JP2004010671A - 二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】未延伸または一軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、水分散性または水溶性のウレタン樹脂を含む塗布液を塗工し、さらに乾燥後、少なくとも一方向に延伸して得られる、厚さが38〜300μm、幅が400〜1500mm、巻き長が400〜10000mであり、下記式(1)
塗膜厚さのバラツキ(%)=(塗膜厚さ(nm)の最大値と最小値との差)
/平均塗膜厚さ(nm)×100 …(1)で定義される長さ方向の塗膜厚さのバラツキが90%以下である二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロール。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム幅が400〜1500mm、巻き長が400〜10000mである工業的規模で製造される二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールに関する。さらに詳しくは、LCDおよびCRTなどのディスプレイの表面保護用フィルムまたは反射防止用フィルムなどの表面基材、印刷ラベル基材などの一般工業用途に幅広く用いることができる、長さ方向の塗膜厚さのバラツキが小さい、インラインコート法で得た二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、未延伸または一軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗膜を形成後、二軸延伸される、いわゆるインラインコート法により塗布層を設けたポリエステルフィルムは、例えば、特公昭61−2528号公報、特公昭63−115748号公報、特公平2−50835号公報に開示されている。また、フィルムへの塗工方法としては、例えば、特開平6−261877号公報に開示されている。
【0003】
しかし、近年のハードコート加工および印刷などの生産性向上のための加工速度の向上、または加工後に付与されるハードコート層および印刷層の薄膜化に対して、これらの方法を採用した場合、ロール上の長さ方向の塗膜厚さのバラツキが大きければ、塗膜上に付与されるハードコートなどの機能層との密着性のバラツキも大きくなり、このハードコートなどの機能層との密着性がフィルムロールの長さ方向で実用上不十分な密着性を示す問題が、最近の加工生産性の向上に伴って発生している。
【0004】
さらに、ハードコート加工および印刷などの後加工時に、幅方向の任意の位置に得られたフィルムロールを用いた場合、後加工時の生産性向上のために、加工速度を向上させるべく、加工平面性を保持するテンション上昇または乾燥機温度の昇温など、これらの方法を採用した場合、幅方向のロール位置によりロールの両端のテンション調整が必要となるばかりか、長さ方向の塗膜厚さのバラツキ変動もインキなどの塗膜上に付与される機能付与層との密着性のバラツキを大きくして、このインキなどの機能付与層との密着性がフィルムロールの長さ方向で実用上不十分な密着性を示す問題として、最近の加工生産性の向上に伴って発生している。
【0005】
厚さが38〜75μmのフィルムは主にLCDの表面保護用フィルムとして用いられ、厚さが100〜188μmのフィルムは主にCRTの表面保護用フィルムまたは反射防止用フィルムに用いられる。このCRT用フィルムにおけるハードコートなどの機能層の密着性は特に優れた耐久性が要求されるので、厚さが100〜188μmのフィルムは、厚さが38〜75μmのフィルムに比べて、塗膜厚さのバラツキをより小さくなることが強く求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来の問題を解決し、ハードコートなどの後加工時に積層される他の機能層との密着性の品質変動を小さくできる、例えば、実用上十分なハードコートなどとの密着性のバラツキを低減することで、加工歩留まりを改善できる二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、未延伸または一軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、水分散性または水溶性のウレタン樹脂を含む塗布液を塗工し、さらに乾燥後、少なくとも一方向に延伸して得られる、厚さが38〜300μm、幅が400〜1500mm、巻き長が400〜10000mである二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールであって、下記式(1)
