JP2004149659A - フォトクロミック性色素、膜形成用組成物およびフォトクロミック性の膜を有する物品 - Google Patents
フォトクロミック性色素、膜形成用組成物およびフォトクロミック性の膜を有する物品 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】マトリックス中に分散させた際の耐熱性、耐光性に優れるフォトクロミック性色素、該フォトクロミック性色素を含む膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の膜形成用組成物には、側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物とエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを含むため、該組成物を塗布して得られたフォトクロミック膜は耐熱性、耐光性に優れる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の膜形成用組成物には、側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物とエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを含むため、該組成物を塗布して得られたフォトクロミック膜は耐熱性、耐光性に優れる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフォトクロミック性色素、該フォトクロミック性色素を含む膜形成用組成物および該膜形成用組成物から形成されたフォトクロミック性の膜が表面に形成された透明硬質基板からなる物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミック化合物は数多くが知られており、代表的なものにスピロナフトオキサジン系化合物があり、スピロナフトオキサジン系化合物の置換誘導体および該化合物を含有するフォトクロミック材料が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照。)。
【0003】
しかしながら、これらスピロナフトオキサジン系化合物はマトリックス(母材)中に分散させて用いられることが多いが、耐熱性や耐光性に乏しく、また長期使用中に色素がブリードアウトして特性が低下するなどの問題を有していた。
【0004】
【特許文献1】
特公昭45−28892号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特公昭49−48631号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開昭55−36284号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭61−263982号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開昭62−33184号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
米国特許第4342668号明細書(第2頁第2欄)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術が有する前述の問題点を解決することにある。すなわち本発明は、マトリックス中に分散させた際の耐熱性、耐光性に優れるフォトクロミック性色素、該フォトクロミック性色素を含む膜形成用組成物の提供を目的とする。本発明のフォトクロミック性色素は、分子内に活性なエポキシ基を有することによってマトリックスとの結合を可能とし、上記特性を発現できるものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物とエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを含む膜形成用組成物を提供する。
【0007】
本発明は、側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物、2以上のエポキシ基を有する化合物およびエポキシ基と反応しうる官能基を2以上有する化合物を含む膜形成用組成物を提供する。
【0008】
本発明は、上記膜形成用組成物から形成されたフォトクロミック性の膜が表面に形成された透明硬質基材からなる物品を提供する。
【0009】
本発明は、ナフタレン骨格に少なくとも1つのエポキシ基含有有機基が結合しているインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物からなるフォトクロミック性色素を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物は、インドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物の炭素原子に結合した水素原子の1以上がエポキシ基含有有機基で置換された化合物である。エポキシ基含有有機基が置換する位置としてはナフタレン骨格上の水素原子が結合している位置が好ましい。側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0011】
【化1】
【0012】
R1:炭素原子間にエーテル性酸素を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。ただし1価炭化水素基中の水素原子はハロゲン原子等で置換されていてもよい。
R2、R3:それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基を表すか、または、R2とR3が互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を表す。
R4:水素原子、炭素数1〜8の1価炭化水素基、アミノ基またはアルキル置換アミノ基を表す。
R5、R6、R7:それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、水酸基もしくはその共役塩基を有する炭化水素基、カルボン酸基もしくはその共役塩基を有する炭化水素基またはスルホン酸基もしくはその共役塩基を有する炭化水素基を表す。ただし、qが2の場合2つのR5、rが2の場合2つのR6、rが3の場合3つのR6、sが2の場合2つのR7は互いに異なっていてもよい。
R15:エポキシ基を有する1価有機基を表す。ただし、pが2以上の場合2以上のR15は互いに異なっていてもよい。
R15:エポキシ基を有する1価有機基を表す。
X:CY基または窒素原子を表し、Yは水素原子または上記R6もしくはR15を表す。
pは1〜5の整数、qは0〜2の整数、rは0〜3、sは0〜2を表し、p+r+s≦5である。
【0013】
R1としては、アルキル基、アルケニル基、ポリクロロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、アルコキシ基置換アルキル基などが好ましく、炭素数は1〜8が好ましい。特に好ましいR1は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0014】
R2、R3としては、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基、または、R2とR3が互いに結合して炭素数4〜5のアルキレン基となる基が好ましく、特にそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0015】
R4としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アミノ基または炭素数1〜4のアルキル基1個もしくは2個で置換されたアミノ基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0016】
R5としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基が好ましく、特に炭素数1〜4のアルキル基、フッ素原子または塩素原子が好ましい。qが1または2の場合、R5は4位〜7位のいずれか1または2ヶ所に結合し、qが2の場合、2個のR5は互いに異なってもよい。
【0017】
R6、R7としては、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基が好ましく、特にそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基、フッ素原子または塩素原子が好ましい。R6は7’位(XがCY基の場合。)、8’位、9’位または10’位(いずれの位置にも、R15が結合していない場合。)のいずれかに結合していることが好ましく、R7は5’位または6’位(いずれの位置にも、R15が結合していない場合。)に結合する。rが2の場合、2つのR6は互いに異なっていてもよく、rが3の場合、3つのR6は互いに異なっていてもよい。sが2の場合、2つのR7は互いに異なっていてもよい。
