JP2003205352A - 溶融金属に対して優れた耐食性、耐摩耗性を有する焼結合金からなる溶融金属用部材、その製造方法、およびそれらを用いた機械構造部材 - Google Patents

溶融金属に対して優れた耐食性、耐摩耗性を有する焼結合金からなる溶融金属用部材、その製造方法、およびそれらを用いた機械構造部材

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融金属に対し極めて優れた耐食性、離型性
を有し、かつ熱疲労特性、機械的特性、耐摩耗性にも優
れる溶融金属用部材およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 Mo2FeB2型複硼化物系の硬質焼結合
金を母材とし、その表面にB、Mo、Fe、Crと窒素
を主体とした安定かつ緻密な窒化物皮膜または酸化物皮
膜と窒化物皮膜を形成させ、溶融金属用の部材として用
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶融金属に対して
優れた耐食性、耐摩耗性を有する焼結合金からなる溶融
金属用部材、その製造方法、およびそれらを用いた機械
構造部材に関する。より詳細には、Mo2FeB2型複硼
化物を主体とする焼結合金において、焼結合金の表面に
窒化物または窒化物と酸化物を形成させることにより、
耐磨耗性、耐食性、離型性を大幅に向上させた溶融金属
用部材、その製造方法、およびその溶融金属用部材を用
いた機械構造部材に関する。
【0002】
【従来の技術】溶融金属と直接接触して用いられる部材
の代表的なものとして、ダイカストマシン部品用の部材
がある。ダイカストマシンはプランジャー、スリーブ、
成形金型で構成され、溶融状態にある金属、例えば、ア
ルミニウム、亜鉛、マグネシウム等と直接接触して使用
される。このため、これらの部品に共通して要求される
特性としては、溶融金属に侵食(溶損)されない、反応
層を形成しないなどといった溶融金属に対する耐食性、
耐摩耗性、および耐熱疲労性などがある。従来、これら
の部品に用いる部材として工具鋼や熱間工具鋼(SKD
61など)が使用されていたが、溶融金属に対する耐食
性が十分でないため、寿命が短い問題があった。
【0003】そこで、高硬度および高強度を有している
ことに加えて、溶融金属に対して優れた耐食性を示すM
2FeB2型複硼化物系硬質焼結合金(特公昭60−5
7499号公報)をダイカスト部品に適用したところ、
大幅な寿命延長を得ることができた。しかし、この部材
を長時間使用した場合、部材の金属結合相と溶融金属と
の反応が進行し、耐食性や離型性が低下する問題が生じ
ることが判明した。
【0004】近年、溶融金属に対する耐食性や離型性を
改善するため、部材表面にアルミナ、ジルコニア等のセ
ラミックスの溶射皮膜を形成させる試みがなされてい
る。しかしながら、これらの溶射皮膜においてはヒート
チェック、ヒートクラック等の亀裂や剥離が生じやす
く、期待するほどの耐久性の向上は得られていない。
【0005】また、特開平5−148588号公報や特
開平9−217167号公報は、鋼、鋳鉄、およびステ
ンレス鋼表面に酸化皮膜を設けることにより、部材の耐
食性の改善が図ることを開示している。しかし、形成さ
れた酸化皮膜は部材との密着性が弱く、かつ非常に薄
く、硬度が低いなどの問題があり、耐摩耗性強度が必要
となるプランジャー、スリーブには適用が困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、上
記のMo2FeB2型複硼化物系硬質焼結合金の溶融金属
に対する耐食性、および離型性を改善し、極めて優れた
耐久性を示す硬質焼結合金を開発することにより、溶融
金属に対し極めて優れた耐食性、離型性を有し、かつ熱
疲労特性、機械的特性、耐摩耗性にも優れる溶融金属用
部材およびその製造方法、およびそれらを用いた機械構
造部材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の溶融金属に対す
る耐食性に優れた溶融金属用部材は、母材が硬質焼結合
金からなり、該母材の、溶融金属と直接接触する表面に
窒化物皮膜を形成してなることを特徴とする。 より望
ましい形態として、前記母材がMo2FeB2型複硼化物
とFe基結合相からなる硬質焼結合金であり、また前記
窒化皮膜がMo、Cr、Fe、Bの金属元素と窒素を主
体とする(Fe,Mo,Cr,B) 型の複合窒化
