JP2004233301A - 測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】測定装置の筐体107に、凹状に形成された測定部111を設ける。絶縁基板101上に電極102、結合層103、固定化酵素層104、制限透過層105をこの順に形成してセンサとする。制限透過層105の上部を一部測定部111から露出させるようセンサを筐体107内に収容し、シール110を用いて封止する。筐体107表面および露出したセンサの表面に、付着物質106を付着させる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体試料中の特定成分を測定する測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体試料等に含まれる各種成分の測定方法として、酵素反応と電気化学反応を組み合わせた方法が広く用いられている。バイオセンサは、こうした手法を利用したセンサの一つであり、試料中の特定成分を酵素の機能により他の物質に変換し、この物質を酸化還元反応により計測する。
【0003】
バイオセンサを利用した測定装置は、臨床検査用の大型のものから一般用途向けの携帯型のものまで、様々な形態のものが存在する。このうち携帯型のものは、小型のプラスチック製筐体にバイオセンサを収納した構成を有する(特許文献1等)。
【0004】
このような測定装置を新規に購入し使用する場合、センサを開梱し保存液に浸漬した後、測定対象となる液体試料に接触させて測定を行う。
【0005】
ところが、初期使用時の測定において測定値が正確に得られないことがあった。また、表面の乾燥したセンサを保存液に浸漬した後、測定を行ったときにも同様の現象が生じることがあった。
【0006】
本発明者は、このような現象の起こる原因を鋭意検討したところ、かかる現象はセンサ表面に生じる気泡が原因であることを究明した。プラスチック製の筐体やセンサの表面は、通常、疎水性を有する。このため、センサを、水溶液である保存液や液体試料に浸漬した際、センサ表面が水に充分に濡れず、気泡が発生しやすい。気泡は、測定対象となる成分がセンサ中に拡散することを妨害し測定値に大きな誤差をもたらす原因となる。
【0007】
こうした気泡の発生は、センサの構造によってさらに顕著となる場合がある。バイオセンサを用いた携帯型測定装置では、筐体に段差部を設け、この段差の底部にセンサの露出したセンサ感応部を配する構成がしばしば採用される。こうすることにより、測定値の変動が抑制される場合がある。ところが、このような段差を設けた場合、この箇所に気泡が発生しやすく、しかも気泡の除去が困難となる。
【0008】
また、血液や尿等の生体試料を測定するセンサにおいては、センサ表面に防汚性を有する制限透過層を設ける場合があり、かかる構成を採用した場合、さらに気泡が発生しやすくなる。こうしたセンサの一例が特許文献2に記載されている。図11に、同文献に記載されたセンサの例を示す。図示したセンサは、絶縁基板120上に電極121が形成され、その上に結合層122、固定化酵素層123および制限透過層124がこの順で積層した構造を有している。制限透過層124はたとえばフッ素樹脂により構成される。この層を設けることにより、生体試料由来の汚染物質の付着を抑制するとともに、目的とする測定に対し干渉物質や妨害物質の影響を排除することが可能となるが、反面、センサ表面の気泡の発生を促進する原因となる。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−159366号公報
【特許文献2】
特開2000−81409号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサの表面に気泡が付着することによる測定精度の低下を抑制する技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、開口部の設けられた筐体と、該筐体に内蔵されたセンサとを備え、前記開口部から前記センサの表面の少なくとも一部が露出した測定装置であって、前記センサの露出部または前記露出部周辺の筐体表面に、水溶性または水分散性の物質が付着していることを特徴とする測定装置が提供される。
【0012】
本発明において、「水溶性の物質」とは、水が溶媒和して水中に分散する物質をいう。一方、「水分散性の物質」とは、水中において沈澱することなしに安定して存在する物質のことである。また「付着」とは、上記物質が水溶液中で容易に分散ないし溶解するよう状態で付着していることをいう。
【0013】
この測定装置では、センサの露出部または前記露出部周辺の筐体表面に、水溶性または水分散性の物質が付着しているため、センサ表面が親水性の状態となり、測定対象となる液体にセンサを浸漬した際、気泡が発生せず、良好な測定状態が得られる。しかも、これらは保存液や試料溶液中で容易に分散ないし溶解するため、センサ表面に残存して測定精度を低下させることもない。
【0014】
本発明の測定装置において、前記筐体は凹部を有し、この凹部に前記開口部が設けられている構成とすることができる。こうすることにより、凹部に液体試料を保持しやすくなり装置の取扱性、操作性が向上する。たとえば、センサ部分に液体試料を滴下する方式の測定装置とした場合、凹部に滴下した液体試料を貯留し、充分な精度で測定を行うことができる。こうした凹部を設けた場合、測定精度の向上を図ることができる反面、センサ表面に気泡が発生しやすくなるが、本発明においてはこうした気泡の発生を効率的に抑制することができる。
【0015】
本発明の測定装置において、前記センサの表面が、疎水層により構成されている構成とすることができる。また、本発明の測定装置において、前記センサは、絶縁基板上に設けられた電極と、該電極の上部に形成された固定化酵素層と、該固定化酵素層の上部に形成された制限透過層とを有し、前記センサの表面が前記制限透過層により構成されていることができる。制限透過層は、たとえばフッ素含有樹脂を含む構成とする。
【0016】
こうすることにより、生体試料中の物質がセンサ表面に付着して測定精度を低下させることを効果的に抑えることができる。上記のようなセンサ表面とした場合、測定精度の向上を図ることができる反面、センサ表面に気泡が発生しやすくなるが、本発明においてはこうした気泡の発生を効率的に抑制することができる。
【0017】
本発明の測定装置において、前記物質は多価アルコールを含む構成とすることができる。多価アルコールは、センサ表面への付着性および水溶液への分散性に優れる。このため、気泡の発生を抑制するとともに、保存液や試料溶液中で容易に分散ないし溶解してセンサの測定精度を良好に維持することができる。
【0018】
本発明は、たとえば尿中のグルコース(尿糖)を測定する尿糖センサや溶液中の過酸化水素を測定するセンサを含む測定装置に好適に適用することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の測定装置では、筐体からセンサの電極上部が露出しており、露出部にて液体中の成分を電気化学的に検出する。そして、センサの露出部周辺において測定装置の表面に水分散性物質が付着している。以下、アンペロメトリックセンサを用いる測定装置を例に、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
(第一の実施形態)
