JP2004182014A - ステアリングコラム装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、テレスコピック機構のクランプ/アンクランプ機構とチルティング機構のクランプ/アンクランプ機構とをそれぞれ操作するために、対をなす操作レバーを備えたステアリングコラム装置において、通常は、使用頻度の高いチルティング機構に対してのみ操作できるようにすることを課題とする。
【解決手段】操作端7Cが折り畳まれた状態では、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bの結合は解除され、操作端7Cが開かれた状態ではラッチ部材7Lが2つの操作レバーを結合状態にする。操作端7Cを折り畳んでこれを手前に引くと、チルト機構のみがアンクランプ状態(調整可能)になる。操作端7Cを開いた場合には、チルト機構とテレスコ機構について同時にアンクランプ状態になる。
【選択図】 図3
【解決手段】操作端7Cが折り畳まれた状態では、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bの結合は解除され、操作端7Cが開かれた状態ではラッチ部材7Lが2つの操作レバーを結合状態にする。操作端7Cを折り畳んでこれを手前に引くと、チルト機構のみがアンクランプ状態(調整可能)になる。操作端7Cを開いた場合には、チルト機構とテレスコ機構について同時にアンクランプ状態になる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はステアリングコラム装置、特にテレスコピック機構、及び、チルティング機構の両方を備えた車両のためのステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレスコピック機構及びチルティング機構は、それぞれ運転者の体型及び好みにあわせて最も運転しやすい位置にステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するための機構である。
【0003】
テレスコピック機構及びチルティング機構には、ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときに操作されるクランプ/アンクランプ機構が備えられており、この調整時には、一旦、それぞれのためのクランプ/アンクランプ機構が解除され、その状態で前後方向位置、及び、傾斜角度を調整したのち、再度クランプ状態にされる。
【0004】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整は、ステアリングホィールを手で操作することによって行うため、ステアリングホィールから手を離すことなくクランプ/アンクランプ機構を操作できる方が好ましい。英国特許出願公開2281375号には、ステアリングホィールに手をかけたまま操作できる単一の操作ハンドルを設けたステアリングコラム装置が開示されている。
【0005】
上記英国特許のステアリングコラム装置においては、操作ハンドルの動きはフレキシブルチューブ内を移動可能なケーブルを介して前後方向位置調整用のクランプ装置に伝達される。このケーブルとそのチューブはステアリングホィールの全調整範囲においてケーブルが自由に移動できる程度に曲率を充分小さくするため、大きなたわみが与えられている。このため、一部がステアリングコラム装置の外側に向かって飛び出すようになり見苦しいだけでなく、トラブルの原因ともなる。更に、ケーブルとそのチューブからなる伝動機構は信頼性に乏しいだけでなく、ケーブルが伸び縮みするため操作性が良好とはいえないものである。
【0006】
このような問題に対処するため、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるようにし、ステアリングコラム装置から外側に大きくはみ出す部分が無く、信頼性が高く、操作性が良好なクランプ/アンクランプ機構を備えたステアリングコラム装置が提案(特願2002−273484号)されている。
【0007】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整機能は運転時だけでなく、乗降のためにも使用される。これは、特に肥満あるいは妊婦運転者にとって、ステアリングホィールは腹部にぶつかり乗降の障害となるため、乗降時にこれを退避させることにより乗降を容易にするためである。ステアリングホィールをこのような目的のために退避させる場合には、チルティング(傾斜)機構によってステアリングホィールを車両前方に押しやれば十分である。ところが、上記英国特許あるいは上記日本出願のステアリングコラム装置においては、調整時にチルティング機構だけでなくテレスコピック機構のアンクランプがレバーの操作によって同時平行的に行われる構造となっている。そのため、レバーを操作するために大きい力が必要となるばかりでなく、アンクランプされたテレスコピック機構が動きやすいため動いたときには運転開始前に再度調整することが必要となる。
【0008】
【特許文献1】
英国特許出願公開2281375号明細書
【特許文献2】
米国特許第6237438号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、テレスコピック機構のクランプ/アンクランプ機構とチルティング機構のクランプ/アンクランプ機構とをそれぞれ操作するために、対をなす操作レバーを備えたステアリングコラム装置において、一方の操作レバーにのみ人が操作するための操作端を設け、この操作端を設けた操作レバーによって、通常は、使用頻度の高い方の(例えば、チルティング機構の)クランプ/アンクランプ機構のみを操作するようにし、使用頻度の低い方の(例えば、テレスコピック機構の)クランプ/アンクランプ機構を操作する必要が生じた場合には、この操作端に通常とは異なる操作を付加することにより両方のクランプ/アンクランプ機構を操作できるようにしたステアリングコラム装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、ステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、上記ホィールシャフトの傾斜を調整することによって上記ステアリングホィールの傾斜を調整するためのチルトクランプ機構、上記ホィールシャフトの前後方向位置を調整することによって上記ステアリングホィールの前後方向位置を調整するテレスコクランプ機構、及び、上記各クランプ機構を操作するためのチルト操作レバーとテレスコ操作レバーからなる操作レバー対を備えたステアリングコラム装置において、上記操作レバー対の一方の操作レバーには、この操作レバーと他方の操作レバーとの間の結合/非結合を選択的に行うことができるラッチ部材が設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0011】
第2番目の発明は、第1番目の発明のステアリングコラム装置において、上記ラッチ部材は、上記操作レバー対を結合させる方向に付勢されていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0012】
第3番目の発明は、第1番目又は第2番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作レバー対の各レバー中心軸は互いに共通の軸線上にあることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0013】
第4番目の発明は、第1番目から第3番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記ラッチ部材が設けられた操作レバーには、この上で可動な操作端が設けられており、この操作端の操作によって上記ラッチ部材による上記操作レバー対の結合/非結合が選択されることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0014】
第5番目の発明は、第1番目から第4番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記ラッチ部材は、一方の操作レバー上で揺動可能であり、他方のレバーに係合する係合ピンと、上記操作端の一部が当接する当接部を備えていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0015】
第6番目の発明は、第5番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、上記一方の操作レバーに折り畳み可能に設けられており、この操作端が折り畳まれた状態において上記当接部にこの操作端の一部が当接することによって、上記ラッチ部材による上記操作レバー対の非結合が選択されることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0016】
第7番目の発明は、第6番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、折り畳み側に向って付勢されていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0017】
第8番目の発明は、第5番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、上記一方の操作レバーに沿って伸張縮退可能に設けられており、この操作端の縮退端において上記当接部にこの操作端の一部が当接することによって、上記ラッチ部材の非結合が選択されることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0018】
第9番目の発明は、第8番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、縮退側に向って付勢されていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0019】
第10番目の発明は、第1番目から第9番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記他方の操作レバーは、人が操作するための操作端を備えていないことを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0020】
