JP2004111449A - ボンディング用金極細線の巻回構造および巻回方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ワイヤカット方式に用いてもリード巻き部分でのスプリングバックを抑制でき、また、金極細線がクロス多層巻きされた本巻き部分の積層段数が多くても、金極細線の緩みによる本巻き部分の崩れを抑制することができるボンディング用金極細線の巻回構造、巻回方法を提供する。
【解決手段】整列巻きされたリード巻き部分aは、隣接する金極細線2同士が緊密に接触し、端末テープ3を剥さずにワイヤカット方式で使用してもスプリングバックの発生を防止することができる。俵積み状積層形態になる本巻き部分bのテーパ部b−1上層に、テール巻き部分cの複数本の整列巻きされた金極細線2が接触しているので、テーパ部b−1の金極細線2とテール巻き部分cの整列巻きされた金極細線2とがお互いにうまく絡み合い、本巻き部分bの荷崩れ(巻き崩れ)が防止される。
【選択図】 図1
【解決手段】整列巻きされたリード巻き部分aは、隣接する金極細線2同士が緊密に接触し、端末テープ3を剥さずにワイヤカット方式で使用してもスプリングバックの発生を防止することができる。俵積み状積層形態になる本巻き部分bのテーパ部b−1上層に、テール巻き部分cの複数本の整列巻きされた金極細線2が接触しているので、テーパ部b−1の金極細線2とテール巻き部分cの整列巻きされた金極細線2とがお互いにうまく絡み合い、本巻き部分bの荷崩れ(巻き崩れ)が防止される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置のリード線、コイル巻き線、エナメル線、バンプ線、ボンディングワイヤ等に使用されるボンディング用金極細線をスプールに巻き取る巻回構造および巻回方法に関し、特に、スプール上に巻き取られたボンディングワイヤ用の長尺金極細線の巻回構造および巻回方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボンディングワイヤ用の金極細線がスプール上へ巻き取られる巻回構造として、リード巻き部分と、本巻き部分と、テール巻き部分の三つの部分から構成されたものが知られている。
【0003】
このうちリード巻き部分は、スプールから繰り出された金極細線の断線を検出するため、巻き線の始端がアースに接続される。この接続には、巻線始端2a’をスプール1’のフランジ等に止着した端末テープ3’を剥さずに、巻線始端側の金極細線2’を直接切断し、切断した金極細線の端部をアースに接続するというワイヤカット方式が行われることがある。また、巻き線の終端側でも、前記のようにワイヤカットをした後、金極細線を繰出しながらワイヤボンダのガイド部やキャピラリに金極細線をセットするワイヤセットを行うことがある。しかしながら、端末テープを剥してアース接続およびワイヤセットを行うことを想定した従来の巻回構造をこのワイヤカット方式に用いると、切断した金極細線2’からリード巻き部分a’が一気に緩んで崩れ、たるみ、絡み等が生じてしまう所謂スプリングバック現象がしばしば発生する。このたるんだり絡んだりした金極細線は、スプールから引き出せなくなったり、スプールをボンディングマシン等のスプールホルダに装着する時に引っかかって切れたりするなどの問題が生じる(図3(イ),(ロ)参照)。
【0004】
このようなスプリングバック現象を防止するために、例えば特許文献1や特許文献2に開示される発明のように、リード巻き部分をできるだけ強い張力で巻きつけて、金極細線とスプール外周面との間の摩擦力を確保することが考えられていた。
【0005】
一方、本巻き部分については、この種金極細線の巻回構造において、クロス巻きと整列巻きの2種類が知られている。
クロス巻きは、金極細線の往側巻き線と復側巻き線とを交叉させてスプールに巻き取る形態である。
これに対し整列巻きは、金極細線の往側巻き線と復側巻き線とを交叉させずにスプールに巻き取る形態である。
クロス巻きの形態は、上層の巻き線が下層の巻き線の全周にわたって角度をなして交叉しており、各層の間での食い込みが生じない利点がある。そのため、断線の少ない多層巻きに向いている。
【0006】
近年、ワイヤボンダ等の自動装置の改良によってボンディング速度が向上し、単位時間当たりのボンディング用金極細線の消費量が多くなってきた。また、作業効率のアップを図るため、スプールに巻きつけられるボンディング用金極細線の長さも3,000 mから10,000 m以上のものまで長尺化になる傾向にある。
このような長尺ワイヤの場合、特許文献3の図1や特許文献4の図2に示されるように、最上層へ近づくにつれて巻線幅を小さくしていく俵積み状積層形態になるよう、両フランジ付きスプール上へボンディング用金極細線を巻き取っている。
このように、長尺化した細線を巻き取る手段としては、従来からさまざまな手法が考えられてきた。例えば、特許文献5の特許請求の範囲には、細い金属線を巻き部材に巻きつける際にその巻きつけ幅を調節する方法として、「該金属線の巻き付け幅を100〜700層毎に巻き付け幅の両端部でそれぞれ該金属線の直径の10〜100倍狭くしてなる」巻回形態が開示され、特許文献6の特許請求の範囲には、ボンディング用金極細線の「ピッチIを2〜8mm、往側巻線と復側巻線とを1度20分〜5度15分の交叉角θで交叉させるとともに往復各側のn回目の巻線と(n−1)回目の巻線との間に最小0.1mm、最大(1−0.1)mmの間隙を介在させた」巻回形態が開示され、特許文献7の特許請求の範囲の請求項1には、「スプール巻き面中央を巻き面センターにして所定長さ、及び所定巻きピッチで第1層を巻き、第2層以降は所定広がりピッチで巻き広がる」巻回方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、上述したクロス多層巻き線形態においては、スプールに巻き取る際のテンションが整列巻き線形態に比べて小さいために、振動や衝撃において金極細線全体がずり動きやすく、運搬時やボンディング作業時において金極細線が崩れる事故が起きていた。
ボンディング用金極細線が長尺化し、スプールに巻き取られる金極細線の巻き数が多くなればなるほど金の自重を考慮しなければならなくなるため、このような事故が生じやすくなることは明らかである。
また、スプールケースからスプールを取り出しボンディングマシンに装着する時、作業者の指が金極細線に触れるのを避けるため、通常、スプールの両端フランジとの間に隙間を空けて、スプールの中央部分にだけ本巻き部分を設けるようになっており、本巻き部分の幅が狭くなっていることも、本巻き部分の金極細線が崩れやすくなる一因となっている。
