JP2004256854A - ステンレス鋼の脱炭精錬方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、クロムの酸化や溶鋼温度の上昇を従来より抑制可能なステンレス鋼の脱炭精錬方法を提供することを目的としている。
【解決手段】上底吹き転炉に保持した含クロム溶鋼に、酸素ガスを上底吹きして、その炭素濃度を1質量%以下まで低下させ、その後上吹きランスを介して不活性ガス及び水を炉内に吹き込むと共に、炉底羽口を介して酸素ガス及び不活性ガスの混合ガスを溶鋼中に吹き込み、さらに脱炭するステンレス鋼の脱炭精錬方法である。そして、前記上吹きする不活性ガスと前記底吹きする混合ガスとの流量比を0.5以上とする。
【選択図】 図1
【解決手段】上底吹き転炉に保持した含クロム溶鋼に、酸素ガスを上底吹きして、その炭素濃度を1質量%以下まで低下させ、その後上吹きランスを介して不活性ガス及び水を炉内に吹き込むと共に、炉底羽口を介して酸素ガス及び不活性ガスの混合ガスを溶鋼中に吹き込み、さらに脱炭するステンレス鋼の脱炭精錬方法である。そして、前記上吹きする不活性ガスと前記底吹きする混合ガスとの流量比を0.5以上とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼の脱炭精錬方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉を用いたステンレス鋼の脱炭精錬では、脱炭反応の進行に伴い、クロムの酸化反応が進行する。そのステンレス鋼の脱炭反応は、クロム(記号:Cr)の存在により炭素(記号:C)の活量が、クロムが存在しない普通鋼の脱炭反応時の約1/4に低下している。そのため、脱炭させるために供給した酸素は、炭素よりもクロムを酸化する傾向が強いので、酸素効率(脱炭酸素効率という)が低い。特に、1質量%以下の低炭素濃度の領域では、炭素よりクロムの酸化が顕著となる。つまり、クロム酸化は、高価なクロム合金の損失になり、精錬費用のコストアップとなる。また、脱炭反応に比べ発熱量が大きいので、クロムの酸化が多い場合には、急激な溶鋼温度の上昇を招く。その結果、耐火物コストの上昇を引き起こすばかりでなく、次工程(例えば、真空脱ガス槽等を用いた二次精錬)で溶鋼温度の調整が必要になる。
【0003】
ところで、クロムを高濃度で含有しない所謂普通鋼の脱炭精錬に関しては、溶鋼の温度制御を目的として水を添加する技術が開示されている(例えば、特許公報1参照)。また、上底吹き酸素ジェットによるFe、Mn等のヒュームでの損失を防止する目的で、上吹きランスから水添加する技術もある(特許文献2及び3参照)。さらに、転炉で水を添加し、分解発生するH2により回収する排ガスのカロリーを向上させる技術が開示されている(特許文献4参照)。
【0004】
一方、クロムを高濃度で含有するステンレス鋼の脱炭精錬については、脱炭精錬炉での溶鋼の温度制御を図るため、上吹きランスから水を吹込む技術がある(特許文献5参照)。また、ステンレス鋼の脱炭精錬末期において上吹きランスから溶鋼へ不活性ガスを吹付け、クロムの酸化を仰制する技術も開示されている(特許文献6参照)。
【0005】
ステンレス鋼の脱炭精錬においてクロムの酸化が顕著となる低炭素濃度域では、クロムの酸化と、それに伴う溶鋼温度の急上昇を抑制し、精錬後の溶鋼温度及び成分を所望の値に的中させる必要がある。つまり、クロムの酸化低減と溶鋼温度の上昇抑制とを両立させなければならない。
【0006】
しかしながら、前記した普通鋼精錬に関する特許文献1記載の技術では、水の添加条件が明確でない。また、特許文献1及び2記載の技術は、上吹き酸素ジェットが衝突する部分(火点ともいう)の温度を局所的に低下させ、Fe、Mn等の蒸発を防ぐものであるが、ステンレス鋼の脱炭精錬では、溶鋼の局所的な冷却はクロムの酸化をかえって促進するため、適切でない。さらに、特許文献4記載の技術は、排ガスの改質が目的であり、溶鋼の積極的な冷却を行うものではない。加えて、特許文献5記載の技術では、上吹きガスは酸素含有ガスであるため、排ガス中のCO濃度が50容量%以上の条件下、すなわち脱炭反応が比較的促進している条件下にしか適用することができず、クロムが急激に酸化するので、溶鋼温度が急上昇する低炭素濃度域には適用できないという問題があった。さらに加えて、特許文献6記載の技術では、不活性ガスを上吹きで溶鋼面へ吹付け、そのジェットによりスラグ−メタルを強撹拌するのを目的としているので、溶鋼等のスピッテイングが盛んになり、上吹きランスヘの溶鋼付着が顕著になるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特公昭57−1577号公報(1頁、図1)