【0018】
R15はエポキシ基を有する1価有機基であり、この1価有機基中には2以上のエポキシ基を有していてもよい。好ましくは1個のエポキシ基を有する有機基である。エポキシ基を有する1価有機基としては、たとえば、グリシジルオキシ基、グリシジルアミノ基、シクロヘキセンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などのエポキシ基を有する有機基や、このエポキシ基を有する有機基を有する有機基があり、特にグリシジルオキシ基やグリシジルオキシ基含有有機基が好ましい。グリシジルオキシ基含有有機基としては、グリシジルオキシ置換アルキル基、グリシジルオキシ置換アルコキシ基、末端にグリシジルオキシ基を有するポリオキシアルキレン基などが好ましく、これらグリシジルオキシ基含有有機基のグリシジルオキシ基を除く部分の炭素数は1〜20が適当である。
【0019】
R15が結合しうるナフタレン骨格の位置は5’位〜10’位の6箇所(XがCYの場合)または5箇所(XがNの場合)であり、そのうちの1以上に位置にR15が結合する。pが2以上の場合、2個以上のR15は互いに異なっていてもよい。pは1以上であって、5までの整数であり、1または2が好ましく、1が最も好ましい。
【0020】
たとえばR15がグリシジルオキシ基の場合、ナフタレン骨格に水酸基を有する化合物にエピクロルヒドリンをアルカリ存在下に反応させて、ナフタレン骨格の水酸基が存在した位置にグリシジルオキシ基を導入できる。この方法はフェノール性水酸基を2以上有する芳香族化合物にエピクロルヒドリンを反応させてグリシジルエーテル系芳香族エポキシ樹脂(主剤)を製造する方法と同様に行うことができる。
【0021】
本発明のフォトクロミック性色素の合成方法は、たとえば次のような方法が挙げられるが、本発明のフォトクロミック性色素の合成方法はこれに限定されない。
【0022】
本発明におけるフォトクロミック性色素の一例として、9’位にグリシジルオキシ基が導入された色素(式(6)で表される化合物)の合成方法を以下に記載する。式(2)で表される、ジヒドロキシナフタレンまたはキノリン誘導体を亜硝酸ナトリウムでニトロソ化して式(3)の化合物を得る。これを式(4)で表されるインドリン誘導体(R1、R2、R3は式(1)の記述に同じ。)と反応させてヒドロキシル基の導入されたスピロ化合物(式(5)で表される化合物。)を得る。このヒドロキシル基をたとえばエピクロルヒドリンと反応させることによって式(6)で表される化合物すなわちエポキシ基を含むフォトクロミック性色素が合成できる。
【0023】
【化2】
【0024】
側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物(以下、フォトクロミック化合物(A)という)は、そのエポキシ基を反応基として高分子量体に組み込むことにより、フォトクロミック性の膜形成の用途に使用できる。2以上のエポキシ基を有する化合物は、エポキシ樹脂の主剤(以下、ポリエポキシドともいう)として使用され、エポキシ樹脂用硬化剤(以下、単に硬化剤という)と組み合わせて硬化したエポキシ樹脂の膜を形成する用途に使用されることは周知である。2以上のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)はエポキシ樹脂の主剤として使用でき、硬化剤と組み合わせてフォトクロミック性の膜を形成する用途に使用できる。1個のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)はエポキシ樹脂の主剤と併用し、硬化剤と組み合わせてフォトクロミック性の膜を形成する用途に使用できる。この場合には、1個のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)はエポキシ樹脂の主剤とともに、硬化剤によって共硬化し、フォトクロミック化合物(A)が組み込まれた硬化エポキシ樹脂の膜が得られる。
【0025】
本発明は、上記のようなフォトクロミック性の膜を形成するための膜形成用組成物であり、フォトクロミック化合物(A)とエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを含む。エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物は上記硬化剤を代表例とする、フォトクロミック化合物(A)と反応して膜を形成しうる化合物である。2以上のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)は単独で硬化剤と反応して膜を形成できる。しかし、得られる膜の物性等を考慮すると2以上のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)も他のポリエポキシド(通常のエポキシ樹脂の主剤)と併用することが好ましい。
【0026】
本発明はまた、フォトクロミック化合物(A)、2以上のエポキシ基を有する化合物およびエポキシ基と反応しうる官能基を2以上有する化合物を含む膜形成用組成物である。2以上のエポキシ基を有する化合物はフォトクロミック化合物(A)以外のポリエポキシド(エポキシ樹脂の主剤)を意味し、エポキシ基と反応しうる官能基を2以上有する化合物はエポキシ樹脂用の硬化剤を意味する。
【0027】
ポリエポキシドとしては、エポキシ樹脂の主剤として公知の化合物が好ましく、たとえば、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルやそのオリゴマーなどのビスフェノールA系エポキシ樹脂がある。その他、ノボラック系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も使用しうる。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、その他市販されているまたは公知のエポキシ樹脂を使用しうる。
【0028】
硬化剤としても、エポキシ樹脂用の硬化剤として市販されているまたは公知の硬化剤を使用しうる。このような硬化剤としては、たとえば、ジエチレントリアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソフォロンジアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−アミノエチルピペラジン等のポリアミン系硬化剤、フタル酸無水物等の酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリメルカプタン系硬化剤、ノボラック系硬化剤、レゾール系硬化剤、ポリイソシアネート系硬化剤、ポリカルボン酸等が挙げられる。また、前記官能基を複数種分子内に有する各種アミノ酸等の化合物も挙げられる。反応性や取扱いの容易さ等の観点から、ポリアミン系硬化剤および酸無水物系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤が好適に使用できる。
【0029】
また、さらに硬化促進剤として、N,N−ジメチルベンジルアミンや2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物を添加することもできる。
【0030】
本発明のフォトクロミック性色素は、分子内に反応性に富むエポキシ基を有するため、エポキシ基の開環反応によって種々のマトリックス樹脂(母材)に直接結合させることができる。したがって、本発明のフォトクロミック色素を用いることにより、耐熱性や耐光性に優れたフォトクロミック膜を得ることができる。
【0031】
また、本発明の膜形成用組成物は、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤を含むことが好ましい。このシラン系カップリング剤は、フォトクロミック化合物(A)とともに硬化剤と反応して硬化し、またその加水分解性シリル基はガラス等の透明硬質基材と結合して膜と該基材との密着性を向上させる。エポキシシ基を有するシラン系カップリング剤としては、式(B)で表されるエポキシシラン化合物が好ましい。
【0032】
RR’mR”nSiX3−m−n ・・・(B)
R:エポキシ基を有する1価有機基。
R’、R”:それぞれ独立に、炭素数1〜8の置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、フェニル基または水素原子。
X:炭素数1〜8のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、塩素原子、臭素原子または沃素原子。
m、n:それぞれ独立に、0または1。
【0033】
本発明におけるエポキシ基を有するシラン系カップリング剤は、本発明の膜形成用組成物を透明硬質基材上へ成膜するとき、該組成物の透明硬質基材への密着性やフォトクロミック膜の硬度などを向上させることができる。
【0034】
本発明におけるエポキシシラン系のシランカップリング剤はエポキシ基を有するため、側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物と該エポキシ基を有するシラン系カップリング剤とが、硬化剤によって架橋する。架橋することにより、本発明の膜形成用組成物を硬化させたフォトクロミック膜は、安定性向上すなわち耐光性や耐熱性が向上する。