【0008】
このため、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分との崩れを抑制等しようとして、特許文献8の特許請求の範囲や特許文献4の第2図では、スプールの「胴部に接する第1層目が整列巻とされ、該整列巻層の上に巻始めの整列巻部が露出するようにかつ整列巻層の部分よりはみ出ることなくクロス巻されてなる」などの巻回形態が開示され、特許文献9の特許請求の範囲には「スプールの胴部の少なくとも一方の端にワイヤの一部を整列巻きにした副巻き付け部を形成し、続いて副巻き付け部を除いた胴部の部分にワイヤの大部分をクロス巻きにした主巻き付け部を形成した」巻回形態が開示されている。
一方、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分の崩れを抑制等しようとして、特許文献10の特許請求の範囲には「巻線終端部をフランジ近傍のスプール周面に整列巻してなる」巻回形態が開示され、特許文献11の特許請求の範囲には俵積み状積層形態を「整列巻層と1〜20巻のクロス巻層とが交互に積層される多層構造とした」巻回形態が開示され、特許文献12の特許請求の範囲の請求項1には「遅巻層になるほど巻幅を大きくしながら複数巻層に巻き取」られた巻回形態が開示されている。
さらに、特許文献7では段落〔0010〕中に「下層部の金線は必ず上層部の金線に覆われているため、スプールをたてるあるいは運送中において強い衝撃、振動があっても巻き崩れにくい」巻回形態が開示され、特許文献13の第1図には、巻き層3の端部は上層が下層を完全に包み込むようになっている巻回形態が図示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭61−226466号公報
【特許文献2】
特開平6−135632号公報
【特許文献3】
実公昭61−16690号公報
【特許文献4】
実開昭59−187142号公報
【特許文献5】
実公昭61−8049号公報
【特許文献6】
特公平2−12863号公報
【特許文献7】
特開平10−27819号公報
【特許文献8】
実公平1−24932号公報
【特許文献9】
実開昭58−12943号公報
【特許文献10】
実開昭59−187141号公報
【特許文献11】
特公平2−11017号公報
【特許文献12】
特開平11−124276号公報
【特許文献13】
実開昭61−190135号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の巻回形態や巻回方法では、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分において、隣接する金極細線同士が緊密に接触していないので、いくら強く金極細線をスプールに巻き付けたとしても、ワイヤカット方式で使用すると切断時の金極細線への衝撃によってスプリングバックが一気に発生し、リード巻き部分の金極細線すべてがたるんだり絡んだりしてしまう。
【0011】
また、テール巻き部分によってクロス多層巻きされた本巻き部分の崩れを抑制等するやり方は、金極細線の長さが100m以下のクロス多層巻きされた本巻き部分の積層段数が少ない場合に効果的である。
しかし、金極細線が長尺化し積層段数が増えた場合には、上述したように金極細線の自重によって崩れやすくなり、上述した従来のやり方では本巻き部分の崩れを抑制することができない。特に、ボンディング用金細線の線径が0.005mm以下に極細化されてくると、金極細線にテンションを十分かけることができないので、本巻き部分が更に崩れやすくなってくる。逆に、整列巻き層の金極細線の張力を強くしすぎると金極細線がほどけなくなってしまい、自動ボンディング装置が停止してしまうトラブルになるので、これは絶対に避けなければならない。
【0012】
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、ワイヤカット方式に用いてもリード巻き部分のスプリングバックの発生を抑制することができるボンディング用金極細線の巻回構造および巻回方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、長尺かつ極細化されたボンディング用金極細線がクロス多層巻きされた俵積み状の積層形態からなる本巻き部分の積層段数が多い場合でも、金極細線の緩みによる本巻き部分の崩れを抑制することができるボンディング用金極細線の巻回構造および巻回方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するため、本発明に係る金極細線の巻回構造は請求項1記載のとおり、スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記リード巻き部分の金極細線は、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きされたものであることを特徴とする。
【0015】
また本発明に係る金極細線の巻回構造は請求項2記載のとおり、スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記本巻き部分の俵積み状積層形態における少なくともテーパ部の上層に、前記テール巻き部分の金極細線が整列巻きされていることを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る金極細線の巻回構造は請求項3記載のとおり、スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記リード巻き部分の金極細線と前記テール巻き部分の金極細線が夫々、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きされ、かつ、前記本巻き部分の俵積み状積層形態における少なくともテーパ部の上層に、前記テール巻き部分の金極細線が複数本整列巻きされていることを特徴とする。
【0017】
また本発明に係る金極細線の巻回方法は請求項7記載のとおり、スプール上に巻き取られた金極細線が、リード巻き部分を整列巻きした後、本巻き部分をクロス多層巻きして俵積み状積層形態にし、しかる後、テール巻き部分を整列巻きしてなるボンディング用金極細線の巻回方法において、