本実施形態に係る測定装置は、過酸化水素の発生量を測定する酵素センサを備える。センサの筐体からの露出部およびその周辺に、水溶性または水分散性の物質が付着している。
【0021】
本実施形態に係る測定装置について、図1および図2を参照して説明する。図1および図2は、本実施形態に係る測定装置の構成を示す図であり、図1は図2のA−A’方向の断面図である。絶縁基板101上に作用極として機能する電極102が設けられ、その上に結合層103が形成されている。そして、さらにその上に、酵素を有機高分子中に固定化した固定化酵素層104、制限透過層105が順次形成されている。
【0022】
以上の構成を有するセンサは、筐体107に収納されている。筐体107は防水機能を有し、かつ電極102の表面のみが露出するように開口が形成されている。また、筐体107は開口を含むように凹状に形成された測定部111を有する。測定部111において、センサと筐体107はシール110によって封止されており、開口から筐体107内への水の浸入を防止している。そして、測定部111の表面に、付着物質106が付着している。
【0023】
付着物質106の材料としては、水分散性または水溶性の物質が用いられる。付着物質106は、水系の液体に浸漬した際、筐体107表面から液体中に速やかに分散または溶解する状態で付着している。付着物質106は、測定部111表面を被覆し、被膜を形成していてもよいし、測定部111表面への気泡の吸着が抑制される程度に付着していてもよい。付着物質106が被膜を形成している場合の付着物質106の厚さは、たとえば0.05μm〜500μm程度とする。0.05μm以上とすることにより、表面への気泡の付着が好適に抑制される。また、500μm以下とすることにより、保存液または試料液体に浸漬した際に液体中に速やかに分散される。
【0024】
付着物質106の具体例としては、
グリセリン、エチレングリコール、ソルビタンなどの低分子多価アルコール;
ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとの共重合体等の高分子多価アルコール;
ポリカルボン酸、ポリスルホン酸あるいはこれらの誘導体;
水溶性ゼラチン、カゼイン等の水溶性ポリアミノ酸またはタンパク質;
グルコース、ソルビトールなどの単糖類;
各種オリゴ糖;
水溶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;
デキストラン、デキストリン、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、ペクチン、ポリアルギン酸、グアーガム、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アガロース、カラギーナン、アラビアガム等の多糖類;
ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤;
フェロセン、チアニン、フェリシアン、フェロシアン等、血糖計のメディエーターとして用いられる物質;
等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、また併用することもできる。たとえば付着物質106としてPEGとPVAとを併用する場合、PEGが付着物質106全体に対して50wt%以上含まれる構成としてもよい。
【0025】
このうち、グリセリン、エチレングリコール、ソルビタンなどの低分子多価アルコール;
ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの高分子多価アルコール;
アガロース等の多糖類;
が好ましく用いられる。センサ表面への付着性および水溶液への分散性に優れるからである。特に、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの高分子多価アルコールは、センサ表面全体に均一に付着する上、水溶液に速やかに分散するため好ましく用いられる。
【0026】
付着物質106は、水中に分散または溶解した状態でセンサまたは筐体の表面に接触させ付着させる。この点については後述する。
【0027】
付着物質106として高分子を用いる場合、その分子量は、物質の分散性、溶解性に応じて適宜選択されるが、たとえば500以上100万以下とすることができ、低分子物質や高分子物質を用いることができる。分子量を500以上とすることにより、付着物質106を確実に測定部111表面周辺に付着させることができる。また100万以下とすることにより、初回使用時に液体中に浸漬した際の付着物質106の分散または溶解が確保される。さらに好ましくは、1000以上10万以下の範囲であることが好ましい。なお、ここでいう分子量とは重量平均分子量をいい、JIS規格K−0070により求められた水酸基価から算出される。
【0028】
具体的には、たとえば付着物質106としてPEGを用いる場合、分子量500〜50万程度とすることが好ましく、PVAを用いる場合、2000〜9万程度とすることが好ましい。こうすれば、気泡を確実に抑制し、また水溶液中に速やかに溶脱する。
【0029】
本実施形態で用いられるセンサにおいて、絶縁基板101の材料としては、セラミックス、ガラス、石英、プラスチック等の絶縁性の高い材料から主としてなるものを用いることができる。耐水性、耐熱性、耐薬品性および電極102との密着性に優れた材料であることが好ましい。
【0030】
電極102の材料としては、たとえば白金、金、銀、炭素等から主としてなるものを用いることができ、このうち耐薬品性および過酸化水素の検出特性に優れた白金が好ましく用いられる。また、絶縁基板101と電極102の密着性を改善するために、これらの間にチタン層やクロム層などを挟んでも良い。
【0031】
電極102上に形成された結合層103は、その上部に形成された固定化酵素層104と、下部に形成された絶縁基板101および電極102との密着性を向上させる。また、絶縁基板101の表面の濡れ性を改善し、固定化酵素層104を形成する際の膜厚の均一性を向上させる効果もある。さらには、電極102での過酸化水素の反応に干渉するアスコルビン酸、尿酸およびアセトアミノフェンに対する選択透過性もある。
【0032】
結合層103を構成する材料として、たとえばシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の種類としては、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシランが挙げられるが、このうち、密着性、選択透過性の観点から、アミノシランの一種であるγ−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0033】
固定化酵素層104は、有機高分子を母材として、触媒機能をもつ酵素を固定化したものである。固定化酵素層104は、例えば、各種酵素、グルタルアルデヒド等のタンパク質架橋剤、およびアルブミンを含む溶液を、結合層103上に滴下し、スピンコート法にて形成される。アルブミンは、各種酵素を架橋剤の反応から保護するとともにタンパク質の基材となる。酵素としては、乳酸酸化酵素、グルコース酸化酵素、尿酸酸化酵素、ガラクトース酸化酵素、ラクトース酸化酵素、スクロース酸化酵素、エタノール酸化酵素、メタノール酸化酵素、スターチ酸化酵素、アミノ酸酸化酵素、モノアミン酸化酵素、コレステロール酸化酵素、コリン酸化酵素およびピルビン酸酸化酵素等、触媒反応の生成物として過酸化水素を生成する、または酸素を消費する酵素が挙げられる。