物からなる皮膜であることを特徴とする。
【0008】そして、前記硬質燒結合金のより具体的構
成成分としては、3〜7.5%のB、21〜79.9%
のMo、2〜30%のCr、残部が10%以上のFeお
よび不可避的不純物からなることを基本とし、さらに 前記硬質焼結合金の全組成に対して、0.1〜8%のM
nを含有すること、さらにまた 硬質焼結合金に含有されるMo含有量の一部を、全組成
に対して0.1〜30%のWで置換してなること、さら
にまた 硬質焼結合金に含有されるMo含有量の一部を、全組成
に対して0.1〜20%のNbで置換してなること、さ
らにまた 硬質焼結合金に含有されるMo含有量の一部を、全組成
に対してWおよびNbの両者の合計で0.1〜30%置
換してなること、さらにまた 硬質焼結合金に含有されるNb含有量の一部または全部
をZr、Ti、Ta、Hfのいずれか1種または2種以
上と置換してなること、さらにまた 硬質焼結合金に含有されるFe含有量の一部を、全組成
に対してNiおよび/またはCoのいずれか一方または
両者の合計で0.1〜20%置換してなること、さらに
また 硬質焼結合金に含有されるCr含有量の一部を、全組成
に対して0.1〜25%のVで置換してなること等が採
用できる。
【0009】また本発明の溶融金属用部材の製造方法
は、上記のいずれかの硬質焼結合金を窒素雰囲気あるい
は窒素を含む還元性雰囲気中で加熱してその表面に窒化
物皮膜を形成させる、または 上記のいずれかの硬質焼結合金を大気中あるいは酸素を
含む雰囲気中で加熱してその表面に酸化物皮膜を形成さ
せた後、窒素を含む還元性雰囲気中で加熱し、酸化物皮
膜を還元して窒化物皮膜を形成させる、または 上記のいずれかの硬質焼結合金を大気中あるいは酸素を
含む雰囲気中で加熱してその表面に酸化物皮膜を形成さ
せた後、窒素雰囲気中で加熱し、酸化皮膜の下層に窒化
物皮膜を形成させることを特徴とする。前記窒素を含む
還元性雰囲気または窒素雰囲気の圧力は、0.1〜1.
5MPaが望ましい。さらに本発明の機械構造部材は、
上記のいずれかの溶融金属用部材の製造方法を用いて作
成した溶融金属用部材を用いることを特徴とする機械構
造部材であり、機械構造部材が射出成形機用部材、また
は溶融金属鋳造装置用部材であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、Mo2FeB2型複硼化
物系の硬質焼結合金(以下母材と称す)の表面にB、M
o、Fe、Crと窒素を主体とした安定かつ緻密な窒化
物皮膜または酸化物皮膜と窒化物皮膜を形成させること
により、溶融金属用の部材として用いた場合に溶融金属
に対して極めて優れた耐食性、および離型性を有する溶
融金属用部材を提供するものである。本発明の溶融金属
用部材の母材となる硬質焼結合金において、B、Mo、
Crの含有量を一定範囲内に限定することにより、微細
な複硼化物とFe基の結合相との2相組織となり、優れ
た強度、耐熱性(耐熱疲労性)が得られるばかりでな
く、上記の窒化物皮膜、または窒化物皮膜と酸化物皮膜
からなる表面処理層を緻密かつ安定に形成することがで
きる。また、母材中にMnを含有させることにより、母
材の機械的特性、表面処理層の耐食性および自己修復性
が向上し、さらに、Nb、Zr、Ti、Ta、Hfを含
有させることにより、表面処理層の耐食性および耐摩耗
性が向上し、Niおよび/またはCoを含有させること
により母材の熱衝撃性および高温強度が向上し、さら
に、Vを含有させることにより母材の機械的特性および
表面処理層の自己修復性がさらに改善される。以下に本
発明を詳細に説明する。
【0011】本発明者らは本発明に至るまでに、Mo2
FeB2型複硼化物を主体とする硬質焼結合金が、溶融
樹脂や溶融金属が使用される腐食雰囲気や高温域などの
環境下で耐えられるだけの十分な耐食性および耐摩耗性
を有していることを見出していた。しかしながら、近
年、樹脂の高性能付与のためガラス繊維やフェライト粒
子などの各種フィラーが多量に添加され、溶融樹脂の射
出成形などに用いる機械構造部材のさらなる耐摩耗性の
向上が必要とされていた。また、溶融金属に対しては、
長時間溶融金属と接触した場合、Fe基の結合相が溶融
金属と反応し、耐食性、離型(剥離)性が低下する傾向
を示し、溶融金属に対して更なる耐摩耗性、耐食性、離
型(剥離)性の改善が必要であることが判明した。そこ
で種々検討した結果、Mo2FeB2型複硼化物を主体と
する硬質焼結合金の表面に、緻密かつ安定な窒化物皮膜
