JP2004261987A - フィルム積層体およびフィルム積層体の製造方法 - Google Patents
フィルム積層体およびフィルム積層体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を提供する。
【解決手段】表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が、(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10であるプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層する。
【選択図】 なし
【解決手段】表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が、(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10であるプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水蒸気バリア性を向上させたフィルム積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プラスチックフィルムを基材層として、その表面に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機化合物層を形成したフィルム積層体は水蒸気・酸素を遮断するガスバリア性フィルムとして、食品包装、医薬品包装などの包装用途に広く用いられている。また包装用途以外にも、液晶表示素子、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス表示素子などに使用する透明導電性基板の一部としても用いられている。
【0003】
これらのフィルム積層体に関し、ガスバリア性を向上させることを目的として数々の改良検討がなされている。たとえば、基材フィルムの硬さを規定したもの(たとえば特許文献1参照。)、無機化合物層の粒状を規定したもの(たとえば特許文献2参照。)、基材フィルムの表面粗さを規定したもの(たとえば特許文献3参照。)、無機化合物層の比重を規定したもの(たとえば特許文献4参照。)、基材フィルムの表面凹凸と表面処理後の表面凹凸の比を規定したもの(たとえば特許文献5参照。)などが存在し、また基材フィルムと薄膜との密着性向上のためにアンカーコートを施したもの(たとえば特許文献6参照。)が存在する。
【0004】
プラスチックフィルム製基材層表面に無機化合物層を積層させ、ガスバリア性を向上させる手法について、これまでに無機薄膜作製プロセスの改善やフィルムの基材樹脂の組成の最適化などの検討が行われており、その結果フィルム表面に存在する凹凸が問題であると広く認識されてきた。
【0005】
したがって凹凸の少ないフィルムの作製法については、従前より多くの検討がなされており、製膜時の脈流の低減、巻取りドラムの平滑化、フィルムの延伸、溶液キャスト法の導入など各種改良がなされ、これによってガスバリア性向上が可能であると示唆されてきた。
【0006】
しかしながら、使用するフィルム等の表面特性については、各種の測定手法、各種のデータ記述法があり、これまでにも幾度となく言及されてきたが、どのような特性を有する場合に、水蒸気バリア性に優れたフィルム積層体となるかは依然明確にされていないのが実状である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−096661号公報(特許請求の範囲)
【0008】
【特許文献2】
特開平9−076400号公報(特許請求の範囲)
【0009】
【特許文献3】
特開平3−176123号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献4】
特開平5−186622号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献5】
特開平10−244601号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献6】
特開平3−086539号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のある態様によれば、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際に、実質的に周期構造が見られないプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体や、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が
(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10
であるプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体が提供される。
【0015】
本発明の態様により、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体が得られる。
【0016】
Al、Si、In、Sn、TiおよびTaの単体、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれた少なくとも一つにより無機化合物層を形成してなることが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様によれば、プラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体の製造方法において、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内にあるプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層するフィルム積層体の製造方法や、プラスチックフィルム製基材層面上に平坦化層と無機化合物層とを積層してなるフィルム積層体の製造方法において、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内にある平坦化層面上に無機化合物層を積層する、フィルム積層体の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の態様により、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を確実に製造できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図、表、式、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、式、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0020】
