JP2004143644A - 炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プレカーサーの製糸工程における単繊維間の接着および耐炎化工程における単繊維間の融着を抑え、毛羽や束切れや不均一焼成を防ぐことができ、ストランド強度などの性能が優れた炭素繊維の製造を可能にする油剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】水膨潤状態のアクリル繊維またはアクリル繊維に、式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる油剤組成物を付与し、乾燥緻密化または乾燥した後、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】水膨潤状態のアクリル繊維またはアクリル繊維に、式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる油剤組成物を付与し、乾燥緻密化または乾燥した後、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の詳細な技術分野】
本発明は、炭素繊維前駆体アクリル繊維(以下、プレカーサーという。)を耐炎化繊維に転換する耐炎化工程で単繊維間に融着が発生することを防止するために用いられる油剤組成物とその付与方法を改良することにより、品質・性能の優れた炭素繊維を製造するのに好適で、工程通過性が改善されたプレカーサーを得ることのできるプレカーサーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プレカーサーを200〜400℃の酸化性雰囲気中で加熱処理して耐炎化繊維に転換し、続いて不活性雰囲気中少なくとも1000℃で処理して炭素化を行うことが炭素繊維の製造法として一般的である。炭素繊維は、優れた性能により繊維強化樹脂複合材料の強化繊維として広く利用されている。
【0003】
一方、上記の炭素繊維の製造方法において、特に耐炎化工程で単繊維間に融着が発生し、炭素化時に焼成が不均一になり、毛羽や束切れといった障害が発生することが知られている。この融着を回避するために、プレカーサーに付与する油剤の選択が重要であることが知られており、多種の油剤が検討されている。
【0004】
例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等を配合したシリコーン系油剤は、高い耐熱性を有し、プレカーサー単繊維間の融着を効果的に抑えることから炭素繊維前駆体用油剤としてよく使用されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、シリコーン系油剤を使用すると、耐炎化および炭素化工程において、シリコーン系油剤由来の酸化珪素等が発生する。焼成炉壁や排ガス処理ラインに付着、堆積した酸化珪素等は、操業性の低下させ、焼成工程のガイド・ローラ類に付着した酸化珪素等は工程通過性を低下し、工程糸に付着した酸化珪素等は炭素繊維品質を低下させる場合があった。
【0006】
これに対して、シリコーン系油剤を配合しない非シリコーン系油剤は、焼成時に酸化珪素等が発生せず、原料が安価なので有利であるが、シリコーン系油剤ほどの耐熱性がなく、焼成時には消失してしまうため、焼成時にプレカーサー単繊維間の融着の発生が防げなかった。
【0007】
シリコーン系油剤の耐熱性を利用しつつ、酸化珪素等の飛散を減らす方法としては、(1)シリコーン系油剤を主成分とする油剤の付着量を減らす、(2)油剤中のシリコーン系油剤の配合比を下げるなどの方法があるが、いずれの方法でも単繊維間の融着の発生や紡糸工程での集束性悪化など、工程通過性・炭素繊維性能とも悪化する傾向がみられた。
【0008】
この他に、水膨潤状態のアクリル系繊維に非イオン活性剤および/又はカチオン活性剤を付与し、乾燥緻密化処理の後にシリコーン化合物(あるいは非イオン活性剤等との混合物)を付与することでプレカーサーの製糸工程や高温焼成処理における融着を抑制し、非シリコーン系油剤のみを付与する場合に比べて単繊維強度の高いアクリル系炭素繊維が製造できることが提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
この方法でも、シリコーン系油剤由来の酸化珪素等の発生を抑制することは確かに可能であった。しかし、この方法でも、水膨潤状態のアクリル系繊維にシリコーン系油剤を付与した場合に比べてプレカーサーの単繊維間の融着はまだ多く、炭素繊維性能の低下は避けられなかった。
【0010】
【特許文献1】
特開平5−140821号公報
【特許文献1】
特開昭59−127508号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、プレカーサーの製糸工程、炭素繊維前駆体アクリル繊維を耐炎化する耐炎化工程における繊維間の接着や由着を抑え、不均一焼成を防ぐことにより毛羽や束切れを防ぎ、さらに、耐炎化および炭素化工程における酸化珪素等の発生を抑えて、操業性や工程通過性およびストランド強度など炭素繊維品質の低下を防ぐことができるプレカーサーを得ることができるプレカーサーの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは、水膨潤状態のアクリル繊維またはアクリル繊維に、式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる油剤組成物を付与し、乾燥緻密化または乾燥した後、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法にある(第1発明)。
【0013】
そして、第2の要旨は、水膨潤状態のアクリル繊維またはアクリル繊維に、式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる油剤組成物を250℃で2時間加熱後の残渣率が1質量%以下のノニオン系界面活性剤で乳化した油剤組成物を付与し、乾燥緻密化または乾燥した後、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法。にある(第2の発明)。
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
(プレカーサー)
本発明において、油剤組成物を付与する対象となるのは、公知の水膨潤状態にあるアクリル系繊維であればよい。その組成は特に限定されるものではないが、アクリロニトリル単位95質量%以上とアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体単位5質量%以下とからなるアクリロニトリル系重合体を紡糸して得られるアクリル繊維が好ましい。さらにこの共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、これらのアルカリ金属塩、これらのアンモニウム塩およびアクリルアミド等の単量体群から選ばれる1種以上の単量体が耐炎化反応を促進する上で好ましい。このようなアクリル繊維からなる繊維束の製造方法も特に限定されるものではなく、公知の湿式、乾式および乾湿式の各紡糸方式が採用できる。
【0018】
本発明においては、まず非シリコーン系油剤(以下、前油剤という)を
イ)水エマルションとせず、アクリル繊維に付与(第1発明)、または、
ロ)特定のノニオン系界面活性剤で水エマルションとして、アクリル繊維に付与(第2発明)し、
その後、シリコーン系油剤(以下、後油剤という)を付与する。
【0019】
(芳香族エステル)
