JP2004201677A - γ−グルタミルシステインの製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 γ−グルタミルシステイン生産能を有し、パントテン酸要求性を有する酵母を、十分な量のパントテン酸を含む培地で培養して同酵母を増殖させる工程と、パントテン酸量が制限された培地で培養し、菌体内のγ−グルタミルシステイン含有量を上昇させる工程により、γ−グルタミルシステインを蓄積した酵母を製造する。
【選択図】 図1
Description
ることにより、γ−グルタミルシステインの蓄積量が上昇することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(2)細胞内のグルタチオン合成酵素活性が低下又は消失するように改変された(1)に記載の酵母。
(3)MET25遺伝子の発現が脱抑制されるように改変された(1)又は(2)に記載の酵母。
(4)コードされる蛋白質の569位のセリンがセリン以外の他のアミノ酸に置換する変異を有する変異型MET30遺伝子を保持することにより、MET25遺伝子の発現が脱抑制された(3)に記載の酵母。
(5)前記他のアミノ酸がフェニルアラニンである(4)に記載の酵母。
(6)サッカロマイセス属に属する(1)〜(5)のいずれかに記載の酵母。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の酵母を、十分な量のパントテン酸を含む培地で培養して同酵母を増殖させる工程と、パントテン酸量が制限された培地で培養し、菌体内のγ−グルタミルシステイン含有量を上昇させる工程を含む、γ−グルタミルシステインを蓄積した酵母の製造方法。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載の酵母を好適な条件で培養して得られる培養物、もしくはγ−グルタミルシステインを含む前記培養物の分画物、又は熱処理によってシステインが生成したこれらの培養物もしくは分画物を含む飲食品。
(9)飲食品がアルコール飲料、パン食品、又は発酵食品調味料である(8)記載の飲食品。
(10)(1)〜(6)のいずれかに記載の酵母を好適な条件で培養して得られる培養物を用いて製造された酵母エキス。
(11)(1)〜(6)のいずれかに記載の酵母を好適な条件で培養して得られる培養物もしくはその分画物、又は加熱処理した前記培養物又は分画物を、飲食品原料に混合し、飲食品に加工することを特徴とする、γ−グルタミルシステイン又はシステイン含有飲食品の製造法。
(12)コードされる蛋白質の569位のセリンがフェニルアラニンに置換された変異を有する変異型MET30遺伝子を保持することにより、MET25遺伝子の発現が脱抑制された酵母。
本発明の酵母は、γ−グルタミルシステイン生産能を有し、かつ、パントテン酸要求性を有する酵母である。本発明の酵母は、好ましくは、パントテン酸量が制限された培地で培養したとき、乾燥酵母菌体当たりのγ−グルタミルシステイン含有量が経時的に上昇する。
(1)47位のスレオニン残基をイソロイシン残基に置換する変異。
(2)387位のグリシン残基をアスパラギン酸残基に置換する変異。
(3)54位のプロリン残基がロイシン残基に置換する変異。
上記変異は、単独でも、任意の組合せでもよいが、(1)と(3)の組合せ、及び(2)と(3)の組合せが好ましい。
上記のようにして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、変異型GSH2遺伝子と染色体上にもともと存在するGSH2遺伝子との組換えを起こし、野生型GSH2遺伝子と変異型GSH2遺伝子との融合遺伝子2個が組換えDNAの他の部分(ベクター部分及びマーカー遺伝子)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。
えにより1コピーのGSH2遺伝子を、ベクター部分(マーカー遺伝子を含む)とともに染色体DNAから脱落させる。その際、野生型GSH2遺伝子が染色体DNA上に残され、変異型GSH2遺伝子が切り出される場合と、反対に変異型GSH2遺伝子が染色体DNA上に残され、野生型GSH2遺伝子が切り出される場合がある。いずれの場合もマーカー遺伝子が脱落するので、2回目の組換えが生じたことは、マーカー遺伝子に対応する表現形質によって確認することができる。また、目的とする遺伝子置換株は、PCRによりGSH2遺伝子を増幅し、その構造を調べることによって、選択することができる。
