JP2004019934A - 車輪用転がり軸受ユニット - Google Patents

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石川 寛朗
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Abstract

【課題】ABSやTCS等の車両の姿勢安定の為の各種装置の制御に利用する、駆動輪に作用するトルクを表す信号を、正確に得られる構造を実現する。
【解決手段】駆動輪に作用するトルクが直接伝達される部材であるハブ8aの2個所部分に、それぞれエンコーダ25、25aを取り付ける。このハブ8aにトルクが加わると、このトルクの大きさ及び方向に応じて、このハブ8aが自身の中心軸を中心として捻られる方向に弾性変形する。そして、この様に弾性変形した分だけ、上記各エンコーダ25、25aに対向させた図示しないセンサ内で発生する検出信号同士の間に位相差が生じる。この位相差に基づいて上記ハブ8aに加わるトルクを計算できる為、上記課題を解決できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車の懸架装置に対して車輪を回転自在に支持する為の車輪用転がり軸受ユニットの改良に関する。特に本発明は、駆動輪(FF車の前輪、FR車及びRR車の後輪、4WD車の全輪)を支持する為の車輪用転がり軸受ユニットを改良して、安定した運転制御を行なう為の信号を得られる構造を実現するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車輪を構成するホイール1、及び、制動用回転部材であって制動装置であるディスクブレーキを構成するロータ2は、例えば図7に示す様な構造により、懸架装置を構成するナックル3に回転自在に支承している。即ち、このナックル3に形成した円形の支持孔4部分に、車輪用転がり軸受ユニット5を構成する外輪6を、複数本のボルト7により固定している。一方、この車輪用転がり軸受ユニット5を構成するハブ8に上記ホイール1及びロータ2を、複数本のスタッド9とナット10とにより結合固定している。又、上記外輪6の内周面には複列の外輪軌道11a、11bを、外周面には結合フランジ12を、それぞれ形成している。この様な外輪6は、この結合フランジ12を上記ナックル3に、上記各ボルト7で結合する事により、このナックル3に対し固定している。
【0003】
これに対して、上記ハブ8は、ハブ本体13と内輪14とを組み合わせて成る。このうちのハブ本体13の外周面の一部で、上記外輪6の外端開口(軸方向に関して外とは、自動車への組み付け状態で幅方向外側となる部分を言い、図1〜7の左側。反対に、自動車への組み付け状態で幅方向中央側となる、図1〜7の右側を内と言う。本明細書全体で同じ。)から突出した部分には、取付フランジ15を形成している。上記ホイール1及びロータ2はこの取付フランジ15の外側面に、上記各スタッド9とナット10とにより、結合固定している。
【0004】
又、前記ハブ本体13の中間部外周面で、上記外輪6の内周面に形成した複列の外輪軌道11a、11bのうちの外側の外輪軌道11aに対向する部分には、内輪軌道16aを形成している。更に、上記本体13の内端部に形成した小径段部17に、このハブ本体13と共に上記ハブ8を構成する上記内輪14を外嵌固定している。そして、この内輪14の外周面に形成した内輪軌道16bを、上記複列の外輪軌道11a、11bのうちの内側の外輪軌道11bに対向させている。これら各外輪軌道11a、11bと各内輪軌道16a、16bとの間には、それぞれが転動体である玉18、18を複数個ずつ、それぞれ保持器19、19により保持した状態で転動自在に設けている。尚、図示の例では、上記ハブ本体13の内端部で上記内輪14の内端面よりも内方に突出した部分を径方向外方に塑性変形させる事で形成したかしめ部20により、上記内輪14の内端面を抑え付け、この内輪14と上記ハブ本体13との分離防止を図っている。この構成により、背面組み合わせである複列アンギュラ型の玉軸受を構成し、上記外輪6の内径側に上記ハブ8を、回転自在に、且つ、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支承自在に支持している。
