JP2004239185A - 過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構成でエンジンの動的バランスを取ることができるとともに、高出力を出すことのできる過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関の提供。
【解決手段】直列に3個のクランクピンを有するクランクシャフトの両端に同位相で装着された計2対の双方向往復出力ピストンと、2対の双方向往復出力ピストンと180度異なる位相で中央のクランクピンに装着された1対の双方向往復過給ピストンと、双方向往復過給ピストン用シリンダーへの吸気用開口部と、双方向往復過給ピストン用シリンダーからの加圧空気送気用開口部と、各双方向往復出力ピストン用シリンダーへの加圧空気取込用開口部と、各双方向往復出力ピストン用シリンダーからの排気用開口部と、を有するシリンダーヘッドと、を備えた過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関。
【選択図】 図2
【解決手段】直列に3個のクランクピンを有するクランクシャフトの両端に同位相で装着された計2対の双方向往復出力ピストンと、2対の双方向往復出力ピストンと180度異なる位相で中央のクランクピンに装着された1対の双方向往復過給ピストンと、双方向往復過給ピストン用シリンダーへの吸気用開口部と、双方向往復過給ピストン用シリンダーからの加圧空気送気用開口部と、各双方向往復出力ピストン用シリンダーへの加圧空気取込用開口部と、各双方向往復出力ピストン用シリンダーからの排気用開口部と、を有するシリンダーヘッドと、を備えた過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人が発明し特許化された(特許文献1)及び(特許文献2)には「4個のクランクピンを有するクランクシャフトと夫々のクランクピンに1対の双方向往復ピストンを装着した8気筒構成の双方向型往復ピストン機関」が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3137283号公報
【特許文献2】
米国特許 No.5873339
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(特許文献1)及び(特許文献2)に記載された8気筒構成の場合は完全な動的バランスが可能であるが、双方向往復ピストン機関では一つのクランクピンに2個のピストンが装着されるために4気筒構成の場合についてはクランクピンの数が2個となり、このままでは動的バランスを構成することが不可能であるという課題を有していた。
従来のピストン機関においては、4気筒構成は最も多く使用されるピストン構成であり、双方向往復ピストン機関においても8気筒構成よりも少ない気筒構成が成立する機構が可能であれば双方向往復ピストン機関の適用範囲を広げることが出来る。
【0005】
【課題を解決するための手段】
4気筒構成を実現するために2個のクランクピンを有するクランクシャフトを使用した場合は、双方向往復ピストンの組み合わせだけでは完全な動的バランスを取ることが不可能である。
次にクランクピンを1個増やして、3個のクランクピンを有するクランクシャフトの場合について考える。
3個のクランクピンを有するクランクシャフトにおいて、その両側のクランクピンは同相で共に中央のクランクピンに対して180度の位相差を有し、中央のクランクピンに対して一対のダミーの双方向往復ピストンを装着し、両側のクランクピンに対して、吸気、圧縮、爆発、排気の4行程1サイクルを行う双方向往復出力ピストンを夫々に装着した場合、2対の双方向往復出力ピストンの遠心力が相等しくその合計遠心力が1対の双方向往復ダミーピストンの遠心力と等しくなるようにすれば、動的バランスが達成できる。
なお、双方向往復ピストンの遠心力は下記であらわされる。(双方向往復ピストン機関のピストンの上昇端、下降端における遠心力)
遠心力 F=Mrω2
(F:力[N]、M:ピストンの質量[kg]、r:クランクピンの回転半径[m]、ω:回転速度[1/sec])
従って、ピストンの質量だけでなくクランクピンの回転半径を調整することによっても動的バランスを取ることが可能である。
例えば双方向往復出力ピストンのクランクピンの半径に対して、双方向往復ダミーピストンのクランクピンの半径を1.25倍にして、同じく質量を1.6倍すれば、双方向往復ダミーピストンの遠心力は双方向往復出力ピストンの遠心力の1.25×1.6=2倍となって動的バランスが取れる。
同じくクランクピンの回転半径が同じであれば、1対の双方向往復ダミーピストンの質量を1対の双方向往復出力ピストンの2倍にすれば良い。
従って、ダミーピストンを追加することは8気筒構成よりも少ない気筒構成への一つの解決方法である。しかしながらダミーピストンは動的バランスの機能以外にエンジン機能の改善がなく、この改善案については次に述べる。
【0006】
ダミーピストンの追加は単に動的バランスの問題が解決されるだけであるが、ダミーピストンの代わりにある機能を持ったピストンを用いる事により、動的バランスの解決の他に新たな機能改善が可能となる。
ある機能を持ったピストンとして、出力ピストンにその排気量以上の空気を送る目的の過給ピストンを装備する事により、以下に述べるように多くの長所を得ることが出来る。
ダミーピストンの代わりに過給ピストンをクランクシャフトに装着して得られる機能について、以下にその説明を行う。
【0007】
図2に双方向往復ピストン機関の説明図を示す。
吸気、圧縮、爆発、排気の4行程1サイクルを担うピストンを出力ピストンと呼び、吸気、送気の2行程1サイクルを行うピストンを過給ピストンと呼ぶこととする。
双方向往復ピストンとして組み合わされた2個の出力ピストン(PP−1)を1対の双方向往復出力ピストンと呼ぶことにし、過給ピストン(SP−1)についても同様に1対の双方向往復過給ピストンと呼ぶこととする。
2対の双方向往復出力ピストンと1対の双方向往復過給ピストンを3個のクランクピン(CR−2)を有する1本のクランクシャフト(CR−1)に装着した場合について以下検討する。
【0008】
その動作について次に述べる。
図2において、中央のクランクピン(CR−2)に装着された1対の双方向往復過給ピストンは前記のダミーピストンとしての機能も有しているので、全体のピストン間で動的バランスが取れるのは明らかである。
クランクシャフト(CR−1)には3対の双方向往復ピストンが装着されているので、クランクシャフト(CR−1)の軸を中心にして右半分、左半分の夫々に3個のピストンが装着されていることになる。
動的バランスについては、右半分の3個のピストンだけで動的バランスが取れている。又、左半分の3個のピストンだけでも動的バランスが取れている。
ピストンの配列順序は、クランクシャフト(CR−1)の軸先端側から軸後端側に向かって出力ピストン(Power piston)、過給ピストン(Supercharging piston)そして出力ピストン(Power piston)の順番で配列されている。
この3個のピストン配列は動的バランスを成立させる最小単位の組み合わせである。
以降、この3個のピストン配列をその頭文字をとって「PSP配列」と述べることにする。
従って3対の双方向往復ピストン配列の場合は、2セットのPSP配列があると考えることが出来る。
ここではPSP配列が動的バランスをもつことができることを述べたが、更にPSP配列が特長あるエンジン機能を持っている事を次に述べる。
【0009】
PSP配列の動作は次のとおりである。
出力ピストンは吸気、圧縮、爆発、排気の4行程1サイクルの動作を行っている。一方、過給ピストンでは吸気、送気の2行程1サイクルの動作を行っている。従って過給ピストンは4行程の間に2回の送気動作を行うので、各行程のマッチングを考慮することにより、1個の過給ピストンで2個の出力ピストンに対して送気を行うことが可能になる。下記にその動作状態を説明する。
【0010】
(PSP配列)
図1に「PSP配列−過給ピストン、出力ピストンおよびバルブ配置」の概念図を示す。この概念図は連結棒タイプのピストンだけでなく、双方向あるいは単方向往復ピストンに対して共通である。また、図2に双方向往復ピストン機関の説明図を示すが、そのピストン構成は、クランクシャフト(CR−1)の軸の左側、右側の夫々に2個の出力ピストン(PP−1)と1個の過給ピストン(SP−1)を装着し、2セットのPSP配列から成り立っている。以下にその機能を示す。
出力ピストン(PP−1)は吸気、圧縮、爆発、排気の4行程1サイクルを繰り返し、過給ピストン(SP−1)は吸気、送気の2行程1サイクルを繰り返しているが、出力ピストン(PP−1)毎に機能順序をずらすことにより、過給ピストン(SP−1)と出力ピストン(PP−1)のマッチングを取ることが出来る。
双方向往復ピストン機関(PSP配列2セット)の動作行程を表1に示す。
下記の表1の中で*1は1行程では左過給ピストンから左No.1出力ピストンに加圧空気が送られている。*2、*3、*4は夫々2行程、3行程、4行程における過給ピストンと出力ピストンの対応を示している。
また、爆発行程も1行程から4行程まで順番に各出力ピストンで発生している。図1に示す連結棒タイプのピストン構成(PSP配列1セット)の場合、あるいは単方向往復ピストン機関(PSP配列1セット)の場合は、下記の表1の右半分あるいは左半分に相当する。