【0034】
ここで、2種類以上の酵素を同時に用いて過酸化水素を生成させてもよい。例えば、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼ、およびサルコシンオキシダーゼがこれに該当する。これらの酵素を用いることによってクレアチニンの検出が可能になる。また、酵素と補酵素を同時に用いてもよい。例えば、3−ヒドロキシ酪酸脱水素酵素とニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)がこれに該当する。これらの酵素を用いることによって3−ヒドロキシ酪酸の検出が可能になる。さらに、酵素と電子メディエータを同時に用いてもよい。この場合は、酵素によって還元された電子メディエータが電極表面上で酸化され、このときに得られる酸化電流値を測定する。例えば、グルコースオキシダーゼとフェリシアン化カリウムがこれに該当する。これらを用いることによってグルコースの検出が可能になる。
【0035】
以上述べたように、固定化酵素層104は、少なくとも酵素を含み、測定対象物質を電極感応物質である過酸化水素等に変換する機能を持つ構成であれば、特に限定されない。さらに、本実施形態のセンサにおいて、異なる触媒機能をもつ複数の酵素を固定化した固定化酵素層104を設ければ、測定試料中の複数の特定試料成分を同時に測定することが可能となる。
【0036】
制限透過層105は、被測定成分の拡散速度を制限し、また、干渉物質や妨害物質の影響を低減する役割を果たし、これにより、測定精度の向上、測定可能範囲の拡大に寄与する。制限透過層105には、たとえばポリジメチルシロキサンやポリカルボン酸のフルオロアルコールエステルが好ましく用いられる。ここで、ポリカルボン酸のフルオロアルコールエステルとは、ポリカルボン酸のカルボキシル基の一部、または全部をフルオロアルコールでエステル化したものである。また、フルオロアルコールとは、アルコール中の水素のすべて、または少なくとも1つをフッ素に置換したものである。タンパク質や尿素化合物等の汚染物質の付着を効率的に抑制でき、長期間使用した場合にも安定した出力特性を示す測定装置が得られる。また、フルオロアルコールエステル基は、ほとんどの非フッ素系溶剤や界面活性剤等の洗剤に溶けることがないため、耐薬品性においても良好な酵素センサが得られる。また、付着物質106は、センサを有する測定装置を保存液中に浸漬すると速やかに液体中に分散または溶解するため、測定精度を低下させる心配もない。
【0037】
以上述べたように、制限透過層105は特定構造のポリマーにより構成されるが、構造や分子量の異なる2種以上のポリマーの混合物により構成されていてもよい。
【0038】
また、制限透過層105の厚さは、好ましくは0.01μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上1μm以下、最も好ましくは0.01μm以上0.1μm以下とする。このような厚さとすることで、応答速度の向上および洗浄時間の短縮化を図ることができる。
【0039】
また、センサを収納する筐体107の材料は、特に限定されないが、たとえば製造コストの低いプラスチックス製とすることができる。この場合、たとえば熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂を用いる場合、たとえばポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)を用いることができる。このうちABS樹脂は、成形性にすぐれ、適度な耐水性を備えているため筐体107の材料として好適に用いられる。本実施形態に係る測定装置においては、測定部111の表面に付着物質106が付着しているため、筐体107の表面が疎水性の場合にも、測定部111における気泡の吸着を抑制することが可能となる。
【0040】
シール110は製造コストの低いゴムを主成分とする物で、かつ防水機能を発揮できる物であれば、特に限定されない。シリコーンゴムやフッ素樹脂ゴムが好ましく用いられるため、本発明においてはシリコーンゴムを用いた。
【0041】
本実施形態に係る測定装置は以上のような構成である。測定部111が凹状に形成されているため、測定時に測定部111に試料液体を貯留し、確実に電極102上部に試料液体を接触させることができる。また、測定部111の表面には付着物質106が付着しているため、使用前の乾燥した測定装置における測定部111の表面が保護されている。
【0042】
また、これを初回使用時に保存液や試料液体に浸漬した際に、測定部111表面が液体になじみやすく、測定部111の表面への気泡の付着が抑制される。付着物質106は速やかに液体中に分散または溶解するため、測定精度も高い。この測定装置は、長期安定性に優れ、広範囲な測定条件下で使用することが可能である。その上、操作方法が簡便であり、装置に不慣れな人でも簡単に取り扱うことができる。なお、測定装置の測定部111を浸漬し、保存しておく保存液には、電解質およびpH緩衝作用を持つ物質(以下、pH緩衝剤とも呼ぶ)が含まれていてもよい。
【0043】
また、本発明のセンサは、その層構造を、各種溶液をスピンコート法等により塗布することによって形成できるので、既存のプレーナ製造工程の大部分を流用することが可能である。したがって、大量に、しかも低コストで生産が可能となり、量産性に優れるセンサ、測定装置が得られる。
【0044】
なお、図1の測定装置においては、測定部111全体に付着物質106が付着しているが、センサ表面にのみ付着させた構成であってもよい。センサ表面に付着させることにより、疎水性の制限透過層105を有するセンサにおいても表面への気泡の付着が抑制される。図1の場合、筐体107の表面にも付着物質106が付着しているため、測定部111に気泡が生じるのをさらに効果的に抑制することができる。また、付着物質106がセンサにおける測定の妨害とならない場合には、保存液や試料液体中に浸漬した際に、完全にこれらの液体中に溶解または分散しなくてもよい。
【0045】
また付着物質106をセンサ露出部に付着させることは、本実施形態のように測定部111が凹状に形成されている場合であっても気泡の滞留が抑制されるため、効果的である。すなわち付着物質106を、センサ露出近傍の筐体107表面に付着させてもよい。こうすれば、筐体107が疎水性を有する場合であっても、センサ露出表面近傍における筐体107表面への気泡の付着が抑制されるため、センサの測定精度を向上させることができる。たとえば、センサ表面が比較的親水性である場合、筐体107にのみ付着物質106を付着させても効果的である。
【0046】
次に、図1および図2の測定装置の製造方法について説明する。
【0047】
まず、センサの作製について説明する。絶縁基板101の材料はガラス、石英、プラスチックス等が好ましく用いられるが、特に限定されず、耐久性等を考慮してガラスが好ましい。また、絶縁基板101上の電極102には、たとえば金、白金、銀、炭素およびこれらの化合物が好ましく用いられる。電極102は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、ケミカルベーパーディポジッション法、電解法等により絶縁基板101の表面に形成することができ、このうちスパッタリング法が望ましい。絶縁基板101との密着性が良好であり、かつ、白金層を容易に形成できるからである。