【0005】
尚、上記外輪6の両端部内周面と、上記ハブ8の中間部外周面及び内端部外周面との間には、それぞれシールリング21a、21bを設けて、上記各玉18、18を設けた空間と外部空間とを遮断している。更に、上記ハブ8に結合固定した車輪を回転駆動する為、上記ハブ本体13の中心部に、スプライン孔22を形成している。そして、このスプライン孔22に、等速ジョイント23のスプライン軸24を挿入している。
【0006】
上述の様な車輪用転がり軸受ユニット5の使用時には、図7に示す様に、上記外輪6をナックル3に固定すると共に、上記ハブ8の取付フランジ15に、図示しないタイヤを組み合わせたホイール1及びロータ2を固定する。又、このうちのロータ2と、上記ナックル3に固定した、図示しないサポート及びキャリパとを組み合わせて、制動用のディスクブレーキを構成する。制動時には、上記ロータ2を挟んで設けた1対のパッドのライニングを、上記キャリパ内の油圧シリンダ内に嵌装した油圧ピストンの働きにより、上記ロータ2の両側面に押し付ける。
【0007】
ところで、制動時や加速時、更には旋回時の車両の安定性を確保する為に従来から、アンチロックブレーキシステム(ABS)、トラクションコントロールシステム(TCS)、ビークルスタビリティコントロールシステム(VSC)等の車両安定装置が使用されている。これら各車両安定装置では、車輪の回転速度、車両の走行速度及び加速度(減速度)を検出すると共に、これらを相互に比較し、これに応じて上記油圧シリンダ内に導入する油圧やエンジン出力を調節する。これにより、車輪のスリップ率{=(車輪の速度−車両の速度)/車輪の速度}を、この車輪と路面との接触部に作用する摩擦係数がピークとなる領域近傍に維持する事で、車両の安定性を確保する様にしている。そして、この様な各車両安定装置を構成する為に従来から、車輪支持用の転がり軸受ユニットのうちの回転輪にエンコーダを、静止輪若しくはナックル等の懸架装置側に速度センサを、それぞれ設けて、上記車輪の回転速度を検出自在としている。又、車体の一部に加速度センサを設けて、この車体の加速度(減速度)を検出自在としている。又、車両の走行速度は、これを直接求めるのは困難である事から、例えば、検出した車輪の回転速度のうちの最大値や、検出した車体の加速度を演算処理して得られる速度を、それぞれ車両の走行速度と推定する方法を採用している。
【0008】
前述の図7に示した車輪用転がり軸受ユニットの場合、上記車輪の回転速度を検出する為に使用するエンコーダ25は、図8に詳示する様に、前記1対のシールリング21a、21bのうちの軸方向内側のシールリング21bを構成するスリンガ27に取り付けている。この軸方向内側のシールリング21bは、芯金26と、スリンガ27と、シール部材28とから成る。このうちの芯金26は、断面L字形で全体を円環状に構成しており、前記外輪6の内端部に内嵌固定する為の外径側円筒部29と、この外径側円筒部29の外端縁(図8の左端縁)から直径方向内方に折れ曲がった円輪部30とを備える。又、上記スリンガ27は、前記内輪14の内端寄り部に外嵌固定する為の内径側円筒部31と、この内径側円筒部31の内端縁(図8の右端縁)から直径方向外方に折れ曲がった円輪部32とを備える。又、上記シール部材28は、ゴムの如きエラストマー等の弾性材により全体を円環状に構成しており、上記芯金26にその基端部を結合固定すると共に、複数(図示の例では3本)のシールリップ33a、33b、33cの先端縁を、それぞれ上記スリンガ27の内面に摺接させている。
【0009】
又、上記エンコーダ25は、円輪状に構成しており、上記スリンガ27を構成する円輪部30の内側面(図8の右側面)に、前記ハブ8と同心に、接着、焼き付け等により添設している。これと共に、上記エンコーダ25の内側面(図7〜8の右側面)に図示しない速度センサを対向させて、上記ハブ8に結合固定した車輪の回転速度を検出自在としている。即ち、上記エンコーダ25は、上記速度センサを対向させた部分の特性(磁気特性、光学的特性、電気的特性等)を円周方向に関して周期的に変化させている。これに対し、上記速度センサは、上記車輪と共に上記エンコーダ25が回転する事に伴ってその内部に、上記車輪の回転速度に応じた周波数を持つ信号を発生させる構造を有する。そして、この速度センサの内部で発生した信号の周波数に基づいて、上記車輪の回転速度を検出自在としている。