本発明における式(I)で示される芳香族エステルは、ビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の両末端高級脂肪酸エステル化物である。エステル結合によりR1またはR2を形成するカルボン酸としては、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸から選ばれることが好ましい。
【0020】
【化7】
【0021】
エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加モル数m、nは、1〜5が好ましい。この範囲を超える付加モル数になると、式(I)の化合物の長所である耐熱性が損なわれる傾向にある。
【0022】
また、式(I)で示される芳香族エステルの油剤組成物中の含有量は85〜99.5質量%の範囲内にするのがよい。85質量%より少ないと炭素繊維の性能が低下する傾向があり、99.5質量%を超えると炭素繊維前駆体の製糸工程での接着や高温焼成処理における融着を抑制する効果が不十分で、工程通過性の悪化や、炭素繊維ストランド強度などの性能の低下が起こる可能性がある。
【0023】
式(I)で示される芳香族エステルは、従来炭素繊維前駆体製造用の油剤として使用されたことがない。その理由は、単独で使用すると焼成時の工程トラブルを引き起こして炭素繊維強度低下が避けられないためであった。本発明の様に特定の芳香族エステルに酸化防止剤を併用すること、繊維付与を水系エマルションの形で行う場合さらに特定の熱分解特性を有するノニオン系界面活性剤を特定の質量比で混合することで製糸工程での接着や高温焼成処理における融着を大幅に低減することができ、焼成時の工程安定性が向上すると共に、ストランド強度などの炭素繊維性能がシリコーン系油剤を使用した場合に近いものが得られる。
【0024】
(酸化防止剤)
本発明において、酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)などが好ましく用いられる。これらは単独でも組み合わせて用いてもよい。また、油剤組成物における酸化防止剤の含有量は0.5〜15質量%の範囲内にする。0.5質量%より少ないと耐熱性効果が十分でなく、15質量%を超えて添加しても耐熱性の向上効果は変わらず、酸化防止剤が加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することや、この油剤を水に分散する場合にエマルションの安定性が低下する。
【0025】
本発明における式(I)で示されるビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の両末端高級脂肪酸エステル化物において、式中のR1およびR2はそれぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり、R1またはR2を形成するカルボン酸としては、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸から選ばれることが好ましい。
【0026】
(ノニオン系界面活性剤)
本発明において、前油剤を水エマルションとして使用する場合は、特定のノニオン系界面活性剤を使用する。それはノニオン系界面活性剤が焼成工程において加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することは好ましくないので、空気中250℃で2時間加熱後の残渣率が1%質量以下のものを使用する必要があるからである。残渣率が0.5%質量以下であることが好ましい。好適な例としてはポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物、アルキル置換フェノールのアルキレンオキシド付加物などが挙げられ、疎水部のアルキル鎖は直鎖状でも分岐していてもよい。このノニオン系界面活性剤のHLBは6〜16であることが望ましい。また、これらのこの様なノニオン系界面活性剤の親水部のオキシアルキレン単位繰返数、オキシアルキレン単位の種類やオキシアルキレン単位の繰り返しの形態は、油剤の水分散物が安定なエマルションとなるように適宜選択することができる。
【0027】
芳香族エステルと酸化防止剤とからなる油剤組成物とノニオン系界面活性剤との混合比は、質量比90:10〜65:35の範囲とする。ノニオン系界面活性剤の比率が少ないとエマルションの安定性が低下して繊維への付着斑(ムラ)が生じ、また、多いとストランド強度などの炭素繊維の性能が低下する。
【0028】
(油剤組成物の作製方法)
芳香族エステルを攪拌しながら酸化防止剤を必要に応じて加熱しつつ添加して調整する。また、第2発明のように上記油剤組成物をエマルションとする場合は、式(I)で示される芳香族エステルを攪拌しながら酸化防止剤を必要に応じて加熱しつつ添加して、さらにノニオン系界面活性剤を添加・攪拌し、水中に分散させることで油剤組成物の水系エマルションが得られる。
【0029】
各成分の混合または水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使って行なうことができる。なお、これらの成分からなる油剤組成物には、その特性向上のために帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することは差し支えない。
【0030】
(プレカーサーへの前油剤の付与方法)
本発明において前油剤は公知の方法でアクリル繊維に付与することができる。本発明の油剤組成物をアクリル系繊維に付着するに際しては、水系エマルションとしてローラー給油、浸漬法など公知の方法で付着させる。なお、油剤組成物をエマルションとせずに直接アクリル繊維に付着させることもできるが、その場合は繊維束が乾燥していることが必要である。本発明では、水膨潤状態にあるアクリル繊維に前油剤を付与し、乾燥緻密化した後、後述するシリコーン系油剤を付与するのが好ましい。この乾燥緻密化は、公知の条件で行なえばよく、特に限定しない。
前油剤の付与量は乾燥後のプレカーサーに対して0.1〜1質量%、好ましくは0.2〜1質量%の範囲がよく、0.1%未満の付与量では本発明の目的である耐炎化工程での毛羽・束切れ及び単繊維間接着を抑制できず、1%を超える付与量では、耐炎化工程での熱劣化物が多くなり好ましくない。
【0031】
(シリコーン系油剤)
本発明では、前油剤を付与した後、好ましくは水膨潤状態のアクリル繊維に前油剤を付与し乾燥緻密化後のアクリル繊維に、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する。
式(II)のアミノ変性部においてkは1〜10の整数、Lは1〜10の整数、pは0〜5の整数、R3〜R5は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることがプレカーサーに対する親和性ならびに耐熱性において好ましく、アミノプロピル基 −C3H6NH2(式(2)のアミノ変性部においてk=3、p=0、R4、R5は水素原子)または、N−(2−アミノエチル)アミノプロピル基 −C3H6NHCH2CH2NH2 (式(2)のアミノ変性部においてk=3、L=2、p=1であり、R3、R4、R5は水素原子)であることが特に好ましい。
【0032】
また、式(II)におけるiは10〜10000の整数、jは1〜100の整数を表し、好ましくは50≦i≦1000、1≦j≦10である。 i、jがこの範囲を外れると、炭素繊維の性能発現性や耐熱性が低下する。i<10の場合、耐熱性が低く単糸間の融着を防止することができない。また、i>10000の場合、水中への分散や、溶解性の優れた溶媒を見出すことが困難となり、糸の表面に均一に付与することができなくなる。j=0の場合、十分な耐熱性が発現せず、単糸間の融着を効果的に防止することができない。また、j>100の場合、油剤そのものの耐熱性が低下して、やはり単糸間の融着を防止できない。