前記リード巻き部分の金極細線を、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きしたことを特徴とする。
【0018】
また本発明の好ましい態様として、請求項4又は請求項8記載のとおり、上記リード巻き部分の金極細線が、上記本巻き部分の金極細線の巻き始め側と巻き終り側の両側に配置されていることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造又は巻回方法を挙げることができる。
【0019】
また本発明の好ましい態様として、請求項5記載のとおり、上記テール巻き部分が上記本巻き部分を実質的に覆っていることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造を挙げることができる。
【0020】
また本発明の好ましい態様として、請求項6記載のとおり、上記テール巻き部分の金極細線の巻きピッチが、上記本巻き部分の金極細線の巻きピッチよりも狭いことを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造を挙げることができる。
【0021】
また本発明の好ましい実施態様として、整列巻きされた形態の張力は、クロス多層巻きされた形態の張力よりも大きいことを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造又は巻回方法を挙げることができる。
【0022】
また本発明の好ましい態様として、請求項9記載のとおり、上記リード巻き部分の金極細線がワイヤカット方式に用いられることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回方法を挙げることができる。
【0023】
本発明の請求項1によれば、整列巻きされたリード巻き部分では、各金極細線はスプールに強く巻き付けられるとともに、巻き付けられた金極細線は次に巻き付けられる金極細線の押圧力によって横方向にも圧縮応力を受け、隣接する金極細線同士が緊密に接触される。金極細線は純度99.99%前後の純金からなるので、緊密に接触した金極細線同士は一体化しないまでもある程度の密着力を保つ。すなわち、従来のような広ピッチのリード巻きでは、隣接する金極細線101〜104同士がかりに接触していたとしても各金極細線101〜104同士の相互作用がなく、各金極細線101〜104は独立したフリーな状態を保つ(図4(イ)参照)。この状態は、衝撃印加時にその衝撃を吸収してくれるものが周囲にないことを意味し、端末テープ105を剥さずに金極細線を直接切断すると、切断された金極細線101に加わった衝撃エネルギーは吸収されずに、リード巻き部分の金極細線102〜104全体に拡大して、スプリングバックが発生すると推定される(図4(ロ)参照)。これに対し、本発明のように金極細線同士を緊密に接触させると、切断された金極細線101に加わった衝撃エネルギーを、隣接する金極細線102〜104に吸収・発散させることができる(図4(ハ)参照)。その結果、リード巻き部分の金極細線全体へ衝撃エネルギーが伝播するのを抑えてスプリングバックの発生を防止することができ、ワイヤカット方式で使用した場合でも、リード巻き部分の金極細線全体がばらけたりたるんだり絡まってしまうようなことはない。
【0024】
また、従来の巻回構造において、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分のテーパ部では、金極細線が一部分しか重なっていない。そのため、テーパ部の金極細線には巻き線のない外方向側へ逃げる力が絶えず働いていると考えられる。この状態でスプールの移送時や運搬時等に何らかの衝撃が加わると、まず外方向の力と同調したある金極細線が緩む。金極細線が1本緩んだら、それに連なったクロス多層巻きされた俵積み状積層形態全体の金極細線が緩んでいく。
これに対し、本発明の請求項2の構成とした場合、俵積み状積層形態におけるテーパ部のクロス多層巻きされた金極細線に複数本の整列巻きされた金極細線が接触している。そのため、テーパ部の金極細線と整列巻きされた金極細線とがお互いにうまく絡み合う結果、俵積み状積層形態のいわゆる荷崩れ(巻き崩れ)が防止されると考えられる。この作用は、クロス多層巻きされた俵積み状の積層段数が多くなるほど効果を発揮する。
【0025】
また、本発明の請求項5のとおり、テール巻き部分が本巻き部分を実質的に覆っていると、お互いの金極細線との絡み合い作用によって移送時や運搬時等の衝撃をテール巻き部分で吸収できる効果がある。
【0026】
また、本発明の請求項6のように、テール巻き部分の金極細線のピッチが本巻き部分の金極細線のピッチより狭くした場合、若しくは、整列巻きの張力がクロス多層巻きの張力よりも大きくした実施態様とした場合は、お互いの金属細線との絡み合いが強まり、上記した吸収作用が強化される。
【0027】
また、本発明の請求項4又は請求項8のように、本巻き部分の両側に本発明の整列巻きされたリード巻き部分を設けておけば、いずれの側からもワイヤカット方式で金極細線を切断することができ、しかも、スプールの移送時や運搬時等に本巻き部分の巻き始め側端部と巻き終り側端部の両方において、金極細線が緩んで崩れることを防止することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図1及び図2を参照しながら本発明に係るボンディング用金極細線の実施形態の一例について説明する。
本例の巻回構造は、円筒状の胴部11の左右両端にフランジ12を一体に備えたスプール1に対し、ボンディング用金極細線2が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分aと、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分bと、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分cからなる。
【0029】
リード巻き部分aは、隣接する金極細線2,2同士が緊密に接触するよう整列巻きして形成されており、本例では、このリード巻き部分aの金極細線2が、本巻き部分bの金極細線2の巻き始め側と巻き終り側の両側に配置されている。
【0030】
本巻き部分bは、金極細線2をクロス多層巻きによってスプール1の胴部11に巻き取る際、上層となるにつれて巻き線幅を小さくしていく俵積み状の積層形態として形成されている。
なお、図1中に拡大して示された本巻き部分bは、便宜上、最も上層の巻き線部分のみを表し、二層目以下の巻き線部分を省略している。