【特許文献2】
特開昭62−146209号公報(2頁、図2)
【特許文献3】
特開昭63−103016号公報(1頁、図1)
【特許文献4】
特開昭63−103018号公報(2頁、図1)
【特許文献5】
特開平06−33127号公報(3頁、図3)
【特許文献6】
特開平08−53706号公報(4頁、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、クロムの酸化や溶鋼温度の上昇を従来より抑制可能なステンレス鋼の脱炭精錬方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0010】
すなわち、本発明は、上底吹き転炉に保持した含クロム溶鋼に、酸素ガスを上底吹きして、その炭素濃度を1質量%以下まで低下させ、その後上吹きランスを介して不活性ガス及び水を炉内に吹き込むと共に、炉底羽口を介して酸素ガス及び不活性ガスの混合ガスを溶鋼中に吹き込み、さらに脱炭するステンレス鋼の脱炭精錬方法において、前記上吹きする不活性ガスと前記底吹きする混合ガスとの流量比を0.5以上とすることを特徴とするステンレス鋼の脱炭精錬方法である。
【0011】
本発明では、含クロム溶鋼を脱炭するに際して、その炭素濃度が1質量%以下の領域になったら、上吹きランスから適切な量の不活性ガスを水と共に添加するようにしたので、溶鋼中クロムの酸化や溶鋼温度の上昇を従来より抑制できるようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
一般に、溶融ステンレス鋼中の炭素及びクロムの酸化反応は(1)、(2)式のように進行する。なお、ここにステンレス鋼とは、一般にクロムを11質量%以上含有する鋼をいうが、本発明が対象とするステンレス鋼もこのような一般的な定義に従うものである。
【0014】
[C]+1/2O2=CO(g) ……(1)
2[Cr]+3/2[O]=(Cr2O3) ……(2)
ここで,[C]、[Cr]:溶鋼中の炭素,クロム濃度、(Cr2O3):スラグ中のクロム酸化物濃度、(g)はガス成分である。
【0015】
ステンレス鋼のようなクロムを16質量%程度含有する溶鋼での脱炭反応では、クロムの酸化が同時に進行する。そして、溶鋼の温度が高いほど(例えば、 ℃以上)脱炭が促進し、クロムの酸化が抑制される。しかし、それより低温になると、脱炭が停滞し、クロムの酸化が促進され、該クロムの酸化反応熱により溶鋼温度が高くなる。このような脱炭の促進とクロムの酸化抑制とを同時に行うには、転炉での精錬初期から溶湯の温度を高くすることが肝要である。ところが、吹錬末期の低炭素濃度域(炭素濃度1質量%以下)では、炭素よりクロムの酸化が顕著となるため、吹錬初期の温度が高過ぎると、末期での溶湯温度が耐火物の溶損温度域(1750℃以上)に相当するような超高温となる。本来吹錬初期はより高温とし、クロムの酸化を抑制すべきであるが、低炭素濃度域においてクロム酸化を抑制し、かつ溶鋼温度を低下させる十分な技術がないため、効率良い精錬が行えないのが現状であった。
【0016】
そこで、発明者らは、前記低炭素濃度域においてクロム酸化を抑制し、かつ溶鋼温度を低下させる技術を見出すため、従来からある水添加技術を改良することとし、上吹き不活性ガスに水を添加して炉内に吹き込んで、溶鋼を冷却する実験を行った。
【0017】
その実験には、図2に示すように、ガス1を上吹きするランス2及び底吹きする炉底羽口3を備え、容量180トンの上底吹き転炉4を用いた。実験条件は、表1に示す通りである。なお、試料の溶鋼5は、含クロム溶鉄を該転炉で予め炭素濃度を1質量%まで脱炭したものであり、スラグ6の量及び組成は、その低炭素濃度域の実験期間をとおして一定になるように調整した。
【0018】
【表1】
【0019】
まず、上吹き不活性ガスだけ、あるいは水の吹き込みだけでの冷却をそれぞれ単独で実験したが、クロムの酸化抑制及び溶鋼温度の降下が不十分であった。そこで、不活性ガスと共に水を吹き込み、その際の該不活性ガス(N2)の流量を種々変更する実験を行った。
【0020】