で定義される長さ方向の塗膜厚さのバラツキが90%以下であることを特徴とする二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールは、未延伸または一軸延伸ポリエステルフィルム(以下、基材フィルムという)の少なくとも片面に、水分散性または水溶性のウレタン樹脂を含む塗布液を塗工し、塗膜(以下、被覆樹脂層という)を乾燥後、少なくとも一方向に延伸して得られる。
【0009】
本明細書において、「ポリエステル」とは、エステル結合によって高分子化された結晶性熱可塑性樹脂化合物を意味する。このようなポリエステルは、通常、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを重縮合することにより得られる。
【0010】
ポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロへキサンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸が挙げられる。好ましいジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ナフタレン−2,6―ジカルボン酸である。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロへキサンジメタノールが挙げられる。好ましいグリコール成分は、エチレングリコールである。これらのジカルボン酸成分およびグリコール成分は、後述の被覆樹脂層を構成するウレタン系樹脂を含む塗布液の成分として含有されることがある。
【0011】
本発明に用いるポリエステルは、その極限粘度が0.5dl/g以上、好ましくは0.6dl/g以上である。極限粘度が大きいほど、機械特性および耐熱性に優れるが、重合触媒として、アンチモンが100ppm未満で有れば、その極限粘度が0.5dl/g以上にならず、溶融押出による製膜が困難であり、アンチモンが250ppm越えると、混入異物の発生量が多く、フィルムの外観欠点を引き起こす。
【0012】
被覆樹脂層は、水分散性または水溶性のウレタン樹脂を含む塗布液を基材フィルムのすくなくとも片面に塗工して形成される。
【0013】
被覆樹脂層に用いるウレタン樹脂としては、ウレタン成分を含む公知のポリイソシアネート、ポリオール、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂またはそれらに準じたポリウレタン系樹脂を挙げることができる。
【0014】
例えば、ウレタン樹脂のアニオン性基としては、好ましくは−SO3 +、−OSO2 +、−COO+のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩またはアンモニウム塩が用いられる。末端イソシアネート基が上記塩類でブロックされた熱反応型の水分散性のウレタン系樹脂は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート、分子内に2個以上の活性水素原子を有する分子量が200〜20000の化合物、または分子内に2個以上の活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られるプレポリマーから調製される。
【0015】
ウレタン樹脂以外に塗布液に含有させる樹脂としては、例えば、水分散性または水溶性のポリエステル共重合樹脂が挙げられ、好ましくは水分散性スルホン酸金属塩基含有ポリエステル共重合樹脂が適している。
【0016】
ポリエステル共重合樹脂のジカルボン酸成分として、基材フィルムのポリエステルについて上述したもの以外に、樹脂の水分散性を付与するために、スルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸としてのスルホテレフタル酸を用いてもよい。また、グリコール成分としては、基材フィルムのポリエステルについて上述したもの以外に、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、グリセリンなどを用いてもよい。これらのジカルボン酸成分およびグリコール成分は、それぞれ単独で、または、任意の適切な2種以上を任意の適切な量で組み合わせて用いられる。
