JP2004123802A - 印刷インキ、印刷物および印刷物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高濃度印刷物を薄い皮膜で生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができ、乾燥・硬化の時間およびエネルギーが少なくてすみ、環境上のコストが小さく、しかも印刷したインキ皮膜の物性が高い高濃度印刷用の印刷インキを提供すること。
【解決手段】凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、その中の着色成分の含有量が20〜70質量%の範囲である。また、印刷されたインキの厚さが1μmのときの透過率濃度が、黄インキでは0.3以上、紅インキでは0.5以上、藍インキでは0.7以上、墨インキでは0.6以上である。
【選択図】 なし
【解決手段】凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、その中の着色成分の含有量が20〜70質量%の範囲である。また、印刷されたインキの厚さが1μmのときの透過率濃度が、黄インキでは0.3以上、紅インキでは0.5以上、藍インキでは0.7以上、墨インキでは0.6以上である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高濃度印刷物に適した印刷インキ、それを用いた印刷物およびそのような印刷物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代社会において、印刷技術は文字情報や画像情報を大量に複製する技術としてなくてはならないものとなっている。そして、印刷技術は、用途や印刷物等に応じて様々な方式が存在し、それらに対応して種々の印刷インキが用いられている。各種印刷方式とそれに用いられる各種インキについては例えば非特許文献1に記載されている。
【0003】
このうち、比較的濃度感の高い印刷画像が求められる印刷物、すなわち高濃度印刷物は、通常、スクリーン印刷またはグラビア印刷が使用されている。
【0004】
スクリーン印刷は、画像のパターン状にインキ透過部を設けたスクリーン版を通してインキを基材に転移させ印刷を行う。このスクリーン印刷の特長としては、(1)スクリーン線の密度(通常はインチ当たりの線数で管理)調整により、10〜100μmという比較的厚いインキ皮膜を形成することができること、(2)比較的粘度の高いインキを使用することが可能であるため、インキ樹脂中に顔料を始めとする充填剤を多めに加えても印刷適性には支障はないことが挙げられる。このような特長を活かし、スクリーン印刷は高い印刷濃度や隠蔽性が求められる用途を中心に使用されている。例えば、看板、ゲーム機、自動販売機の見本缶(ダミー体)が挙げられる。
【0005】
一方、グラビア印刷は、金属シリンダー表面にエッチングなどによりパターン状に設けたセル内にインキを保持し、これを基材に転移させる。グラビア印刷は、樹脂分の少ない、溶剤もしくは水を媒体とした低粘度のインキにより、毎分300mという高速生産も可能な点が大きな特長で、かつ、印刷画質もセルの深さを変えることにより連続的に階調効果を出すことができ高い濃度感の印刷物が得られる印刷方式として知られている。また、基材フィルムに対する密着要求に合わせてインキ樹脂選択の幅が比較的広いため、各種フィルムに印刷可能である。グラビア印刷におけるインキ皮膜の厚さは、通常、3〜10μm程度である。
【0006】
【非特許文献1】
片山賢二 「上手に使いこなす印刷インキ」 日本印刷新聞社 1993年5月20日
【0007】
しかしながら、スクリーン印刷は主に厚膜印刷がゆえの問題点として、(1)印刷速度を高くできないため生産性が悪いこと、(2)皮膜が厚いためインキの使用量が多く、かつインキ自体の価格も高いためトータルのインキコストが高くなること、(3)皮膜が厚いためインキの乾燥・硬化に時間がかかること、(4)インキ皮膜が厚いため、フィルム等への用途では、インキ皮膜がフィルム等に追従できず、フィルムから剥離したりひび割れたりすることがある。
【0008】
また、グラビア印刷も以下のようないくつかの問題点を抱えている。すなわち、(1)従来のグラビア印刷機は大型で広幅・高速・大量印刷向けであり、近年の「多品種・小ロット生産」指向には不向きである。(2)金属シリンダーの印刷版の製造コストが高く、納期もかかる。(3)インキ媒体に大量の溶剤や水を含むため、印刷時のインキ乾燥に多大のエネルギーやスペースを必要とし、後処理などにおいて環境上のコストがかかる。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高濃度印刷物を薄い皮膜で生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができ、乾燥・硬化の時間およびエネルギーが少なくてすみ、環境上のコストが小さく、しかも印刷したインキ皮膜の物性が高い高濃度印刷用の印刷インキを提供することを目的とする。また、このような印刷インキを用いた印刷物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、一般的に印刷されたインキ皮膜の厚さが5μm以下と薄い凸版印刷または平版印刷を用いることを前提とし、インキの着色成分濃度を極力高濃度とし、かつ電子線で硬化されるものとすることにより、上記課題が解決可能であることを見出した。
【0011】
凸版印刷および平版印刷は、製版代が安く納期も短く、印刷物の狭幅から広幅までロットに関係なく柔軟に対応可能であるから、インキ皮膜を生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができ、また、きれいなフルカラーのプロセス印刷が可能であるといったメリットを有するが、これらは原理的にインキ皮膜の厚さが1〜3μm程度と薄く、したがって、従来は凸版印刷や平版印刷は高濃度印刷物を得ることが困難であるという固定観念が存在し、高濃度印刷物に凸版印刷や平版印刷を適用することは実質的に試みられていないのが現状であり、わずかにできるだけ高濃度感を出すために同じ図柄を2〜3回以上印刷することが行われているに過ぎない。もちろん、この場合には、生産性が低くなってしまう。
【0012】
これに対し、本発明者らは、凸版印刷および平版印刷であってもインキの着色成分を高濃度にすれば、薄いインキ皮膜でありながら、濃度感を高くして高濃度印刷に対応することができ、インキを電子線を照射して硬化されるものとすることにより、このように着色剤が高濃度で含有されていても短時間で硬化することができ、かつ高いインキ物性が維持されること、そして、これにより、インキ皮膜を生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができるといった凸版印刷および平版印刷の本質的なメリットを生かしつつ、さらに乾燥・硬化の時間およびエネルギーが少なくてすみ、環境上のコストが小さい高濃度印刷用の印刷インキを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、その中の着色成分の含有量が20〜70質量%の範囲であることを特徴とする印刷インキを提供する。
【0014】
着色成分が白色顔料および金属顔料以外の場合には、その中の着色成分の含有量が20〜50質量%の範囲であることが好ましく、着色成分が白色顔料および金属顔料の場合には、その中の着色成分の含有量を40〜70質量%の範囲であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、印刷されたインキの厚さが1μmのときの透過率濃度が、黄インキでは0.3以上、紅インキでは0.5以上、藍インキでは0.7以上、墨インキでは0.6以上であることを特徴とする印刷インキを提供する。
【0016】
上記いずれの発明においても、前記凸版印刷にはフレキソ印刷が含まれ、前記平版印刷にはオフセット印刷が含まれる。
【0017】