【表1】
【0011】
以上のように構成された一組のPSP配列によって、次に示す機能、特長が得られる。
1.4サイクルエンジン機能:
2個の出力ピストンによって、4サイクル機関の吸入、圧縮、爆発、排気の4行程の機能を行う。
2.過給機能:
1個の過給ピストンによって、2個の出力ピストンに対して過給を行う。
3.動的バランス機能と出力増大:
2個の出力ピストンおよび1個の過給ピストン、この合計3個のピストンによって動的バランスを取ることができるので、3個のクランクピン間の短い間隔で動的バランスが完結する。このためPSP配列の場合は、従来のピストン配列よりもクランクシャフトの剛性を高くすることができる。
1セットのPSP配列毎に動的バランスが完結するのでクランクシャフトの剛性が高まり、そのため、PSP配列を1セットから複数セットに増やす事が容易になり、出力の増大も実現し易くなる。
4.クランクシャフトの負担の低減:
クランクピンの数が多いクランクシャフトに付いて、従来のピストン機関では9個のクランクピンを有するクランクシャフトの実用例はほとんどないが、PSP配列の場合は3個のクランクピンの間だけで動的バランスが完結し、発生した回転トルクのみを下流のクランクシャフトに伝えるので、クランクシャフトの負担が軽くなり、9個のクランクピンを有するクランクシャフトが実用的になる。
9個のクランクピンを有するクランクシャフトは単方向往復ピストンを装着する場合は3セットのPSP配列を、また双方向往復ピストンを装着する場合は6セットのPSP配列を装着することが可能である。
この時、PSP配列に対応した3個のクランクピン単位毎の位相関係を120度ずつ、ずらすことにより爆発行程の間隔が短くなり、フライホイール等の部品を要さず部品点数を減らすと共にクランクシャフトの回転をスムーズにすることができる。
5.ピストンの形状:
PSP配列に使用するピストンはそのタイプに関係なく有効である。連結棒を使用する従来のピストンに限らず、図2に示す双方向往復ピストンあるいは図11に示す単方向往復ピストンにおいても成立する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1に「PSP配列−過給ピストン、出力ピストンおよびバルブ配置」の概念図を示す。
その機能は1個の過給ピストンと2個の出力ピストンを有する往復ピストン機関に対応する。この図面は連結棒タイプピストン機関用であるだけでなく、双方向往復ピストン機関、単方向往復ピストン機関に適用できる。ピストンの名称については次のように整理する。
ピストンの機能と構造から以下のように各種ピストンの名前を付けている。
ピストンの機能を示す名称として、吸気、圧縮、爆発、排気の機能を有するピストンを出力ピストンと呼び、吸気と送気の機能を有し出力ピストンに対して過給を行うピストンを過給ピストンと呼ぶ。
一方、ピストンの構造を示す名称として、対向して配置された2個のピストンを有するものを「双方向往復ピストン」、1個のピストンを有するものを「単方向往復ピストン」、連結棒を使用するものを「連結棒タイプピストン」と呼んでいる。
連結棒タイプピストンも単方向往復ピストンの一種であるが、モールドタイプの「単方向往復ピストン」と区別して別名としている。
従って、双方向往復ピストンには、「双方向往復出力ピストン」と「双方向往復過給ピストン」の2種類がある。
単方向往復ピストンにも、「単方向往復出力ピストン」と「単方向往復過給ピストン」の2種類がある。
連結棒タイプピストンの場合は、「連結棒タイプ出力ピストン」と「連結棒タイプ過給ピストン」の2種類がある。
【0013】
図1において、クランクシャフト(CR−1)には3個のクランクピン(CR−2)が有り、中央のクランクピン(CR−2)に1個の過給ピストン(SP−1)が装着され、両側の2個のクランクピン(CR−2)には夫々、出力ピストン(PP−1)が装着されている。両側の出力ピストン(PP−1)は同位相であり、中央の過給ピストン(SP−1)に対して180度の位相差を持っている。このためピストンの質量等を考慮することにより3個のクランクピン(CR−2)の間に動的バランスを取ることが出来る。
出力ピストン用シリンダー(CB−2)のシリンダーヘッド(CH−1)には加圧空気取込弁(VL−2)を有する加圧空気取込用開口部(IN−2)と排気弁(VL−3)を有する排気用開口部(OT−2)が装備されている。
過給ピストン用シリンダー(CB−3)のシリンダーヘッド(CH−1)には吸気弁(VL−1)を有する吸気用開口部(IN−1)と加圧空気送気用開口部(OT−1)が装備されている。
また、各シリンダーの基部にはクランク室(CR−3)が形成されている。
【0014】
図1は過給ピストンが上昇を開始する直前の状態を表しており、過給ピストン(SP−1)がシリンダーブロック(CB−1)の過給ピストン用シリンダー(CB−3)内を上昇すると吸気弁(VL−1)が閉じ、加圧空気送気用開口部(OT−1)から送気を行い、2個の出力ピストン(PP−1)は出力ピストン用シリンダー(CB−2)内を下降する。
出力ピストン(PP−1)が下降する場合は出力ピストン(PP−1)の動作モードは吸気行程と爆発行程の2種類が有り、一方の出力ピストン(PP−1)が吸気行程にあるときは他方は爆発行程にある。
図1において、吸気行程にある左側の出力ピストン(PP−1)が下降するとき加圧空気取込弁(VL−2)が開き、出力ピストン用シリンダー(CB−2)内に加圧空気を取込む。一方、爆発行程にある右側の出力ピストン(PP−1)は加圧空気取込弁(VL−2)が閉じているので、常に1個の出力ピストン用シリンダー(CB−2)だけに加圧空気が送気される。
次に、過給ピストン(SP−1)が過給ピストン用シリンダー(CB−3)内を下降する時は吸気弁(VL−1)を開き吸気用開口部(IN−1)から吸気を行う。
この時、2個の出力ピストン(PP−1)の動作モードは圧縮行程と排気行程の2種類が有り、一方の出力ピストン(PP−1)が圧縮行程にあるときは他方は排気行程にある。
圧縮行程にある出力ピストン用の加圧空気取込弁(VL−2)と排気弁(VL−3)は共に閉じている。一方、排気行程にある出力ピストン用の排気弁(VL−3)は開いているが加圧空気取込弁(VL−2)は閉じている。
【0015】
図2に実施の形態1における双方向往復ピストン機関の説明図を示す。この機構は2セットのPSP配列に対応する。
図2中、EB−1は対向して配置されクランクシャフト(CR−1)を回転可能に支持するエンジンベッド、RS−1Aはクランクピン(CR−2)に回転自在に配設された回転滑り子である。
出力ピストン(PP−1)及び過給ピストン(SP−1)はクランクピン(CR−2)に対して左右に配設され、対向して配置されたシリンダーブロック(CB−1)に形成された出力ピストン用シリンダー(CB−2)及び過給ピストン用シリンダー(CB−3)に収納されている。
図2におけるピストン位置は1行程の始まりと考えることが出来る。クランクシャフト(CR−1)が180度回転するごとに2行程、3行程、4行程に移って行き、クランクシャフト(CR−1)が2回転するとはじめの1行程に戻る。
【0016】
次に、ピストンと回転滑り子の接触面について説明する。
図3は双方向往復ピストンの要部断面図であり、図4(a)及び(b)は回転滑り子の正面図及び右側面図である。
図3において、回転滑り子(RS−1A、1B)はクランクピン(CR−2)に回転自在に装着され、その2面の滑り面が1対のピストン下部の滑り面と接触する。回転滑り子とピストンとが接触する面の形状は2種類有り、ピストンの形状によって使い分けられる。
例えばピストンが円筒形の場合、ピストンと回転滑り子の接触面が平面であればピストンがその中心軸の周りを回転することがありうるので、その場合、ピストンのアーム部分がクランクシャフトのアームと接触してしまう。これを防ぐためには、図4に示すように回転滑り子(RS−1A)とピストンとの接触面(RS−2)の形状を円弧状にすることによってピストンの回転を防ぐ必要がある。
これとは逆に、ピストンが円筒形ではなく、楕円形のような場合は、ピストン自体が回転を防いでいるので、図3の過給ピストン(SP−1)に装着した回転滑り子(RS−1B)のように回転滑り子とピストンの接触面は平面にする必要がある。
なぜなら、2箇所でピストンの回転を拘束すれば、ピストンに歪を生じさせる原因となるからである。従ってピストンの形状によって、ピストンと回転滑り子の接触面を平面にするか、それとも円筒形の一部の形状にするかが決まってくる。
【0017】
図4において、回転滑り子(RS−1A)とピストンとの接触面(RS−2)の潤滑油は、回転滑り子(RS−1A)のクランクピン(CR−2)との接触面(RS−3)からピストンとの接触面(RS−2)に向かって通じる潤滑油通路(RS−4)を通じて供給される。
ピストンにかかるガス圧は回転滑り子を経由して、有効にクランクピンに伝達される。
【0018】
図5は図2におけるA−A断面図である。
クランクピン(CR−2)に回転自在に装着された回転滑り子(RS−1B)を対向する過給ピストン(SP−1)で挟みボルト締めすることにより双方向往復過給ピストンが形成されている。これらの構成は双方向往復出力ピストンにおいても同様である。
ピストンとクランクシャフト間の力の伝達については、出力ピストンの場合は出力ピストンの往復運動がクランクシャフトを回転させる。