【0035】
本発明における化合物Bは、一般にシランカップリング剤として市販されているものが使用でき、式(B)中R基としては、式(1)のR15の好ましい有機基と同様の有機基が好ましく挙げられる。
【0036】
化合物Bの具体例を挙げると、3−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリクロロシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジクロロシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメチルアルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリクロロシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルメチルジアルコキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルメチルジクロロシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルジメチルアルコキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルジメチルクロロシラン等である。反応制御の点から、Xがアルコキシ基であるアルコキシシラン類が好ましい。また透明硬質基材との密着性や硬度をより高めたい際には、トリアルコキシシラン類が好ましく、被膜に可とう性や柔軟性を持たせたい場合にはジアルコキシ、モノアルコキシシラン類が好ましい。これらエポキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を用いることもできる。化合物Bは、そのままで添加してもよいが、バインダ性を発現させるために部分的にSi−X基を加水分解させて添加するのが好ましい。さらに、化合物Bを添加した場合には、このほかに式(C)で表されるシラン化合物およびこれらの部分加水分解物を含んでいてもよい。
【0037】
R* aR** bR*** cSiX1 4−a−b−c ・・・(C)
R*、R**、R***:それぞれ独立に炭素数1〜8の置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、フェニル基または水素原子。
X1:炭素数1〜8のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、塩素原子、臭素原子または沃素原子。
a、b、c:それぞれ独立に0または1。
【0038】
フォトクロミック化合物(A)とバインダ成分、すなわちポリエポキシド、化合物Bおよび化合物C、の合計に対するフォトクロミック化合物(A)の使用割合は1質量%以上10質量%以下が好ましく、特に1.5質量%以上6質量%以下であることが好ましい。この量が少なすぎるとフォトクロミック性の膜を得ることが困難であり、多すぎると得られる膜の強度、耐久性、耐候性などの物理的、化学的物性が不充分となりやすい。
【0039】
本発明における硬化剤の量は、膜形成用組成物中の全エポキシ基の数に対して1〜200モル%であることが好ましく、10〜100モル%であることがより好ましい。1モル%以上であると、形成された膜の物性を良くすることができ、200モル%以下であると形成された膜中の未反応硬化剤の量を少なくすることができ該膜の物性や耐久性が優れるため好ましい。
【0040】
また、本発明のフォトクロミック組成物には、塗布性やレオロジーを調整するために有機溶媒や界面活性剤が含まれていてもよく、さらには耐光性を高める各種光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、3重項消光剤など)が添加されていてもよい。
【0041】
本発明のフォトクロミック組成物を透明硬質基材に塗布、硬化させることによって透明性、耐熱性、耐光性に優れたフォトクロミック性の膜を有する物品が得られる。該組成物の塗布方法は公知の方法、すなわちディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フローコート法、ダイコート法、ロールコート法、転写印刷法、スクリーン印刷法等によって行うことができる。硬化は、好ましくは10〜250℃、より好ましくは20〜170℃の温度で行われる。該温度範囲であると、色素の分解が起こりにくいため好ましい。
【0042】
硬化にかかる時間は、温度にもよるが好ましくは2分〜8時間、より好ましくは30分〜3時間である。本発明におけるフォトクロミック膜の膜厚は、好ましくは1μm〜1mm、より好ましくは10μm〜200μmである。1μm以上であると、該膜がフォトクロミック特性を充分に発現できるので好ましい。また、1mm以下であると、クラックや剥離が生じにくいので好ましい。
【0043】
透明硬質基材としては、ガラス等の透明で硬質な化合物で構成される物品であれば特に限定されないが、自動車用窓ガラス、建築用窓ガラスなどの板ガラスや、ディスプレイ用パネルガラスなどが好ましく挙げられる。
【0044】
【実施例】
以下に例を挙げて説明するが、本発明は以下の例に限定されない。また、以下の各例で用いた化合物7〜12はそれぞれ式(7)〜(12)で表される化合物である。
【0045】
【化3】
【0046】
[例1](合成例)
1−ニトロソ−2,7−ジヒドロキシナフタレンの合成
1L丸底フラスコにアセトン100mLと酢酸200mLを入れて混合した。該溶液中に、2,7−ジヒドロキシナフタレン(化合物7)16.0gを加えて0℃に冷却した。激しく撹拌しながら亜硝酸ナトリウム20%水溶液100mLを、該溶液中に2時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後さらに12時間撹拌を続け、溶液中の沈殿物を遠心分離にて回収した。回収した沈殿物をジエチルエーテルで洗浄し、次いで蒸留水で洗浄した。得られた生成物を真空乾燥させて1−ニトロソ−2,7−ジヒドロキシナフタレン(化合物8)の赤褐色の粉末を得た(収量:18.40g、収率97.3%)。
【0047】
[例2](合成例)
1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン]の合成
例1で得られた1−ニトロソ−2,7−ジヒドロキシナフタレン(化合物8)9.46gを1L丸底フラスコ中の脱水メタノール250mLに投入し、窒素気流下で30分間還流を行って化合物8を溶解させた。1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドレニン8.66gを2時間かけて該フラスコ中へ滴下し、4時間還流加熱したのち放冷した。析出した結晶をメタノールで洗浄した後真空乾燥させて1,3,3−トリメチル−9’−ヒドロキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物9)の結晶8.78gを得た。該結晶を500mL丸底フラスコに入れて、さらに脱水アセトニトリル200mLを加え、炭酸カリウム5.3gを添加して窒素気流下で1時間還流加熱した。加熱しながらエピクロルヒドリン7.1gを徐々に滴下しさらに8時間還流を行った。該フラスコ中の溶媒、余剰のエピクロルヒドリンを留去して得られた粗生成物をトルエンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後ろ別し、トルエンを留去した。メタノールからの再結晶法により1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)の淡黄色結晶9.1gを得た(収率45.4%)。
【0048】
<分析結果>
1H−NMR(CDCl3)δ
1.36ppm(s,6H)、2.76ppm(s,3H)、2.82ppm(m,1H)、2.95ppm(m,1H)、3.46ppm(m,1H)、4.14ppm(m,1H)、4.46ppm(m,1H)、6.55〜7.94ppm(m,10H)
IR(KBr):吸収波数
1265cm−1(エポキシ環C−O−C)、1631cm−1(C=N)
元素分析値:( )内は計算値
C:74.9%(75.0)、H:6.2%(6.0)、N:7.0%(7.0)。
【0049】
[例3](実施例)
フォトクロミック膜を有するガラスの作成例
30mLビーカーで、例2で得られた1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)0.26gをジクロロメタン2gとトルエン2g混合溶媒に溶解させ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828)3.85g、1,8−p−メンセンジアミン0.9gを加えてフォトクロミック組成物とした。
【0050】
