにもない。したがって、過 バナジウム酸塩処理細胞から欠如された潜在的な基質は、リガンド刺激レセプタ ーPTKs、最近述べられたカルシウム制御キナーゼPYK2〔レヴ(Lev) ら,Nature 376:737−745(1995)〕などの通常不活性状 態で存在するタンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)の基質を含むであろう。 これらの考察に関わらず、少なくとも100個の異なる潜在的な基質(その多く がおそらく多数のリン酸化の部位を含む)を組み合わせた総数を含むいくつかの 異なる細胞株のライゼートから1つの基質としてp130casを排他的に選択す るPTP−PESTの能力は、PTP−PESTの基質特異性が高度に限定され ることを明らかに示す。 多くの細胞内PTPは、特定の細胞下の位置内での厳格な制限により、それら の基質の利用可能性が限定される;例えば、小胞体の細胞質表面に局在するPT P1B〔フランジョーニ(Frangioni)ら,Cell 68:545− 560(1992)〕およびどちらのオルタナティブスプライス型が発現される かに依存する、核のTCPTP〔ティルマン(Tillman)ら,Mol.C ell.Biol. 14:3030−3040(1994)〕または小胞体に 局在するTCPTP〔ローエンゼン(Lorenzen)ら,J.Cell B iol. 131:631−643(1995)〕が挙げられる。一方、あるP TPsは、高度に制御されるようであり、認めうる活性を示すことができる前の 活性化が要求される。例えば、SH2ドメイン含有PTPs、SHP1およびS HP2は、イン・ビトロで相対的に低い活性を呈示するが、C−末端切断〔ザオ (Zhao)ら,J.Biol.Chem. 268:2816−2820(1 993)〕、一定のリン脂質の付加〔ザオ(Zhao)ら,Proc.Natl .Acad.Sci.USA 90:4251−4255(1993)〕、また は適切なホスホチロシン含有ペプチドのSH2ドメイン媒介結合〔レクライダー (Lechleider)ら,J.Biol.Chem. 268:21478 −21481(1993)〕を含む、複数の機構により有意に活性化されうる。 しかしながら、、PTP−PESTは、イン・ビトロで高い比活性(35,0 00U/mg)を呈示し、細胞内で優勢な(90−95%)可溶性PTPである 〔ガートン(Garton)およびトンクス(Tonks),未公開データ〕; したがって、原則として、細胞質に接近しうるいかなる基質にも潜在的に作用す るであろう。この接近能は、PTP−PESTが本質的に不自然な基質特異性を 有する必要性に一部に従うであろう。多くの他のチロシンリン酸化タンパク質の 存在下に細胞内情況において、変異体PTP−PESTが排他的にp130cas と会合することができるという証明は、それらの基質がPTP−PESTに十分 に接近できるけれども、該酵素の狭い基質特異性が、細胞内のチロシンリン酸化 タンパク質の大部分のリン酸化段階にごくわずかな影響を有するPTP−PES Tに帰するという示唆である。 p130casのチロシンリン酸化のレベルとcrkまたはsrcの異なる型を 発現する細胞における形質転換の程度との一般的な相関関係があるが〔カンナー (Kanner)ら,EMBO J. 10:1689−1698(1991) ;マイヤー(Mayer)およびハナフサ(Hanafusa),J.Viro l. 64:3581−3589(1990)〕、v−crkおよびv−src オンコジーンによる細胞内形質転換におけるp130casの役割は不明である。 さらに、p130casの促進されたチロシンリン酸化も、c−Ha−rasおよ びオルニチンデカルボキシラーゼ過剰発現により形質転換された細胞において観 察されている〔オービネン(Auvinen)ら,Mol.Cell.Biol . 15:6513−6525(1995)〕。これらの細胞におけるp130cas をコードするアンチセンスcDNAの発現は、形質転換された表現型の部分 的な復帰に帰する。これらの観察は、p130casの異常なチロシンリン酸化が 複数の異なる機構により形質転換された細胞の共通の特徴であることおよびp1 30casが形質転換状態の完全な明示に要求されるであろうことを示唆する。し たがって、PTP−PESTによるp130casの脱リン酸化は、多様なオンコ ジーンの形質転換効果を打ち消す潜在的に重要な制御機構である。 p130casのチロシンリン酸化は、細胞該マトリックスタンパク質へのイン テグリン媒介細胞接着後の繊維芽細胞に観察された〔ノジマ(Nojima)ら ,J.Biol.Chem. 270:15398−15402(1995); ペッチ(Petch)ら,J.Cell Science 108:1371− 1379(1995);ブオリ(Vuori)およびルオスラーティ(Ruos lahti),J.Biol.Chem. 270:22259−22262( 1995)〕。