【0033】
【式8】
【式9】
【0034】
本発明における式(III)で示されるアミノ変性シリコーンにおいて、Yは、アミノプロピル基 −C3H6NH2、N−(2−アミノエチル)アミノプロピル基 −C3H6NHCH2CH2NH2 などであり、式(III)のYで示されるアミノ変性部においてqは1〜10の整数、rは1〜10の整数、sは0〜5の整数、R3〜R5は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることがアクリル系炭素繊維前駆体に対する親和性ならびに耐熱性において好ましく、アミノプロピル基 −C3H6NH2(式(3)のYにおいてq=3、s=0、R7、R8は水素原子)または、N−(2−アミノエチル)アミノプロピル基 −C3H6NHCH2CH2NH2 (式(3)のYにおいてq=3、r=2、s=1であり、R6、R7、R8は水素原子)であることが特に好ましい。
【0035】
式(III)におけるtは10〜10000の整数であり、好ましくは50≦t≦1000である。tがこの範囲を外れると、炭素繊維の性能発現性や耐熱性が低下する。
【0036】
(プレカーサーへの後油剤の付与方法)
後油剤付与に際しては、上記シリコーン系油剤を直接付与することも、前記油剤組成物に使用できるノニオン系界面活性剤でシリコーン系油剤を水中に分散したのち付与することもできる。
後者の場合、シリコーン系油剤の比率は、シリコーン系油剤とノニオン系界面活性剤の合計量に対して70質量%以上であることが望ましい。なお、後油剤でも、その特性向上のために帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することは差し支えない。後油剤の付与は、乾燥緻密化の直後から焼成の直前までの間に行うことができ、油剤の付与は、ローラー給油、浸漬法など公知の方法で行なうことができる。
【0037】
後油剤の付着量は、前油剤付着量が適正であれば、できるだけ少量を均一に付着させるのが好ましい。付着量が多くなっても付着斑(ムラ)等による工程トラブルが起きなければ問題ないが、アミノ変性シリコーンが多く付着することになり、焼成での酸化珪素等の発生の抑制という本発明の目的に反する。前・後油剤の合計の付着量は、油剤付着前の繊維の乾燥質量に対し0.3〜2質量%が望ましい。
【0038】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ノニオン系界面活性剤加熱残渣、単繊維間融着数、耐炎化工程前工程通過性、シリコーン系油剤分解物飛散量及び炭素繊維ストランド強度は以下の方法により評価した。
【0039】
[ノニオン系界面活性剤加熱残渣]
アルミシャーレ(直径60mm、深さ10mm)にノニオン系界面活性剤2gを精秤し、空気中250℃で2時間加熱した後の残分について残渣率を算出した。加熱残渣率が大きいほど、ノニオン系界面活性剤の熱劣化物が耐炎化糸や炭素化糸に残存する可能性が大きい事を意味する。
【0040】
[単繊維間融着数(融着数)]
炭素化糸のトウを3mm長に切断し、アセトン中に分散させ、マグネティックスターラーを用い10分間攪拌した後の全単繊維数と融着数を計数し、繊維100本当たりの融着数を算出した。評価基準は下記の通りである。
○:融着数(個/100本)≦1
×:融着数(個/100本)>1
【0041】
[耐炎化工程前工程通過性(工程通過性)]
炭素繊維前駆体のアクリル繊維を用いて、1週間連続して炭素繊維を製造した時の耐炎化工程前、炭素繊維前駆体アクリル繊維の段階でのロール等への巻き付き回数により、前駆体アクリル繊維の段階での毛羽、糸切れの量を評価した。評価基準は下記の通りである。
○:巻き付き回数(回/1日)≦1
△:1<巻き付き回数(回/1日)≦10
×:巻き付き回数(回/1日)>10
【0042】
[シリコーン系油剤分解物飛散量(シリカ飛散)]
炭素繊維を1週間連続して製造した時の耐炎化炉の掃除頻度により、耐炎化炉内のシリコーン系油剤分解物量を表した。掃除は、耐炎化炉のエアー循環ラインのシリカ捕捉用フィルターが詰まって、循環ポンプの圧損が大きくなった段階で焼成を中断して行った。シリカ飛散の評価基準は下記の通りである。
○:掃除回数(回/1週間)≦1
×:掃除回数(回/1週間)>1
【0043】
[炭素繊維ストランド強度(CF強度)]
JIS R 7601に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じて測定した値である。(なお、測定回数は10回であり、物性値はその平均値を以て示した。)
【0044】
実施例中の(1)〜(16)は、次の物質を表す。
(1)ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル(m=n=1)
(2)ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジラウリルエステル(m=n=2)
(3)ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル・プロピレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル(m=n=2)
(4)ビスフェノールAのエチレンオキシド12モル付加物のジラウリルエステル(m=n=6)
(5)ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
(6)トリエチレングリコール−ビス〔3―(3―t―ブチル―5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト〕
(7)1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
(8)ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO(エチレンオキサイド):10モル,HLB:14] 加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.4質量%
(9)ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO:5モル、HLB:10.8]
加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.6質量%
(10)ポリオキシエチレントリデシルエーテル[EO:10モル、HLB:13.7] 加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.7質量%
(11)ヤシ脂肪酸還元アルコールエチレンオキシド付加物[EO:9モル,HLB:13.1]加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)5.0質量%
(12)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油[EO:10モル,HLB:12.5]加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)15質量%
(13)アミノ変性シリコーン[式(II)においてk=3、L=2、p=1であり、R3、R4、R5は水素原子であり、i=60、j=1]
(14)アミノ変性シリコーン[式(II)においてk=3、L=2、p=1であり、R3、R4、R5は水素原子であり、i=300、j=8]
(15)アミノ変性シリコーン[式(III)のYにおいてq=3、s=0、R7、R8は水素原子であり、t=60]
(16)アミノ変性シリコーン [式(2)においてk=3、L=2、p=1であり、R3、R4、R5は水素原子であり、i=2000,j=150]
