JP2004143645A - 炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物および炭素繊維前駆体アクリル繊維 - Google Patents

炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物および炭素繊維前駆体アクリル繊維 Download PDF

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Kozo Mise
三瀬 興造
Takahiro Okuya
奥屋 孝浩
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Abstract

【課題】プレカーサーの製糸工程における単繊維間の接着および耐炎化工程における単繊維間の融着を抑え、毛羽や束切れや不均一焼成を防ぐことができ、ストランド強度などの性能が優れた炭素繊維の製造を可能にする油剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】特定の芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物および前記油剤組成物90〜65質量%と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1質量%以下のノニオン系界面活性剤10〜35質量%とからなる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維前駆体アクリル繊維(以下、単にプレカーサーという。)が耐炎化工程において、その単繊維間で融着が発生することを防止するために用いられる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物(以下、単に油剤組成物という。)に関する。
そして、品質および物性の優れた炭素繊維を製造するのに好適で、炭素繊維の製造に際して工程通過性が改善されたプレカーサーに関する。
【0002】
【従来の技術】
プレカーサーを200〜400℃の酸化性雰囲気中で加熱処理することにより耐炎化繊維に転換し、引き続いて少なくとも1000℃の不活性雰囲気中で炭素化する方法が炭素繊維の製造法として一般的である。このようにして得られた炭素繊維は、優れた物性により繊維強化樹脂複合材料の好適な強化繊維として広く利用されている。
【0003】
一方、上記の炭素繊維の製造方法、特に耐炎化工程において、プレカーサーの単繊維間で融着が発生して焼成が不均一になり、毛羽や束切れといった障害が発生することが知られている。この融着を回避するためには、耐炎化前の炭素繊維前駆体アクリル繊維に付与する油剤組成物の選択が重要であることが知られており、多くの油剤組成物が検討されている。
【0004】
例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等を配合したシリコーン系油剤は、高い耐熱性を有し、融着を効果的に抑えることから、油剤組成物としてよく使用されている。
しかし、シリコーン系油剤を使用すると、耐炎化及び炭素化工程においてシリコーン由来の酸化珪素等が発生する。焼成炉壁や排ガス処理ラインに付着・堆積した酸化珪素等は操業性の低下をもたらし、焼成工程のガイド・ローラ類に付着した酸化珪素等は工程通過性を低下させる。また、酸化珪素等が工程糸に付着した場合は、炭素繊維の品質を低下させる。
【0005】
これに対して、アミノ変性シリコーン等を配合しない非シリコーン系の油剤組成物は古くから様々なものが提案されている。例えば、ポリブテン(特許文献1参照)、ポリオキシエチレン高級脂肪族アルキルエーテルと酸化防止剤の配合品(特許文献2参照)、ネオペンチルアルコール誘導体(特許文献3参照)、アルキル又はアルケニルチオ脂肪酸エステル(特許文献4参照)、高分子アミド化合物(特許文献5参照)、脂肪酸エステルのアンモニウム塩(特許文献6参照)、フッ素系界面活性剤(特許文献7参照)、芳香族複合エステルとアミド化合物(特許文献8参照)などがある。
【0006】
【特許文献1】
特開昭54−73999号公報
【特許文献2】
特開昭58−120819号公報
【特許文献3】
特開昭62−231078号公報
【特許文献4】
特開昭58−214581号公報
【特許文献5】
特開平8−260254号公報
【特許文献6】
特開昭57−112410号公報
【特許文献7】
特開昭59−228069号公報
【特許文献8】
特開平9−78340号公報
【0007】
非シリコーン系油剤は、焼成時に酸化珪素等の発生がないことや原料が安価なことなど有利な点もあるが、シリコーン系油剤に比べて熱安定性が劣るものが多く、焼成工程での融着による毛羽・束切れトラブルの原因になると共に、ストランド強度など炭素繊維の性能もシリコーン系油剤を使用した場合に比べて劣るため、プレカーサーに使用される機会は一部の品種に限られていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、プレカーサーの製糸工程における単繊維間の接着および耐炎化工程における単繊維間の融着を抑え、毛羽や束切れや不均一焼成を防ぐことができ、ストランド強度などの性能が優れた炭素繊維の製造を可能にする油剤組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、油剤組成物の熱安定性とプレカーサーの製糸工程における単繊維間の接着および耐炎化工程における単繊維間の融着挙動との関係について、詳細に検討した結果、油剤を水エマルションにすることなく、水膨潤状態にあるアクリル繊維または乾燥緻密化後のアクリル繊維に付与する場合は、
1)油剤の耐熱成分として特定の芳香族エステルを使用すると共に酸化防止剤を特定の比率で配合すること、
が重要であり、油剤を水エマルションにして、水膨潤状態にあるアクリル繊維または乾燥緻密化後のアクリル繊維に付与する場合は、(1)に加えて、