第11番目の発明は、第1番目から第10番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記操作レバー対の一方は、上記チルト操作レバーであり、他方は上記テレスコ操作レバーであることを特徴とするステアリングコラム装置である。
第12番目の発明は、第4番目から第11番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、上記チルト操作レバーに設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は、本発明実施例にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【0022】
* 全体概要
ステアリングコラム装置1は、固定コラム部材2、移動コラム部材3、コラムヘッド31、チルトヘッド4、ホィールシャフト5、コラムクランプ21、チルトヘッドクランプ41(図2参照)、操作レバー対7、及び、機械的伝動装置を備えている。
【0023】
固定コラム部材2には、車体取付部221、222が備えられており、この車体取付部221、222によって車体91に取り付けられる。上記固定コラム部材2には、移動コラム部材3が中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に支持されている。上記移動コラム部材3の一端側にはコラムヘッド31が備えられており、このコラムヘッド31にはチルトヘッド4がチルト中心軸43を中心としてチルト可能に支持されている。このチルトヘッド4にはホィールシャフト5が回転可能に支持されており、その一端にはステアリングホィール92が固定される。
【0024】
上記コラムヘッド31には、上記移動コラム部材3の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能にコラムクランプシャフト6が設けられている。固定コラム部材2には、コラムクランプ21が備えられており、このコラムクランプ21は、上記コラムクランプシャフト6に対して相対的に移動可能であり、このコラムクランプシャフト6の回転によって、上記移動コラム部材3をクランプ/アンクランプ状態にすることができる。
【0025】
また、上記コラムヘッド31には、後述するチルトヘッドクランプ41が設けられており、上記チルトヘッド4をコラムヘッド31に対してクランプ/アンクランプする。上記チルトヘッド4には、レバー中心軸72(図3〜図8参照)によって操作レバー対7が支持されている。以下に示す例では操作レバー対7はチルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bの対からなり、チルト操作レバー7Aがテレスコ操作レバー7Bの上側に配置されている。一方の側であるチルト操作レバー7Aには人が直接操作する折り畳み可能な操作端7Cが設けられている。これに対し、他方の側のテレスコ操作レバー7Bには、人が直接操作するような操作端7Cに相当するものは備えられていない。また、後述するように、チルト操作レバー7Aには、この操作レバー7Aと他方の操作レバー7Bとの間の結合/非結合を選択的に行うことができるラッチ部材7Lが設けられている。
【0026】
テレスコ操作レバー7Bの揺動は、機械的伝動装置を介して上記コラムクランプシャフト6の回転に変換され、この回転は上記コラムクランプ21に伝動され、移動コラム部材3のクランプ/アンクランプが行われる。また、チルト操作レバー7Aの揺動は上記チルトヘッドクランプ41に直接伝動され、チルトヘッド4のクランプ/アンクランプが行われる。上記ラッチ部材7Lによって、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとの間が結合されたときには、操作端7Cを手前に引くような操作によって2つのレバーが同時に揺動する。この揺動の結果、チルトヘッドクランプ41とコラムクランプ21とがともにアンクランプ状態になる。他方ラッチ部材7Lが結合していないときは、操作端7Cを手前に引くような操作はチルト操作レバー7Aのみを揺動させ、チルトヘッドクランプ41のみがアンクランプ状態になる。
【0027】
ホィールシャフト5の一端は、ステアリングコラム装置1内でユニバーサルジョイント931(図3)に接続され、更に、スプライン結合された一対の上中間軸941と下中間軸942(図3)、及び下側のユニバーサルジョイント932を介して、前車輪の方向を操作する機構へと接続されている。なお、図1中の点線は調整によってステアリングホィール92が取りうる位置と姿勢の幾例かを示している。
【0028】
* チルトヘッドクランプ
図2は、ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大側面図である。図3は、ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。この図3で、a、b、c、dは、それぞれ、操作端7Cが折り畳まれた状態(実線)、折り畳み状態のまま手前に引いた状態(b、点線)、操作端7Cを開いた状態(c、点線)、開いた状態で手前に引いた状態(d、点線)を示している。図4、図5は、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが折り畳まれた状態で操作されるときの説明図である。そして、図4は、図3のaに対応し、図5の実線部は同じくbに対応する。
【0029】
図6、図7は、図4、図5と同様の方向から見た図であって、操作端7Cが開かれた状態で操作されるときの説明図である。そして、図6は、図3のcに対応し、図7の実線部は同じくdに対応する。図8は、図2におけるA−A断面図、図9は図2におけるB−B断面図である。
【0030】
チルトヘッドクランプ41は次のような構成を備える。図2に示されるように移動コラム部材3には、チルト中心軸43にその中心を持つセグメントギヤ33がボルト34によって固定されており、セグメントギヤ33との間に空間を置いて背当部材341が設けられている。一方、上記空間内には、チルトヘッド4に軸441を中心として回動可能に支持されたギヤアーム44のギヤ部分442と、チルト操作レバー7Aに設けられた突出部71が入り込んでいる。
【0031】
上記ギヤアーム44は2本の脚からなるL字形状(図2)をなしており、一方の脚には上記ギヤ部分442が形成されている。上記ギヤアーム44の他方の脚443と上記突出部71の背部との間には付勢バネ711が介在し、突出部71の背部と脚443との間隔を押し広げるようなバイアスを与えている。
【0032】
このバイアスによって、突出部71が左方向(図2)に押され、ギヤ部分442を背後から押すため、ギヤ部分442がセグメントギヤ33に向けて押し付けられ、それぞれの歯が相互に噛合する。なお、ギヤ部分442がセグメントギヤ33を押すとき、突出部71にかかる反力は背当部材341が受ける(図2、図9)。これにより、チルト操作レバー7Aが図4、図6の位置にあるときチルトヘッド4が固定される。チルトヘッド4は、ギヤ部分442とセグメントギヤ33が噛合可能な角度位置において段階的な位置で固定される。
【0033】
チルト操作レバー7Aの突出部71が図2中で右方向に動くとき、付勢バネ711の押圧力によってギヤアーム44は図2において反時計回りに回転するため、これらの歯の噛合が外れる。したがって、チルト位置の調整時にチルト操作レバー7Aが図5、図7のように揺動すると、突出部71が右方向に動き、チルトヘッドクランプ41がアンクランプ状態に入る。
【0034】
* ユニバーサルジョイント及び中間軸
図3に示されるように、上中間軸941の端部とホィールシャフト5の端部との間には、上側のユニバーサルジョイント931が構成されている。ユニバーサルジョイント931の中心はチルト中心軸43の軸線上にあるため、チルトヘッド4がチルトしてもその影響を受けないようになっている。
【0035】
下中間軸942は固定コラム部材2に回転自在に支持されており、下中間軸942と上中間軸941がスプライン結合しているため、移動コラム部材3は図3の左右方向に移動可能になっている。スプライン結合によって移動位置に関わらず上中間軸941の回転は下中間軸942に伝達することが可能であり、ステアリングホィール92の前後方向位置を調整しても、ステアリングホィール92の回転を下中間軸942に伝達することができる。
【0036】
* 固定コラム部材と移動コラム部材
図2に示すように、移動コラム部材3の円筒部には、軸方向に沿った長穴32が形成されており、この長穴32内に固定コラム部材2に設けられたストッパ部材22が係合している。移動コラム部材3は、長穴32とストッパ部材22によって、固定コラム部材2からの抜け出しとこれに対する回転が防止されているため、固定コラム部材2内を長穴32の範囲で軸方向に移動可能となっている。
【0037】
固定コラム部材2は円筒状部231を備えており、円筒状部231の内部の2箇所にはリング状の摺動案内部232が設けられている(図3)。移動コラム部材3の円筒部外面はこの摺動案内部232によって移動コラム部材3の軸方向にがたつき無く移動可能になっている。コラムヘッド31の端面に設けられた緩衝ストッパ311は、調整時に移動コラム部材3が固定コラム部材2の端面に衝突したとき、金属同士の衝撃的な衝突を防止するために設けられた、ゴム、合成樹脂等でできた緩衝材である。
【0038】
* コラムクランプ
コラムクランプ21の構成を図10、図11、及び、図12を用いて説明する。図10は、図2におけるC−C断面図、図11、図12は図10における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。コラムクランプ21は、固定コラム部材2に設けられており、第1ウェッジ211、第2ウェッジ212、クランプバー213、及び、反力部材2141、2142を備えている。固定コラム部材2には横方向からウェッジ穴215があけられており、このウェッジ穴215の一部は固定コラム部材2の空洞に開口している。第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は、それぞれが傾斜面2111、2112を備えており、この傾斜面2111、2112の側を向かい合わせるようにウェッジ穴215内に納められている。2つのウェッジの傾斜面2111、2112は移動コラム部材3の円筒部外周と向き合うことになる。
【0039】
