JP2004013128A - 蛍光顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】波長選択素子を切替えることなく蛍光観察が可能な蛍光顕微鏡を提供することを目的とする。
【解決手段】標本を照明する光源と、光源と前記標本との間に配置された第1の波長選択素子と、第1の波長選択素子前記標本の間に配置された対物レンズと、標本の像を撮像する撮像素子と、撮像素子と前記標本との間に配置された第2の波長選択素子とを備えた蛍光顕微鏡において、複数の波長の蛍光像を撮像でき、かつ、各ピクセル毎で波長分離が可能な撮像素子を用いた。
【選択図】 図2
【解決手段】標本を照明する光源と、光源と前記標本との間に配置された第1の波長選択素子と、第1の波長選択素子前記標本の間に配置された対物レンズと、標本の像を撮像する撮像素子と、撮像素子と前記標本との間に配置された第2の波長選択素子とを備えた蛍光顕微鏡において、複数の波長の蛍光像を撮像でき、かつ、各ピクセル毎で波長分離が可能な撮像素子を用いた。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
蛍光顕微鏡、特にFRETの観察やクロスコリレーションの測定に使用できる蛍光顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞機能の動体観察において、細胞内カルシュウムイオン濃度の変動が重要なファクターとなっている。顕微鏡を用いた生体内細胞のカルシュウムイオン濃度の観察には、Indo−1, Cameleonといった1波長励起、2波長測光の蛍光指示薬が用いられる。1波長励起、2波長測光形の蛍光指示薬は、異なる2つの波長の蛍光強度の比を求めることにより、蛍光指示薬自体の濃度に左右されずに、定量的にカルシュウムイオン濃度を測定することができるので、多くの研究者に用いられている。Cameleonは、2種類の蛍光タンパクを組み合わせた蛍光指示薬である。
【0003】
また、GFP (green fluorescent protein) を用いる観察もある。GFP を使った観察法の一つにFRET(fluorescent resonance energy transfer)があり、多くの研究者に利用されている。FRETでは、標本上の同一の位置でのドナーの蛍光とアクセプタの蛍光、FRET光の明るさを測定する。この実験を行う場合にも、1波長励起2波長測光を行う場合がある。
【0004】
つまり、カルシュウムの濃度を見たり、また、FRETで分子の相関をみたりする場合のは、1波長励起2波長測光をおこなう場合が非常に重要になる。このように、指示薬を用い、1波長励起2波長測光を行おうとすると、2つの異なる波長の蛍光でイメージングする必要がある。
【0005】
このような場合、標本を複数の波長で同時に観察出来ることが好ましい。そこで、これまでは、蛍光顕微鏡に1つの撮像素子を装着し、この撮像素子の前に透過波長域の異なる複数個のバンドパスフィルターを有するフィルターホイールを配置し、このフィルターホーイールを回転させて各波長ごとの蛍光像を撮像していた。
【0006】
また、複数の撮像素子を装着する構成では、各波長の蛍光が予め決まった撮像素子に向かうように、ダイクロイックミラーで蛍光を分離していた。図7は従来の蛍光顕微鏡の一つで、複数の撮像素子を装着した蛍光顕微鏡である。光源LSからの照明光は、光路7に沿って進み、ダイクロイックミラー8に到達する。ダイクロイックミラー8では所定の波長域の励起光だけが反射される。ダイクロイックミラー8で反射した励起光は対物レンズ6に入射し、標本5を照明する。励起光で励起された蛍光色素は、蛍光を放射する。標本5から放射された蛍光は、対物レンズ6を通り、さらに、ダイクロイックミラー8を通過する。そして、結像レンズ12を通過し、ダイクロイックミラー10に到達する。ダイクロイックミラー10では所定の波長域の蛍光が反射され、残りの波長域の蛍光は透過する。ダイクロイックミラー10で反射された蛍光は、第1の撮像素子9上に蛍光像を形成する。