または窒化物皮膜と酸化物皮膜からなる表面処理層を形
成させることにより、母材の強度を維持させたまま、表
面硬度を上昇させ、長期間使用しても溶融金属および溶
融樹脂に対する耐食性、離型性、耐摩耗性が大幅に向上
することを見出した。
【0012】これは、窒化物皮膜が母材の主要構成元素
であるMo、Cr、Fe、Bの金属元素と窒素を主体と
して構成される(Fe,Mo,Cr,B)型の複
合窒化物からなる安定かつ緻密な皮膜であり、さらに酸
化物皮膜も、母材の主要構成元素であるMo、Cr、F
e、Bの金属元素と酸素を主体として構成される(F
e,Mo,Cr,B)型の複合酸化物からなる安
定かつ緻密な皮膜であり、これらの表面処理層が保護膜
を構成して溶融金属に対する耐食性や耐摩耗性を大幅に
改善向上させるためである。さらに、窒化物皮膜を形成
させる前に予め酸化物皮膜を形成させておき、この酸化
物皮膜を還元しながら窒化することにより、先に生成し
た酸化物層によって窒化が促進され、窒化物皮膜をより
厚く製膜することができる。
【0013】本発明の溶融金属用部材に用いる硬質焼結
合金は、上記4元素に加えて、選択的にMn、W、N
b、Zr、Ti、Ta、Hf、Ni、Co、Vが添加さ
れる場合もあり、この場合は合金表面に形成される窒化
物皮膜や酸化物皮膜は、Mo、Cr、Fe、Bに加えて
上記の選択的に添加される元素および窒素または酸素か
ら構成される。窒化物や酸化物にMo、Cr、Fe、B
が含有されない場合は、表面処理層の結合力が弱く、か
つ、母材との密着性が低下するために亀裂や剥離を生じ
やすく、耐摩耗性も十分でない。複合窒化物としては、
具体的には(Fe、Cr)3Mo3N、 Fe3N、Cr
N、Cr2N、MoN、Mo2N、BNなどが挙げられ
る。また複合酸化物としては、具体的には(Fe,M
o,Cr,B)23、(Fe,Mo,Cr,B)34
(Fe,Mo,Cr,B)O、(Fe,Mo,Cr,
B)O3、(Fe,Mo,Cr,B)O2.7〜2.9、(F
e,Mo,Cr,B)O2などが挙げられる。
【0014】上記の複合窒化物は、Mo2FeB2型の複
硼化物が窒化されることにより得られるため、母材とし
ては合金組成が主にMo、Cr、Fe、BからなるMo
2FeB2型複硼化物からなる硬質焼結合金である必要が
ある。上記硬質焼結合金において、Bは本発明の溶融金
属用部材の母材の硬質相となる複硼化物および表面処理
層を形成するために必要不可欠な元素である。また、B
を含有した表面処理層は母材との密着性を向上させる効
果を示す。B量が3%未満であると硬質相の割合が35
%を下回り、機械的特性が劣る。一方、7.5%を超え
ると硬質相の割合が95%を上回り、強度および耐熱衝
撃性が低下する。よって、B含有量は3〜7.5%に限
定する。
【0015】MoはBと同様に複硼化物および表面処理
層を形成するために不可欠な元素である。母材において
は、一部は硬質合金の結合相中に固溶し、母材の機械的
強度を向上させる。しかし、適正量の上限(79.9
%)を超えて含有させるとM6C型炭化物などの金属間
化合物を形成して母材の強度が低下する。一方、含有量
が21%未満であると、Fe2BなどのFe硼化物が形
成するために母材の強度が低下する。よってMo含有量
は21〜79.9%に限定する。
【0016】CrもMoと同様に、母材においては硬質
相だけでなく結合相中にも均一に固溶して機械的特性を
向上させるばかりでなく、表面処理層においては安定か
つ緻密なCrと結合した複合酸化物の形成に不可欠な元
素である。しかし、30%を超えて含有させるとクロム
炭化物(Cr32)等の金属間化合物が形成して母材の
強度が低下する。一方、2%未満になると表面処理層の
Cr量が不十分となり、耐食性の低下を生じる。よっ
て、Cr含有量は2〜30%に限定する。
【0017】Mnは母材の複硼化物の粒成長を抑制し、
合金組織を微細化させることにより、機械的特性を著し
く向上させる。また、Mnの添加により、焼結時に型く
ずれの少ない良好な形状の焼結体が得られ、ニヤネット
化が図られる効果を示す。さらにMnは酸素との親和力
が強いため、表面処理層の自己修復性をもたらし、部材
の耐久性を高める。含有量が0.1%未満では特性改善
の効果が認められず、8%を超えて含有させると母材の
機械的特性が低下する。よってMnの含有量は全組成に
対して0.1〜8%に限定する。
【0018】WはMoと置換させることが可能な元素で
あり、母材の強度を向上させる効果がある。しかしMo