2)耐熱主剤である芳香族エステルと酸化防止剤の混合物を水系エマルションの状態で繊維に付与するために配合する乳化剤として、特定の熱分解特性を有するノニオン系界面活性剤を特定の混合比率で使用すること
が、プレカーサーの製糸工程における単繊維間の接着および耐炎化工程における単繊維間の融着を大幅に低減することに有効であり、焼成時の工程安定性が向上すると共に、ストランド強度などの炭素繊維性能がシリコーン油剤を使用した場合に近いものが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明の第1の要旨は、下式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物である(第1発明)。
【0011】
【化2】
Figure 2004143645
【0012】
そして、第2の要旨は、前記油剤組成物90〜65質量%と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1質量%以下のノニオン系界面活性剤10〜35質量%とからなる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物である(第2発明)。
【0013】
さらに、第3の要旨は、炭素繊維前駆体アクリル繊維に前記油剤組成物を0.1〜1質量%付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
(プレカーサー)
本発明において、油剤組成物を付与する前のプレカーサーには、公知のアクリル繊維を用いることができ、その組成は特に限定されるものではないが、アクリロニトリル単位95質量%以上とアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体単位5質量%以下とからなるアクリロニトリル系重合体を紡糸して得られるアクリル繊維が好ましい。さらにこの共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、これらのアルカリ金属塩、これらのアンモニウム塩およびアクリルアミド等の単量体群から選ばれる1種以上の単量体が耐炎化反応を促進する上で好ましい。このようなアクリル繊維からなる繊維束の製造方法も特に限定されるものではなく、公知の湿式、乾式および乾湿式の各紡糸方式が採用できる。
【0015】
(芳香族エステル)
本発明における式(I)で示される芳香族エステルは、ビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の両末端高級脂肪酸エステル化物である。エステル結合によりRまたはRを形成するカルボン酸としては、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸から選ばれることが好ましい。
【0016】
【化3】
Figure 2004143645
【0017】
エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加モル数m、nは、1〜5が好ましい。この範囲を超える付加モル数になると、式(I)の化合物の長所である耐熱性が損なわれる傾向にある。
【0018】
また、式(I)で示される芳香族エステルの油剤組成物中の含有量は85〜99.5質量%の範囲内にするのがよい。85質量%より少ないと炭素繊維の性能が低下する傾向があり、99.5質量%を超えると炭素繊維前駆体の製糸工程での接着や高温焼成処理における融着を抑制する効果が不十分で、工程通過性の悪化や、炭素繊維ストランド強度などの性能の低下が起こる可能性がある。
【0019】
式(I)で示される芳香族エステルは、従来炭素繊維前駆体製造用の油剤として使用されたことがない。その理由は、単独で使用すると焼成時の工程トラブルを引き起こして炭素繊維強度低下が避けられないためであった。本発明の様に特定の芳香族エステルに酸化防止剤を併用すること、繊維付与を水系エマルションの形で行う場合さらに特定の熱分解特性を有するノニオン系界面活性剤を特定の質量比で混合することで製糸工程での接着や高温焼成処理における融着を大幅に低減することができ、焼成時の工程安定性が向上すると共に、ストランド強度などの炭素繊維性能がシリコーン系油剤を使用した場合に近いものが得られる。
【0020】
(酸化防止剤)
本発明において、酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)などが好ましく用いられる。これらは単独でも組み合わせて用いてもよい。また、油剤組成物における酸化防止剤の含有量は0.5〜15質量%の範囲内にする。0.5質量%より少ないと耐熱性効果が十分でなく、15質量%を超えて添加しても耐熱性の向上効果は変わらず、酸化防止剤が加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することや、この油剤を水に分散する場合にはエマルションの安定性が低下する。
本発明(第1発明)の油剤は、水エマルションにすることなく、水膨潤状態のアクリル繊維または乾燥緻密化後のアクリル繊維に付与する。
【0021】
(ノニオン系界面活性剤)
本発明において、油剤を水エマルションとして使用する場合は、特定のノニオン系界面活性剤を使用する。それはノニオン系界面活性剤が焼成工程において加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することは好ましくないので、空気中250℃で2時間加熱後の残渣率が1%質量以下のものを使用する必要があるからである。残渣率が0.5%質量以下であることが好ましい。好適な例としてはポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物、アルキル置換フェノールのアルキレンオキシド付加物などが挙げられ、疎水部のアルキル鎖は直鎖状でも分岐していてもよい。このノニオン系界面活性剤のHLBは6〜16であることが望ましい。また、これらのこの様なノニオン系界面活性剤の親水部のオキシアルキレン単位繰返数、オキシアルキレン単位の種類やオキシアルキレン単位の繰り返しの形態は、油剤の水分散物が安定なエマルションとなるように適宜選択することができる。
