JP2003013146A - 軽量2ピース缶用極薄高強度鋼板の製造方法 - Google Patents

軽量2ピース缶用極薄高強度鋼板の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 深絞り加工性に優れ、耳の発生が少なく、さ
らに歪時効後に高い強度が得られる板厚0.20mm以下の極
薄2ピース缶用鋼板およびその製造方法を提案する。 【解決手段】 C:0.1 %以下、N:0.0090〜0.0140
%、Mn:0.05〜0.60%、Al:0.02〜0.20%を含む鋼素材
を、加熱し、FDT:860 ℃以上とする仕上圧延を施
し、CTを620 ℃〜710 ℃とて巻取り、さらに冷間圧下
率を90%以下とする1次圧延を施したのち焼鈍温度をA
c1変態点未満とする連続焼鈍を行い、あるいはさらに圧
下率:2%以下の調質圧延を施し、板厚0.20mm以下のr
値の面内異方性が少ない缶用極薄冷延鋼板とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽量2ピース缶用
鋼板に係り、とくにr値の面内異方性が小さく、加工−
塗装焼付け相当(210 ℃×20min )処理後の引張強さが
430MPa以上を有する板厚0.20mm以下の高強度缶用極薄冷
延鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】清涼飲料水、ビール等の飲料缶や、食缶
等の各種缶容器は、その部品構造から、缶胴と上蓋から
なる2ピース缶と、缶胴および上蓋、底蓋からなる3ピ
ース缶に大別される。とくに、2ピース缶の缶胴に用い
られる鋼板は、深絞り加工(カップ成形)や、それに続
く缶高さを得るためのしごき加工や、ネック縮径加工、
フランジ加工、ドーム加工など各種の過酷な成形に耐え
られる特性が要求される。さらに、最近では、缶の軽量
化を目的として、素材である鋼板の薄肉化が指向され板
厚0.20mm以下の鋼板に対する要求が強くなってきてい
る。
【0003】素材である鋼板を薄肉化した場合にも、缶
強度として所定以上の強度を維持する必要があるため、
素材である鋼板を高強度化することが前提となり、でき
れば製缶加工時は軟質で、内容物充填時には硬質化して
いることが望まれる。また、素材の鋼板をカップ形状に
深絞り加工する際に、薄肉鋼板を使用すると高張力鋼板
を用いても剛性が不足し、しわが発生しやすくなる。こ
の傾向は、限界絞り率(LDR )が大きくなる、すなわち
ブランク径が大きくなるに従いより顕著となる。しわ発
生を少なくするには、しわ抑え力(BHF )を大きくする
ことが考えられる。しかし、BHF が大きくなると、加工
時にパンチ肩部で破断しやすくなるとともに、カップ円
周方向に発生する耳のうち大きいものが引き伸ばされた
り(耳立ち)、引きちぎられたり(耳切れ)するという
問題がある。この問題を解決するために、r値の面内異
方性の少ない、すなわちΔrの小さい鋼板が望まれてい
る。
【0004】またさらに、最近では、2ピース缶を、炭
酸飲料用に加えてコーヒー飲料用等として適用すること
が指向されている。コーヒー飲料用とした場合には、缶
内容物の変質調査の目的で打検検査が行われることか
ら、缶底部の形状をドーム形状からフラット(平底)形
状とすることが求められる。缶底部をフラット形状とす
ると、耐圧強度を維持するため、さらなる高強度を得る
ことができる材質の缶用鋼板が望まれている。
【0005】薄肉の缶用鋼板を得るためには、 冷延圧下率を増加する、 冷延母板の板厚、すなわち熱延板の板厚を薄くする、 という2つの手段が考えれられる。しかし、冷間圧下率
の増加は、r値の面内異方性を増大し、絞り成形時の耳
発生を大きくする。また、熱延板の板厚を薄くすると、
幅方向、長さ方向の熱間圧延温度のばらつきが大きくな
るとともに熱間圧延の生産性も低下するという問題があ
る。