その結果を、上吹き不活性ガス量と底吹き混合ガス量との比に対するクロム酸化量の変化で整理し、その一例を図1に示す。ここで、クロムの酸化量は、炉内に装入した主原料(溶銑、冷銑、スクラップ、フェロクロム)の重量及びそのクロム含有量から計算されるインプットクロム量と、出鋼した溶鋼の重量及びそのクロム含有量から計算されるアウトプットクロム量との差として求めたものである。図1の結果は、水添加量を0.1kg/t/minと一定にして、上吹き不活性ガスと底吹きガスの流量比を変化させたものである。図1より、上吹き不活性ガスあるいは底吹きガスの流量絶対値のいかんにかかわらず、上吹き不活性ガスと底吹きガスの流量比を0.5以上とすることで、クロムの酸化量が十分小さくなることがわかった。これは、上吹き不活性ガスによる撹拌でスラグ−メタルの局所的撹拌が促進され、スラグとメタルがエマルジョン状態となるため、水添加による冷却効率が良くなるためである。また上吹きランスヘの鋼の付着が大幅に軽減していた。これは、水添加(炉内水蒸気)により溶鋼面から発生するスプラッシュが凝集し、溶鋼内に落下するためである。
【0021】
なお、本発明では、水の添加量を0.1〜2.0kg/t/minとするのが好ましい。0.1kg/t/min未満では溶鋼の冷却が不十分であり、2.0kg/t/min超えでは、クロムの酸化が抑制できなくなるからである。また、不活性ガスは、窒素、アルゴン等、いかなる不活性ガスでも良い。さらに、使用する水は、いわゆる水道水等、いかなるものでも良く、ランスの水添加手段もスプレー型等、いかなるタイプでも良い。
【0022】
【実施例】
図2に示した容量180tの上底吹き転炉を用い、ステンレス鋼を溶製する操業を行った。該ステンレス鋼の最終目標の炭素濃度及びクロム濃度は、それぞれ16質量%、0.05質量%であり、脱炭処理の条件は表2の通りである。スラグ量、CaO/SiO2は一定となるようにした。なお、吹錬の初期は、上吹きガス及び底吹きガスを酸素ガスのみとして、炭素濃度[C]を0.3質量%まで低下させ、その後、底吹きを酸素ガス及び窒素ガスの混合ガス(表1と同条件)、上吹きガスを無し若しくは窒素ガス(0.20、又は0.62m3(標準状態)/min/t)という条件で操業(各条件で100チャージ)行った。底吹きガスの合計流量は、常に0.78m3/min/t(標準状態)とした。また、比較例1は、炭素濃度が0.3質量%まで低下後、上吹き不活性ガス及び水添加の両方が無いという条件である。さらに、比較例2は、水添加を上吹き不活性ガス無しで行い、比較例3は、水添加無しで上吹き不活性ガス有り(0.62Nm3/min/t)で行った場合である。一方、発明法1は、水添加した上吹き不活性ガス(0.39Nm3/min/t)有りで、その上吹き不活性ガスと底吹きガスの流量比を0.5とした場合であり、発明法2は、同比を0.8(上吹き不活性ガス=0.62Nm3/min/t)としたものである。
【0023】
これらの操業結果を表3に一括して示す。表3より、発明法2においてクロムの酸化量が最小であり、且つ溶鋼温度変化速度(下記3式)も最大であった。また、発明法1も、クロム酸化量の低減及び溶鋼温度の変化速度が比較例に比べ、良好であった。つまり、本発明によれば、吹錬初期の溶鋼温度に応じた吹錬末期での温度制御が可能であることが明らかである。また、上吹きランスヘの鋼付着や耐火物の溶損増加の傾向も見られなかった。
【0024】
溶鋼温度変化速度(℃/min.)={吹錬終了時温度−吹錬末期([C]=0.3質量%から)開始温度}/時間……(3)
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、ステンレス鋼の脱炭精錬において、クロムの酸化や溶鋼温度の上昇を従来より抑制できるようになる。また、吹錬終了時の成分、温度の的中率が向上し、次工程でのロスタイムが軽減された。これにより、高効率且つ安価なステンレス鋼の脱炭精錬が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶鋼への上吹き不活性ガスでの水添加実験の結果を、上吹き不活性ガス量と底吹き混合ガス量との比に対するクロム酸化量の変化で整理した図である。
【図2】一般的な上底吹き転炉を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ガス
2 上吹きランス
3 炉底羽口
4 上底吹き転炉
5 溶鋼