得られた組成物を、よく洗浄したガラス板(100×100×3mm)の一方の面にスピンコート法によって塗布し、40℃で10分間乾燥させた後140℃で2時間硬化させてフォトクロミック膜を有するガラスを得た。得られたフォトクロミック膜の膜厚は40μm、波長610nmの光の透過率は90%であった。得られたフォトクロミック膜を有するガラスの膜形成面に、150Wのキセノンランプを使用し紫外線(波長300〜400nm)を30秒間照射するとガラスは青色に着色し、波長610nmの光の透過率は38%になった。
【0051】
また紫外線照射を止めると該着色したフォトクロミック膜を有するガラスは、1分後にはもとの透過率(90%)まで回復した。さらに、2.2kWキセノンフェードメーター(米国アトラス社製−サンテストXLS)を用いて750mW/cm2の照度で500時間の連続光照射試験を行ったが、照射後も照射前の外観および特性を維持していた。また、130℃の恒温槽中で200時間の耐熱性試験を行ったが、試験後も試験前の外観および特性を維持していた。
【0052】
[例4](実施例)
フォトクロミック膜を有するガラスの作成例
100mL丸底フラスコ中で、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン11.8g、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン10.4gを混合して氷水で5℃に冷却し、撹拌しながら0.1mol/L硝酸水溶液2.7gを徐々に滴下した。滴下終了後5℃で2時間撹拌し、シラン前駆体溶液Dとした。別の50mL丸底フラスコ中で、例2で得られた1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)0.26gをジクロロメタン2gとトルエン2gの混合溶媒に溶解させ、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン0.5gを加えて25℃で2時間撹拌した。該溶液にシラン前駆体溶液Dを5.4g加え、さらに30分撹拌してフォトクロミック組成物とした。
【0053】
得られた組成物をよく洗浄したガラス板(100×100×3mm)の一方の面にスピンコート法によって塗布し、40℃で10分間乾燥させた後150℃で2時間硬化させてフォトクロミック膜を有するガラスを得た。得られたフォトクロミック膜の膜厚は40μm、波長610nmの光の透過率は90%であった。得られたフォトクロミック膜を有するガラスの膜形成面に、150Wのキセノンランプを使用し紫外線(波長300〜400nm)を30秒間照射するとガラスは青色に着色し、波長610nmの光の透過率は19%になった。
【0054】
また紫外線照射を止めると該着色したフォトクロミック膜を有するガラスは、30秒後にはもとの透過率(90%)まで回復した。さらに、2.2kWキセノンフェードメーター(米国アトラス社製−サンテストXLS)を用いて750mW/cm2の照度で1000時間の連続光照射試験を行ったが、照射後も照射前の外観および特性を維持していた。また、130℃の恒温槽中で200時間の耐熱性試験を行ったが、試験後も試験前の外観および特性を維持していた。
【0055】
[例5](合成例)
5−クロロ−1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン]の合成
1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドレニン8.66gの代りに、5−クロロ−1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドレニン10.4gを加えた以外は例2と同様にして5−クロロ−1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物11)の淡黄色結晶を得た(収率48.8%)。
【0056】
<分析結果>
1H−NMR(CDCl3)δ
1.33ppm(s,6H)、2.73ppm(s,3H)、2.82ppm(m,1H)、2.93ppm(m,1H)、3.47ppm(m,1H)、4.14ppm(m,1H)、4.45ppm(m,1H)、6.45〜7.86ppm(m,9H)
IR(KBr):吸収波数
1061cm−1(C−Cl)、1259cm−1(エポキシ環C−O−C)、1620cm−1(C=N)
元素分析値:( )内は計算値
C:65.9%(69.0)、H:5.2%(5.3)、N:6.6%(6.4)。
【0057】
[例6](合成例)
1−n−ブチル−3,3−ジメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン]の合成
1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドレニン8.66gの代りに、1−n−ブチル−3,3−ジメチル−2−メチレンインドレニン10.8gを加えた以外は例2と同様にして1−n−ブチル−3,3−ジメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物12)の淡黄色結晶を得た(収率64.8%)。
【0058】
<分析結果>
1H−NMR(CDCl3)δ
0.88ppm(t,3H)、1.33ppm(m,8H)、1.62ppm(m,2H)、2.82ppm(m,1H)、2.95ppm(m,1H)、3.18ppm(m,2H)、3.46ppm(m,1H)、4.14ppm(m,1H)、4.46ppm(m,1H)、6.58〜7.86ppm(m,10H)
IR(KBr):吸収波数
1270cm−1(エポキシ環C−O−C)、1625cm−1(C=N)
元素分析値:( )内は計算値
C:76.0%(76.0)、H:6.9%(6.8)、N:6.3%(6.3)。
【0059】
[例7〜12](実施例)
例2、5、6で得られたフォトクロミック色素すなわち化合物10、15、16、および表1に示した各置換基を有する化合物1(R15はグリシジルオキシ基であり、p=1である。また、表1に記載されていない基は、水素原子である。)のフォトクロミック色素を用いて、1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)0.26g用いる以外は、例4に記載の方法と同様にして、フォトクロミック組成物を得た。得られたフォトクロミック組成物を用いて例4と同様の方法でフォトクロミック膜を有するガラスを作成し評価した。結果を表2に示す。
【0060】
表2中、外観は、フォトクロミック膜が作成されたときの膜の色を目視で観察した。初期透過率は、150Wキセノンランプを照射する前の、フォトクロミック膜を有するガラスの表2の吸収波長欄に記載の波長の光の透過率である。露光時透過率は、150Wキセノンランプ(波長300〜400nmの紫外線)を30秒間照射後の着色したフォトクロミック膜を有するガラスの表2の吸収波長欄に記載の波長の光の透過率である。退色速度は、該着色したフォトクロミック膜を有するガラスが、紫外線の照射を停止してから初期の透過率に戻るまでに要する時間である。耐熱性は、130℃の恒温槽中に該フォトクロミック膜を有するガラスを200時間保持した後、恒温槽中に保持する前と比べて、○:外観および特性(露光時透過率)が変化なし、×:外観が黄変し特性が変化した。耐光性は、2.2kWキセノンフェードメーター(米国アトラス社製−サンテストXLS)を用いて750mW/cm2の照度で1000時間の連続光照射試験を行ったフォトクロミック膜を有するガラスの着色性保持率、すなわちフォトクロミック膜を有するガラスの、連続光照射試験前の着色性(非露光時と露光30秒後の光線透過率の差)に対する連続光照射試験後の着色性の比率を評価した。
【0061】
[例13](比較例)
式(1)において、p=0であり、表1に示す置換基を有する化合物(表1に記載されていない基は、水素原子である。)を用いて、1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)0.26g用いる以外は、例4に記載の方法と同様にして、フォトクロミック組成物を得た。得られたフォトクロミック組成物を用いて例4と同様の方法でフォトクロミック膜を有するガラスを作成し例7〜10と同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【発明の効果】
本発明のフォトクロミック色素は分子内に反応性に富むエポキシ基を有するため、マトリックスに組み込むことができ、耐熱性、耐光性に優れたフォトクロミック膜を有するガラスを得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はフォトクロミック性色素、該フォトクロミック性色素を含む膜形成用組成物および該膜形成用組成物から形成されたフォトクロミック性の膜が表面に形成された透明硬質基板からなる物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミック化合物は数多くが知られており、代表的なものにスピロナフトオキサジン系化合物があり、スピロナフトオキサジン系化合物の置換誘導体および該化合物を含有するフォトクロミック材料が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照。)。
【0003】