一方、ダイクロイックミラー10を透過した蛍光は光路11に沿って進み、第2の撮像素子14上に蛍光像を形成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フィルターホイールを回転させる方法では、高速でバンドパスフィルターを切り替えるのが困難であった。そのため、カルシウムの変化や分子の相関の変化を高速で測定したい場合、バンドパスフィルターの切り替えに時間がかかるため2つの蛍光波長の撮像にタイムラグが生じ、測定精度が低下するという問題点があった。また、バンドパスフィルター切り替えによって、2つの波長の像がわずかにずれるという問題があった。さらに、フィルターホイールの回転によって振動が発生したり、複数の波長の蛍光を同時に撮像できないなどの問題があった。
【0008】
また、複数の撮像素子を用いる方法では、光学系の収差や歪が影響したり、撮像素子の取り付けによるずれの影響から複数の撮像素子の像をピクセル単位で重ね合わせることは非常に困難であった。そのため、2つの蛍光波長の像強度比が正確に求められなかった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、波長選択素子を切替えることなく、複数の波長の蛍光像を同時に撮像できる蛍光顕微鏡、または分光顕微鏡を実現することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用】
上記問題を解決するために、本発明の蛍光顕微鏡は、標本を照明する光源と、該光源と前記標本との間に配置された第1の波長選択素子と、該第1の波長選択素子と前記標本の間に配置された対物レンズと、前記標本の像を撮像する撮像素子と、該撮像素子と前記標本との間に配置された第2の波長選択素子とを備え、前記撮像素子が複数の波長の蛍光像を撮像でき、かつ、各ピクセル毎に波長分離が可能な撮像素子であることを特徴とする。
【0011】
また、励起光と蛍光を分離する為のダイクロイックフィルターを有することを特徴とする。
また、像をテレセントリックな条件で撮像素子に投影することができる光学系を有することを特徴とする
【0012】
【発明の実施の形態】
本実施の形態の蛍光顕微鏡は、複数の波長の蛍光をピクセル毎に波長分離して撮像できる撮像素子を用いている。ここで、複数の波長の蛍光像を波長分離して撮像できる撮像素子とは、たとえばUSP5,965,875号公報に示されている撮像素子である。USP5,965,875号公報に開示されている撮像素子4は、図1に示すように、複数のp層、n層が光軸方向形成されている。このような構成にすることで、複数の波長の光3を深さ方向に分離することができる。ただし、USP5965875号公報に開示されている撮像素子の各ピクセルは、深さ方向に沿って、赤(R)、緑(G)、青(B)、に感度を有する。したがって、そのままこの撮像素子を用いても、目的の蛍光色素に対応する複数の蛍光を捕らえることができない。
【0013】
そこで、撮像素子のP層やn層の厚さを最適化して検出する蛍光の波長に最適化する必要がある。たとえば、図2に示すように、この撮像素子は、3つのp−n接合を有している。そして、それぞれの深さ方向の厚みは、蛍光色素の蛍光に最適化されている。例えば、CFP, YFP、DsRedの3種類の蛍光色素を用いる場合は、p層及びn層の厚みは、476nm, 529nm, 580nmの3つの波長を深さ方向で分光できるような値となっている。この結果、各波長を効率よく捕らえることができる。
【0014】
また、通常の顕微鏡には励起光のもれ光をカットするフィルターがもちいられているが、この撮像素子を用いた場合は、励起光の感度を有さないような位置のp−n接合を設ければ励起光のもれ光をカットするフィルターは必ずしも必要ない。しかし、像のコントラストを非常に気にするのなら、励起光の漏れ光をカットする為のフィルターを挿入した方が励起光のもれ光の影響を撮像素子が受けないので望ましい。そうすると、よりコントラストの良い蛍光像が観察できる。
【0015】
また、観察したい色素の蛍光以外の光、たとえば、標本の自家蛍光などををカットすると蛍光像のコントラストは向上する。そこで、像のコントラストを更に上げたい場合は、デュアルバンドフィルターを撮像素子の前に装着するとよい。例としては、FRET像を観察したい場合は、CFPの蛍光波長476nmとYFPの蛍光波長529nmの両方の波長を通し、それ以外の波長の光をカットするデュアルバンドフィルターを撮像素子の前に装着するとよい。