第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212には、それぞれクランプバー穴2113、2114があけられており、この穴にクランプバー213が貫通している。クランプバー213の両端にはクランプバー穴2113、2114よりも外径の大きな反力部材2141、2142が固定されている。クランプバー213には一方の反力部材2142に接するようにコラムクランプシャフト穴216があけられており、この穴にコラムクランプシャフト6の実質的に楕円をなす非円形形状断面部が貫通している。
【0040】
コラムクランプシャフト6の一端には揺動アーム61が固定されている。コラムクランプシャフト6の非円形形状断面部は、アンクランプ時には図11のように楕円長径方向が大きく傾斜し、クランプ時には図12に示すように長径方向がクランプバー213の軸方向にほぼ近い方向を向く。この構成により、図11の状態から揺動アーム61に揺動回転を与えると、コラムクランプシャフト6が回転し、図12の状態になる。このとき、楕円長径部の一方の近傍が反力部材2142が左方向に押されることにより、クランプバー213が左方に引っ張られ、更に反力部材2141が第1ウェッジを左方に押すことになる。一方、第2ウェッジは楕円長径部の他方の近傍によって右方に押される。この結果2つのウェッジが相互に接近するため、それぞれの傾斜面2111、2112が移動コラム部材3の円筒部外周を押圧することになり、移動コラム部材3が固定コラム部材2に対してクランプされる。なお、第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は一体となってわずかながら左右に移動可能なため、一方のウェッジのみが移動コラム部材3を強く押圧するようなアンバランスは生じない。
【0041】
揺動アーム61を反対方向に揺動回転すると、上とは逆の動きによって第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212が離反し、移動コラム部材3のクランプが解除される。
【0042】
* 操作レバー対の動き
次に操作レバー対7の動きとこれに連動する各部材について説明する。操作レバー対7はステアリングコラム装置1の下側に設けられており、図3には、この操作レバー対7(チルト操作レバー7A、テレスコ操作レバー7B)、この揺動の共通の中心となるレバー中心軸72、テレスコ操作レバー7Bに固定されたプッシャープレート73、及びプッシャーロッド74が部分的に見えている。図4、図5、図6、図7(これらの図は、図3と異なり下から見たときの図である点に注意)には、操作端7Cとラッチ部材7Lとの関係、この関係によって操作端7Cの操作が及ぼすチルト操作レバー7A、テレスコ操作レバー7Bの動きの違いについて説明されている。
【0043】
図13に示されるように、鍔742を備えているプッシャーロッド74は、コラムヘッド31上にチルト中心軸43と平行な方向に摺動自在に支持されている。プッシャーロッド74には鍔742を左方向に付勢する付勢バネ741を貫通しており、その端部にはその直角方向に長い小さな長穴743が設けられている。プッシャーロッド74の端部は、この長穴743を介して揺動アーム61の一端と軸係合している。長穴743はプッシャーロッド74が軸方向に移動したときに揺動アーム61との関係位置がずれる量を吸収するためのものである。
【0044】
付勢バネ741がプッシャーロッド74を左方向に付勢している。その右側先端で軸係合する揺動アーム61は時計方向の回転付勢力が付与されている。揺動アーム61に与えられた揺動付勢力はコラムクランプシャフト6をクランプ位置に維持する。このときの揺動アーム61の位置がそれぞれ実線で示されている。
【0045】
* プッシャープレート
チルトヘッド4は、コラムヘッド31上をチルトするため、チルトの量(角度)に応じて、プッシャープレート73に対するプッシャーロッド74の位置関係が変化する。図14には、チルトヘッド4をチルトさせた2つの位置を点線と実線で示す。プッシャーロッド74はコラムヘッドに支持されているためチルトによって位置を変えないが、プッシャープレート73はチルト中心軸43から離れているため、チルトヘッド4をチルトさせるときプッシャーロッド74との相対位置が変化する。このため、チルト量に関わらずプッシャーロッド74がプッシャープレート73に当接可能なようにプッシャープレート73にはホッケーのスティックのように曲がった広い当接面形状を持たせている。プッシャーロッド74は付勢バネ741によって図13左方向に付勢されてプッシャープレート73に当接している。クランプに関しては、チルトヘッド4は付勢バネ711の付勢力によってクランプされ、移動コラム部材3は付勢バネ741によってクランプされることになる。
【0046】
* 操作端とラッチ部材
操作端7Cは、図3等に示されるようにチルト操作レバー7Aに支持されており、ヒンジ軸7Hを中心として折り畳み可能である。ヒンジ軸7Hには、操作端7Cを手で操作したとき、クリック感が出るようにクリックヒンジ機構が内蔵されている。
【0047】
ラッチ部材7Lは、チルト操作レバー7Aに揺動可能に支持されており、ラッチピン7Pを備えている。チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとはこの部分で接近してほぼ平行に並んでいる。このため図3の点線で示されるようにラッチ部材7Lの揺動位置によっては、ラッチピン7Pがテレスコ操作レバー7Bの端部と係合する。この係合によってチルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとは一体化される。
【0048】
操作端7Cが折り畳まれるとラッチ部材7Lの一部と係合する。この係合によって、ラッチ部材7Lが回動されラッチピン7Pとテレスコ操作レバー7Bとの係合が外れる。このため、操作端7Cを折り畳むと、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとの結合が解除(非結合)される。反対に、操作端7Cを開くとチルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとが結合状態になる。通常は、操作端7Cが折り畳まれた状態である。
【0049】
* ステアリングホィールの調整操作
以下、主として図3から図7までを用いて、ステアリングホィール92の前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときの操作と各部材の動作について説明する。運転時(ステアリングホィール92の前後方向位置、傾斜角度を調整しないとき)、図3のa、図4に示すように、操作端7Cは折り畳まれており、コラムクランプ21、チルトヘッドクランプ41はともにクランプ状態にある。
【0050】
** 傾斜角度の調整
ステアリングホィール92の角度を調整するとき、折り畳まれた操作端7Cを折り畳んだまま手前に引く(図3のb、図5)。操作端7Cが折り畳まれていることによって、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとの結合は断たれているため、チルト操作レバー7Aのみが図5に示されるように揺動する。
【0051】
チルト操作レバー7Aの揺動によって、突出部71が図2における右側に移動しギヤアーム44が反時計方向に回動する。ギヤアーム44の回動によって、セグメントギヤ33の歯とギヤアーム44のギヤ部分の歯との噛合が外れ、チルトヘッド4はチルト調整可能になる。上述のように、移動コラム部材3はクランプ状態であるため、チルティング機構のみの調整を行うことができる。単に乗降のためだけの場合はステアリングホィールを上方に押して(あるいはバネ45の付勢力によって)退避させて容易に降車することができ、更に操作端7Cはチルト操作レバー7Aを動かすだけのため小さい力で操作できる。頻繁に行われる乗降のための傾斜角度の調整が、最も簡単に操作できるようになっている。
【0052】
** 前後方向位置の調整
図6は、ステアリングホィール92の前後方向位置(ステアリングコラムの長さ)を調整するとき、それまで折り畳まれていた操作端7Cを図6点線のように開く。内蔵されているクリックヒンジ機構により一旦開いた操作端7Cは開いた状態を保つ。操作端7Cを開いたことにより、ラッチピン7Pがテレスコ操作レバー7Bの端部と係合する。この係合によってチルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとは一体化つまり、結合状態になる。
【0053】
このため、操作端7Cを図7に示すように手前(右)に引くと、チルト操作レバー7Aは上述の傾斜角度の調整のときと同様の動きをするのに加え、テレスコ操作レバー7Bが揺動する。この揺動によりプッシャープレート73が図7の実線の位置まで揺動し、付勢バネ741にうち勝ってプッシャーロッド74をこの図の上方に向けて押す。
【0054】
プッシャーロッド74のこの動きは、図13における右方向の動きであり、揺動アーム61の揺動を、したがって、コラムクランプシャフト6の反時計回り回動を起こす。コラムクランプシャフト6が回動すると、それまで図12に示すように長径部がほぼ水平の状態であったコラムクランプシャフト6は図11に示すように傾斜した状態になる。これによって図10のように接近していた第1ウェッジ211と第2ウェッジ212は、互いに離間するため移動コラム部材のクランプが解除される。この状態でステアリングホィール92の前後方向位置を調整する。したがって、操作端7Cを開いた状態のときこれを引くとチルト機構とテレスコピック機構の両方が調整可能になる。
【0055】
このように、操作レバー対7の一方の操作レバーには、この操作レバーと他方の操作レバーとの間の結合/非結合を選択的に行うことができるラッチ部材7Lが設けられており、ラッチ部材7Lが設けられた操作レバーには、この上で可動な操作端7Cの操作によってラッチ部材7Lによる操作レバー対7の結合/非結合を選択することができる。特にチルト操作レバー7Aにラッチ部材7Lを設けたので、頻繁に生じる乗降時のステアリングホィールの退避をチルトによって行うことができる。
【0056】
なお、チルトヘッドクランプ41が解除されたとき、チルトヘッド4には、その重量によりあたかも人が首をうなだれるときのような下向きの力が働く。このため、カウンターバランス用の強めのバネ45(図4、図5)が設けられており、このような力を相殺し、あるいは、さらにステアリングホィール92を最も上側の傾斜位置に維持するような力をチルトヘッド4に与えるようにしてある。これにより、乗降が容易にされている。
【0057】