しかしながら、これらスピロナフトオキサジン系化合物はマトリックス(母材)中に分散させて用いられることが多いが、耐熱性や耐光性に乏しく、また長期使用中に色素がブリードアウトして特性が低下するなどの問題を有していた。
【0004】
【特許文献1】
特公昭45−28892号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特公昭49−48631号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開昭55−36284号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭61−263982号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開昭62−33184号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
米国特許第4342668号明細書(第2頁第2欄)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術が有する前述の問題点を解決することにある。すなわち本発明は、マトリックス中に分散させた際の耐熱性、耐光性に優れるフォトクロミック性色素、該フォトクロミック性色素を含む膜形成用組成物の提供を目的とする。本発明のフォトクロミック性色素は、分子内に活性なエポキシ基を有することによってマトリックスとの結合を可能とし、上記特性を発現できるものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物とエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを含む膜形成用組成物を提供する。
【0007】
本発明は、側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物、2以上のエポキシ基を有する化合物およびエポキシ基と反応しうる官能基を2以上有する化合物を含む膜形成用組成物を提供する。
【0008】
本発明は、上記膜形成用組成物から形成されたフォトクロミック性の膜が表面に形成された透明硬質基材からなる物品を提供する。
【0009】
本発明は、ナフタレン骨格に少なくとも1つのエポキシ基含有有機基が結合しているインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物からなるフォトクロミック性色素を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物は、インドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物の炭素原子に結合した水素原子の1以上がエポキシ基含有有機基で置換された化合物である。エポキシ基含有有機基が置換する位置としてはナフタレン骨格上の水素原子が結合している位置が好ましい。側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0011】
【化1】
【0012】
R1:炭素原子間にエーテル性酸素を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基を表す。ただし1価炭化水素基中の水素原子はハロゲン原子等で置換されていてもよい。
R2、R3:それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基を表すか、または、R2とR3が互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を表す。
R4:水素原子、炭素数1〜8の1価炭化水素基、アミノ基またはアルキル置換アミノ基を表す。
R5、R6、R7:それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、水酸基もしくはその共役塩基を有する炭化水素基、カルボン酸基もしくはその共役塩基を有する炭化水素基またはスルホン酸基もしくはその共役塩基を有する炭化水素基を表す。ただし、qが2の場合2つのR5、rが2の場合2つのR6、rが3の場合3つのR6、sが2の場合2つのR7は互いに異なっていてもよい。
R15:エポキシ基を有する1価有機基を表す。ただし、pが2以上の場合2以上のR15は互いに異なっていてもよい。
R15:エポキシ基を有する1価有機基を表す。
X:CY基または窒素原子を表し、Yは水素原子または上記R6もしくはR15を表す。
pは1〜5の整数、qは0〜2の整数、rは0〜3、sは0〜2を表し、p+r+s≦5である。
【0013】
R1としては、アルキル基、アルケニル基、ポリクロロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、アルコキシ基置換アルキル基などが好ましく、炭素数は1〜8が好ましい。特に好ましいR1は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0014】
R2、R3としては、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基、または、R2とR3が互いに結合して炭素数4〜5のアルキレン基となる基が好ましく、特にそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0015】
R4としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アミノ基または炭素数1〜4のアルキル基1個もしくは2個で置換されたアミノ基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0016】
R5としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはニトロ基が好ましく、特に炭素数1〜4のアルキル基、フッ素原子または塩素原子が好ましい。qが1または2の場合、R5は4位〜7位のいずれか1または2ヶ所に結合し、qが2の場合、2個のR5は互いに異なってもよい。
【0017】
R6、R7としては、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基が好ましく、特にそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基、フッ素原子または塩素原子が好ましい。R6は7’位(XがCY基の場合。)、8’位、9’位または10’位(いずれの位置にも、R15が結合していない場合。)のいずれかに結合していることが好ましく、R7は5’位または6’位(いずれの位置にも、R15が結合していない場合。)に結合する。rが2の場合、2つのR6は互いに異なっていてもよく、rが3の場合、3つのR6は互いに異なっていてもよい。sが2の場合、2つのR7は互いに異なっていてもよい。
【0018】
R15はエポキシ基を有する1価有機基であり、この1価有機基中には2以上のエポキシ基を有していてもよい。好ましくは1個のエポキシ基を有する有機基である。エポキシ基を有する1価有機基としては、たとえば、グリシジルオキシ基、グリシジルアミノ基、シクロヘキセンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などのエポキシ基を有する有機基や、このエポキシ基を有する有機基を有する有機基があり、特にグリシジルオキシ基やグリシジルオキシ基含有有機基が好ましい。グリシジルオキシ基含有有機基としては、グリシジルオキシ置換アルキル基、グリシジルオキシ置換アルコキシ基、末端にグリシジルオキシ基を有するポリオキシアルキレン基などが好ましく、これらグリシジルオキシ基含有有機基のグリシジルオキシ基を除く部分の炭素数は1〜20が適当である。
【0019】
R15が結合しうるナフタレン骨格の位置は5’位〜10’位の6箇所(XがCYの場合)または5箇所(XがNの場合)であり、そのうちの1以上に位置にR15が結合する。pが2以上の場合、2個以上のR15は互いに異なっていてもよい。pは1以上であって、5までの整数であり、1または2が好ましく、1が最も好ましい。
【0020】
たとえばR15がグリシジルオキシ基の場合、ナフタレン骨格に水酸基を有する化合物にエピクロルヒドリンをアルカリ存在下に反応させて、ナフタレン骨格の水酸基が存在した位置にグリシジルオキシ基を導入できる。この方法はフェノール性水酸基を2以上有する芳香族化合物にエピクロルヒドリンを反応させてグリシジルエーテル系芳香族エポキシ樹脂(主剤)を製造する方法と同様に行うことができる。
【0021】
本発明のフォトクロミック性色素の合成方法は、たとえば次のような方法が挙げられるが、本発明のフォトクロミック性色素の合成方法はこれに限定されない。
【0022】