accession Y13804、配列番号1)、同塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCRにより、サッカロマイセス・セレビシエ染色体DNAから取得することができる。また、導入する遺伝子は、サッカロマイセス属以外の微生物に由来する遺伝子を用いることができる。
遺伝子を酵母に保持させる方法が挙げられる。前記他のアミノ酸としてはフェニルアラニンが挙げられる。このような性質を有する酵母は、後記実施例に示すように酵母を変異処理することによって取得することができるが、必要な変異が特定されたので、同変異を有する酵母は遺伝子工学的手法によって容易、かつ、確実に取得することができる。例えば、MET25遺伝子の発現が脱抑制された酵母は、上記変異を有する変異型MET30遺伝子を用いた遺伝子置換により創製することができる。遺伝子置換は、上記のGSH2遺伝子と同様にして行うことができる。また、変異型MET30遺伝子を保持する酵母は、同遺伝子を挿入したプラスミドで酵母を形質転換し、同遺伝子の細胞内のコピー数を高めることによっても創製することができる。さらに、変異型MET30遺伝子を保持する酵母は、実施例に記載したのと同様に、野生型酵母を、通常の変異処理、例えばUV照射、あるいはN−メチル−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホネート(EMS)、亜硝酸、アクリジン等の変異剤による処理によって、取得することもできる。得られた変異株が目的の変異を有していることは、例えばPCR法等により確認することができる。なお、上記の、コードされる蛋白質の569位のセリンがフェニルアラニンに置換する変異を有する変異型MET30遺伝子を保持する酵母は、グルタチオンの生産にも使用することができる。
本発明の酵母を、十分な量のパントテン酸を含む培地で培養して同酵母を増殖させた後、パントテン酸量が制限された培地で培養し、菌体内のγ−グルタミルシステイン含有量を上昇させることにより、γ−グルタミルシステインが蓄積した酵母を製造することができる。
酵母エキス等の調製は、通常の酵母エキスの調製と同様にして行えばよい。酵母エキスは、酵母菌体を熱水抽出したものを処理したものでもよいし、酵母菌体を消化したものを処理したものでもよい。
<1>グルタチオン合成酵素活性が低下した酵母の取得
食品用途に用いられる市販の2倍体のサッカロマイセス・セレビシエを常法にしたがい胞子形成させた。形成した胞子からランダムスポア法により1倍体酵母YN0001株(MATα)を取得した。YN0001株をEMSにより変異処理し、グルタチオン含有量が低下した変異株YN0002株(MATα)を取得した。4分子解析により、YN0002株のGSH2遺伝子が変異していることを確認した。具体的には、コードされるタンパク質の387番目のグリシン残基がアスパラギン酸残基に置換されていた。また、グルタチオン含有量が低下した変異株YN0003株(MATa)も取得した。
量を測定した。その結果、YN0001株のグルタチオン含有量は0.52%であった。一方、YN0002株のグルタチオン含有量は0.006%以下であった。
前記1倍体酵母YN0001株(MATα)を、前記と同様にしてEMSにて変異処理し、MET25遺伝子の発現がメチオニンによって抑制されない変異株AJ14819株(MATα)を取得した。本菌株は、プライベートナンバーAJ14819が付与され、2002年9月 11 日付けで独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託され、受託番号FERM P-19007が付与されている。さらに、同菌株は平成15年10月1日にブダペスト条約に基く国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-08502が付与されている。なお、MET25遺伝子の発現がメチオニンによって抑制されるか否かは、セレンを含む培地での生育の有無によって判別することもできる(DOMINIQUEら、MOLLECULAR AND CELLUAR BIOLOGY Dec, 1995, p6526-6534)。