【0022】
本発明(第2発明)において、芳香族エステルと酸化防止剤とからなる油剤組成物とノニオン系界面活性剤との混合比は、質量比90:10〜65:35の範囲とする。ノニオン系界面活性剤の比率が少ないとエマルションの安定性が低下して繊維への付着斑(ムラ)が生じ、また、多いとストランド強度などの炭素繊維の性能が低下する。
【0023】
(油剤組成物の作製方法)
式(I)で示される芳香族エステルを攪拌しながら酸化防止剤を必要に応じて加熱しつつ添加し、さらにノニオン系界面活性剤を添加・攪拌し、水中に分散させることで油剤組成物の水系エマルションが得られる。
【0024】
各成分の混合または水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使って行うことができる。なお、これらの成分からなる油剤組成物には、その特性向上のために帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することは差し支えない。
【0025】
(プレカーサーへの油剤組成物の付与方法)
本発明のプレカーサーは、前記油剤組成物を公知の方法で付与することで製造することができる。第1発明の油剤組成物にノニオン系界面活性剤を添加した、第2発明の油剤組成物の場合、水中に分散したエマルションの状態で付与することもできる。
【0026】
本発明の油剤組成物をアクリル系繊維に付着するに際しては、水系エマルションとしてローラー給油、浸漬法など公知の方法で付着させる。なお、油剤組成物をエマルションとせずに直接アクリル系繊維に付着させることもできるが、その場合は繊維束が乾燥していることが必要である。
【0027】
プレカーサーに対する油剤組成物の付与量は、繊維の乾燥質量に対し、0.1〜1質量%、好ましくは0.2〜1質量%の範囲がよく、0.1質量%未満の付与量では本発明の目的である耐炎化工程での毛羽・束切れ及び単繊維間接着を抑制できず、1質量%を超える付与量では、耐炎化工程での熱劣化物が多くなる。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ノニオン系界面活性剤加熱残渣、単繊維間融着数、耐炎化工程前工程通過性および炭素繊維ストランド強度は以下の方法により評価した。
【0029】
[ノニオン系界面活性剤加熱残渣]
アルミシャーレ(直径60mm、深さ10mm)にノニオン系界面活性剤2.0gを精秤し、熱風乾燥機中で空気中250℃で2時間加熱した後の残分について残渣率を算出した。加熱残渣率が大きいほど、ノニオン系界面活性剤の熱劣化物が耐炎化糸や炭素化糸に残存する可能性が大きいことを意味する。
【0030】
[単繊維間融着数(融着数)]
炭素繊維トウを3mm長に切断し、アセトン中に分散させ、マグネティックスターラーを用い10分間攪拌した後の全単繊維数と融着数を計数し、繊維100本当たりの融着数を算出した。評価基準は下記の通りである。
○:融着数(個/100本)≦1
×:融着数(個/100本)>1
【0031】
[耐炎化工程前工程通過性(工程通過性)]
1週間連続して炭素繊維を製造した時の耐炎化工程直前のロールへのプレカーサーの巻き付き回数により、プレカーサーの毛羽、糸切れの量を評価した。評価基準は下記の通りである。
○:巻き付き回数(回/1日)≦1
△:1<巻き付き回数(回/1日)≦10
×:巻き付き回数(回/1日)>10
【0032】
[炭素繊維ストランド強度(CF強度)]
JIS R 7601に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じて測定した値である。(なお、測定回数は10回であり、物性値はその平均値を以て示した。)
【0033】
実施例中の(1)〜(16)は、次の物質を表す。
(1)ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル。m=n=1
(2)ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジラウリルエステル。m=n=2
(3)ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル・プロピレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル。m=n=2
(4)ビスフェノールAのエチレンオキシド12モル付加物のジラウリルエステル。m=n=6
(5)ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
(6)トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
(7)1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
(8)ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO(エチレンオキシド):10モル,HLB:14]、加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.4質量%
(9)ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO:5モル,HLB:10.8]、加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.6質量%
(10)ポリオキシエチレントリデシルエーテル[EO:10モル,HLB:13.7]、加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.7質量%
(11)ヤシ脂肪酸還元アルコールエチレンオキシド付加物[EO:9モル,HLB:13.1]、加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)5質量%