本発明におけるフォトクロミック性色素の一例として、9’位にグリシジルオキシ基が導入された色素(式(6)で表される化合物)の合成方法を以下に記載する。式(2)で表される、ジヒドロキシナフタレンまたはキノリン誘導体を亜硝酸ナトリウムでニトロソ化して式(3)の化合物を得る。これを式(4)で表されるインドリン誘導体(R1、R2、R3は式(1)の記述に同じ。)と反応させてヒドロキシル基の導入されたスピロ化合物(式(5)で表される化合物。)を得る。このヒドロキシル基をたとえばエピクロルヒドリンと反応させることによって式(6)で表される化合物すなわちエポキシ基を含むフォトクロミック性色素が合成できる。
【0023】
【化2】
【0024】
側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物(以下、フォトクロミック化合物(A)という)は、そのエポキシ基を反応基として高分子量体に組み込むことにより、フォトクロミック性の膜形成の用途に使用できる。2以上のエポキシ基を有する化合物は、エポキシ樹脂の主剤(以下、ポリエポキシドともいう)として使用され、エポキシ樹脂用硬化剤(以下、単に硬化剤という)と組み合わせて硬化したエポキシ樹脂の膜を形成する用途に使用されることは周知である。2以上のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)はエポキシ樹脂の主剤として使用でき、硬化剤と組み合わせてフォトクロミック性の膜を形成する用途に使用できる。1個のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)はエポキシ樹脂の主剤と併用し、硬化剤と組み合わせてフォトクロミック性の膜を形成する用途に使用できる。この場合には、1個のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)はエポキシ樹脂の主剤とともに、硬化剤によって共硬化し、フォトクロミック化合物(A)が組み込まれた硬化エポキシ樹脂の膜が得られる。
【0025】
本発明は、上記のようなフォトクロミック性の膜を形成するための膜形成用組成物であり、フォトクロミック化合物(A)とエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを含む。エポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物は上記硬化剤を代表例とする、フォトクロミック化合物(A)と反応して膜を形成しうる化合物である。2以上のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)は単独で硬化剤と反応して膜を形成できる。しかし、得られる膜の物性等を考慮すると2以上のエポキシ基を有するフォトクロミック化合物(A)も他のポリエポキシド(通常のエポキシ樹脂の主剤)と併用することが好ましい。
【0026】
本発明はまた、フォトクロミック化合物(A)、2以上のエポキシ基を有する化合物およびエポキシ基と反応しうる官能基を2以上有する化合物を含む膜形成用組成物である。2以上のエポキシ基を有する化合物はフォトクロミック化合物(A)以外のポリエポキシド(エポキシ樹脂の主剤)を意味し、エポキシ基と反応しうる官能基を2以上有する化合物はエポキシ樹脂用の硬化剤を意味する。
【0027】
ポリエポキシドとしては、エポキシ樹脂の主剤として公知の化合物が好ましく、たとえば、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルやそのオリゴマーなどのビスフェノールA系エポキシ樹脂がある。その他、ノボラック系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も使用しうる。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、その他市販されているまたは公知のエポキシ樹脂を使用しうる。
【0028】
硬化剤としても、エポキシ樹脂用の硬化剤として市販されているまたは公知の硬化剤を使用しうる。このような硬化剤としては、たとえば、ジエチレントリアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソフォロンジアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−アミノエチルピペラジン等のポリアミン系硬化剤、フタル酸無水物等の酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリメルカプタン系硬化剤、ノボラック系硬化剤、レゾール系硬化剤、ポリイソシアネート系硬化剤、ポリカルボン酸等が挙げられる。また、前記官能基を複数種分子内に有する各種アミノ酸等の化合物も挙げられる。反応性や取扱いの容易さ等の観点から、ポリアミン系硬化剤および酸無水物系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤が好適に使用できる。
【0029】
また、さらに硬化促進剤として、N,N−ジメチルベンジルアミンや2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物を添加することもできる。
【0030】
本発明のフォトクロミック性色素は、分子内に反応性に富むエポキシ基を有するため、エポキシ基の開環反応によって種々のマトリックス樹脂(母材)に直接結合させることができる。したがって、本発明のフォトクロミック色素を用いることにより、耐熱性や耐光性に優れたフォトクロミック膜を得ることができる。
【0031】
また、本発明の膜形成用組成物は、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤を含むことが好ましい。このシラン系カップリング剤は、フォトクロミック化合物(A)とともに硬化剤と反応して硬化し、またその加水分解性シリル基はガラス等の透明硬質基材と結合して膜と該基材との密着性を向上させる。エポキシシ基を有するシラン系カップリング剤としては、式(B)で表されるエポキシシラン化合物が好ましい。
【0032】
RR’mR”nSiX3−m−n ・・・(B)
R:エポキシ基を有する1価有機基。
R’、R”:それぞれ独立に、炭素数1〜8の置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、フェニル基または水素原子。
X:炭素数1〜8のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、塩素原子、臭素原子または沃素原子。
m、n:それぞれ独立に、0または1。
【0033】
本発明におけるエポキシ基を有するシラン系カップリング剤は、本発明の膜形成用組成物を透明硬質基材上へ成膜するとき、該組成物の透明硬質基材への密着性やフォトクロミック膜の硬度などを向上させることができる。
【0034】
本発明におけるエポキシシラン系のシランカップリング剤はエポキシ基を有するため、側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物と該エポキシ基を有するシラン系カップリング剤とが、硬化剤によって架橋する。架橋することにより、本発明の膜形成用組成物を硬化させたフォトクロミック膜は、安定性向上すなわち耐光性や耐熱性が向上する。
【0035】
本発明における化合物Bは、一般にシランカップリング剤として市販されているものが使用でき、式(B)中R基としては、式(1)のR15の好ましい有機基と同様の有機基が好ましく挙げられる。
【0036】
化合物Bの具体例を挙げると、3−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリクロロシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジクロロシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメチルアルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリアルコキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリクロロシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルメチルジアルコキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルメチルジクロロシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルジメチルアルコキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルジメチルクロロシラン等である。反応制御の点から、Xがアルコキシ基であるアルコキシシラン類が好ましい。また透明硬質基材との密着性や硬度をより高めたい際には、トリアルコキシシラン類が好ましく、被膜に可とう性や柔軟性を持たせたい場合にはジアルコキシ、モノアルコキシシラン類が好ましい。これらエポキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を用いることもできる。化合物Bは、そのままで添加してもよいが、バインダ性を発現させるために部分的にSi−X基を加水分解させて添加するのが好ましい。さらに、化合物Bを添加した場合には、このほかに式(C)で表されるシラン化合物およびこれらの部分加水分解物を含んでいてもよい。
