JP2004183074A - 薄肉化深絞りしごき缶用鋼板およびその製造法 - Google Patents

薄肉化深絞りしごき缶用鋼板およびその製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】製缶加工時、糸状の皮膜(ヘアー)が剥がれず、しかも加工性に優れた薄肉化深絞りしごき缶用鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】C:0.001〜0.010重量%、Si:≦0.05重量%、Mn:≦0.9重量%、P:0.131〜0.200重量%、S:≦0.04重量%、Al:0.006〜0.08重量%、N:0.0010〜0.015重量%、残部Feおよび不可避的不純物を含んだ低炭素鋼板からなる薄肉化深絞りしごき缶用鋼板およびその製造方法からなる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品缶、飲料缶等の容器材料に適用することのできる薄肉化深絞りしごき缶用鋼板およびその製造法に係り、特に、深絞り、しごき加工性に優れ、更に成形後に高い強度が得られるとともに、耐肌荒れ性が良く、薄肉化深絞りしごき缶用途に適した薄肉化深絞りしごき缶用鋼板およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、側面無継目(サイドシームレス)缶の成形法として、表面処理鋼板を成形した後の缶の内外に有機塗料を施す方法と、成形前の鋼板にあらかじめ樹脂フィルムを被覆し、その樹脂フィルムを一種の成形潤滑剤とし、缶側壁となる部分の鋼板を薄肉化する、いわゆる薄肉化絞りしごき缶成形法とがある。後者の例として、本発明者らは先に、金属板の平均結晶粒径及び平均表面粗さを特定することにより、製缶後の対肌荒れ性および耐食性に優れた薄肉化絞り缶用の金属板を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のあらかじめ樹脂フィルムを被覆した金属板を用いて薄肉化絞り缶を成形すると、完成後の缶側壁が極めて肌荒れしやすいという問題がある。この肌荒れ状態が生ずると、外観上、ムラが生じる。また、鉄板の肌荒れに対し、フィルムが完全に追従できず、成形後の缶にフィルム厚みにムラを生じさせる。このフィルムの薄い箇所は耐食性が懸念される。さらに、肌荒れは、ネック加工性に支障を来すなどの問題もある。
【0004】
また、樹脂被覆鋼板を用いた絞り缶成形時にヘアーを発生させない絞り成形方法が、開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、絞り加工後、更に数段のしごきダイスによりしごき加工を施す場合には、ヘアーの発生が抑えられないという問題がある。
【0005】
また、固溶C及び固溶Nを有効に利用することにより、2ピース缶、3ピース缶の薄肉化に対応した高強度化を達成するとともに、製缶する際の加工性も良好な硬質薄鋼板を得ることも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
鋼板の薄肉化深絞りしごき加工前の引張り強度と、加工に伴う加工硬化の挙動とを特定の関係に制御することにより、薄肉化深絞りしごき加工において高い加工度を得ることも提案されている(例えば、特許文献4および特許文献5参照)。
【0007】
本出願に関する先行技術文献情報として次のものがある。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−314535号公報
【特許文献2】
特許第2513379号公報
【特許文献3】
特許第3283313号公報
【特許文献4】
特開2002−317247号公報
【特許文献5】
特開2002−317248号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
通常、薄肉化深絞り缶は被覆鋼板を円板状に打ち抜き、これを二段階の絞り加工によって成形される。この二段目の絞り加工(再絞り加工)時においては、フランジ部に高いしわ押え力を加え、缶側壁の絞り−張り出し加工を行なうことにより、缶側壁の厚みを減少させている。
【0010】
