JP2004231105A - カップシールおよび液圧式マスタシリンダ - Google Patents

カップシールおよび液圧式マスタシリンダ Download PDF

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徹 野口
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茂 深澤
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Abstract

【課題】ピストンの移動時に、リリーフポートと接触する際のカップシールの食われを防止し、ピストンの摺動性を維持することができ、かつ靭性に優れた液圧式マスタシリンダ用カップシールを提供する。
【解決手段】本発明のカップシール32a,32bは、液圧式マスタシリンダ23のピストン31に装着される。このカップシール32a,32bは、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液圧式マスタシリンダのピストンに装着されるカップシール、ならびに前記カップシールを含む液圧式マスタシリンダに関する。
【0002】
【背景技術】
車両用の液圧式ブレーキ装置は、液圧式マスタシリンダおよび液圧式ブレーキを含む。また、液圧式マスタシリンダと液圧式ブレーキとは液圧配管によって連結されている。
【0003】
この液圧式ブレーキ装置においては、ブレーキレバーやペダルの操作によって、液圧式マスタシリンダ内で発生した液圧を液圧式ブレーキに供給して、車輪の制動を行なう。
【0004】
液圧式マスタシリンダは、シリンダ孔と、このシリンダ孔に移動自在に挿入可能なピストンとを含む。このシリンダ孔およびピストンによって、液圧発生室が構成される。また、このシリンダ孔の内周壁には、リリーフポートが設けられている。このリリーフポートは、開口部を含み、この開口部を介して作動液貯液室と前記シリンダとを連絡している。
【0005】
また、前記ピストンにはカップシールが装着されている(例えば、特許文献1参照)。このカップシールは、前記ピストンが前記液圧発生室側へ移動するのに応じて、前記カップシールが前記開口部を通過することにより、前記開口部を介した前記液圧発生室と前記作動液貯液室との連絡を遮断し、液圧発生室内に液圧を発生させる。したがって、前記カップシールは、リリーフポート通過時のシールの食われや、前記液圧発生室内の作動液の圧力に耐えるために、十分な靭性が必要とされる。
【0006】
また、この液圧式マスタシリンダを、いわゆるABS装置(アンチスキッド制御装置)を備えたブレーキシステムに適用する場合がある。このABS装置を備えたブレーキシステムは、前記液圧式ブレーキ側から前記液圧式マスタシリンダ側に作動液を加圧して戻すためのポンプを含む。
【0007】
このABS装置を作動させた場合にピストンは、前記ポンプから該ピストンを非作動方向に押し戻す方向に液圧を受圧する。この際、前記カップシールは前記ピストンに装着されているため、前記カップシールは大きな液圧を受ける。この液圧に対する耐久性をもたせるため、前記カップシールは、弾性率が大きな材料(例えばゴム)を主成分とする材料からなる。しかしながら、一般に、ゴムのように弾性率が大きい材料は、弾性率が大きくなるほど脆くなる。したがって、前記カップシールは弾性率が大きな材料からなる分脆い。このため、前記ピストンが押し戻されて、前記カップシールが前記リリーフポートと接触する際、前記カップシールが前記リリーフポートに食われやすい。このカップシールの食われを防止するためにも、カップシールは十分な靭性が必要とされる。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−227600号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ピストンの移動時に、リリーフポートと接触する際の食われを防止し、ピストンの摺動性を維持することができ、かつ靭性に優れた液圧式マスタシリンダ用カップシールを提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、および前記カップシールを含む液圧式マスタシリンダを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のカップシールは、液圧式マスタシリンダのピストンに装着されるカップシールであって、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなる。
【0012】