【0006】このような問題に対し、例えば、特開昭59
-38336号公報には、C:0.10%以下、Si:0.06%以下、
Mn:0.50%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、A
l:0.15%以下、N:0.008 %以下を含有する連鋳鋼片
を、Ar3以上の仕上げ温度で熱間圧延を行い、640 〜 7
00℃で巻き取り、圧下率80〜95%で冷間圧延し、650 ℃
以上で20秒以上の連続焼鈍を行ったのち500 ℃以下まで
10〜500 ℃/sで冷却し、500 〜350 ℃の温度に20秒以上
保持し室温に冷却する加工性に優れ、面内異方性の小さ
い缶用極薄鋼板の製造方法が開示されている。
【0007】また、特開平9-241756号公報には、冷延前
の平均結晶粒径を30μm 以上とした熱延鋼板に、冷延圧
下率70〜98%の冷間圧延を施し、再結晶温度以上800 ℃
以下で3min以上の焼鈍を施したのち、さらに冷延圧下率
1 〜70%の再冷延を施し、最終製品までの通算冷延圧下
率を88〜98%とする絞り成形時のイヤリング発生が著し
く小さい容器用鋼板の製造方法が開示されている。
【0008】しかしながら、特開昭59-38336号公報、特
開平9-241756号公報に記載された技術では、絞り加工時
の耳発生は減少するが、鋼板の薄肉化に伴う耐圧強度の
低下に対しては、考慮されていないという問題を残して
いた。また、特開平4-350146号公報には、C:0.02〜0.
08%、Si:0.02%以下、Mn:0.05〜0.30%、P:0.025
%以下、S:0.025 %以下、Al:0.02〜0.15%、N:0.
003 〜0.02%の成分と、残部は鉄および不可避的不純物
とからなる連鋳スラブを熱間圧延し、570 〜 670℃で巻
き取り、かつ(Ntotal −NasAlN )量を0.003 〜0.01
0 %とした2ピース缶用鋼板が開示されている。特開平
4-350146号公報に開示された技術では、多段ネックイン
を行ってもしわが発生せず、蓋巻き締め時にも割れの発
生がなく、レトルト殺菌を行っても缶底部の耐圧強度は
低下しないとしている。
【0009】また、特開平10-110238 号公報には、C:
0.005 〜0.05%、Al:0.08%以下、N:0.012 %以下を
含有する連鋳片を、熱間圧延し、連続焼鈍法を施したの
ち、5 %以上15%未満の圧下率の調質圧延を行い、固溶
C+固溶N≧50ppm とする溶接缶胴用鋼板の製造方法が
提案されている。しかしながら、特開平4-350146号公報
に記載された技術では、板厚0.20mm以下の薄肉化を行お
うとすると、r値の面内異方性が大きくなる場合がある
という問題があった。また、特開平10-110238 号公報に
記載された技術でもやはり、r値の面内異方性が大きく
なるという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従
来技術の問題点を解決し、軽量2ピース飲料缶用として
好適な優れた深絞り加工性を有し、耳の発生が少なく、
さらに10%加工歪を付与しさらに塗装焼付処理相当熱処
理を施した後に引張強さ430MPa以上の高強度となり高い
缶体耐圧強度を得ることができる板厚0.20mm以下の高強
度極薄缶用鋼板の製造方法を提案することを目的とす
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するために、深絞り加工性、耳発生、製缶後
の缶強度におよぼす各種要因の影響について鋭意研究し
た。その結果、本発明者らは、加工−焼付け塗装が施さ
れた後の缶底部の鋼板強度が、2ピース缶の耐圧強度を
決定しており、鋼板が、加工歪10%付与−焼付け塗装相
当処理(210 ℃×20min の熱処理)後の引張強さが430M
Pa以上となる特性を有していれば、缶底部をフラット形