【0037】
R* aR** bR*** cSiX1 4−a−b−c ・・・(C)
R*、R**、R***:それぞれ独立に炭素数1〜8の置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、フェニル基または水素原子。
X1:炭素数1〜8のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、塩素原子、臭素原子または沃素原子。
a、b、c:それぞれ独立に0または1。
【0038】
フォトクロミック化合物(A)とバインダ成分、すなわちポリエポキシド、化合物Bおよび化合物C、の合計に対するフォトクロミック化合物(A)の使用割合は1質量%以上10質量%以下が好ましく、特に1.5質量%以上6質量%以下であることが好ましい。この量が少なすぎるとフォトクロミック性の膜を得ることが困難であり、多すぎると得られる膜の強度、耐久性、耐候性などの物理的、化学的物性が不充分となりやすい。
【0039】
本発明における硬化剤の量は、膜形成用組成物中の全エポキシ基の数に対して1〜200モル%であることが好ましく、10〜100モル%であることがより好ましい。1モル%以上であると、形成された膜の物性を良くすることができ、200モル%以下であると形成された膜中の未反応硬化剤の量を少なくすることができ該膜の物性や耐久性が優れるため好ましい。
【0040】
また、本発明のフォトクロミック組成物には、塗布性やレオロジーを調整するために有機溶媒や界面活性剤が含まれていてもよく、さらには耐光性を高める各種光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、3重項消光剤など)が添加されていてもよい。
【0041】
本発明のフォトクロミック組成物を透明硬質基材に塗布、硬化させることによって透明性、耐熱性、耐光性に優れたフォトクロミック性の膜を有する物品が得られる。該組成物の塗布方法は公知の方法、すなわちディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フローコート法、ダイコート法、ロールコート法、転写印刷法、スクリーン印刷法等によって行うことができる。硬化は、好ましくは10〜250℃、より好ましくは20〜170℃の温度で行われる。該温度範囲であると、色素の分解が起こりにくいため好ましい。
【0042】
硬化にかかる時間は、温度にもよるが好ましくは2分〜8時間、より好ましくは30分〜3時間である。本発明におけるフォトクロミック膜の膜厚は、好ましくは1μm〜1mm、より好ましくは10μm〜200μmである。1μm以上であると、該膜がフォトクロミック特性を充分に発現できるので好ましい。また、1mm以下であると、クラックや剥離が生じにくいので好ましい。
【0043】
透明硬質基材としては、ガラス等の透明で硬質な化合物で構成される物品であれば特に限定されないが、自動車用窓ガラス、建築用窓ガラスなどの板ガラスや、ディスプレイ用パネルガラスなどが好ましく挙げられる。
【0044】
【実施例】
以下に例を挙げて説明するが、本発明は以下の例に限定されない。また、以下の各例で用いた化合物7〜12はそれぞれ式(7)〜(12)で表される化合物である。
【0045】
【化3】
【0046】
[例1](合成例)
1−ニトロソ−2,7−ジヒドロキシナフタレンの合成
1L丸底フラスコにアセトン100mLと酢酸200mLを入れて混合した。該溶液中に、2,7−ジヒドロキシナフタレン(化合物7)16.0gを加えて0℃に冷却した。激しく撹拌しながら亜硝酸ナトリウム20%水溶液100mLを、該溶液中に2時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後さらに12時間撹拌を続け、溶液中の沈殿物を遠心分離にて回収した。回収した沈殿物をジエチルエーテルで洗浄し、次いで蒸留水で洗浄した。得られた生成物を真空乾燥させて1−ニトロソ−2,7−ジヒドロキシナフタレン(化合物8)の赤褐色の粉末を得た(収量:18.40g、収率97.3%)。
【0047】
[例2](合成例)
1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン]の合成
例1で得られた1−ニトロソ−2,7−ジヒドロキシナフタレン(化合物8)9.46gを1L丸底フラスコ中の脱水メタノール250mLに投入し、窒素気流下で30分間還流を行って化合物8を溶解させた。1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドレニン8.66gを2時間かけて該フラスコ中へ滴下し、4時間還流加熱したのち放冷した。析出した結晶をメタノールで洗浄した後真空乾燥させて1,3,3−トリメチル−9’−ヒドロキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物9)の結晶8.78gを得た。該結晶を500mL丸底フラスコに入れて、さらに脱水アセトニトリル200mLを加え、炭酸カリウム5.3gを添加して窒素気流下で1時間還流加熱した。加熱しながらエピクロルヒドリン7.1gを徐々に滴下しさらに8時間還流を行った。該フラスコ中の溶媒、余剰のエピクロルヒドリンを留去して得られた粗生成物をトルエンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後ろ別し、トルエンを留去した。メタノールからの再結晶法により1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)の淡黄色結晶9.1gを得た(収率45.4%)。
【0048】
<分析結果>
1H−NMR(CDCl3)δ
1.36ppm(s,6H)、2.76ppm(s,3H)、2.82ppm(m,1H)、2.95ppm(m,1H)、3.46ppm(m,1H)、4.14ppm(m,1H)、4.46ppm(m,1H)、6.55〜7.94ppm(m,10H)
IR(KBr):吸収波数
1265cm−1(エポキシ環C−O−C)、1631cm−1(C=N)
元素分析値:( )内は計算値
C:74.9%(75.0)、H:6.2%(6.0)、N:7.0%(7.0)。
【0049】
[例3](実施例)
フォトクロミック膜を有するガラスの作成例
30mLビーカーで、例2で得られた1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)0.26gをジクロロメタン2gとトルエン2g混合溶媒に溶解させ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828)3.85g、1,8−p−メンセンジアミン0.9gを加えてフォトクロミック組成物とした。
【0050】
得られた組成物を、よく洗浄したガラス板(100×100×3mm)の一方の面にスピンコート法によって塗布し、40℃で10分間乾燥させた後140℃で2時間硬化させてフォトクロミック膜を有するガラスを得た。得られたフォトクロミック膜の膜厚は40μm、波長610nmの光の透過率は90%であった。得られたフォトクロミック膜を有するガラスの膜形成面に、150Wのキセノンランプを使用し紫外線(波長300〜400nm)を30秒間照射するとガラスは青色に着色し、波長610nmの光の透過率は38%になった。
【0051】
また紫外線照射を止めると該着色したフォトクロミック膜を有するガラスは、1分後にはもとの透過率(90%)まで回復した。さらに、2.2kWキセノンフェードメーター(米国アトラス社製−サンテストXLS)を用いて750mW/cm2の照度で500時間の連続光照射試験を行ったが、照射後も照射前の外観および特性を維持していた。また、130℃の恒温槽中で200時間の耐熱性試験を行ったが、試験後も試験前の外観および特性を維持していた。
【0052】
[例4](実施例)
フォトクロミック膜を有するガラスの作成例
100mL丸底フラスコ中で、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン11.8g、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン10.4gを混合して氷水で5℃に冷却し、撹拌しながら0.1mol/L硝酸水溶液2.7gを徐々に滴下した。滴下終了後5℃で2時間撹拌し、シラン前駆体溶液Dとした。別の50mL丸底フラスコ中で、例2で得られた1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)0.26gをジクロロメタン2gとトルエン2gの混合溶媒に溶解させ、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン0.5gを加えて25℃で2時間撹拌した。該溶液にシラン前駆体溶液Dを5.4g加え、さらに30分撹拌してフォトクロミック組成物とした。
【0053】