【0031】
テール巻き部分cは、上記本巻き部分bの俵積み状積層形態における少なくともテーパ部b−1の上層に、金極細線2を整列巻きして形成されており、本例では、このテール巻き部分cが上記本巻き部分bを実質的に覆っていると共に、テール巻き部分cの金極細線2の巻きピッチが、上記本巻き部分bの金極細線2の巻きピッチよりも狭くなっている。
【0032】
また本例では、上記リード巻き部分a及びテール巻き部分cにおける整列巻きされた形態の張力を、上記本巻き部分bのクロス多層巻きされた形態の張力よりも大きくしている。
【0033】
このような構成になる本例の巻回構造によれば、前述した作用を奏することで、ワイヤカット方式で使用してもスプリングバックによるリード巻き部分aの緩み、絡み等を大幅に抑えることができると共に、移送時や運搬時等における本巻き部分bの荷崩れ(巻き崩れ)を大幅に低減することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
まず、リード巻き部分aについて説明すれば、直径50mm、長さ45.5mmの円筒状の胴部11を有するスプール1を用意し、このスプール1にボンディング用金極細線2を巻き取る際、図2に示すように、まず、金極細線2の始端部2aをスプール1の一方のフランジ12に端末テープ3で止着し、次いでスプール1を図に示す矢印A方向へ回転して巻き取りを始めた。この時、金極細線2が胴部11の外周面に当接するリード巻き部分aについては整列巻きとすると共に、隣接する金極細線2,2同士を緊密に接触させるようにしてリード巻き部分aを形成した。このため、ワイヤカット方式にてリード巻き部分aの金属細線2を、端末テープ3を剥さずに直接切断してアース線として取り出しても、従来のようにリード巻き部分aの金極細線2の全てがほどけることがなく、該リード巻き部分aの二ないし三巻きがほどける程度でとどまった。
【0035】
次に、本巻き部分bとテール巻き部分cについて説明する。
まず、線径が30μm、25μm若しくは23μmの半導体素子のワイヤボンディング用の金極細線2を5,000m、クロス多層巻きによってスプール1の胴部11に巻き取って本巻き部分bを形成した。その際、上層となるにつれて巻き線幅を小さくしていく俵積み状の積層形態とした。巻き取り条件は初期巻き幅40mm、ピッチ幅8mmとした。
上記のようにして本巻き部分bを形成した後、スプール1を、巻き終り側におけるアース線の取り出し位置あるいは巻き終り側の端部での止着テープ3の貼り付け位置へ移動させながら、本巻き部分bの上層に、金極細線2を整列巻きして、テール巻き部分cを形成した。このときの巻き取り条件は、テンションが本巻き部分bの2倍、ピッチ幅1mmで、整列巻きの金極細線2が、本巻き部分bの片方のテーパ部b−1に対し、四巻き巻回させた。
【0036】
【比較例】
テール巻き部分cの整列巻き条件が異なるほかは、すべて実施例と同一条件にして、スプール1に金極細線2を巻き取った。すなわち、テール巻き部分cの巻き取り条件は、テンションが本巻き部分bの2倍、ピッチ幅8mmで、金極細線2を、片側のテーパ部b−1に一巻きだけ巻回させ、他方のテーパb−1には金極細線2を巻回させなかった。
【0037】
上述した実施例に係るボンディング用金極細線の巻回構造と、比較例に係るボンディング用金極細線の巻回構造を試料として、次の試験を行った。
実施例の試料10個と比較例の試料10個を、床面より50cmの高さから落下させる試験を5回繰り返した。その結果、本発明に係る実施例の試料では荷崩れ(巻き崩れ)がまったくみられなかったのに対し、比較例の試料では半数の5個において、本巻き部分bで金極細線2の緩みがみられた。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るボンディング用金極細線の巻回構造、巻回方法によれば、ボンディング用金極細線同士を接触させた整列巻きによってリード巻き部分が構成されるので、ワイヤカット方式で使用してもスプリングバックによるリード巻き部分の緩みを大幅に抑えることができる。
【0039】
また、本発明に係るボンディング用金極細線の巻回構造、巻回方法によれば、荷崩れ(巻き崩れ)を起こしやすい本巻き部分のテーパ部を、整列巻きによるテール巻き部分で補強することによって、移送時や輸送等時の荷崩れを大幅に低減することができる。しかも、補強手段にクロス多層巻きと異なる適度なピッチの整列巻きのテール巻き部分を設けることによって、複数の接触個所で本巻き部分のテーパ部の金極細線とうまく絡み合うことができ、この結果、移送時や運搬時等の衝撃によっても本巻き部分の金極細線が緩むことがない等、多くの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るボンディング用金極細線の巻回構造の実施形態の一例を示す正面図で、一部を断面図及び拡大図で表す。
【図2】本発明に係るボンディング用金極細線の巻回構造の実施形態の一例におけるリード巻き部分を示す拡大斜視図である。
【図3】(イ)は従来のボンディング用金極細線の巻回構造を一部省略して示す正面図、(ロ)は(イ)におけるスプリングバックした状態を表す。
【図4】(イ)は従来の広ピッチのリード巻き部分を示す概念図、(ロ)は(イ)においてワイヤカットした際の衝撃エネルギーの伝播状態を示す概念図、(ハ)は金極細線同士を緊密に接触させた場合の衝撃エネルギーの吸収・発散状態を示す概念図。
【符号の説明】
1:スプール
2:ボンディング用金極細線
a:リード巻き部分
b:本巻き部分
b−1:テーパ部
c:テール巻き部分
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置のリード線、コイル巻き線、エナメル線、バンプ線、ボンディングワイヤ等に使用されるボンディング用金極細線をスプールに巻き取る巻回構造および巻回方法に関し、特に、スプール上に巻き取られたボンディングワイヤ用の長尺金極細線の巻回構造および巻回方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボンディングワイヤ用の金極細線がスプール上へ巻き取られる巻回構造として、リード巻き部分と、本巻き部分と、テール巻き部分の三つの部分から構成されたものが知られている。
【0003】