操作端7Cから手を離すと、付勢バネ711及び付勢バネ741の力によって、チルト操作レバー7A及びテレスコ操作レバー7Bはもとの位置に戻り、それぞれがクランプ状態になる。また、開いていた場合には操作端7Cを折り畳み位置に返す。
【0058】
通常では折り畳まれている操作端7Cは、ステアリングホィールから充分に離れているため、ステアリングホィール92を操作するときに誤って手が触れてクランプが解除されることがない。
【0059】
図15及び図16は、操作端7Cを折り畳む構造のみを変更し、操作端7Cを、チルト操作レバー7Aに沿って伸張縮退可能にした例の説明図である。この場合の操作端7Cには、スプリング7Sが内蔵されており、このスプリング7Sによって縮退側に向って付勢されている。縮退端においてはラッチ部材7Lにこの操作端の一部が当接することによって、これを回動させ、図15に示されるようにラッチ部材7Lのラッチピン7Pとテレスコ操作レバー7Bとの係合が断たれた状態になっている。したがって、この状態で操作端7Cを揺動させる(手前に引く)と、チルト機構のみがアンクランプ状態にされ、ステアリングホィールの傾斜角の調整(はね上げ)が行われる。
【0060】
操作端7Cをスプリング7Sに逆らって伸張させたとき、ラッチ部材7Lのラッチピン7Pはテレスコ操作レバー7Bに係合するため、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bは結合状態となり、操作レバー対7が一体的になる。この状態つまり、操作端7Cを伸張させたままこれを手前に引く(図16)と、2つのクランプはともに解除され、ステアリングホィール92の前後方向位置と傾斜角度を同時に調整することができる。
【0061】
操作端7Cから手を離すと、スプリング7Sによって操作端7Cは縮退するとともに、付勢バネ711及び付勢バネ741の力によって、チルト操作レバー7A及びテレスコ操作レバー7Bはもとの位置に戻り、それぞれがクランプ状態になる。通常では縮退しているため、操作端7Cがステアリングホィールから充分に離れることになるため、ステアリングホィール92の運転操作時に誤って手が触れてクランプが解除されるようなことはない。
【0062】
以上の例において、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとの関係を逆、すなわち、操作端7C及びラッチ部材7Lをテレスコ操作レバー7B側に設けるようにすることも可能である。また、ラッチ部材7Lは、不図示のスプリングによってラッチピン7Pとテレスコ操作レバー7Bとが係合する方向に付勢させる構造、あるいは自然に回動しない程度の適宜の摩擦力をラッチ部材7Lとチルト操作レバー7A間に与える構造等を適宜採用し、車体からの振動によるラッチ部材の意図しない回動や振動音の発生を防止することができる。
【0063】
以上の実施例のステアリングコラム装置によれば、テレスコピック機構のクランプ/アンクランプ機構とチルティング機構のクランプ/アンクランプ機構とをそれぞれ操作するために、対をなす操作レバーが備えられており、一方の操作レバーにのみ人が操作するための操作端を設け、この操作端を設けた操作レバーによって、通常は、チルティング機構のクランプ/アンクランプ機構のみを操作するようにしている。このようにすることにより、使用頻度が高いチルティング機構のクランプ/アンクランプについての操作を優先的に行わせ、使用頻度の低いテレスコピック機構について特に操作端に異なる操作を加えなければ変更が生じないようにしているため、必要最低限の操作、調整をすれば済むようになっている。また、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができ、乗降毎に頻繁に行われる操作端の操作は、一方をアンクランプするだけであるため小さな力で操作できる。
【0064】
【発明の効果】
本発明のステアリングコラム装置によれば、テレスコピック機構のクランプ/アンクランプ機構とチルティング機構のクランプ/アンクランプ機構とをそれぞれ操作するために、対をなす操作レバーが備えられており、一方の操作レバーにのみ人が操作するための操作端を設け、この操作端を設けた操作レバーによって、通常は、使用頻度が高い方のクランプ/アンクランプ機構のみを優先的に操作するようにしており、使用頻度の低いテレスコピック機構について特に操作端に異なる操作を加えなければ変更が生じないようにしているため、通常の乗降時には必要最低限の操作、調整をすれば済むという効果を奏する。また、この操作には大きな力が必要とされないという効果を奏する。更に、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【図2】ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。
【図3】ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。
【図4】ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが折り畳まれた状態で操作されるときの説明図である。
【図5】ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが折り畳まれた状態で操作されるときの説明図である。
【図6】ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが開かれた状態で操作されるときの説明図である。
【図7】ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが開かれた状態で操作されるときの説明図である。
【図8】図2におけるA−A断面図である。
【図9】図2におけるB−B断面図である。
【図10】図2におけるC−C断面図である。
【図11】図10における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。
【図12】図10における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。
【図13】図2におけるD−D断面図であって、プッシャープレート73、プッシャーロッド74、揺動アーム61の関係を示す説明図である。
【図14】チルトヘッド4をチルトさせたときの2つの位置を点線と実線で示す説明図である。
【図15】操作端7Cを、チルト操作レバー7Aに沿って伸張縮退可能にした例の説明図である。
【図16】操作端7Cを、チルト操作レバー7Aに沿って伸張縮退可能にした例の説明図である。
【符号の説明】
1 ステアリングコラム装置
2 固定コラム部材
21 コラムクランプ
211 第1ウェッジ
2111、2112 傾斜面
2113、2114 クランプバー穴
212 第2ウェッジ
213 クランプバー
2141、2142 反力部材
215 ウェッジ穴
216 コラムクランプシャフト穴
22 ストッパ部材
221、222 車体取付部
231 円筒状部
232 摺動案内部
3 移動コラム部材
31 コラムヘッド
311 緩衝ストッパ
32 長穴
33 セグメントギヤ
34 ボルト
341 背当部材
4 チルトヘッド
41 チルトヘッドクランプ
43 チルト中心軸
44 ギヤアーム
441 軸
442 ギヤ部分
443 脚
45 バネ
5 ホィールシャフト
6 コラムクランプシャフト
61 揺動アーム
7 操作レバー対
7A チルト操作レバー
7B テレスコ操作レバー
7C 操作端
7H ヒンジ軸
7L ラッチ部材
7P ラッチピン
7S スプリング
71 突出部
711 付勢バネ
72 レバー中心軸
73 プッシャープレート
74 プッシャーロッド
741 付勢バネ
742 鍔
743 長穴
91 車体
92 ステアリングホィール
931、932 ユニバーサルジョイント
941 上中間軸
942 下中間軸
【発明の属する技術分野】
本発明はステアリングコラム装置、特にテレスコピック機構、及び、チルティング機構の両方を備えた車両のためのステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレスコピック機構及びチルティング機構は、それぞれ運転者の体型及び好みにあわせて最も運転しやすい位置にステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するための機構である。
【0003】
テレスコピック機構及びチルティング機構には、ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときに操作されるクランプ/アンクランプ機構が備えられており、この調整時には、一旦、それぞれのためのクランプ/アンクランプ機構が解除され、その状態で前後方向位置、及び、傾斜角度を調整したのち、再度クランプ状態にされる。
【0004】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整は、ステアリングホィールを手で操作することによって行うため、ステアリングホィールから手を離すことなくクランプ/アンクランプ機構を操作できる方が好ましい。英国特許出願公開2281375号には、ステアリングホィールに手をかけたまま操作できる単一の操作ハンドルを設けたステアリングコラム装置が開示されている。
【0005】
上記英国特許のステアリングコラム装置においては、操作ハンドルの動きはフレキシブルチューブ内を移動可能なケーブルを介して前後方向位置調整用のクランプ装置に伝達される。このケーブルとそのチューブはステアリングホィールの全調整範囲においてケーブルが自由に移動できる程度に曲率を充分小さくするため、大きなたわみが与えられている。このため、一部がステアリングコラム装置の外側に向かって飛び出すようになり見苦しいだけでなく、トラブルの原因ともなる。更に、ケーブルとそのチューブからなる伝動機構は信頼性に乏しいだけでなく、ケーブルが伸び縮みするため操作性が良好とはいえないものである。
【0006】
このような問題に対処するため、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるようにし、ステアリングコラム装置から外側に大きくはみ出す部分が無く、信頼性が高く、操作性が良好なクランプ/アンクランプ機構を備えたステアリングコラム装置が提案(特願2002−273484号)されている。