【0010】
尚、上述した様なエンコーダ25と速度センサとから成る回転速度検出装置の、より具体的な構造及び作用に就いては、従来から各種知られている。上記エンコーダ25としては、例えば、円輪状の磁性金属板に透孔若しくは切り欠きを、円周方向に関して等間隔に形成する事により、円周方向に関する磁気特性を交互に且つ等間隔で変化させたものや、円輪状の永久磁石の軸方向に関する着磁の向きを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で変化させる事により、側面にS極とN極とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔に配置したものや、光の反射率を円周方向に関して交互に且つ等間隔で変化させたもの等が知られている。又、上記速度センサとしては、例えば、このエンコーダ25が上述した透孔若しくは切り欠きを形成して成るもの(磁束の発生源である永久磁石を備えていないもの)である場合には、磁束の大きさの変化を検出自在なホール素子等の磁気検出素子と永久磁石とを組み合わせて成るものを、上記エンコーダ25が上述した永久磁石製のものである場合には、磁束の大きさ及び方向の変化を検出自在なホール素子等の磁気検出素子から成るものを、上記エンコーダ25が上述した光の反射率を変化させて成るものである場合には、反射する光の強さの変化を検出自在な光センサを、それぞれ使用する。回転速度検出装置を構成するエンコーダとセンサとの組み合わせは、上述したもの以外にも各種知られているが、何れの構造の場合も、発生する信号の周波数に基づいて車輪の回転速度を検出できるものであれば使用できる。
【0011】
又、車両の変速制御も車両の安定性を確保する為の制御と捕える事ができるが、このうち、オートマチックトランスミッション(AT)制御では、シフトレバースイッチ、ミッションインプット回転速度、ミッションアウトプット回転速度、エンジンスロットル開度等のセンサ情報から、変速切換、油圧、エンジントルク等を制御している。同じく、無段変速機(CVT)制御では、車体の速度、エンジンスロットル開度、入力プーリ回転速度、シフトレバースイッチ等のセンサ情報から、電磁クラッチや油圧を制御している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ABS、TCS、VSC等の車両安定装置では、車輪のスリップ率に基づく制御を行なうが、このスリップ率の演算に必要な車両の走行速度は、前述した通り推定値である。この為、多少とは言え制御が不正確となり、制動距離の短縮や良好な発進特性の確保等を、十分に図れなくなる可能性がある。
又、車両の変速制御の場合には、多数のセンサ情報に基づいて制御を行なう為、応答性等の最適制御に限界がある。
【0013】
一方、ABSの作動状態をより一層向上させ、制動距離の短縮及び制動時の姿勢安定の為の制御をより高精度に行なう事を目的として、制動時に車輪に加わるトルクを測定する事が、特開平9−315282号公報等に記載されて、従来から知られている。この様に車輪に加わるトルクを制御情報として用いれば、ABSだけでなく、TCS、VSC等の各種車両安定装置による制御を、より高精度に行なう事ができると考えられる。
【0014】
ところが、上記特開平9−315282号公報に記載された従来技術の場合には、トルクセンサを、駆動輪を回転駆動する為の駆動軸に設置している。この為、必ずしも制動時に車輪に加わるトルクを正確に測定できない可能性がある。即ち、車輪に加わるトルクは、車輪用転がり軸受ユニットを構成するハブに直接伝達される。これに対し、上記特開平9−315282号公報に記載された従来技術の場合には、トルクセンサを、ハブとデファレンシャルギヤの出力部とを結ぶ駆動軸の途中に設けている。この為、上記トルクセンサの測定値に外乱が入り込んで、測定すべきトルクを正確に測定できない可能性がある。