さらに、本発明は上記いずれかの印刷インキを用いて、被印刷体に凸版印刷または平版印刷し、電子線を照射して前記印刷されたインキ皮膜を硬化させてなることを特徴とする印刷物を提供する。
【0018】
この場合に、前記印刷インキを透明基材に裏刷りしてなることや、前記インキ皮膜の上に透明平滑膜を被覆してなることが好ましい。
【0019】
さらにまた、本発明は上記いずれかの印刷インキを用いて、被印刷体に凸版印刷または平版印刷する工程と、印刷されたインキ皮膜に電子線を照射して該インキ皮膜を硬化させる工程とを有することを特徴とする印刷物の製造方法を提供する。
【0020】
多色刷りする際には、全ての印刷インキ皮膜を形成した後に電子線を照射して前記インキ皮膜を硬化させることが好ましい。
【0021】
上記印刷物および印刷物の製造方法において、電子線の加速電圧が150kV以下であることが好ましい。
【0022】
なお、本発明において、「硬化」は架橋をも含む概念である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明の印刷インキは、凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化され、その中の着色成分の含有量が20〜70質量%の範囲であることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の印刷インキは、電子線で硬化されるものであり、典型的には電子線硬化型インキが用いられる。インキのタイプとしては、フルカラー印刷を行うための黄、紅、藍、墨のプロセスインキ、各種効果的配色を可能にする特色インキ、光沢感を出す金インキおよび銀インキ、蛍光インキ等がある。
【0025】
また、本発明の印刷インキは、凸版印刷および平板印刷を前提としたものである。これらのうち凸版印刷は、凸状の版面から直接にインキが紙面に押圧されて転移するものである。この凸版印刷には、通常の凸版印刷の他、フレキソ印刷も含む。フレキソ印刷とは、ゴム凸版または感光性樹脂凸版のような弾性のある版を使用し、液状で速乾性のインキで印刷する方式である。また、平版印刷は、親油性の画線部と親水性の非画線部を持つ印刷版面に、親油性のインキと湿し水とが交互に供給されて印刷が行われる。この平版印刷には、版面のインキを一旦ゴムブランケット面に映してから、被印刷素材面に転移させるオフセット印刷が含まれる。さらに、湿し水を使用しない水なし平板印刷であってもよい。これらの印刷方式は原理的に薄いインキ皮膜を形成するものであり、通常の凸版印刷、オフセット印刷等の平版印刷は1〜3μm程度である。フレキソ印刷ではインキを印刷版に供給するアニロックスロールの選択により、通常の凸版印刷等より厚いインキ皮膜を形成することができ、通常5μm程度の皮膜が印刷されている。
【0026】
本発明は、薄いインキ皮膜でありながら濃度感の高い高濃度印刷を行うものであり、そのためにインキ皮膜の薄い凸版印刷または平板印刷を用い、かつ濃度感を高めるために着色剤の濃度を上げる必要があることから、着色成分含有量を通常よりも高い20〜70質量%としている。このように着色成分を高濃度にすることにより濃度感が高まるのは透過光に対して高い隠蔽性が得られるためである。着色成分の好ましい範囲は25〜70質量%であり、さらに好ましくは30〜60質量%である。なお、インキ皮膜の厚さは、単色の場合も、多色の場合も5μm以下であることが好ましい。
【0027】
このように凸版印刷または平版印刷により薄いインキ皮膜を形成すればよいことから、従来のグラビア印刷、スクリーン印刷の場合よりもインキ使用量を著しく少なくすることができ、印刷に関わるインキコストを大幅に低減することができるのみならず、厚いインキ皮膜に比べて形状追随性に優れるため、インキの剥離やひび割れが生じ難い。
【0028】
着色成分の濃度の指標としては、上記質量基準の濃度の他、透過率濃度があり、本発明の実施形態では着色成分の濃度をこの透過率濃度で規定する。ここで「透過率濃度」とは、インキをRIテスター(簡易印刷機)で、厚さ50μmのポリエステルフィルムに、厚さ1μmにて印刷し、硬化させた印刷物に光を照射し、その際の入射光強度をΨρ、透過光強度をΨρoとした場合に、以下に示す(1)式のDρで表される値をいう。
Dρ=log(Ψρ/Ψρo) ‥‥‥‥(1)
この場合に、入射光強度Ψρ、透過光強度Ψρoとしては、Macbeth社製の透過反射兼用濃度測定器「Macbeth TR927」で測定した値を用いることが好ましい。
【0029】
そして、このような印刷されたインキの厚さが1μmのときの透過率濃度を、黄インキでは0.3以上、紅インキでは0.5以上、藍インキでは0.7以上、墨インキでは0.6以上に規定する。このように規定することにより、5μm以下と薄いインキ皮膜でありながら、高い濃度感ないしは隠蔽性を得ることができる。好ましくは黄インキでは0.35以上、紅インキでは0.6以上、藍インキでは0.8以上、墨インキでは0.7以上である。
【0030】
なお、上記印刷方式の中では、フレキソ印刷は、通常の凸版印刷やオフセット印刷等の平版印刷よりも厚いインキ皮膜を形成可能であることから、このように着色成分を高濃度化することにより、より高い濃度感、隠蔽性をもたらす。
【0031】
このように着色成分が高濃度で含まれている場合には、紫外線硬化型インキでは硬化が困難であり実用的インキ皮膜になりにくいが、本発明のように電子線で硬化させるインキを用いれば、問題を生じずに短時間で硬化することができ、かつ高いインキ皮膜物性が維持される。
【0032】
すなわち、電子線の皮膜内透過性は、紫外線と異なりインキ皮膜の色相や濃度に影響されない。したがって、紫外線硬化型インキでは硬化が困難なインキ中の顔料等の着色成分を高濃度にした場合でも電子線硬化型インキでは問題なく硬化することができる。
【0033】
また、電子線は熱を発生しないので、基材の変形や劣化を引き起こさない。これは、ペットボトル用シュリンクラベル等に使用される熱収縮性ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステルフィルム等への印刷において特に有効である。
【0034】
さらに、電子線は透過性が高いため、インキ皮膜を短時間で硬化することができることはもちろんのこと、電子線硬化型インキを用いて多色のプロセス印刷を行う場合に、各色インキをその都度硬化させずに重ねて印刷(ウエット・オン・ウエット方式という)した後、最後に電子線を照射することにより、一度の照射で硬化させることが可能である。これにより、生産性向上に大きく寄与する。この「ウエット・オン・ウェット」印刷に適した印刷機として、センタードラムの回りに各色のインキを印刷する凸版または平版を設置したCenter Impression(CI)型輪転印刷機が知られている。紫外線硬化の場合には、紫外線の透過性が低いため、各色を印刷する毎に硬化する必要があり、生産性が低くならざるを得ない。
【0035】
本発明で用いられる電子線硬化型インキの主成分としては、電子線を照射することによりラジカル重合もしくはカチオン重合するモノマー、オリゴマー、プレポリマーの1種または2種以上の電子線硬化性化合物が用いられる。
【0036】
電子線硬化性化合物の例としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等を用いることができる。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリシリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの電子線硬化性化合物は、1種または必要に応じて2種以上用いてもよい。
【0037】
さらに、必要に応じて、電子線硬化性化合物との相溶性に優れた熱硬化性または熱可塑性樹脂を添加することができる。熱硬化性または熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体。ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