【0007】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整機能は運転時だけでなく、乗降のためにも使用される。これは、特に肥満あるいは妊婦運転者にとって、ステアリングホィールは腹部にぶつかり乗降の障害となるため、乗降時にこれを退避させることにより乗降を容易にするためである。ステアリングホィールをこのような目的のために退避させる場合には、チルティング(傾斜)機構によってステアリングホィールを車両前方に押しやれば十分である。ところが、上記英国特許あるいは上記日本出願のステアリングコラム装置においては、調整時にチルティング機構だけでなくテレスコピック機構のアンクランプがレバーの操作によって同時平行的に行われる構造となっている。そのため、レバーを操作するために大きい力が必要となるばかりでなく、アンクランプされたテレスコピック機構が動きやすいため動いたときには運転開始前に再度調整することが必要となる。
【0008】
【特許文献1】
英国特許出願公開2281375号明細書
【特許文献2】
米国特許第6237438号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、テレスコピック機構のクランプ/アンクランプ機構とチルティング機構のクランプ/アンクランプ機構とをそれぞれ操作するために、対をなす操作レバーを備えたステアリングコラム装置において、一方の操作レバーにのみ人が操作するための操作端を設け、この操作端を設けた操作レバーによって、通常は、使用頻度の高い方の(例えば、チルティング機構の)クランプ/アンクランプ機構のみを操作するようにし、使用頻度の低い方の(例えば、テレスコピック機構の)クランプ/アンクランプ機構を操作する必要が生じた場合には、この操作端に通常とは異なる操作を付加することにより両方のクランプ/アンクランプ機構を操作できるようにしたステアリングコラム装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、ステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、上記ホィールシャフトの傾斜を調整することによって上記ステアリングホィールの傾斜を調整するためのチルトクランプ機構、上記ホィールシャフトの前後方向位置を調整することによって上記ステアリングホィールの前後方向位置を調整するテレスコクランプ機構、及び、上記各クランプ機構を操作するためのチルト操作レバーとテレスコ操作レバーからなる操作レバー対を備えたステアリングコラム装置において、上記操作レバー対の一方の操作レバーには、この操作レバーと他方の操作レバーとの間の結合/非結合を選択的に行うことができるラッチ部材が設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0011】
第2番目の発明は、第1番目の発明のステアリングコラム装置において、上記ラッチ部材は、上記操作レバー対を結合させる方向に付勢されていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0012】
第3番目の発明は、第1番目又は第2番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作レバー対の各レバー中心軸は互いに共通の軸線上にあることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0013】
第4番目の発明は、第1番目から第3番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記ラッチ部材が設けられた操作レバーには、この上で可動な操作端が設けられており、この操作端の操作によって上記ラッチ部材による上記操作レバー対の結合/非結合が選択されることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0014】
第5番目の発明は、第1番目から第4番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記ラッチ部材は、一方の操作レバー上で揺動可能であり、他方のレバーに係合する係合ピンと、上記操作端の一部が当接する当接部を備えていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0015】
第6番目の発明は、第5番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、上記一方の操作レバーに折り畳み可能に設けられており、この操作端が折り畳まれた状態において上記当接部にこの操作端の一部が当接することによって、上記ラッチ部材による上記操作レバー対の非結合が選択されることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0016】
第7番目の発明は、第6番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、折り畳み側に向って付勢されていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0017】
第8番目の発明は、第5番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、上記一方の操作レバーに沿って伸張縮退可能に設けられており、この操作端の縮退端において上記当接部にこの操作端の一部が当接することによって、上記ラッチ部材の非結合が選択されることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0018】
第9番目の発明は、第8番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、縮退側に向って付勢されていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0019】
第10番目の発明は、第1番目から第9番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記他方の操作レバーは、人が操作するための操作端を備えていないことを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0020】
第11番目の発明は、第1番目から第10番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記操作レバー対の一方は、上記チルト操作レバーであり、他方は上記テレスコ操作レバーであることを特徴とするステアリングコラム装置である。
第12番目の発明は、第4番目から第11番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記操作端は、上記チルト操作レバーに設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は、本発明実施例にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【0022】
* 全体概要
ステアリングコラム装置1は、固定コラム部材2、移動コラム部材3、コラムヘッド31、チルトヘッド4、ホィールシャフト5、コラムクランプ21、チルトヘッドクランプ41(図2参照)、操作レバー対7、及び、機械的伝動装置を備えている。
【0023】
固定コラム部材2には、車体取付部221、222が備えられており、この車体取付部221、222によって車体91に取り付けられる。上記固定コラム部材2には、移動コラム部材3が中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に支持されている。上記移動コラム部材3の一端側にはコラムヘッド31が備えられており、このコラムヘッド31にはチルトヘッド4がチルト中心軸43を中心としてチルト可能に支持されている。このチルトヘッド4にはホィールシャフト5が回転可能に支持されており、その一端にはステアリングホィール92が固定される。
【0024】
上記コラムヘッド31には、上記移動コラム部材3の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能にコラムクランプシャフト6が設けられている。固定コラム部材2には、コラムクランプ21が備えられており、このコラムクランプ21は、上記コラムクランプシャフト6に対して相対的に移動可能であり、このコラムクランプシャフト6の回転によって、上記移動コラム部材3をクランプ/アンクランプ状態にすることができる。
【0025】
また、上記コラムヘッド31には、後述するチルトヘッドクランプ41が設けられており、上記チルトヘッド4をコラムヘッド31に対してクランプ/アンクランプする。上記チルトヘッド4には、レバー中心軸72(図3〜図8参照)によって操作レバー対7が支持されている。以下に示す例では操作レバー対7はチルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bの対からなり、チルト操作レバー7Aがテレスコ操作レバー7Bの上側に配置されている。一方の側であるチルト操作レバー7Aには人が直接操作する折り畳み可能な操作端7Cが設けられている。これに対し、他方の側のテレスコ操作レバー7Bには、人が直接操作するような操作端7Cに相当するものは備えられていない。また、後述するように、チルト操作レバー7Aには、この操作レバー7Aと他方の操作レバー7Bとの間の結合/非結合を選択的に行うことができるラッチ部材7Lが設けられている。
【0026】
テレスコ操作レバー7Bの揺動は、機械的伝動装置を介して上記コラムクランプシャフト6の回転に変換され、この回転は上記コラムクランプ21に伝動され、移動コラム部材3のクランプ/アンクランプが行われる。また、チルト操作レバー7Aの揺動は上記チルトヘッドクランプ41に直接伝動され、チルトヘッド4のクランプ/アンクランプが行われる。上記ラッチ部材7Lによって、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとの間が結合されたときには、操作端7Cを手前に引くような操作によって2つのレバーが同時に揺動する。この揺動の結果、チルトヘッドクランプ41とコラムクランプ21とがともにアンクランプ状態になる。他方ラッチ部材7Lが結合していないときは、操作端7Cを手前に引くような操作はチルト操作レバー7Aのみを揺動させ、チルトヘッドクランプ41のみがアンクランプ状態になる。
【0027】