上記の加工法において、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを被覆した被覆鋼板を円板状に打ち抜いた後にカップ絞り、しごき加工を行うが、原板が高強度の材料では、しごきの段階で面圧が高くなり、この有機皮膜の切り口が非常に微細だが糸状に裂け、連続製缶時に、その糸状の皮膜(以下、「ヘアー」と略す)が剥がれ落ち、製缶ラインに堆積し、作業性を著しく阻害する。したがって、製缶のしごき加工時までは軟質の材料が望ましい。
【0011】
一方で、過度の軟質な材料では、成形後の缶の段階で強度がなく、落下などにより、不本意に変形するなどの問題がある。
【0012】
本発明は上記問題点を解決することを目的とし、有機皮膜金属円板がしごき加工時までは軟質状態を維持し、成形後の200〜250℃の熱処理後に硬質状態となる鋼板であり、しかも加工性に優れ、成形時に大きな肌荒れを生じさせない薄肉化深絞りしごき缶用鋼板およびその製造法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の薄肉化深絞りしごき缶用鋼板は、C:0.001〜0.010重量%、Si:≦0.05重量%、Mn:≦0.9重量%、P:0.131〜0.200重量%、S:≦0.04重量%、Al:0.006〜0.08重量%、N:0.0010〜0.015重量%、残部Feおよび不可避的不純物を含んだ低炭素鋼板からなることを特徴とする。
【0014】
この本発明により有機皮膜金属円板がしごき加工時までは軟質状態を維持し、成形後の200〜250℃の熱処理後に硬質状態となる薄肉化深絞りしごき缶用鋼板を得ることができる。
【0015】
また、本発明の薄肉化深絞りしごき缶用鋼板は、C:0.001〜0.010重量%、Si:≦0.05重量%、Mn:≦0.9重量%、P:0.131〜0.200重量%、S:≦0.04重量%、Al:0.006〜0.08重量%、N:0.0010〜0.015重量%、残部Feおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を、冷間圧延、過時効処理を含むヒートサイクルによる焼鈍、圧延率0.5〜30%による調質圧延または2次冷間圧延を順次行い、調質圧延後の鋼板の平均結晶粒径が4.0〜10.0μm以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の薄肉化深絞りしごき缶用鋼板の製造方法は、C:0.001〜0.010重量%、Si:≦0.05重量%、Mn:≦0.9重量%、P:0.131〜0.200重量%、S:≦0.04重量%、Al:0.006〜0.08重量%、N:0.0010〜0.015重量%、残部Feおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を、冷間圧延、過時効処理を含むヒートサイクルによる焼鈍、圧延率0.5〜30%による調質圧延または2次冷間圧延を順次行うことを特徴とする。
【0017】
本発明の薄肉化深絞りしごき缶用鋼板の製造方法によれば、有機皮膜金属円板がしごき加工時までは軟質状態を維持し、成形後の200〜250℃の熱処理後に硬質状態となる薄肉化深絞りしごき缶用鋼板を得ることができるとともに、加工性に優れ、成形時に大きな肌荒れを生じさせない用にして薄肉化深絞りしごき缶用鋼板を製造することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
本発明の薄肉化深絞りしごき缶用鋼板に、ポリエステル等の樹脂フィルムを被覆し、円板状に打ち抜き、これをカップに絞り、連続かつ高速で、ドライまたはウエット方式のいずれの手法において、しごき加工による製缶加工を行っても、ヘアー問題が起きず、しかも成形後の200〜250℃の焼鈍後に缶強度に優れた薄肉化深絞りしごき缶を成形できる。
【0020】
本用途は、近年における有機皮膜付き2ピース缶をさらに薄肉化するために、成形における高リダクションが要求される。したがって、しごき成形時に高い面圧が鋼板と成形工具間に発生し、有機皮膜の切り口が糸状に剥がれ落ち、問題化する(ヘアー問題)。そこで、しごき加工時の面圧を低減させるために材料を軟質化させ、成形への荷重を低減させることで、ヘアーを最小限にすることを発案した。したがって、鋼板はCが0.01重量%以下の軟質な極低炭素鋼板とする。