本発明の車輪用転がり軸受ユニットは、上述の様な事情に鑑み、車輪に加わるトルクを正確に測定できる構造を実現すべく発明したものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の車輪用転がり軸受ユニットは、外輪と、ハブと、複数個の転動体とを備える。
このうちの外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時に懸架装置に支持固定された状態で回転しない。
又、上記ハブは、外周面の外端部に車輪及び制動用回転体を支持する為の取付フランジを、同じく中間部乃至内端部に複列の内輪軌道を、中心部に駆動用のスプライン軸を係合させる為のスプライン孔を、それぞれ有し、使用時に車輪と共に回転する。
又、上記各転動体は、上記各外輪軌道と上記各内輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつ転動自在に設けられている。
【0016】
特に、本発明の車輪用転がり軸受ユニットに於いては、上記ハブの2個所以上の部分にそれぞれエンコーダを、直接又は別の部材を介して取り付けている。そして、これら各エンコーダが上記ハブと共に回転する事に基づいて発生する信号同士の位相差から、上記ハブに加わるトルクを測定自在としている。
【0017】
【作用】
上述の様に構成する本発明の車輪用転がり軸受ユニットによれば、ABSの制御が必要となる様な急制動時或は滑り易い路面での制動時、又は、トラクションコントロールシステム(TCS)の制御が必要となる様な急加速時或は滑り易い路面での加速時に、駆動輪に作用するトルクを正確に測定できる。
即ち、制動時には、ディスクブレーキ或はドラムブレーキ等の制動装置の作動に基づく制動トルクにより回転速度が低下する上記駆動輪と、エンジンのクランクシャフトと共に回転する駆動軸との間で、回転速度がずれる傾向になる。そして、この回転速度がずれる傾向に応じて上記ハブに、所定方向のトルクが加わる。
又、加速時には、上記エンジンからの駆動力が加わる駆動軸と、路面との接触部に働く摩擦抵抗により回転上昇が遅れる傾向にある駆動輪との間で、回転速度がずれる傾向になる。そして、この回転速度がずれる傾向に応じて上記ハブに、上記所定方向とは逆方向のトルクが加わる。
【0018】
この結果、上記トルクの大きさ及び方向に応じて、上記ハブが自身の中心軸を中心として捻られる方向に弾性変形する。そして、この様に弾性変形した分だけ、上記ハブに取り付けた各エンコーダ同士の円周方向の位相がずれて、これら各エンコーダに対向させた各センサ内で発生する検出信号同士の間に位相差が生じる。この位相差は、上記ハブに加わったトルクの大きさ及び方向に応じて生じたものであるから、この位相差に基づいて上記ハブに加わっているトルクを測定する事ができる。この様に、本発明の車輪用転がり軸受ユニットによれば、制動時及び加速時に駆動輪に作用するトルクが直接伝達される部材であるハブに加わるトルクを測定できる為、上記駆動輪に作用するトルクを、外乱の影響を抑えて正確に測定できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、制動時及び加速時に駆動輪に作用するトルクが直接伝達される部材である、ハブ8aに加わるトルクを測定する為に、このハブ8aの2個所の部分にそれぞれエンコーダ25、25aを、直接又は別の部材を介して取り付けた点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図7〜8に示した従来構造と同様である為、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0020】
本例の場合、前述の図7〜8に示した従来構造の場合と同様、複数個の玉18、18を設置した空間の両端開口を塞ぐ1対のシールリング21a、21bのうち、軸方向内側のシールリング21bを構成するスリンガ27の円輪部32の内側面に、円輪状のエンコーダ25を、上記ハブ8aと同心に、接着、焼き付け等により添設している。これと共に、ハブ本体13aを構成する取付フランジ15aの内側面の径方向中間部(複数本のスタッド9を固定した部分に対して径方向内側に隣接する部分)に、やはり円輪状のエンコーダ25aを、上記ハブ8aと同心に、接着、焼き付け等により添設している。これら両エンコーダ25、25aは、円周方向に関して特性が変化する回数を、互いに同じとしている。そして、これら各エンコーダ25、25aの内側面(図1の右側面)に、それぞれ外輪6や懸架装置等の回転しない部分に支持固定した、図示しないセンサを対向させている。尚、これら各センサの検出信号は、ABS、TCS等を制御する為の、図示しない制御器に送る様にしている。