逆に、過給ピストンの場合はクランクシャフトの回転力によって過給ピストンが往復運動を行う関係にある。
双方向往復出力ピストンが出力ピストン用シリンダー内を往復すると同時に、回転滑り子が双方向往復出力ピストンの中央部に形成された長孔状のクランク駆動部内を往復運動し、クランクピンとクランクシャフトを回転する。クランクシャフト(CR−1)の回転力によってクランクピン(CR−2)が回転軌跡(CR−4)を描く回転運動を行うと同時に、回転滑り子が矢印方向に往復運動し、双方向往復過給ピストンが過給ピストン用シリンダー(CB−3)内を往復運動する。
【0019】
次に、クランクシャフト(CR−1)について説明する。
図6(a)及び(b)はクランクシャフトの正面図及び左側面図である。
図6において、クランクシャフト(CR−1)は3個のクランクピン(CR−2)を有し、その両側部にカウンターウェイト(CR−5)、(CR−6)を備え、両側のクランクピン(CR−2)は同相でかつ、中央のクランクピン(CR−2)に対して180度の位相差を有している。
【0020】
次に、ピストン形状について説明する。
図7(a)乃至(d)は各々、過給ピストンの正面図、平面図、右側面図、A−A断面図である。
図7において、SP−2は過給ピストンアーム部、SP−3は回転滑り子との接触面、SP−4はピストン同士を結合するための取付けボルト穴である。
過給ピストンの形状は矩形の両側に夫々半円を追加したトラック競技場様の形状をしているが、この事によりクランクシャフトの長さを増やすことなくピストンの断面積を増やすことが出来る。又楕円形の形状にしても同様の効果を得られる。
ピストン頂上部とピストン脚部の中間にある平板部分の断面形状をH型鋼のようにすることにより、ピストンの強度を高めている。
このように、ピストン形状の考慮と強度のある材料の組み合わせにより、従来のピストン、ピストンピンおよび連結棒に相当する部分をモールド成形により一体化することが可能である。
【0021】
図8(a)乃至(d)は各々、出力ピストンの正面図、平面図、右側面図、A−A断面図である。
図8において、PP−2は出力ピストンアーム部、PP−3は回転滑り子との接触面、PP−4はピストンを結合するための取付けボルト穴である。
出力ピストンの形状については、熱効率の点で円形のほうが楕円形あるいは競技場のトラック状の形状よりも優れている。しかし、楕円形状あるいはトラック競技場のような形状においても、点火プラグあるいは燃料噴射弁を2箇所に取付けることにより燃焼効率の悪化を相当程度、カバーできる。また、高い圧縮比を得ることができるので、ガソリンエンジンだけでなく、ディーゼルエンジンにも適用することができる。
【0022】
次に、エンジンベッドについて説明する。
図9(a)乃至(c)は各々、エンジンベッドの正面図、右側面図、下面図である。
エンジンベッド(EB−1)は対向して配置され、軸受(EB−2)でクランクシャフトを回転可能に支持し、ボルト穴(EB−3)において結合される。
双方向往復ピストンは対向して配置したピストンをボルト締めして結合することにより形成されるが、クランクシャフトの軸方向のピストンの幅がエンジンベッド開口部の幅より通常、大きいため、予め各ピストンのアーム部側からエンジンベッドをくぐらせた上で1対のピストンをボルト締めする必要がある。
【0023】
次に、シリンダーブロックについて説明する。
図10(a)乃至(c)は各々、シリンダーブロックの正面図、A−A断面図、B−B断面図である。
クランクシャフトの軸受部分に近いシリンダーブロックの壁(CB−5)が、ピストン間の距離が近いため、狭くなっている。このため、エンジンベッドを別に用意することにより軸受部分の幅を長くすることが可能になり、必要な軸受強度を得ている。エンジンベッドとシリンダーブロック(CB−1)はボルト穴(CB−4)においてボルトで結合される。
【0024】
以上のように構成された、本実施の形態1の双方向往復ピストン機関によれば、過給ピストンがあるために時間の遅れなく出力ピストンに加圧空気が供給され、応答性がよく大出力が得られる。又、複数組のエンジン機構を組合せることが容易なため、大出力化を図れるという作用を有する。
【0025】
(実施の形態2)
図11に実施の形態2における単方向往復ピストン機関の要部断面図を示す。
なお、実施の形態1と同様のものは同じ符号を付して説明を省略する。
図11において、SP−5は過給ピストンの代わりに対向配置され過給ピストンと結合されるアーム体、CB−6はシリンダーブロック(CB−1)の代わりに配置されアーム体(SP−5)を保護する保護ブロックである。尚、これらの構成は出力ピストンにおいても共通である。
よって、図2における双方向往復ピストンの片方のピストンヘッド部分を取り除けば、一方向だけに往復運動を行う単方向往復ピストンとして成立する。
以上のように、本実施の形態2の単方向往復ピストン機関によれば、ピストン部分を熱伝導性の高い材料でモールド成形することが出来るので、連結棒を使用するピストン方式に比べて、より多くの燃料を燃焼でき、排気量あたりの出力を大きくすることが出来る。
又、連結棒を有しないので高調波の発生がなく振動の少ないエンジンにすることが出来る。
単方向往復ピストン機関は双方向往復ピストン機関よりも小出力のピストン機関用として適する。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)1個の過給ピストン、2個の出力ピストンの構成を特徴とするPSP配列、即ち3個のクランクピンを有するクランクシャフトで動的バランスを有する4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(2)過給によりエンジンの出力を大きくすることが出来るので過給ピストンの追加によるエンジンの体積、重量の増大を償うことが出来る省スペース性に優れた4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(3)エンジンの出力増大の手段は排気量の増大の他にPSP配列の数を増やせば良く、又、1個のPSP配列だけで動的バランスが完結しているので、エンジンの出力増大がより容易になり、小出力から大出力までの構成が可能である。大出力の場合は6個のクランクピンを有するクランクシャフトに双方向ピストンを装着すれば、4組のPSP配列が出来る。更に9個のクランクピンを有するクランクシャフトに双方向ピストンを装着すれば、6組のPSP配列が出来る。このような大出力で汎用性に優れた4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(4)ピストンによる送気はターボチャージャのような時間遅れがなく、エンジンのレスポンスが早い信頼性に優れた高出力の4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(5)双方向往復ピストンの構造による出力ピストン、過給ピストンは連結棒を用いてないので、ピストンの熱伝導率を大きくすることが出来、ピストンの冷却能力が大きいため、通常のピストンよりも多くの燃料を燃焼させることが出来、より大きな出力を得ることが出来る4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(6)双方向往復ピストンは連結棒を使用しないので、高調波が発生せず振動を大幅に減らすことが出来る信頼性に優れた4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(7)従来のピストン機関では4気筒構成の場合は4気筒全体で動的バランスを取っている。すなわち、この場合は4個のクランクピンを持ったクランクシャフト全体の長さの中で動的バランスを取っている。
又、直列6気筒構成の場合は6気筒全体で動的バランスを取っている。すなわち、この場合は6個のクランクピンを持ったクランクシャフト全体の長さの中で動的バランスを取っている。
それに対して、PSP配列の双方向往復ピストン機関は3個のクランクピンのクランクシャフトに装着されたピストンで完全な動的バランスを取っている。動的バランスをとるためにクランクシャフトが短くて済むのはクランクシャフトの剛性が高いことにつながり、振動も抑えることが出来る。
このPSP配列を2セット直列につないでも、クランクピン3個分ごとに動的バランスが取れ、一つのPSP配列で発生した回転トルクを次のPSP配列に伝えるだけで良いので、クランクシャフトに対する負担が少なく、全体の振動も大幅に少なくすることが出来る。この結果、現状では実用的でない9個のクランクピンを有するクランクシャフトの実用化が可能である。