【0016】
また、蛍光イメージングでよく使われる、GFPやCFP、YFP、DsRedなどの蛍光タンパクのイメージングを行う場合には、以下に示す蛍光波長を検出できなければならない。たとえば、GFPの場合は510nmが蛍光波長のピーク、CFPの場合は476nmが蛍光波長のピーク、YFPの場合は529nmが蛍光波長のピーク、DsRedの場合は580nmが蛍光波長のピークである。2種類の蛍光色素を用いる場合は、上記蛍光波長を参考に設計されたデュアルバンドフィルターを用いればよい。また、3種類の蛍光色素を用いる場合は、上記蛍光波長を参考に設計されたトリプルバンドフィルターを用いればよい。例としては、3色同時に見るためにCFP, YFP, DsRedを加えて観察したい場合は、476nm, 529nm, 580nmの3つの波長を通すトリプルバンドフィルターを装着すればよい。そうすると、測定に不必要な波長の光をカットして測定することができる。
【0017】
また、GFPはおわんくらげのたんぱく質をもとに作成されているが、光るたんぱく質はおわんくらげ以外のタンパクからも作成することができる。このような光るたんぱく質なら何でも蛍光顕微鏡の蛍光色素として使うことができる。また、このような光るタンパク質を使わなくても、ナノクリスタルと呼ばれる量子ドットを用いて、量子ドットの発色で標本の変化を観察できる。この場合、標本でおきているFRETの現象や、クロスコリレーションなどの分子の相関を観察することができる。この場合、目的のタンパクや、ペプチドにそれぞれ、光る波長の異なるナノクリスタルを着けてあげればよい。
【0018】
このような撮像素子(複数のp層、n層が光軸方向構成されていることで複数の波長の光を分離できる素子)を用い、撮像範囲全体で光量ムラや色むらがない像を撮像したい場合は、像をテレセントリックな条件で撮像素子に投影することが重要となる。つまり、像を瞳位置無限遠で撮像素子に投影させなければならない。もし、テレセントリックにならない光学系で像を撮像素子に投影すると、像の中心と周辺では素子に入射する光線の角度が異なることになる。そのため、波長ごとの深さ方向の到達距離が像位置で異なる。その結果、像にシエーディングや、光量ムラ、色むらが生じる場合がある。
【0019】
また、撮像素子に入射する光は波長によって、光軸方向に到達する距離が異なる。そのため、光学系の色収差を素子の感度特性にあわせて最適化するのが望ましい。たとえば、先の3つの蛍光タンパクを用いた例では、476nmの波長の光は、素子の表面近傍で光が収束するように光学系を設計する。また、529nmの波長の光は、撮像素子の中間部に収束するように、光学系を設計する。さらに、580nmの光は、撮像素子の深部に結像するように光学系を設計する。このように光学系を設計すると、撮像素子に到達した光を無駄なく検出することができる。
【0020】
さらに、多波長を分離してイメージングしたい場合は、P層とn層の組合せを多くすれば良い。たとえば、p層、n層、p層、n層、p層、n層、p層という構造にすれば、更に波長を細かく分けて検出できる。
【0021】
実施例1
図3に実施例1の蛍光顕微鏡を示す。光源LSからの照明光は、光路17に沿って進み、ダイクロイックミラー22に到達する。ダイクロイックミラー22では所定の波長域の励起光だけが反射される。ダイクロイックミラー22で反射した照明光は対物レンズ16に入射し、標本15を照明する。照明光で励起された蛍光色素は、蛍光を放射する。標本15から放射された蛍光は、対物レンズ16を通り、さらに、ダイクロイックミラー22を通過する。そして、ダイクロイックミラー22を通過した光は、ミラー19で反射され、20の位置に像を形成する。
【0022】
この20の位置には図2に示した撮像素子が配置されている。本実施例では、撮像素子はCFP、YFP、DsRedに最適化されている。撮像素子は、入射側から三層構造で構成され、1層目、入射面側は、580nmより短い波長が到達できる厚みを設定してある。中間の層は、529nmより短い光が到達できる厚みに設定してある。そして、最後の最も深い層は529nmより長い光が到達する厚みとなっている。そして、それぞれの層に隣接するp−n接合部で発生する電位変化を検出し、それから、計算を行い、各波長の光量を算出する。これを各画素ごとに行い、各波長における蛍光像の情報を得る。