得られた組成物をよく洗浄したガラス板(100×100×3mm)の一方の面にスピンコート法によって塗布し、40℃で10分間乾燥させた後150℃で2時間硬化させてフォトクロミック膜を有するガラスを得た。得られたフォトクロミック膜の膜厚は40μm、波長610nmの光の透過率は90%であった。得られたフォトクロミック膜を有するガラスの膜形成面に、150Wのキセノンランプを使用し紫外線(波長300〜400nm)を30秒間照射するとガラスは青色に着色し、波長610nmの光の透過率は19%になった。
【0054】
また紫外線照射を止めると該着色したフォトクロミック膜を有するガラスは、30秒後にはもとの透過率(90%)まで回復した。さらに、2.2kWキセノンフェードメーター(米国アトラス社製−サンテストXLS)を用いて750mW/cm2の照度で1000時間の連続光照射試験を行ったが、照射後も照射前の外観および特性を維持していた。また、130℃の恒温槽中で200時間の耐熱性試験を行ったが、試験後も試験前の外観および特性を維持していた。
【0055】
[例5](合成例)
5−クロロ−1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン]の合成
1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドレニン8.66gの代りに、5−クロロ−1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドレニン10.4gを加えた以外は例2と同様にして5−クロロ−1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物11)の淡黄色結晶を得た(収率48.8%)。
【0056】
<分析結果>
1H−NMR(CDCl3)δ
1.33ppm(s,6H)、2.73ppm(s,3H)、2.82ppm(m,1H)、2.93ppm(m,1H)、3.47ppm(m,1H)、4.14ppm(m,1H)、4.45ppm(m,1H)、6.45〜7.86ppm(m,9H)
IR(KBr):吸収波数
1061cm−1(C−Cl)、1259cm−1(エポキシ環C−O−C)、1620cm−1(C=N)
元素分析値:( )内は計算値
C:65.9%(69.0)、H:5.2%(5.3)、N:6.6%(6.4)。
【0057】
[例6](合成例)
1−n−ブチル−3,3−ジメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン]の合成
1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドレニン8.66gの代りに、1−n−ブチル−3,3−ジメチル−2−メチレンインドレニン10.8gを加えた以外は例2と同様にして1−n−ブチル−3,3−ジメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物12)の淡黄色結晶を得た(収率64.8%)。
【0058】
<分析結果>
1H−NMR(CDCl3)δ
0.88ppm(t,3H)、1.33ppm(m,8H)、1.62ppm(m,2H)、2.82ppm(m,1H)、2.95ppm(m,1H)、3.18ppm(m,2H)、3.46ppm(m,1H)、4.14ppm(m,1H)、4.46ppm(m,1H)、6.58〜7.86ppm(m,10H)
IR(KBr):吸収波数
1270cm−1(エポキシ環C−O−C)、1625cm−1(C=N)
元素分析値:( )内は計算値
C:76.0%(76.0)、H:6.9%(6.8)、N:6.3%(6.3)。
【0059】
[例7〜12](実施例)
例2、5、6で得られたフォトクロミック色素すなわち化合物10、15、16、および表1に示した各置換基を有する化合物1(R15はグリシジルオキシ基であり、p=1である。また、表1に記載されていない基は、水素原子である。)のフォトクロミック色素を用いて、1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)0.26g用いる以外は、例4に記載の方法と同様にして、フォトクロミック組成物を得た。得られたフォトクロミック組成物を用いて例4と同様の方法でフォトクロミック膜を有するガラスを作成し評価した。結果を表2に示す。
【0060】
表2中、外観は、フォトクロミック膜が作成されたときの膜の色を目視で観察した。初期透過率は、150Wキセノンランプを照射する前の、フォトクロミック膜を有するガラスの表2の吸収波長欄に記載の波長の光の透過率である。露光時透過率は、150Wキセノンランプ(波長300〜400nmの紫外線)を30秒間照射後の着色したフォトクロミック膜を有するガラスの表2の吸収波長欄に記載の波長の光の透過率である。退色速度は、該着色したフォトクロミック膜を有するガラスが、紫外線の照射を停止してから初期の透過率に戻るまでに要する時間である。耐熱性は、130℃の恒温槽中に該フォトクロミック膜を有するガラスを200時間保持した後、恒温槽中に保持する前と比べて、○:外観および特性(露光時透過率)が変化なし、×:外観が黄変し特性が変化した。耐光性は、2.2kWキセノンフェードメーター(米国アトラス社製−サンテストXLS)を用いて750mW/cm2の照度で1000時間の連続光照射試験を行ったフォトクロミック膜を有するガラスの着色性保持率、すなわちフォトクロミック膜を有するガラスの、連続光照射試験前の着色性(非露光時と露光30秒後の光線透過率の差)に対する連続光照射試験後の着色性の比率を評価した。
【0061】
[例13](比較例)
式(1)において、p=0であり、表1に示す置換基を有する化合物(表1に記載されていない基は、水素原子である。)を用いて、1,3,3−トリメチル−9’−グリシジルオキシ−スピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン](化合物10)0.26g用いる以外は、例4に記載の方法と同様にして、フォトクロミック組成物を得た。得られたフォトクロミック組成物を用いて例4と同様の方法でフォトクロミック膜を有するガラスを作成し例7〜10と同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【発明の効果】
本発明のフォトクロミック色素は分子内に反応性に富むエポキシ基を有するため、マトリックスに組み込むことができ、耐熱性、耐光性に優れたフォトクロミック膜を有するガラスを得ることができる。
Claims (6)
- 側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物とエポキシ基と反応しうる官能基を有する化合物とを含む膜形成用組成物。
- 側鎖に少なくとも1個のエポキシ基を有するインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物、2以上のエポキシ基を有する化合物およびエポキシ基と反応しうる官能基を2以上有する化合物を含む膜形成用組成物。
- 2以上のエポキシ基を有する化合物がエポキシ樹脂の主剤であり、エポキシ基と反応しうる官能基を2以上有する化合物がエポキシ樹脂用硬化剤である請求項2に記載の膜形成用組成物。
- さらにエポキシ基を含むシランカップリング剤を含む請求項1、2または3に記載の膜形成用組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の膜形成用組成物から形成されたフォトクロミック性の膜が表面に形成された透明硬質基材からなる物品。
- ナフタレン骨格に少なくとも1つのエポキシ基含有有機基が結合しているインドリノスピロナフトオキサジン系フォトクロミック化合物からなるフォトクロミック性色素。
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|---|---|---|---|
| JP2002315957A JP2004149659A (ja) | 2002-10-30 | 2002-10-30 | フォトクロミック性色素、膜形成用組成物およびフォトクロミック性の膜を有する物品 |
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|---|---|
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Cited By (2)
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|---|---|---|---|---|
| JP2007118276A (ja) * | 2005-10-26 | 2007-05-17 | Kagawa Univ | 単層微粒子膜と累積微粒子膜およびそれらの製造方法。 |
| JP2025504159A (ja) * | 2022-04-11 | 2025-02-06 | ウエストレイク ユニバーシティ | マスク、リソグラフィ装置、マスクの製造方法、及びマスクに基づくリソグラフィ法 |
-
2002
- 2002-10-30 JP JP2002315957A patent/JP2004149659A/ja active Pending
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