(8)過給ピストンはそれ自身に過給機能があるが、その過給ピストン用シリンダーに対して更にターボチャージャからの送気が可能であり、過給効果を増大させることが出来る高出力の4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)3個のクランクピンを有するクランクシャフトに単方向ピストンを装着すれば、1組のPSP配列が出来、この構成により、振動の少ない小型の4サイクル往復ピストン機関を実現できる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)過給ピストンは燃料を燃やさないため、歪みが少ない。そのためピストンの断面積の形状を円形だけでなく、長方形の両側に半円をくっつけた競技場のような形状、あるいは楕円形状にする事が可能であり、このため過給ピストンの排気量をクランクシャフトの長さを延ばすことなく増やすことができる省スペース性に優れた4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)従来の連結棒タイプのピストンにおいて、小型で従来の直列4気筒構成と同等の出力及び低振動の4サイクル往復ピストン機関とすることができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)双方向往復ピストンを用いて6セットのPSP配列を備えることができ、大容量の低振動の4サイクル往復ピストン機関が可能である。
(2)PSP配列に対応した3個のクランクピン単位毎の位相関係を120度ずつずらすことにより、均等な爆発行程がえられる滑らかな出力の4サイクル往復ピストン機関が可能である。
【0031】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の態様について説明する。
請求項1に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、シリンダーと、前記シリンダーの基部に形成されたクランク室とを有したシリンダーブロックと、対向して配設された前記シリンダーブロックの前記各シリンダー内に収納された双方向往復ピストンと、前記双方向往復ピストンの中央部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子と、前記回転滑り子に回転自在に配設されたクランクピンを有したクランクシャフトと、前記クランクシャフトの軸受部を有し前記シリンダーブロックと結合される一対のエンジンベッドと、を備えた過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、直列に3個のクランクピンを有する前記クランクシャフトの両端に同位相で装着された計2対の双方向往復出力ピストンと、前記2対の双方向往復出力ピストンに対して180度異なる位相で中央のクランクピンに装着された過給を行う1対の双方向往復過給ピストンと、前記双方向往復過給ピストン用シリンダーへ吸気を行う吸気弁を有する吸気用開口部と、前記双方向往復過給ピストン用シリンダーから前記双方向往復出力ピストン用シリンダーに加圧空気を送気する加圧空気送気用開口部と、前記各双方向往復出力ピストン用シリンダーへ加圧空気を取込む加圧空気取込弁を有する加圧空気取込用開口部と、前記各双方向往復出力ピストン用シリンダーからの排気を行う排気弁を有する排気用開口部と、が形成されたシリンダーヘッドと、を備えた一組のエンジン機構を1以上配置されている構成を有している。
【0032】
請求項2に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、シリンダーと、前記シリンダーの基部に形成されたクランク室とを有したシリンダーブロックと、前記各シリンダー内に収納された単方向往復ピストンと、前記単方向往復ピストンの基部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子と、前記回転滑り子に回転自在に配設されたクランクピンを有したクランクシャフトと、を備えた過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、直列に3個のクランクピンを有する前記クランクシャフトの両端に同位相で装着された2個の単方向往復出力ピストンと、前記2個の単方向往復出力ピストンに対して180度異なる位相で中央のクランクピンに装着された過給を行う1個の単方向往復過給ピストンと、前記単方向往復過給ピストン用シリンダーへ吸気を行う吸気弁を有する吸気用開口部と、前記単方向往復過給ピストン用シリンダーから前記単方向往復出力ピストン用シリンダーに加圧空気を送気する加圧空気送気用開口部と、前記各単方向往復出力ピストン用シリンダーへ加圧空気を取込む加圧空気取込弁を有する加圧空気取込用開口部と、前記各単方向往復出力ピストン用シリンダーからの排気を行う排気弁を有する排気用開口部と、が形成されたシリンダーヘッドと、を備えた一組のエンジン機構を1以上配置されている構成を有している。その機構は、請求項1の双方向往復ピストンが単方向往復ピストンに代わっただけであり、それ以外の構造については双方向往復ピストン機関と同一である。
【0033】
請求項3に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、請求項1又は2に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、前記双方向若しくは単方向往復過給ピストン及び/又は前記双方向若しくは単方向往復出力ピストンと、各該ピストンを各々収納するシリンダーの断面形状が楕円形あるいは矩形の両側に夫々半円を追加したトラック競技場様の形状である構成を有している。
【0034】
請求項4に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、請求項2又は3に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、前記単方向往復ピストンの基部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子に代えて、前記単方向往復ピストンと前記クランクピンに係止された連結棒を備えている構成を有している。
その機構は、単方向往復ピストンが連結棒タイプピストンに変わるだけであり、それ以外の構造については単方向往復ピストン機関と同一である。
【0035】
請求項5に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、前記一組のエンジン機構を一組毎に前記クランクピンの位相を120度ずつずらして一本のクランクシャフト上に三組直列配置されている構成を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】PSP配列−過給ピストン、出力ピストンおよびバルブ配置の概念図
【図2】本発明の実施の形態1における双方向往復ピストン機関の説明図
【図3】双方向往復ピストンの要部断面図
【図4】回転滑り子の正面図及び右側面図
【図5】図2におけるA−A断面図
【図6】クランクシャフトの正面図及び左側面図
【図7】過給ピストンの正面図、平面図、右側面図、A−A断面図
【図8】出力ピストンの正面図、平面図、右側面図、A−A断面図
【図9】エンジンベッドの正面図、右側面図、下面図
【図10】シリンダーブロックの正面図、A−A断面図、B−B断面図
【図11】実施の形態2における単方向往復ピストン機関の要部断面図
【符号の説明】
CB−1 シリンダーブロック
CB−2 出力ピストン用シリンダー
CB−3 過給ピストン用シリンダー
CB−4 ボルト穴
CB−5 シリンダーブロックの壁
CB−6 保護ブロック
CH−1 シリンダーヘッド
CR−1 クランクシャフト
CR−2 クランクピン
CR−3 クランク室
CR−4 回転軌跡
CR−5 カウンターウェイト
CR−6 カウンターウェイト
EB−1 エンジンベッド
EB−2 軸受
EB−3 ボルト穴
IN−1 吸気用開口部
IN−2 加圧空気取込用開口部
OT−1 加圧空気送気用開口部
OT−2 排気用開口部
PP−1 出力ピストン
PP−2 出力ピストンアーム部
PP−3 回転滑り子との接触面
PP−4 取付けボルト穴
RS−1A 回転滑り子
RS−1B 回転滑り子
RS−2 ピストンとの接触面
RS−3 クランクピンとの接触面
RS−4 潤滑油通路
SP−1 過給ピストン
SP−2 過給ピストンアーム部
SP−3 回転滑り子との接触面
SP−4 取付けボルト穴
SP−5 アーム体
VL−1 吸気弁
VL−2 加圧空気取込弁
VL−3 排気弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人が発明し特許化された(特許文献1)及び(特許文献2)には「4個のクランクピンを有するクランクシャフトと夫々のクランクピンに1対の双方向往復ピストンを装着した8気筒構成の双方向型往復ピストン機関」が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3137283号公報
【特許文献2】
米国特許 No.5873339
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(特許文献1)及び(特許文献2)に記載された8気筒構成の場合は完全な動的バランスが可能であるが、双方向往復ピストン機関では一つのクランクピンに2個のピストンが装着されるために4気筒構成の場合についてはクランクピンの数が2個となり、このままでは動的バランスを構成することが不可能であるという課題を有していた。
従来のピストン機関においては、4気筒構成は最も多く使用されるピストン構成であり、双方向往復ピストン機関においても8気筒構成よりも少ない気筒構成が成立する機構が可能であれば双方向往復ピストン機関の適用範囲を広げることが出来る。
【0005】
【課題を解決するための手段】