状としても、レトルト処理(120 ℃×90min程度の熱処
理)時や、あるいは窒素を充填し、内圧をかけた陽圧缶
の缶落下時等にバックリングが発生する問題は解決でき
ることを見出した。このような特性を鋼板に具備させる
には、鋼組成のうち、N含有量を0.0090〜0.0140質量%
と適正化することが重要であることを見いだした。
【0012】また、本発明者らは、深絞り加工性を良好
とし、耳発生を少なくするために、r値を1.0 〜1.5 と
適正値としたうえで、r値の面内異方性Δrを0±0.3
と小さくする必要があることを知見した。Δrを小さく
するためには、熱間圧延条件、冷間圧下率の適正化が重
要であることを見いだした。つぎに、本発明者らが行っ
た実験結果について説明する。
【0013】質量%で、0.045 %C−0.21%Mn−0.037
%Al−0.0113%Nの鋼素材を1200℃に加熱し、仕上圧延
出側温度FDT、巻取温度CTを変化した熱間圧延によ
り熱延板とし、該熱延板に一次圧延(冷間)を施し冷延
板としたのち、焼鈍温度:700 ℃で連続焼鈍し冷却し
た。その後、1.5 %の調質圧延を施して、Δrを求め
た。
【0014】図1に、ΔrとFDT、CTとの関係を示
す。図1から、FDTを860 ℃以上かつCTを620 ℃以
上の高温とすることにより、Δrを0±0.3 の範囲にで
きることがわかる。図2に、Δrにおよぼす一次圧延
(冷間)の圧下率の影響を示す。図2から、一次圧延
(冷間)の圧下率を90%以下とすることにより、Δrが
−0,3 より小さく、0に近くなることがわかる。
【0015】すなわち、本発明者らは、これらの結果か
ら、強度を可能な限り低減し、r値を1.0 以上と高く
し、かつΔrを0±0.3 とするためには、熱間圧延の仕
上げ圧延終了温度と巻取温度を高くし、一次圧延の圧下
率を低くすることが重要となるという知見を得た。本発
明は、上記した知見に基づいて、さらに検討を加えて完
成されたものである。
【0016】すなわち、本発明は、鋼素材を、加熱し、
粗圧延および仕上圧延により熱延板とする熱間圧延工程
と、該熱延板を巻き取る巻取り工程とを有し、さらに該
熱延板を冷間圧延し冷延板とする1次圧延工程と、該冷
延板を焼鈍し冷延焼鈍板とする焼鈍工程と、該冷延焼鈍
板を調質圧延する調質圧延工程とを有する板厚0.20mm以
下の缶用極薄冷延鋼板の製造方法において、前記鋼素材
の組成を、質量%で、C:0.1 %以下、N:0.0090〜0.
0140%、Si:0.03%以下、Mn:0.05〜0.60%、P:0.02
%以下、S:0.02%以下、Al:0.02〜0.20%、O:0.01
%以下を含み、あるいはさらに次A群〜C群 A群:Cu:0.001 〜 0.5%、Ni:0.01〜 0.5%、Cr:0.
01〜 0.5%、Mo:0.001 〜 0.5%のうちから選ばれた1
種または2種以上、 B群:Ca:0.005 %以下、Nb:0.10%以下、Ti:0.20%
以下のうちから選ばれた1種または2種以上、 C群:B:0.005 %以上 のうちの1群または2群以上を含有する組成とし、前記
熱間圧延工程の仕上圧延終了温度FDTを860 ℃以上と
し、前記巻取り工程の巻取り温度CTを620 ℃〜710 ℃
とし、前記1次圧延工程の冷間圧延圧下率を90%以下と
し、前記焼鈍工程を、焼鈍温度をAc1変態点未満とする
連続焼鈍とすることを特徴とするr値の面内異方性Δr
が0±0.3 と小さく、塗装焼付処理相当の熱処理後の引
張強さが430 MPa 以上となる板厚0.20mm以下の高強度缶
用極薄冷延鋼板の製造方法であり、本発明では、前記調
質圧延の、圧下率を2%以下とすることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】まず、本発明に使用する鋼素材組
成の限定理由について説明する。本発明の鋼素材は、低
炭素アルミキルド鋼であり、その組成は下記のとおりと