ホィールシャフト5の一端は、ステアリングコラム装置1内でユニバーサルジョイント931(図3)に接続され、更に、スプライン結合された一対の上中間軸941と下中間軸942(図3)、及び下側のユニバーサルジョイント932を介して、前車輪の方向を操作する機構へと接続されている。なお、図1中の点線は調整によってステアリングホィール92が取りうる位置と姿勢の幾例かを示している。
【0028】
* チルトヘッドクランプ
図2は、ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大側面図である。図3は、ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。この図3で、a、b、c、dは、それぞれ、操作端7Cが折り畳まれた状態(実線)、折り畳み状態のまま手前に引いた状態(b、点線)、操作端7Cを開いた状態(c、点線)、開いた状態で手前に引いた状態(d、点線)を示している。図4、図5は、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが折り畳まれた状態で操作されるときの説明図である。そして、図4は、図3のaに対応し、図5の実線部は同じくbに対応する。
【0029】
図6、図7は、図4、図5と同様の方向から見た図であって、操作端7Cが開かれた状態で操作されるときの説明図である。そして、図6は、図3のcに対応し、図7の実線部は同じくdに対応する。図8は、図2におけるA−A断面図、図9は図2におけるB−B断面図である。
【0030】
チルトヘッドクランプ41は次のような構成を備える。図2に示されるように移動コラム部材3には、チルト中心軸43にその中心を持つセグメントギヤ33がボルト34によって固定されており、セグメントギヤ33との間に空間を置いて背当部材341が設けられている。一方、上記空間内には、チルトヘッド4に軸441を中心として回動可能に支持されたギヤアーム44のギヤ部分442と、チルト操作レバー7Aに設けられた突出部71が入り込んでいる。
【0031】
上記ギヤアーム44は2本の脚からなるL字形状(図2)をなしており、一方の脚には上記ギヤ部分442が形成されている。上記ギヤアーム44の他方の脚443と上記突出部71の背部との間には付勢バネ711が介在し、突出部71の背部と脚443との間隔を押し広げるようなバイアスを与えている。
【0032】
このバイアスによって、突出部71が左方向(図2)に押され、ギヤ部分442を背後から押すため、ギヤ部分442がセグメントギヤ33に向けて押し付けられ、それぞれの歯が相互に噛合する。なお、ギヤ部分442がセグメントギヤ33を押すとき、突出部71にかかる反力は背当部材341が受ける(図2、図9)。これにより、チルト操作レバー7Aが図4、図6の位置にあるときチルトヘッド4が固定される。チルトヘッド4は、ギヤ部分442とセグメントギヤ33が噛合可能な角度位置において段階的な位置で固定される。
【0033】
チルト操作レバー7Aの突出部71が図2中で右方向に動くとき、付勢バネ711の押圧力によってギヤアーム44は図2において反時計回りに回転するため、これらの歯の噛合が外れる。したがって、チルト位置の調整時にチルト操作レバー7Aが図5、図7のように揺動すると、突出部71が右方向に動き、チルトヘッドクランプ41がアンクランプ状態に入る。
【0034】
* ユニバーサルジョイント及び中間軸
図3に示されるように、上中間軸941の端部とホィールシャフト5の端部との間には、上側のユニバーサルジョイント931が構成されている。ユニバーサルジョイント931の中心はチルト中心軸43の軸線上にあるため、チルトヘッド4がチルトしてもその影響を受けないようになっている。
【0035】
下中間軸942は固定コラム部材2に回転自在に支持されており、下中間軸942と上中間軸941がスプライン結合しているため、移動コラム部材3は図3の左右方向に移動可能になっている。スプライン結合によって移動位置に関わらず上中間軸941の回転は下中間軸942に伝達することが可能であり、ステアリングホィール92の前後方向位置を調整しても、ステアリングホィール92の回転を下中間軸942に伝達することができる。
【0036】
* 固定コラム部材と移動コラム部材
図2に示すように、移動コラム部材3の円筒部には、軸方向に沿った長穴32が形成されており、この長穴32内に固定コラム部材2に設けられたストッパ部材22が係合している。移動コラム部材3は、長穴32とストッパ部材22によって、固定コラム部材2からの抜け出しとこれに対する回転が防止されているため、固定コラム部材2内を長穴32の範囲で軸方向に移動可能となっている。
【0037】
固定コラム部材2は円筒状部231を備えており、円筒状部231の内部の2箇所にはリング状の摺動案内部232が設けられている(図3)。移動コラム部材3の円筒部外面はこの摺動案内部232によって移動コラム部材3の軸方向にがたつき無く移動可能になっている。コラムヘッド31の端面に設けられた緩衝ストッパ311は、調整時に移動コラム部材3が固定コラム部材2の端面に衝突したとき、金属同士の衝撃的な衝突を防止するために設けられた、ゴム、合成樹脂等でできた緩衝材である。
【0038】
* コラムクランプ
コラムクランプ21の構成を図10、図11、及び、図12を用いて説明する。図10は、図2におけるC−C断面図、図11、図12は図10における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。コラムクランプ21は、固定コラム部材2に設けられており、第1ウェッジ211、第2ウェッジ212、クランプバー213、及び、反力部材2141、2142を備えている。固定コラム部材2には横方向からウェッジ穴215があけられており、このウェッジ穴215の一部は固定コラム部材2の空洞に開口している。第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は、それぞれが傾斜面2111、2112を備えており、この傾斜面2111、2112の側を向かい合わせるようにウェッジ穴215内に納められている。2つのウェッジの傾斜面2111、2112は移動コラム部材3の円筒部外周と向き合うことになる。
【0039】
第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212には、それぞれクランプバー穴2113、2114があけられており、この穴にクランプバー213が貫通している。クランプバー213の両端にはクランプバー穴2113、2114よりも外径の大きな反力部材2141、2142が固定されている。クランプバー213には一方の反力部材2142に接するようにコラムクランプシャフト穴216があけられており、この穴にコラムクランプシャフト6の実質的に楕円をなす非円形形状断面部が貫通している。
【0040】
コラムクランプシャフト6の一端には揺動アーム61が固定されている。コラムクランプシャフト6の非円形形状断面部は、アンクランプ時には図11のように楕円長径方向が大きく傾斜し、クランプ時には図12に示すように長径方向がクランプバー213の軸方向にほぼ近い方向を向く。この構成により、図11の状態から揺動アーム61に揺動回転を与えると、コラムクランプシャフト6が回転し、図12の状態になる。このとき、楕円長径部の一方の近傍が反力部材2142が左方向に押されることにより、クランプバー213が左方に引っ張られ、更に反力部材2141が第1ウェッジを左方に押すことになる。一方、第2ウェッジは楕円長径部の他方の近傍によって右方に押される。この結果2つのウェッジが相互に接近するため、それぞれの傾斜面2111、2112が移動コラム部材3の円筒部外周を押圧することになり、移動コラム部材3が固定コラム部材2に対してクランプされる。なお、第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は一体となってわずかながら左右に移動可能なため、一方のウェッジのみが移動コラム部材3を強く押圧するようなアンバランスは生じない。
【0041】
揺動アーム61を反対方向に揺動回転すると、上とは逆の動きによって第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212が離反し、移動コラム部材3のクランプが解除される。
【0042】
* 操作レバー対の動き
次に操作レバー対7の動きとこれに連動する各部材について説明する。操作レバー対7はステアリングコラム装置1の下側に設けられており、図3には、この操作レバー対7(チルト操作レバー7A、テレスコ操作レバー7B)、この揺動の共通の中心となるレバー中心軸72、テレスコ操作レバー7Bに固定されたプッシャープレート73、及びプッシャーロッド74が部分的に見えている。図4、図5、図6、図7(これらの図は、図3と異なり下から見たときの図である点に注意)には、操作端7Cとラッチ部材7Lとの関係、この関係によって操作端7Cの操作が及ぼすチルト操作レバー7A、テレスコ操作レバー7Bの動きの違いについて説明されている。
【0043】
図13に示されるように、鍔742を備えているプッシャーロッド74は、コラムヘッド31上にチルト中心軸43と平行な方向に摺動自在に支持されている。プッシャーロッド74には鍔742を左方向に付勢する付勢バネ741を貫通しており、その端部にはその直角方向に長い小さな長穴743が設けられている。プッシャーロッド74の端部は、この長穴743を介して揺動アーム61の一端と軸係合している。長穴743はプッシャーロッド74が軸方向に移動したときに揺動アーム61との関係位置がずれる量を吸収するためのものである。
【0044】
付勢バネ741がプッシャーロッド74を左方向に付勢している。その右側先端で軸係合する揺動アーム61は時計方向の回転付勢力が付与されている。揺動アーム61に与えられた揺動付勢力はコラムクランプシャフト6をクランプ位置に維持する。このときの揺動アーム61の位置がそれぞれ実線で示されている。
【0045】
* プッシャープレート
チルトヘッド4は、コラムヘッド31上をチルトするため、チルトの量(角度)に応じて、プッシャープレート73に対するプッシャーロッド74の位置関係が変化する。図14には、チルトヘッド4をチルトさせた2つの位置を点線と実線で示す。プッシャーロッド74はコラムヘッドに支持されているためチルトによって位置を変えないが、プッシャープレート73はチルト中心軸43から離れているため、チルトヘッド4をチルトさせるときプッシャーロッド74との相対位置が変化する。このため、チルト量に関わらずプッシャーロッド74がプッシャープレート73に当接可能なようにプッシャープレート73にはホッケーのスティックのように曲がった広い当接面形状を持たせている。プッシャーロッド74は付勢バネ741によって図13左方向に付勢されてプッシャープレート73に当接している。クランプに関しては、チルトヘッド4は付勢バネ711の付勢力によってクランプされ、移動コラム部材3は付勢バネ741によってクランプされることになる。