【0021】
また、材料が軟質化すると強度不足により缶特性が劣化する。そこで、成形後に成形による有機皮膜に生じた残留ひずみを除去するための焼鈍(200〜250℃)中に、鋼板の時効硬化を利用し、適切な強度にすることを発案した。
【0022】
しかし、極低炭素鋼板のため、Cによる時効が期待できないため、Nによる時効硬化を利用することとする。その際、この効果が十分に発揮できるようにNと化合し、Nの時効効果を抑制するAl量を極力抑えるため、0.006〜0.05重量%とした。0.006重量%未満では、脱酸効果がほとんどないため、添加の効果がなく、0.05重量%を超えると、Nの時効効果を抑制するため、問題がある。
【0023】
さらに、それだけでは鋼板の結晶粒が1次圧延後の焼鈍の際に粗大化し、成形時の肌荒れ現象を引き起こすために、結晶粒の微細化効果があるPを0.131重量%以上添加し、4.0〜10.0μmの結晶粒径とすることとした。
【0024】
以上の成分範囲の選択により、上記の複数の問題を解決することが可能となった。その他の詳細な成分範囲と規定理由を以下に示す。
【0025】
熱延鋼板の成分
鋼成分はC:0.001〜0.010重量%、Si:≦0.05重量%、Mn:≦0.9重量%、P:0.131〜0.200重量%、S:≦0.04重量%、Al:0.006〜0.08重量%、N:0.0010〜0.015重量%、残部Feおよび不可避的不純物より形成される。
【0026】
以下に鋼成分の規制理由を述べる。
【0027】
Cは0.01重量%より多くなると硬質化し、ヘアー問題を引き起こす。そこで、C量は0.01重量%以下とする。また、缶強度と結晶粒の粗大化抑制から、0.001重量%以上とする。
【0028】
Siは缶用材料として耐食性に有害な元素であるが、Alキルド鋼としては不可避的に含有される元素であり、上限を0.05重量%とした。
【0029】
Mnは不純物であるSによる熱延中の赤熱脆性を防止するために必要な成分であるが、一方、0.9重量%を越えると絞り加工性が劣化することから上限を0.9重量%とした。
【0030】
Pは結晶粒微細化に有効な成分でる。本材料は極低炭素鋼板で、かつ、下記にも示すようにAl量が少なく、AlNの析出物が少ない。したがって、結晶粒が大きくなり、成形時の肌荒れを引き起こす。そこで、Pにより、結晶粒を微細化するため、その下限を0.131重量%とした。一方で過多なPは耐食性を阻害するため、その上限を0.200重量%とした。
【0031】
Sは熱延中の赤熱脆性を生じる不純物成分であり、極力少ないことが望ましいが、不可避的に含有される元素であり、上限を0.04重量%とした。
【0032】
Alは本発明の規制の中で重要な元素である。通常、2ピース缶は成形のリダクションが高く、非金属介在物への感受性が高い。したがって、製鋼における脱酸剤として清浄性が高い鋼板を得るためにAlで行うことが一般的である。また、Alは固浴Nと反応してAlNとして析出し、結晶粒の細粒化に寄与するなど鋼板の特性面でも大きな役割を果たす。
【0033】
しかし、本発明の場合、前述したように成形後の焼鈍において、Nの時効により、高強度化を図ることにしている。そこで、過多なAlはそのN時効効果を妨げる。したがって、その上限を0.08重量%以下とする。0.006重量%未満では、脱酸効果がほとんどなく好ましくない。
【0034】
Nは本発明においては時効による缶強度特性を満足するために重要な元素である。Al量を0.006〜0.08重量%、また、TiやNbなどの窒化物形成元素も不可避な範囲に規制していれば、Cと異なり、析出物になることなく、固溶Nとして鋼中に存在することが可能であり、0.0010重量%以上あれば必要な缶特性が得られる。一方、過多なNは、必要以上に強度を増し、前述したヘアーの原因となる。また、製鋼時に気泡となり、スラブ表面に割れを生じ易くさせ、構造欠陥になる。したがって、上限を0.015重量%以下とした。
【0035】
スラブ加熱温度、熱間圧延条件は、本発明では特定するものではないが、スラブ加熱温度は、Nの積極的分解固溶および熱間圧延温度の安定的確保の見地から、1100℃以上とするのが望ましい。また、熱間圧延における巻取温度は熱延時のコイル幅方向および長手方向の品質安定性を考慮して下限を450℃とし、650℃を越えると結晶粒が粗大化し、肌荒れが生じるため、巻取温度は450〜650℃の範囲が望ましい。