するのが好ましい。 C:0.1 %以下 Cは、結晶粒を微細化するとともに、固溶強化により鋼
の強度を増加させる重要な元素であるが、一方では、炭
化物を形成し、鋼板の延性、ひいては加工性を低下させ
る。このため、Cは0.1 %以下に限定する。なお、C含
有量が低すぎるとr値の面内異方性Δrが大きくなり、
また、時効後の引張強さ430MPa以上を確保し難しくなる
ため、Cは0.015 %以上とすることが好ましい。また、
r値の確保及び、r値の面内異方性Δrを小さくするた
めに、Cは0.015 〜0.05%とするのが好ましい。なお、
より好ましくは0.03〜0.05%である。
【0018】N:0.0090〜0.0140% Nは、固溶NあるいはAlN 等の析出物として鋼板中に存
在し、フランジ加工やネック加工に悪影響を与えずr値
やΔrを確保したうえで加工歪10%付与−焼付け塗装相
当処理後の引張強さを高める効果を有する。本発明で
は、成形後の缶強度を高く保つ必要から、歪時効後の引
張強さを高めるため、N含有量は0.0090%以上とする。
なお、0.0140%を超えて含有すると、鋳片内にAr気泡や
N2気泡が残存することに起因するヘゲ等の表面欠陥が多
発する。このようなことから、Nは0.0090〜0.0140%と
した。
【0019】Si:0.03%以下 Siは、固溶強化により鋼の強度を増加させる元素である
が、多量の添加は加工性、表面処理性の劣化、耐食性の
劣化等の問題を生じる。このため、本発明ではできるだ
け低減するのが望ましいが、0.03%までは許容できる。 Mn:0.05〜0.60% Mnは、Sによる熱間割れを防止する有効な元素であり、
この効果を得るため、0.05%以上の含有が必要である。
一方、多量の含有は不経済であり耐食性を劣化させると
ともに、強度ばらつきを増大させる傾向となる。このた
め、本発明では、Mnは0.05〜0.60%に限定する。なお、
好ましくは0.15〜0.40%である。
【0020】P:0.02%以下 Pは、鋼を著しく硬質化させ、フランジ加工性やネック
加工性を劣化させ、さらに耐食性を著しく劣化させる。
このため、本発明では、Pは0.02%以下に限定するのが
好ましい。 S:0.02%以下 Sは、鋼中では介在物として存在し、鋼板の延性を低下
させ、さらに耐食性を劣化させる元素であり、本発明で
はできるだけ低減するのが好ましが、0.02%までは許容
できる。なお、好ましくは0.015 %以下である。
【0021】Al:0.02〜0.20% Alは、脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を高くするため
に必要な元素であり、0.02%以上の含有を必要とする。
しかし過剰の含有は経済的に好ましくないばかりか、再
結晶粒径の成長を抑制し、r値を低下させるので、その
含有量は0.20%以下とする必要がある。このため、本発
明ではAlは0.02〜0.20%に限定した。なお、好ましく
は、0.03〜0.10%である。
【0022】O:0.01%以下 Oは、鋼中では酸化物として存在し、延性の低下、耐食
性の劣化をもたらすため、できるだけ低減するのが好ま
しいが、本発明では、0.01%まで許容できる。なお、と
くに薄肉鋼板とするためには、好ましくは0.005 %以下
とするのが好ましい。
【0023】本発明では上記した組成に加えて、必要に
応じ、次A群〜C群 A群:Cu:0.001 〜0.5 %、Ni:0.01〜0.5 %、Cr:0.
01〜0.5 %、Mo:0.001 〜0.5 %のうちから選ばれた1
種または2種以上、 B群:Ca:0.005 %以下、Nb:0.10%以下、Ti:0.20%
以下のうちから選ばれた1種または2種以上、 C群:B:0.005 %以上 のうちの1種または2種以上を含有することができる。
【0024】A群:Cu:0.001 〜0.5 %、Ni:0.01〜0.