このうちリード巻き部分は、スプールから繰り出された金極細線の断線を検出するため、巻き線の始端がアースに接続される。この接続には、巻線始端2a’をスプール1’のフランジ等に止着した端末テープ3’を剥さずに、巻線始端側の金極細線2’を直接切断し、切断した金極細線の端部をアースに接続するというワイヤカット方式が行われることがある。また、巻き線の終端側でも、前記のようにワイヤカットをした後、金極細線を繰出しながらワイヤボンダのガイド部やキャピラリに金極細線をセットするワイヤセットを行うことがある。しかしながら、端末テープを剥してアース接続およびワイヤセットを行うことを想定した従来の巻回構造をこのワイヤカット方式に用いると、切断した金極細線2’からリード巻き部分a’が一気に緩んで崩れ、たるみ、絡み等が生じてしまう所謂スプリングバック現象がしばしば発生する。このたるんだり絡んだりした金極細線は、スプールから引き出せなくなったり、スプールをボンディングマシン等のスプールホルダに装着する時に引っかかって切れたりするなどの問題が生じる(図3(イ),(ロ)参照)。
【0004】
このようなスプリングバック現象を防止するために、例えば特許文献1や特許文献2に開示される発明のように、リード巻き部分をできるだけ強い張力で巻きつけて、金極細線とスプール外周面との間の摩擦力を確保することが考えられていた。
【0005】
一方、本巻き部分については、この種金極細線の巻回構造において、クロス巻きと整列巻きの2種類が知られている。
クロス巻きは、金極細線の往側巻き線と復側巻き線とを交叉させてスプールに巻き取る形態である。
これに対し整列巻きは、金極細線の往側巻き線と復側巻き線とを交叉させずにスプールに巻き取る形態である。
クロス巻きの形態は、上層の巻き線が下層の巻き線の全周にわたって角度をなして交叉しており、各層の間での食い込みが生じない利点がある。そのため、断線の少ない多層巻きに向いている。
【0006】
近年、ワイヤボンダ等の自動装置の改良によってボンディング速度が向上し、単位時間当たりのボンディング用金極細線の消費量が多くなってきた。また、作業効率のアップを図るため、スプールに巻きつけられるボンディング用金極細線の長さも3,000 mから10,000 m以上のものまで長尺化になる傾向にある。
このような長尺ワイヤの場合、特許文献3の図1や特許文献4の図2に示されるように、最上層へ近づくにつれて巻線幅を小さくしていく俵積み状積層形態になるよう、両フランジ付きスプール上へボンディング用金極細線を巻き取っている。
このように、長尺化した細線を巻き取る手段としては、従来からさまざまな手法が考えられてきた。例えば、特許文献5の特許請求の範囲には、細い金属線を巻き部材に巻きつける際にその巻きつけ幅を調節する方法として、「該金属線の巻き付け幅を100〜700層毎に巻き付け幅の両端部でそれぞれ該金属線の直径の10〜100倍狭くしてなる」巻回形態が開示され、特許文献6の特許請求の範囲には、ボンディング用金極細線の「ピッチIを2〜8mm、往側巻線と復側巻線とを1度20分〜5度15分の交叉角θで交叉させるとともに往復各側のn回目の巻線と(n−1)回目の巻線との間に最小0.1mm、最大(1−0.1)mmの間隙を介在させた」巻回形態が開示され、特許文献7の特許請求の範囲の請求項1には、「スプール巻き面中央を巻き面センターにして所定長さ、及び所定巻きピッチで第1層を巻き、第2層以降は所定広がりピッチで巻き広がる」巻回方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、上述したクロス多層巻き線形態においては、スプールに巻き取る際のテンションが整列巻き線形態に比べて小さいために、振動や衝撃において金極細線全体がずり動きやすく、運搬時やボンディング作業時において金極細線が崩れる事故が起きていた。
ボンディング用金極細線が長尺化し、スプールに巻き取られる金極細線の巻き数が多くなればなるほど金の自重を考慮しなければならなくなるため、このような事故が生じやすくなることは明らかである。
また、スプールケースからスプールを取り出しボンディングマシンに装着する時、作業者の指が金極細線に触れるのを避けるため、通常、スプールの両端フランジとの間に隙間を空けて、スプールの中央部分にだけ本巻き部分を設けるようになっており、本巻き部分の幅が狭くなっていることも、本巻き部分の金極細線が崩れやすくなる一因となっている。
【0008】
このため、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分との崩れを抑制等しようとして、特許文献8の特許請求の範囲や特許文献4の第2図では、スプールの「胴部に接する第1層目が整列巻とされ、該整列巻層の上に巻始めの整列巻部が露出するようにかつ整列巻層の部分よりはみ出ることなくクロス巻されてなる」などの巻回形態が開示され、特許文献9の特許請求の範囲には「スプールの胴部の少なくとも一方の端にワイヤの一部を整列巻きにした副巻き付け部を形成し、続いて副巻き付け部を除いた胴部の部分にワイヤの大部分をクロス巻きにした主巻き付け部を形成した」巻回形態が開示されている。
一方、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分の崩れを抑制等しようとして、特許文献10の特許請求の範囲には「巻線終端部をフランジ近傍のスプール周面に整列巻してなる」巻回形態が開示され、特許文献11の特許請求の範囲には俵積み状積層形態を「整列巻層と1〜20巻のクロス巻層とが交互に積層される多層構造とした」巻回形態が開示され、特許文献12の特許請求の範囲の請求項1には「遅巻層になるほど巻幅を大きくしながら複数巻層に巻き取」られた巻回形態が開示されている。
さらに、特許文献7では段落〔0010〕中に「下層部の金線は必ず上層部の金線に覆われているため、スプールをたてるあるいは運送中において強い衝撃、振動があっても巻き崩れにくい」巻回形態が開示され、特許文献13の第1図には、巻き層3の端部は上層が下層を完全に包み込むようになっている巻回形態が図示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭61−226466号公報
【特許文献2】
特開平6−135632号公報
【特許文献3】
実公昭61−16690号公報
【特許文献4】
実開昭59−187142号公報
【特許文献5】
実公昭61−8049号公報
【特許文献6】
特公平2−12863号公報
【特許文献7】
特開平10−27819号公報
【特許文献8】
実公平1−24932号公報
【特許文献9】
実開昭58−12943号公報
【特許文献10】
実開昭59−187141号公報
【特許文献11】
特公平2−11017号公報