Probe(Applied Biosystems社)に、ACT1-986T(配列番号5)及びMET25-1077T(配列番号6)を用い、ACT1及びMET25遺伝子の増幅用にACT1-963F(配列番号7)とACT1-1039R(配列番号8)、及びMET251056F(配列番号9)とMET25-1134R(配列番号10)を用いた(以上、Applied Biosystems社)。このようにして、MET25遺伝子の発現量がYN0001株よりも2倍以上に上昇した酵母AJ14819株を取得した。
前記1倍体酵母YN0001株(MATα)を、前記と同様にしてEMSにて変異処理した。変異処理した酵母からパントテン酸カルシウム要求性酵母を取得するために、パントテン酸カルシウムを含まず、かつ、ナイスタチン(10μg/ml)を添加した培地で前記酵母を30℃で2時間培養し、培養液をYPD寒天培地にスプレッドした。生育してきた変異酵母をパントテン酸カルシウムを含まない寒天培地とパントテン酸カルシウムを含む寒天培地(各々前記表1に示す組成を有する)にレプリカし、前者の寒天培地では生育できないが、後者の寒天培地では生育できる酵母を選択した。このようにして、パントテン酸カルシウムを要求する酵母Pa0001株(MATa)を取得した。
常法に従い、AJ14819株とPa0001株を接合させ、2倍体を取得した。取得した2倍体を胞子形成させ、ランダムスポア法により、変異型MET30遺伝子を有し、パントテン酸カル
シウム要求性を示す1倍体酵母MP株(MATa)を取得した。次に、YN0002株とMP株を接合させ2倍体を取得した。取得した2倍体を胞子形成させ、ランダムスポア法により、変異型GSH2遺伝子、変異型MET30遺伝子を有し、パントテン酸カルシウム要求性を示す1倍体酵母GMP-1(MATα)、GMP-2(MATa)株を取得した。GMP-1株とGMP-2株を接合させ、2倍体酵母GMP株を取得した。
GMP株をYPD培地(試験管4ml)に植菌し、30℃で1日振とう培養した。培養液をパントテン酸カルシウム0.4mg/dlを含む培地に植菌し、30℃で振とう培養した。対数増殖期に培地を採取し、菌体濃度(乾燥酵母重量)が60mg/dlになるように、パントテン酸カルシウムを含まない培地、及び0.4mg/Lのパントテン酸カルシウムを含む培地(前記表1)に、それぞれ添加し、培養を行った。乾燥酵母菌体あたりのγ−グルタミルシステイン含有量を経時的に測定した。結果を図1に示す。パントテン酸カルシウム濃度が低い培地で培養した場合は、高濃度で含む培地で培養した場合に比べて、γ−グルタミルシステイン含有量が経時的に増加した。
常法に従い、前記MET30遺伝子変異株AJ14819株と、市販の酵母から得た1倍体酵母Pa0001株を接合させ、2倍体を取得した。この2倍体を胞子形成させ、ランダムスポア法により、変異型MET30遺伝子を有する、1倍体酵母M株(MATa)を取得した。次に、このM株と、前記GSH2遺伝子変異株YN0002株を接合させ2倍体を取得した。この2倍体を胞子形成させ、ランダムスポア法により、変異型GSH2遺伝子及び変異型MET30遺伝子を有する1倍体酵母GM-1株(MATα)、GM-2株(MATa)を取得した。GM-1株とGM-2株を接合させ、2倍体酵母GM株を取得した。
GM株及びGMP株を各々YPD培地に植菌し、30℃で振とう培養した。培養液をパントテン酸カルシウム0.4mg/dlを含む培地に植菌し、30℃で振とう培養した。対数増殖期に集菌し、菌体濃度(乾燥酵母重量)が60mg/dlになるように、パントテン酸カルシウムを含まない培地に植菌した。30℃で振とう培養し、乾燥酵母菌体当たりのγ−グルタミルシステイン含有量を経時的に測定した。結果を図2に示す。
次に、GMP株のグルタチオン合成酵素活性を更に低下させた場合の影響を検討した。
まず、グルタチオン合成酵素遺伝子破壊カセットを以下のようにして作成した。
Kpn Iで切断したpAUR123ベクター(宝酒造 code3602)を鋳型として、GSH2-AUR1-C-F(配列番号11)とGSH2-AUR1-C-R(配列番号12)をプライマーに用いてPCRを行った。PCR産物はAUR1-C遺伝子の両端にGSH2遺伝子のORFのN末端側配列及びGSH2遺伝子のORFのC末端側配列を含むため、同産物を用いて、グルタチオン合成酵素遺伝子を破壊することが可能である。PCRの条件は以下の通りである。
10×PCR Buffer 5μl
dNTP 4μl