これらの条件下に、チロシンリン酸化p130casを優先的に認 識する抗体(4F4)〔カンナー(Kanner)ら,EMBO J. 10: 1689−1698(1991);ペッチ(Petch)ら,J.Cell S cience 108:1371−1379(1995)〕を用いて、リン酸化 p130casがフォーカルアドヘション〔ペッチ(Petch)ら,J.Cel l Science 108:1371−1379(1995)〕に局在される ことが示されたが、一方、分画研究により、非リン酸化p130casの大部分の 正常な細胞局在が細胞質ゾルであることが示された〔サカイ(Sakai)ら,EMBO J. 13:3748−3756(1994)〕。さらに、crk− 形質転換繊維芽細胞において、チロシンリン酸化p130casは不溶性画分にの み検出され〔サカイ(Sakai)ら,EMBO J. 13:3748−37 56(1994)〕、p130casの細胞接着および形質転換の両方が媒介する リン酸化が細胞質ゾルからフォーカルアドヒージョンへのタンパク質の再分布に 関連することを示唆する。 チロシンリン酸化p130casの再分布が、C−末端フォーカルアドヒージョ ン標的ドメインによって構成的にフォーカルアドヒージョンに関連するであろう FAKとの会合により行なわれるであろう〔ヒルデブランド(Hildebra nd),J.Cell Biol. 123:993−1005(1993); シャラー(Schaller)ら,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 89:5192−5196(1992)〕。形質転換細胞と下記のイ ンテグリン媒介細胞接着との両方のフォーカルアドヒージョンにおけるチロシン リン酸化p130casの隔離は細胞のこの領域におけるシグナル伝達現象におけ るp130casの役割を強く示唆する。チロシンリン酸化p130casの再分布の 1つの結果は、豊富なプロテインチロシンキナーゼ活性を含有する細胞の領域へ のp130casの局在化に加えて、おそらく該リン酸化タンパク質が細胞質ゾル のホスファターゼPTP−PESTに相対的に接近できないであろうことである 。これにより、p130casを脱リン酸化することにおけるPTP−PESTの 役割が、p130casの細胞質ゾルプールの適切でないチロシンリン酸化を阻害 することであろうという可能性を生じ、したがって、不適切な細胞の局在におけ るチロシンリン酸化p130casの周辺に集合したシグナル伝達複合体の形成を 阻害する。 複数の分裂促進因子は、潜在的にp130casのチロシンリン酸化を刺激する 。これらはリゾホスファチジン酸〔ゼウファライン(Seufferlein) およびローゼンガート(Roxengurt),J.Biol.Chem. 2 69 :9345−9351(1994)〕、ブラジキニン〔リーブ−ランドバー グ(Leeb−Lundberg)ら,J.Biol.Chem. 269:2 4328−24344(1994)〕、およびボンベシン〔ザシャリー(Zac hary)ら,J.Biol.Chem. 267:19031−19034( 1992)〕などのヘテロ三量体Gタンパク質共役レセプターを介して作用する 試薬、ならびにレセプターチロシンキナーゼを活性化する成長因子、即ちPDG F〔ランキン(Rankin)およびローゼンガート(Rozengurt),J.Biol.Chem. 269:704−710(1994)〕、EGFお よびNGF〔リボン(Ribon)およびサルチエル(Saltiel),J. Biol.Chem. 271:7375−7380(1996)〕を含む。こ れらの観察は、分裂促進シグナル伝達経路の制御におけるp130casの役割を 示唆し、おそらくチロシンリン酸化p130casに基づくシグナル伝達複合体の 集合に関与するであろう。これらの複合体に関与するタンパク質の同定は行なわ れていないが、おそらくcrk〔リボン(Ribon)およびサルチエル(Sa ltiel),J.Biol.Chem.271:7375−7380(199 6)〕およびその関連タンパク質〔フェラー(Feller)ら,Oncoge ne 10:1465−1473(1995);ハセガワ(Hasegawa) ら,Mol.Cell.Biol. 16:1770−1776(1996); クヌドセン(Knudsen)ら,J.Biol.Chem. 269:327 81−32787(1994);マツダ(Matsuda)ら,Mol.Cel l.Biol. 14:5495−5500(1994);タナカ(Tanak a)ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3443−3 447(1994)〕などのSH2ドメイン含有アダプタータンパク質が含まれ るであろう。したがってp130casのチロシンリン酸化および脱リン酸化はか かる複合体の形成を制御することに潜在的に一定の役割をはたし、それにより分 裂促進シグナル伝達における下流の事象に影響する。均等物 当業者であれば単なる日常的な実験手段を用いることにより、本明細書記載の 本発明の具体的な態様に対する多くの均等物を認識し、確かめることができるで あろう。