印刷インキの成分としては、このような主成分の他に着色成分を含有する。この着色成分としては、染料および顔料のいずれも使用することができる。顔料の例としては、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄、カーボンブラック、紺青、群青等の無機顔料、およびキナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、アゾ系有機顔料等の有機顔料を使用することができる。
【0039】
また、着色成分の具体例を色別に挙げると、黄色着色剤としては、ジスアゾイエロー系、ハンザイエロー系、バルカンファストイエロー系、ベンジンイエロー系、クロモフタルイエロー系等が挙げられ、紅着色剤としては、ハンザレッド系、パーマネントレッド系、ウォッチャレッド系、レーキレッド系、ブリリアントカーミン系、ローダミン系等が挙げられ、藍着色剤としては、フタロシアニン系等が挙げられ、墨インキとしてはカーボンブラックが挙げられる。さらに、緑着色剤としてはフタロシアニングリーン系、橙着色剤としてはパーマネントレッド系、紫着色剤としてはジオキサジンバイオレット系が挙げられる。また、下地の隠蔽層等として用いられる白色顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。
【0040】
着色成分が上記白色顔料、およびアルミニウム粉等の金属顔料の場合には、インキ中の着色成分の含有量は40〜70質量%であることが好ましく、それ以外の場合には20〜50質量%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、それぞれ45〜60質量%、および30〜45質量%である。着色成分としては、体質顔料を含まないが、インキに体質顔料を併用することはできる。
【0041】
なお、インキ中の着色成分の含有量は、印刷物のデザインや必要とされる隠蔽性、濃度感により、上記の範囲内で適宜決定される。
【0042】
以上のような電子線で硬化する印刷インキ、典型的には電子線硬化型インキを用いて印刷物を製造する場合には、凸版印刷または平版印刷で基材上にインキ皮膜を形成した後、電子線を照射する。この場合のインキ皮膜の厚さは通常5μm以下である。
【0043】
電子線硬化型インキを硬化する電子線は150kV以下の低エネルギー線であることが好ましく、基材の電子線による劣化の影響を考慮すると30〜100kVが特に好ましい。図1は加速電圧50〜80kVにおける電子線到達深度と吸収線量(任意スケール)との関係を示す図である。この図から、電子線の加速電圧によりその到達深度が異なることがわかる。したがって、電子線を作用させるインキ皮膜の厚さに応じて上記範囲内で適切な加速電圧を設定することが好ましい。電子線の照射量は、硬化に必要なインキの成分と処理速度に応じて適宜選択されるが、通常、5〜50kGyが好ましく、特に10〜30kGyが好ましい。
【0044】
電子線照射装置としては、カーテンビーム型、エリアビーム型、ブロードビーム型、スキャニングビーム型、真空管型等の装置が挙げられる。これらの中では真空管型電子線照射装置を用いることが好ましい。このような真空管型電子線照射装置は、電子線発生部としての照射管10が図2のように構成されている。すなわち、図2の(a)に示すように、円筒状をなすガラスまたはセラミック製の真空管(チューブ)1と、その真空管(チューブ)1内に設けられ、陰極から放出された電子を電子線として取り出してこれを加速する電子線発生部2と、真空管1の端部に設けられ、電子線を射出する電子線射出部3と、図示しない給電部より給電するためのピン部4とを有する。電子線射出部3には薄膜状の照射窓5が設けられている。電子線射出部3の照射窓5は、ガスは透過せずに電子線を透過する機能を有しており、図2の(b)に示すようにスリット状をなしている。そして、照射室内に配置された被照射物に照射窓5から射出された電子線が照射される。
【0045】
このような真空管型電子線照射装置は、従来から用いられてきたドラム型の電子線照射装置とは根本的に異なっている。従来のドラム型電子線照射装置は、ドラム内を常に真空引きしながら電子線を照射するタイプのものであるが、真空管型の場合には、このような真空引きが不要である。
【0046】
このような構成の照射管を有する装置は、米国特許第5,414,267号に開示されている。この装置は、上述したように低加速電圧でも有効に電子線を取り出すことができるから、基材への悪影響が小さい。また、電子線のエネルギーが小さいためX線等の放射線の発生量が小さく、放射線を遮蔽するためのシールド装置を小型化または低減することができるようになる。
【0047】
通常、電子線照射は、窒素ガスなどの不活性ガスでイナーティングした状態で実施されるが、このような真空管型電子線照射装置は従来の電子線照射装置よりもイナーティングの必要性が小さく、条件によっては、空気または空気に近い雰囲気になるような不活性ガス含有量の雰囲気下で照射することも可能である。
【0048】
このように、真空管型の電子線照射装置を用いて低加速電圧で電子線を照射することにより、シールドの小型化・低減化、およびイナーティングの簡略化が可能となり、また低加速電圧であるため電子線発生部分の小型化が可能となり、電子線照射装置の飛躍的な小型化が可能となる。また、立ち上げが簡便であり、メンテナンスも容易である。
【0049】
印刷物の基材としては、特に制限はなく、紙、プラスチック、金属等あらゆる材料に対応することができる。特に、上述したように、電子線は熱を発生しないので、基材が、ペットボトル用シュリンクラベル等に使用される熱収縮性ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステルフィルム等の熱に弱いものであっても、適用可能である。また、透明フィルムに印刷する場合には、裏刷りすることが好ましい。これにより、濃度感を一層高めることができる。また、印刷によりインキ皮膜を形成した後、オーバープリントワニスのような透明平滑膜を被覆することが好ましい。これによっても濃度感を一層高めることができる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例により何等限定されるものではない。なお、以下の説明において「部」、「%]はそれぞれ重量部、重量%を表す。
【0051】
(実施例1)
ここでは、印刷インキ業界で一般的に使用されている簡易印刷機である展色機(RIテスター。上記非特許文献119ページ参照)を用いて、市販の厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(予め印刷面にコロナ処理を施したもの)からなる基材に、下記インキ1を、厚さ1μmとなるように印刷した。印刷後、真空管型電子線照射装置(Min−EB機;東洋インキ製造株式会社製)を用いて電子線を照射して硬化皮膜を形成した。電子線の照射条件は、加速電圧:50kV、照射線量:30kGy、照射雰囲気:窒素ガス雰囲気(酸素濃度200ppm)とした。
【0052】
インキ1
トリメチロールプロパントリアクリレート:50部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:9.9部、ハイドロキノン:0.1部およびジアリルフタレート樹脂(東都化成株式会社製「DT150」):40部を100℃で溶解しワニスを作製した。得られたワニス55部と、PVファーストイエローHG(クラリアント社製の黄顔料):35部、モノマーのペンタエリスリトールテトラアクリレート:10部を3本ロールにて分散させて電子線硬化型平版印刷インキ1とした。
【0053】
得られた硬化皮膜の透過率濃度を以下のように測定するとともに、硬化性および基材密着性を以下の通りに評価した。この際、硬化性、基材密着性の評価は、照射後1日後に行った。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。なお、印刷物をフィルム側から見た場合、インキ側から見た場合に比べ、目視で明らかに濃度感が高くなっていた。