上記本発明のカップシールによれば、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなることにより、靭性および摺動性を維持しつつ、カップシールの弾性率を所定の範囲内に維持することができるため、ピストンの移動時にリリーフポートと接触する際のカップシールの食われを防止することができる。
【0013】
上記本発明のカップシールにおいては、前記炭素繊維および前記フラーレンを合わせて0.01〜50重量%含むことが好ましい。前記炭素繊維および前記フラーレンの割合が50重量%を超えると、弾性を十分確保できない場合があり、0.01重量%未満であると、靭性を十分確保できない場合がある。なお、上記重量は、前記炭素繊維および前記フラーレンをそれぞれ単独で含有する場合は、前記炭素繊維および前記フラーレン単独の重量である。
【0014】
上記本発明のカップシールにおいて、前記炭素繊維は、平均直径が0.7〜500nmであって、平均長さが0.01〜1000μmであるカーボンナノファイバーからなることができる。
【0015】
このような構成とすることで、炭素繊維の中でもカーボンナノファイバーと呼ばれる超微細な繊維構造を有することになり、弾性を維持しつつ、カップシールの靭性をより向上させることができる。また、超微細なカーボンナノファイバーとすることで、ゴムの成形加工を容易とすることができる。
【0016】
上記本発明のカップシールにおいて、前記カーボンナノファイバーは、イオン注入処理されていることができる。
【0017】
このような構成とすることで、イオン注入処理されたカーボンナノファイバーは、少なくともその表面の化学的な組成が変わることで、ゴムとカーボンナノファイバーの接着性やヌレ性が改善され、カップシールの機械的強度をさらに向上させることができる。また、カーボンナノファイバーの表面が化学的に改質されることにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するカップシールを得ることができる。
【0018】
上記本発明のカップシールにおいて、前記カーボンナノファイバーは、スパッタエッチング処理されていることができる。
【0019】
このような構成とすることで、スパッタエッチング処理されたカーボンナノファイバーは、その表面に微細な凹凸が形成されるので、ゴムに対するカーボンナノファイバーの接触面積を増大させることができる。その結果、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性を改善することができるため、カップシールの機械的強度をさらに向上させることができる。また、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が向上することにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するカップシールを得ることができる。
【0020】
上記本発明のカップシールにおいて、前記カーボンナノファイバーは、プラズマ処理されていることができる。
【0021】
このような構成とすることで、プラズマ処理されたカーボンナノファイバーは、 その表面に微細な凹凸が形成されるので、ゴムに対するカーボンナノファイバーの接触面積を増大させることができる。その結果、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性を改善することができるため、カップシールの機械的強度をさらに向上させることができる。また、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が向上することにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するカップシールを得ることができる。
【0022】
上記本発明のカップシールにおいて、前記フラーレンは、カーボン60およびカーボン70を含み、前記カーボン70より前記カーボン60を多く含むことができる。
【0023】
このような構成とすることで、弾性を維持しつつ、カップシールの靭性をより向上させることができる。また、ゴムの成形加工を容易とすることができる。
【0024】
上記本発明のカップシールにおいて、さらに、前記カーボンナノファイバーおよび前記フラーレンのいずれか一方の合成過程において得られる炭素化合物を含むことができる。
【0025】
また、本発明の液圧式マスタシリンダは、上記本発明のカップシールと、
シリンダ孔と、
前記シリンダ孔に挿入可能なピストンと、
前記シリンダ孔と該ピストンとによって区画された液圧発生室と、
を含み、