6 スラグ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼の脱炭精錬方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉を用いたステンレス鋼の脱炭精錬では、脱炭反応の進行に伴い、クロムの酸化反応が進行する。そのステンレス鋼の脱炭反応は、クロム(記号:Cr)の存在により炭素(記号:C)の活量が、クロムが存在しない普通鋼の脱炭反応時の約1/4に低下している。そのため、脱炭させるために供給した酸素は、炭素よりもクロムを酸化する傾向が強いので、酸素効率(脱炭酸素効率という)が低い。特に、1質量%以下の低炭素濃度の領域では、炭素よりクロムの酸化が顕著となる。つまり、クロム酸化は、高価なクロム合金の損失になり、精錬費用のコストアップとなる。また、脱炭反応に比べ発熱量が大きいので、クロムの酸化が多い場合には、急激な溶鋼温度の上昇を招く。その結果、耐火物コストの上昇を引き起こすばかりでなく、次工程(例えば、真空脱ガス槽等を用いた二次精錬)で溶鋼温度の調整が必要になる。
【0003】
ところで、クロムを高濃度で含有しない所謂普通鋼の脱炭精錬に関しては、溶鋼の温度制御を目的として水を添加する技術が開示されている(例えば、特許公報1参照)。また、上底吹き酸素ジェットによるFe、Mn等のヒュームでの損失を防止する目的で、上吹きランスから水添加する技術もある(特許文献2及び3参照)。さらに、転炉で水を添加し、分解発生するH2により回収する排ガスのカロリーを向上させる技術が開示されている(特許文献4参照)。
【0004】
一方、クロムを高濃度で含有するステンレス鋼の脱炭精錬については、脱炭精錬炉での溶鋼の温度制御を図るため、上吹きランスから水を吹込む技術がある(特許文献5参照)。また、ステンレス鋼の脱炭精錬末期において上吹きランスから溶鋼へ不活性ガスを吹付け、クロムの酸化を仰制する技術も開示されている(特許文献6参照)。
【0005】
ステンレス鋼の脱炭精錬においてクロムの酸化が顕著となる低炭素濃度域では、クロムの酸化と、それに伴う溶鋼温度の急上昇を抑制し、精錬後の溶鋼温度及び成分を所望の値に的中させる必要がある。つまり、クロムの酸化低減と溶鋼温度の上昇抑制とを両立させなければならない。
【0006】
しかしながら、前記した普通鋼精錬に関する特許文献1記載の技術では、水の添加条件が明確でない。また、特許文献1及び2記載の技術は、上吹き酸素ジェットが衝突する部分(火点ともいう)の温度を局所的に低下させ、Fe、Mn等の蒸発を防ぐものであるが、ステンレス鋼の脱炭精錬では、溶鋼の局所的な冷却はクロムの酸化をかえって促進するため、適切でない。さらに、特許文献4記載の技術は、排ガスの改質が目的であり、溶鋼の積極的な冷却を行うものではない。加えて、特許文献5記載の技術では、上吹きガスは酸素含有ガスであるため、排ガス中のCO濃度が50容量%以上の条件下、すなわち脱炭反応が比較的促進している条件下にしか適用することができず、クロムが急激に酸化するので、溶鋼温度が急上昇する低炭素濃度域には適用できないという問題があった。さらに加えて、特許文献6記載の技術では、不活性ガスを上吹きで溶鋼面へ吹付け、そのジェットによりスラグ−メタルを強撹拌するのを目的としているので、溶鋼等のスピッテイングが盛んになり、上吹きランスヘの溶鋼付着が顕著になるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特公昭57−1577号公報(1頁、図1)
【特許文献2】
特開昭62−146209号公報(2頁、図2)
【特許文献3】
特開昭63−103016号公報(1頁、図1)
【特許文献4】
特開昭63−103018号公報(2頁、図1)
【特許文献5】
特開平06−33127号公報(3頁、図3)
【特許文献6】
特開平08−53706号公報(4頁、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、クロムの酸化や溶鋼温度の上昇を従来より抑制可能なステンレス鋼の脱炭精錬方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0010】
すなわち、本発明は、上底吹き転炉に保持した含クロム溶鋼に、酸素ガスを上底吹きして、その炭素濃度を1質量%以下まで低下させ、その後上吹きランスを介して不活性ガス及び水を炉内に吹き込むと共に、炉底羽口を介して酸素ガス及び不活性ガスの混合ガスを溶鋼中に吹き込み、さらに脱炭するステンレス鋼の脱炭精錬方法において、前記上吹きする不活性ガスと前記底吹きする混合ガスとの流量比を0.5以上とすることを特徴とするステンレス鋼の脱炭精錬方法である。