【0017】
水分散性スルホン酸金属塩基含有ポリエステル共重合樹脂を構成するポリエステルの好ましい例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6―ナフタレート、ポリ−1,4―シクロへキサンジメチレンテレフタレートが挙げられる。かかるポリエステルは、必要に応じて、30モル%以下、好ましくは15モル%以下の上記酸成分またはグリコール成分を共重合したものでもよく、あるいは、このようなモル比で、上記酸成分およびグリコール成分から得られるポリエステルとブレンドしたものでもよい。
【0018】
さらに、塗布液には、その性能を阻害しない範囲で、その他の成分を配合してもよい。例えば、被覆樹脂層に耐ブロッキング性および滑り性を付与する目的で、滑剤として不活性粒子および/またはワックス類を含有させてもよい。被覆樹脂層に含まれる樹脂に対する滑剤の配合割合は、通常、1.0〜15重量%の範囲である。好ましくは、フィルムの透明性を85%以上にするために、共重合ポリエステル樹脂に対して3.0〜7.0重量%の割合で滑剤を配合する。
【0019】
不活性粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ−シリカ複合酸化物、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、カオリナイト、タルク、マイカ、ゼオライトなどの無機粒子;ベンゾグアナミン樹脂架橋体、スチレン樹脂などの有機粒子が挙げられる。
【0020】
ワックス類としては、高級脂肪酸エステル類、カルナバワックス、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンなどの水分散性または水溶性のワックス類が挙げられる。
【0021】
被覆樹脂層の形成は、上記の成分を含有する塗布液を基材フィルムの少なくとも片面に塗工し、乾燥させることにより行われる。例えば、水分散性ウレタン樹脂、および、好ましくは水分散性ポリエステル共重合樹脂としての水分散性スルホン酸金属塩基含有ポリエステル共重合樹脂を配合した樹脂を含む塗布液の場合、固形分濃度は2〜10重量%、粘度は3〜50cps(B型粘度計により25℃で測定)である。
【0022】
この場合、塗膜厚さバラツキの小さい二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得るには、塗工および乾燥の条件を調整する必要がある。以下、その条件について詳しく説明する。
【0023】
塗布液を塗工するには、「最新コーティング技術の進歩」(原崎勇次著、(株)総合技術センター発行)に記載されているごく一般的な装置を用いることができる。ロールの直径はアプリケーターロールおよびメタリングロールともに10cm〜50cmであり、アプリケーターロール/メタリングロールの直径比は0.5〜2.0の範囲であることが好ましい。アプリケーターロールおよびメタリングロール配置は、水平または垂直など種々な配置が考えられる、塗布液の供給方法は数多くの方法があるが、重要な点はアプリケーターロールとメタリングロールとの間隙間が十分な塗布液で満たされるだけの供給量が最低限必要である。
【0024】
基材フィルムの少なくとも片面に塗布液を塗工するには、アプリケーターロールに基材フィルムを水平または垂直など種々な配置により接触させて、塗布液が形成するメニスカスにより、アプリケーターロール上の塗布液が基材フィルムに転写される方法が取られる。
【0025】
工業的規模の製造においては、塗布液の塗工速度は基材フィルムの製膜速度に依存する。基材フィルムの製膜速度はポリエステル樹脂を溶融押出する設備能力により決定される。例えば、溶融押出機の最大能力で二軸延伸フィルムを製膜する場合、溶融押出機の能力は厚さ100〜300μmのフィルムより厚さ38〜75μmのフィルムの方が一定であるので、製膜速度は厚さ100〜300μmのフィルムより厚さ38〜75μmのフィルムの方が早くなる。この製膜速度に合わせて目標塗膜厚さに保持するように、塗工時のアプリケーターロールの回転速度も製膜速度に比例して早くする必要がある。
【0026】
この際、アプリケーターロールの回転速度が早ければ、上記のような低粘度の塗布液では、ロール上でウネ状筋が発生する。このウネ状筋を除去しようとしてメタリングロールの回転速度を上げると、ウネ状筋の除去に効果を示すが、その結果、メタリングロールによる塗布液の液切れが悪くなる(塗布液のスヌケ現象の発生)。そこで、ロール間隙を狭くして、塗布液の液切れを防止する。