かかる均等物は、下記クレームにより包含されるものとする。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項 【提出日】平成10年2月12日(1998.2.12) 【補正内容】 したがって、本明細書記載の組成物および方法は、ホスファターゼのPTPフ ァミリーのメンバーのチロシンリン酸化基質を同定すること、ならびに同定され た基質の活性を制御することに有用である。さらに、本明細書記載の組成物およ び方法は、特定の疾患または不調、および治療の投与における使用のために、P TP/基質相互作用を促進または阻害するモジュレーターのスクリーニング方法 に関するチロシンリン酸化タンパク質を同定するために有用である。図面の簡単な説明 図1A〜1Eは、PTPsの触媒ドメインの多重配列整列(配列番号:1〜3 5)を示す。細胞質の真核生物のPTPsおよびRPTPsのドメイン1を1つ のグループに、RPTPsのドメイン2を第2グループに、エルニシア(Yer sinia)PTPを3番目に組み合わせる。3つの全てのグループに渡って所 有された不変残基を小文字で示す。グループ内に不変でおよび高度に保存された 残基は、それぞれイタリックおよび太字で示した。エルニシアPTP配列内で、 細胞質およびRPTPドメイン配列間に不変または高度に保存された残基を、そ れぞれイタリックおよび太字で示す。該ペプチドと相互作用するPTP1Bの残 基の位置を小矢印で示し、整列の下に番号を付した残基はPTP1Bの残基に対 応する。 図2はRCMLに対する多種のPTP1B変異体のVmaxおよびKmを示す 。発明の詳細な説明 酵素のPTPファミリーは、PTP触媒ドメインとして知られている約250 アミノ酸の共通の進化的に保存されたセグメントを含む。全PTPsに渡って不 変である独自の特有の配列モチーフ、〔I/V〕HCXAGXXR〔S/T〕G (配列番号:36)はこの保存されたドメイン内にある。このモチーフの中のシ ステイン残基は該ファミリーのメンバーにおいて不変であり、触媒に必須である ことが知られている。それは、入ってくる基質のリン酸部分を攻撃する求核分子 として作用する。部位特異的変異導入により、システイン残基をセリン(CS変 異体)またはアラニン(CA変異体)に変えた場合、得られるPTPは触媒的に 減ずるが、少なくともイン・ビトロで、その基質と複合体化または結合する能力 を保持している。これらの結果は、PTPファミリーのメンバーであるMKP− 1〔サン(Sun)ら,Cell 75:487−493(1993)〕、なら びに他のPTPsに比較して確認されている。しかしながら、これらのCS変異 体は、一般的にイン・ビトロでホスホチロシル基質に効果的に結合することがで きるが、多くの場合、かかる複合体はイン・ビボで単離することができない。し たがって、該CS変異体は、それらの適用性において限定され、PTPsと基質 との全ての組合わせを単離するために使用されえない。 PTP1B単独〔バーフォード(Barford)ら,Science 26 3 :1397−1404(1994)〕およびホスホチロシン−含有ペプチドと の複合体〔ジア(Jia)ら,Science 268:1754−1758 (1995)〕の結晶構造が最近決定された。27の不変残基を示したこれらの 構造〔バーフォード(Barford)ら,1994〕のうち、1つはアスパラ ギン酸残基である。このアスパラギン酸残基は、PTPファミリーメンバーの触 媒ドメインにわたって不変である。即ち、PTPファミリーメンバーのアミノ酸 配列を整列させると、多様なPTP配列の整列に対して、整列を極大化すること を要求するシフトによって位置番号は異なるであろうが、アスパラギン酸残基は 、各PTP中、対応する位置に存在する〔図(バーフォード(Barford) ら,Nature Struc.Biol. 2:1043−1053(199 5)由来)を参照のこと)。整列がいまだに公表されていない配列は、例えば、 GENEWORKSなどの入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、 他の公知のPTP配列で直ちに整列化しうる。 本明細書記載のように、「減じられた」活性は、ホスファターゼが野生型のホス ファターゼのKmと類似のKmを保持しているが、野生型の酵素に比較して少な くとも104の係数により減少されたVmaxを有することを意味することを意 図する。これは、野生型PTPに比較して減少または完全に破壊された触媒活性 を含む。例えば、不変なアスパラギン酸残基はアラニン、バリン、ロイシン、イ ソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリ シン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン 、リジン、アルギニンまたはヒスチジンに変えるまたは変異させることができる 。 