【0045】
(実施例1):第1発明の実施例
芳香族エステルとして、化合物(1)、酸化防止剤として、化合物(5)を用い、表中の組成比で混合したものを40℃に加温して前油剤組成物を用意した。また、シリコーン系化合物(13)85質量%とポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:10モル)15質量%とからなる混合物を、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて30MPaで二次乳化を行なって油剤濃度1質量%のエマルションを調整した(後油剤)。
【0046】
アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位/アクリルアミド単位の質量比97.1/0.9/2)をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を調製し、35℃の69質量%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)0.75μm、孔数12000の紡糸口金より吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維とした。この水膨潤状態にあるアクリル繊維を表面温度130℃の加熱ロールで乾燥緻密化したのち、40℃に加温した前油剤を直接付与した。さらに表面温度170℃の加熱ロール間で1.7倍延伸を施し、プレカーサーを得た。プレカーサーへの付着量は0.7質量%であった。
【0047】
得られたプレカーサーを後油剤を満たした浴に導き、油剤を付与した後、続いて表面温度130℃の加熱ロールで乾燥処理してプレカーサーを得た。油剤組成物の繊維への合計付着量は1.1質量%であった。
このプレカーサーを230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉に60分かけて通し、さらに窒素雰囲気中で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維とした。評価結果を表に示した。
【0048】
(実施例2〜10、比較例1〜8)第2発明の実施例と比較例
芳香族エステル、酸化防止剤およびノニオン系界面活性剤として、表に示した化合物を用い、表中の組成比で混合したものにイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて30MPaで二次乳化を行なって油剤濃度1質量%のエマルションを調整し、前油剤組成物を用意した。
また、シリコーン系化合物表として表に示した化合物をそれぞれ用い、シリコーン系化合物85質量%とポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:10モル)15質量%とからなる混合物を、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて30MPaで二次乳化を行なって油剤濃度1質量%のエマルションを調整した(後油剤)。
【0049】
アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位/アクリルアミド単位の質量比97.1/0.9/2)をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を調製し、35℃の69質量%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)0.75μm、孔数12000の紡糸口金より吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維とした。この水膨潤状態にあるアクリル繊維を、前油剤を満たした浴に導き、前油剤を付与した。さらに表面温度170℃の加熱ロール間で1.7倍延伸を施し、プレカーサーを得た。
得られたプレカーサーを、後油剤を満たした浴に導き、後油剤を付与した後、続いて表面温度130℃の加熱ロールで乾燥処理してプレカーサーを得た。
このプレカーサーを230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉に60分かけて通し、さらに窒素雰囲気中で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維とした。評価結果を表に示した。
【0050】
(実施例11)
芳香族エステル、酸化防止剤およびノニオン系界面活性剤として、表に示した化合物を用い、表中の組成比で混合したものにイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて30MPaで二次乳化を行なって油剤濃度1質量%のエマルションを調整し、前油剤組成物を用意した。
また、後油剤としてはシリコーン系化合物として表に示した化合物をそのまま用いた。
【0051】
アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位/アクリルアミド単位の質量比97.1/0.9/2)をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を調製し、35℃の69質量%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)0.75μm、孔数12000の紡糸口金より吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維とした。この水膨潤状態にあるアクリル繊維を前油剤を満たした浴に導き付与した。さらに表面温度170℃の加熱ロール間で1.7倍延伸を施し、プレカーサーを得た。
得られたプレカーサーを、後油剤を満たした浴に導き、油剤を付与した後、続いて表面温度130℃の加熱ロールで乾燥処理してプレカーサーを得た。
このプレカーサーを230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉に60分かけて通し、さらに窒素雰囲気中で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維とした。評価結果を表に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明のプレカーサーの製造方法により得られたプレカーサーは、耐炎化工程で単糸間の融着がなく、毛羽が実質的に存在せず、このプレカーサーを用いて炭素繊維を製造すると、耐炎化工程での前駆体繊維の毛羽、糸切れ及び単糸間融着が効果的に抑えられ、品質および物性の優れた炭素繊維を得ることができる。
また、シリコーン系油剤を使用した場合に耐炎化工程および炭素化工程で発生する酸化珪素等の発生・飛散がないため、耐炎化工程および炭素化工程での操業性、工程通過性が著しく改善される。
【発明の詳細な技術分野】
本発明は、炭素繊維前駆体アクリル繊維(以下、プレカーサーという。)を耐炎化繊維に転換する耐炎化工程で単繊維間に融着が発生することを防止するために用いられる油剤組成物とその付与方法を改良することにより、品質・性能の優れた炭素繊維を製造するのに好適で、工程通過性が改善されたプレカーサーを得ることのできるプレカーサーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プレカーサーを200〜400℃の酸化性雰囲気中で加熱処理して耐炎化繊維に転換し、続いて不活性雰囲気中少なくとも1000℃で処理して炭素化を行うことが炭素繊維の製造法として一般的である。炭素繊維は、優れた性能により繊維強化樹脂複合材料の強化繊維として広く利用されている。