(12)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油[EO:10モル,HLB:12.5]、加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)15質量%
(8)〜(12)はいずれもノニオン系界面活性剤である。
【0034】
(実施例1):第1発明の実施例
芳香族エステルとして、化合物(1)、酸化防止剤として、化合物(5)を用い、表中の組成比で混合したものを40℃に加温して油剤組成物を用意した。
【0035】
アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位/アクリルアミド単位の質量比97.1/0.9/2)をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を調製し、35℃の69質量%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)0.75μm、孔数12000の紡糸口金より吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維とした。この水膨潤状態にあるアクリル繊維を表面温度130℃の加熱ロールで乾燥緻密化したのち、40℃に加温した油剤を直接付与した。さらに表面温度170℃の加熱ロール間で1.7倍延伸を施し、プレカーサーを得た。プレカーサーへの付着量は0.7質量%であった。
【0036】
このプレカーサーを230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉に60分かけて通し、さらに窒素雰囲気中で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維とした。評価結果を表に示した。
【0037】
(実施例2〜8、比較例1〜7):第2発明の実施例
表に示した組成比の混合物の合計濃度が25質量%になるようにをイオン交換水を加えたのち、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーで、30MPaで二次乳化をおこない油剤エマルションを得た。
アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位/アクリルアミド単位の質量比97.1/0.9/2.0)をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度21質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を調製し、35℃の69質量%ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)75μm、孔数12000の紡糸口金より吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維とした。
【0038】
この水膨潤状態にあるアクリル繊維を、表1で示した組成の油剤組成物の水エマルションを満たした油浴に導き、油剤組成物を付着させた後、表面温度130℃の加熱ロールで乾燥緻密化し、さらに表面温度170℃の加熱ロール間で1.7倍延伸を施しプレカーサーを得た。
このプレカーサーを、230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉に60分かけて通し、さらに窒素雰囲気中で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維とした。
プレカーサーの単糸繊度、引張り強度、伸度、炭素繊維の融着数、炭素繊維ストランド強度および耐炎化工程前工程通過性を表に示した。
【0039】
【表1】
Figure 2004143645
【0040】
【発明の効果】
本発明の油剤組成物は耐熱性が良好なため、この油剤組成物あるいはそのエマルションを付与されたプレカーサーは、炭素繊維前駆体の段階で単糸間接着がなく、毛羽が実質的に存在せず、このプレカーサーを用いて炭素繊維を製造すると、耐炎化工程での前駆体繊維の毛羽、糸切れ及び単糸間融着が効果的に抑えられ、品質および物性の優れた炭素繊維を製造することができる。
また、シリコーン系油剤を使用した場合に耐炎化工程および炭素化工程で発生するシリコーン分解物の飛散がないため、耐炎化工程および炭素化工程での操業性、工程通過性が著しく改善される。

Claims (4)

  1. 下式(I)で示される芳香族エステル85〜99.5質量%と酸化防止剤0.5〜15質量%とからなる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。
    Figure 2004143645
  2. 請求項1記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維製造用油剤組成物90〜65質量%と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1質量%以下のノニオン系界面活性剤10〜35質量%とからなる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。
  3. 炭素繊維前駆体アクリル繊維に請求項1記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維製造用油剤組成物を0.1〜1質量%付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維。
  4. 炭素繊維前駆体アクリル繊維に請求項2記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維製造用油剤組成物を0.1〜1質量%付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維。
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