【0036】
冷間圧延工程
圧下率が75%未満では、焼鈍工程で鋼板の結晶粒粗大化もしくは混粒化をもたらし、結晶粒を十分細粒化することができないので、冷間圧延の圧下率は75%を下限とすることが望ましい。また、2ピース缶への絞り、しごき成形のために圧延方向に対する鋼板の極度な成形への異方性は好ましくない。したがって、さらに望ましくは85〜90%の圧延率にすることである。
【0037】
焼鈍工程
本発明においては、鋼板をより軟質化させるために、焼鈍は過時効処理を行うことが望ましいが、極低炭素鋼板のため、過時効効果が十分に発揮されない。したがって、特には規制しないが、必要により、C量の高い範囲(0.007〜0.01重量%)に過時効処理を含むヒートサイクルによる焼鈍を施しても良い。焼鈍は、箱型焼鈍あるいは連続焼鈍のどちらを適用しても良いが、経済性の点で連続焼鈍の方が望ましい。
【0038】
調質圧延またはDR圧延
調質圧延(SR,Single Reduce Rollingの略)または、DR圧延(Double Reduce Rollingの略、または2次冷間圧延)は、圧延率が0.5〜30%の範囲であればよい。0.5%未満においては、十分な缶強度が得られず、30%を越えると鋼板が高強度となり、缶成形加工が困難となる。また、ストレッチャストレインの発生が防止されるため、この範囲が適当である。
【0039】
本発明においては、過時効処理により前記の鋼中の固溶C、Nを低減してくびれの発生やボイドの連結を抑制して深絞りにおける加工性を向上して、本発明の対象である薄肉化深絞りしごきの加工条件を満たすと共に、圧延率が0.5〜30%の範囲の調質圧延または2次冷間圧延を行うことによって強度を付与し、これによって、本発明の鋼板は、薄肉化深絞りしごき加工に求められる高度の加工性に併せて加工時の破胴発生を生じない板強度を付与することができる。このように、本発明においては、これら2つの工程が組み合わされて、加工性と板強度それぞれの条件を達成することができる。また、この調質圧延あるいは2次冷間圧延によって極薄厚の缶において求められる所要の缶強度をも達成するものである。この調質圧延あるいは2次冷間圧延は、圧延率等を考慮して適宜選択すればよい。
【0040】
つぎに、本発明に用いられる鋼板としては、シ−ト状およびコイル状の鋼板、鋼箔およびそれらの鋼板等に表面処理を施したものがあげられる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水和酸化物の2層構造をもつ電解クロム酸処理鋼板あるいは極薄錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、亜鉛めっき鋼板およびこれらのめっき鋼板にクロム水和酸化物あるいは上層がクロム水和酸化物、下層が金属クロム層からなる2層構造をもつ表面処理を施したものがポリエステル樹脂との密着性に優れている。
【0041】
樹脂フィルムのラミネート
本発明に適用する樹脂フィルムは単層フィルムまたは2層以上の複層フィルムのいずれも適用可能であり、熱可塑性樹脂、特にポリエステル樹脂からなるフィルムであることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、エチレンテレフタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンテレフタレート、ブチレンイソフタレートなどのエステル単位を有するものが好ましく、さらにこれらの中から選択される少なくとも1種類のエステル単位を主体とするポリエステルであることが好ましい。このとき、各エステル単位は共重合されていてもよく、さらには2種類以上の各エステル単位のホモポリマーまたは共重合ポリマーをブレンドして用いてもよい。上記以外のもので、エステル単位の酸成分として、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸などを用いたものなど、またエステル単位のアルコール成分として、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトールなどを用いたものを用いてもよい。