【0048】
次に、結合層103を形成する。結合層103は、シランカップリング剤を主成分とし、これをスピンコートすることにより形成することができる。この際、シランカップリング剤濃度は、1v/v%程度とすることが好ましい。選択透過性が顕著に向上するからである。
【0049】
そして、結合層103上に固定化酵素層104を形成する。固定化酵素層104の形成方法については、均一な厚さの層が得られる方法であれば特に制限がなく、スピンコート法以外にもスクリーン印刷法、スプレーコート法、ディップコート法などを用いることもできる。
【0050】
制限透過層105は、上述の物質の溶液または分散液を、固定化酵素層104上に滴下してスピンコート法により形成することができる。たとえば制限透過層105としてポリメタクリル酸のフルオロアルコールエステルを用いる場合、溶液中のポリメタクリル酸のフルオロアルコールエステルの濃度は、測定対象物質にもよるが、0.1〜5wt%とすることが好ましく、0.3wt%程度とすることがさらに好ましい。こうすることにより、良好な制限透過性が発現される。なお制限透過層105の形成方法については、均一な厚さの層が得られる方法であれば制限がなく、スピンコート法以外にもスプレーコート法やディップコート法なども用いることができる。
【0051】
このように、結合層103、固定化酵素層104、および制限透過層105は、簡単な工程で均質な薄膜を製造することが可能であり、量産性にも優れている。
【0052】
以上により、センサが得られる。筐体107に、得られたセンサ、および端子109を実装し、電線108によりセンサと端子を結線する。浸水する可能性のある場所に、シール110を注入し防水処理を施す。なお、筐体107の作製方法には特に制限がなく、用いる材料に応じて、プラスチックに用いられている公知の方法から適宜選択することができる。筐体107は、24℃の室温下等で充分に乾燥させる。
【0053】
次に、測定部111表面に付着物質を付着させる。その方法として、たとえば純水やイオン交換水を溶媒とする付着物質含有液体に測定部111を含む測定装置の一部を浸漬し、ディップコート法により付着物質106を付着させる方法が挙げられる。
【0054】
図6は、ディップコート法による製膜方法を示す図である。図6(a)に付着物質106を製膜前の状態、図6(b)に測定部111を含む測定装置の一部を付着物質含有液体117に浸漬した状態、図6(c)に溶液から引き上げ、付着物質106が製膜された状態をそれぞれ示す。浸漬時間は特に限定されないが、センサ、シール110、および筐体107に付着物質106が接触すればよいため、数秒間程度でよい。
【0055】
付着物質106の分散液または溶液の濃度は、たとえば0.5wt%以上30wt%以下とすることができる。0.5wt以上とすることにより、センサ表面や筐体107表面に充分量の付着物質106を均一に付着させ、膜を形成することができる。また30wt%以下とすることにより、得られた測定装置の表面が乾燥した状態で保存液や試料液体に浸漬した際に、付着物質106を確実に試料液体中に溶解または分散させることができる。より好ましくは3wt%以上10wt%以下、さらに好ましくは、1wt%以上10wt%以下とすることができる。
【0056】
付着物質106の形成方法として、他に、窒素ガス等の不揮発性の気体を用いて付着物質含有液体117を吹き付けるスプレーコート法や、刷毛塗り等を用いてもよい。用いる溶媒または分散媒は、たとえば純水もしくはイオン交換水とする。
【0057】
また、付着物質106は、上述のようにセンサを防水シールを用いて筐体107に実装した後に付着させることが好ましい。こうすることにより、センサとシール110が具備された筐体107を付着物質106の分散液または溶液に浸漬もしくは溶液を吹き付けるだけで、表面に容易に付着させることができるからである。
【0058】
このように、本実施形態の測定装置では、簡単な工程で付着物質106を測定部111表面に付着させることが可能であり、量産性にも優れている。付着物質106を付着させた後、表面を充分に乾燥させてから、測定装置の使用を開始する。
【0059】
以上の方法により得られた測定装置は、たとえばグルコースセンサ、尿糖センサまたは過酸化水素センサ等として好適に使用される。たとえばグルコースセンサとして使用する場合、測定対象物質を含む試料溶液を測定する前、すなわち、測定装置を電極102が乾燥している状態で電解質を含む緩衝液中に浸漬し、測定装置最外層の付着物質106を充分に液体中に分散または溶解させておく。こうすると、測定部111表面への気泡の付着が抑制され、試料溶液が制限透過層105表面になじみやすくなるため、測定精度が向上する。
【0060】
そして、制限透過層105を通過しグルコース酸化酵素を使用した固定化酵素層104中に拡散したグルコースと酸素は、固定化酵素層104において触媒反応をし、過酸化水素とグルコノラクトンを発生する。このうち過酸化水素が電極102に到達した際の酸化電流を測定することにより、試料溶液中のグルコースの濃度を知ることができる。
【0061】
なお、電極102は、3極系や2極系としてもよい。2極系の場合には、外部の参照極を使用して測定を行い、3極系の場合には、対極と参照極の両方を測定溶液中に同時に浸漬して測定を行う。
【0062】
(第二の実施形態)
本実施形態に係る測定装置は、第一の実施形態に記載の測定装置において、結合層103上部にイオン交換樹脂層116が形成されたセンサを備える。
【0063】
図3は、本実施形態に係る測定装置のセンサの構成を示す断面図である。絶縁基板101上に電極102、結合層103、イオン交換樹脂層116、固定化酵素層104、制限透過層105がこの順に形成されている。また、図2を用いて前述したように、センサを収容する筐体107には測定部111が設けられており、シール110および付着物質106は、第一の実施形態と同様な方法により順次形成される。固定化酵素層104はグルコース酸化酵素を含んでおり、このセンサは、グルコースセンサとして動作する。
【0064】
図3のセンサはイオン交換樹脂層116を備えるため、測定の障害となる干渉物質等が電極に到達することを抑制できる。イオン交換樹脂層116として、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、たとえばナフィオン(登録商標)を用いることができる。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を主成分とするイオン交換樹脂層116は、純水で50%に希釈したエタノールに溶解させて調製したパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を結合層103上に滴下し、スピンコート法で形成される。溶媒としては、たとえばイソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコールが用いられる。滴下するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の濃度は、好ましくは1w/v%以上10w/v%以下、さらに好ましくは5w/v%以上7w/v%以下とする。このような範囲とすることにより、過酸化水素の電極反応に干渉するアスコルビン酸の影響を排除する効果が顕著となる。