5 %、Cr:0.01〜0.5 %、Mo:0.001 〜0.5 %、のうち
から選ばれた1種または2種以上 Cu、Ni、CrおよびMoは、鋼の延性を劣化させることな
く、強度を増加させることができるので、適宜強度調整
のため選択して含有できる。また、これらの元素は鋼板
の耐食性を向上させる効果も有する。これらの効果が発
揮されるためには、Cu、Moでは少なくとも0.001 %、N
i、Crでは少なくとも0.01 %含有することが好まし
い。しかし、0.5 %を超えて含有しても、効果が飽和
し、コストの上昇を招くので、含有量の上限をいずれの
元素とも0.5 %とすることが好ましい。なお、これらの
元素の効果は単独で添加しても、複合添加しても、同様
に発揮される。
【0025】B群:Ca:0.005 %以下、Nb:0.10%以
下、Ti:0.20%以下のうちから選ばれた1種または2種
以上、Ca、NbおよびTiは、いずれも鋼の清浄度の向上に
有用な元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
上記した効果を得るためにはCaは0.002 %以上、Nbは0.
001 %以上、Tiは0.001 %以上含有することが好まし
い。しかし、0.005 %を超えるCaの過剰な含有は不経済
となるばかりでなく、生成される非金属介在物は、融点
が低下し、軟質になり、圧延工程で長く伸びて製缶加工
の不良につながる。このため、Caは0.005 %以下とする
ことが好ましい。
【0026】Nbは、0.10%を超えて過多に含有すると、
Nb系析出物による結晶粒界のピン止め効果により再結晶
温度が上昇して、連続焼鈍炉の通板作業性が悪くなり、
また細粒になる。このため、Nb含有量は0.10%以下とす
ることが好ましい。Tiは、0.20%を超えて過多に含有す
ると、鋭利で硬質な析出物が発生し、耐食性を悪くする
とともに、製缶加工時のすり疵発生の原因にもなる。従
って、Ti含有量は0.2 %以下とすることが好ましい。
【0027】C群:B:0.005 %以下 Bは、粒界脆化の改善に有効な元素であり、必要に応じ
含有できる。例えば、缶が低温で保管され脆化割れを生
じることが懸念されるような用途においても良好な品質
を得るためには、Bを含有することが有効である。ただ
しBは、連続焼鈍時、再結晶粒界に偏析し再結晶を遅ら
せるので、その含有量は0.005 %以下とすることが好ま
しい。なお、B含有量の下限は効果を発揮するのに必要
な0.0001%とするのが好ましい。
【0028】なお、上記した成分以外の残部はFeおよび
不可避的不純物である。上記した組成の鋼素材を、通常
公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の公知の鋳造方
法で清浄度の高いスラブ等の鋼素材とする。本発明で
は、鋼素材を、加熱し、粗圧延によりシートバーとし、
シートバーを仕上圧延により熱延板とする熱間圧延工程
と、該熱延板を巻き取る巻取り工程とにより、コイル状
に巻き取った熱延板とする。
【0029】粗圧延においては、加熱温度、圧延条件は
とくに限定する必要はなく、所定の寸法形状のシートバ
ーとすることができればよい。なお、鋼素材の加熱温度
は1100〜1250℃とするのが好ましい。加熱温度が1100℃
未満では、粗圧延における圧延負荷が増大するととも
に、仕上げ圧延終了温度を所定の温度範囲とすることが
難しくなる。また、加熱温度が1250℃を超えると、表面
スケールの形成が著しくなり、スケールロスが大きく経
済的に不利となるとともに、仕上げ圧延で除去しにくい
スケールが残存し表面欠陥を発生しやすくなる。また、
結晶粒の粗大化が顕著となる。
【0030】粗圧延でシートバーとしたのち、該シート
バーに仕上圧延を施し熱延板とする。仕上圧延の仕上圧
延終了温度FDTを860 ℃以上とする。FDTが860 ℃
未満では、r値の面内異方性が大きくなり、深絞り加工
時に耳の発生が顕著となる。一方、FDTが高温となり
すぎると、スケールの発生が顕著となり、スケール除去
等その後の工程に支障を生じることが懸念されるため、
FDTは940 ℃以下とすることが好ましい。なお、より