【0054】
[透過率濃度の測定]
Macbeth社製の透過反射兼用濃度測定器「Macbeth TR927」を使用し、得られた硬化皮膜の透過光により透過率濃度を測定した。測定原理は、得られた硬化皮膜面に垂直に光を当てて、その透過光強度を測定し、上記(1)式に基づいて透過率濃度を算出した。
【0055】
[硬化性の評価]
1.触指による乾燥性テスト(完全硬化5〜未硬化1の5段階で評価する)。
2.爪による印刷面の耐擦り傷性テスト(以下スクラッチテストという)
(良好5〜不良1の5段階で評価する)。
3.MEKラビングテスト(綿棒にメチルエチルケトンを含有させて、印刷面を軽くこすり、下地が見えるまでの回数を測定する)。
【0056】
[基材密着性の評価]
セロハンテープ剥離による基材密着性テスト(以下、セロハンテープ密着テストという)(完全密着5〜密着不良1の5段階で評価する)。
【0057】
(実施例2〜4)
実施例1の電子線硬化型インキに代えて、実施例2では下記インキ2、実施例3では下記インキ3、実施例4では下記インキ4を実施例1と同様に印刷し、実施例1と同様の条件で電子線を照射して硬化皮膜を形成した。得られた硬化皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0058】
インキ2
インキ1の着色成分の代わりに、ノバパームカーミンHF4CN(クラリアント社製の紅顔料)を用いて顔料濃度を30%とした電子線硬化型平版印刷インキ2を得た。
【0059】
インキ3
トリメチロールプロパントリアクリレート:30部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:20部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:9.9部、ハイドロキノン:0.1部およびジアリルフタレート樹脂(東都化成株式会社製「DT150」):40部を100℃で溶解しワニスを作製した。得られたワニス60部と、リオノールブルーFG7330(東洋インキ製造株式会社製の藍顔料):30部、モノマーのペンタエリスリトールテトラアクリレート:10部を3本ロールにて分散させて電子線硬化型平版印刷インキ3とした。
【0060】
インキ4
インキ1の着色成分の代わりに、三菱カーボン#25(三菱カーボン株式会社製の墨顔料)を用いて、顔料濃度35%とした電子線硬化型平版印刷インキ4を得た。
【0061】
(比較例1〜4)
実施例1〜4に示した電子線硬化型インキ(光開始剤は含有されていない。)をそれぞれ実施例1と同様に印刷後、紫外線を照射し、印刷物を得た。紫外線の照射条件は、160W/cmのメタルハライドランプで30mJ/cm2の露光量とした。得られた皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例5〜8)
実施例1〜4に示した電子線硬化型インキ100部に対して、光反応開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「イルガキュア907」)5部を加え分散させ、紫外線硬化型インキを作成した。この紫外線硬化型インキをそれぞれ実施例1と同様に印刷後、比較例1〜4と同様の条件で紫外線を照射し、印刷物を得た。得られた皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例9〜12)
厚さが0.5μmとなるようにした以外は比較例5〜8と同様に印刷後、比較例1〜4と同様の条件で紫外線を照射し、印刷物を得た。得られた皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例13〜16)
市販の紫外線硬化インキであるFDOニュー超耐光黄R2ロ、FDOニュー超耐光紅R2ロ、FDOニュー藍R2ロ、FDOニュー墨R2ロ(いずれも東洋インキ製造株式会社製)をそれぞれ実施例1と同様に印刷後、比較例1〜4と同様の条件で紫外線を照射し、印刷物を得た。得られた皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、電子線で硬化した実施例1〜4では、着色成分の含有量が多く、かつ透過率濃度も高かったが、良好な硬化特性を示し、基材密着性も良好であった。これに対して、紫外線を照射した比較例1〜8は、皮膜が十分に硬化しておらず、基材密着性も低かった。また、比較例9〜12は、皮膜厚さを0.5μmにして紫外線を照射したものであり、皮膜が薄いため、皮膜の硬化性はほぼ良好なものとなったが、基材密着性が低かった。また、透過性濃度が低く、高い濃度感が得られなかった。市販の紫外線硬化型インキを用いた比較例13〜16は、いずれも皮膜の硬化性および密着性は良好であったが、配合した着色成分の量が少ないため、高い濃度感が得られなかった。
【0067】
(実施例5)
実施例1〜4のインキ1〜4を用いて、OKトップコート(王子製紙株式会社製アート紙)に、Center Impression(CI)型輪転印刷機により、ウェット・オン・ウェット方式で平版印刷し、最後に、実施例1と同様の加速電圧で電子線照射(照射線量50kGy)し、多色印刷物を得た。この印刷物に対し、乾燥性テスト、スクラッチテスト、MEKラビングテスト、セロハンテープ密着テストを行った結果、いずれも良好であった。
【0068】
(実施例6)
実施例5で得られた印刷物のインキ面に、FDカルトン ACE OPニスロ型(東洋インキ製造株式会社製オーバーコートニス)を用いて、RIテスターで厚さ1μmのオーバーコート層を設け、比較例に示した条件で紫外線照射した。その結果、実施例5の印刷物に比べ、目視でより濃度感が高くなっていた。
【0069】
(実施例7)
実施例1のワニス:31部、タイペークR630(石原産業株式会社製)、タルク:3部、炭酸カルシウム:1部、モノマー:10部を用いて、実施例1と同様にして電子線硬化型平版印刷インキを得た。得られたインキを用いて、実施例1と同様にして印刷し、実施例1と同様の加速電圧で電子線照射(照射線量50kGy)した。この印刷物に対し、乾燥性テスト、スクラッチテスト、MEKラビングテスト、セロハンテープ密着テストを行った結果、いずれも良好であった。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、インキの着色成分を高濃度にしたので、薄いインキ皮膜でありながら、濃度感を高くして高濃度印刷に対応することができ、このように着色剤が高濃度で含有されていても短時間で硬化することができ、かつ高いインキ物性が維持される。そして、凸版印刷および平版印刷により薄いインキ皮膜を形成するので、インキ皮膜を生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができるといった凸版印刷および平版印刷の本質的なメリットを生かしつつ、さらに乾燥・硬化の時間およびエネルギーが少なくてすみ、しかも環境上のコストが小さい高濃度印刷用の印刷インキを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加速電圧50〜80kVにおける電子線到達深度と照射線量との関係を示す図。
【図2】層を形成するための電子線照射装置の照射管の構造を示す図。
【符号の説明】
1……真空管
2……電子線発生部
3……電子線射出部
4……ピン部
5……照射窓
10……照射管
【発明の属する技術分野】
本発明は、高濃度印刷物に適した印刷インキ、それを用いた印刷物およびそのような印刷物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代社会において、印刷技術は文字情報や画像情報を大量に複製する技術としてなくてはならないものとなっている。そして、印刷技術は、用途や印刷物等に応じて様々な方式が存在し、それらに対応して種々の印刷インキが用いられている。各種印刷方式とそれに用いられる各種インキについては例えば非特許文献1に記載されている。
【0003】
このうち、比較的濃度感の高い印刷画像が求められる印刷物、すなわち高濃度印刷物は、通常、スクリーン印刷またはグラビア印刷が使用されている。