前記シリンダ孔の内周壁に、開口部を含み、作動液貯液室と前記シリンダ孔とを連絡するリリーフポートが設けられ、
前記カップシールは前記ピストンに装着され、
前記ピストンが前記液圧発生室側へ移動するのに応じて、前記カップシールが前記開口部を通過することにより、前記開口部を介した前記液圧発生室と前記作動液貯液室との連絡を遮断する。
【0026】
上記本発明の液圧式マスタシリンダによれば、上記本発明のカップシールが前記ピストンに装着されていることにより、ピストンの摺動性を維持することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るカップシール32a,32bを含む液圧式マスタシリンダ23を模式的に示す断面図である。この液圧式マスタシリンダ23は、二輪車両用の液圧式ブレーキ装置21の一部を構成する。この液圧式ブレーキ装置21は、液圧式マスタシリンダ23および液圧式ブレーキ(図示せず)を含む。図1においては、液圧式ブレーキ装置21のうち液圧式マスタシリンダ23の部分のみが示されている。
【0029】
図1に示すように、液圧式マスタシリンダ23にはブレーキレバー22が取り付けられている。また、液圧式マスタシリンダ23と液圧式ブレーキとは、液圧配管25(矢印を用いて省略して示す)によって連結されている。
【0030】
この液圧式ブレーキ装置21においては、このブレーキレバー22の握りによるブレーキ操作によって、液圧式マスタシリンダ23内で発生した液圧を、液圧配管25を介して液圧式ブレーキ(図示せず)に供給することにより、車輪の制動を行なう。
【0031】
この液圧式マスタシリンダ23においては、シリンダボディ26の内部が、隔壁26aによってシリンダ孔27と作動液貯液室28とに仕切られている。
【0032】
また、液圧式マスタシリンダ23は、シリンダ孔27およびピストン31を含む。ピストン31は、このシリンダ孔27に移動自在に挿入可能である。また、このシリンダ孔27およびピストン31によって、液圧発生室33が構成されている。すなわち、液圧発生室33は、シリンダ孔27とピストン31とによって区画された領域である。
【0033】
液圧発生室33は、マスタシリンダ23が作動していない状態(図1参照)において、リリーフポート29を介して、作動液貯液室78と連絡している。すなわち、リリーフポート29は、開口部29aを含み、マスタシリンダ23が作動していない状態において、開口部29aを介して作動液貯液室28とシリンダ孔27とを連絡している。開口部29aは、シリンダ孔27の内周壁に設置されている。
【0034】
作動液貯液室28によって貯留される作動液は、リリーフポート29およびサプライポート30を通してシリンダ孔27に直接供給される。
【0035】
本実施の形態の液圧式マスタシリンダ23においては、ブレーキレバー22の握りによって、ブレーキ操作が行なわれると、ピストン31は出力ポート47の方向(図1中左方)に移動することにより、シリンダ孔26の内周壁に摺接するカップシール32aの外周部が、リリーフポート29の開口部29aを通過する。これにより、開口部29aを介した液圧発生室33と作動液貯液室28との間の液の連絡が遮断される。そして、ピストン31がさらに移動することにより、液圧発生室33にて液圧が発生する。ここで発生した液圧は、液圧配管25を介して液圧式ブレーキに供給される。
【0036】
カップシール32a,32bは、ピストン31に装着されている。具体的には、カップシール32aはピストン31のうち液圧発生室33に面している側に設けられ、カップシール32bは、ピストン31を挟んでカップシール32aと反対側に設けられている。カップシール32a,32bの材質については後述する。
【0037】
また、本実施の形態においては、液圧式マスタシリンダ23を、いわゆるABS装置(図示せず)を備えたブレーキシステムに適用することができる。このABS装置を備えたブレーキシステムは、液圧式ブレーキ側から液圧式マスタシリンダ23側に作動液を加圧して戻すためのポンプ(図示せず)を含む。
【0038】
次に、カップシール32a,32bの材質について説明する。
【0039】
カップシール32a,32bは、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなる。具体的には、カップシール32a,32bは、以下に示す作用効果(a)および(b)を奏することができる。
【0040】