【0021】
本例の場合、上記各エンコーダ25、25a及び各センサとして、前述した回転速度検出装置を構成するエンコーダ及び速度センサと同様の、従来から知られている各種の構造のものを使用する。又、本例の場合、エンコーダ(25、25a)とセンサとの組み合わせが2組設けられるが、このうちの少なくとも一方の組み合わせを、回転速度検出装置として機能させる。尚、本例の場合、上記ハブ8aの回転中、このハブ8aにトルクが加わっていない状態で、上記各センサにより検出される信号同士の位相が互いに一致する様に、上記ハブ8aに対する上記各エンコーダ25、25aの円周方向に関する取り付けの位相、並びに、これら各エンコーダ25、25aの内側面に対する上記各センサの対向位置を規制している。
【0022】
又、本例の場合、上記取付フランジ15aの外側面の内径側半部(上記複数本のスタッド9を固定した部分よりも径方向内側の部分)に、軸方向に凹入する円輪状の凹部34を形成している。これにより、上記取付フランジ15aに結合固定するブレーキディスクやブレーキドラム等の制動用回転部材の側面が、上記取付フランジ15aの外側面のうち、上記凹部34に対応する内径側半部に当接しない様にしている。この様な凹部34を形成する理由は、上記制動用回転部材の側面が上記取付フランジ15aの外側面全体に当接しない様にする為である。即ち、上記制動用回転部材の側面が上記取付フランジ15aの外側面全体に当接すると、この当接部に作用する摩擦力に基づいて、上記取付フランジ15aが、負荷されるトルクに見合った分だけ正しく弾性変形できなくなる。この為、本例の場合には、上記凹部34を形成する事により、上記制動用回転部材の側面が上記取付フランジ15aの外側面全体に当接するのを防止して、この取付フランジ15aが、負荷されるトルクに見合った分だけ正しく弾性変形できる様にしている。
【0023】
上述の様に構成する本例の車輪用転がり軸受ユニットによれば、ABSの制御が必要となる様な急制動時或は滑り易い路面での制動時、又は、TCSの制御が必要となる様な急加速時或は滑り易い路面での加速時に、駆動輪に作用するトルクを正確に測定できる。即ち、この様にして駆動輪に作用するトルクは、上記ハブ8aに直接加わる。この結果、このトルクの大きさ及び方向に応じて、上記ハブ8aが自身の中心軸を中心として捻られる方向に弾性変形する。そして、この様に弾性変形した分だけ、上記ハブ8aに取り付けた各エンコーダ25、25a同士の円周方向の位相がずれて、これら各エンコーダ25、25aに対向させた各センサ内で発生する検出信号同士の間に位相差が生じる。この位相差は、上記ハブ8aに加わったトルクの大きさ及び方向に応じて生じたものであるから、この位相差に基づく所定の演算を前記制御器に行なわせる事により、上記ハブ8aに加わっているトルクを測定する事ができる。この様に、本例の車輪用転がり軸受ユニットによれば、制動時及び加速時に駆動輪に作用するトルクが直接伝達される部材であるハブ8aに加わるトルクを測定できる為、上記駆動輪に作用するトルクを、外乱の影響を抑えて正確に測定できる。
【0024】
次に、図2は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、1対のエンコーダ25a、25bを、それぞれハブ本体13bを構成する取付フランジ15aの内側面に取り付けている。即ち、この取付フランジ15aの内側面の径方向中間部と径方向内端部とに、それぞれが円輪状に形成された上記各エンコーダ25a、25bを、ハブ8bと同心に、接着、焼き付け等により添設している。本例の場合、図示しないセンサは、それぞれ上記各エンコーダ25a、25bの内側面に対向させる。又、本例の場合、1対の内輪軌道16a、16bのうち、軸方向外側の内輪軌道16aは、上記ハブ本体13bの小径段部17aに外嵌した別体の内輪35の外周面に形成している。又、図示の例では、複数個の玉18、18を設置した空間の外端開口を塞ぐシールリング21cとして、内端開口を塞ぐシールリング21bと同様の組み合わせシールリングを使用している。この様に構成する本例の場合も、上記1対のエンコーダ25a、25bを利用して、駆動輪に作用するトルクを正確に測定できる。その他の部分の構成及び作用は、上述の図1に示した第1例の場合と同様である。