【0004】
スクリーン印刷は、画像のパターン状にインキ透過部を設けたスクリーン版を通してインキを基材に転移させ印刷を行う。このスクリーン印刷の特長としては、(1)スクリーン線の密度(通常はインチ当たりの線数で管理)調整により、10〜100μmという比較的厚いインキ皮膜を形成することができること、(2)比較的粘度の高いインキを使用することが可能であるため、インキ樹脂中に顔料を始めとする充填剤を多めに加えても印刷適性には支障はないことが挙げられる。このような特長を活かし、スクリーン印刷は高い印刷濃度や隠蔽性が求められる用途を中心に使用されている。例えば、看板、ゲーム機、自動販売機の見本缶(ダミー体)が挙げられる。
【0005】
一方、グラビア印刷は、金属シリンダー表面にエッチングなどによりパターン状に設けたセル内にインキを保持し、これを基材に転移させる。グラビア印刷は、樹脂分の少ない、溶剤もしくは水を媒体とした低粘度のインキにより、毎分300mという高速生産も可能な点が大きな特長で、かつ、印刷画質もセルの深さを変えることにより連続的に階調効果を出すことができ高い濃度感の印刷物が得られる印刷方式として知られている。また、基材フィルムに対する密着要求に合わせてインキ樹脂選択の幅が比較的広いため、各種フィルムに印刷可能である。グラビア印刷におけるインキ皮膜の厚さは、通常、3〜10μm程度である。
【0006】
【非特許文献1】
片山賢二 「上手に使いこなす印刷インキ」 日本印刷新聞社 1993年5月20日
【0007】
しかしながら、スクリーン印刷は主に厚膜印刷がゆえの問題点として、(1)印刷速度を高くできないため生産性が悪いこと、(2)皮膜が厚いためインキの使用量が多く、かつインキ自体の価格も高いためトータルのインキコストが高くなること、(3)皮膜が厚いためインキの乾燥・硬化に時間がかかること、(4)インキ皮膜が厚いため、フィルム等への用途では、インキ皮膜がフィルム等に追従できず、フィルムから剥離したりひび割れたりすることがある。
【0008】
また、グラビア印刷も以下のようないくつかの問題点を抱えている。すなわち、(1)従来のグラビア印刷機は大型で広幅・高速・大量印刷向けであり、近年の「多品種・小ロット生産」指向には不向きである。(2)金属シリンダーの印刷版の製造コストが高く、納期もかかる。(3)インキ媒体に大量の溶剤や水を含むため、印刷時のインキ乾燥に多大のエネルギーやスペースを必要とし、後処理などにおいて環境上のコストがかかる。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高濃度印刷物を薄い皮膜で生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができ、乾燥・硬化の時間およびエネルギーが少なくてすみ、環境上のコストが小さく、しかも印刷したインキ皮膜の物性が高い高濃度印刷用の印刷インキを提供することを目的とする。また、このような印刷インキを用いた印刷物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、一般的に印刷されたインキ皮膜の厚さが5μm以下と薄い凸版印刷または平版印刷を用いることを前提とし、インキの着色成分濃度を極力高濃度とし、かつ電子線で硬化されるものとすることにより、上記課題が解決可能であることを見出した。
【0011】
凸版印刷および平版印刷は、製版代が安く納期も短く、印刷物の狭幅から広幅までロットに関係なく柔軟に対応可能であるから、インキ皮膜を生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができ、また、きれいなフルカラーのプロセス印刷が可能であるといったメリットを有するが、これらは原理的にインキ皮膜の厚さが1〜3μm程度と薄く、したがって、従来は凸版印刷や平版印刷は高濃度印刷物を得ることが困難であるという固定観念が存在し、高濃度印刷物に凸版印刷や平版印刷を適用することは実質的に試みられていないのが現状であり、わずかにできるだけ高濃度感を出すために同じ図柄を2〜3回以上印刷することが行われているに過ぎない。もちろん、この場合には、生産性が低くなってしまう。
【0012】
これに対し、本発明者らは、凸版印刷および平版印刷であってもインキの着色成分を高濃度にすれば、薄いインキ皮膜でありながら、濃度感を高くして高濃度印刷に対応することができ、インキを電子線を照射して硬化されるものとすることにより、このように着色剤が高濃度で含有されていても短時間で硬化することができ、かつ高いインキ物性が維持されること、そして、これにより、インキ皮膜を生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができるといった凸版印刷および平版印刷の本質的なメリットを生かしつつ、さらに乾燥・硬化の時間およびエネルギーが少なくてすみ、環境上のコストが小さい高濃度印刷用の印刷インキを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、その中の着色成分の含有量が20〜70質量%の範囲であることを特徴とする印刷インキを提供する。
【0014】
着色成分が白色顔料および金属顔料以外の場合には、その中の着色成分の含有量が20〜50質量%の範囲であることが好ましく、着色成分が白色顔料および金属顔料の場合には、その中の着色成分の含有量を40〜70質量%の範囲であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、印刷されたインキの厚さが1μmのときの透過率濃度が、黄インキでは0.3以上、紅インキでは0.5以上、藍インキでは0.7以上、墨インキでは0.6以上であることを特徴とする印刷インキを提供する。
【0016】
上記いずれの発明においても、前記凸版印刷にはフレキソ印刷が含まれ、前記平版印刷にはオフセット印刷が含まれる。
【0017】
さらに、本発明は上記いずれかの印刷インキを用いて、被印刷体に凸版印刷または平版印刷し、電子線を照射して前記印刷されたインキ皮膜を硬化させてなることを特徴とする印刷物を提供する。
【0018】
この場合に、前記印刷インキを透明基材に裏刷りしてなることや、前記インキ皮膜の上に透明平滑膜を被覆してなることが好ましい。
【0019】
さらにまた、本発明は上記いずれかの印刷インキを用いて、被印刷体に凸版印刷または平版印刷する工程と、印刷されたインキ皮膜に電子線を照射して該インキ皮膜を硬化させる工程とを有することを特徴とする印刷物の製造方法を提供する。
【0020】
多色刷りする際には、全ての印刷インキ皮膜を形成した後に電子線を照射して前記インキ皮膜を硬化させることが好ましい。
【0021】
上記印刷物および印刷物の製造方法において、電子線の加速電圧が150kV以下であることが好ましい。
【0022】
なお、本発明において、「硬化」は架橋をも含む概念である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明の印刷インキは、凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化され、その中の着色成分の含有量が20〜70質量%の範囲であることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の印刷インキは、電子線で硬化されるものであり、典型的には電子線硬化型インキが用いられる。インキのタイプとしては、フルカラー印刷を行うための黄、紅、藍、墨のプロセスインキ、各種効果的配色を可能にする特色インキ、光沢感を出す金インキおよび銀インキ、蛍光インキ等がある。
【0025】