(a)このブレーキシステムを作動させた場合、ピストン31がシリンダ孔27に挿入されて、カップシール32a,32bが開口部29を通過する際に、カップシール32a,32bが局部的にリリーフポート29内に押し込まれる場合がある。この場合、本実施の形態のカップシール32a,32bは、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなるため、靭性および摺動性を維持しつつ、カップシール32a,32bの弾性率を所定の範囲内に維持することができる。これにより、カップシール32a,32bは、液圧発生室30内の作動液の圧力に十分な耐えることができる。したがって、カップシール32a,32bが局部的にリリーフポート29内に押し込まれた場合であっても、カップシール32a,32bが食われることはない。
【0041】
(b)前述したように、この液圧式マスタシリンダ23が、ABS装置を備えたブレーキシステムに適用される場合には、液圧式ブレーキ側から液圧式マスタシリンダ23側に作動液を加圧して戻すためのポンプが設置されている。このABS装置を作動させた場合、前記ポンプからの圧力によって、カップシール32a,32bに非常に高い液圧が加わる場合がある。この場合においても、本実施の形態のカップシール32a,32bは、上述した材質からなることにより、前記ポンプからの圧力に十分な耐えることができる。したがって、前記ポンプからの圧力によって、カップシール32a,32bが局部的にリリーフポート29内に押し込まれた場合であっても、カップシール32a,32bが食われることはない。
【0042】
カップシール32a,32bを構成する前記ゴムとしては、スチレン・ブタジエン・ラバー(SBR)、エチレン・プロピレン・ラバー(EPR)、エチレン・プロピレン・ジエン・メチレンリンケージ(EPDM)が例示できるが、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、および、これらのブレンド物を用いることができる。
【0043】
カップシール32a,32bにおいて、炭素繊維およびフラーレンを合わせて0.01〜50重量%含むことが好ましい。炭素繊維およびフラーレンの割合が50重量%を超えると、弾性を十分確保できない場合があり、0.01重量%未満であると、靭性を十分確保できない場合がある。なお、上記重量は、炭素繊維およびフラーレンをそれぞれ単独で含有する場合は、炭素繊維およびフラーレン単独の重量である。なお、カップシール32a,32bには、さらに、炭素繊維およびカーボンナノファイバーのいずれか一方の合成過程において得られる炭素化合物を含むことができる。
【0044】
(炭素繊維)
ゴムに炭素繊維が混合されたカップシール32a,32bを形成する場合、ゴムと炭素繊維の混合は、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリ−ミキサ−、ニ−ダ−、ミキシングロ−ルなど通常公知の混合機に供給して混練する方法などを例として挙げることができる。また、ゴムと炭素繊維の混合順序は、全ての両材料を配合後上記の方法により混練する方法、一部の炭素繊維を配合後上記の方法により混練しさらに残りの炭素繊維を配合し混練する方法、あるいはゴムを単軸あるいは二軸の押出機により混練中にサイドフィーダーを用いて炭素繊維を混合する方法などの方法を用いることができる。
【0045】
ゴムに混入させる炭素繊維は、石油精製時の残査であるピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、およびポリアクリル繊維を原料とするポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維などを使用することができる。
【0046】
また、ゴムに混入させる炭素繊維は、平均直径が0.7〜500nmであって、平均長さが0.01〜1000μmのカーボンナノファイバーを用いることが好ましい。また、カーボンナノファイバーの配合量は、成形時の流動性、得られる成形品の比重および強度、弾性の観点から、カップシール32a,32bの主成分であるゴム中に0.01〜50重量%の範囲で含まれていることが好ましい。このようなカーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
【0047】
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。
【0048】
アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。
【0049】
レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
【0050】
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
【0051】