との置換量が全組成に対して0.1%未満であるとその
効果は認められない。一方、Moと全組成に対して30
%を超えて置換してもその効果が認められなくなるばか
りでなく、母材の比重が増加し、製品重量が増大する。
したがってMoに対するWの置換量は全組成に対して
0.1〜30%に限定する。
【0019】NbはMoと置換させることが可能な元素
であり、母材の複硼化物に固溶するとともに一部は他の
硬質粒子(硼化物、酸化物、炭化物、および窒化物)を
形成し、機械的特性を向上させる。しかし、含有量が
0.1%未満であると改善効果が認められず、20%を
超えて含有させると硬質合金の焼結性が低下し、強度の
低下を招くばかりでなく、高価な元素であるためにコス
トの上昇を招く。よってNbの含有量は全組成に対して
0.1〜20%に限定する。またMoはWとNbの両者
と置換させることも可能である。この場合、WとNbの
両者の合計が全組成に対して0.1〜30%で置換する
ことが好ましい。
【0020】Zr、Ti、Ta、HfはNbと同様にM
oと置換させることが可能な元素であり、Nbと同様に
機械的特性を向上させる。そのため、Nb含有量の一部
または全部をこれらの元素のいずれか1種または2種以
上と置換することができる。
【0021】Niおよび/またはCoはFe基結合相中
に固溶することにより硬質合金の熱衝撃性および高温強
度が向上する。Fe含有量に対する置換量が0.1%未
満であるとその改善効果が認められず、20%を超えて
含有させてもその特性向上の効果が認められなくなる。
よって、Niおよび/またはCoの含有量は全組成に対
して0.1〜20%に限定する。
【0022】VはCrと置換させることが可能な元素で
あり、少量含有させるだけで母材の機械的特性が向上す
る。さらに表面処理層においては、自己修復性の向上効
果をもたらす。0.1%未満であるとその特性改善効果
が認められず、25%を超えて含有させると、酸化皮膜
を形成させた場合、被膜の密着性が低下し、溶融金属へ
の不純物混入の原因となり得る。よってVの含有量は全
組成に対して0.1〜25%に限定する。
【0023】本発明の硬質合金は上記成分元素のほか、
残部がFeで構成される。Feは複硼化物および結合相
を構成する元素であり、表面処理層を構成する複合窒化
物の形成に必要不可欠である。本発明の硬質合金におい
ては、Feの含有量が10%未満であると複硼化物を十
分に形成させることができないばかりか、結合相中のF
e含有量が不足して強度が低下する。そのため、本発明
の硬質合金にはFeを10%以上含有させる必要があ
る。本発明の硬質合金においてFeを10%以上含有さ
せることができない場合は、許容範囲内においてFe以
外の各元素の含有量を減じて、10%以上のFeを含有
させることは言うまでもない。
【0024】本発明の硬質焼結合金が含有する不可避的
不純物元素の主なものはP、S、Cなどであり、硬質焼
結合金の強度を維持させるためにはこれらの含有量は極
力少なくすることが望ましい。これらの元素の含有量が
合計で1%以下であれば、機械的特性に与える影響は比
較的小さい。
【0025】次に本発明の溶融金属用部材の製造方法に
ついて説明する。まず母材である硬質合金の製造方法に
ついて説明する。(1)Fe、Mo、Cr、Mn、また
はさらにW、Nb、Zr、Ti、Ta、Hf、Ni、C
o、Vの1種または2種以上の元素とBからなるB合金
の粉末、または、(2)B合金粉末とこれら元素の1種
または2種以上の合金からなる粉末、または、(3)B
単体とFe、Mo、Cr、Mn、またはさらにW、N
b、Zr、Ti、Ta、Hf、Ni、Co、Vの1種ま
たは2種以上の単体粉末、または、(4)B単体とこれ
らの1種または2種以上の合金からなる粉末、を所定の
合金組成となるように配合し、振動ボールミル等を用い
て有機溶媒中で湿式粉砕後、造粒、成形し、該成形体を
真空中、還元ガス中、または不活性ガス中などの非酸化
性雰囲気中で液相焼結することにより製造する。
【0026】なお、上記の硬質合金の硬質相となる複硼
化物は、上記原料粉末が焼結中に反応することによって
形成されるが、あらかじめMoおよびFe、さらに上記
の選択的に添加される元素からなる複硼化物、またはB
単体の粉末とMoおよびFeさらに上記の選択的に添加
される元素の粉末を炉中で反応させることにより、Mo
2FeB2型複硼化物を製造し、さらに結合組成のFe、
Mo、Ni、Co、および上記の選択的に添加される元