【0011】
本発明では、含クロム溶鋼を脱炭するに際して、その炭素濃度が1質量%以下の領域になったら、上吹きランスから適切な量の不活性ガスを水と共に添加するようにしたので、溶鋼中クロムの酸化や溶鋼温度の上昇を従来より抑制できるようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
一般に、溶融ステンレス鋼中の炭素及びクロムの酸化反応は(1)、(2)式のように進行する。なお、ここにステンレス鋼とは、一般にクロムを11質量%以上含有する鋼をいうが、本発明が対象とするステンレス鋼もこのような一般的な定義に従うものである。
【0014】
[C]+1/2O2=CO(g) ……(1)
2[Cr]+3/2[O]=(Cr2O3) ……(2)
ここで,[C]、[Cr]:溶鋼中の炭素,クロム濃度、(Cr2O3):スラグ中のクロム酸化物濃度、(g)はガス成分である。
【0015】
ステンレス鋼のようなクロムを16質量%程度含有する溶鋼での脱炭反応では、クロムの酸化が同時に進行する。そして、溶鋼の温度が高いほど(例えば、 ℃以上)脱炭が促進し、クロムの酸化が抑制される。しかし、それより低温になると、脱炭が停滞し、クロムの酸化が促進され、該クロムの酸化反応熱により溶鋼温度が高くなる。このような脱炭の促進とクロムの酸化抑制とを同時に行うには、転炉での精錬初期から溶湯の温度を高くすることが肝要である。ところが、吹錬末期の低炭素濃度域(炭素濃度1質量%以下)では、炭素よりクロムの酸化が顕著となるため、吹錬初期の温度が高過ぎると、末期での溶湯温度が耐火物の溶損温度域(1750℃以上)に相当するような超高温となる。本来吹錬初期はより高温とし、クロムの酸化を抑制すべきであるが、低炭素濃度域においてクロム酸化を抑制し、かつ溶鋼温度を低下させる十分な技術がないため、効率良い精錬が行えないのが現状であった。
【0016】
そこで、発明者らは、前記低炭素濃度域においてクロム酸化を抑制し、かつ溶鋼温度を低下させる技術を見出すため、従来からある水添加技術を改良することとし、上吹き不活性ガスに水を添加して炉内に吹き込んで、溶鋼を冷却する実験を行った。
【0017】
その実験には、図2に示すように、ガス1を上吹きするランス2及び底吹きする炉底羽口3を備え、容量180トンの上底吹き転炉4を用いた。実験条件は、表1に示す通りである。なお、試料の溶鋼5は、含クロム溶鉄を該転炉で予め炭素濃度を1質量%まで脱炭したものであり、スラグ6の量及び組成は、その低炭素濃度域の実験期間をとおして一定になるように調整した。
【0018】
【表1】
【0019】
まず、上吹き不活性ガスだけ、あるいは水の吹き込みだけでの冷却をそれぞれ単独で実験したが、クロムの酸化抑制及び溶鋼温度の降下が不十分であった。そこで、不活性ガスと共に水を吹き込み、その際の該不活性ガス(N2)の流量を種々変更する実験を行った。
【0020】
その結果を、上吹き不活性ガス量と底吹き混合ガス量との比に対するクロム酸化量の変化で整理し、その一例を図1に示す。ここで、クロムの酸化量は、炉内に装入した主原料(溶銑、冷銑、スクラップ、フェロクロム)の重量及びそのクロム含有量から計算されるインプットクロム量と、出鋼した溶鋼の重量及びそのクロム含有量から計算されるアウトプットクロム量との差として求めたものである。図1の結果は、水添加量を0.1kg/t/minと一定にして、上吹き不活性ガスと底吹きガスの流量比を変化させたものである。図1より、上吹き不活性ガスあるいは底吹きガスの流量絶対値のいかんにかかわらず、上吹き不活性ガスと底吹きガスの流量比を0.5以上とすることで、クロムの酸化量が十分小さくなることがわかった。これは、上吹き不活性ガスによる撹拌でスラグ−メタルの局所的撹拌が促進され、スラグとメタルがエマルジョン状態となるため、水添加による冷却効率が良くなるためである。また上吹きランスヘの鋼の付着が大幅に軽減していた。これは、水添加(炉内水蒸気)により溶鋼面から発生するスプラッシュが凝集し、溶鋼内に落下するためである。
【0021】
なお、本発明では、水の添加量を0.1〜2.0kg/t/minとするのが好ましい。0.1kg/t/min未満では溶鋼の冷却が不十分であり、2.0kg/t/min超えでは、クロムの酸化が抑制できなくなるからである。また、不活性ガスは、窒素、アルゴン等、いかなる不活性ガスでも良い。さらに、使用する水は、いわゆる水道水等、いかなるものでも良く、ランスの水添加手段もスプレー型等、いかなるタイプでも良い。