本発明における表面の凹凸とは、一般に表面形状の測定を行い得る測定装置による表面の任意の形状測定値を指す。測定値には被測定物のうねりや反りなどの成分も含み得るものであるが、本発明に述べる方法においてはこれらを分離して評価している。本発明では、このようなうねりや反りをまとめて「うねり」として把握している。
【0021】
本発明は、プラスチックフィルム製基材層に接して平坦化層を積層し、その上に無機化合物層を積層したフィルム積層体やプラスチックフィルム製基材層に接して平坦化層を積層せず、直接無機化合物層を積層したフィルム積層体に関する。
【0022】
本発明に係るフィルム積層体の基材層に使用するプラスチックフィルムとしては、実質的に透明であることが非常に好ましい。またフィルム積層体の透明性を損なわない範囲であれば、可塑剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、易接着剤、易滑材、着色剤などの添加剤を加えることができる。なお、これらの添加剤の発揮する機能は、本発明に係るフィルム積層体に他の層を積層することによって実現してもよい。
【0023】
基材層の製造法には特に限定は無く、溶融押出し製膜法、溶液キャスト製膜法、インフレーション製膜法等公知の方法で作製することができる。また、無延伸フィルムでも、延伸フィルムでも良い。なお、用途によっては、透明でなくともよい場合もあり、そのような場合には、添加剤等についても透明性に対する制限は不要である。
【0024】
プラスチックフィルムとして使用できる材料としては特に制限はないが、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルホン、光硬化性アクリル重合体等を挙げることができる。ポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造(ビスフェノールA構造)を骨格構造に持つポリカーボネートや、とりわけビスクレゾールフルオレン構造とビスフェノールA構造とを骨格構造に持つポリカーボネートが好ましい。ビスクレゾールフルオレン構造とビスフェノールA構造とを骨格構造に持つポリカーボネートは、高いガラス転移温度を有するがゆえにプラスチックフィルムの耐熱性に優れ、透明導電基板などの用途においてより好ましく用いられる。なお、ビスクレゾールフルオレン構造および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造とは、ビスクレゾールフルオレンや2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの両端の−OHが−O−となった構造を意味する。本発明に係るプラスチックフィルム製基材層の積層側面は、プラスチックフィルム製基材層の両面のうち、いずれか一方でもよく、両方であってもよい。
【0025】
プラスチックフィルム製基材層の表面凹凸測定データはその由来で大きく三つに分類できることが分かった。一つめはいわゆる「うねり」であり、二つめが本発明で問題となる特定凹凸構造、そして三つめが測定機のノイズなどで突発的に発生する異常である。一つめのデータである「うねり」は相対的に大きなマイクロメートルオーダの面内周期で生じる特徴がある。これは積層体が樹脂であることに由来し、基材フィルムの作製に際し、樹脂が凝固する過程で起こる収縮が原因で発生するものや、あるいは平坦化のために塗工層を施す際に、溶液の粘稠による展性不足で生じる塗りムラ、あるいはロールコータによって発生する塗布方向に伸びる筋ムラなどに起因する膜厚の不均一がこれに該当する。本発明に関連して作製したポリエステルフィルムの場合は、面内周期がおよそ50μmで、高さ方向がおよそ30nmのうねりが見られた。このうねりは、フィルムキャスト面に由来するものではない。
【0026】
後述する、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いた表面凹凸の評価が、このうねりを除去したものであり、しかも、水蒸気バリア性の評価として優れているところから、うねりは蒸気バリア性とは関係しない因子であると考えることができる。
【0027】
二つめのデータが本発明に係る特定凹凸構造である。これらは、製膜機のキャスティング面の研磨痕に由来するもの、あるいはフィルム作成において発生した異物に起因する微小な傷によるフィルム表面の凹凸で、高さが5nmないしは30nm、フィルム面内方向には幅5μmないしは20μm、長さ50μmないし150μmの大きさを持つ筋状の凹凸であることがわかった。無機化合物層を積層する場合には、このフィルムの製造工程のフィルムキャスト面に由来する表面凹凸構造が存在すると製膜においてシャドウ効果を引き起こすため、無機化合物層を均一に製膜することができず、水蒸気バリア性が芳しくない積層体となることが分かった。従って、フィルムの製造工程のフィルムキャスト面に由来する表面凹凸構造を実質的に保持しないプラスチックフィルム製基材層表面を使用することにより、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を得ることが可能となる。フィルムの製造工程のフィルムキャスト面に由来する表面凹凸構造を実質的に保持しないかどうかは、パターンを持った表面凹凸構造があるか否か等で判断することができる。その具体的方法としては、後述する評価方法を挙げることができる。
【0028】
そして三つめのデータであるノイズなど突発的異常成分は、本発明の目的とする水蒸気バリア性には全く影響しないものであることがわかった。
【0029】
基材フィルムの表面凹凸の測定データを空間周期の大きい方より、うねり、特定凹凸構造、突発的異常成分と3種類に分類しているが、従来の表面凹凸の数値化においてはこれら3種類が複合したデータを各々分離せずに評価していたため、同じ測定値を持つ表面にも関らず、発明の目的を満たすもの、満たさないものが混在していたことがわかった。具体的に言うならば、表面粗さの平均的数値を示すRa、Rq、Rmsといった値は本明細書中における「うねり」を強く反映し、Rz、Rpといった最大数値を示す数値は突発的異常成分を強く反映するものであることがわかった。それゆえ、これまでに使用されてきた表面パラメータでは本発明に係る特定凹凸構造を評価するには不向きであることが判明した。
【0030】