【0042】
このポリエステルは、ホモポリエステル或いはコポリエステル、或いはこれらの2種以上からなるブレンド物からなる2種以上のポリエステル層の積層体であってもよい。例えば、ポリエステルフィルムの下層を熱接着性に優れた共重合ポリエステル層とし、その上層を強度や耐熱性更には腐食成分に対するバリアー性に優れたポリエステル層或いは改質ポリエステル層とすることができる。
【0043】
本発明においては無延伸のポリエステル樹脂からなるフィルムを用いることを前提としており、ポリエステル樹脂フィルムを表面処理鋼板に積層する作業において樹脂が切れたり、ポリエステル樹脂フィルムを積層した表面処理鋼板に絞り加工や絞りしごき加工のような厳しい成形加工を施しても樹脂が削れたり疵付いたりすることがなく、またクラックが生じたり割れたり、さらに剥離することがないようにするため、樹脂の固有粘度を高め、樹脂を強化させる必要がある。
【0044】
このため、上記のポリエステル樹脂の固有粘度を0.6〜1.4の範囲とすることが好ましく、0.8〜1.2の範囲とすることがより好ましい。固有粘度が0.6未満のポリエステル樹脂を用いた場合は樹脂の強度が極端に低下し、絞り加工や絞りしごき加工を施して成形する缶に適用できない。一方、樹脂の固有粘度が1.4を超えると樹脂を加熱溶融させた際の溶融粘度が極端に高くなり、ポリエステル樹脂フィルムを表面処理鋼板に積層する作業が極めて困難になる。
【0045】
樹脂フィルムの厚さは単層フィルムの場合は5〜60μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。厚さが5μm未満の場合は表面処理鋼板に積層する作業が著しく困難になり、また絞り加工や絞りしごき加工を施した後の樹脂層に欠陥を生じやすく、缶に成形して内容物を充填した際に、腐食成分に対する耐透過性も十分ではない。厚さを増加させると耐透過性は十分となるが、60μmを超える厚さにすることは経済的に不利となる。複層フィルムの場合は成形加工性や、耐透過性、あるいは内容物のフレーバーに与える影響などの観点から各層の厚さの比率は変動するが、トータル厚みが5〜60μmとなるように、各層の厚さを調整する。
【0046】
また、樹脂フィルムを製膜加工する際に、樹脂中に必要な特性を損なわない範囲で着色顔料、安定剤、酸化防止剤、滑材などを含有させて、フィルムに製膜してもよい。
【0047】
無延伸の樹脂フィルムは次のようにして製膜加工する。すなわち、押出機を用いて樹脂ペレットを樹脂の融解温度より20〜40℃高い温度で加熱溶融し、溶融樹脂をTダイからフィルム状に冷却したキャスティングロール上に押し出し、延伸せずに無延伸樹脂フィルムとしてコイラーに巻き取る。
【0048】
製膜加工された樹脂フィルムを表面処理鋼板に積層するにあたっては、まずコイル状に巻き取られた長尺帯状の表面処理鋼板を解きほどきながら連続的に加熱する。加熱温度は、無延伸樹脂フィルムは樹脂の融解温度以下の温度でも表面処理鋼板に接着することができるが、樹脂フィルム(複層フィルムの場合は表面処理鋼板と接する樹脂層)の融解温度以上に加熱することが好ましい。そして、加熱されて連続的に移動している表面処理鋼板の両面に前記の樹脂フィルムを当接し、1対の加圧ロールで両者を挟み付けて圧着し、直ちに急冷する。以上のようにして本発明の樹脂被覆鋼板が得られる。また、直接、樹脂をコーティングするダイレクト方式でも構わない。
【0049】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに説明する。
【0050】
表1に示す成分の鋼を転炉で溶製し、常法に従い熱間圧延を行い、表2に示すCT(巻取温度)で巻き取り熱延鋼板とした。その熱延鋼板を酸洗し、0.22〜0.28mmの厚さに冷間圧延(圧延率:85%)後、再結晶温度以上で連続焼鈍を行い、焼鈍後、過時効処理を行った。更に、1.5%の圧延率で調質圧延を施し、0.20mmの板厚とした。
【0051】
【表1】
Figure 2004183074
【0052】
【表2】
Figure 2004183074
【0053】
評価方法
[抗張力(T.S.)]