【特許文献12】
特開平11−124276号公報
【特許文献13】
実開昭61−190135号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の巻回形態や巻回方法では、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分において、隣接する金極細線同士が緊密に接触していないので、いくら強く金極細線をスプールに巻き付けたとしても、ワイヤカット方式で使用すると切断時の金極細線への衝撃によってスプリングバックが一気に発生し、リード巻き部分の金極細線すべてがたるんだり絡んだりしてしまう。
【0011】
また、テール巻き部分によってクロス多層巻きされた本巻き部分の崩れを抑制等するやり方は、金極細線の長さが100m以下のクロス多層巻きされた本巻き部分の積層段数が少ない場合に効果的である。
しかし、金極細線が長尺化し積層段数が増えた場合には、上述したように金極細線の自重によって崩れやすくなり、上述した従来のやり方では本巻き部分の崩れを抑制することができない。特に、ボンディング用金細線の線径が0.005mm以下に極細化されてくると、金極細線にテンションを十分かけることができないので、本巻き部分が更に崩れやすくなってくる。逆に、整列巻き層の金極細線の張力を強くしすぎると金極細線がほどけなくなってしまい、自動ボンディング装置が停止してしまうトラブルになるので、これは絶対に避けなければならない。
【0012】
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、ワイヤカット方式に用いてもリード巻き部分のスプリングバックの発生を抑制することができるボンディング用金極細線の巻回構造および巻回方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、長尺かつ極細化されたボンディング用金極細線がクロス多層巻きされた俵積み状の積層形態からなる本巻き部分の積層段数が多い場合でも、金極細線の緩みによる本巻き部分の崩れを抑制することができるボンディング用金極細線の巻回構造および巻回方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するため、本発明に係る金極細線の巻回構造は請求項1記載のとおり、スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記リード巻き部分の金極細線は、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きされたものであることを特徴とする。
【0015】
また本発明に係る金極細線の巻回構造は請求項2記載のとおり、スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記本巻き部分の俵積み状積層形態における少なくともテーパ部の上層に、前記テール巻き部分の金極細線が整列巻きされていることを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る金極細線の巻回構造は請求項3記載のとおり、スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記リード巻き部分の金極細線と前記テール巻き部分の金極細線が夫々、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きされ、かつ、前記本巻き部分の俵積み状積層形態における少なくともテーパ部の上層に、前記テール巻き部分の金極細線が複数本整列巻きされていることを特徴とする。
【0017】
また本発明に係る金極細線の巻回方法は請求項7記載のとおり、スプール上に巻き取られた金極細線が、リード巻き部分を整列巻きした後、本巻き部分をクロス多層巻きして俵積み状積層形態にし、しかる後、テール巻き部分を整列巻きしてなるボンディング用金極細線の巻回方法において、
前記リード巻き部分の金極細線を、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きしたことを特徴とする。
【0018】
また本発明の好ましい態様として、請求項4又は請求項8記載のとおり、上記リード巻き部分の金極細線が、上記本巻き部分の金極細線の巻き始め側と巻き終り側の両側に配置されていることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造又は巻回方法を挙げることができる。
【0019】
また本発明の好ましい態様として、請求項5記載のとおり、上記テール巻き部分が上記本巻き部分を実質的に覆っていることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造を挙げることができる。
【0020】
また本発明の好ましい態様として、請求項6記載のとおり、上記テール巻き部分の金極細線の巻きピッチが、上記本巻き部分の金極細線の巻きピッチよりも狭いことを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造を挙げることができる。
【0021】
また本発明の好ましい実施態様として、整列巻きされた形態の張力は、クロス多層巻きされた形態の張力よりも大きいことを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造又は巻回方法を挙げることができる。
【0022】
また本発明の好ましい態様として、請求項9記載のとおり、上記リード巻き部分の金極細線がワイヤカット方式に用いられることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回方法を挙げることができる。
【0023】