この特定凹凸構造の分離法について検討した結果、表面凹凸の測定データについて、フーリエ変換によって波数分解を行い、必要な成分のみを取り出すことで分離できることを見出した。このフーリエ変換は市販の解析ソフトあるいは測定機器に附属する解析ソフトによって行うことができる。たとえば、Veeco社製光学干渉式顕微鏡Wyco(R)NT3300で測定を行うならば、附属する解析ソフトをそのまま用いることができる。また、本発明の実施例においては表面凹凸の測定を光学式干渉顕微鏡を用いて行ったが、微小領域の凹凸測定に一般的に用いられるAFM(原子間力顕微鏡)を用いた場合においても、その測定データ並びに解析結果について、これをそのまま用いることができる。
【0031】
光学式干渉顕微鏡とAFMとでは測定の原理が異なり、またフィルム表面として認識される界面が異なるが、本発明が言及する表面凹凸の範囲においては、その測定法の違いによって発明の範囲に齟齬を生じることはないことが判明した。
【0032】
表面凹凸の測定では、たとえば、約190μm×約250μmの面積を測定した凹凸像について2次元傾き補正処理を行った後、測定値についてHigh Pass Filterで「うねり」を除去することができる。このHigh Pass Filterのカットオフ周波数は任意に設定できるが、本発明の目的に対しては40.00/mmに設定するのが好ましいことがわかった。すなわち、40.00/mmより大きな空間周期の成分からなるうねりを除去することが有効であることが判明した。フィルタリングの残りの波は特定凹凸構造と突発的異常成分から構成される。
【0033】
ここからノイズなど突発的異常成分を除去するのにはLow Pass Filterを使用することもできるが、突発的異常成分の発生箇所が測定面積内で占める割合が小さいため、凹凸の高さ分布のヒストグラムを用いることで、充分な確度で処理を行うことができる。たとえば、具体的には凹凸の高さ分布のヒストグラムの上位2.5%以内と下位2.5%以内とカットし、残りの95%領域のデータをもって特定凹凸構造とすることができることがわかった。
【0034】
この特定凹凸構造の凹凸データについて鋭意検討した結果、無機化合物層を積層したにも関らず、ガスバリア性の優れないフィルム積層体に共通する特徴として、この凹凸データに周期構造を保持していることが判明した。この周期構造は、この特定凹凸構造の起源の一つが製膜機のキャスティング面の研磨傷であることに由来する。即ち、粒状分布を持つ研磨粒子を用いてキャスティング面の研磨を行うために、研磨傷の深さ、長さに特徴が生じるためと考えられる。また、フィルム作製工程にて発生した異物によるフィルム表面の傷にも由来する。すなわち、フィルムの組成物に由来する小片、製膜機の磨耗に由来する傷等に発生原因が限られ、このため、フィルムに及ぼす傷の深さ、長さに特徴が生じるものと考えられる。本発明は、これら原因に鑑み、なされたものである。
【0035】
周期構造を表現する方法については従来より多くの方法があるが、たとえば表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して自己相関係数を求め、これを実空間のデータとして表面の周期性を表現することで適切に表現できることが分かった。このようにして、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際に、実質的に周期構造が見られないプラスチックフィルム製基材層表面に無機化合物層を積層した場合に、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を得ることができる。実質的に周期構造が見られるか否かは実情に応じて適宜定めることができる。
【0036】
本発明の実施例では、表面凹凸データの解析においてVeeco社製光学干渉式顕微鏡Wyco(商標)に附属する解析ソフトを用いて行ったが、本発明はこの手法に何ら限定されるものではなく、表面凹凸の3次元データについて市販の数学処理ソフトやグラフ作成ソフト、たとえば株式会社数理システムのS−PLUSとS+SpatialStatsを用い、空間分析などの手法を適宜用いることでも同様のデータを得ることが可能である。
【0037】
プラスチックフィルム製基材層表面凹凸の周期性について鋭意検討を行ったところ、表面の凹凸分布の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が図1に示すように(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10である場合に、表面が充分に平滑で、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を与えることができることを見出した。これとは対照的に、第0次ピークと第1次ピークの高さの比が図2に示すように(第1次ピーク)/(第0次ピーク)≧1/10である場合には、水蒸気透過率を低減させることができなかった。ここにおいて第0次ピークとは原点を示すピークで、自己相関係数には必ず存在するものである。また、ここに述べる第1次ピークとは自己相関係数のうちで原点に最も近接して存在するピークで、このピークの頂点と原点(すなわち第0次ピーク)との直線距離に相当する周期をもつ周期構造が表面に存在することを示している。さらにこの第1次ピークの高さは、周期性の強さを示している。
【0038】
従って、第1次ピーク/第0次ピークの比が小さいほど表面構造の周期性が弱いことを示している。鋭意検討したところによると、プラスチックフィルム製基材層の比が1/10よりも小さい場合には表面の周期性が充分に弱く、すなわち本発明で述べるところの特定凹凸構造が充分に小さく、無機化合物層の積層に影響しない表面であることが見出された。
【0039】
なお、この表面周期性は、フィルム基材の表面平滑性のみならず、フィルム表面に平坦化層を施した表面の平滑性についても同様に成立することが分かった。すなわち、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アルキルチタネート、およびこれらの変性樹脂などを使用し、ロールコーター、グラビアコーター、スピンコーターなどの公知の方法で平坦化層を導入して作製した平坦化層の表面についても適用し得るものであることが分かった。
【0040】
そして本発明は上記に述べた条件で平坦化したプラスチックフィルム製基材層または平坦化層の表面に無機化合物層を製膜するが、水蒸気透過率、光線透過率、密着性、湿熱耐久性、耐擦傷性の点からは、Al、Si、In、Sn、TiおよびTaの単体、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれた少なくとも一つにより無機化合物層を形成することが工業的には望ましい。これらは複数の層からなっていてもよい。
【0041】