カップシール32a,32bを形成するにあたり、カーボンナノファイバーは、ゴムと混練する前に、あらかじめ表面処理例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、カップシール32a,32bの主成分であるゴムとの接着性やぬれ性を改善することができる。
【0052】
(イオン注入処理)
イオン注入処理(ion implantation)は、イオン源によってイオン化された元素(例えば酸素など)に加速器によって必要なエネルギーを与え、真空ポンプによって高真空状態に保たれた真空チャンバ内で、カーボンナノファイバーの表面内にイオンを打ちこむものである。
【0053】
本発明の一実施の形態のイオン注入処理について、図3に示す全方位型イオン注入装置の概略構成図を用いて説明する。全方位型イオン注入装置50は、真空ポンプ57に接続された例えばステンレス製の真空チャンバー51内にイオン注入処理を施す試料(例えばカーボンナノファイバー52)を置く回転テーブル53が回転自在に配置されている。回転テーブル53は、パルスバイアス電源54に接続され、真空チャンバー51との間は絶縁体55によって絶縁されている。真空チャンバー51は、プロセスガス供給装置58と、高周波電源59に接続されたコイル60と、アーク式蒸発源61と、真空チャンバー51内温度を測定する赤外線放射温度計62と接続されている。
【0054】
イオン注入処理は、真空ポンプ57によって適当な真空状態とされた真空チャンバー51内に、プロセスガス供給装置58からガスが供給され、高周波電源59によってコイル60の周りにプラズマを発生させる。これによってイオン化されたガスが、パルスバイアス電源54の負極に接続されている試料例えばカーボンナノファイバー52に引き込まれ、注入される。また、真空チャンバー51に接続されたアーク式蒸発源61によって、金属イオンを試料例えばカーボンナノファイバー52に注入させることができる。この場合、アーク式蒸発源61内の金属蒸発源は、図示せぬ直流アーク電源に接続され、アーク放電によって蒸発させられる。このとき、回転テーブル53及び試料例えばカーボンナノファイバー52は、スイッチ63によって切りかえられた負の直流バイアス電源56により印加されているので、金属イオンが試料例えばカーボンナノファイバー52に注入される。
【0055】
また、全方位型イオン注入装置50の回転テーブル53を図4に示すような攪拌羽53a及び容器53bとしてもよい。容器53bは、広口の開口部を上方に有し、容器53b中には試料例えばカーボンナノファイバー52を配置できる。イオン注入処理の間、カーボンナノファイバー52のような粉体の試料は、攪拌羽53aの回転によって攪拌されることで、全体にまんべんなくイオン注入処理を受けることができる。攪拌翼53aの回転速度は、カーボンナノファイバー52の量や、イオン注入処理時間などによって適宜調整することができる。
【0056】
イオン注入処理されたカーボンナノファイバーは、その表面が化学的に改質され、カップシール32a,32bの主成分であるゴムとカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が改善され、カップシール32a,32bの靭性をさらに向上させることができる。また、カーボンナノファイバーの表面が化学的に改質されることにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するカップシール32a,32bを得ることができる。
【0057】
イオン注入処理に用いられる元素は、カップシール32a,32bの主成分であるゴムとの相性によって適宜選択することができ、例えば、酸素(O)、窒素(N)、塩素(Cl)、クロム(Cr)、炭素(C)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、リン(P)、アルミニウム(Al)等の中から適宜選択することができる。
【0058】
(スパッタエッチング処理)
ドライエッチング方式のスパッタエッチング処理は、真空ポンプによって高真空状態に保たれた真空チャンバ内にエッチングガス、極低圧不活性ガス雰囲気例えばアルゴン(Ar)中で、交流を印加してグロー放電を行わせ、かつグロー放電によって生じたプラズマ中に露出される電極と接触したカーボンナノファイバーの表面にイオンを衝突させることで、エッチングするものである。
【0059】