4気筒構成を実現するために2個のクランクピンを有するクランクシャフトを使用した場合は、双方向往復ピストンの組み合わせだけでは完全な動的バランスを取ることが不可能である。
次にクランクピンを1個増やして、3個のクランクピンを有するクランクシャフトの場合について考える。
3個のクランクピンを有するクランクシャフトにおいて、その両側のクランクピンは同相で共に中央のクランクピンに対して180度の位相差を有し、中央のクランクピンに対して一対のダミーの双方向往復ピストンを装着し、両側のクランクピンに対して、吸気、圧縮、爆発、排気の4行程1サイクルを行う双方向往復出力ピストンを夫々に装着した場合、2対の双方向往復出力ピストンの遠心力が相等しくその合計遠心力が1対の双方向往復ダミーピストンの遠心力と等しくなるようにすれば、動的バランスが達成できる。
なお、双方向往復ピストンの遠心力は下記であらわされる。(双方向往復ピストン機関のピストンの上昇端、下降端における遠心力)
遠心力 F=Mrω2
(F:力[N]、M:ピストンの質量[kg]、r:クランクピンの回転半径[m]、ω:回転速度[1/sec])
従って、ピストンの質量だけでなくクランクピンの回転半径を調整することによっても動的バランスを取ることが可能である。
例えば双方向往復出力ピストンのクランクピンの半径に対して、双方向往復ダミーピストンのクランクピンの半径を1.25倍にして、同じく質量を1.6倍すれば、双方向往復ダミーピストンの遠心力は双方向往復出力ピストンの遠心力の1.25×1.6=2倍となって動的バランスが取れる。
同じくクランクピンの回転半径が同じであれば、1対の双方向往復ダミーピストンの質量を1対の双方向往復出力ピストンの2倍にすれば良い。
従って、ダミーピストンを追加することは8気筒構成よりも少ない気筒構成への一つの解決方法である。しかしながらダミーピストンは動的バランスの機能以外にエンジン機能の改善がなく、この改善案については次に述べる。
【0006】
ダミーピストンの追加は単に動的バランスの問題が解決されるだけであるが、ダミーピストンの代わりにある機能を持ったピストンを用いる事により、動的バランスの解決の他に新たな機能改善が可能となる。
ある機能を持ったピストンとして、出力ピストンにその排気量以上の空気を送る目的の過給ピストンを装備する事により、以下に述べるように多くの長所を得ることが出来る。
ダミーピストンの代わりに過給ピストンをクランクシャフトに装着して得られる機能について、以下にその説明を行う。
【0007】
図2に双方向往復ピストン機関の説明図を示す。
吸気、圧縮、爆発、排気の4行程1サイクルを担うピストンを出力ピストンと呼び、吸気、送気の2行程1サイクルを行うピストンを過給ピストンと呼ぶこととする。
双方向往復ピストンとして組み合わされた2個の出力ピストン(PP−1)を1対の双方向往復出力ピストンと呼ぶことにし、過給ピストン(SP−1)についても同様に1対の双方向往復過給ピストンと呼ぶこととする。
2対の双方向往復出力ピストンと1対の双方向往復過給ピストンを3個のクランクピン(CR−2)を有する1本のクランクシャフト(CR−1)に装着した場合について以下検討する。
【0008】
その動作について次に述べる。
図2において、中央のクランクピン(CR−2)に装着された1対の双方向往復過給ピストンは前記のダミーピストンとしての機能も有しているので、全体のピストン間で動的バランスが取れるのは明らかである。
クランクシャフト(CR−1)には3対の双方向往復ピストンが装着されているので、クランクシャフト(CR−1)の軸を中心にして右半分、左半分の夫々に3個のピストンが装着されていることになる。
動的バランスについては、右半分の3個のピストンだけで動的バランスが取れている。又、左半分の3個のピストンだけでも動的バランスが取れている。
ピストンの配列順序は、クランクシャフト(CR−1)の軸先端側から軸後端側に向かって出力ピストン(Power piston)、過給ピストン(Supercharging piston)そして出力ピストン(Power piston)の順番で配列されている。
この3個のピストン配列は動的バランスを成立させる最小単位の組み合わせである。
以降、この3個のピストン配列をその頭文字をとって「PSP配列」と述べることにする。
従って3対の双方向往復ピストン配列の場合は、2セットのPSP配列があると考えることが出来る。
ここではPSP配列が動的バランスをもつことができることを述べたが、更にPSP配列が特長あるエンジン機能を持っている事を次に述べる。
【0009】
PSP配列の動作は次のとおりである。
出力ピストンは吸気、圧縮、爆発、排気の4行程1サイクルの動作を行っている。一方、過給ピストンでは吸気、送気の2行程1サイクルの動作を行っている。従って過給ピストンは4行程の間に2回の送気動作を行うので、各行程のマッチングを考慮することにより、1個の過給ピストンで2個の出力ピストンに対して送気を行うことが可能になる。下記にその動作状態を説明する。
【0010】
(PSP配列)
図1に「PSP配列−過給ピストン、出力ピストンおよびバルブ配置」の概念図を示す。この概念図は連結棒タイプのピストンだけでなく、双方向あるいは単方向往復ピストンに対して共通である。また、図2に双方向往復ピストン機関の説明図を示すが、そのピストン構成は、クランクシャフト(CR−1)の軸の左側、右側の夫々に2個の出力ピストン(PP−1)と1個の過給ピストン(SP−1)を装着し、2セットのPSP配列から成り立っている。以下にその機能を示す。
出力ピストン(PP−1)は吸気、圧縮、爆発、排気の4行程1サイクルを繰り返し、過給ピストン(SP−1)は吸気、送気の2行程1サイクルを繰り返しているが、出力ピストン(PP−1)毎に機能順序をずらすことにより、過給ピストン(SP−1)と出力ピストン(PP−1)のマッチングを取ることが出来る。
双方向往復ピストン機関(PSP配列2セット)の動作行程を表1に示す。
下記の表1の中で*1は1行程では左過給ピストンから左No.1出力ピストンに加圧空気が送られている。*2、*3、*4は夫々2行程、3行程、4行程における過給ピストンと出力ピストンの対応を示している。
また、爆発行程も1行程から4行程まで順番に各出力ピストンで発生している。図1に示す連結棒タイプのピストン構成(PSP配列1セット)の場合、あるいは単方向往復ピストン機関(PSP配列1セット)の場合は、下記の表1の右半分あるいは左半分に相当する。
【表1】
【0011】
以上のように構成された一組のPSP配列によって、次に示す機能、特長が得られる。
1.4サイクルエンジン機能:
2個の出力ピストンによって、4サイクル機関の吸入、圧縮、爆発、排気の4行程の機能を行う。
2.過給機能:
1個の過給ピストンによって、2個の出力ピストンに対して過給を行う。
3.動的バランス機能と出力増大:
2個の出力ピストンおよび1個の過給ピストン、この合計3個のピストンによって動的バランスを取ることができるので、3個のクランクピン間の短い間隔で動的バランスが完結する。このためPSP配列の場合は、従来のピストン配列よりもクランクシャフトの剛性を高くすることができる。
1セットのPSP配列毎に動的バランスが完結するのでクランクシャフトの剛性が高まり、そのため、PSP配列を1セットから複数セットに増やす事が容易になり、出力の増大も実現し易くなる。
4.クランクシャフトの負担の低減:
クランクピンの数が多いクランクシャフトに付いて、従来のピストン機関では9個のクランクピンを有するクランクシャフトの実用例はほとんどないが、PSP配列の場合は3個のクランクピンの間だけで動的バランスが完結し、発生した回転トルクのみを下流のクランクシャフトに伝えるので、クランクシャフトの負担が軽くなり、9個のクランクピンを有するクランクシャフトが実用的になる。
9個のクランクピンを有するクランクシャフトは単方向往復ピストンを装着する場合は3セットのPSP配列を、また双方向往復ピストンを装着する場合は6セットのPSP配列を装着することが可能である。
この時、PSP配列に対応した3個のクランクピン単位毎の位相関係を120度ずつ、ずらすことにより爆発行程の間隔が短くなり、フライホイール等の部品を要さず部品点数を減らすと共にクランクシャフトの回転をスムーズにすることができる。
5.ピストンの形状:
PSP配列に使用するピストンはそのタイプに関係なく有効である。連結棒を使用する従来のピストンに限らず、図2に示す双方向往復ピストンあるいは図11に示す単方向往復ピストンにおいても成立する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1に「PSP配列−過給ピストン、出力ピストンおよびバルブ配置」の概念図を示す。
その機能は1個の過給ピストンと2個の出力ピストンを有する往復ピストン機関に対応する。この図面は連結棒タイプピストン機関用であるだけでなく、双方向往復ピストン機関、単方向往復ピストン機関に適用できる。ピストンの名称については次のように整理する。
ピストンの機能と構造から以下のように各種ピストンの名前を付けている。
ピストンの機能を示す名称として、吸気、圧縮、爆発、排気の機能を有するピストンを出力ピストンと呼び、吸気と送気の機能を有し出力ピストンに対して過給を行うピストンを過給ピストンと呼ぶ。
一方、ピストンの構造を示す名称として、対向して配置された2個のピストンを有するものを「双方向往復ピストン」、1個のピストンを有するものを「単方向往復ピストン」、連結棒を使用するものを「連結棒タイプピストン」と呼んでいる。