素の粉末を所定の合金組成となるように配合した粉末を
用いても差し支えない。
【0027】液相焼結は通常1373〜1673Kの焼
結温度で5〜90分間行う。焼結温度が1373K未満
の場合は液相が十分に出現せず、空孔の多い焼結体が得
られ、十分な強度が得られない。一方、焼結温度が16
73Kを超えると液相は十分に出現するものの、結晶粒
が粗大化し強度が低下する。また、焼結時間が5分未満
であると、元素の拡散が十分でなく、十分に高密度化し
ない。一方、90分を越えて焼結してもそれ以上の強度
上昇は認められず、場合によっては強度が低下すること
もある。以上のような液相が出現する焼結条件で焼結す
ることにより、空孔が消失し、ほぼ100%の密度の硬
質合金が得られる。液相を出現させずに空孔を消失させ
る方法として、熱間静水圧プレス法、ホットプレス法、
通電焼結法などがあり、これらの方法を用いても空孔を
消失させることができる。またこれらの方法と液相焼結
法を併用してもよい。
【0028】上記のようにして得られる本発明の溶融金
属用部材の母材である硬質焼結合金は、焼結体単体とし
てのみ用いられるばかりでなく、鋼材と接合させて複合
材として用いることも可能である。すなわち、本発明の
硬質焼結合金は超硬合金のように鋼材にロウ付けして使
用するばかりでなく、ロウ材を使用することなく直接鋼
材と接合させることも可能であり、強固な接着が得られ
る。また、焼結と鋼材を同時に接合する焼結接合法を適
用することも可能であり、鋼材は熱ダメージによる強度
低下を招来することがなく、複合材料をアルミニウムな
どの溶融金属のダイカスト用部材として用いた場合、溶
融金属に対して耐食性および耐摩耗性が必要とされる部
分にのみ、本発明の溶融金属用部材の母相である硬質合
金を必要最小限に用いることにより、金型などの部材を
低価格で製造することが可能となる。
【0029】次に、上記のようにして得られた母材表面
に表面処理層を形成させることを特徴とする、本発明の
溶融金属用部材の製造方法について説明する。上記の溶
融金属用部材の表面に窒化物皮膜のみを形成させる場合
は、得られた母材を所望の形状に機械加工を行い、表面
を洗浄脱脂した後、0.1〜1.5MPaの窒素雰囲気
もしくは窒素を含有する還元性雰囲気中で773〜18
73Kの温度で5分〜50時間保持することにより窒化
物皮膜を形成させる。処理温度が773K未満の場合
は、長時間の処理を行っても優れた耐食性および耐摩耗
性が得られる十分な厚みを有する窒化物皮膜を形成する
ことはできない。一方、1873Kを超える処理温度で
処理した場合は、窒化物皮膜の剥離が生じる。処理時間
が5分未満の場合は十分な厚みの窒化物皮膜の形成が認
められず、50時間を超えて処理を行っても、窒化物皮
膜の成長は飽和し、剥離を生じるばかりでなく、コスト
の上昇につながる。よって、窒化処理は773〜187
3Kの温度で5分〜50時間、好ましくは973〜16
73Kで1〜30時間行う。雰囲気の圧力は処理槽外の
大気が雰囲気中に侵入することがないように、大気圧よ
りも高めにする必要があり、また圧力を高めると膜厚が
厚くなる傾向があるので、0.1〜1.5MPaの圧力
下で処理することが好ましい。
【0030】窒化物皮膜のみを形成させる別法として、
得られた母材を所望の形状に機械加工を行い、表面を洗
浄脱脂した後、まず大気中もしくは酸素雰囲気中で77
3〜1873Kの温度で5分〜50時間保持して酸化物
皮膜を形成させる。酸化物皮膜の形成手段としては、高
温大気酸化法、高温湿潤水素酸化法等があるが特に限定
されない。処理温度が773K未満の場合は、長時間の
処理を行っても優れた耐食性が得られる十分な厚みを有
する酸化物皮膜を形成することはできない。一方、18
73Kを超える処理温度で処理した場合は、酸化物皮膜
の剥離が生じる。処理時間が5分未満の場合は十分な厚
みの酸化物皮膜の形成が認められず、50時間を超えて
処理を行っても、酸化物皮膜の成長は飽和し、剥離を生
じるばかりでなく、コストの上昇につながる。次いで
0.1〜1.5MPaの窒素を含む還元性雰囲気中で7
73〜1673Kの温度で1〜40時間保持する。この
ように、大気中または酸素を含む雰囲気中で加熱して酸
化物皮膜を形成させ、次いで窒素を含む還元性雰囲気中
で加熱すると、同一条件で窒化処理を行っても窒化処理
単独の場合よりも厚い窒化物皮膜が得られ、厚膜化しや
すくなる。
【0031】酸化物皮膜を形成させた後、窒化処理する
と、窒化物皮膜は母材表面、すなわち酸化物皮膜の下層