【0025】
次に、図3は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合、上述の図2に示した第2例の場合と同様、一方のエンコーダ25bは、ハブ本体13bを構成する取付フランジ15aの内側面の径方向内端部に添設している。これに対し、他方のエンコーダ25cは、上記取付フランジ15aの内側面の径方向外端部に、ハブ8bと同心に取り付けている。この他方のエンコーダ25cは、断面L字形で全体を円環状に構成しており、円輪部36と円筒部37とを備える。このうちの円輪部36の円周方向複数個所には、それぞれ通孔38を形成している。そして、これら各通孔38に挿通した複数本のスタッド9の頭部39と上記取付フランジ15aとの間で、上記円輪部36を挟持している。又、上記円筒部37の先半部(図3の右半部)を、円周方向に関する特性を周期的に変化させた部分である、被検出部40としている。そして、この被検出部40の外周面に図示しないセンサを対向させる様にしている。この様に構成する本例の場合も、上記1対のエンコーダ25b、25cを利用して、駆動輪に作用するトルクを正確に測定できる。その他の部分の構成及び作用は、前述の図1に示した第1例、並びに、上述の図2に示した第2例の場合と同様である。
【0026】
次に、図4は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合、上述の図3に示した第3例の場合と同様、一方のエンコーダ25cは、ハブ本体13aを構成する取付フランジ15aの内側面の径方向外端部に取り付けている。これに対し、他方のエンコーダ25dは、円筒状に形成しており、上記ハブ本体13bの中間部外周面で、軸方向に関し1対の玉列同士の間に挟まれた部分に外嵌固定している。本例の場合、この他方のエンコーダ25dの回転を検出する為の図示しないセンサは、外輪6の内周面の中央部(軸方向に関し1対の外輪軌道11a、11b同士の間に挟まれた部分)と外周面の一部とを連通する図示しない通孔を通じて、上記外輪6の外部から上記1対の玉列同士の間部分に挿入し、上記他方のエンコーダ25dの外周面に対向させる。この様に構成する本例の場合も、上記1対のエンコーダ25c、25dを利用して、駆動輪に作用するトルクを正確に測定できる。その他の部分の構成及び作用は、前述の図1に示した第1例の場合と同様である。
【0027】
次に、図5は、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合、前述の図1に示した第1例の場合と同様、一方のエンコーダ25は、軸方向内側のシールリング21bを構成するスリンガ27の円輪部32の内側面に添設している。これに対し、他方のエンコーダ25eは、前述の図3に示した第3例のエンコーダ25cと同様、複数本のスタッド9の頭部39と取付フランジ15aとの間に挟持している。但し、本例の場合、上記他方のエンコーダ25eは、円輪部36aのみから成る。そして、この円輪部36aの外径側部分で上記取付フランジ15aの外周縁よりも径方向外方に突出した部分を、円周方向に関する特性を周期的に変化させた部分である、被検出部40aとしている。そして、この被検出部40aの内側面(図5の右側面)に、図示しないセンサを対向させる様にしている。この様に構成する本例の場合も、上記1対のエンコーダ25、25eを利用して、駆動輪に作用するトルクを正確に測定できる。その他の部分の構成及び作用は、前述の図1に示した第1例の場合と同様である。
【0028】