【0027】
逆に、溶融押出機の最大能力で二軸延伸フィルムを製膜する場合、製膜速度は厚さ38〜75μmのフィルムより厚さ100〜300μmのフィルムの方が遅くなる。塗膜厚さを等しく保持するためには、当然塗工速度も遅くなり、アプリケーターロールの回転速度も製膜速度に比例して遅くなる。アプリケーターロールの回転速度が遅いと、ロール上で塗布液のウネ状筋が発生せず、メタリングロールの回転速度も遅くなり、アプリケーターロール上の塗布液切れは十分である。それゆえ、目標塗膜厚さを保持するために、ロール間隙をより広くして塗膜の厚さを確保することになる。
【0028】
従来より上記のようなアプリケーターロールとメタリングロールとの回転速度およびロール間隙の関係は知られていた。従来、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールの塗膜厚さのバラツキを小さくするために、アプリケーターロールの精度(真円度と円筒度)を向上することは考慮されていなかったが、本発明では、現在入手できるアプリケーターロールの精度(真円度と円筒度)を向上させることで、フィルムロールの長さ方向の塗膜厚さのバラツキを90%以下にすることに成功した。
【0029】
すなわち、JIS B 0621で示されているように、ロール精度に関する真円度は、記録式真円度測定器を用いて決定された最小領域法による二つの同心円の各半径の差で表され、その単位はmmである。また、円筒度は、ロールを定盤上に置いた測微器付きスタンドを軸線方向に移動して、円筒上面に測定子を当てた状態で、全長にわたって種々の測定平面中で測定を実施し、そのときの読みの最大差の1/2で表され、その単位はmmである。
【0030】
従って、二軸延伸被覆フィルムロールに関して、厚さ38〜300μmの場合、ロール間隙をδ(μm)、ロール精度(真円度と円筒度)をγ/1000(mm)とすると、±γ÷δ×100(%)が長さ方向の塗膜厚さのバラツキを示す最小幅であり、この最小幅に塗工時の諸条件と塗膜厚さの測定誤差を含ませることで、塗膜厚さのバラツキを90%以下にすることが可能であることを見出した。
【0031】
すなわち、現在入手できる技術でロール精度(真円度と円筒度)を向上させることにより、長さ方向の塗膜厚さのバラツキを最小幅にできることから、具体的には、ロール精度(真円度と円筒度)を5/1000mm未満にすることで、本発明の二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールは、ハードコート加工のハードコート層との密着トラブルを防止するだけではなく、印刷時のインキなどの密着性トラブルも防止できる。
【0032】
塗膜厚さのバラツキが90%以下の範囲で最小値に近い値では、今後、アプリケーターロールの精度(真円度と円筒度)の向上と塗工時の諸条件と塗膜厚さの測定精度による誤差を含む塗膜厚さのバラツキが10%より小さくなっても、塗膜厚さのバラツキによるハードコート層との密着性の安定効果が期待できないので、塗膜厚さバラツキが10%〜90%である二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールが目的とする課題を解決できる範囲となる。
【0033】
さらに、厚さ100〜188μmのフィルムは、主にCRTの表面保護用フィルムおよびCRTの反射防止用フィルムに用いられ、塗膜厚さのバラツキを小さくすることが要求される。現在入手できる優れたロール精度(真円度と円筒度)γ/1000(mm)を有する塗工設備により塗工する場合、厚さ100〜188μmのフィルムは、厚さ38〜75μmのフィルムに比べて、ロール間隙δ(μm)が小さくなることから、±γ÷δ×100(%)がさらに小さくなる。それゆえ、本発明の二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールは、近年のCRT用としてハードコート層の耐久密着性のトラブル防止を目的とする課題を工業的規模で解決できる。
【0034】
また、塗布液の塗工に際し、リバースコーターの各ロールの表面仕上げを0.3S以下にし、かつ、アプリケーターロールおよびメタリングロールの精度(真円度と円筒度)を5/1000未満2/1000以上にすることにより、ウェット塗工量の変動を押さえ、かつ、塗膜のバラツキも押さえることができる。ロールの真円度と円筒度が5/1000以上はロールの回転によるロール間隙のバラツキが大きく、フィルムに付与されるウェット塗工量の変動が大きくなり、塗膜厚さのバラツキが90%以下であることを満足できない。好ましくは、精度(真円度と円筒度)が3/1000である塗工ロールを用いるのがよい。