プラスチックフィルム製基材層や平坦化層の表面に無機化合物層を製膜した場合、無機化合物層は下地の凹凸を強調するが如く積層をすることがわかった。その結果、本発明に記載の如く表面平坦性に優れたプラスチックフィルム製基材層を使用した場合には、該無機化合物層表面においても平坦性、すなわち自己相関係数のピーク高さの比がほぼ維持されたが、表面平坦性の不十分な表面に無機化合物層を製膜した場合には、ピーク高さの比は基材フィルムを測定した場合の値よりも大きなものとなることが分かった。
【0042】
本発明の、プラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体の製造方法では、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内にあるプラスチックフィルム製基材層面上または平坦化層面上に無機化合物層を積層する。また、積層後の無機化合物層表面について、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内になるようにプラスチックフィルム製基材層を選択する。このようにすることにより、水蒸気バリア性を向上させたフィルム積層体を再現性よく安定して生産することができる。なお、上における「所定の範囲」は必要とする水蒸気バリア性のレベル等から適宜定めることができる。具体的には、プラスチックフィルム製基材層の表面と平坦化層の表面とについては、
(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10
であることが好ましい。
【0043】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。以下の実施例におけるフィルムの測定および評価の方法は以下の通りである。
【0044】
<表面の粗さ:ピーク高さの比>
光学干渉式顕微鏡として、Veeco社製光学干渉式顕微鏡WYCO(商標)NT3300を使用し、PSIモードで、実施例および比較例でのサンプル表面を約190μm×約250μmの面積を測定した凹凸像について2次元ティルト処理を行った後、High Passフィルター処理を行ってうねり成分を取り除き、ヒストグラム処理を行って突発的異常成分を取り除いた。この値に対してデータ処理として自己相関係数を計算し、第0次ピークの高さと第1次ピークの高さを比較した。また、測定する箇所はサンプル表面の任意の箇所を選択した。
【0045】
<無機化合物層の厚さ>
実施例および比較例により得られた積層体について蛍光X線分析装置によって金属原子の積層量を測定し、その量を酸化ケイ素膜の厚さに換算した。
【0046】
<水蒸気透過率>
水蒸気透過率測定装置、MOCON社製Permatran−W1を使用して温度40℃相対湿度100%の条件下で測定した。本測定において水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以下となったものについて水蒸気バリア性良好と判断した。
【0047】
[実施例1]
アミノプロピルトリメトキシシランとオルガノシランとを混合し、ブタノール、酢酸、1−メチル−2−プロパノール、蒸留水を補助剤として添加して平坦化溶液を作成した。
【0048】
ビスフェノールAを骨格に持つポリカーボネートを290℃に加熱して溶融させ、Tダイより押出し、5℃に冷却したドラムにて巻き取らせてフィルムを製膜し、そのキャスト面と接触した側のフィルム表面に、スピンコート法で平坦化溶液を塗布した後に130℃の温浴槽にて2分間加熱し、平坦化したフィルム表面を作製した。平坦化層の厚みを300nmとした。この平坦化層表面に無機化合物層として酸化ケイ素膜をアルゴンスパッタリング法にて30nmの厚みで製膜した。
【0049】
[実施例2]
ビスフェノールAとビスクレゾールフルオレンとを骨格に持つポリカーボネートをジクロロメタンに溶解させ、キャスティングベルト上に展開させてフィルムを作製した。このフィルムの表面のうち、キャスティングベルトに接していなかった側の表面に、酸化ケイ素膜をスパッタリング法で30nmの厚みで製膜した。
【0050】
[実施例3]
1−メトキシ−2−プロパノールで希釈した日本ポリウレタン工業社製コロネートLを含む熱硬化性ウレタン樹脂溶液の混合物を平坦化液として用い、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製)の表面に、1μmの厚さで平坦化層を施し、該平坦化表面に酸化ケイ素膜を蒸着法にて30nmの厚みで製膜した。
【0051】
[実施例4]
ポリエチレンナフタレートを溶融押出し法にて製膜し、逐次2軸延伸機にて延伸して得たフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)を用いたほかは、実施例1と同様な方法でフィルム積層体を作成した。
【0052】
[比較例1]
平坦化層の厚みを70nmとしたほかは実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0053】
[比較例2]
ビスフェノールAを骨格に持つポリカーボネートをジクロロメタンに溶解させ、キャスティングベルト上に展開させてフィルムを作製した。このフィルムの表面のうち、キャスティングベルトに接していた側の表面に、酸化ケイ素膜を33nmの厚みで製膜した。
【0054】
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体が得られる。また、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を確実に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1ピーク/第0ピーク比<1/10を示す表面の計算結果の一例である。
【図2】第1ピーク/第0ピーク比>1/10を示す表面の計算結果の他の一例である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水蒸気バリア性を向上させたフィルム積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プラスチックフィルムを基材層として、その表面に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機化合物層を形成したフィルム積層体は水蒸気・酸素を遮断するガスバリア性フィルムとして、食品包装、医薬品包装などの包装用途に広く用いられている。また包装用途以外にも、液晶表示素子、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス表示素子などに使用する透明導電性基板の一部としても用いられている。
【0003】