に形成されることもある。この処理を実施する場合は、
上記と同様にして母材に機械加工を施し、表面を洗浄脱
脂した後、まず大気中もしくは酸素雰囲気中で773〜
1873Kの温度で5分〜50時間保持して酸化物皮膜
を形成させる。酸化物皮膜の形成手段としては、高温大
気酸化法、高温湿潤水素酸化法等があるが特に限定され
ない。処理温度が773K未満の場合は、長時間の処理
を行っても優れた耐食性が得られる十分な厚みを有する
酸化物皮膜を形成することはできない。一方、1873
Kを超える処理温度で処理した場合は、酸化物皮膜の剥
離が生じる。処理時間が5分未満の場合は十分な厚みの
酸化物皮膜の形成が認められず、50時間を超えて処理
を行っても、酸化物皮膜の成長は飽和し、剥離を生じる
ばかりでなく、コストの上昇につながる。よって、酸化
処理は773〜1873Kの温度で5分〜50時間、好
ましくは973〜1673Kで1〜30時間行う。この
ようにして酸化物皮膜が得られる。次いで上記と同様に
して窒化処理を行う。窒化物皮膜は焼結合金母材と酸化
物皮膜の界面に生成する。このようにして窒化物皮膜の
上層に酸化物皮膜を有する2層皮膜が得られる。このよ
うに窒化物皮膜上に酸化物皮膜が存在すると、酸化物が
潤滑効果を示し、耐摩耗性がさらに向上する。以下、実
施例を示し本発明を具体的に説明する。
【0032】
【実施例】(実施例1)B粉末および金属粉末を、表1
〜4に示す硬質焼結合金の成分含有量になるように調整
した後、振動ボールミルを用いて、アセトン中で25時
間湿式混合粉砕した。ボールミルで粉砕した後の粉末を
乾燥、造粒し、得られた微粉末を所定の形状にプレス成
形した後、真空度:≦1.3Paの真空中で10K/分
の昇温速度で加熱し、1373〜1673Kの温度で3
0分間加熱した後炉冷し、硬質焼結合金を得た。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】得られた硬質焼結合金を所望の形状に加工
し、脱脂後、表5〜9に示す加熱条件で加熱した後、炉
冷し、硬質焼結合金の表面に複合窒化物皮膜、または複
合窒化物と複合酸化物の2層皮膜からなる表面処理層を
形成させ、溶融金属用部材を得た。一部の硬質焼結合金
は比較用に上記の加熱処理を施さずに、下記の特性評価
に供した。上記のようにして得られた表5〜9に示した
硬質硬質合金および溶融金属用部材の強度、溶融金属に
対する耐食性、および耐摩耗性を以下のようにして評価
した。
【0038】[強度]焼結したままの硬質硬質合金、およ
び硬質焼結合金に大気中の加熱処理を施した溶融金属用
部材から試験片を切り出し、JIS H 5501に基づ
いて抗折力(3点曲げ試験)を測定した。抗折力が大き
いほど強度が優れており、1.5GPaを超えるものを
本発明の対象とする。結果を表10〜14に示す。
【0039】[耐食性]焼結したままの硬質焼結合金、お
よび硬質焼結合金に複合窒化物皮膜、または複合窒化物
と複合酸化物の2層皮膜を形成させた溶融金属用部材を
10mm×10mm×100mmの大きさに切削加工し
試験片とし、この試験片を993Kで加熱溶融したアル
ミニウム(ダイカスト用アルミニウム合金:JIS−A
DC10)中に6時間浸漬した後、試験片の長手方向に
垂直な断面で切り出し、断面を光学顕微鏡で観察し、試
験片が溶融アルミニウムにより表面から侵食された深さ
を測定し、下記の規準で耐食性を評価した。 ○:侵食深さ<5μm、離型性良好 △:侵食深さ≧5μmでかつ<30μm、離型性やや不
良 ×:侵食深さ≧30μm、離型性不良 結果を表10〜14に示す。表中で#を附したものは、
特定元素を必要以上に添加しても効果の向上効果が認め
られないものを指す。
【0040】[摺動特性および耐摩耗性]ピンオンディス
ク法により、表面を鏡面研磨した硬質焼結合金、および
硬質焼結合金に複合窒化物皮膜、または複合窒化物と複
合酸化物の2層皮膜を形成させた溶融金属用部材から作
製した試験片に下記のピンを載せ、下記の荷重を負荷
し、下記の回数で回転させて摺動した。試験はアルミニ
ウムピン(JIS−5052)荷重:1Nを負荷し、回
転回数:1000回で実施し、試験後の試料の摩耗痕の
幅を走査型電子顕微鏡で測定し、下記の基準で耐摩耗性
を評価した。 ○:摩耗幅<500μm △:500μm≧摩耗幅<1000μm ×:摩耗幅≧1000μm 結果を表10〜14に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