また、本発明の印刷インキは、凸版印刷および平板印刷を前提としたものである。これらのうち凸版印刷は、凸状の版面から直接にインキが紙面に押圧されて転移するものである。この凸版印刷には、通常の凸版印刷の他、フレキソ印刷も含む。フレキソ印刷とは、ゴム凸版または感光性樹脂凸版のような弾性のある版を使用し、液状で速乾性のインキで印刷する方式である。また、平版印刷は、親油性の画線部と親水性の非画線部を持つ印刷版面に、親油性のインキと湿し水とが交互に供給されて印刷が行われる。この平版印刷には、版面のインキを一旦ゴムブランケット面に映してから、被印刷素材面に転移させるオフセット印刷が含まれる。さらに、湿し水を使用しない水なし平板印刷であってもよい。これらの印刷方式は原理的に薄いインキ皮膜を形成するものであり、通常の凸版印刷、オフセット印刷等の平版印刷は1〜3μm程度である。フレキソ印刷ではインキを印刷版に供給するアニロックスロールの選択により、通常の凸版印刷等より厚いインキ皮膜を形成することができ、通常5μm程度の皮膜が印刷されている。
【0026】
本発明は、薄いインキ皮膜でありながら濃度感の高い高濃度印刷を行うものであり、そのためにインキ皮膜の薄い凸版印刷または平板印刷を用い、かつ濃度感を高めるために着色剤の濃度を上げる必要があることから、着色成分含有量を通常よりも高い20〜70質量%としている。このように着色成分を高濃度にすることにより濃度感が高まるのは透過光に対して高い隠蔽性が得られるためである。着色成分の好ましい範囲は25〜70質量%であり、さらに好ましくは30〜60質量%である。なお、インキ皮膜の厚さは、単色の場合も、多色の場合も5μm以下であることが好ましい。
【0027】
このように凸版印刷または平版印刷により薄いインキ皮膜を形成すればよいことから、従来のグラビア印刷、スクリーン印刷の場合よりもインキ使用量を著しく少なくすることができ、印刷に関わるインキコストを大幅に低減することができるのみならず、厚いインキ皮膜に比べて形状追随性に優れるため、インキの剥離やひび割れが生じ難い。
【0028】
着色成分の濃度の指標としては、上記質量基準の濃度の他、透過率濃度があり、本発明の実施形態では着色成分の濃度をこの透過率濃度で規定する。ここで「透過率濃度」とは、インキをRIテスター(簡易印刷機)で、厚さ50μmのポリエステルフィルムに、厚さ1μmにて印刷し、硬化させた印刷物に光を照射し、その際の入射光強度をΨρ、透過光強度をΨρoとした場合に、以下に示す(1)式のDρで表される値をいう。
Dρ=log(Ψρ/Ψρo) ‥‥‥‥(1)
この場合に、入射光強度Ψρ、透過光強度Ψρoとしては、Macbeth社製の透過反射兼用濃度測定器「Macbeth TR927」で測定した値を用いることが好ましい。
【0029】
そして、このような印刷されたインキの厚さが1μmのときの透過率濃度を、黄インキでは0.3以上、紅インキでは0.5以上、藍インキでは0.7以上、墨インキでは0.6以上に規定する。このように規定することにより、5μm以下と薄いインキ皮膜でありながら、高い濃度感ないしは隠蔽性を得ることができる。好ましくは黄インキでは0.35以上、紅インキでは0.6以上、藍インキでは0.8以上、墨インキでは0.7以上である。
【0030】
なお、上記印刷方式の中では、フレキソ印刷は、通常の凸版印刷やオフセット印刷等の平版印刷よりも厚いインキ皮膜を形成可能であることから、このように着色成分を高濃度化することにより、より高い濃度感、隠蔽性をもたらす。
【0031】
このように着色成分が高濃度で含まれている場合には、紫外線硬化型インキでは硬化が困難であり実用的インキ皮膜になりにくいが、本発明のように電子線で硬化させるインキを用いれば、問題を生じずに短時間で硬化することができ、かつ高いインキ皮膜物性が維持される。
【0032】
すなわち、電子線の皮膜内透過性は、紫外線と異なりインキ皮膜の色相や濃度に影響されない。したがって、紫外線硬化型インキでは硬化が困難なインキ中の顔料等の着色成分を高濃度にした場合でも電子線硬化型インキでは問題なく硬化することができる。
【0033】
また、電子線は熱を発生しないので、基材の変形や劣化を引き起こさない。これは、ペットボトル用シュリンクラベル等に使用される熱収縮性ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステルフィルム等への印刷において特に有効である。
【0034】
さらに、電子線は透過性が高いため、インキ皮膜を短時間で硬化することができることはもちろんのこと、電子線硬化型インキを用いて多色のプロセス印刷を行う場合に、各色インキをその都度硬化させずに重ねて印刷(ウエット・オン・ウエット方式という)した後、最後に電子線を照射することにより、一度の照射で硬化させることが可能である。これにより、生産性向上に大きく寄与する。この「ウエット・オン・ウェット」印刷に適した印刷機として、センタードラムの回りに各色のインキを印刷する凸版または平版を設置したCenter Impression(CI)型輪転印刷機が知られている。紫外線硬化の場合には、紫外線の透過性が低いため、各色を印刷する毎に硬化する必要があり、生産性が低くならざるを得ない。
【0035】
本発明で用いられる電子線硬化型インキの主成分としては、電子線を照射することによりラジカル重合もしくはカチオン重合するモノマー、オリゴマー、プレポリマーの1種または2種以上の電子線硬化性化合物が用いられる。
【0036】
電子線硬化性化合物の例としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等を用いることができる。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリシリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの電子線硬化性化合物は、1種または必要に応じて2種以上用いてもよい。
【0037】
さらに、必要に応じて、電子線硬化性化合物との相溶性に優れた熱硬化性または熱可塑性樹脂を添加することができる。熱硬化性または熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体。ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
印刷インキの成分としては、このような主成分の他に着色成分を含有する。この着色成分としては、染料および顔料のいずれも使用することができる。顔料の例としては、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄、カーボンブラック、紺青、群青等の無機顔料、およびキナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、アゾ系有機顔料等の有機顔料を使用することができる。
【0039】
また、着色成分の具体例を色別に挙げると、黄色着色剤としては、ジスアゾイエロー系、ハンザイエロー系、バルカンファストイエロー系、ベンジンイエロー系、クロモフタルイエロー系等が挙げられ、紅着色剤としては、ハンザレッド系、パーマネントレッド系、ウォッチャレッド系、レーキレッド系、ブリリアントカーミン系、ローダミン系等が挙げられ、藍着色剤としては、フタロシアニン系等が挙げられ、墨インキとしてはカーボンブラックが挙げられる。さらに、緑着色剤としてはフタロシアニングリーン系、橙着色剤としてはパーマネントレッド系、紫着色剤としてはジオキサジンバイオレット系が挙げられる。また、下地の隠蔽層等として用いられる白色顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。
【0040】
着色成分が上記白色顔料、およびアルミニウム粉等の金属顔料の場合には、インキ中の着色成分の含有量は40〜70質量%であることが好ましく、それ以外の場合には20〜50質量%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、それぞれ45〜60質量%、および30〜45質量%である。着色成分としては、体質顔料を含まないが、インキに体質顔料を併用することはできる。
【0041】
なお、インキ中の着色成分の含有量は、印刷物のデザインや必要とされる隠蔽性、濃度感により、上記の範囲内で適宜決定される。
【0042】