10pmol/μl GSH2-AUR1-C-Fプライマー 1μl
10pmol/μl GSH2-AUR1-C-Rプライマー 1μl
KOD Dash DNA polymerase 0.5μl
MilliQ 37.5μl
Total 50μl
94℃2min ×1cycle→94℃40sec、54℃40sec、74℃1min ×30cycles →4℃ ∞
(KOD Dash はTOYOBO 製 codeLDP-101)
上記のようにして作製したグルタチオン合成酵素遺伝子破壊カセットを用いて、以下のようにしてGMP株のグルタチオン合成酵素遺伝子の破壊を試みた。即ち、GMP株をYPD培地で培養し、その対数増殖期に集菌した。1Mソルビトール溶液で2回洗浄した菌体を、以下の組成の溶液に懸濁し、5℃で1時間放置した。
組成: 0.1 M LiCl
10 mM DTT
10 mM Tris-HCl(pH7.5)
1 mM EDTA
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、ブダペスト条約に基いて国際寄託されており、受託番号FERM BP-08553が付与されている。
AJ14861株をYPD培地(試験管4ml)に植菌し、30℃で1日振とう培養した。培養液をパントテン酸カルシウム0.4mg/dlを含む培地に植菌し、30℃で振とう培養した。対数増殖期に培地を採取し、菌体濃度(乾燥酵母重量)が60mg/dlになるように、パントテン酸カルシウムを含まない培地、及び0.4mg/Lのパントテン酸カルシウムを含む培地(前記表1)に、それぞれ添加し、培養を行った。乾燥酵母菌体あたりのγ−グルタミルシステイン含有量を経時的に測定した。結果を図3に示す。パントテン酸カルシウム濃度が低い培地で培養した場合は、高濃度で含む培地で培養した場合に比べて、γ−グルタミルシステイン含有量が経時的に増加した。
Claims (12)
- γ−グルタミルシステイン生産能を有し、パントテン酸要求性を有し、かつ、パントテン酸量が制限された培地で培養したとき、乾燥酵母菌体当たりのγ−グルタミルシステイン含有量が経時的に上昇する酵母。
- 細胞内のグルタチオン合成酵素活性が低下又は消失するように改変された請求項1に記載の酵母。
- MET25遺伝子の発現が脱抑制されるように改変された請求項1又は2に記載の酵母。
- コードされる蛋白質の569位のセリンがセリン以外の他のアミノ酸に置換する変異を有する変異型MET30遺伝子を保持することにより、MET25遺伝子の発現が脱抑制された請求項3に記載の酵母。
- 前記他のアミノ酸がフェニルアラニンである請求項4に記載の酵母。
- サッカロマイセス属に属する請求項1〜5のいずれか一項に記載の酵母。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の酵母を、十分な量のパントテン酸を含む培地で培養して同酵母を増殖させる工程と、パントテン酸量が制限された培地で培養し、菌体内のγ−グルタミルシステイン含有量を上昇させる工程を含む、γ−グルタミルシステインを蓄積した酵母の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の酵母を好適な条件で培養して得られる培養物、もしくはγ−グルタミルシステインを含む前記培養物の分画物、又は熱処理によってシステインが生成したこれらの培養物もしくは分画物を含む飲食品。
- 飲食品がアルコール飲料、パン食品、又は発酵食品調味料である請求項8記載の飲食品。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の酵母を好適な条件で培養して得られる培養物を用いて製造された酵母エキス。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の酵母を好適な条件で培養して得られる培養物もしくはその分画物、又は加熱処理した前記培養物又は分画物を、飲食品原料に混合し、飲食品に加工することを特徴とする、γ−グルタミルシステイン又はシステイン含有飲食品の製造法。
- コードされる蛋白質の569位のセリンがフェニルアラニンに置換された変異を有する変異型MET30遺伝子を保持することにより、MET25遺伝子の発現が脱抑制された酵母。
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