【0003】
一方、上記の炭素繊維の製造方法において、特に耐炎化工程で単繊維間に融着が発生し、炭素化時に焼成が不均一になり、毛羽や束切れといった障害が発生することが知られている。この融着を回避するために、プレカーサーに付与する油剤の選択が重要であることが知られており、多種の油剤が検討されている。
【0004】
例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等を配合したシリコーン系油剤は、高い耐熱性を有し、プレカーサー単繊維間の融着を効果的に抑えることから炭素繊維前駆体用油剤としてよく使用されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、シリコーン系油剤を使用すると、耐炎化および炭素化工程において、シリコーン系油剤由来の酸化珪素等が発生する。焼成炉壁や排ガス処理ラインに付着、堆積した酸化珪素等は、操業性の低下させ、焼成工程のガイド・ローラ類に付着した酸化珪素等は工程通過性を低下し、工程糸に付着した酸化珪素等は炭素繊維品質を低下させる場合があった。
【0006】
これに対して、シリコーン系油剤を配合しない非シリコーン系油剤は、焼成時に酸化珪素等が発生せず、原料が安価なので有利であるが、シリコーン系油剤ほどの耐熱性がなく、焼成時には消失してしまうため、焼成時にプレカーサー単繊維間の融着の発生が防げなかった。
【0007】
シリコーン系油剤の耐熱性を利用しつつ、酸化珪素等の飛散を減らす方法としては、(1)シリコーン系油剤を主成分とする油剤の付着量を減らす、(2)油剤中のシリコーン系油剤の配合比を下げるなどの方法があるが、いずれの方法でも単繊維間の融着の発生や紡糸工程での集束性悪化など、工程通過性・炭素繊維性能とも悪化する傾向がみられた。
【0008】
この他に、水膨潤状態のアクリル系繊維に非イオン活性剤および/又はカチオン活性剤を付与し、乾燥緻密化処理の後にシリコーン化合物(あるいは非イオン活性剤等との混合物)を付与することでプレカーサーの製糸工程や高温焼成処理における融着を抑制し、非シリコーン系油剤のみを付与する場合に比べて単繊維強度の高いアクリル系炭素繊維が製造できることが提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
この方法でも、シリコーン系油剤由来の酸化珪素等の発生を抑制することは確かに可能であった。しかし、この方法でも、水膨潤状態のアクリル系繊維にシリコーン系油剤を付与した場合に比べてプレカーサーの単繊維間の融着はまだ多く、炭素繊維性能の低下は避けられなかった。
【0010】
【特許文献1】
特開平5−140821号公報
【特許文献1】
特開昭59−127508号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、プレカーサーの製糸工程、炭素繊維前駆体アクリル繊維を耐炎化する耐炎化工程における繊維間の接着や由着を抑え、不均一焼成を防ぐことにより毛羽や束切れを防ぎ、さらに、耐炎化および炭素化工程における酸化珪素等の発生を抑えて、操業性や工程通過性およびストランド強度など炭素繊維品質の低下を防ぐことができるプレカーサーを得ることができるプレカーサーの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは、水膨潤状態のアクリル繊維またはアクリル繊維に、式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる油剤組成物を付与し、乾燥緻密化または乾燥した後、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法にある(第1発明)。
【0013】
そして、第2の要旨は、水膨潤状態のアクリル繊維またはアクリル繊維に、式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる油剤組成物を250℃で2時間加熱後の残渣率が1質量%以下のノニオン系界面活性剤で乳化した油剤組成物を付与し、乾燥緻密化または乾燥した後、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法。にある(第2の発明)。
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
(プレカーサー)
本発明において、油剤組成物を付与する対象となるのは、公知の水膨潤状態にあるアクリル系繊維であればよい。その組成は特に限定されるものではないが、アクリロニトリル単位95質量%以上とアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体単位5質量%以下とからなるアクリロニトリル系重合体を紡糸して得られるアクリル繊維が好ましい。さらにこの共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、これらのアルカリ金属塩、これらのアンモニウム塩およびアクリルアミド等の単量体群から選ばれる1種以上の単量体が耐炎化反応を促進する上で好ましい。このようなアクリル繊維からなる繊維束の製造方法も特に限定されるものではなく、公知の湿式、乾式および乾湿式の各紡糸方式が採用できる。
【0018】
本発明においては、まず非シリコーン系油剤(以下、前油剤という)を
イ)水エマルションとせず、アクリル繊維に付与(第1発明)、または、
ロ)特定のノニオン系界面活性剤で水エマルションとして、アクリル繊維に付与(第2発明)し、
その後、シリコーン系油剤(以下、後油剤という)を付与する。
【0019】
(芳香族エステル)
本発明における式(I)で示される芳香族エステルは、ビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の両末端高級脂肪酸エステル化物である。エステル結合によりR1またはR2を形成するカルボン酸としては、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸から選ばれることが好ましい。
【0020】
【化7】
【0021】
エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加モル数m、nは、1〜5が好ましい。この範囲を超える付加モル数になると、式(I)の化合物の長所である耐熱性が損なわれる傾向にある。
【0022】
また、式(I)で示される芳香族エステルの油剤組成物中の含有量は85〜99.5質量%の範囲内にするのがよい。85質量%より少ないと炭素繊維の性能が低下する傾向があり、99.5質量%を超えると炭素繊維前駆体の製糸工程での接着や高温焼成処理における融着を抑制する効果が不十分で、工程通過性の悪化や、炭素繊維ストランド強度などの性能の低下が起こる可能性がある。
【0023】
式(I)で示される芳香族エステルは、従来炭素繊維前駆体製造用の油剤として使用されたことがない。その理由は、単独で使用すると焼成時の工程トラブルを引き起こして炭素繊維強度低下が避けられないためであった。本発明の様に特定の芳香族エステルに酸化防止剤を併用すること、繊維付与を水系エマルションの形で行う場合さらに特定の熱分解特性を有するノニオン系界面活性剤を特定の質量比で混合することで製糸工程での接着や高温焼成処理における融着を大幅に低減することができ、焼成時の工程安定性が向上すると共に、ストランド強度などの炭素繊維性能がシリコーン系油剤を使用した場合に近いものが得られる。
【0024】
(酸化防止剤)