【表10】
【0047】
【表11】
【0048】
【表12】
【0049】
【表13】
【0050】
【表14】
【0051】表10〜14に示すように、本発明の溶融
金属用部材は強度、溶融金属に対する耐食性および耐摩
耗性共に優れている。
【0052】(実施例2)Ni2B粉末、Mo25
末、純Mo粉末、カルボニルNi粉末、純Cr粉末、純
Mn粉末を、表1の組成番号16に示す成分含有量とな
るように配合し、振動ボールミルを用いてアセトン中で
平均粒径1.0μmとなるまで粉砕混合した。次いで混
合粉を冷間静水圧成形法(CIP)を用いて円筒状に圧
粉成形した。その後、真空中で1573Kまで昇温し2
0分間保持した後炉冷し、焼結体を得た。次に合金工具
鋼(SCM440)の芯材にこの円筒状の焼結体を嵌着
し、真空中で1473Kで20分間加熱し、拡散接合さ
せ、複合材を得た。この複合材の焼結体部分を射出成形
用スクリューの形状に切削加工した後、0.5MPaの
水素:10%と窒素90%からなる混合雰囲気中で13
73Kで3時間保持して窒化物皮膜を形成させた。この
ようにして得られた射出成形用スクリューを射出成形機
に装填し、ポリプロピレンの射出成形作業に供したが、
3000回使用した後も、表面に腐食孔は発生せず、摩
耗も殆ど認められなかった。
【0053】(実施例3)上記と同一の原料粉を上記と
同一の組成となように配合し、上記と同一条件により円
筒状の焼結体を作成した。この焼結体を所定のスリーブ
形状に切削加工した後、0.5MPaの窒素雰囲気中で
1173Kで3時間加熱し、表面に窒化物皮膜を形成さ
せた。これを合金工具鋼(SKD61)の外筒の内周に
焼きばめし、ダイカスト用スリーブとした。このダイカ
スト用スリーブをアルミニウムダイカスイト装置に装填
し、溶融アルミニウムの鋳込み作業に供したが、200
0回使用した後も、表面にクラック等は発生せず、摩耗
も殆ど認められなかった。
【0054】
【発明の効果】本発明は、Mo、Cr、Fe、Bを含有
させ、Mo、Cr、Bの含有量を一定範囲内に限定し、
またはさらにMn、W、Nb、Zr、Ti、Ta、H
f、Niおよび/またはCo、Vなどを適宜含有させて
成る、微細な複硼化物とFe基の結合相とからなる硬質
焼結合金の表面に、複合窒化物皮膜、または複合酸化物
皮膜と複合窒化物皮膜の2層皮膜を形成させてなる溶融
金属用部材であり、溶融金属や溶融樹脂に対して優れた
耐食性と耐摩耗性を示す。本発明の溶融金属用部材をア
ルミニウム鋳込み用のダイカスト用のスリーブに適用し
た場合、クラックや摩耗を殆ど発生させることがない。
また本発明の溶融金属用部材を樹脂の射出成形機のスク
リューに適用した場合、腐食孔や摩耗を生じることがな
い。このように、本発明の溶融金属用部材は溶融金属の
機械構造部材のみならず、溶融樹脂の機械構造部材とし
て良好に適用させることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/58 C22C 38/58 C23C 8/10 C23C 8/10 8/26 8/26 8/34 8/34 // B29C 45/60 B29C 45/60 (72)発明者 山崎 裕司 山口県下松市東豊井1296番地の1 東洋鋼 鈑株式会社技術研究所内 (72)発明者 高木 研一 東京都千代田区四番町2番地12 東洋鋼鈑 株式会社内 Fターム(参考) 4F206 AA11 AJ02 AJ07 AJ14 JA07 JD01 JQ07 JQ11 4K028 AA02 AB03 AC08 CC02 CD01

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母材が硬質焼結合金からなり、該母材
    の、溶融金属と直接接触する表面に窒化物皮膜を形成し
    てなることを特徴とする溶融金属に対する耐食性に優れ
    た溶融金属用部材。
  2. 【請求項2】 前記母材がMo2FeB2型複硼化物とF
    e基結合相からなる硬質焼結合金であることを特徴とす
    る、請求項1に記載の溶融金属に対する耐食性に優れた
    溶融金属用部材。
  3. 【請求項3】 前記硬質燒結合金表面に形成する窒化物
    皮膜がMo、Cr、Fe、Bの金属元素と窒素を主体と
    する(Fe,Mo,Cr,B)型の複合窒化物か
    らなる皮膜であることを特徴とする請求項1または2に
    記載の溶融金属に対する耐食性に優れた溶融金属用部