以上のような電子線で硬化する印刷インキ、典型的には電子線硬化型インキを用いて印刷物を製造する場合には、凸版印刷または平版印刷で基材上にインキ皮膜を形成した後、電子線を照射する。この場合のインキ皮膜の厚さは通常5μm以下である。
【0043】
電子線硬化型インキを硬化する電子線は150kV以下の低エネルギー線であることが好ましく、基材の電子線による劣化の影響を考慮すると30〜100kVが特に好ましい。図1は加速電圧50〜80kVにおける電子線到達深度と吸収線量(任意スケール)との関係を示す図である。この図から、電子線の加速電圧によりその到達深度が異なることがわかる。したがって、電子線を作用させるインキ皮膜の厚さに応じて上記範囲内で適切な加速電圧を設定することが好ましい。電子線の照射量は、硬化に必要なインキの成分と処理速度に応じて適宜選択されるが、通常、5〜50kGyが好ましく、特に10〜30kGyが好ましい。
【0044】
電子線照射装置としては、カーテンビーム型、エリアビーム型、ブロードビーム型、スキャニングビーム型、真空管型等の装置が挙げられる。これらの中では真空管型電子線照射装置を用いることが好ましい。このような真空管型電子線照射装置は、電子線発生部としての照射管10が図2のように構成されている。すなわち、図2の(a)に示すように、円筒状をなすガラスまたはセラミック製の真空管(チューブ)1と、その真空管(チューブ)1内に設けられ、陰極から放出された電子を電子線として取り出してこれを加速する電子線発生部2と、真空管1の端部に設けられ、電子線を射出する電子線射出部3と、図示しない給電部より給電するためのピン部4とを有する。電子線射出部3には薄膜状の照射窓5が設けられている。電子線射出部3の照射窓5は、ガスは透過せずに電子線を透過する機能を有しており、図2の(b)に示すようにスリット状をなしている。そして、照射室内に配置された被照射物に照射窓5から射出された電子線が照射される。
【0045】
このような真空管型電子線照射装置は、従来から用いられてきたドラム型の電子線照射装置とは根本的に異なっている。従来のドラム型電子線照射装置は、ドラム内を常に真空引きしながら電子線を照射するタイプのものであるが、真空管型の場合には、このような真空引きが不要である。
【0046】
このような構成の照射管を有する装置は、米国特許第5,414,267号に開示されている。この装置は、上述したように低加速電圧でも有効に電子線を取り出すことができるから、基材への悪影響が小さい。また、電子線のエネルギーが小さいためX線等の放射線の発生量が小さく、放射線を遮蔽するためのシールド装置を小型化または低減することができるようになる。
【0047】
通常、電子線照射は、窒素ガスなどの不活性ガスでイナーティングした状態で実施されるが、このような真空管型電子線照射装置は従来の電子線照射装置よりもイナーティングの必要性が小さく、条件によっては、空気または空気に近い雰囲気になるような不活性ガス含有量の雰囲気下で照射することも可能である。
【0048】
このように、真空管型の電子線照射装置を用いて低加速電圧で電子線を照射することにより、シールドの小型化・低減化、およびイナーティングの簡略化が可能となり、また低加速電圧であるため電子線発生部分の小型化が可能となり、電子線照射装置の飛躍的な小型化が可能となる。また、立ち上げが簡便であり、メンテナンスも容易である。
【0049】
印刷物の基材としては、特に制限はなく、紙、プラスチック、金属等あらゆる材料に対応することができる。特に、上述したように、電子線は熱を発生しないので、基材が、ペットボトル用シュリンクラベル等に使用される熱収縮性ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステルフィルム等の熱に弱いものであっても、適用可能である。また、透明フィルムに印刷する場合には、裏刷りすることが好ましい。これにより、濃度感を一層高めることができる。また、印刷によりインキ皮膜を形成した後、オーバープリントワニスのような透明平滑膜を被覆することが好ましい。これによっても濃度感を一層高めることができる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例により何等限定されるものではない。なお、以下の説明において「部」、「%]はそれぞれ重量部、重量%を表す。
【0051】
(実施例1)
ここでは、印刷インキ業界で一般的に使用されている簡易印刷機である展色機(RIテスター。上記非特許文献119ページ参照)を用いて、市販の厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(予め印刷面にコロナ処理を施したもの)からなる基材に、下記インキ1を、厚さ1μmとなるように印刷した。印刷後、真空管型電子線照射装置(Min−EB機;東洋インキ製造株式会社製)を用いて電子線を照射して硬化皮膜を形成した。電子線の照射条件は、加速電圧:50kV、照射線量:30kGy、照射雰囲気:窒素ガス雰囲気(酸素濃度200ppm)とした。
【0052】
インキ1
トリメチロールプロパントリアクリレート:50部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:9.9部、ハイドロキノン:0.1部およびジアリルフタレート樹脂(東都化成株式会社製「DT150」):40部を100℃で溶解しワニスを作製した。得られたワニス55部と、PVファーストイエローHG(クラリアント社製の黄顔料):35部、モノマーのペンタエリスリトールテトラアクリレート:10部を3本ロールにて分散させて電子線硬化型平版印刷インキ1とした。
【0053】
得られた硬化皮膜の透過率濃度を以下のように測定するとともに、硬化性および基材密着性を以下の通りに評価した。この際、硬化性、基材密着性の評価は、照射後1日後に行った。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。なお、印刷物をフィルム側から見た場合、インキ側から見た場合に比べ、目視で明らかに濃度感が高くなっていた。
【0054】
[透過率濃度の測定]
Macbeth社製の透過反射兼用濃度測定器「Macbeth TR927」を使用し、得られた硬化皮膜の透過光により透過率濃度を測定した。測定原理は、得られた硬化皮膜面に垂直に光を当てて、その透過光強度を測定し、上記(1)式に基づいて透過率濃度を算出した。
【0055】
[硬化性の評価]
1.触指による乾燥性テスト(完全硬化5〜未硬化1の5段階で評価する)。
2.爪による印刷面の耐擦り傷性テスト(以下スクラッチテストという)
(良好5〜不良1の5段階で評価する)。
3.MEKラビングテスト(綿棒にメチルエチルケトンを含有させて、印刷面を軽くこすり、下地が見えるまでの回数を測定する)。
【0056】
[基材密着性の評価]
セロハンテープ剥離による基材密着性テスト(以下、セロハンテープ密着テストという)(完全密着5〜密着不良1の5段階で評価する)。
【0057】
(実施例2〜4)
実施例1の電子線硬化型インキに代えて、実施例2では下記インキ2、実施例3では下記インキ3、実施例4では下記インキ4を実施例1と同様に印刷し、実施例1と同様の条件で電子線を照射して硬化皮膜を形成した。得られた硬化皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0058】
インキ2
インキ1の着色成分の代わりに、ノバパームカーミンHF4CN(クラリアント社製の紅顔料)を用いて顔料濃度を30%とした電子線硬化型平版印刷インキ2を得た。
【0059】
インキ3
トリメチロールプロパントリアクリレート:30部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:20部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:9.9部、ハイドロキノン:0.1部およびジアリルフタレート樹脂(東都化成株式会社製「DT150」):40部を100℃で溶解しワニスを作製した。得られたワニス60部と、リオノールブルーFG7330(東洋インキ製造株式会社製の藍顔料):30部、モノマーのペンタエリスリトールテトラアクリレート:10部を3本ロールにて分散させて電子線硬化型平版印刷インキ3とした。