スパッタエッチング処理されたカーボンナノファイバーの表面は、物理的にエッチングされることで、微細(ナノサイズ)な凹凸が形成される。このカーボンナノファイバーの表面の凹凸によって、カップシール32a,32bの主成分のゴムに対するカーボンナノファイバーの接触面積を増大させることができる。その結果、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性を改善することができるため、ゴムにカーボンナノファイバーを混入させて成形(例えば射出成形)したカップシール32a,32bの靭性を向上させることができる。加えて、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が向上することにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するカップシール32a,32bを得ることができる。
【0060】
(プラズマ処理)
プラズマ処理は、プラズマをカーボンナノファイバーに照射することによって表面を改質させるものである。プラズマ処理は、一般的なグロー放電処理やコロナ放電処理などを採用することができる。
【0061】
例えばプラズマは、相対向する放電極と対向電極との間に、パルス生成回路によって生成された高電圧・高頻度のパルス電圧を印加し、両電極間にコロナ放電を惹起して空気中にプラズマを発生させるようにしている。そして、被処理物は、両電極間に静止状態又は移動状態で配置され、その表面にプラズマ処理が施される。
【0062】
プラズマの作り方には、2枚の平行平板電極に数百から数千ボルトの電圧をかけて放電する二極放電タイプ、熱陰極から発した大量の電子が陽極に入るまでに気体分子と衝突しプラズマを作る熱電子放電タイプ、磁場を使って高真空で放電するマグネトロン放電タイプ、高周波電磁誘導によりプラズマを発生させる無電極放電タイプ、磁場のある共振室へマイクロ波を送りこみ電子を共振させるECR(Electron Cyclotron Resonance)放電タイプなどがあり、適宜選択することができる。
【0063】
このようにプラズマ処理されたカーボンナノファイバーの表面は、微細な凹凸が形成されるので、ゴムに対するカーボンナノファイバーの接触面積を増大させることができる。その結果、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性を改善することができるため、カップシール32a,32bの機械的強度をさらに向上させることができる。また、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が向上することにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するカップシール32a,32bを得ることができる。
【0064】
(フラーレン)
本実施の形態に用いられるフラーレンは、球殻状炭素例えばカーボン60(以下、C60とする)、C70、C74、C78、C82、C720、C860などのフラーレン類等が例示できるが、C60を主成分とすることが好ましい。また、C60を主成分として、C70がC60よりも多く含まれることが好ましい。さらに、C60を主成分として、他のフラーレン類を含んでいてもよいし、フラーレン生成時に同時に生成された他の炭素化合物を含んでいてもよい。フラーレン類の形態は、例えば、サッカーボール状、バッキーボール状などであってもよい。また、フラーレンは、炭素繊維の場合と同様の方法にてゴムに混合することができる。
【0065】
フラーレン類は、置換基の導入などにより修飾されていてもよい。修飾方法は、特に限定されず、例えば、フラーレン類の反応性に富む炭素5員環部を化学的に修飾できる。置換基の種類は特に限定されず、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ジオキソラン単位、ハロゲン又は酸素原子等が例示でき、液晶ポリマー、色素類、ポリエチレンオキシドなどの導入により修飾してもよい。フラーレン類の修飾により、硬化性樹脂との親和性の改善、フラーレン類の分散を可能にする。
【0066】
C60フラーレンは、黒鉛電極を用い、ヘリウム雰囲気下でアーク放電し、得られたススをベンゼンで抽出し、得られたC60混合物を、塩基性活性アルミナを担体とし、ヘキサンを展開溶媒として、カラム分離精製することにより調整した。なお、フラーレンを得る方法は、このアーク放電法に限定されるわけではなく、他の手法を用いることもできる。
【0067】
[第2の実施の形態]
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るカップシール82a,82b,92a,92bを含む液圧式マスタシリンダ73を模式的に示す断面図である。この液圧式マスタシリンダ73は、四輪車両用のブレーキ装置であり、液圧式ブレーキ装置71の一部を構成する。この液圧式ブレーキ装置71は、液圧式マスタシリンダ73および液圧式ブレーキ(図示せず)を含む。図2においては、液圧式ブレーキ装置71のうち液圧式マスタシリンダ73の部分のみが示されている。