連結棒タイプピストンも単方向往復ピストンの一種であるが、モールドタイプの「単方向往復ピストン」と区別して別名としている。
従って、双方向往復ピストンには、「双方向往復出力ピストン」と「双方向往復過給ピストン」の2種類がある。
単方向往復ピストンにも、「単方向往復出力ピストン」と「単方向往復過給ピストン」の2種類がある。
連結棒タイプピストンの場合は、「連結棒タイプ出力ピストン」と「連結棒タイプ過給ピストン」の2種類がある。
【0013】
図1において、クランクシャフト(CR−1)には3個のクランクピン(CR−2)が有り、中央のクランクピン(CR−2)に1個の過給ピストン(SP−1)が装着され、両側の2個のクランクピン(CR−2)には夫々、出力ピストン(PP−1)が装着されている。両側の出力ピストン(PP−1)は同位相であり、中央の過給ピストン(SP−1)に対して180度の位相差を持っている。このためピストンの質量等を考慮することにより3個のクランクピン(CR−2)の間に動的バランスを取ることが出来る。
出力ピストン用シリンダー(CB−2)のシリンダーヘッド(CH−1)には加圧空気取込弁(VL−2)を有する加圧空気取込用開口部(IN−2)と排気弁(VL−3)を有する排気用開口部(OT−2)が装備されている。
過給ピストン用シリンダー(CB−3)のシリンダーヘッド(CH−1)には吸気弁(VL−1)を有する吸気用開口部(IN−1)と加圧空気送気用開口部(OT−1)が装備されている。
また、各シリンダーの基部にはクランク室(CR−3)が形成されている。
【0014】
図1は過給ピストンが上昇を開始する直前の状態を表しており、過給ピストン(SP−1)がシリンダーブロック(CB−1)の過給ピストン用シリンダー(CB−3)内を上昇すると吸気弁(VL−1)が閉じ、加圧空気送気用開口部(OT−1)から送気を行い、2個の出力ピストン(PP−1)は出力ピストン用シリンダー(CB−2)内を下降する。
出力ピストン(PP−1)が下降する場合は出力ピストン(PP−1)の動作モードは吸気行程と爆発行程の2種類が有り、一方の出力ピストン(PP−1)が吸気行程にあるときは他方は爆発行程にある。
図1において、吸気行程にある左側の出力ピストン(PP−1)が下降するとき加圧空気取込弁(VL−2)が開き、出力ピストン用シリンダー(CB−2)内に加圧空気を取込む。一方、爆発行程にある右側の出力ピストン(PP−1)は加圧空気取込弁(VL−2)が閉じているので、常に1個の出力ピストン用シリンダー(CB−2)だけに加圧空気が送気される。
次に、過給ピストン(SP−1)が過給ピストン用シリンダー(CB−3)内を下降する時は吸気弁(VL−1)を開き吸気用開口部(IN−1)から吸気を行う。
この時、2個の出力ピストン(PP−1)の動作モードは圧縮行程と排気行程の2種類が有り、一方の出力ピストン(PP−1)が圧縮行程にあるときは他方は排気行程にある。
圧縮行程にある出力ピストン用の加圧空気取込弁(VL−2)と排気弁(VL−3)は共に閉じている。一方、排気行程にある出力ピストン用の排気弁(VL−3)は開いているが加圧空気取込弁(VL−2)は閉じている。
【0015】
図2に実施の形態1における双方向往復ピストン機関の説明図を示す。この機構は2セットのPSP配列に対応する。
図2中、EB−1は対向して配置されクランクシャフト(CR−1)を回転可能に支持するエンジンベッド、RS−1Aはクランクピン(CR−2)に回転自在に配設された回転滑り子である。
出力ピストン(PP−1)及び過給ピストン(SP−1)はクランクピン(CR−2)に対して左右に配設され、対向して配置されたシリンダーブロック(CB−1)に形成された出力ピストン用シリンダー(CB−2)及び過給ピストン用シリンダー(CB−3)に収納されている。
図2におけるピストン位置は1行程の始まりと考えることが出来る。クランクシャフト(CR−1)が180度回転するごとに2行程、3行程、4行程に移って行き、クランクシャフト(CR−1)が2回転するとはじめの1行程に戻る。
【0016】
次に、ピストンと回転滑り子の接触面について説明する。
図3は双方向往復ピストンの要部断面図であり、図4(a)及び(b)は回転滑り子の正面図及び右側面図である。
図3において、回転滑り子(RS−1A、1B)はクランクピン(CR−2)に回転自在に装着され、その2面の滑り面が1対のピストン下部の滑り面と接触する。回転滑り子とピストンとが接触する面の形状は2種類有り、ピストンの形状によって使い分けられる。
例えばピストンが円筒形の場合、ピストンと回転滑り子の接触面が平面であればピストンがその中心軸の周りを回転することがありうるので、その場合、ピストンのアーム部分がクランクシャフトのアームと接触してしまう。これを防ぐためには、図4に示すように回転滑り子(RS−1A)とピストンとの接触面(RS−2)の形状を円弧状にすることによってピストンの回転を防ぐ必要がある。
これとは逆に、ピストンが円筒形ではなく、楕円形のような場合は、ピストン自体が回転を防いでいるので、図3の過給ピストン(SP−1)に装着した回転滑り子(RS−1B)のように回転滑り子とピストンの接触面は平面にする必要がある。
なぜなら、2箇所でピストンの回転を拘束すれば、ピストンに歪を生じさせる原因となるからである。従ってピストンの形状によって、ピストンと回転滑り子の接触面を平面にするか、それとも円筒形の一部の形状にするかが決まってくる。
【0017】
図4において、回転滑り子(RS−1A)とピストンとの接触面(RS−2)の潤滑油は、回転滑り子(RS−1A)のクランクピン(CR−2)との接触面(RS−3)からピストンとの接触面(RS−2)に向かって通じる潤滑油通路(RS−4)を通じて供給される。
ピストンにかかるガス圧は回転滑り子を経由して、有効にクランクピンに伝達される。
【0018】
図5は図2におけるA−A断面図である。
クランクピン(CR−2)に回転自在に装着された回転滑り子(RS−1B)を対向する過給ピストン(SP−1)で挟みボルト締めすることにより双方向往復過給ピストンが形成されている。これらの構成は双方向往復出力ピストンにおいても同様である。
ピストンとクランクシャフト間の力の伝達については、出力ピストンの場合は出力ピストンの往復運動がクランクシャフトを回転させる。
逆に、過給ピストンの場合はクランクシャフトの回転力によって過給ピストンが往復運動を行う関係にある。
双方向往復出力ピストンが出力ピストン用シリンダー内を往復すると同時に、回転滑り子が双方向往復出力ピストンの中央部に形成された長孔状のクランク駆動部内を往復運動し、クランクピンとクランクシャフトを回転する。クランクシャフト(CR−1)の回転力によってクランクピン(CR−2)が回転軌跡(CR−4)を描く回転運動を行うと同時に、回転滑り子が矢印方向に往復運動し、双方向往復過給ピストンが過給ピストン用シリンダー(CB−3)内を往復運動する。
【0019】
次に、クランクシャフト(CR−1)について説明する。
図6(a)及び(b)はクランクシャフトの正面図及び左側面図である。
図6において、クランクシャフト(CR−1)は3個のクランクピン(CR−2)を有し、その両側部にカウンターウェイト(CR−5)、(CR−6)を備え、両側のクランクピン(CR−2)は同相でかつ、中央のクランクピン(CR−2)に対して180度の位相差を有している。
【0020】
次に、ピストン形状について説明する。
図7(a)乃至(d)は各々、過給ピストンの正面図、平面図、右側面図、A−A断面図である。
図7において、SP−2は過給ピストンアーム部、SP−3は回転滑り子との接触面、SP−4はピストン同士を結合するための取付けボルト穴である。
過給ピストンの形状は矩形の両側に夫々半円を追加したトラック競技場様の形状をしているが、この事によりクランクシャフトの長さを増やすことなくピストンの断面積を増やすことが出来る。又楕円形の形状にしても同様の効果を得られる。
ピストン頂上部とピストン脚部の中間にある平板部分の断面形状をH型鋼のようにすることにより、ピストンの強度を高めている。
このように、ピストン形状の考慮と強度のある材料の組み合わせにより、従来のピストン、ピストンピンおよび連結棒に相当する部分をモールド成形により一体化することが可能である。
【0021】
図8(a)乃至(d)は各々、出力ピストンの正面図、平面図、右側面図、A−A断面図である。
図8において、PP−2は出力ピストンアーム部、PP−3は回転滑り子との接触面、PP−4はピストンを結合するための取付けボルト穴である。
出力ピストンの形状については、熱効率の点で円形のほうが楕円形あるいは競技場のトラック状の形状よりも優れている。しかし、楕円形状あるいはトラック競技場のような形状においても、点火プラグあるいは燃料噴射弁を2箇所に取付けることにより燃焼効率の悪化を相当程度、カバーできる。また、高い圧縮比を得ることができるので、ガソリンエンジンだけでなく、ディーゼルエンジンにも適用することができる。
【0022】
次に、エンジンベッドについて説明する。
図9(a)乃至(c)は各々、エンジンベッドの正面図、右側面図、下面図である。
エンジンベッド(EB−1)は対向して配置され、軸受(EB−2)でクランクシャフトを回転可能に支持し、ボルト穴(EB−3)において結合される。