不変なアスパラギン酸残基が酵素のKmの顕著な変化を起こさないが、1分あ たり1未満(1分-1未満)までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸に置換さ れる、本明細書記載の新規PTPsは、さらに、他の変異、具体的には、PTP /基質複合体を安定化することを助けるものを含有することができる。例えは、 特有のモチーフにおける〔セリン/スレオニン〕残基のアラニン残基への変異は 、遷移状態の形成から遷移状態の破壊への脱リン酸化反応の律速段階を変え、そ れによりPTP/基質複合体を安定化させる。かかる変異は、不変なアスパラギ ン酸残基の置換、具体的には、複合体の安定化を助けること、複合体の観察およ ひ単離をし易くすることとを価値評価可能に組み合わせてもよい。 本発明に使用するために適切なPTPsは対応する位置に不変なアスパラギン 酸残基を有するいかなるPTPをも含む。本明細書で規定するように、特有のモ チーフ、〔I/V〕HCXAGXXR〔S/T〕G(配列番号:36)を含む場 合、ホスファターゼは、PTPファミリーのメンバーである。2重の特異性PT Ps、即ち、リン酸化チロシンとリン酸化セリンまたはスレオニンとの両方を脱 リン酸化するPTPsは、さらに、本発明における使用に適切である。適切なP TPsとしては、限定されないが、PTP1B、PTP−PEST、PTPγ、 MKP−1、DEP−1、PTPμ、PTPX1、PTPX10およびPTPH 1が挙げられる。 【図1】【図1】

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 不変のアスパラギン酸残基が、 a) 酵素のKmの顕著な変化を生じさせないが、1分あたり1未満までのKc atの減少を生じさせる;または b) アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニ ン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイ ン、チロシン、グルタミン、リジン、アルギニンおよびヒスチジンからなる群 より選ばれる アミノ酸(例えば、アラニン)と置換されるプロテインチロシンホスファターゼ であって、該ホスファターゼがチロシンリン酸化基質に結合し、触媒的に減じら れるプロテインチロシンホスファターゼ。 2. PTP1B(および、例えば不変なアスパラギン酸残基は181位に存在 する)、PTP−PEST(および、例えば不変なアスパラギン酸残基は199 位に存在する)、PTPγ、MKP−1、DEP−1、PTPμ、PTPX1、 PTPX10ならびにPTPH1からなる群より選ばれた、請求項1(a)記載 のプロテインチロシンホスファターゼ。 3. 231位のアミノ酸がセリン残基に置換されるPTP−PESTホスファ ターゼである、請求項1(b)記載のプロテインチロシンホスファターゼ。 4. a) 少なくとも1種のチロシンリン酸化タンパク質と、不変のアスパラ ギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化を生じさせないが、1分あたり1未満 までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸(例えば、アラニン)に置換され る少なくとも1種のプロテインチロシンホスファターゼとを、該チロシンリン 酸化タンパク質と該プロテインチロシンホスファターゼとの複合体の形成に適 する条件下に組み合わせ、それにより組み合わせ物を生じる工程;ならびに b) 該組み合わせ物における複合体の存在または非存在を決定する工程、 を含み、組み合わせ物における複合体の存在が、該チロシンリン酸化タンパク質 が複合体を形成するブロテインチロシンホスファターゼの基質であることを示す 、プロテインチロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸化タンパク質 を同定する方法。 5. 該プロテインチロシンホスファターゼが請求項1〜3いずれかで規定され たものである、請求項4記載の方法。 6. 該チロシンリン酸化タンパク質が、p130cas、EGFレセプター、p 210 bcr:abl、MAPキナーゼおよびインシュリンレセプターからな る群より選ばれた、請求項4または請求項5記載の方法。 7. a) 不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化を生じさせ ないが、1分あたり1未満までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸(例え ば、アラニン)に置換される少なくとも1種のプロテインチロシンホスファタ ーゼ;ならびに b) プロテインチロシンホスファターゼとチロシンリン酸化タンパク質との複 合体の存在または非存在の検出の使用に適する助剤 を含有してなる、例えば、プロテインチロシンホスファターゼが請求項1〜3い ずれかで定義されたものである、プロテインチロシンホスファターゼのチロシン リン酸化タンパク質基質を同定するキット。 