【0065】
(第三の実施形態)
本実施形態は、3極系のセンサを有する測定装置に関する。図5は、本実施形態に係る測定装置の構成を示す図であり、図4は、図5の測定装置におけるセンサの構成を示す図である。図4、図5に示すように、絶縁基板101上に作用極113、対極114、および参照極115として機能する電極が設けられ、その上に第二の実施形態と同様に各層が形成されている。
【0066】
絶縁基板101上に、各電極、結合層103、イオン交換樹脂層116、固定化酵素層104、制限透過層105および付着物質106を、第一および第二の実施の形態と同様の方法により順次形成する。
【0067】
作用極113及び対極114の材料は、第一および第二の実施形態における電極102と同様のものとすることができる。また、参照極115の材料には銀/塩化銀が用いられる。
【0068】
このような構成とすると、作用極113、対極114、参照極115が一つの絶縁基板101上に形成されるため、測定装置を駆動しながら溶液を交換することが可能になる。測定部111においてセンサの表面が電解質等で濡れている限り、作用極113、対極114および参照極115の電極間は電気的に接続されることから、センサが一時的に空気に触れても計測が継続できるからである。対極114および参照極115を作用極113と一緒に絶縁基板101の上に組み込むことによりセンサ自体を小型化できる。これにより携帯性等に優れたセンサを得ることができる。
【0069】
本実施形態に係る測定装置は、尿中のグルコース(尿糖)を測定する尿糖センサとして用いた場合、特に効果的である。本実施形態に係る測定装置は第二の実施形態同様イオン交換樹脂層116を有するため、測定の障害となる干渉物質等が電極に到達することを抑制できる。たとえば、尿に大量に含まれる尿素、ビタミンC、アセトアミノフェンの影響を有効に排除できる。このため、ビタミンCを含む清涼飲料を摂取した場合や、アセトアミノフェンを含む解熱剤等を服用した場合にも正確な測定が可能となる。
【0070】
(第四の実施形態)
本実施形態に係る測定装置は、第一の実施形態に記載の測定装置において、固定化酵素層104を有しない構成の測定装置である。図7は、本実施形態に係る測定装置の構成を示す図である。図7に示すように、絶縁基板101上に、少なくとも作用極として機能する電極102が設けられ、その上にγ−アミノプロピルトリエトキシシランから主としてなる結合層103が形成されている。そして、さらにその上にメタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステル層からなる制限透過層105が順次形成されている。そして、該センサは、防水機能を有し、かつ該センサの表面のみが露出する構造を有する筐体107で包括され、該筐体107は該センサと電線108で結線され端子109に接続されている。そして、該センサと該筐体107との間に防水機能を有するシール110が具備され、少なくとも該センサの表面に多価アルコールを主成分とする付着物質106が付着している。
【0071】
絶縁基板101上への電極102、結合層103、制限透過層105、そして付着物質106の形成は、第一、第二、および第三の実施形態と同様の方法により順次行う。
【0072】
本実施形態に係る測定装置を用いることにより、溶液中の酸化物質の測定が可能になり、たとえば過酸化水素の測定に好適に用いることができる。
【0073】
(第五の実施形態)
本実施形態は、第三の実施形態に記載の測定装置に用いたセンサを複数個平面的に配列したマルチセンサに関する。図13および図14は、本実施形態に係るマルチセンサの構成を示す図である。図13(a)は、本実施形態に係るマルチセンサの構成を示す斜視図であり、図13(b)は、図13(a)の点線内の構成を拡大して示した図である。マルチセンサを構成するセンサは、図13(a)に示すように、基板140表面に設けられたセル141およびセル141に組み込まれた酵素電極142で構成されている。そして、図14に示すように、基板140の内部においては、酵素電極142が配線143に接続されている。このため、配線143にポテンシオスタット(不図示)を接続することによって、電気化学測定が可能になる。また、酵素電極142には、それぞれ測定対象物質を検出できる酵素が固定化されている。たとえば、グルコース酸化酵素、乳酸酸化酵素、尿酸酸化酵素、尿素酸化酵素等である。このため、基板表面に試料液体を滴下することによって、試料液体中に含まれる複数の成分について同時に測定することが可能になる。
【0074】
以上、本発明を、実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0075】
たとえば、以上においては、アンペロメトリックセンサを例に説明したが、本実施形態の測定装置におけるセンサは、ポテンショメトリックセンサに用いてもよい。またこれらにおいて、ISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor:イオン感受性電解効果型トランジスタ)などのFETを用いたセンサとすることもできる。
【0076】
また、測定対象に特に限定はなく、試料中の特定成分や、酵素反応により得られる反応生成物の他に、pHや温度としてもよい。反応生成物を検出する温度センサをともに備える構成とすることもできる。
【0077】
図12は、ISFET132を用いたpHメーターの構成の一例を示す図である。図12のpHメーターにおいては、pHメーター本体130に接続する基板131上に設けられたISFET132と比較電極133とに間に測定対象の試料液体を接触させることにより測定を行う。したがって、ISFET132と比較電極133との間に液体を浸入させる必要がある。本実施形態では、このような構成のpHメーターについても、比較電極133の表面に付着物質106を付着されることにより、初期使用時においてこれらの間に確実に液体が浸入するため、精度よくpH測定を行うことが可能となる。また、ISFET132の表面に付着物質106を付着させておいてもよい。ISFET132を用いたpHメーターとしては、たとえば新電元社製のpHメーターを用いることができる。
【0078】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。各実施例で用いる測定装置は、第一の実施形態(図1)に示した構造と同様の構造を有しており、実施例によって、センサの層構造が異なっている。なお、以下の実施例においては、特にことわりがないかぎり「平均分子量」はJIS規格K−0070の方法により求めた水酸基価より算出された重量平均分子量Mwのことである。
【0079】
(実施例1)
本実施例では、図1に示す測定装置において、内蔵されたセンサの電極系を3極系とした測定装置に関する。開口部を有する凹部の形成された筐体中にセンサが内蔵されており、開口部からセンサ表面が露出した構成となっており、表面に水溶性物質が付着している。以下、本実施例に係る測定装置の作製方法について説明する。
【0080】
まず10mm×6mmの石英基板上に、白金からなる作用極(面積7mm2)と対極(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1mm2)を形成した。
【0081】