【0046】
* 操作端とラッチ部材
操作端7Cは、図3等に示されるようにチルト操作レバー7Aに支持されており、ヒンジ軸7Hを中心として折り畳み可能である。ヒンジ軸7Hには、操作端7Cを手で操作したとき、クリック感が出るようにクリックヒンジ機構が内蔵されている。
【0047】
ラッチ部材7Lは、チルト操作レバー7Aに揺動可能に支持されており、ラッチピン7Pを備えている。チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとはこの部分で接近してほぼ平行に並んでいる。このため図3の点線で示されるようにラッチ部材7Lの揺動位置によっては、ラッチピン7Pがテレスコ操作レバー7Bの端部と係合する。この係合によってチルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとは一体化される。
【0048】
操作端7Cが折り畳まれるとラッチ部材7Lの一部と係合する。この係合によって、ラッチ部材7Lが回動されラッチピン7Pとテレスコ操作レバー7Bとの係合が外れる。このため、操作端7Cを折り畳むと、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとの結合が解除(非結合)される。反対に、操作端7Cを開くとチルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとが結合状態になる。通常は、操作端7Cが折り畳まれた状態である。
【0049】
* ステアリングホィールの調整操作
以下、主として図3から図7までを用いて、ステアリングホィール92の前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときの操作と各部材の動作について説明する。運転時(ステアリングホィール92の前後方向位置、傾斜角度を調整しないとき)、図3のa、図4に示すように、操作端7Cは折り畳まれており、コラムクランプ21、チルトヘッドクランプ41はともにクランプ状態にある。
【0050】
** 傾斜角度の調整
ステアリングホィール92の角度を調整するとき、折り畳まれた操作端7Cを折り畳んだまま手前に引く(図3のb、図5)。操作端7Cが折り畳まれていることによって、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとの結合は断たれているため、チルト操作レバー7Aのみが図5に示されるように揺動する。
【0051】
チルト操作レバー7Aの揺動によって、突出部71が図2における右側に移動しギヤアーム44が反時計方向に回動する。ギヤアーム44の回動によって、セグメントギヤ33の歯とギヤアーム44のギヤ部分の歯との噛合が外れ、チルトヘッド4はチルト調整可能になる。上述のように、移動コラム部材3はクランプ状態であるため、チルティング機構のみの調整を行うことができる。単に乗降のためだけの場合はステアリングホィールを上方に押して(あるいはバネ45の付勢力によって)退避させて容易に降車することができ、更に操作端7Cはチルト操作レバー7Aを動かすだけのため小さい力で操作できる。頻繁に行われる乗降のための傾斜角度の調整が、最も簡単に操作できるようになっている。
【0052】
** 前後方向位置の調整
図6は、ステアリングホィール92の前後方向位置(ステアリングコラムの長さ)を調整するとき、それまで折り畳まれていた操作端7Cを図6点線のように開く。内蔵されているクリックヒンジ機構により一旦開いた操作端7Cは開いた状態を保つ。操作端7Cを開いたことにより、ラッチピン7Pがテレスコ操作レバー7Bの端部と係合する。この係合によってチルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとは一体化つまり、結合状態になる。
【0053】
このため、操作端7Cを図7に示すように手前(右)に引くと、チルト操作レバー7Aは上述の傾斜角度の調整のときと同様の動きをするのに加え、テレスコ操作レバー7Bが揺動する。この揺動によりプッシャープレート73が図7の実線の位置まで揺動し、付勢バネ741にうち勝ってプッシャーロッド74をこの図の上方に向けて押す。
【0054】
プッシャーロッド74のこの動きは、図13における右方向の動きであり、揺動アーム61の揺動を、したがって、コラムクランプシャフト6の反時計回り回動を起こす。コラムクランプシャフト6が回動すると、それまで図12に示すように長径部がほぼ水平の状態であったコラムクランプシャフト6は図11に示すように傾斜した状態になる。これによって図10のように接近していた第1ウェッジ211と第2ウェッジ212は、互いに離間するため移動コラム部材のクランプが解除される。この状態でステアリングホィール92の前後方向位置を調整する。したがって、操作端7Cを開いた状態のときこれを引くとチルト機構とテレスコピック機構の両方が調整可能になる。
【0055】
このように、操作レバー対7の一方の操作レバーには、この操作レバーと他方の操作レバーとの間の結合/非結合を選択的に行うことができるラッチ部材7Lが設けられており、ラッチ部材7Lが設けられた操作レバーには、この上で可動な操作端7Cの操作によってラッチ部材7Lによる操作レバー対7の結合/非結合を選択することができる。特にチルト操作レバー7Aにラッチ部材7Lを設けたので、頻繁に生じる乗降時のステアリングホィールの退避をチルトによって行うことができる。
【0056】
なお、チルトヘッドクランプ41が解除されたとき、チルトヘッド4には、その重量によりあたかも人が首をうなだれるときのような下向きの力が働く。このため、カウンターバランス用の強めのバネ45(図4、図5)が設けられており、このような力を相殺し、あるいは、さらにステアリングホィール92を最も上側の傾斜位置に維持するような力をチルトヘッド4に与えるようにしてある。これにより、乗降が容易にされている。
【0057】
操作端7Cから手を離すと、付勢バネ711及び付勢バネ741の力によって、チルト操作レバー7A及びテレスコ操作レバー7Bはもとの位置に戻り、それぞれがクランプ状態になる。また、開いていた場合には操作端7Cを折り畳み位置に返す。
【0058】
通常では折り畳まれている操作端7Cは、ステアリングホィールから充分に離れているため、ステアリングホィール92を操作するときに誤って手が触れてクランプが解除されることがない。
【0059】
図15及び図16は、操作端7Cを折り畳む構造のみを変更し、操作端7Cを、チルト操作レバー7Aに沿って伸張縮退可能にした例の説明図である。この場合の操作端7Cには、スプリング7Sが内蔵されており、このスプリング7Sによって縮退側に向って付勢されている。縮退端においてはラッチ部材7Lにこの操作端の一部が当接することによって、これを回動させ、図15に示されるようにラッチ部材7Lのラッチピン7Pとテレスコ操作レバー7Bとの係合が断たれた状態になっている。したがって、この状態で操作端7Cを揺動させる(手前に引く)と、チルト機構のみがアンクランプ状態にされ、ステアリングホィールの傾斜角の調整(はね上げ)が行われる。
【0060】
操作端7Cをスプリング7Sに逆らって伸張させたとき、ラッチ部材7Lのラッチピン7Pはテレスコ操作レバー7Bに係合するため、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bは結合状態となり、操作レバー対7が一体的になる。この状態つまり、操作端7Cを伸張させたままこれを手前に引く(図16)と、2つのクランプはともに解除され、ステアリングホィール92の前後方向位置と傾斜角度を同時に調整することができる。
【0061】
操作端7Cから手を離すと、スプリング7Sによって操作端7Cは縮退するとともに、付勢バネ711及び付勢バネ741の力によって、チルト操作レバー7A及びテレスコ操作レバー7Bはもとの位置に戻り、それぞれがクランプ状態になる。通常では縮退しているため、操作端7Cがステアリングホィールから充分に離れることになるため、ステアリングホィール92の運転操作時に誤って手が触れてクランプが解除されるようなことはない。
【0062】
以上の例において、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bとの関係を逆、すなわち、操作端7C及びラッチ部材7Lをテレスコ操作レバー7B側に設けるようにすることも可能である。また、ラッチ部材7Lは、不図示のスプリングによってラッチピン7Pとテレスコ操作レバー7Bとが係合する方向に付勢させる構造、あるいは自然に回動しない程度の適宜の摩擦力をラッチ部材7Lとチルト操作レバー7A間に与える構造等を適宜採用し、車体からの振動によるラッチ部材の意図しない回動や振動音の発生を防止することができる。
【0063】
以上の実施例のステアリングコラム装置によれば、テレスコピック機構のクランプ/アンクランプ機構とチルティング機構のクランプ/アンクランプ機構とをそれぞれ操作するために、対をなす操作レバーが備えられており、一方の操作レバーにのみ人が操作するための操作端を設け、この操作端を設けた操作レバーによって、通常は、チルティング機構のクランプ/アンクランプ機構のみを操作するようにしている。このようにすることにより、使用頻度が高いチルティング機構のクランプ/アンクランプについての操作を優先的に行わせ、使用頻度の低いテレスコピック機構について特に操作端に異なる操作を加えなければ変更が生じないようにしているため、必要最低限の操作、調整をすれば済むようになっている。また、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができ、乗降毎に頻繁に行われる操作端の操作は、一方をアンクランプするだけであるため小さな力で操作できる。
【0064】
【発明の効果】
本発明のステアリングコラム装置によれば、テレスコピック機構のクランプ/アンクランプ機構とチルティング機構のクランプ/アンクランプ機構とをそれぞれ操作するために、対をなす操作レバーが備えられており、一方の操作レバーにのみ人が操作するための操作端を設け、この操作端を設けた操作レバーによって、通常は、使用頻度が高い方のクランプ/アンクランプ機構のみを優先的に操作するようにしており、使用頻度の低いテレスコピック機構について特に操作端に異なる操作を加えなければ変更が生じないようにしているため、通常の乗降時には必要最低限の操作、調整をすれば済むという効果を奏する。また、この操作には大きな力が必要とされないという効果を奏する。更に、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【図2】ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。