【0060】
インキ4
インキ1の着色成分の代わりに、三菱カーボン#25(三菱カーボン株式会社製の墨顔料)を用いて、顔料濃度35%とした電子線硬化型平版印刷インキ4を得た。
【0061】
(比較例1〜4)
実施例1〜4に示した電子線硬化型インキ(光開始剤は含有されていない。)をそれぞれ実施例1と同様に印刷後、紫外線を照射し、印刷物を得た。紫外線の照射条件は、160W/cmのメタルハライドランプで30mJ/cm2の露光量とした。得られた皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例5〜8)
実施例1〜4に示した電子線硬化型インキ100部に対して、光反応開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「イルガキュア907」)5部を加え分散させ、紫外線硬化型インキを作成した。この紫外線硬化型インキをそれぞれ実施例1と同様に印刷後、比較例1〜4と同様の条件で紫外線を照射し、印刷物を得た。得られた皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例9〜12)
厚さが0.5μmとなるようにした以外は比較例5〜8と同様に印刷後、比較例1〜4と同様の条件で紫外線を照射し、印刷物を得た。得られた皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例13〜16)
市販の紫外線硬化インキであるFDOニュー超耐光黄R2ロ、FDOニュー超耐光紅R2ロ、FDOニュー藍R2ロ、FDOニュー墨R2ロ(いずれも東洋インキ製造株式会社製)をそれぞれ実施例1と同様に印刷後、比較例1〜4と同様の条件で紫外線を照射し、印刷物を得た。得られた皮膜の透過率濃度を実施例1と同様に測定し、皮膜の硬化性および基材密着性を実施例1と同様に評価した。透過率濃度の値、および硬化性、基材密着性の評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、電子線で硬化した実施例1〜4では、着色成分の含有量が多く、かつ透過率濃度も高かったが、良好な硬化特性を示し、基材密着性も良好であった。これに対して、紫外線を照射した比較例1〜8は、皮膜が十分に硬化しておらず、基材密着性も低かった。また、比較例9〜12は、皮膜厚さを0.5μmにして紫外線を照射したものであり、皮膜が薄いため、皮膜の硬化性はほぼ良好なものとなったが、基材密着性が低かった。また、透過性濃度が低く、高い濃度感が得られなかった。市販の紫外線硬化型インキを用いた比較例13〜16は、いずれも皮膜の硬化性および密着性は良好であったが、配合した着色成分の量が少ないため、高い濃度感が得られなかった。
【0067】
(実施例5)
実施例1〜4のインキ1〜4を用いて、OKトップコート(王子製紙株式会社製アート紙)に、Center Impression(CI)型輪転印刷機により、ウェット・オン・ウェット方式で平版印刷し、最後に、実施例1と同様の加速電圧で電子線照射(照射線量50kGy)し、多色印刷物を得た。この印刷物に対し、乾燥性テスト、スクラッチテスト、MEKラビングテスト、セロハンテープ密着テストを行った結果、いずれも良好であった。
【0068】
(実施例6)
実施例5で得られた印刷物のインキ面に、FDカルトン ACE OPニスロ型(東洋インキ製造株式会社製オーバーコートニス)を用いて、RIテスターで厚さ1μmのオーバーコート層を設け、比較例に示した条件で紫外線照射した。その結果、実施例5の印刷物に比べ、目視でより濃度感が高くなっていた。
【0069】
(実施例7)
実施例1のワニス:31部、タイペークR630(石原産業株式会社製)、タルク:3部、炭酸カルシウム:1部、モノマー:10部を用いて、実施例1と同様にして電子線硬化型平版印刷インキを得た。得られたインキを用いて、実施例1と同様にして印刷し、実施例1と同様の加速電圧で電子線照射(照射線量50kGy)した。この印刷物に対し、乾燥性テスト、スクラッチテスト、MEKラビングテスト、セロハンテープ密着テストを行った結果、いずれも良好であった。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、インキの着色成分を高濃度にしたので、薄いインキ皮膜でありながら、濃度感を高くして高濃度印刷に対応することができ、このように着色剤が高濃度で含有されていても短時間で硬化することができ、かつ高いインキ物性が維持される。そして、凸版印刷および平版印刷により薄いインキ皮膜を形成するので、インキ皮膜を生産性良くしかも安価に得ることができ、多品種・小ロット生産にも対応することができるといった凸版印刷および平版印刷の本質的なメリットを生かしつつ、さらに乾燥・硬化の時間およびエネルギーが少なくてすみ、しかも環境上のコストが小さい高濃度印刷用の印刷インキを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加速電圧50〜80kVにおける電子線到達深度と照射線量との関係を示す図。
【図2】層を形成するための電子線照射装置の照射管の構造を示す図。
【符号の説明】
1……真空管
2……電子線発生部
3……電子線射出部
4……ピン部
5……照射窓
10……照射管
Claims (12)
- 凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、その中の着色成分の含有量が20〜70質量%の範囲であることを特徴とする印刷インキ。
- 着色成分が白色顔料および金属顔料の場合に、その中の着色成分の含有量を40〜70質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の印刷インキ。
- 着色成分が白色顔料および金属顔料以外の場合に、その中の着色成分の含有量が20〜50質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の印刷インキ。
- 凸版印刷または平版印刷用の電子線で硬化される印刷インキであって、印刷されたインキの厚さが1μmのときの透過率濃度が、黄インキでは0.3以上、紅インキでは0.5以上、藍インキでは0.7以上、墨インキでは0.6以上であることを特徴とする印刷インキ。
- 前記凸版印刷にはフレキソ印刷が含まれ、前記平版印刷にはオフセット印刷が含まれることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の印刷インキ。
- 請求項1から請求項5のいずれかの印刷インキを用いて、被印刷体に凸版印刷または平版印刷し、電子線を照射して前記印刷されたインキ皮膜を硬化させてなることを特徴とする印刷物。
- 前記電子線の加速電圧が150kV以下であることを特徴とする請求項6に記載の印刷物。
- 前記印刷インキを透明基材に裏刷りしてなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の印刷物。
- 前記インキ皮膜の上に透明平滑膜を被覆してなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の印刷物。
- 請求項1から請求項5のいずれかの印刷インキを用いて、被印刷体に凸版印刷または平版印刷する工程と、印刷されたインキ皮膜に電子線を照射して該インキ皮膜を硬化させる工程とを有することを特徴とする印刷物の製造方法。
- 前記電子線の加速電圧が150kV以下であることを特徴とする請求項8に記載の印刷物の製造方法。
- 多色刷りする際に、全ての印刷インキ皮膜を形成した後に電子線を照射して前記インキ皮膜を硬化させることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の印刷物の製造方法。
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