冷延鋼板からJIS5号試験片を作成し、テンシロンにより抗張力(T.S.)を測定した。
【0054】
ヘアーと機械強度の関係について、上記したが、有機皮膜の種類や成形の条件、缶の種類などにより、ヘアーが顕著化する強度のしきい値は異なる。したがって、ここでは0.20mmの鋼板厚みにフィルムをラミネートし、円板を打ち抜いた後に、カップ絞り、さらに3段のしごき加工を加えた場合のしきい値を使って説明する。この場合のヘアーが顕著化しない強度のしきい値は、JIS5号片の引張試験における抗張力(T.S.)が530MPa(=N/mm)以下である。また、下限は缶強度から200MPa以上とする。
【0055】
[結晶粒径]
実施例及び比較例で作成した冷延鋼板について、結晶の平均粒径(以下、結晶粒径)を測定した
結晶粒径は成形時の肌荒れ防止の観点から、上限は10.0μm以下が望ましい。また、下限は特には規定しないが、過度な微細粒は、上記のボトム耐圧を上昇させることから、4.0μm以上が望ましい。
【0056】
[耐圧]
実施例及び比較例で作成した冷延鋼板に、下層が金属クロム(付着量:130mg/m)、上層がクロム水和酸化物(付着量:クロムとして19mg/m)の2層構造をもつ電解クロム酸処理を施し、次いで、缶に成形した際に外面側となる面に、エチレンテレフタレート(88モル%)とエチレンイソフタレート(12モル%)からなる共重合ポリエステル樹脂(固有粘度:0.8)に酸化チタン系白色顔料を20重量%含有させてなる、厚さ15μmの無延伸フィルムを、缶に成形した際に内面側となる面に、エチレンテレフタレート(88モル%)とエチレンイソフタレート(12モル%)からなる厚さ30μmの無延伸の透明共重合ポリエステル樹脂フィルムをそれぞれ当接して圧着し、PETフィルム被覆鋼板を得た。このPETフィルムを被覆した鋼板に次に示す薄肉化深絞りしごき加工を行って、製缶した。絞りしごき加工は、上記のようにして作成された樹脂被覆鋼板から直径150mmのブランクを打ち抜き、次いで、白色に着色したフィルムを積層した面が容器の外側となるようにして直径90mmのポンチで絞る絞り工程(絞り比1.67)、その後、直径66mmのポンチで再絞り加工する再絞り工程(再絞り比1.36)に従い実施した。このカップを、3段のしごき加工ダイスからなるしごき成形装置を用いて缶径66mm、缶壁上端部の厚さが0.15mmの絞りしごき缶に成形加工した。
【0057】
次いで、上端部をトリミングして高さを122mmとし、フィルムのひずみ取りのため、215℃で30秒加熱処理した後、上端部を縮径加工して開口端部の径を57mmとした。次いで、開口端部を缶の外側に向かって張り出し加工し、フランジ端部の径が62mmとなるようにフランジ部を形成させ、内容物を充填する前の缶とボトム耐圧を測定した。
【0058】
ボトム耐圧は、缶強度から、660MPa以上が望ましい。一方、耐圧が高すぎると、例えば、高温時に内容物が膨張した際に、ボトムが変形しにくく、缶のキャップの箇所で破裂する現象が生じ、好ましくない。そこで、ボトム耐圧の上限は780MPaとする。
【0059】
[ヘアーの発生]
実施例及び比較例で作成した冷延鋼板に、耐圧性評価方法で示した製缶方法で内容物を充填する前の缶を作製し、加工後の缶の端面にヘアーがあるかどうか肉眼で評価した。
【0060】
このような評価方法で、評価した結果を下記に示す。
【0061】