次に、電極が形成された基板の全面に1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコートして結合層を形成した。その後、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層を形成した。
【0082】
その後、固定化酵素層の上に全面に、パーフルオロヘキサンを用いて0.3wt%に調製したメタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルをスピンコートした後、乾燥を行って制限透過層を形成した。スピンコートの条件は3000rpm、30秒間とした。メタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルは住友スリーエム社製のフロラード722を使用した。フロラード722は、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルであり、GPC測定による数平均分子量Mnは7000程度である。希釈液であるパーフルオロヘキサンには、住友スリーエム社製のフロラード726を使用した。以上により、センサが得られた。
【0083】
そして、ABS樹脂を用いて製作した筐体に、上述のセンサ、防水シール、および端子を実装し、ワイヤーボンディングを用いてセンサと端子を結線した。浸水する可能性のある場所に、シリコーン樹脂を注入し防水処理を施した。
【0084】
24℃の室温下で十分に筐体を乾燥させた後、センサを含む筐体に、純水を用いて0、0.5、1、3、5、10および15wt%に調製したポリエチレングリコール(PEG、重量平均分子量5000)水溶液およびポリビニルアルコール(PVA、重量平均分子量20000)水溶液を作製後、これらのそれぞれにセンサを浸漬した。その後、24℃の室温下で充分に乾燥させた。
【0085】
以上のようにして製作した測定装置を150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液中に浸漬して筐体表面およびセンサ表面に付着する気泡の発生数を、1cm×1cmの面積中に観察される数に基づいて4つの水準に分類した。すなわち、
1・・検出不可
2・・少し発生(数カ所)
3・・発生(数十カ所または大きな気泡1カ所)
4・・多く発生(数百カ所または大きな気泡数カ所)
評価はn=3で行った。表1に結果を示す。結果はnについての平均値で示した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1の結果より、水溶性物質としてPEGやPVAでセンサ表面や筐体表面を被覆しておくことにより、発生する気泡を抑制することが可能であった。
【0088】
なお、本実施例では作用極、対極および参照極を具備したセンサを用い、これらの電極上のすべてに結合層、固定化酵素層および制限透過層を形成した構成としたが、これらの層を作用極のみに形成した構成としてもよい。
【0089】
(実施例2)
実施例1と同様にして、10mm×6mmの石英基板上に、白金からなる作用極(面積7mm2)と対極(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1mm2)を形成した。つづいて、全面に1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコートして結合層を形成した。その後、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層を形成した。
【0090】
その後、固定化酵素層の上に全面に、純水を用いて0.5wt%に調製したポリジメチルシロキサンをスピンコートした後、乾燥を行って制限透過層を形成した。スピンコートの条件は3000rpm、30秒間とした。ポリジメチルシロキサンはダウコーニング(株)社製のDC 84 ADDITIVEを使用した。こうして、センサが得られた。
【0091】
その後、ABS樹脂を用いて製作した筐体に、センサ、防水シール、および端子を実装し、ワイヤーボンディングによりセンサと端子を結線した。そして浸水する可能性のある場所に、シリコーン樹脂を注入し防水処理を施した。
【0092】
24℃の室温下で十分に筐体を乾燥させた後、センサを含む筐体に、純水を用いて0または3wt%に調製したポリエチレングリコール(PEG、重量平均分子量5000)水溶液およびポリビニルアルコール(PVA、重量平均分子量20000)水溶液を作製後、これらのそれぞれにセンサを浸漬した。その後、24℃の室温下で充分に乾燥させた。
【0093】
以上のようにして作製したセンサを備えた測定装置を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES緩衝液中に浸漬して保存し、200mg/dlのグルコース標準液を連続して11回測定し、繰り返し再現性を評価した。繰り返し再現性は以下の式で算出される。
【0094】
繰り返し再現性(%)=標準偏差/平均値×100
得られた繰り返し再現性の平均値を結果として表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2より、水溶性物質で被膜することによって、高い測定精度を維持できることが示された。センサ表面に水溶性物質が付着していない測定装置では、測定精度が著しく低下することが示された。これは、測定装置の表面付近に気泡が付着し、測定精度を低下させたためである。
【0097】
(実施例3)
まず10mm×6mmの石英基板上に、白金からなる作用極(面積7mm2)と対極(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1mm2)を形成した。この表面に1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコートして結合層を形成した後、5w/v%のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液をスピンコートしてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層を形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ0.5v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層を形成した。
【0098】
その後、固定化酵素層の上面に、パーフルオロヘキサンを用いて0.3wt%に調製したメタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルをスピンコートした後、乾燥を行って制限透過層を形成した。スピンコートの条件は3000rpm、30秒間とした。メタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルは住友スリーエム社製のフロラード722を使用した。フロラード722は、ポリメタクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルであり、GPC測定による数平均分子量Mnは7000程度である。希釈液であるパーフルオロヘキサンには、住友スリーエム社製のフロラード726を使用した。こうしてセンサを得た。
【0099】