これらのフィルム積層体に関し、ガスバリア性を向上させることを目的として数々の改良検討がなされている。たとえば、基材フィルムの硬さを規定したもの(たとえば特許文献1参照。)、無機化合物層の粒状を規定したもの(たとえば特許文献2参照。)、基材フィルムの表面粗さを規定したもの(たとえば特許文献3参照。)、無機化合物層の比重を規定したもの(たとえば特許文献4参照。)、基材フィルムの表面凹凸と表面処理後の表面凹凸の比を規定したもの(たとえば特許文献5参照。)などが存在し、また基材フィルムと薄膜との密着性向上のためにアンカーコートを施したもの(たとえば特許文献6参照。)が存在する。
【0004】
プラスチックフィルム製基材層表面に無機化合物層を積層させ、ガスバリア性を向上させる手法について、これまでに無機薄膜作製プロセスの改善やフィルムの基材樹脂の組成の最適化などの検討が行われており、その結果フィルム表面に存在する凹凸が問題であると広く認識されてきた。
【0005】
したがって凹凸の少ないフィルムの作製法については、従前より多くの検討がなされており、製膜時の脈流の低減、巻取りドラムの平滑化、フィルムの延伸、溶液キャスト法の導入など各種改良がなされ、これによってガスバリア性向上が可能であると示唆されてきた。
【0006】
しかしながら、使用するフィルム等の表面特性については、各種の測定手法、各種のデータ記述法があり、これまでにも幾度となく言及されてきたが、どのような特性を有する場合に、水蒸気バリア性に優れたフィルム積層体となるかは依然明確にされていないのが実状である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−096661号公報(特許請求の範囲)
【0008】
【特許文献2】
特開平9−076400号公報(特許請求の範囲)
【0009】
【特許文献3】
特開平3−176123号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献4】
特開平5−186622号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献5】
特開平10−244601号公報(特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献6】
特開平3−086539号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のある態様によれば、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際に、実質的に周期構造が見られないプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体や、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が
(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10
であるプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体が提供される。
【0015】
本発明の態様により、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体が得られる。
【0016】
Al、Si、In、Sn、TiおよびTaの単体、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれた少なくとも一つにより無機化合物層を形成してなることが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様によれば、プラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体の製造方法において、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内にあるプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層するフィルム積層体の製造方法や、プラスチックフィルム製基材層面上に平坦化層と無機化合物層とを積層してなるフィルム積層体の製造方法において、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内にある平坦化層面上に無機化合物層を積層する、フィルム積層体の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の態様により、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を確実に製造できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図、表、式、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、式、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0020】
本発明における表面の凹凸とは、一般に表面形状の測定を行い得る測定装置による表面の任意の形状測定値を指す。測定値には被測定物のうねりや反りなどの成分も含み得るものであるが、本発明に述べる方法においてはこれらを分離して評価している。本発明では、このようなうねりや反りをまとめて「うねり」として把握している。
【0021】
本発明は、プラスチックフィルム製基材層に接して平坦化層を積層し、その上に無機化合物層を積層したフィルム積層体やプラスチックフィルム製基材層に接して平坦化層を積層せず、直接無機化合物層を積層したフィルム積層体に関する。
【0022】
本発明に係るフィルム積層体の基材層に使用するプラスチックフィルムとしては、実質的に透明であることが非常に好ましい。またフィルム積層体の透明性を損なわない範囲であれば、可塑剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、易接着剤、易滑材、着色剤などの添加剤を加えることができる。なお、これらの添加剤の発揮する機能は、本発明に係るフィルム積層体に他の層を積層することによって実現してもよい。
【0023】
基材層の製造法には特に限定は無く、溶融押出し製膜法、溶液キャスト製膜法、インフレーション製膜法等公知の方法で作製することができる。また、無延伸フィルムでも、延伸フィルムでも良い。なお、用途によっては、透明でなくともよい場合もあり、そのような場合には、添加剤等についても透明性に対する制限は不要である。
【0024】