好ましくは870 〜910 ℃である。熱間圧延工程後は、通
常の空冷としてもあるいは水冷を行っても所定の巻取温
度となるように調整すればなんら問題はない。
【0031】また、本発明では、粗圧延工程でシートバ
ーとされたのち、仕上圧延工程前に、シートバーの先端
部と、該シートバーに先行するシートバーの後端部とを
接合した後、仕上げ圧延することができる。このように
シートバー同士を接合することにより、特に本発明のよ
うに極薄熱延鋼板で問題となる長手方向の形状の乱れを
防止しやすく、製品の歩留りを向上できる。
【0032】また、粗圧延工程と仕上げ圧延との間でシ
ートバーの長手方向端部を全幅にわたって加熱昇温する
こと、あるいは幅方向端部を全長にわたって加熱昇温す
ることが好ましい。シートバー長手方向端部あるいは幅
方向の端部は温度低下しやすく、この部分を加熱昇温し
て、シートバー内の温度の均一化を図ることにより、歩
留りが向上する。なお、加熱方法としては、誘導加熱方
式のものとすることが好ましい。
【0033】ついで、熱延板は巻取り工程でコイル状に
巻き取られるが、巻取温度CTは620 ℃〜710 ℃とす
る。CTが620 ℃未満では、r値が低下するうえ、Δr
が大きくなり、r値の面内異方性が大きく、深絞り加工
時の耳発生が顕著となる。一方、CTが710 ℃を超える
と、炭化物の凝集粗大化に伴い熱延板の結晶粒が粗大化
し、引張強さTSが低下して、所望の強度が得られなく
なる。このため、CTは620 ℃〜710 ℃に限定した。な
お、好ましくは630 〜710 ℃である。
【0034】熱延板の板厚は、冷延板の母板として、冷
延板(製品板)の板厚に依存して決定されるが、0.20mm
厚以下の薄物冷延板とするためには、面内異方性を小さ
くすること、r値を向上させることを考慮すると、2mm
以下とするのが好ましい。ついで、上記した工程により
製造された熱延板は、塩酸酸洗等常法で脱スケールした
のち、冷間圧延を施し冷延板とする1次圧延工程と、該
冷延板を焼鈍し冷延焼鈍板とする焼鈍工程と、該冷延焼
鈍板を調質圧延する調質圧延工程とを順次施される。
【0035】1次圧延工程では、所望の冷延板の寸法形
状とすることができればよいがΔrを小さくするために
は、1次圧延(冷間)の圧下率は90%以下、好ましくは
80%以上とする。このような冷間圧延圧下率とするため
には、熱延板の板厚を薄くすることが好ましい。1次圧
延圧下率が90%を超えると、図2に示したように、r値
の面内異方性Δrが大きくなる。一方、80%未満では、
板厚0.2mm 以下の極薄缶用鋼板とするには、熱延板の板
厚を極度に薄くする必要があるためr値のばらつきが大
きくなりやすくなるため、80%以上とすることが好まし
い。
【0036】ついで、冷延板は焼鈍工程で焼鈍される。
焼鈍工程は連続焼鈍炉で行うのが好ましい。焼鈍は、鋼
板に成形性を付与するために行うものであり、本発明で
は焼鈍温度をAc1変態点未満とする連続焼鈍とする。焼
鈍温度がAc1変態点以上となると、結晶粒が粗大化し強
度が得られない。なお、焼鈍温度は670 〜720 ℃とする
のが加工性および強度確保の点から好ましい。焼鈍温度
での均熱時間は操業の安定性から1s以上あれば十分で
ある。また、焼鈍工程後の冷却は通常の連続焼鈍と同じ
程度の冷却として、とくに限定されない。
【0037】焼鈍工程を経た冷延焼鈍板は、調質圧延工
程で冷間圧延により調質圧延されるのが好ましい。調質
圧延は圧下率:2%以下とするのが好ましい。本発明に
おける調質圧延は、通常公知の鋼板の形状の調整、可動
転位の導入、表面粗さの調整等を目的とするため圧下
率:2%以下のSR(single cold-reducing)とした。
圧下率が2%を超えると加工硬化により鋼板強度が増加
しすぎて、加工性が低下する。
【0038】このようにして製造された冷延焼鈍板は、
防錆処理後、そのまま製品板(コイル)としてもよい。
あるいはさらに、酸洗処理を施し、さらに錫めっき、ク
ロムめっき、ニッケルめっき等の表面処理層を少なくと
も片面に形成する表面処理を施し、製品板としてもよ
い。製品板は、さらに塗油されるのが好ましい。また、