【0023】
実施例2
実施例2の蛍光顕微鏡を図4に示す。本実施例は、実施例1に特定の蛍光波長のみ通すフィルターを組み合わせたものである。フィルター23がトリプルバンドパスフィルターを表す。
標本15から放射された蛍光は、対物レンズ16を通り、さらに、ダイクロイックミラー22を通過する。そして、目的の蛍光のみを取り出すトリプルバンドパスフィルター23に入射する。トリプルバンドパスフィルター23では、所定の波長の蛍光のみが透過する。目的の蛍光のみを取り出すトリプルバンドパスフィルター23を透過した蛍光は結像レンズ18を通過し、ミラー19で反射され、20の位置に像を形成する。
このトリプルバンドフィルターは、CFP、YFP、DsRedの蛍光波長、476nm, 529nm, 580nmに対応するようになっている。図5が透過率を示す図である。
【0024】
本実施例の顕微鏡は、目的の波長を取り出すトリプルバンドパスフィルターの波長を最適化すれば、ナノクリスタルと呼ばれる量子ドットを用いても、標本でおきているFRETの現象や、クロスコリレーションなどの分子の相関を観察することができる。ここで用いるトリプルバンドフィルターは、2波長を通すデュアルバンドフィルターでも、3波長が選択できるトリプルバンドフィルターでも良い。この場合、目的のタンパクや、ペプチドにそれぞれ、光る波長の異なるナノクリスタルを着けてあげればよい。
【0025】
実施例3
図6は蛍光顕微鏡の撮像光学系を示す図である。25、26は、撮像素子に入射する光線をテレセントリックにするレンズである。このようなレンズ25、26を有することで、撮像素子に入射する主光線を撮像素子の面と垂直にすることができる。レンズ26から射出する主光線は射出瞳無限遠になっている。
【0026】
本発明には以下の構成が含まれる。
(1) 標本を照明する光源と、該光源と前記標本との間に配置された第1の波長選択素子と、該第1の波長選択素子と前記標本の間に配置された対物レンズと、前記標本の像を撮像する撮像素子と、該撮像素子と前記標本との間に配置された第2の波長選択素子とを備えた蛍光顕微鏡であって、前記撮像素子が複数の波長の蛍光像を撮像でき、かつ、各ピクセル毎に波長分離が可能な撮像素子である蛍光顕微鏡。
(2) 励起光と蛍光を分離する為のダイクロイックフィルターを有する。
(3) 像をテレセントリックな条件で撮像素子に投影することができる光学系を有する。
(4) 標本にFRET観察をおこなう場合に必要なドナーとアクセプターを有することを特徴とする。
(5) 複数の波長の光を通す為のバンドパスフィルターを有することを特徴とする。
(6) 標本に光るたんぱく質、たとえば、CFP、YFP、GFP、RFP、DsRed、を用いて観察することを特徴とする。
(7) ナノクリスタルなどの光を放射する半導体でできたヒ゛ース゛を標本として用い、FRET観察を行う。
(8) 撮像素子を冷却できることを特徴とする。
【0027】
【発明の効果】
本発明の蛍光顕微鏡では、撮像素子の横方向には色ずれが生じないので、1点からの複数の波長の像が撮れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】1つのピクセルが赤(R)、青(B)、緑(G)に感度を有する撮像素子を示す図である。
【図2】1つのピクセルが476nm, 529nm, 580nm感度を有する撮像素子を示す図である。
【図3】実施例1の蛍光顕微鏡の構成を示す図である。
【図4】実施例2の蛍光顕微鏡の構成を示す図である。
【図5】トリプルバンドフィルターの透過率を示す図である。
【図6】蛍光顕微鏡の撮像光学系の構成を示す図である。
【図7】従来の蛍光顕微鏡の構成を示す図である。
【符号の説明】
3 複数の波長の光
4 撮像素子
5 標本
6 対物レンズ
7 光路
8 ダイクロイックミラー
9 第1の撮像素子
10 ダイクロイックミラー
11 光路
12 結像レンズ
14 第2の撮像素子
15 標本
16 対物レンズ、
17 光路
18 結像レンズ
19 ミラー
20 像位置
22 ダイクロイックミラー