プラスチックフィルムとして使用できる材料としては特に制限はないが、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルサルホン、光硬化性アクリル重合体等を挙げることができる。ポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造(ビスフェノールA構造)を骨格構造に持つポリカーボネートや、とりわけビスクレゾールフルオレン構造とビスフェノールA構造とを骨格構造に持つポリカーボネートが好ましい。ビスクレゾールフルオレン構造とビスフェノールA構造とを骨格構造に持つポリカーボネートは、高いガラス転移温度を有するがゆえにプラスチックフィルムの耐熱性に優れ、透明導電基板などの用途においてより好ましく用いられる。なお、ビスクレゾールフルオレン構造および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造とは、ビスクレゾールフルオレンや2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの両端の−OHが−O−となった構造を意味する。本発明に係るプラスチックフィルム製基材層の積層側面は、プラスチックフィルム製基材層の両面のうち、いずれか一方でもよく、両方であってもよい。
【0025】
プラスチックフィルム製基材層の表面凹凸測定データはその由来で大きく三つに分類できることが分かった。一つめはいわゆる「うねり」であり、二つめが本発明で問題となる特定凹凸構造、そして三つめが測定機のノイズなどで突発的に発生する異常である。一つめのデータである「うねり」は相対的に大きなマイクロメートルオーダの面内周期で生じる特徴がある。これは積層体が樹脂であることに由来し、基材フィルムの作製に際し、樹脂が凝固する過程で起こる収縮が原因で発生するものや、あるいは平坦化のために塗工層を施す際に、溶液の粘稠による展性不足で生じる塗りムラ、あるいはロールコータによって発生する塗布方向に伸びる筋ムラなどに起因する膜厚の不均一がこれに該当する。本発明に関連して作製したポリエステルフィルムの場合は、面内周期がおよそ50μmで、高さ方向がおよそ30nmのうねりが見られた。このうねりは、フィルムキャスト面に由来するものではない。
【0026】
後述する、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いた表面凹凸の評価が、このうねりを除去したものであり、しかも、水蒸気バリア性の評価として優れているところから、うねりは蒸気バリア性とは関係しない因子であると考えることができる。
【0027】
二つめのデータが本発明に係る特定凹凸構造である。これらは、製膜機のキャスティング面の研磨痕に由来するもの、あるいはフィルム作成において発生した異物に起因する微小な傷によるフィルム表面の凹凸で、高さが5nmないしは30nm、フィルム面内方向には幅5μmないしは20μm、長さ50μmないし150μmの大きさを持つ筋状の凹凸であることがわかった。無機化合物層を積層する場合には、このフィルムの製造工程のフィルムキャスト面に由来する表面凹凸構造が存在すると製膜においてシャドウ効果を引き起こすため、無機化合物層を均一に製膜することができず、水蒸気バリア性が芳しくない積層体となることが分かった。従って、フィルムの製造工程のフィルムキャスト面に由来する表面凹凸構造を実質的に保持しないプラスチックフィルム製基材層表面を使用することにより、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を得ることが可能となる。フィルムの製造工程のフィルムキャスト面に由来する表面凹凸構造を実質的に保持しないかどうかは、パターンを持った表面凹凸構造があるか否か等で判断することができる。その具体的方法としては、後述する評価方法を挙げることができる。
【0028】
そして三つめのデータであるノイズなど突発的異常成分は、本発明の目的とする水蒸気バリア性には全く影響しないものであることがわかった。
【0029】
基材フィルムの表面凹凸の測定データを空間周期の大きい方より、うねり、特定凹凸構造、突発的異常成分と3種類に分類しているが、従来の表面凹凸の数値化においてはこれら3種類が複合したデータを各々分離せずに評価していたため、同じ測定値を持つ表面にも関らず、発明の目的を満たすもの、満たさないものが混在していたことがわかった。具体的に言うならば、表面粗さの平均的数値を示すRa、Rq、Rmsといった値は本明細書中における「うねり」を強く反映し、Rz、Rpといった最大数値を示す数値は突発的異常成分を強く反映するものであることがわかった。それゆえ、これまでに使用されてきた表面パラメータでは本発明に係る特定凹凸構造を評価するには不向きであることが判明した。
【0030】
この特定凹凸構造の分離法について検討した結果、表面凹凸の測定データについて、フーリエ変換によって波数分解を行い、必要な成分のみを取り出すことで分離できることを見出した。このフーリエ変換は市販の解析ソフトあるいは測定機器に附属する解析ソフトによって行うことができる。たとえば、Veeco社製光学干渉式顕微鏡Wyco(R)NT3300で測定を行うならば、附属する解析ソフトをそのまま用いることができる。また、本発明の実施例においては表面凹凸の測定を光学式干渉顕微鏡を用いて行ったが、微小領域の凹凸測定に一般的に用いられるAFM(原子間力顕微鏡)を用いた場合においても、その測定データ並びに解析結果について、これをそのまま用いることができる。
【0031】
光学式干渉顕微鏡とAFMとでは測定の原理が異なり、またフィルム表面として認識される界面が異なるが、本発明が言及する表面凹凸の範囲においては、その測定法の違いによって発明の範囲に齟齬を生じることはないことが判明した。
【0032】
表面凹凸の測定では、たとえば、約190μm×約250μmの面積を測定した凹凸像について2次元傾き補正処理を行った後、測定値についてHigh Pass Filterで「うねり」を除去することができる。このHigh Pass Filterのカットオフ周波数は任意に設定できるが、本発明の目的に対しては40.00/mmに設定するのが好ましいことがわかった。すなわち、40.00/mmより大きな空間周期の成分からなるうねりを除去することが有効であることが判明した。フィルタリングの残りの波は特定凹凸構造と突発的異常成分から構成される。
【0033】
ここからノイズなど突発的異常成分を除去するのにはLow Pass Filterを使用することもできるが、突発的異常成分の発生箇所が測定面積内で占める割合が小さいため、凹凸の高さ分布のヒストグラムを用いることで、充分な確度で処理を行うことができる。たとえば、具体的には凹凸の高さ分布のヒストグラムの上位2.5%以内と下位2.5%以内とカットし、残りの95%領域のデータをもって特定凹凸構造とすることができることがわかった。
【0034】