塗油剤としては、DOS (Di-octyl sebacate )、ATBC
(Acetyl tri-butyl citrate)が好ましい。
【0039】上記した製造方法で製造された缶用極薄冷
延鋼板は、平均r値:1.0 〜1.5 、Δr:0 ±0.3 を有
する面内異方性の小さな鋼板である。平均r値が、1.0
未満では、深絞り加工性が劣化し、必要とする缶高さを
得にくいという問題があり、一方、平均r値が1.5 を超
えると、缶高さ方向の伸びが大きくなる。なお、平均r
値およびΔrは、圧延方向(L方向)、圧延方向から45
°(D方向)、圧延方向から直角方向(C方向)につい
て、それぞれr値(rL 、rD 、rC )を測定し、平均
r値=(rL +rC +2rD )/4、Δr=(rL +r
C−2rD )/4により求めるものとする。
【0040】さらに、本発明の製造方法で製造された缶
用極薄冷延鋼板は、製造後の調質度はT3〜T4程度で
あり、前記のように適度の平均r値と小さなΔrを有す
るため、製缶性は良好である。さらに、10%加工歪を付
与し210 ℃で20min の熱処理を施した後の引張強さが43
0MPa以上である。このような特性を有することにより、
缶体の耐圧強度が高く、軽量化を達成できる極薄缶用鋼
板となる。
【0041】
【実施例】表1に示す組成の鋼を転炉で、溶製したの
ち、垂直曲げ方式の連続鋳造機で圧延素材(スラブ)と
した。ついで、これら圧延素材に、表2に示す条件で熱
間圧延を施し熱延板とした。なお、1部の鋼板ではシー
トバー接合、シートバー加熱を実施した。その後、これ
ら熱延板に酸洗による脱スケール処理を施し、さらに表
2に示す条件で冷間圧延を施し、ついで表2に示す条件
で焼鈍あるいはさらに調質圧延を行い、極薄冷延鋼板と
した。
【0042】得られた極薄冷延鋼板について、硬さ試
験、r値の測定を実施した。なお、缶底部の耐圧強度評
価としては、前述のように圧延して10%の歪を付与し、
さらに塗装焼付け処理に相当する210 ℃×20分の時効処
理を行い、引張試験により引張強度を評価した。 (i)硬さ試験 これら冷延鋼板について、JIS G 3303の規定に準拠して
HR30T硬さから調質度を決定した。 (ii)r値の測定 幅方向の中央部から圧延方向(L)、圧延方向から45°
方向(D)、および圧延方向から直角方向(C)に、JI
S 5号引張試験片を採取し、歪速度40%/minで引張試
験を実施し、塑性歪法(JIS G 3135−1986解説 18p)に
より、幅方向と板厚方向の対数歪の比からr値を求め
た。平均r値は、平均r値=(rL +rC+2rD )/
4で、また、Δrは、Δr=(rL +rC −2rD )/
2により算出した。 (iii )歪時効後の引張特性試験 これら冷延鋼板の幅方向中央部から圧延方向および圧延
直角方向に、試験片を採取し、冷間圧延で圧下率10%の
歪を付加したのち、210 ℃×20min の塗装焼付処理相当
の熱処理を施し、その後、引張試験を行い引張強さTS
を測定し、2方向の平均値を求めた。
【0043】これらの結果を表3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】本発明例は、r値が1.0 以上と高く、Δr
が±0.3 の範囲内となり、r値の異方性が小さく、加工
性に優れ、かつ歪時効硬化特性も大きく、10%予成形−
塗装焼付処理相当熱処理を施したのち、引張強さTS:
430MPa以上を十分に満足する鋼板となっている。本発明
の範囲を外れる比較例では、Δrが大きくなり、異方性
が強いか、あるいは歪時効硬化特性が不足した鋼板とな
っている。本発明例は、製缶時の耳発生の問題もなく、
缶底部の耐圧強度も高くなった。また、ネック・フラン
ジ加工性についても、高強度薄肉材であるにもかかわら
ず、不良の発生は認められず、良好であった。
【0048】また、これら本発明例の鋼板を用いて電気
錫めっき処理を施した後、1stカップ成形、DI成形、
4段ネック成形を行ってフラット底形状の250gストレッ
チドロー・アイオニング成形缶とした。その結果、本発
明例の鋼板はいずれも、カップ成形性、アイアニング
性、ボトム成形性とも問題なく、多段ネック、フランジ