23 トリプルバンドパスフィルター
25、26 レンズ
LS 光源
【発明の属する技術分野】
蛍光顕微鏡、特にFRETの観察やクロスコリレーションの測定に使用できる蛍光顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞機能の動体観察において、細胞内カルシュウムイオン濃度の変動が重要なファクターとなっている。顕微鏡を用いた生体内細胞のカルシュウムイオン濃度の観察には、Indo−1, Cameleonといった1波長励起、2波長測光の蛍光指示薬が用いられる。1波長励起、2波長測光形の蛍光指示薬は、異なる2つの波長の蛍光強度の比を求めることにより、蛍光指示薬自体の濃度に左右されずに、定量的にカルシュウムイオン濃度を測定することができるので、多くの研究者に用いられている。Cameleonは、2種類の蛍光タンパクを組み合わせた蛍光指示薬である。
【0003】
また、GFP (green fluorescent protein) を用いる観察もある。GFP を使った観察法の一つにFRET(fluorescent resonance energy transfer)があり、多くの研究者に利用されている。FRETでは、標本上の同一の位置でのドナーの蛍光とアクセプタの蛍光、FRET光の明るさを測定する。この実験を行う場合にも、1波長励起2波長測光を行う場合がある。
【0004】
つまり、カルシュウムの濃度を見たり、また、FRETで分子の相関をみたりする場合のは、1波長励起2波長測光をおこなう場合が非常に重要になる。このように、指示薬を用い、1波長励起2波長測光を行おうとすると、2つの異なる波長の蛍光でイメージングする必要がある。
【0005】
このような場合、標本を複数の波長で同時に観察出来ることが好ましい。そこで、これまでは、蛍光顕微鏡に1つの撮像素子を装着し、この撮像素子の前に透過波長域の異なる複数個のバンドパスフィルターを有するフィルターホイールを配置し、このフィルターホーイールを回転させて各波長ごとの蛍光像を撮像していた。
【0006】
また、複数の撮像素子を装着する構成では、各波長の蛍光が予め決まった撮像素子に向かうように、ダイクロイックミラーで蛍光を分離していた。図7は従来の蛍光顕微鏡の一つで、複数の撮像素子を装着した蛍光顕微鏡である。光源LSからの照明光は、光路7に沿って進み、ダイクロイックミラー8に到達する。ダイクロイックミラー8では所定の波長域の励起光だけが反射される。ダイクロイックミラー8で反射した励起光は対物レンズ6に入射し、標本5を照明する。励起光で励起された蛍光色素は、蛍光を放射する。標本5から放射された蛍光は、対物レンズ6を通り、さらに、ダイクロイックミラー8を通過する。そして、結像レンズ12を通過し、ダイクロイックミラー10に到達する。ダイクロイックミラー10では所定の波長域の蛍光が反射され、残りの波長域の蛍光は透過する。ダイクロイックミラー10で反射された蛍光は、第1の撮像素子9上に蛍光像を形成する。一方、ダイクロイックミラー10を透過した蛍光は光路11に沿って進み、第2の撮像素子14上に蛍光像を形成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フィルターホイールを回転させる方法では、高速でバンドパスフィルターを切り替えるのが困難であった。そのため、カルシウムの変化や分子の相関の変化を高速で測定したい場合、バンドパスフィルターの切り替えに時間がかかるため2つの蛍光波長の撮像にタイムラグが生じ、測定精度が低下するという問題点があった。また、バンドパスフィルター切り替えによって、2つの波長の像がわずかにずれるという問題があった。さらに、フィルターホイールの回転によって振動が発生したり、複数の波長の蛍光を同時に撮像できないなどの問題があった。
【0008】
また、複数の撮像素子を用いる方法では、光学系の収差や歪が影響したり、撮像素子の取り付けによるずれの影響から複数の撮像素子の像をピクセル単位で重ね合わせることは非常に困難であった。そのため、2つの蛍光波長の像強度比が正確に求められなかった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、波長選択素子を切替えることなく、複数の波長の蛍光像を同時に撮像できる蛍光顕微鏡、または分光顕微鏡を実現することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用】