【0035】
さらに、アプリケーターロールとメタリングロールとの間隙は、フィルムの厚さにより異なるが、目標とする塗膜厚さを保持するには、厚さ38〜100μmのフィルムの場合、20μmであり、厚さ100〜300μmのフィルムの場合、30〜50μmに調整すればよい。
【0036】
また、塗工時のフィルムテンションを4000〜10000N/原反幅(原反幅は1〜2m)にすることにより、工業的規模でフィルムの平面性が保持され(テンションはフィルムの厚さにより異なり、比較的薄いフィルムはより低いテンションを掛けることで平面性が保持される)、塗布液の転写量がフィルムの長さ方向で均一となる。10000N/原反幅を超えると、フィルム原反が変形するか、破断することがある。4000N/原反幅未満では、塗工時のフィルムの平面性が不十分となり、特にフィルムの蛇行も発生することがあり、塗布液の転写量がフィルムの長さ方向で不均一となり、フィルムのウェット塗工量が大きく変動することにより、塗膜厚さのバラツキもより大きくなる。
【0037】
次に、リバースロールで塗工直後、フィルムの両端面のみを把持するピンチロールを付与する。このピンチロールにフィルム両端部を把持させることにより、工業的規模では、フィルムの幅方向の平面性を向上させて、フィルム幅方向のウェット塗工量の安定化に寄与させ、それにより、フィルムロールの幅方向の塗膜厚さのバラツキと長さ方向の塗膜のバラツキとを小さくする。ピンチロールにフィルム両端部を把持させない場合は、フィルムの幅方向および長さ方向のウェット塗工量が大きく変動し、塗膜厚さのバラツキもより大きくなる。
【0038】
また、塗工時のロールとフィルムのキス長さをフィルムの幅方向で3〜10mmとすることにより、フィルムロールの幅方向および長さ方向の塗膜厚さのバラツキを小さくすることができる。ロールとフィルムのキス長さが10mmを超えると、ロールへのフィルム接触が強すぎて、フィルムに微小なキズが多数入り、フィルム外観不良となる。ロールとフィルムのキス長さが3mm未満であると、幅方向にエアー混入も発生して均一な塗工を達成することが困難になる。
【0039】
さらに、塗工直後の塗布液の乾燥温度は70〜140℃とする必要がある。乾燥温度が140℃を超えると、塗膜の過剰乾燥により塗膜が異常に収縮して、ヒビワレなどの塗膜亀裂が発生して、フィルム外観不良となることがある。乾燥温度が70℃未満であると、塗膜の乾燥が不十分になり、一軸方向への延伸前のガイドロールと接触する際に塗膜剥がれによる塗膜抜けが起きることにより、フィルム外観不良となる。
【0040】
以下、本発明の二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールの製造方法の一例について説明する。
【0041】
まず、不活性粒子を含有しないポリエステルをその融点を越える温度で押出機から溶融押出し、ガラス転移温度以下に冷却して、未延伸シートを得る。この未延伸シートを長さ方向に3〜5倍に、好ましくは3.5〜4.5倍に一軸延伸する。
【0042】
この一軸延伸フィルムに、真円度と円筒度が3/1000であるリバース塗工ロールを用いたロールキス塗工方式により、不活性粒子を含有する共重合ポリエステル樹脂の水分散性塗布液を塗工する。ウェット塗工量は、2g/m2以上14g/m2未満で、好ましくは4g/m2以上10g/m2未満である。
【0043】
塗布液を塗工した後、塗布液の溶媒を乾燥により除去するために、水および有機溶媒を蒸発させるのに適当な温度(例えば、100〜130℃)で熱風乾燥を行う。この塗工フィルムを幅方向に3〜5倍に、好ましくは3.5〜4.5倍に延伸し、熱固定処理及び必要に応じて緩和処理を行った後、ワインダーでフィルムを巻き上げる。
【0044】
あるいは、ポリエステル樹脂の融点を越える温度で押出機から溶融押出し、ガラス転移温度以下に冷却して未延伸シートを得て、この未延伸シートに真円度と円筒度が3/1000であるリバース塗工ロールを用いて不活性粒子を含有するポリウレタン樹脂および共重合ポリエステル樹脂の水分散性塗布液を塗工し、塗布液溶媒を乾燥により除去した後、同時二軸方向の延伸を行う方法がある。長さ方向および幅方向の延伸倍率は、通常、それぞれ3〜5倍、好ましくは3.5〜4.5倍である。
【0045】