加工を施しても、ネックしわやフランジ割れの発生もな
く、しかも板厚が薄いにも関らず、缶強度が確保できる
特性を有していることがわかった。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、軽量飲料缶用として好
適な、耳発生も少なく、所望の缶体の耐圧強度を確保で
きる、2ピース缶用極薄鋼板を、安価に製造でき、産業
上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷延鋼板のΔrと熱間仕上圧延終了温度FD
T、巻取温度CTとの関係を示すグラフである。
【図2】冷延鋼板のΔrにおよぼす一次圧延(冷間)の
圧下率の影響を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/54 C22C 38/54 (72)発明者 佐藤 覚 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 久々湊 英雄 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 奥田 金晴 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4E002 AD05 AD06 BC05 CB01 CB10 4K037 EA01 EA02 EA04 EA05 EA09 EA11 EA13 EA15 EA17 EA18 EA19 EA20 EA22 EA23 EA25 EA27 EA31 FA02 FA03 FC04 FE02 FE03 FE05 FG03 FH01 FJ04 FJ05 FM02 GA05 HA04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼素材を、加熱し、粗圧延および仕上圧
    延により熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板を巻き
    取る巻取り工程とを有し、さらに該熱延板を冷間圧延し
    冷延板とする1次圧延工程と、該冷延板を焼鈍し冷延焼
    鈍板とする焼鈍工程と、該冷延焼鈍板を調質圧延する調
    質圧延工程とを有する板厚0.20mm以下の缶用極薄冷延鋼
    板の製造方法において、前記鋼素材の組成を、質量%
    で、 C:0.1 %以下、 N:0.0090〜0.0140%、 Si:0.03%以下、 Mn:0.05〜0.60%、 P:0.02%以下、 S:0.02%以下、 Al:0.02〜0.20%、 O:0.01%以下 を含む組成とし、前記熱間圧延工程の仕上圧延終了温度
    FDTを860 ℃以上とし、前記巻取り工程の巻取温度C
    Tを620 ℃〜710 ℃とし、前記1次圧延工程の冷間圧延
    圧下率を90%以下とし、前記焼鈍工程を、焼鈍温度をA
    c1変態点未満とする連続焼鈍とすることを特徴とするr
    値の面内異方性が小さい板厚0.20mm以下の高強度缶用極
    薄冷延鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記組成に加えてさらに、質量%で、下
    記A群〜C群のうちの1群または2群以上を有すること
    を特徴とする請求項1に記載の缶用極薄冷延鋼板の製造
    方法。 記 A群:Cu:0.001 〜 0.5%、Ni:0.01〜 0.5%、Cr:0.
    01〜 0.5%、Mo:0.001 〜 0.5%のうちから選ばれた1
    種または2種以上、 B群:Ca:0.005 %以下、Nb:0.10%以下、Ti:0.20%
    以下のうちから選ばれた1種または2種以上、 C群:B:0.005 %以上
  3. 【請求項3】 前記調質圧延の圧下率を2%以下とする
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の缶用極薄冷
    延鋼板の製造方法。
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