8. a) プロテインチロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸化 タンパク質を同定する工程; b) 該チロシンリン酸化タンパク質と該プロテインチロシンホスファターゼと 試験対象の試薬とを、チロシンリン酸化タンパク質とプロテインチロシンホス ファターゼとの相互作用に適する条件下に組み合わせ、それにより組み合わせ 物を形成する工程; c) 該組み合わせ物中の酵素活性量を決定する工程;ならびに d) チロシンリン酸化タンパク質とプロテインチロシンホスファターゼとの相 互作用に適する条件下で、(c)で決定した酵素活性量と試験対象の試薬の非 存在下の酵素活性量とを比較する工程、 を含み、酵素活性量の差異は、該試薬が該プロテインチロシンホスファターゼと 該チロシンリン酸化タンパク質との相互作用を変えることを示す、プロテインチ ロシンホスファターゼとチロシンホスファターゼとの相互作用を変える試薬を同 定する方法。 9. a) プロテインチロシンホスファターゼの基質であるチロシンリン酸化 タンパク質を同定する工程; b) チロシンリン酸化タンパク質とプロテインチロシンホスファターゼとの相 互作用に適する条件下で、該チロシンリン酸化タンパク質と、不変のアスパラ ギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化を生じさせないが、1分あたり1未満 までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸(例えば、アラニン)に置換され るプロテインチロシンホスファターゼと、試験対象の試薬とを組み合わせ、そ れにより組み合わせ物を形成する工程; c) 該組み合わせ物において、該チロシンリン酸化タンパク質と該プロテイン チロシンホスファターゼとの結合の程度を決定する工程;ならびに d) チロシンリン酸化タンパク質とプロテインチロシンホスファターゼとの相 互作用に適する条件下で、(c)で決定した結合の程度と試験対象の試薬の非 存在下での結合の程度とを比較する工程、 を含み、結合の程度の差異は、該試薬が該プロテインチロシンホスファターゼ、 該チロシンホスファターゼと該チロシンリン酸化タンパク質との相互作用を変え ることを示す、プロテインチロシンホスファターゼとプロテインチロシンホスフ ァターゼの基質であるチロシンリン酸化タンパク質との相互作用を変える試薬を 同定する方法。 10. 酵素活性量または結合の程度が、それぞれ: a) 試験対象の試薬の存在下において、該試薬の非存在下よりもより大きい場 合、プロテインチロシンホスファターゼとチロシンリン酸化タンパク質との相 互作用を促進する;または b) 試験対象の試薬の存在下において、該試薬の非存在下よりもより少ない場 合、プロテインチロシンホスファターゼとチロシンリン酸化タンパク質との相 互作用を阻害する である、請求項8または9記載の方法。 11. 例えば、a) チロシンリン酸化タンパク質の活性の減少が表示される 条件の処置;および/または b) チロシンリン酸化タンパク質の活性を減少させる;および/または c) 不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化を生じさせないが 、1分あたり1未満までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸に置換される プロテインチロシンホスファターゼを哺乳類(例えば、ヒトなど)に投与し、 それにより複合体の形成がチロシンリン酸化タンパク質の活性を減少させる工 程を含むチロシンリン酸化タンパク質の活性を減少させる方法;および/また は d) p130casリン酸化と関連したオンコジーンの形質転換効果の減少が表 示される条件の処置;および/または e) p130casリン酸化と関連したオンコジーンの形質転換効果を減少させ ること;および/または f) PTP−PESTもしくは不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕 著な変化を生じさせないが、1分あたり1未満までのKcatの減少を生じさ せるアミノ酸に置換されるPTP−PESTであるプロテインチロシンホスフ ァターゼを哺乳類(例えば、ヒトなど)に投与し、それによりPTPがp13 0casに結合および/またはp130casを脱リン酸化する工程、ならびにp1 30casリン酸化と関連したオンコジーンの形質転換効果を減少させる工程を 含む、p130casリン酸化と関連したオンコジーンの形質転換効果を減少さ せる方法;および/または g) 癌(例えば、p130casリン酸化と関連した癌)の処置、治療、診断ま たは予防;および/または h) オンコジーンの活性(例えば、v−crk、v−srcおよび/またはc −Ha−ras活性と)と関連した条件の処置;および/または i) p130casと関連したシグナル伝達複合体の形成の減少が表示される条 件の処置;および/または j) p130casと関連したシグナル伝達複合体の形成を減少させること;お よび/または