そして、塩化ビニル樹脂を用いて製作した筐体に、得られたセンサ、防水シール、および端子を実装し、ワイヤーボンディングを用いてセンサと端子を結線した。浸水する可能性のある場所に、シリコーン樹脂を注入し防水処理を施した。
【0100】
24℃の室温下で十分に筐体を乾燥させた後、センサを含む筐体に、純水を用いて3wt%に調製した重量平均分子量500、1000、6000、10000、および30000のPEG水溶液をそれぞれディップコートで被膜した。その後、24℃の室温下で十分に乾燥させた。
【0101】
以上のようにして作製した測定装置を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES緩衝液中に浸漬して保存し、200mg/dlのグルコース標準液を連続して11回測定し、実施例2と同様にして繰り返し再現性を評価した。得られた繰り返し再現性の平均値を結果として表3に示す。なお、表3には記載していないが、PEGをディップコートせずに同様に作製した測定装置の繰り返し再現性は、10%以上であった。
【0102】
【表3】
【0103】
表3に示すように、いずれの場合もPEGをディップコートすることにより、繰り返し再現性が向上することがわかった。また、PEGの分子量について比較すると、PEGの分子量が小さいと被膜が十分に形成されず、測定装置表面に付着した気泡によって測定精度が低下したと考えられる。また、分子量が大きいと被膜が不均一になってしまい、TES緩衝液に浸漬した際に十分に溶脱されないため、測定精度が低下したものと考えられる。従って、適度な分子量の水溶性物質を被覆することによって、高い測定精度を発揮できることが示された。
【0104】
(実施例4)
本実施例では、センサの最外層の構成を変えて2種類のグルコースセンサを作製した。測定装置の構成は実施例3に記載の測定装置と概略等しいが、筐体の材料としてABS樹脂を用いた。なお、本実施例でも、センサ表面に付着させる水溶性物質としてPEGを用いた。
【0105】
まず10mm×6mmの石英基板上に、白金からなる作用極(面積7mm2)と対極(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1mm2)を形成した。
【0106】
つづいて、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコートして結合層を形成した後、5w/v%のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液をスピンコートしてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層を形成した。次に、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液をスピンコートして、固定化酵素層を形成した。
【0107】
次に、一方については、パーフルオロヘキサンを用いて0.3wt%に調製したメタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルをスピンコートした。スピンコートの条件は3000rpm、30秒間とした。メタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルは住友スリーエム社製のフロラード722を使用した。平均分子量(Mn)は約7000である。希釈液であるパーフルオロヘキサンには、住友スリーエム社製のフロラード726を使用した。
【0108】
他方については、キシレンヘキサフロライドを用いて1wt%に調製したポリアクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルとポリメタクリル酸ペンチルの共重合体溶液を、上記と同様にしてスピンコートした。
【0109】
その後、ABS樹脂を用いて製作した筐体に、得られたセンサ、防水シール、および端子を実装し、ワイヤーボンディングを用いてセンサと端子を結線した。浸水する可能性のある場所に、シリコーン樹脂を注入し防水処理を施した。
【0110】
24℃の室温下で十分に筐体を乾燥させた後、センサを含む筐体に、純水を用いて3wt%に調製した重量平均分子量6000のPEG水溶液をそれぞれディップコートで被膜した。そして、さらに24℃の室温下で十分に乾燥させた。
【0111】
以上のようにして作製した2種類の測定装置を、それぞれ150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES緩衝液中に浸漬して保存し、約20mg/dlのグルコースを含むバイオラッド(株)社製の定量用尿コントロール正常(ライフォチェック)を11回連続して測定した。評価はn=3で行った。
【0112】
このうち、ポリアクリル酸1H,1H−パーフルオロオクチルとポリメタクリル酸ペンチルの共重合体溶液を用いて制限透過層を作製したセンサを有する測定装置の測定結果を図9に示す。
【0113】
その結果、表面にPEGを付着させた測定装置については、測定精度および繰り返し再現性の低下は、起こらなかった。特に、1回目と2回目以降の測定値がほぼ一致していること、および測定精度を維持できることが確認された。また、センサ間のばらつきも小さかった。これより、付着したPEGは測定装置の表面から速やかに溶脱することがわかった。なお、制限透過層にメタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルを用いたセンサについても同様の結果が得られた。
【0114】
(実施例5)
本実施例では、固定化酵素層にグルコース酸化酵素と乳酸酸化酵素を含むセンサを用いた測定装置を用いた。本実施例の測定装置は、筐体が開口部を有する凹部を備え、開口部から筐体に内蔵されたセンサ表面が露出しており、また温度計を備えている。センサ表面には水溶性物質としてPEGを付着させた。
【0115】
測定装置の作製は以下のようにして行った。まず、10mm×6mmの石英基板上に、白金からなる2個の作用極(面積7mm2)と1個の対極(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1mm2)を形成した。
【0116】
つぎに、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコートして結合層を形成した後、5w/v%のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液をスピンコートしてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン)を主成分とするイオン交換樹脂層を形成した。次に、ホォトリソグラフィ手法を用いて、グルコース酸化酵素を含み、かつ1v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液と、乳酸酸化酵素を含み、かつ0.5v/v%のグルタルアルデヒドを含む22.5w/v%アルブミン溶液を個々の作用極上にそれぞれスピンコートして、グルコース酸化酵素層と乳酸酸化酵素層を形成した。
【0117】