この特定凹凸構造の凹凸データについて鋭意検討した結果、無機化合物層を積層したにも関らず、ガスバリア性の優れないフィルム積層体に共通する特徴として、この凹凸データに周期構造を保持していることが判明した。この周期構造は、この特定凹凸構造の起源の一つが製膜機のキャスティング面の研磨傷であることに由来する。即ち、粒状分布を持つ研磨粒子を用いてキャスティング面の研磨を行うために、研磨傷の深さ、長さに特徴が生じるためと考えられる。また、フィルム作製工程にて発生した異物によるフィルム表面の傷にも由来する。すなわち、フィルムの組成物に由来する小片、製膜機の磨耗に由来する傷等に発生原因が限られ、このため、フィルムに及ぼす傷の深さ、長さに特徴が生じるものと考えられる。本発明は、これら原因に鑑み、なされたものである。
【0035】
周期構造を表現する方法については従来より多くの方法があるが、たとえば表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して自己相関係数を求め、これを実空間のデータとして表面の周期性を表現することで適切に表現できることが分かった。このようにして、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際に、実質的に周期構造が見られないプラスチックフィルム製基材層表面に無機化合物層を積層した場合に、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を得ることができる。実質的に周期構造が見られるか否かは実情に応じて適宜定めることができる。
【0036】
本発明の実施例では、表面凹凸データの解析においてVeeco社製光学干渉式顕微鏡Wyco(商標)に附属する解析ソフトを用いて行ったが、本発明はこの手法に何ら限定されるものではなく、表面凹凸の3次元データについて市販の数学処理ソフトやグラフ作成ソフト、たとえば株式会社数理システムのS−PLUSとS+SpatialStatsを用い、空間分析などの手法を適宜用いることでも同様のデータを得ることが可能である。
【0037】
プラスチックフィルム製基材層表面凹凸の周期性について鋭意検討を行ったところ、表面の凹凸分布の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が図1に示すように(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10である場合に、表面が充分に平滑で、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を与えることができることを見出した。これとは対照的に、第0次ピークと第1次ピークの高さの比が図2に示すように(第1次ピーク)/(第0次ピーク)≧1/10である場合には、水蒸気透過率を低減させることができなかった。ここにおいて第0次ピークとは原点を示すピークで、自己相関係数には必ず存在するものである。また、ここに述べる第1次ピークとは自己相関係数のうちで原点に最も近接して存在するピークで、このピークの頂点と原点(すなわち第0次ピーク)との直線距離に相当する周期をもつ周期構造が表面に存在することを示している。さらにこの第1次ピークの高さは、周期性の強さを示している。
【0038】
従って、第1次ピーク/第0次ピークの比が小さいほど表面構造の周期性が弱いことを示している。鋭意検討したところによると、プラスチックフィルム製基材層の比が1/10よりも小さい場合には表面の周期性が充分に弱く、すなわち本発明で述べるところの特定凹凸構造が充分に小さく、無機化合物層の積層に影響しない表面であることが見出された。
【0039】
なお、この表面周期性は、フィルム基材の表面平滑性のみならず、フィルム表面に平坦化層を施した表面の平滑性についても同様に成立することが分かった。すなわち、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アルキルチタネート、およびこれらの変性樹脂などを使用し、ロールコーター、グラビアコーター、スピンコーターなどの公知の方法で平坦化層を導入して作製した平坦化層の表面についても適用し得るものであることが分かった。
【0040】
そして本発明は上記に述べた条件で平坦化したプラスチックフィルム製基材層または平坦化層の表面に無機化合物層を製膜するが、水蒸気透過率、光線透過率、密着性、湿熱耐久性、耐擦傷性の点からは、Al、Si、In、Sn、TiおよびTaの単体、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれた少なくとも一つにより無機化合物層を形成することが工業的には望ましい。これらは複数の層からなっていてもよい。
【0041】
プラスチックフィルム製基材層や平坦化層の表面に無機化合物層を製膜した場合、無機化合物層は下地の凹凸を強調するが如く積層をすることがわかった。その結果、本発明に記載の如く表面平坦性に優れたプラスチックフィルム製基材層を使用した場合には、該無機化合物層表面においても平坦性、すなわち自己相関係数のピーク高さの比がほぼ維持されたが、表面平坦性の不十分な表面に無機化合物層を製膜した場合には、ピーク高さの比は基材フィルムを測定した場合の値よりも大きなものとなることが分かった。
【0042】
本発明の、プラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体の製造方法では、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内にあるプラスチックフィルム製基材層面上または平坦化層面上に無機化合物層を積層する。また、積層後の無機化合物層表面について、表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内になるようにプラスチックフィルム製基材層を選択する。このようにすることにより、水蒸気バリア性を向上させたフィルム積層体を再現性よく安定して生産することができる。なお、上における「所定の範囲」は必要とする水蒸気バリア性のレベル等から適宜定めることができる。具体的には、プラスチックフィルム製基材層の表面と平坦化層の表面とについては、
(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10
であることが好ましい。
【0043】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。以下の実施例におけるフィルムの測定および評価の方法は以下の通りである。
【0044】
<表面の粗さ:ピーク高さの比>
光学干渉式顕微鏡として、Veeco社製光学干渉式顕微鏡WYCO(商標)NT3300を使用し、PSIモードで、実施例および比較例でのサンプル表面を約190μm×約250μmの面積を測定した凹凸像について2次元ティルト処理を行った後、High Passフィルター処理を行ってうねり成分を取り除き、ヒストグラム処理を行って突発的異常成分を取り除いた。この値に対してデータ処理として自己相関係数を計算し、第0次ピークの高さと第1次ピークの高さを比較した。また、測定する箇所はサンプル表面の任意の箇所を選択した。