ワインダーで巻き上げた塗工フィルムをスリッターで切断することにより、厚さが38〜300μm、幅が400〜1500mm、巻き長が400〜10000mの二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得る。
【0046】
このようにして得られる本発明の二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールは、例えば、LCDおよびCRTなどのディスプレイの表面保護用フィルムまたは反射防止用フィルムなどの表面基材、印刷ラベル基材に用いられる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0048】
実施例および比較例で用いられた物性測定方法と塗工条件に関わる方法は以下の通りである。
【0049】
(1)二軸延伸フィルムの厚さの評価
二軸延伸フィルムの厚さは、JIS C 2151に準じて、フィルムロールの長さ方向にマイクロメーター(ONO S0KKI社製 ST−022 GAUGESTAND)で測定する。
【0050】
(2)ロールの精度(真円度・円筒度)の評価
基材フィルムに塗布液を塗工するロールの真円度および円筒度は、JIS B0621に準じて測定する。真円度はロールを旋盤にチャックで固定してダイアルゲージを当てることにより測定し、円筒度も同様にダイアルゲージでX、Y方向を5点測定して評価する。
【0051】
(3)塗工キス長さの評価
塗工フィルムがリバースコートロールと接触することにより、接触フィルム面に塗布液溜まりができるが、この塗布液溜まりを塗工キス部と呼び、このキス長さは金尺で測定して幅(mm)で示す。
【0052】
(4)二軸延伸フィルムの塗膜厚さのバラツキ評価
塗膜厚さのバラツキは、フィルムロールの中央位置で長さ方向に捲き始め10mと捲き終わり10mを除き、長さ方向にロールを4等分した位置において、20cmのピッチおきに10cm×10cmのサンプルを4点取り、このサンプルを下記方法によりTEMで測定した塗膜厚さ(nm)により求める。
【0053】
上記TEMの測定方法は、サンプルを可視光硬化型樹脂(例えば、エボキシ樹脂)により室温で放置硬化後、ダイヤモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて、超薄切片を作製して四酸化ルテニウムにより染色後、日本電子(株)社製のTEM2010を用いて、フィルムの断面写真(倍率は加速電圧200kvでDirect Mas×30000、Final Mag×76200)を得て、この写真より塗膜厚さの幅方向に5点測定した平均値を塗膜厚さとして算出する。ただし、全サンプルのTEMによる測定値の最も高い方の値から3点の測定値と最も低い方の値から3点の測定値を除外した値を用いて、塗膜厚さのバラツキを求める。
【0054】
なお、ブロックイソシアネートからなる水分散性ウレタン樹脂を被覆樹脂層に用いる場合は、蛍光X線分析により、Na−Kα線を用いて蛍光X線の強度を測定して、その測定値と予めTEMにより求めた塗膜厚さとの関係による検量線を作成後、比較的迅速で簡便に測定できる蛍光X線測定値より塗膜厚さが求められるようにしておいてもよい。
【0055】
(5)塗膜のキズ
塗膜厚さのバラツキ評価用のサンプルについて、フィルムの塗膜上に存在するキズ(幅10μm以上、長さは100μm以上のほぼ長さ方向の存在が明確に確認できるもの)を室内蛍光灯の反射光により、裸眼で確認した箇所に印を付け、この箇所をさらに微分干渉顕微鏡による微分干渉法(対物×10倍、対眼×10倍の合計拡大率100倍)による目視チェックを実施し、以下の基準で3段階のランクを付ける。
○:すべてのサンプルの微分干渉顕微鏡(対物×10倍、対眼×10倍の合計拡大率100倍)目視でキズを確認できず
△:すべてのサンプルの裸眼目視でキズを確認できないが、微分干渉顕微鏡(対物×10倍、対眼×10倍の100倍)目視でキズを確認できる
×:すべてのサンプルの裸眼目視でキズを確認できる
【0056】
(6)塗膜抜け
塗膜厚さのバラツキ評価用のサンプルを一枚づつ取り上げ、フィルムの塗膜上に存在する塗膜抜け(目視で確認できる大きさの塗膜抜け、すなわち約100μmφ以上の円形または楕円形の塗膜抜けを示すのもの)を室内蛍光灯の反射光により、裸眼で目視チェックを実施し、以下の基準で2段階のランクを付ける。
○:すべてのサンプルの裸眼目視で亀裂を確認できず
×:すべてのサンプルの裸眼目視で亀裂を確認できる
【0057】
(7)ハードコート密着性