    材。
  4. 【請求項4】 前記硬質焼結合金が3〜7.5重量%
    (以下、単に%で示す)のB、21〜79.9%のM
    o、2〜30%のCr、残部が10%以上のFeおよび
    不可避的不純物からなることを特徴とする、請求項1、
    2または3に記載の溶融金属に対する耐食性に優れた溶
    融金属用部材。
  5. 【請求項5】 前記硬質焼結合金の全組成に対して、
    0.1〜8%のMnを含有することを特徴とする、請求
    項4に記載の溶融金属に対する耐食性に優れた溶融金属
    用部材。
  6. 【請求項6】 前記硬質焼結合金に含有されるMo含有
    量の一部を、全組成に対して0.1〜30%のWで置換
    してなることを特徴とする、請求項4または5に記載の
    溶融金属に対する耐食性に優れた溶融金属用部材。
  7. 【請求項7】 前記硬質焼結合金に含有されるMo含有
    量の一部を、全組成に対して0.1〜20%のNbで置
    換してなることを特徴とする、請求項4または5に記載
    の溶融金属に対する耐食性に優れた溶融金属用部材。
  8. 【請求項8】 前記硬質焼結合金に含有されるMo含有
    量の一部を、全組成に対してWおよびNbの両者の合計
    で0.1〜30%置換してなることを特徴とする請求項
    4または5に記載の溶融金属に対する耐食性に優れた溶
    融金属用部材。
  9. 【請求項9】 前記硬質焼結合金に含有されるNb含有
    量の一部または全部をZr、Ti、Ta、Hfのいずれ
    か1種または2種以上と置換してなることを特徴とす
    る、請求項7または8に記載の溶融金属に対する耐食性
    に優れた溶融金属用部材。
  10. 【請求項10】 前記硬質焼結合金に含有されるFe含
    有量の一部を、全組成に対してNiおよび/またはCo
    のいずれか一方または両者の合計で0.1〜20%置換
    してなることを特徴とする、請求項4〜9のいずれかに
    記載の溶融金属に対する耐食性に優れた溶融金属用部
    材。
  11. 【請求項11】 前記硬質焼結合金に含有されるCr含
    有量の一部を、全組成に対して0.1〜25%のVで置
    換してなることを特徴とする請求項4〜10のいずれか
    に記載の溶融金属に対する耐食性に優れた溶融金属用部
    材。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11のいずれかに記載の硬
    質焼結合金を窒素雰囲気あるいは窒素を含む還元性雰囲
    気中で加熱してその表面に窒化物皮膜を形成させること
    を特徴とする、溶融金属用部材の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項1〜11のいずれかに記載の硬
    質焼結合金を大気中あるいは酸素を含む雰囲気中で加熱
    してその表面に酸化物皮膜を形成させた後、窒素を含む
    還元性雰囲気中で加熱し、酸化物皮膜を還元して窒化物
    皮膜を形成させることを特徴とする、溶融金属用部材の
    製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1〜11のいずれかに記載の硬
    質焼結合金を大気中あるいは酸素を含む雰囲気中で加熱
    してその表面に酸化物皮膜を形成させた後、窒素雰囲気
    中で加熱し、酸化皮膜の下層に窒化物皮膜を形成させる
    ことを特徴とする、溶融金属用部材の製造方法。
  15. 【請求項15】 窒素を含む還元性雰囲気または窒素雰
    囲気の圧力が0.1〜1.5MPaである、請求項12
    〜14のいずれかに記載の溶融金属用部材の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項12〜15のいずれかに記載の
    溶融金属用部材の製造方法を用いて作成した溶融金属用
    部材を用いることを特徴とする機械構造部材。
  17. 【請求項17】 前記機械構造部材が射出成形機用部材
    である請求項16に記載の機械構造部材。
  18. 【請求項18】 前記機械構造部材が溶融金属鋳造装置
    用部材である請求項16に記載の機械構造部材。
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