本発明の請求項1によれば、整列巻きされたリード巻き部分では、各金極細線はスプールに強く巻き付けられるとともに、巻き付けられた金極細線は次に巻き付けられる金極細線の押圧力によって横方向にも圧縮応力を受け、隣接する金極細線同士が緊密に接触される。金極細線は純度99.99%前後の純金からなるので、緊密に接触した金極細線同士は一体化しないまでもある程度の密着力を保つ。すなわち、従来のような広ピッチのリード巻きでは、隣接する金極細線101〜104同士がかりに接触していたとしても各金極細線101〜104同士の相互作用がなく、各金極細線101〜104は独立したフリーな状態を保つ(図4(イ)参照)。この状態は、衝撃印加時にその衝撃を吸収してくれるものが周囲にないことを意味し、端末テープ105を剥さずに金極細線を直接切断すると、切断された金極細線101に加わった衝撃エネルギーは吸収されずに、リード巻き部分の金極細線102〜104全体に拡大して、スプリングバックが発生すると推定される(図4(ロ)参照)。これに対し、本発明のように金極細線同士を緊密に接触させると、切断された金極細線101に加わった衝撃エネルギーを、隣接する金極細線102〜104に吸収・発散させることができる(図4(ハ)参照)。その結果、リード巻き部分の金極細線全体へ衝撃エネルギーが伝播するのを抑えてスプリングバックの発生を防止することができ、ワイヤカット方式で使用した場合でも、リード巻き部分の金極細線全体がばらけたりたるんだり絡まってしまうようなことはない。
【0024】
また、従来の巻回構造において、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分のテーパ部では、金極細線が一部分しか重なっていない。そのため、テーパ部の金極細線には巻き線のない外方向側へ逃げる力が絶えず働いていると考えられる。この状態でスプールの移送時や運搬時等に何らかの衝撃が加わると、まず外方向の力と同調したある金極細線が緩む。金極細線が1本緩んだら、それに連なったクロス多層巻きされた俵積み状積層形態全体の金極細線が緩んでいく。
これに対し、本発明の請求項2の構成とした場合、俵積み状積層形態におけるテーパ部のクロス多層巻きされた金極細線に複数本の整列巻きされた金極細線が接触している。そのため、テーパ部の金極細線と整列巻きされた金極細線とがお互いにうまく絡み合う結果、俵積み状積層形態のいわゆる荷崩れ(巻き崩れ)が防止されると考えられる。この作用は、クロス多層巻きされた俵積み状の積層段数が多くなるほど効果を発揮する。
【0025】
また、本発明の請求項5のとおり、テール巻き部分が本巻き部分を実質的に覆っていると、お互いの金極細線との絡み合い作用によって移送時や運搬時等の衝撃をテール巻き部分で吸収できる効果がある。
【0026】
また、本発明の請求項6のように、テール巻き部分の金極細線のピッチが本巻き部分の金極細線のピッチより狭くした場合、若しくは、整列巻きの張力がクロス多層巻きの張力よりも大きくした実施態様とした場合は、お互いの金属細線との絡み合いが強まり、上記した吸収作用が強化される。
【0027】
また、本発明の請求項4又は請求項8のように、本巻き部分の両側に本発明の整列巻きされたリード巻き部分を設けておけば、いずれの側からもワイヤカット方式で金極細線を切断することができ、しかも、スプールの移送時や運搬時等に本巻き部分の巻き始め側端部と巻き終り側端部の両方において、金極細線が緩んで崩れることを防止することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図1及び図2を参照しながら本発明に係るボンディング用金極細線の実施形態の一例について説明する。
本例の巻回構造は、円筒状の胴部11の左右両端にフランジ12を一体に備えたスプール1に対し、ボンディング用金極細線2が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分aと、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分bと、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分cからなる。
【0029】
リード巻き部分aは、隣接する金極細線2,2同士が緊密に接触するよう整列巻きして形成されており、本例では、このリード巻き部分aの金極細線2が、本巻き部分bの金極細線2の巻き始め側と巻き終り側の両側に配置されている。
【0030】
本巻き部分bは、金極細線2をクロス多層巻きによってスプール1の胴部11に巻き取る際、上層となるにつれて巻き線幅を小さくしていく俵積み状の積層形態として形成されている。
なお、図1中に拡大して示された本巻き部分bは、便宜上、最も上層の巻き線部分のみを表し、二層目以下の巻き線部分を省略している。
【0031】
テール巻き部分cは、上記本巻き部分bの俵積み状積層形態における少なくともテーパ部b−1の上層に、金極細線2を整列巻きして形成されており、本例では、このテール巻き部分cが上記本巻き部分bを実質的に覆っていると共に、テール巻き部分cの金極細線2の巻きピッチが、上記本巻き部分bの金極細線2の巻きピッチよりも狭くなっている。
【0032】
また本例では、上記リード巻き部分a及びテール巻き部分cにおける整列巻きされた形態の張力を、上記本巻き部分bのクロス多層巻きされた形態の張力よりも大きくしている。
【0033】
このような構成になる本例の巻回構造によれば、前述した作用を奏することで、ワイヤカット方式で使用してもスプリングバックによるリード巻き部分aの緩み、絡み等を大幅に抑えることができると共に、移送時や運搬時等における本巻き部分bの荷崩れ(巻き崩れ)を大幅に低減することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
まず、リード巻き部分aについて説明すれば、直径50mm、長さ45.5mmの円筒状の胴部11を有するスプール1を用意し、このスプール1にボンディング用金極細線2を巻き取る際、図2に示すように、まず、金極細線2の始端部2aをスプール1の一方のフランジ12に端末テープ3で止着し、次いでスプール1を図に示す矢印A方向へ回転して巻き取りを始めた。この時、金極細線2が胴部11の外周面に当接するリード巻き部分aについては整列巻きとすると共に、隣接する金極細線2,2同士を緊密に接触させるようにしてリード巻き部分aを形成した。このため、ワイヤカット方式にてリード巻き部分aの金属細線2を、端末テープ3を剥さずに直接切断してアース線として取り出しても、従来のようにリード巻き部分aの金極細線2の全てがほどけることがなく、該リード巻き部分aの二ないし三巻きがほどける程度でとどまった。
【0035】
次に、本巻き部分bとテール巻き部分cについて説明する。
まず、線径が30μm、25μm若しくは23μmの半導体素子のワイヤボンディング用の金極細線2を5,000m、クロス多層巻きによってスプール1の胴部11に巻き取って本巻き部分bを形成した。その際、上層となるにつれて巻き線幅を小さくしていく俵積み状の積層形態とした。巻き取り条件は初期巻き幅40mm、ピッチ幅8mmとした。