【0022】
【実施例】
図2に示した容量180tの上底吹き転炉を用い、ステンレス鋼を溶製する操業を行った。該ステンレス鋼の最終目標の炭素濃度及びクロム濃度は、それぞれ16質量%、0.05質量%であり、脱炭処理の条件は表2の通りである。スラグ量、CaO/SiO2は一定となるようにした。なお、吹錬の初期は、上吹きガス及び底吹きガスを酸素ガスのみとして、炭素濃度[C]を0.3質量%まで低下させ、その後、底吹きを酸素ガス及び窒素ガスの混合ガス(表1と同条件)、上吹きガスを無し若しくは窒素ガス(0.20、又は0.62m3(標準状態)/min/t)という条件で操業(各条件で100チャージ)行った。底吹きガスの合計流量は、常に0.78m3/min/t(標準状態)とした。また、比較例1は、炭素濃度が0.3質量%まで低下後、上吹き不活性ガス及び水添加の両方が無いという条件である。さらに、比較例2は、水添加を上吹き不活性ガス無しで行い、比較例3は、水添加無しで上吹き不活性ガス有り(0.62Nm3/min/t)で行った場合である。一方、発明法1は、水添加した上吹き不活性ガス(0.39Nm3/min/t)有りで、その上吹き不活性ガスと底吹きガスの流量比を0.5とした場合であり、発明法2は、同比を0.8(上吹き不活性ガス=0.62Nm3/min/t)としたものである。
【0023】
これらの操業結果を表3に一括して示す。表3より、発明法2においてクロムの酸化量が最小であり、且つ溶鋼温度変化速度(下記3式)も最大であった。また、発明法1も、クロム酸化量の低減及び溶鋼温度の変化速度が比較例に比べ、良好であった。つまり、本発明によれば、吹錬初期の溶鋼温度に応じた吹錬末期での温度制御が可能であることが明らかである。また、上吹きランスヘの鋼付着や耐火物の溶損増加の傾向も見られなかった。
【0024】
溶鋼温度変化速度(℃/min.)={吹錬終了時温度−吹錬末期([C]=0.3質量%から)開始温度}/時間……(3)
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、ステンレス鋼の脱炭精錬において、クロムの酸化や溶鋼温度の上昇を従来より抑制できるようになる。また、吹錬終了時の成分、温度の的中率が向上し、次工程でのロスタイムが軽減された。これにより、高効率且つ安価なステンレス鋼の脱炭精錬が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶鋼への上吹き不活性ガスでの水添加実験の結果を、上吹き不活性ガス量と底吹き混合ガス量との比に対するクロム酸化量の変化で整理した図である。
【図2】一般的な上底吹き転炉を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ガス
2 上吹きランス
3 炉底羽口
4 上底吹き転炉
5 溶鋼
6 スラグ
Claims (1)
- 上底吹き転炉に保持した含クロム溶鋼に、酸素ガスを上底吹きして、その炭素濃度を1質量%以下まで低下させ、その後上吹きランスを介して不活性ガス及び水を炉内に吹き込むと共に、炉底羽口を介して酸素ガス及び不活性ガスの混合ガスを溶鋼中に吹き込み、さらに脱炭するステンレス鋼の脱炭精錬方法において、
前記上吹きする不活性ガスと前記底吹きする混合ガスとの流量比を0.5以上とすることを特徴とするステンレス鋼の脱炭精錬方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003047130A JP2004256854A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | ステンレス鋼の脱炭精錬方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2003047130A JP2004256854A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | ステンレス鋼の脱炭精錬方法 |
Publications (1)
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-
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