本発明において、酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)などが好ましく用いられる。これらは単独でも組み合わせて用いてもよい。また、油剤組成物における酸化防止剤の含有量は0.5〜15質量%の範囲内にする。0.5質量%より少ないと耐熱性効果が十分でなく、15質量%を超えて添加しても耐熱性の向上効果は変わらず、酸化防止剤が加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することや、この油剤を水に分散する場合にエマルションの安定性が低下する。
【0025】
本発明における式(I)で示されるビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の両末端高級脂肪酸エステル化物において、式中のR1およびR2はそれぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり、R1またはR2を形成するカルボン酸としては、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸から選ばれることが好ましい。
【0026】
(ノニオン系界面活性剤)
本発明において、前油剤を水エマルションとして使用する場合は、特定のノニオン系界面活性剤を使用する。それはノニオン系界面活性剤が焼成工程において加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することは好ましくないので、空気中250℃で2時間加熱後の残渣率が1%質量以下のものを使用する必要があるからである。残渣率が0.5%質量以下であることが好ましい。好適な例としてはポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物、アルキル置換フェノールのアルキレンオキシド付加物などが挙げられ、疎水部のアルキル鎖は直鎖状でも分岐していてもよい。このノニオン系界面活性剤のHLBは6〜16であることが望ましい。また、これらのこの様なノニオン系界面活性剤の親水部のオキシアルキレン単位繰返数、オキシアルキレン単位の種類やオキシアルキレン単位の繰り返しの形態は、油剤の水分散物が安定なエマルションとなるように適宜選択することができる。
【0027】
芳香族エステルと酸化防止剤とからなる油剤組成物とノニオン系界面活性剤との混合比は、質量比90:10〜65:35の範囲とする。ノニオン系界面活性剤の比率が少ないとエマルションの安定性が低下して繊維への付着斑(ムラ)が生じ、また、多いとストランド強度などの炭素繊維の性能が低下する。
【0028】
(油剤組成物の作製方法)
芳香族エステルを攪拌しながら酸化防止剤を必要に応じて加熱しつつ添加して調整する。また、第2発明のように上記油剤組成物をエマルションとする場合は、式(I)で示される芳香族エステルを攪拌しながら酸化防止剤を必要に応じて加熱しつつ添加して、さらにノニオン系界面活性剤を添加・攪拌し、水中に分散させることで油剤組成物の水系エマルションが得られる。
【0029】
各成分の混合または水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使って行なうことができる。なお、これらの成分からなる油剤組成物には、その特性向上のために帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することは差し支えない。
【0030】
(プレカーサーへの前油剤の付与方法)
本発明において前油剤は公知の方法でアクリル繊維に付与することができる。本発明の油剤組成物をアクリル系繊維に付着するに際しては、水系エマルションとしてローラー給油、浸漬法など公知の方法で付着させる。なお、油剤組成物をエマルションとせずに直接アクリル繊維に付着させることもできるが、その場合は繊維束が乾燥していることが必要である。本発明では、水膨潤状態にあるアクリル繊維に前油剤を付与し、乾燥緻密化した後、後述するシリコーン系油剤を付与するのが好ましい。この乾燥緻密化は、公知の条件で行なえばよく、特に限定しない。
前油剤の付与量は乾燥後のプレカーサーに対して0.1〜1質量%、好ましくは0.2〜1質量%の範囲がよく、0.1%未満の付与量では本発明の目的である耐炎化工程での毛羽・束切れ及び単繊維間接着を抑制できず、1%を超える付与量では、耐炎化工程での熱劣化物が多くなり好ましくない。
【0031】
(シリコーン系油剤)
本発明では、前油剤を付与した後、好ましくは水膨潤状態のアクリル繊維に前油剤を付与し乾燥緻密化後のアクリル繊維に、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する。
式(II)のアミノ変性部においてkは1〜10の整数、Lは1〜10の整数、pは0〜5の整数、R3〜R5は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることがプレカーサーに対する親和性ならびに耐熱性において好ましく、アミノプロピル基 −C3H6NH2(式(2)のアミノ変性部においてk=3、p=0、R4、R5は水素原子)または、N−(2−アミノエチル)アミノプロピル基 −C3H6NHCH2CH2NH2 (式(2)のアミノ変性部においてk=3、L=2、p=1であり、R3、R4、R5は水素原子)であることが特に好ましい。
【0032】
また、式(II)におけるiは10〜10000の整数、jは1〜100の整数を表し、好ましくは50≦i≦1000、1≦j≦10である。 i、jがこの範囲を外れると、炭素繊維の性能発現性や耐熱性が低下する。i<10の場合、耐熱性が低く単糸間の融着を防止することができない。また、i>10000の場合、水中への分散や、溶解性の優れた溶媒を見出すことが困難となり、糸の表面に均一に付与することができなくなる。j=0の場合、十分な耐熱性が発現せず、単糸間の融着を効果的に防止することができない。また、j>100の場合、油剤そのものの耐熱性が低下して、やはり単糸間の融着を防止できない。
【0033】
【式8】
【式9】
【0034】
本発明における式(III)で示されるアミノ変性シリコーンにおいて、Yは、アミノプロピル基 −C3H6NH2、N−(2−アミノエチル)アミノプロピル基 −C3H6NHCH2CH2NH2 などであり、式(III)のYで示されるアミノ変性部においてqは1〜10の整数、rは1〜10の整数、sは0〜5の整数、R3〜R5は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることがアクリル系炭素繊維前駆体に対する親和性ならびに耐熱性において好ましく、アミノプロピル基 −C3H6NH2(式(3)のYにおいてq=3、s=0、R7、R8は水素原子)または、N−(2−アミノエチル)アミノプロピル基 −C3H6NHCH2CH2NH2 (式(3)のYにおいてq=3、r=2、s=1であり、R6、R7、R8は水素原子)であることが特に好ましい。
【0035】
式(III)におけるtは10〜10000の整数であり、好ましくは50≦t≦1000である。tがこの範囲を外れると、炭素繊維の性能発現性や耐熱性が低下する。
【0036】
(プレカーサーへの後油剤の付与方法)
後油剤付与に際しては、上記シリコーン系油剤を直接付与することも、前記油剤組成物に使用できるノニオン系界面活性剤でシリコーン系油剤を水中に分散したのち付与することもできる。
後者の場合、シリコーン系油剤の比率は、シリコーン系油剤とノニオン系界面活性剤の合計量に対して70質量%以上であることが望ましい。なお、後油剤でも、その特性向上のために帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することは差し支えない。後油剤の付与は、乾燥緻密化の直後から焼成の直前までの間に行うことができ、油剤の付与は、ローラー給油、浸漬法など公知の方法で行なうことができる。
【0037】