k) PTP−PESTもしくは不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕 著な変化を生じさせないが、1分あたり1未満までのKcatの減少を生じさ せるアミノ酸に置換されるPTP−PESTであるプロテインチロシンホスフ ァターゼを啼乳類(例えば、ヒトなど)に投与し、それによりPTPがp13 0casに結合および/またはp1 30casを脱リン酸化する工程、ならびにp 130casと関連するシグナル伝達複合体の形成を減少させる工程を含む、p 130casと関連するシグナル伝達複合体の形成を減少させる方法、および /または l) 分裂経路の誘導の妨害; m) 分裂経路の誘導の妨害が表示される条件の処置; n) プロテインチロシンホスファターゼ投与または過剰発現と関連した細胞毒 性効果の減少が表示される条件の処置;および/または o) プロテインチロシンホスファターゼ投与または過剰発現と関連した細胞毒 性効果を減少させること;および/または p) 対応する野生型プロテインチロシンホスファターゼの代わりに、不変のア スパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化を生じさせないが、1分あたり 1未満までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸に置換されるプロテインチ ロシンホスファターゼを哺乳類(例えば、ヒトなど)に投与する工程を含む、 プロテインチロシンホスファターゼ投与または過剰発現と関連した細胞毒性効 果を減少させる方法;および/または q) 請求項13−20いずれか記載の方法で 治療、予防または診断に使用される、例えば、請求項1〜3いずれかに規定され た、プロテインチロシンホスファターゼ。 12. 処置、予防または診断のため(例えば、請求項11に規定された処置に おける使用のため)の薬物の製造のためのプロテインチロシンホスファターゼの 使用。 13. 不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化を生じさせない が、1分あたり1未満までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸に置換される プロテインチロシンホスファターゼを哺乳類(例えば、ヒトなど)に投与し、そ れにより複合体の形成がチロシンリン酸化タンパク質の活性を減少させる工程を 含む、チロシンリン酸化タンパク質の活性を減少させる方法。 14. 該チロシンリン酸化タンパク質が、p130cas、EGFレセプター、 p210 bcr:abl、LMAPキナーゼおよびインシュリンレセプターか らなる群より選ばれた、請求項13記載の方法。 15. プロテインチロシンホスファターゼが、PTP1B、PTP−PEST 、PTPγ、MKP−1、DEP−1、PTPγ、PTPXI、PTPX10お よびPTPH1からなる群より選ばれた、請求項13記載の方法。 16. PTP−PESTもしくは不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの 顕著な変化を生じさせないが、1分あたり1未満までのKcatの減少を生じさ せるアミノ酸に置換されるPTP−PESTであるプロテインチロシンホスファ ターゼを哺乳類(例えば、ヒトなど)に投与し、それによりPTPがp130ca s に結合および/またはp130casを脱リン酸化し、それによりp130casの 下流の効果を負に制御する工程、ならびにp130casリン酸化と関連したオン コジーンの形質転換効果を減少させる工程を含む、p130casリン酸化と関連 したオンコジーンの形質転換効果を減少させる方法。 17. オンコジーンが、v−crk、v−srcおよびc−Ha−rasから なる群より選ばれた、請求項16記載の方法。 18. PTP−PESTもしくは不変のアスパラギン酸残基が、酵素のKmの 顕著な変化を生じさせないが、1分あたり1未満までのKcatの減少を生じさ せるアミノ酸に置換されるPTP−PESTであるプロテインチロシンホスファ ターゼを哺乳類(例えば、ヒトなど)に投与し、それによりPTPがp130ca s に結合および/またはp130casを脱リン酸化し、それによりp130cas の下流の効果を負に制御する工程、ならびにp130casと関連したシグナル伝 達複合体の形成を減少させる工程を含む、p130casと関連したシグナル伝達 複合体の形成を減少させる方法。 19. 分裂経路の誘導を妨げる、請求項18記載の方法。 20. 対応する野生型プロテインチロシンホスファターゼの代わりに、不変の アスパラギン酸残基が、酵素のKmの顕著な変化を生じさせないが、1分あたり 1未満までのKcatの減少を生じさせるアミノ酸に置換されるプロテインチロ シンホスファターゼを哺乳類(例えば、ヒトなど)に投与する工程を含む、プロ テインチロシンホスファターゼ投与または過剰発現と関連した細胞毒性効果を減 少させる方法。
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