塗膜厚さのバラツキ評価用のサンプルについて、フィルムの塗膜面に紫外線硬化型ハードコート剤(大日本インキ化学工業(株)社製のUNIDIC V−9005)をハンドコートで塗膜厚さ10μmとなるように塗工後、UV露光装置により500mj/cm2の照射を行い、ハードコート剤を硬化をさせてハードコートフィルムを得る。
このハードコートフィルムのハードコート面に、エヌティー(株)社製のNTカッターL−500Rで、測定サンプルごとに絶えず未使用の新しい刃を用いて、2mm角の碁盤目傷を100マス入れ、その上をニチバン(株)社製の24mm幅セロテープ(登録商標)を気泡の入らないように貼付し、その上を5回ほど体重を掛けこすり、充分に密着させた後、上記ハードコート面のセロテープ(登録商標)が密着されていない前後の両端部を手で押さえ、セロテープ(登録商標)の上の方向(角度90度方向)に急速に剥離し、剥離後のハードコート面を観察し、ハードコート層残留率(ハードコートがマス目全体または一部がセロテープ(登録商標)に持って行かれた場合は、このマス目についてはハードコート残留無しとして、マス目にハードーコート層の残留が認められたマス目数を全体のマス目数の比で表す)をもって、以下の基準で4段階のランクを付ける。
◎:すべての測定で碁盤目剥離テストでフィルム面側のインキ層の残留率が96/100以上
○:すべての測定のうち、碁盤目剥離テストでフィルム面側のインキ層の残留率が90/100〜95/100が10%以下、残りは96/100以上
△:すべての測定のうち、碁盤目剥離テストでフィルム面側のインキ層の残留率が90/100〜95/100が10%を超え50%以下、残りは96/100以上
×:すべての測定で碁盤目剥離テストでフィルム面側のインキ層の残留率が90/100〜95/100が50%を超える
【0058】
実施例1
水分散性ウレタン樹脂として、重亜硫酸ソーダーでブロックしたイソシアネート基を有する自己架橋型ポリウレタン樹脂である第一工業製薬(株)社製のエラストロンH−3 11.5重量部と、水分散性ポリエステル共重合樹脂として、スルホン酸ナトリウム含有ポリエステル共重合樹脂である東洋紡績(株)社製のMD−1250 7.5重量部とを、水39重量部およびイプロピルアルコール39重量部の混合溶液に加え、十分に混合した。
【0059】
さらに、自己架橋型ポリウレタン樹脂であるエラストロンH−3の触媒として、第一工業製薬(株)社製のエラストロンCat−64 0.24重量部を、上記の混合液に加え、アニオン性界面活性剤である大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF−142D 0.06重量部を加えて、十分に撹拌混合した。
【0060】
次いで、凝集体シリカ(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)0.02重量部を水2.68重量部にホモジナイザーにより1000rpmで1時間分散させた後、上記水分散性ウレタン樹脂および水分散性ポリエステル共重合樹脂の樹脂混合液97.5重量部にサイリシア310の水分散液2.7重量部を撹拌しながら加えて、塗布液を得た。
【0061】
一方、溶融押出し後、25℃のキャスティングロールにより冷却して得られた厚さ608μmのポリエステル樹脂シートを長さ方向に4倍延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの片面に、上記塗布液を、ウルトラハードクロムメッキ仕上げによる表面が0.2S以下に製作された真円度と円筒度が3/1000である塗工ロールを用いて、フィルムテンション4200N/原反幅、塗工キス長さ7mm、ウェットコート量を6.5g/m2となるように塗工し、温度110℃で乾燥させた後、幅方向に4倍に延伸し、次いで220℃で熱固定処理を行い、厚さ38μmの二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得た。
【0062】
次いで、延伸されたフィルムの幅方向において、フィルム全幅を4等分した内側の二等分位置より1200mm幅でスリットすることで、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得た。
【0063】
実施例2
ポリエステル樹脂シートの厚さが1600μm、塗工ロールのフィルムテンションが8000N/原反幅、塗工キス長さが4mm、塗工後の乾燥温度が120℃、二軸延伸後のフィルム厚さが100μmであること以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得た。
【0064】