後油剤の付着量は、前油剤付着量が適正であれば、できるだけ少量を均一に付着させるのが好ましい。付着量が多くなっても付着斑(ムラ)等による工程トラブルが起きなければ問題ないが、アミノ変性シリコーンが多く付着することになり、焼成での酸化珪素等の発生の抑制という本発明の目的に反する。前・後油剤の合計の付着量は、油剤付着前の繊維の乾燥質量に対し0.3〜2質量%が望ましい。
【0038】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ノニオン系界面活性剤加熱残渣、単繊維間融着数、耐炎化工程前工程通過性、シリコーン系油剤分解物飛散量及び炭素繊維ストランド強度は以下の方法により評価した。
【0039】
[ノニオン系界面活性剤加熱残渣]
アルミシャーレ(直径60mm、深さ10mm)にノニオン系界面活性剤2gを精秤し、空気中250℃で2時間加熱した後の残分について残渣率を算出した。加熱残渣率が大きいほど、ノニオン系界面活性剤の熱劣化物が耐炎化糸や炭素化糸に残存する可能性が大きい事を意味する。
【0040】
[単繊維間融着数(融着数)]
炭素化糸のトウを3mm長に切断し、アセトン中に分散させ、マグネティックスターラーを用い10分間攪拌した後の全単繊維数と融着数を計数し、繊維100本当たりの融着数を算出した。評価基準は下記の通りである。
○:融着数(個/100本)≦1
×:融着数(個/100本)>1
【0041】
[耐炎化工程前工程通過性(工程通過性)]
炭素繊維前駆体のアクリル繊維を用いて、1週間連続して炭素繊維を製造した時の耐炎化工程前、炭素繊維前駆体アクリル繊維の段階でのロール等への巻き付き回数により、前駆体アクリル繊維の段階での毛羽、糸切れの量を評価した。評価基準は下記の通りである。
○:巻き付き回数(回/1日)≦1
△:1<巻き付き回数(回/1日)≦10
×:巻き付き回数(回/1日)>10
【0042】
[シリコーン系油剤分解物飛散量(シリカ飛散)]
炭素繊維を1週間連続して製造した時の耐炎化炉の掃除頻度により、耐炎化炉内のシリコーン系油剤分解物量を表した。掃除は、耐炎化炉のエアー循環ラインのシリカ捕捉用フィルターが詰まって、循環ポンプの圧損が大きくなった段階で焼成を中断して行った。シリカ飛散の評価基準は下記の通りである。
○:掃除回数(回/1週間)≦1
×:掃除回数(回/1週間)>1
【0043】
[炭素繊維ストランド強度(CF強度)]
JIS R 7601に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じて測定した値である。(なお、測定回数は10回であり、物性値はその平均値を以て示した。)
【0044】
実施例中の(1)〜(16)は、次の物質を表す。
(1)ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル(m=n=1)
(2)ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジラウリルエステル(m=n=2)
(3)ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル・プロピレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル(m=n=2)
(4)ビスフェノールAのエチレンオキシド12モル付加物のジラウリルエステル(m=n=6)
(5)ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
(6)トリエチレングリコール−ビス〔3―(3―t―ブチル―5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト〕
(7)1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
(8)ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO(エチレンオキサイド):10モル,HLB:14] 加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.4質量%
(9)ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO:5モル、HLB:10.8]
加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.6質量%
(10)ポリオキシエチレントリデシルエーテル[EO:10モル、HLB:13.7] 加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.7質量%
(11)ヤシ脂肪酸還元アルコールエチレンオキシド付加物[EO:9モル,HLB:13.1]加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)5.0質量%
(12)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油[EO:10モル,HLB:12.5]加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)15質量%
(13)アミノ変性シリコーン[式(II)においてk=3、L=2、p=1であり、R3、R4、R5は水素原子であり、i=60、j=1]
(14)アミノ変性シリコーン[式(II)においてk=3、L=2、p=1であり、R3、R4、R5は水素原子であり、i=300、j=8]
(15)アミノ変性シリコーン[式(III)のYにおいてq=3、s=0、R7、R8は水素原子であり、t=60]
(16)アミノ変性シリコーン [式(2)においてk=3、L=2、p=1であり、R3、R4、R5は水素原子であり、i=2000,j=150]
【0045】
(実施例1):第1発明の実施例
芳香族エステルとして、化合物(1)、酸化防止剤として、化合物(5)を用い、表中の組成比で混合したものを40℃に加温して前油剤組成物を用意した。また、シリコーン系化合物(13)85質量%とポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:10モル)15質量%とからなる混合物を、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて30MPaで二次乳化を行なって油剤濃度1質量%のエマルションを調整した(後油剤)。
【0046】
アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位/アクリルアミド単位の質量比97.1/0.9/2)をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を調製し、35℃の69質量%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)0.75μm、孔数12000の紡糸口金より吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維とした。この水膨潤状態にあるアクリル繊維を表面温度130℃の加熱ロールで乾燥緻密化したのち、40℃に加温した前油剤を直接付与した。さらに表面温度170℃の加熱ロール間で1.7倍延伸を施し、プレカーサーを得た。プレカーサーへの付着量は0.7質量%であった。
【0047】
得られたプレカーサーを後油剤を満たした浴に導き、油剤を付与した後、続いて表面温度130℃の加熱ロールで乾燥処理してプレカーサーを得た。油剤組成物の繊維への合計付着量は1.1質量%であった。