上記問題を解決するために、本発明の蛍光顕微鏡は、標本を照明する光源と、該光源と前記標本との間に配置された第1の波長選択素子と、該第1の波長選択素子と前記標本の間に配置された対物レンズと、前記標本の像を撮像する撮像素子と、該撮像素子と前記標本との間に配置された第2の波長選択素子とを備え、前記撮像素子が複数の波長の蛍光像を撮像でき、かつ、各ピクセル毎に波長分離が可能な撮像素子であることを特徴とする。
【0011】
また、励起光と蛍光を分離する為のダイクロイックフィルターを有することを特徴とする。
また、像をテレセントリックな条件で撮像素子に投影することができる光学系を有することを特徴とする
【0012】
【発明の実施の形態】
本実施の形態の蛍光顕微鏡は、複数の波長の蛍光をピクセル毎に波長分離して撮像できる撮像素子を用いている。ここで、複数の波長の蛍光像を波長分離して撮像できる撮像素子とは、たとえばUSP5,965,875号公報に示されている撮像素子である。USP5,965,875号公報に開示されている撮像素子4は、図1に示すように、複数のp層、n層が光軸方向形成されている。このような構成にすることで、複数の波長の光3を深さ方向に分離することができる。ただし、USP5965875号公報に開示されている撮像素子の各ピクセルは、深さ方向に沿って、赤(R)、緑(G)、青(B)、に感度を有する。したがって、そのままこの撮像素子を用いても、目的の蛍光色素に対応する複数の蛍光を捕らえることができない。
【0013】
そこで、撮像素子のP層やn層の厚さを最適化して検出する蛍光の波長に最適化する必要がある。たとえば、図2に示すように、この撮像素子は、3つのp−n接合を有している。そして、それぞれの深さ方向の厚みは、蛍光色素の蛍光に最適化されている。例えば、CFP, YFP、DsRedの3種類の蛍光色素を用いる場合は、p層及びn層の厚みは、476nm, 529nm, 580nmの3つの波長を深さ方向で分光できるような値となっている。この結果、各波長を効率よく捕らえることができる。
【0014】
また、通常の顕微鏡には励起光のもれ光をカットするフィルターがもちいられているが、この撮像素子を用いた場合は、励起光の感度を有さないような位置のp−n接合を設ければ励起光のもれ光をカットするフィルターは必ずしも必要ない。しかし、像のコントラストを非常に気にするのなら、励起光の漏れ光をカットする為のフィルターを挿入した方が励起光のもれ光の影響を撮像素子が受けないので望ましい。そうすると、よりコントラストの良い蛍光像が観察できる。
【0015】
また、観察したい色素の蛍光以外の光、たとえば、標本の自家蛍光などををカットすると蛍光像のコントラストは向上する。そこで、像のコントラストを更に上げたい場合は、デュアルバンドフィルターを撮像素子の前に装着するとよい。例としては、FRET像を観察したい場合は、CFPの蛍光波長476nmとYFPの蛍光波長529nmの両方の波長を通し、それ以外の波長の光をカットするデュアルバンドフィルターを撮像素子の前に装着するとよい。
【0016】
また、蛍光イメージングでよく使われる、GFPやCFP、YFP、DsRedなどの蛍光タンパクのイメージングを行う場合には、以下に示す蛍光波長を検出できなければならない。たとえば、GFPの場合は510nmが蛍光波長のピーク、CFPの場合は476nmが蛍光波長のピーク、YFPの場合は529nmが蛍光波長のピーク、DsRedの場合は580nmが蛍光波長のピークである。2種類の蛍光色素を用いる場合は、上記蛍光波長を参考に設計されたデュアルバンドフィルターを用いればよい。また、3種類の蛍光色素を用いる場合は、上記蛍光波長を参考に設計されたトリプルバンドフィルターを用いればよい。例としては、3色同時に見るためにCFP, YFP, DsRedを加えて観察したい場合は、476nm, 529nm, 580nmの3つの波長を通すトリプルバンドフィルターを装着すればよい。そうすると、測定に不必要な波長の光をカットして測定することができる。
【0017】