実施例3
ポリエステル樹脂シートの厚さが4000μm、塗工ロールのフィルムテンションが9500N/原反幅、塗工キス長さが5mm、塗工後の乾燥温度が90℃、二軸延伸後のフィルム厚さが250μmであること以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得た。
【0065】
実施例4
実施例1と同様にして、厚さ38μmの二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得たが、延伸されたフィルムの幅方向において、フィルム全幅を4等分した外側の端部位置より1200mm幅でスリットすることで、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得た。
【0066】
実施例5
実施例3と同様にして、厚さ250μmの二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得たが、延伸されたフィルムの幅方向において、フィルム全幅を4等分した外側の端部位置より1200mm幅でスリットすることで、用いるべき二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得た。
【0067】
比較例1
塗工ロールの真円度と円筒度が6/1000であること以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得た。
【0068】
比較例2
塗工ロールの真円度と円筒度が6/1000、塗工ロールのフィルムテンションが3200N/原反幅、塗工後の乾燥温度が150℃であり、この条件で幅方向の均一塗工のために塗工キス長さを13mmにしたこと以外は、実施例2と同様にして、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得ようとしたが、塗工キス部でフィルムにキズが入っているのが塗工時に目視で観察された。
【0069】
比較例3
塗工ロールの真円度と円筒度が6/1000、塗工ロールのフィルムテンションが3500N/原反幅、塗布液温度が35℃、塗工後の乾燥温度を50℃であり、比較例2で塗工キス部でフィルムにキズが入っているのが塗工時に目視で観察されたために、塗工キス長さを2mmにしたこと以外は、実施例3と同様にして、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得ようとしたが、塗工キス部で塗膜抜けが塗工時に目視で観察された。
【0070】
比較例4
塗工ロールのフィルムテンションが16000N/原反幅、塗工後の乾燥温度が50℃であり、比較例2で塗工キス部でフィルムにキズが入っているのが塗工時に目視で観察されたために、塗工キス長さを2mmにしたこと以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得ようとしたが、フィルムの長さ方向で部分的にフィルムの伸びて変形したので、塗工を中止した。
【0071】
比較例5
塗工ロールのフィルムテンションが16000N/原反幅、塗工後の乾燥温度が140℃であり、比較例2で塗工キス部でフィルムにキズが入っているのが塗工時に目視で観察されたために、塗工キス長さを2mmにしたこと以外は、実施例2と同様にして、二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールを得ようとしたが、フィルムの長さ方向で部分的にフィルムが伸びて変形したので、塗工を中止した。
【0072】
上記の実施例および比較例におけるフィルムロールの製造条件を表1に示し、この条件で得られたフィルムロールの評価結果を表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、ハードコートなどの後加工時に積層される他の機能層との密着性の品質変動を小さくできる、例えば、実用上十分なハードコートなどとの密着性のバラツキを低減することで、加工歩留まりを改善できる二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールが提供される。かかる二軸延伸被覆ポリエステルフィルムロールは、LCDおよびCRTなどのディスプレイの表面保護用フィルムまたは反射防止用フィルムなどの表面基材、印刷ラベル基材など、一般工業用途に有用である。
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