【図3】ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。
【図4】ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが折り畳まれた状態で操作されるときの説明図である。
【図5】ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが折り畳まれた状態で操作されるときの説明図である。
【図6】ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが開かれた状態で操作されるときの説明図である。
【図7】ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図であって、操作端7Cが開かれた状態で操作されるときの説明図である。
【図8】図2におけるA−A断面図である。
【図9】図2におけるB−B断面図である。
【図10】図2におけるC−C断面図である。
【図11】図10における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。
【図12】図10における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。
【図13】図2におけるD−D断面図であって、プッシャープレート73、プッシャーロッド74、揺動アーム61の関係を示す説明図である。
【図14】チルトヘッド4をチルトさせたときの2つの位置を点線と実線で示す説明図である。
【図15】操作端7Cを、チルト操作レバー7Aに沿って伸張縮退可能にした例の説明図である。
【図16】操作端7Cを、チルト操作レバー7Aに沿って伸張縮退可能にした例の説明図である。
【符号の説明】
1 ステアリングコラム装置
2 固定コラム部材
21 コラムクランプ
211 第1ウェッジ
2111、2112 傾斜面
2113、2114 クランプバー穴
212 第2ウェッジ
213 クランプバー
2141、2142 反力部材
215 ウェッジ穴
216 コラムクランプシャフト穴
22 ストッパ部材
221、222 車体取付部
231 円筒状部
232 摺動案内部
3 移動コラム部材
31 コラムヘッド
311 緩衝ストッパ
32 長穴
33 セグメントギヤ
34 ボルト
341 背当部材
4 チルトヘッド
41 チルトヘッドクランプ
43 チルト中心軸
44 ギヤアーム
441 軸
442 ギヤ部分
443 脚
45 バネ
5 ホィールシャフト
6 コラムクランプシャフト
61 揺動アーム
7 操作レバー対
7A チルト操作レバー
7B テレスコ操作レバー
7C 操作端
7H ヒンジ軸
7L ラッチ部材
7P ラッチピン
7S スプリング
71 突出部
711 付勢バネ
72 レバー中心軸
73 プッシャープレート
74 プッシャーロッド
741 付勢バネ
742 鍔
743 長穴
91 車体
92 ステアリングホィール
931、932 ユニバーサルジョイント
941 上中間軸
942 下中間軸
Claims (12)
- ステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、
上記ホィールシャフトの傾斜を調整することによって上記ステアリングホィールの傾斜を調整するためのチルトクランプ機構、
上記ホィールシャフトの前後方向位置を調整することによって上記ステアリングホィールの前後方向位置を調整するテレスコクランプ機構、及び、
上記各クランプ機構を操作するためのチルト操作レバーとテレスコ操作レバーからなる操作レバー対
を備えたステアリングコラム装置において、
上記操作レバー対の一方の操作レバーには、この操作レバーと他方の操作レバーとの間の結合/非結合を選択的に行うことができるラッチ部材が設けられていること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項1に記載されたステアリングコラム装置において、
上記ラッチ部材は、上記操作レバー対を結合させる方向に付勢されていることを特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項1又は請求項2のいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作レバー対の各レバー中心軸は互いに共通の軸線上にあること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記ラッチ部材が設けられた操作レバーには、この上で可動な操作端が設けられており、この操作端の操作によって上記ラッチ部材による上記操作レバー対の結合/非結合が選択されること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項1から請求項4までのいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記ラッチ部材は、一方の操作レバー上で揺動可能であり、他方のレバーに係合する係合ピンと、上記操作端の一部が当接する当接部を備えていること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項5に記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作端は、上記一方の操作レバーに折り畳み可能に設けられており、この操作端が折り畳まれた状態において上記当接部にこの操作端の一部が当接することによって、上記ラッチ部材による上記操作レバー対の非結合が選択されること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項6に記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作端は、折り畳み側に向って付勢されていること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項5に記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作端は、上記一方の操作レバーに沿って伸張縮退可能に設けられており、この操作端の縮退端において上記当接部にこの操作端の一部が当接することによって、上記ラッチ部材の非結合が選択されること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項8に記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作端は、縮退側に向って付勢されていること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項1から請求項9までのいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記他方の操作レバーは、人が操作するための操作端を備えていないこと
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項1から請求項10までのいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作レバー対の一方は、上記チルト操作レバーであり、他方は上記テレスコ操作レバーであること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項4から請求項11までのいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作端は、上記チルト操作レバーに設けられていること
を特徴とするステアリングコラム装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002348552A JP2004182014A (ja) | 2002-11-29 | 2002-11-29 | ステアリングコラム装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002348552A JP2004182014A (ja) | 2002-11-29 | 2002-11-29 | ステアリングコラム装置 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2004182014A true JP2004182014A (ja) | 2004-07-02 |
Family
ID=32751440
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2002348552A Pending JP2004182014A (ja) | 2002-11-29 | 2002-11-29 | ステアリングコラム装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2004182014A (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2009106257A1 (de) * | 2008-02-28 | 2009-09-03 | Thysssenkrupp Presta Aktiengesellschaft | Verstellbare lenksäule für ein kraftfahrzeug |
-
2002
- 2002-11-29 JP JP2002348552A patent/JP2004182014A/ja active Pending
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2009106257A1 (de) * | 2008-02-28 | 2009-09-03 | Thysssenkrupp Presta Aktiengesellschaft | Verstellbare lenksäule für ein kraftfahrzeug |
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