そして、パーフルオロヘキサンを用いて0.3wt%に調製したメタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルをスピンコートし、2種類のセンサを製作した。スピンコートの条件は3000rpm、30秒間とした。メタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルは住友スリーエム社製のフロラード722を使用した。GPC測定による数平均分子量Mnは7000程度である。希釈液であるパーフルオロヘキサンには、住友スリーエム社製のフロラード726を使用した。
【0118】
その後、ABS樹脂を用いて製作した筐体に、得られたセンサ、防水シール、および端子を実装し、ワイヤーボンディングによりセンサと端子とを結線した。浸水する可能性のある場所に、シリコーン樹脂を注入し防水処理を施した。
【0119】
その後、24℃の室温下で十分に筐体を乾燥させた後、純水を用いて3wt%に調製した平均分子量7000のPEGをそれぞれディップコート法により被膜した。そして、さらに24℃の室温下で十分に乾燥させた。
【0120】
以上のようにして作製した測定装置を、150mMの塩化ナトリウムおよび防腐剤を含むpH7のTES緩衝液中に浸漬して保存した。バイオラッド(株)社製の定量用尿コントロール正常(ライフォチェック)にグルコースおよびリチウム乳酸をそれぞれ180mg/dlおよび10mM含むように添加し、測定試料溶液とした。そして、これらの試料液体について11回連続して測定し、繰り返し再現性を求めた。図10にセンサ出力を初回の出力値を100%としたときの相対出力値で示した。
【0121】
図10より、グルコースまたは乳酸のいずれの測定の場合にも、1回目と2回目以降の測定値はほぼ一致しており、測定精度を維持できることが確認された。また、繰り返し再現性は2.7および3.4%を示し、高い繰り返し再現性が示された。
【0122】
(実施例6)
本実施例においては、図7に示す測定装置において、センサの電極系を3極系とした構成の測定装置を作製した。センサ表面には水溶性物質としてPEGを付着させた。
【0123】
本実施例に係るセンサは以下のようにして作製した。まず10mm×6mmの石英基板上に、白金からなる2個の作用極(面積7mm2)と対極(面積4mm2)、銀/塩化銀からなる参照極(面積1mm2)を形成した。次に、1v/v%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスピンコートして結合層を形成した後、パーフルオロヘキサンを用いて0.3wt%に調製したメタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルをスピンコートした。スピンコートの条件は3000rpm、30秒間とした。メタクリル酸樹脂のフルオロアルコールエステルは住友スリーエム社製のフロラード722を使用した。GPC測定による数平均分子量Mnは7000程度である。希釈液であるパーフルオロヘキサンは、住友スリーエム社製のフロラード726を使用した。
【0124】
その後、24℃の室温下で十分に筐体を乾燥させた後、センサを収納する筐体に、純水を用いて3wt%に調製した重量平均分子量7000のPEGをそれぞれディップコートで被膜した。そして、さらに24℃の室温下で十分に乾燥させた。
【0125】
以上のようにして作製した測定装置を、150mMの塩化ナトリウムを含むpH7のTES緩衝液中に浸漬して保存し、10mMの過酸化水素を、毎日1回、30日間連続して測定し、センサ出力の電流値を測定した。
【0126】
その結果を図8に示す。図8より、1日目と以降の測定値はほぼ一致しており、測定精度を維持できることが確認された。また、繰り返し再現性は3.0%を示し、高い繰り返し再現性が示された。
【0127】
以上の実施例においては、センサ表面にPEGまたはPVAを付着させたが、低分子量物質であるグルコースまたはグリセリンを用いた場合にも、繰り返し再現性が向上し、精度の高い測定を行うことができた。さらに、水分散性物質であるアガロースを用いた場合にも繰り返し再現性が向上した。
【0128】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、センサの表面へ気泡が吸着することによる測定精度の低下を抑制する技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る測定装置の構成を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る測定装置の構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係るセンサの構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係るセンサの構成を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る測定装置の構成を示す断面図である。
【図6】図1の測定装置の製作方法を示す図である。
【図7】本実施形態に係るセンサの構成を示す図である。
【図8】実施例に係るセンサの安定性を示す図である。
【図9】実施例に係るセンサの安定性を示す図である。
【図10】実施例に係るセンサの安定性を示す図である。
【図11】従来のセンサの断面を示す図である。
【図12】本実施形態に係るpHメーターの構成を示す図である。
【図13】本実施形態に係るマルチセンサの構成を示す図である。
【図14】本実施形態に係るマルチセンサの構成を示す図である。
【符号の説明】
101 絶縁基板
102 電極
103 結合層
104 固定化酵素層
105 制限透過層
106 付着物質
107 筐体
108 電線
109 端子
110 シール
111 測定部
113 作用極
114 対極
115 参照極
116 イオン交換樹脂層
117 付着物質含有液体
120 絶縁基板
121 電極
122 結合層
123 固定化酵素層
124 制限透過層
130 pHメーター本体
131 基板
132 ISFET
133 比較電極
140 基板
141 セル
142 酵素電極
143 配線
Claims (6)
- 開口部の設けられた筐体と、該筐体に内蔵されたセンサとを備え、前記開口部から前記センサの表面の少なくとも一部が露出した測定装置であって、
前記センサの露出部または前記露出部周辺の筐体表面に、水溶性または水分散性の物質が付着していることを特徴とする測定装置。 - 請求項1に記載の測定装置において、前記筐体は凹部を有し、この凹部に前記開口部が設けられていることを特徴とする測定装置。
- 請求項1または2に記載の測定装置において、前記センサの表面が、疎水層により構成されていることを特徴とする測定装置。
- 請求項1乃至3いずれかに記載の測定装置において、前記センサは、絶縁基板上に設けられた電極と、該電極の上部に形成された固定化酵素層と、該固定化酵素層の上部に形成された制限透過層とを有し、前記センサの表面が前記制限透過層により構成されていることを特徴とする測定装置。
- 請求項4に記載の測定装置において、前記制限透過層は、フッ素含有樹脂を含むことを特徴とする測定装置。
- 請求項1乃至5いずれかに記載の測定装置において、前記物質は多価アルコールを含むことを特徴とする測定装置。
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-
2003
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