【0068】
図2に示すように、液圧式マスタシリンダ73にはブレーキペダル(図示せず)が取り付けられている。また、液圧式マスタシリンダ73と液圧式ブレーキとは、液圧配管75(矢印を用いて省略して示す)によって連結されている。
【0069】
この液圧式ブレーキ装置71においては、このブレーキペダルの踏み込みによるブレーキ操作によって、液圧式マスタシリンダ73内で発生した液圧を、液圧配管75を介して液圧式ブレーキ(図示せず)に供給することにより、車輪の制動を行なう。
【0070】
液圧式マスタシリンダ73においては、シリンダボディ76の内部が、隔壁76aによってシリンダ孔77と作動液貯液室78とに仕切られている。
【0071】
また、液圧式マスタシリンダ73は、シリンダ孔77を含む。ピストン81,91は、このシリンダ孔77に移動自在に挿入可能である。
【0072】
液圧発生室83は、シリンダ孔77とピストン81とによって区画された領域であり、液圧発生室93は、シリンダ孔77およびピストン81,91とによって区画された領域である。各々の液圧発生室83,93から液圧式ブレーキに液圧が供給される。
【0073】
各液圧発生室83,93は、マスタシリンダ73が作動していない状態(図2参照)において、それぞれリリーフポート79,89を介して、作動液貯液室78と連絡している。すなわち、リリーフポート79は、開口部79aを含み、マスタシリンダ73が作動していない状態において、開口部79aを介して作動液貯液室78とシリンダ孔77とを連絡している。また、リリーフポート89は、開口部89aを含み、マスタシリンダ73が作動していない状態において、開口部89aを介して作動液貯液室78とシリンダ孔77とを連絡している。開口部79a,89aは、シリンダ孔77の内周壁に設置されている。
【0074】
作動液貯液室78によって貯留される作動液は、リリーフポート79,89およびサプライポート80,90を通してシリンダ孔77に直接供給される。
【0075】
ピストン81,91の外周部には、それぞれ環状のカップシール82a,82bおよびカップシール92a,92bが装着されている。
【0076】
カップシール82a,82bは、ピストン81に装着されている。すなわち、図2に示すように、カップシール82aはピストン81のうち液圧発生室83に面している側に設けられ、カップシール82bは、ピストン81を挟んでカップシール82aと反対側に設けられている。
【0077】
また、カップシール92a,92bは、ピストン91に装着されている。すなわち、図2に示すように、カップシール92aはピストン91のうち液圧発生室93に面している側に設けられ、カップシール92bは、ピストン91を挟んでカップシール92aと反対側に設けられている。
【0078】
本実施の形態の液圧式マスタシリンダ73においては、ブレーキペタルの踏み込みによって、ブレーキ操作が行なわれると、各ピストン81,91はともに側壁76bの方向(図2中左方)に移動することにより、シリンダ孔77の内周壁に摺接するカップシール82a,92aの外周部がそれぞれ、リリーフポート79,89の開口部79a,89aを通過する。これにより、開口部79a,89aを介した液圧発生室83,93と作動液貯液室78との間の液の連絡が遮断される。そして、各ピストン81,91がさらに移動することにより、各液圧発生室83,93にて液圧が発生する。ここで発生した液圧は、液圧配管75を介して液圧式ブレーキに供給される。
【0079】
また、各液圧発生室83,93にはそれぞれ、ばね88,98が設けられている。前記ブレーキペダルの踏み込み動作を解除または弱めた場合、これらのばね88,98の勢いによって、ピストン81,91は、図2に示す設置位置に戻るべく移動する。そして、このピストン81,91の戻り動作に伴い、液圧発生室83,93内の液圧が、一時的に作動液貯液室78内の作動液の圧力よりも低くなる。これにより、カップシール82a,92aの外周部がシリンダ孔77の内周壁から離れるように移動し、開口部79a,89aを介して作動液貯液室78と常時連絡しているサプライポート80,90から液圧発生室83,93へと作動液が補給される。
【0080】
本実施の形態の液圧式マスタシリンダ73を、第1の実施の形態の液圧式マスタシリンダ23と同様に、ABS装置(図示せず)を備えたブレーキシステムに適用することができる。この場合、本実施の形態の液圧式マスタシリンダ73は、第1の実施の形態の液圧式マスタシリンダ23を、ABS装置を備えたブレーキシステムに備えた場合と同様の動作が行なわれ、かつ同様の作用効果を有することができる。すなわち、この場合、車輪のロックを防止するために、ABS装置が作動したときには、作動液は、ABS装置に含まれるポンプによって、ホイールシリンダから圧力を弛めて排出された加圧された後、液圧発生室83,93に戻される。