また、GFPはおわんくらげのたんぱく質をもとに作成されているが、光るたんぱく質はおわんくらげ以外のタンパクからも作成することができる。このような光るたんぱく質なら何でも蛍光顕微鏡の蛍光色素として使うことができる。また、このような光るタンパク質を使わなくても、ナノクリスタルと呼ばれる量子ドットを用いて、量子ドットの発色で標本の変化を観察できる。この場合、標本でおきているFRETの現象や、クロスコリレーションなどの分子の相関を観察することができる。この場合、目的のタンパクや、ペプチドにそれぞれ、光る波長の異なるナノクリスタルを着けてあげればよい。
【0018】
このような撮像素子(複数のp層、n層が光軸方向構成されていることで複数の波長の光を分離できる素子)を用い、撮像範囲全体で光量ムラや色むらがない像を撮像したい場合は、像をテレセントリックな条件で撮像素子に投影することが重要となる。つまり、像を瞳位置無限遠で撮像素子に投影させなければならない。もし、テレセントリックにならない光学系で像を撮像素子に投影すると、像の中心と周辺では素子に入射する光線の角度が異なることになる。そのため、波長ごとの深さ方向の到達距離が像位置で異なる。その結果、像にシエーディングや、光量ムラ、色むらが生じる場合がある。
【0019】
また、撮像素子に入射する光は波長によって、光軸方向に到達する距離が異なる。そのため、光学系の色収差を素子の感度特性にあわせて最適化するのが望ましい。たとえば、先の3つの蛍光タンパクを用いた例では、476nmの波長の光は、素子の表面近傍で光が収束するように光学系を設計する。また、529nmの波長の光は、撮像素子の中間部に収束するように、光学系を設計する。さらに、580nmの光は、撮像素子の深部に結像するように光学系を設計する。このように光学系を設計すると、撮像素子に到達した光を無駄なく検出することができる。
【0020】
さらに、多波長を分離してイメージングしたい場合は、P層とn層の組合せを多くすれば良い。たとえば、p層、n層、p層、n層、p層、n層、p層という構造にすれば、更に波長を細かく分けて検出できる。
【0021】
実施例1
図3に実施例1の蛍光顕微鏡を示す。光源LSからの照明光は、光路17に沿って進み、ダイクロイックミラー22に到達する。ダイクロイックミラー22では所定の波長域の励起光だけが反射される。ダイクロイックミラー22で反射した照明光は対物レンズ16に入射し、標本15を照明する。照明光で励起された蛍光色素は、蛍光を放射する。標本15から放射された蛍光は、対物レンズ16を通り、さらに、ダイクロイックミラー22を通過する。そして、ダイクロイックミラー22を通過した光は、ミラー19で反射され、20の位置に像を形成する。
【0022】
この20の位置には図2に示した撮像素子が配置されている。本実施例では、撮像素子はCFP、YFP、DsRedに最適化されている。撮像素子は、入射側から三層構造で構成され、1層目、入射面側は、580nmより短い波長が到達できる厚みを設定してある。中間の層は、529nmより短い光が到達できる厚みに設定してある。そして、最後の最も深い層は529nmより長い光が到達する厚みとなっている。そして、それぞれの層に隣接するp−n接合部で発生する電位変化を検出し、それから、計算を行い、各波長の光量を算出する。これを各画素ごとに行い、各波長における蛍光像の情報を得る。
【0023】
実施例2
実施例2の蛍光顕微鏡を図4に示す。本実施例は、実施例1に特定の蛍光波長のみ通すフィルターを組み合わせたものである。フィルター23がトリプルバンドパスフィルターを表す。
標本15から放射された蛍光は、対物レンズ16を通り、さらに、ダイクロイックミラー22を通過する。そして、目的の蛍光のみを取り出すトリプルバンドパスフィルター23に入射する。トリプルバンドパスフィルター23では、所定の波長の蛍光のみが透過する。目的の蛍光のみを取り出すトリプルバンドパスフィルター23を透過した蛍光は結像レンズ18を通過し、ミラー19で反射され、20の位置に像を形成する。
このトリプルバンドフィルターは、CFP、YFP、DsRedの蛍光波長、476nm, 529nm, 580nmに対応するようになっている。図5が透過率を示す図である。
【0024】