双方向往復ピストンは対向して配置したピストンをボルト締めして結合することにより形成されるが、クランクシャフトの軸方向のピストンの幅がエンジンベッド開口部の幅より通常、大きいため、予め各ピストンのアーム部側からエンジンベッドをくぐらせた上で1対のピストンをボルト締めする必要がある。
【0023】
次に、シリンダーブロックについて説明する。
図10(a)乃至(c)は各々、シリンダーブロックの正面図、A−A断面図、B−B断面図である。
クランクシャフトの軸受部分に近いシリンダーブロックの壁(CB−5)が、ピストン間の距離が近いため、狭くなっている。このため、エンジンベッドを別に用意することにより軸受部分の幅を長くすることが可能になり、必要な軸受強度を得ている。エンジンベッドとシリンダーブロック(CB−1)はボルト穴(CB−4)においてボルトで結合される。
【0024】
以上のように構成された、本実施の形態1の双方向往復ピストン機関によれば、過給ピストンがあるために時間の遅れなく出力ピストンに加圧空気が供給され、応答性がよく大出力が得られる。又、複数組のエンジン機構を組合せることが容易なため、大出力化を図れるという作用を有する。
【0025】
(実施の形態2)
図11に実施の形態2における単方向往復ピストン機関の要部断面図を示す。
なお、実施の形態1と同様のものは同じ符号を付して説明を省略する。
図11において、SP−5は過給ピストンの代わりに対向配置され過給ピストンと結合されるアーム体、CB−6はシリンダーブロック(CB−1)の代わりに配置されアーム体(SP−5)を保護する保護ブロックである。尚、これらの構成は出力ピストンにおいても共通である。
よって、図2における双方向往復ピストンの片方のピストンヘッド部分を取り除けば、一方向だけに往復運動を行う単方向往復ピストンとして成立する。
以上のように、本実施の形態2の単方向往復ピストン機関によれば、ピストン部分を熱伝導性の高い材料でモールド成形することが出来るので、連結棒を使用するピストン方式に比べて、より多くの燃料を燃焼でき、排気量あたりの出力を大きくすることが出来る。
又、連結棒を有しないので高調波の発生がなく振動の少ないエンジンにすることが出来る。
単方向往復ピストン機関は双方向往復ピストン機関よりも小出力のピストン機関用として適する。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)1個の過給ピストン、2個の出力ピストンの構成を特徴とするPSP配列、即ち3個のクランクピンを有するクランクシャフトで動的バランスを有する4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(2)過給によりエンジンの出力を大きくすることが出来るので過給ピストンの追加によるエンジンの体積、重量の増大を償うことが出来る省スペース性に優れた4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(3)エンジンの出力増大の手段は排気量の増大の他にPSP配列の数を増やせば良く、又、1個のPSP配列だけで動的バランスが完結しているので、エンジンの出力増大がより容易になり、小出力から大出力までの構成が可能である。大出力の場合は6個のクランクピンを有するクランクシャフトに双方向ピストンを装着すれば、4組のPSP配列が出来る。更に9個のクランクピンを有するクランクシャフトに双方向ピストンを装着すれば、6組のPSP配列が出来る。このような大出力で汎用性に優れた4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(4)ピストンによる送気はターボチャージャのような時間遅れがなく、エンジンのレスポンスが早い信頼性に優れた高出力の4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(5)双方向往復ピストンの構造による出力ピストン、過給ピストンは連結棒を用いてないので、ピストンの熱伝導率を大きくすることが出来、ピストンの冷却能力が大きいため、通常のピストンよりも多くの燃料を燃焼させることが出来、より大きな出力を得ることが出来る4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(6)双方向往復ピストンは連結棒を使用しないので、高調波が発生せず振動を大幅に減らすことが出来る信頼性に優れた4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
(7)従来のピストン機関では4気筒構成の場合は4気筒全体で動的バランスを取っている。すなわち、この場合は4個のクランクピンを持ったクランクシャフト全体の長さの中で動的バランスを取っている。
又、直列6気筒構成の場合は6気筒全体で動的バランスを取っている。すなわち、この場合は6個のクランクピンを持ったクランクシャフト全体の長さの中で動的バランスを取っている。
それに対して、PSP配列の双方向往復ピストン機関は3個のクランクピンのクランクシャフトに装着されたピストンで完全な動的バランスを取っている。動的バランスをとるためにクランクシャフトが短くて済むのはクランクシャフトの剛性が高いことにつながり、振動も抑えることが出来る。
このPSP配列を2セット直列につないでも、クランクピン3個分ごとに動的バランスが取れ、一つのPSP配列で発生した回転トルクを次のPSP配列に伝えるだけで良いので、クランクシャフトに対する負担が少なく、全体の振動も大幅に少なくすることが出来る。この結果、現状では実用的でない9個のクランクピンを有するクランクシャフトの実用化が可能である。
(8)過給ピストンはそれ自身に過給機能があるが、その過給ピストン用シリンダーに対して更にターボチャージャからの送気が可能であり、過給効果を増大させることが出来る高出力の4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)3個のクランクピンを有するクランクシャフトに単方向ピストンを装着すれば、1組のPSP配列が出来、この構成により、振動の少ない小型の4サイクル往復ピストン機関を実現できる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)過給ピストンは燃料を燃やさないため、歪みが少ない。そのためピストンの断面積の形状を円形だけでなく、長方形の両側に半円をくっつけた競技場のような形状、あるいは楕円形状にする事が可能であり、このため過給ピストンの排気量をクランクシャフトの長さを延ばすことなく増やすことができる省スペース性に優れた4サイクル往復ピストン機関が実現できる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)従来の連結棒タイプのピストンにおいて、小型で従来の直列4気筒構成と同等の出力及び低振動の4サイクル往復ピストン機関とすることができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)双方向往復ピストンを用いて6セットのPSP配列を備えることができ、大容量の低振動の4サイクル往復ピストン機関が可能である。
(2)PSP配列に対応した3個のクランクピン単位毎の位相関係を120度ずつずらすことにより、均等な爆発行程がえられる滑らかな出力の4サイクル往復ピストン機関が可能である。
【0031】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の態様について説明する。
請求項1に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、シリンダーと、前記シリンダーの基部に形成されたクランク室とを有したシリンダーブロックと、対向して配設された前記シリンダーブロックの前記各シリンダー内に収納された双方向往復ピストンと、前記双方向往復ピストンの中央部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子と、前記回転滑り子に回転自在に配設されたクランクピンを有したクランクシャフトと、前記クランクシャフトの軸受部を有し前記シリンダーブロックと結合される一対のエンジンベッドと、を備えた過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、直列に3個のクランクピンを有する前記クランクシャフトの両端に同位相で装着された計2対の双方向往復出力ピストンと、前記2対の双方向往復出力ピストンに対して180度異なる位相で中央のクランクピンに装着された過給を行う1対の双方向往復過給ピストンと、前記双方向往復過給ピストン用シリンダーへ吸気を行う吸気弁を有する吸気用開口部と、前記双方向往復過給ピストン用シリンダーから前記双方向往復出力ピストン用シリンダーに加圧空気を送気する加圧空気送気用開口部と、前記各双方向往復出力ピストン用シリンダーへ加圧空気を取込む加圧空気取込弁を有する加圧空気取込用開口部と、前記各双方向往復出力ピストン用シリンダーからの排気を行う排気弁を有する排気用開口部と、が形成されたシリンダーヘッドと、を備えた一組のエンジン機構を1以上配置されている構成を有している。
【0032】