【0081】
本実施の形態において、カップシール82a,82b,92a,92bは、第1の実施の形態のカップシール32a,32bと同様の材質からなることができる。よって、詳しい説明は省略する。
【0082】
本実施の形態のカップシール82a,82b,92a,92bによれば、第1の実施の形態のカップシール32a,32bと同様の材質からなることにより、同様の作用効果を奏することができる。すなわち、本実施の形態のカップシール82a,82b,92a,92bによれば、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなることにより、靭性および摺動性を維持しつつ、カップシールの弾性率を所定の範囲内に維持することができるため、ピストンの移動時にリリーフポートと接触する際のカップシールの食われを防止することができる。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るカップシールを含む液圧式マスタシリンダを模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るカップシールを含む液圧式マスタシリンダを模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に用いられる全方位型イオン注入装置の概略説明図である。
【図4】全方位型イオン注入装置の回転テーブルの他の実施態様を示す一部断面図である。
【符号の説明】
21,71 液圧式ブレーキ装置
22 ブレーキレバー
23,73 液圧式マスタシリンダ
25,75 液圧配管
26,76 シリンダボディ
26a,76a 隔壁
26b,76b 底壁
27,77 シリンダ孔
28,78 作動液貯液室
29,79,89 リリーフポート
29a,79a,89a 開口部
30,80,90 サプライポート
31,81,91 ピストン
32a,32b,82a,82b,92a,92b カップシール
33,83,93 液圧発生室
47 出力ポート
50 全方位型イオン注入装置
53 回転テーブル
53a 攪拌羽
53b 容器
88,98 ばね

Claims (9)

  1. 液圧式マスタシリンダのピストンに装着されるカップシールであって、
    炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなる、カップシール。
  2. 請求項1において、
    前記炭素繊維および前記フラーレンを合わせて0.01〜50重量%含む、カップシール。
  3. 請求項1または2において、
    前記炭素繊維は、平均直径が0.7〜500nmであって、平均長さが0.01〜1000μmであるカーボンナノファイバーからなる、カップシール。
  4. 請求項3において、
    前記カーボンナノファイバーは、イオン注入処理されている、カップシール。
  5. 請求項3において、
    前記カーボンナノファイバーは、スパッタエッチング処理されている、カップシール。
  6. 請求項3において、
    前記カーボンナノファイバーは、プラズマ処理されている、カップシール。
  7. 請求項1ないし6記載のいずれかのカップシールにおいて、
    前記フラーレンは、カーボン60およびカーボン70を含み、
    前記カーボン70より前記カーボン60を多く含む、カップシール。
  8. 請求項1ないし6において、
    さらに、前記カーボンナノファイバーおよび前記フラーレンのいずれか一方の合成過程において得られる炭素化合物を含む、カップシール。
  9. 請求項1ないし8記載のいずれかのカップシールと、
    シリンダ孔と、
    前記シリンダ孔に挿入可能なピストンと、
    前記シリンダ孔と該ピストンとによって区画された液圧発生室と、
    を含み、
    前記シリンダ孔の内周壁に、開口部を含み、作動液貯液室と前記シリンダ孔とを連絡するリリーフポートが設けられ、
    前記カップシールは前記ピストンに装着され、
    前記ピストンが前記液圧発生室側へ移動するのに応じて、前記カップシールが前記開口部を通過することにより、前記開口部を介した前記液圧発生室と前記作動液貯液室との連絡を遮断する、液圧式マスタシリンダ。
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