本実施例の顕微鏡は、目的の波長を取り出すトリプルバンドパスフィルターの波長を最適化すれば、ナノクリスタルと呼ばれる量子ドットを用いても、標本でおきているFRETの現象や、クロスコリレーションなどの分子の相関を観察することができる。ここで用いるトリプルバンドフィルターは、2波長を通すデュアルバンドフィルターでも、3波長が選択できるトリプルバンドフィルターでも良い。この場合、目的のタンパクや、ペプチドにそれぞれ、光る波長の異なるナノクリスタルを着けてあげればよい。
【0025】
実施例3
図6は蛍光顕微鏡の撮像光学系を示す図である。25、26は、撮像素子に入射する光線をテレセントリックにするレンズである。このようなレンズ25、26を有することで、撮像素子に入射する主光線を撮像素子の面と垂直にすることができる。レンズ26から射出する主光線は射出瞳無限遠になっている。
【0026】
本発明には以下の構成が含まれる。
(1) 標本を照明する光源と、該光源と前記標本との間に配置された第1の波長選択素子と、該第1の波長選択素子と前記標本の間に配置された対物レンズと、前記標本の像を撮像する撮像素子と、該撮像素子と前記標本との間に配置された第2の波長選択素子とを備えた蛍光顕微鏡であって、前記撮像素子が複数の波長の蛍光像を撮像でき、かつ、各ピクセル毎に波長分離が可能な撮像素子である蛍光顕微鏡。
(2) 励起光と蛍光を分離する為のダイクロイックフィルターを有する。
(3) 像をテレセントリックな条件で撮像素子に投影することができる光学系を有する。
(4) 標本にFRET観察をおこなう場合に必要なドナーとアクセプターを有することを特徴とする。
(5) 複数の波長の光を通す為のバンドパスフィルターを有することを特徴とする。
(6) 標本に光るたんぱく質、たとえば、CFP、YFP、GFP、RFP、DsRed、を用いて観察することを特徴とする。
(7) ナノクリスタルなどの光を放射する半導体でできたヒ゛ース゛を標本として用い、FRET観察を行う。
(8) 撮像素子を冷却できることを特徴とする。
【0027】
【発明の効果】
本発明の蛍光顕微鏡では、撮像素子の横方向には色ずれが生じないので、1点からの複数の波長の像が撮れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】1つのピクセルが赤(R)、青(B)、緑(G)に感度を有する撮像素子を示す図である。
【図2】1つのピクセルが476nm, 529nm, 580nm感度を有する撮像素子を示す図である。
【図3】実施例1の蛍光顕微鏡の構成を示す図である。
【図4】実施例2の蛍光顕微鏡の構成を示す図である。
【図5】トリプルバンドフィルターの透過率を示す図である。
【図6】蛍光顕微鏡の撮像光学系の構成を示す図である。
【図7】従来の蛍光顕微鏡の構成を示す図である。
【符号の説明】
3 複数の波長の光
4 撮像素子
5 標本
6 対物レンズ
7 光路
8 ダイクロイックミラー
9 第1の撮像素子
10 ダイクロイックミラー
11 光路
12 結像レンズ
14 第2の撮像素子
15 標本
16 対物レンズ、
17 光路
18 結像レンズ
19 ミラー
20 像位置
22 ダイクロイックミラー
23 トリプルバンドパスフィルター
25、26 レンズ
LS 光源
Claims (3)
- 標本を照明する光源と、該光源と前記標本との間に配置された第1の波長選択素子と、該第1の波長選択素子と前記標本の間に配置された対物レンズと、前記標本の像を撮像する撮像素子と、該撮像素子と前記標本との間に配置された第2の波長選択素子とを備え、前記撮像素子が複数の波長の蛍光像を撮像でき、かつ、各ピクセル毎に波長分離が可能な撮像素子であることを特徴とする蛍光顕微鏡。
- 励起光と蛍光を分離する為のダイクロイックフィルターを有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光顕微鏡。
- 像をテレセントリックな条件で撮像素子に投影することができる光学系を有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光顕微鏡。
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