請求項2に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、シリンダーと、前記シリンダーの基部に形成されたクランク室とを有したシリンダーブロックと、前記各シリンダー内に収納された単方向往復ピストンと、前記単方向往復ピストンの基部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子と、前記回転滑り子に回転自在に配設されたクランクピンを有したクランクシャフトと、を備えた過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、直列に3個のクランクピンを有する前記クランクシャフトの両端に同位相で装着された2個の単方向往復出力ピストンと、前記2個の単方向往復出力ピストンに対して180度異なる位相で中央のクランクピンに装着された過給を行う1個の単方向往復過給ピストンと、前記単方向往復過給ピストン用シリンダーへ吸気を行う吸気弁を有する吸気用開口部と、前記単方向往復過給ピストン用シリンダーから前記単方向往復出力ピストン用シリンダーに加圧空気を送気する加圧空気送気用開口部と、前記各単方向往復出力ピストン用シリンダーへ加圧空気を取込む加圧空気取込弁を有する加圧空気取込用開口部と、前記各単方向往復出力ピストン用シリンダーからの排気を行う排気弁を有する排気用開口部と、が形成されたシリンダーヘッドと、を備えた一組のエンジン機構を1以上配置されている構成を有している。その機構は、請求項1の双方向往復ピストンが単方向往復ピストンに代わっただけであり、それ以外の構造については双方向往復ピストン機関と同一である。
【0033】
請求項3に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、請求項1又は2に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、前記双方向若しくは単方向往復過給ピストン及び/又は前記双方向若しくは単方向往復出力ピストンと、各該ピストンを各々収納するシリンダーの断面形状が楕円形あるいは矩形の両側に夫々半円を追加したトラック競技場様の形状である構成を有している。
【0034】
請求項4に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、請求項2又は3に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、前記単方向往復ピストンの基部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子に代えて、前記単方向往復ピストンと前記クランクピンに係止された連結棒を備えている構成を有している。
その機構は、単方向往復ピストンが連結棒タイプピストンに変わるだけであり、それ以外の構造については単方向往復ピストン機関と同一である。
【0035】
請求項5に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、前記一組のエンジン機構を一組毎に前記クランクピンの位相を120度ずつずらして一本のクランクシャフト上に三組直列配置されている構成を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】PSP配列−過給ピストン、出力ピストンおよびバルブ配置の概念図
【図2】本発明の実施の形態1における双方向往復ピストン機関の説明図
【図3】双方向往復ピストンの要部断面図
【図4】回転滑り子の正面図及び右側面図
【図5】図2におけるA−A断面図
【図6】クランクシャフトの正面図及び左側面図
【図7】過給ピストンの正面図、平面図、右側面図、A−A断面図
【図8】出力ピストンの正面図、平面図、右側面図、A−A断面図
【図9】エンジンベッドの正面図、右側面図、下面図
【図10】シリンダーブロックの正面図、A−A断面図、B−B断面図
【図11】実施の形態2における単方向往復ピストン機関の要部断面図
【符号の説明】
CB−1 シリンダーブロック
CB−2 出力ピストン用シリンダー
CB−3 過給ピストン用シリンダー
CB−4 ボルト穴
CB−5 シリンダーブロックの壁
CB−6 保護ブロック
CH−1 シリンダーヘッド
CR−1 クランクシャフト
CR−2 クランクピン
CR−3 クランク室
CR−4 回転軌跡
CR−5 カウンターウェイト
CR−6 カウンターウェイト
EB−1 エンジンベッド
EB−2 軸受
EB−3 ボルト穴
IN−1 吸気用開口部
IN−2 加圧空気取込用開口部
OT−1 加圧空気送気用開口部
OT−2 排気用開口部
PP−1 出力ピストン
PP−2 出力ピストンアーム部
PP−3 回転滑り子との接触面
PP−4 取付けボルト穴
RS−1A 回転滑り子
RS−1B 回転滑り子
RS−2 ピストンとの接触面
RS−3 クランクピンとの接触面
RS−4 潤滑油通路
SP−1 過給ピストン
SP−2 過給ピストンアーム部
SP−3 回転滑り子との接触面
SP−4 取付けボルト穴
SP−5 アーム体
VL−1 吸気弁
VL−2 加圧空気取込弁
VL−3 排気弁
Claims (5)
- シリンダーと、前記シリンダーの基部に形成されたクランク室とを有したシリンダーブロックと、対向して配設された前記シリンダーブロックの前記各シリンダー内に収納された双方向往復ピストンと、前記双方向往復ピストンの中央部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子と、前記回転滑り子に回転自在に配設されたクランクピンを有したクランクシャフトと、前記クランクシャフトの軸受部を有し前記シリンダーブロックと結合される一対のエンジンベッドと、を備えた過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、
(a)直列に3個のクランクピンを有する前記クランクシャフトの両端に同位相で装着された計2対の双方向往復出力ピストンと、
(b)前記2対の双方向往復出力ピストンに対して180度異なる位相で中央のクランクピンに装着された過給を行う1対の双方向往復過給ピストンと、
(c)前記双方向往復過給ピストン用シリンダーへ吸気を行う吸気弁を有する吸気用開口部と、前記双方向往復過給ピストン用シリンダーから前記双方向往復出力ピストン用シリンダーに加圧空気を送気する加圧空気送気用開口部と、前記各双方向往復出力ピストン用シリンダーへ加圧空気を取込む加圧空気取込弁を有する加圧空気取込用開口部と、前記各双方向往復出力ピストン用シリンダーからの排気を行う排気弁を有する排気用開口部と、が形成されたシリンダーヘッドと、を備えた一組のエンジン機構を1以上配置されていることを特徴とする過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関。 - シリンダーと、前記シリンダーの基部に形成されたクランク室とを有したシリンダーブロックと、前記各シリンダー内に収納された単方向往復ピストンと、前記単方向往復ピストンの基部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子と、前記回転滑り子に回転自在に配設されたクランクピンを有したクランクシャフトと、を備えた過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関であって、
(a)直列に3個のクランクピンを有する前記クランクシャフトの両端に同位相で装着された2個の単方向往復出力ピストンと、
(b)前記2個の単方向往復出力ピストンに対して180度異なる位相で中央のクランクピンに装着された過給を行う1個の単方向往復過給ピストンと、
(c)前記単方向往復過給ピストン用シリンダーへ吸気を行う吸気弁を有する吸気用開口部と、前記単方向往復過給ピストン用シリンダーから前記単方向往復出力ピストン用シリンダーに加圧空気を送気する加圧空気送気用開口部と、前記各単方向往復出力ピストン用シリンダーへ加圧空気を取込む加圧空気取込弁を有する加圧空気取込用開口部と、前記各単方向往復出力ピストン用シリンダーからの排気を行う排気弁を有する排気用開口部と、が形成されたシリンダーヘッドと、を備えた一組のエンジン機構を1以上配置されていることを特徴とする過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関。 - 前記双方向若しくは単方向往復過給ピストン及び/又は前記双方向若しくは単方向往復出力ピストンと、各該ピストンを各々収納するシリンダーの断面形状が楕円形あるいは矩形の両側に夫々半円を追加したトラック競技場様の形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関。
- 前記単方向往復ピストンの基部に形成された長孔状のクランク駆動部と、前記クランク駆動部に摺動自在に配設された回転滑り子に代えて、前記単方向往復ピストンと前記クランクピンに係止された連結棒を備えていることを特徴とする請求項2又は3に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関。
- 前記一組のエンジン機構を一組毎に前記クランクピンの位相を120度ずつずらして一本のクランクシャフト上に三組直列配置されていることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の過給ピストンを装備した4サイクル往復ピストン機関。
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