【0045】
<無機化合物層の厚さ>
実施例および比較例により得られた積層体について蛍光X線分析装置によって金属原子の積層量を測定し、その量を酸化ケイ素膜の厚さに換算した。
【0046】
<水蒸気透過率>
水蒸気透過率測定装置、MOCON社製Permatran−W1を使用して温度40℃相対湿度100%の条件下で測定した。本測定において水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以下となったものについて水蒸気バリア性良好と判断した。
【0047】
[実施例1]
アミノプロピルトリメトキシシランとオルガノシランとを混合し、ブタノール、酢酸、1−メチル−2−プロパノール、蒸留水を補助剤として添加して平坦化溶液を作成した。
【0048】
ビスフェノールAを骨格に持つポリカーボネートを290℃に加熱して溶融させ、Tダイより押出し、5℃に冷却したドラムにて巻き取らせてフィルムを製膜し、そのキャスト面と接触した側のフィルム表面に、スピンコート法で平坦化溶液を塗布した後に130℃の温浴槽にて2分間加熱し、平坦化したフィルム表面を作製した。平坦化層の厚みを300nmとした。この平坦化層表面に無機化合物層として酸化ケイ素膜をアルゴンスパッタリング法にて30nmの厚みで製膜した。
【0049】
[実施例2]
ビスフェノールAとビスクレゾールフルオレンとを骨格に持つポリカーボネートをジクロロメタンに溶解させ、キャスティングベルト上に展開させてフィルムを作製した。このフィルムの表面のうち、キャスティングベルトに接していなかった側の表面に、酸化ケイ素膜をスパッタリング法で30nmの厚みで製膜した。
【0050】
[実施例3]
1−メトキシ−2−プロパノールで希釈した日本ポリウレタン工業社製コロネートLを含む熱硬化性ウレタン樹脂溶液の混合物を平坦化液として用い、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社製)の表面に、1μmの厚さで平坦化層を施し、該平坦化表面に酸化ケイ素膜を蒸着法にて30nmの厚みで製膜した。
【0051】
[実施例4]
ポリエチレンナフタレートを溶融押出し法にて製膜し、逐次2軸延伸機にて延伸して得たフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)を用いたほかは、実施例1と同様な方法でフィルム積層体を作成した。
【0052】
[比較例1]
平坦化層の厚みを70nmとしたほかは実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0053】
[比較例2]
ビスフェノールAを骨格に持つポリカーボネートをジクロロメタンに溶解させ、キャスティングベルト上に展開させてフィルムを作製した。このフィルムの表面のうち、キャスティングベルトに接していた側の表面に、酸化ケイ素膜を33nmの厚みで製膜した。
【0054】
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体が得られる。また、水蒸気透過率を低減させた良好なフィルム積層体を確実に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1ピーク/第0ピーク比<1/10を示す表面の計算結果の一例である。
【図2】第1ピーク/第0ピーク比>1/10を示す表面の計算結果の他の一例である。
Claims (5)
- 表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際に、実質的に周期構造が見られないプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体。
- 表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が
(第1次ピーク)/(第0次ピーク)<1/10
であるプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体。 - Al、Si、In、Sn、TiおよびTaの単体、酸化物、窒化物および酸窒化物からなる群より選ばれた少なくとも一つにより無機化合物層を形成してなる、請求項1または2に記載のフィルム積層体。
- プラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層してなるフィルム積層体の製造方法において、
表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内にあるプラスチックフィルム製基材層面上に無機化合物層を積層する、
フィルム積層体の製造方法。 - プラスチックフィルム製基材層面上に平坦化層と無機化合物層とを積層してなるフィルム積層体の製造方法において、
表面凹凸の測定データに対してフーリエ変換を行って波数分離し、これを逆フーリエ変換して得た自己相関係数を用いて表面凹凸を評価した際の第0次ピークと第1次ピークの高さの比が所定の範囲内にある平坦化層面上に無機化合物層を積層する、
フィルム積層体の製造方法。
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Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2005078010A1 (ja) * | 2004-02-17 | 2005-08-25 | Toray Industries, Inc. | 二軸配向ポリエステルフィルム |
| US12534585B2 (en) | 2020-03-05 | 2026-01-27 | Toppan Inc. | Gas barrier film and method for producing the same |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003052441A patent/JP2004261987A/ja active Pending
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|---|---|---|---|---|
| WO2005078010A1 (ja) * | 2004-02-17 | 2005-08-25 | Toray Industries, Inc. | 二軸配向ポリエステルフィルム |
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