上記のようにして本巻き部分bを形成した後、スプール1を、巻き終り側におけるアース線の取り出し位置あるいは巻き終り側の端部での止着テープ3の貼り付け位置へ移動させながら、本巻き部分bの上層に、金極細線2を整列巻きして、テール巻き部分cを形成した。このときの巻き取り条件は、テンションが本巻き部分bの2倍、ピッチ幅1mmで、整列巻きの金極細線2が、本巻き部分bの片方のテーパ部b−1に対し、四巻き巻回させた。
【0036】
【比較例】
テール巻き部分cの整列巻き条件が異なるほかは、すべて実施例と同一条件にして、スプール1に金極細線2を巻き取った。すなわち、テール巻き部分cの巻き取り条件は、テンションが本巻き部分bの2倍、ピッチ幅8mmで、金極細線2を、片側のテーパ部b−1に一巻きだけ巻回させ、他方のテーパb−1には金極細線2を巻回させなかった。
【0037】
上述した実施例に係るボンディング用金極細線の巻回構造と、比較例に係るボンディング用金極細線の巻回構造を試料として、次の試験を行った。
実施例の試料10個と比較例の試料10個を、床面より50cmの高さから落下させる試験を5回繰り返した。その結果、本発明に係る実施例の試料では荷崩れ(巻き崩れ)がまったくみられなかったのに対し、比較例の試料では半数の5個において、本巻き部分bで金極細線2の緩みがみられた。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るボンディング用金極細線の巻回構造、巻回方法によれば、ボンディング用金極細線同士を接触させた整列巻きによってリード巻き部分が構成されるので、ワイヤカット方式で使用してもスプリングバックによるリード巻き部分の緩みを大幅に抑えることができる。
【0039】
また、本発明に係るボンディング用金極細線の巻回構造、巻回方法によれば、荷崩れ(巻き崩れ)を起こしやすい本巻き部分のテーパ部を、整列巻きによるテール巻き部分で補強することによって、移送時や輸送等時の荷崩れを大幅に低減することができる。しかも、補強手段にクロス多層巻きと異なる適度なピッチの整列巻きのテール巻き部分を設けることによって、複数の接触個所で本巻き部分のテーパ部の金極細線とうまく絡み合うことができ、この結果、移送時や運搬時等の衝撃によっても本巻き部分の金極細線が緩むことがない等、多くの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るボンディング用金極細線の巻回構造の実施形態の一例を示す正面図で、一部を断面図及び拡大図で表す。
【図2】本発明に係るボンディング用金極細線の巻回構造の実施形態の一例におけるリード巻き部分を示す拡大斜視図である。
【図3】(イ)は従来のボンディング用金極細線の巻回構造を一部省略して示す正面図、(ロ)は(イ)におけるスプリングバックした状態を表す。
【図4】(イ)は従来の広ピッチのリード巻き部分を示す概念図、(ロ)は(イ)においてワイヤカットした際の衝撃エネルギーの伝播状態を示す概念図、(ハ)は金極細線同士を緊密に接触させた場合の衝撃エネルギーの吸収・発散状態を示す概念図。
【符号の説明】
1:スプール
2:ボンディング用金極細線
a:リード巻き部分
b:本巻き部分
b−1:テーパ部
c:テール巻き部分
Claims (9)
- スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記リード巻き部分の金極細線は、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きされたものであることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造。 - スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記本巻き部分の俵積み状積層形態における少なくともテーパ部の上層に、前記テール巻き部分の金極細線が整列巻きされていることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造。 - スプール上に巻き取られた金極細線が、整列巻きされた形態からなるリード巻き部分と、クロス多層巻きされた俵積み状積層形態からなる本巻き部分と、整列巻きされた形態からなるテール巻き部分とからなるボンディング用金極細線の巻回構造において、
前記リード巻き部分の金極細線と前記テール巻き部分の金極細線が夫々、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きされ、かつ、前記本巻き部分の俵積み状積層形態における少なくともテーパ部の上層に、前記テール巻き部分の金極細線が複数本整列巻きされていることを特徴とするボンディング用金極細線の巻回構造。 - 上記リード巻き部分の金極細線が、上記本巻き部分の金極細線の巻き始め側と巻き終り側の両側に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のボンディング用金極細線の巻回構造。
- 上記テール巻き部分は上記本巻き部分を実質的に覆っていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかの項に記載のボンディング用金極細線の巻回構造。
- 上記テール巻き部分の金極細線の巻きピッチが、上記本巻き部分の金極細線の巻きピッチよりも狭いことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれかの項に記載のボンディング用金極細線の巻回構造。
- スプール上に巻き取られた金極細線が、リード巻き部分を整列巻きした後、本巻き部分をクロス多層巻きして俵積み状積層形態にし、しかる後、テール巻き部分を整列巻きしてなるボンディング用金極細線の巻回方法において、
前記リード巻き部分の金極細線を、隣接する金極細線同士が緊密に接触する状態で整列巻きしたことを特徴とするボンディング用金極細線の巻回方法。 - 上記リード巻き部分の金極細線が、上記本巻き部分の金極細線の巻き始め側と巻き終り側の両側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のボンディング用金極細線の巻回方法。
- 上記リード巻き部分の金極細線がワイヤカット方式に用いられることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のボンディング用金極細線の巻回方法。
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