本発明の実施例No.1〜4は本発明の成分範囲内で、また、比較例の1〜5は本発明の成分範囲外である。その鋼の成分範囲を表1に、特性評価結果を表2に示す。なお、表1で、CTは熱延板の巻取温度を示す。また、総合判定はT.S.、結晶粒径、ボトム耐圧およびヘアー発生無の4項目のすべてを満足するものを○、いずれかひとつでも満足しければ×とした。比較例1はPが0.021重量%と本発明範囲より下回る。その場合、表2に示すように結晶粒が10.2μmと大きく、成形でも肉眼で判定できるほどの肌荒れが生じた。また、比較例2はAl量が高く、AlNの効果から、結晶粒径や原板のT.S.は目標の範囲だが、時効硬化性が乏しく、ボトム耐圧が目標の下限を下回った。比較例3は、N量が0.0008重量%と少なく、同じくN時効の効果が乏しく、ボトム耐圧が下限を下回った。比較例4はCが0.042%と低炭素鋼板の範疇であり、抗張力(T.S.)、ボトム耐圧が高く、好ましくない。最後に比較例5はMn量が1.3重量%と高く、抗張力(T.S.) 、ボトム耐圧が高く、好ましくない。
【0062】
【発明の効果】
本発明の薄肉化深絞りしごき缶用鋼板にPET等の樹脂フィルムを被覆した鋼板は、成形時の軟質化より、連続高速製缶加工時においても、ヘアーが起きず、しかも、結晶粒の粗大化を抑制したため、肌荒れも問題が無い。さらに、N時効により缶の強度特性であるボトム耐圧に優れた薄肉化深絞りしごき缶用途に適した鋼板を提供することができる。
【0063】
なお、本発明により提供される薄肉化深絞りしごき缶用鋼板は、樹脂フィルムと鋼板との間にエポキシ等の接着剤をコーティングした場合でも薄肉化深絞りしごき缶用途に適用できる。

Claims (3)

  1. C:0.001〜0.010重量%、Si:≦0.05重量%、Mn:≦0.9重量%、P:0.131〜0.200重量%、S:≦0.04重量%、Al:0.006〜0.08重量%、N:0.0010〜0.015重量%、残部Feおよび不可避的不純物を含んだ低炭素鋼板からなることを特徴とする薄肉化深絞りしごき缶用鋼板。
  2. C:0.001〜0.010重量%、Si:≦0.05重量%、Mn:≦0.9重量%、P:0.131〜0.200重量%、S:≦0.04重量%、Al:0.006〜0.08重量%、N:0.0010〜0.015重量%、残部Feおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を、冷間圧延、過時効処理を含むヒートサイクルによる焼鈍、圧延率0.5〜30%による調質圧延または2次冷間圧延を順次行い、調質圧延後の鋼板の平均結晶粒径が4.0〜10.0μm以下であることを特徴とする薄肉化深絞りしごき缶用鋼板。
  3. C:0.001〜0.010重量%、Si:≦0.05重量%、Mn:≦0.9重量%、P:0.131〜0.200重量%、S:≦0.04重量%、Al:0.006〜0.02重量%、N:0.0010〜0.015重量%、残部Feおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板を、冷間圧延、過時効処理を含むヒートサイクルによる焼鈍、圧延率0.5〜30%での調質圧延または2次冷間圧延を順次行うことを特徴とする薄肉化深絞りしごき缶用鋼板の製造法。
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