このプレカーサーを230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉に60分かけて通し、さらに窒素雰囲気中で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維とした。評価結果を表に示した。
【0048】
(実施例2〜10、比較例1〜8)第2発明の実施例と比較例
芳香族エステル、酸化防止剤およびノニオン系界面活性剤として、表に示した化合物を用い、表中の組成比で混合したものにイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて30MPaで二次乳化を行なって油剤濃度1質量%のエマルションを調整し、前油剤組成物を用意した。
また、シリコーン系化合物表として表に示した化合物をそれぞれ用い、シリコーン系化合物85質量%とポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:10モル)15質量%とからなる混合物を、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて30MPaで二次乳化を行なって油剤濃度1質量%のエマルションを調整した(後油剤)。
【0049】
アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位/アクリルアミド単位の質量比97.1/0.9/2)をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を調製し、35℃の69質量%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)0.75μm、孔数12000の紡糸口金より吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維とした。この水膨潤状態にあるアクリル繊維を、前油剤を満たした浴に導き、前油剤を付与した。さらに表面温度170℃の加熱ロール間で1.7倍延伸を施し、プレカーサーを得た。
得られたプレカーサーを、後油剤を満たした浴に導き、後油剤を付与した後、続いて表面温度130℃の加熱ロールで乾燥処理してプレカーサーを得た。
このプレカーサーを230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉に60分かけて通し、さらに窒素雰囲気中で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維とした。評価結果を表に示した。
【0050】
(実施例11)
芳香族エステル、酸化防止剤およびノニオン系界面活性剤として、表に示した化合物を用い、表中の組成比で混合したものにイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて30MPaで二次乳化を行なって油剤濃度1質量%のエマルションを調整し、前油剤組成物を用意した。
また、後油剤としてはシリコーン系化合物として表に示した化合物をそのまま用いた。
【0051】
アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位/アクリルアミド単位の質量比97.1/0.9/2)をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を調製し、35℃の69質量%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)0.75μm、孔数12000の紡糸口金より吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維とした。この水膨潤状態にあるアクリル繊維を前油剤を満たした浴に導き付与した。さらに表面温度170℃の加熱ロール間で1.7倍延伸を施し、プレカーサーを得た。
得られたプレカーサーを、後油剤を満たした浴に導き、油剤を付与した後、続いて表面温度130℃の加熱ロールで乾燥処理してプレカーサーを得た。
このプレカーサーを230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉に60分かけて通し、さらに窒素雰囲気中で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維とした。評価結果を表に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明のプレカーサーの製造方法により得られたプレカーサーは、耐炎化工程で単糸間の融着がなく、毛羽が実質的に存在せず、このプレカーサーを用いて炭素繊維を製造すると、耐炎化工程での前駆体繊維の毛羽、糸切れ及び単糸間融着が効果的に抑えられ、品質および物性の優れた炭素繊維を得ることができる。
また、シリコーン系油剤を使用した場合に耐炎化工程および炭素化工程で発生する酸化珪素等の発生・飛散がないため、耐炎化工程および炭素化工程での操業性、工程通過性が著しく改善される。
Claims (4)
- 水膨潤状態のアクリル繊維またはアクリル繊維に、式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる油剤組成物を付与し、乾燥緻密化または乾燥した後、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法。
- 水膨潤状態のアクリル繊維またはアクリル繊維に、式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる油剤組成物を250℃で2時間加熱後の残渣率が1質量%以下のノニオン系界面活性剤で乳化した油剤組成物を付与し、乾燥緻密化または乾燥した後、式(II)または式(III)で示されるシリコーン系油剤組成物を付与する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法。
- 式(I)で示される芳香族エステルと酸化防止剤とからなる油剤組成物と250℃で2時間加熱後の残渣率が1質量%以下のノニオン系界面活性剤との質量比が90:10〜65:35である、請求項2記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法。
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| JP2002312490A JP2004143644A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | 炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法 |
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|---|---|---|---|---|
| WO2024048288A1 (ja) * | 2022-09-01 | 2024-03-07 | Dic株式会社 | 負極活物質前駆体、負極活物質、二次電池および負極活物質の製造方法 |
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-
2002
- 2002-10-28 JP JP2002312490A patent/JP2004143644A/ja active Pending
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| JP7835962B2 (ja) | 2024-03-05 | 2026-03-25 | 松本油脂製薬株式会社 | 炭素繊維前駆体用処理剤及びその用途 |
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