次に、図6は、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合、一方のエンコーダ25fは、ハブ8aを構成する内輪14の内端部外周面に形成した段部41に外嵌固定している。この一方のエンコーダ25fは、断面L字形で全体を円環状に構成しており、上記段部41に外嵌固定自在な円筒部42と、この円筒部42の内端縁から径方向外方に折れ曲がった円輪部43とを備える。そして、この円輪部43を、円周方向に関する特性を周期的に変化させた部分である、被検出部としている。そして、この円輪部43の内側面(図6の右側面)に図示しないセンサを対向させる様にしている。
【0029】
これに対し、他方のエンコーダ25gは、前述の図3に示した第3例のエンコーダ25cと同様、複数本のスタッド9の頭部39と取付フランジ15aとの間に挟持している。但し、本例の場合、上記他方のエンコーダ25gは、断面クランク形で全体を円環状に構成しており、上記頭部39と上記取付フランジ15aとの間に挟持する為の円輪部36と、この円輪部36よりも径方向内方に存在する内径側円輪部44と、これら両円輪部36、44の内、外両周縁同士を連結する円筒状の連結部45とから成る。そして、このうちの内径側円輪部44を、円周方向に関する物理的特性を周期的に変化させた部分である、被検出部としている。そして、この内径側円輪部44の内側面(図6の右側面)に図示しないセンサを対向させる様にしている。この様に構成する本例の場合も、上記1対のエンコーダ25f、25gを利用して、駆動輪に作用するトルクを正確に測定できる。その他の部分の構成及び作用は、前述の図1に示した第1例の場合と同様である。
【0030】
【発明の効果】
本発明の車輪用転がり軸受ユニットは、以上に述べた様に構成され作用するので、ABS、TCS、VSC等の車両の姿勢安定の為の各種装置の制御に利用する為の信号を正確に得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す半部断面図。
【図2】同第2例を示す半部断面図。
【図3】同第3例を示す半部断面図。
【図4】同第4例を示す半部断面図。
【図5】同第5例を示す半部断面図。
【図6】同第6例を示す半部断面図。
【図7】本発明の対象となる車輪用転がり軸受ユニットを組み付けた懸架装置部分の断面図。
【図8】シールリング及びエンコーダのみを取り出して示す、図7のA部拡大図。
【符号の説明】
1  ホイール
2  ロータ
3  ナックル
4  支持孔
5  車輪用転がり軸受ユニット
6  外輪
7  ボルト
8、8a、8b ハブ
9  スタッド
10  ナット
11a、11b 外輪軌道
12  結合フランジ
13、13a、13b ハブ本体
14  内輪
15、15a 取付フランジ
16a、16b 内輪軌道
17、17a 小径段部
18  玉
19  保持器
20  かしめ部
21a、21b、21c シールリング
22  スプライン孔
23  等速ジョイント
24  スプライン軸
25、25a〜25g エンコーダ
26  芯金
27  スリンガ
28  シール部材
29  外径側円筒部
30  円輪部
31  内径側円筒部
32  円輪部
33a、33b、33c シールリップ
34  凹部
35  内輪
36、36a 円輪部
37  円筒部
38  通孔
39  頭部
40、40a 被検出部
41  段部
42  円筒部
43  円輪部
44  内径側円輪部
45  連結部

Claims (1)

  1. 内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時に懸架装置に支持固定された状態で回転しない外輪と、外周面の外端部に車輪及び制動用回転体を支持する為の取付フランジを、同じく中間部乃至内端部に複列の内輪軌道を、中心部に駆動用のスプライン軸を係合させる為のスプライン孔を、それぞれ有し、使用時に車輪と共に回転するハブと、上記各外輪軌道と上記各内輪軌道との間にそれぞれ複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備えた車輪用転がり軸受ユニットに於いて、上記ハブの2個所以上の部分にそれぞれエンコーダを、直接又は別の部材を介して取り付け、これら各エンコーダが上記ハブと共に回転する事に基づいて発生する信号同士の位相差から上記ハブに加わるトルクを測定自在とした事を特徴とする車輪用転がり軸受ユニット。
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