JP2004276355A - プリフォームおよびそのプリフォームを用いた繊維強化樹脂複合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボイドのない高品質のFRPを成形することができるとともに、短時間で樹脂含浸ができ、強化繊維の持つ高強度・高弾性率の特性を十分に発揮できるプリフォーム4およびそのプリフォームを用いたFRP複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のプリフォーム4は、強化繊維基材1の少なくとも片面にマトリックス樹脂シート2が接着してなるプリプレグ3が複数層積層されたものである。そして、このプリフォーム4を構成する複数の基材1のすべての層間にマトリックス樹脂シート2が介在しており、かつ、このマトリックス樹脂シート2の樹脂が前記強化繊維基材に実質的に未含浸状態であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば炭素繊維などの強化繊維からなる強化繊維基材と、マトリックス樹脂からなる繊維強化樹脂(以下、FRPと略記する)複合体を製造するのに適したプリフォームおよびそのプリフォームを用いたFRP複合体の製造方法に関する。詳しくは、高目付の強化繊維基材と高粘度樹脂を用いて輸送機器(特に航空機)の構造体や部品などの高強度、高弾性性能が要求されるFRPを製造するのに適したプリフォームおよびそのプリフォームを用いたFRP複合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、航空機部品などの高品質が要求されるFRPの製造方法としては、強化繊維基材にあらかじめ樹脂を完全含浸させたプリプレグを用い、これを型に積層した上でバッグ材で覆い、オートクレーブ(加熱・加圧炉)内で加熱、加圧し樹脂を硬化させるいわゆるオートクレーブ成形法が多用されている。この成形方法は生産性は低いという問題があるものの、あらかじめ強化繊維基材に樹脂を完全含浸させていることから、成形後のFRPにおいてもボイドの発生がなく、高品質であることから好ましく使用されている。すなわち、FRPの成形においてはボイドをいかになくするかが成形品の品質に大きく影響を及ぼし、ボイドが発生すると強度などの特性を大きく低下させることになる。
【0003】
さて、近年、航空機メーカから成形作業コストを削減するために強化繊維基材の積層枚数を減らし、積層作業時間の短縮化する目的で高目付プリプレグの要求がある。
【0004】
ここで、プリプレグの製造方法としては、ウエット方式とホットメルト方式とがあるが、前者の含浸させる樹脂を有機溶媒などに希釈し含浸後溶媒を乾燥除去するウェット方式の製造方法では、樹脂を溶媒で希釈するので低粘度化でき、高目付の基材や樹脂含浸しにくい強化繊維基材の場合に有利であるが、含浸後の溶媒を飛ばすために乾燥設備や回収した溶媒の処理設備が必要である。さらに、乾燥後もプリプレグ内に少量の溶媒が残ることから成形時の加熱の際に揮発しボイドの原因になるなどのことから航空機部材用途のプリプレグとしては含浸させる樹脂を直接加熱昇温し、流動化させて強化繊維基材に含浸させるホットメルト方式が主に用いられている。
【0005】
このホットメルト方式のプリプレグ製造工程において、高目付化した基材に樹脂を含浸させようとすると、強化繊維基材の目付が小さい場合は、基材厚みが小さいので樹脂含浸が必要となる基材中心までの距離が小さく、樹脂を完全に含浸させやすい。しかし、基材目付が大きくなると基材厚みも大きくなり、基材中心までの樹脂の含浸距離が大きくなることから樹脂が含浸しにくくなる。このため、加熱温度を高くして樹脂の粘度を下げたり、樹脂含浸時の加圧力を大きくして樹脂を含浸しやすいようにする必要があるが、そうすると加熱により樹脂の硬化反応が進み樹脂が含浸しにくくなったり、加圧力が大きくなると樹脂含浸時の樹脂流動により繊維も流動するので、繊維の蛇行が発生しFRPにおける力学特性の低下に繋がる。
【0006】
このような問題を改善すべく、特許文献1には、強化繊維基材を積層したプリフォームの表面に樹脂層を配置し、バック内で真空吸引しながら加熱加圧硬化する、いわゆるRFI(Resin Film Infusion)成形法と呼ばれるFRPの成形方法が提案されている。
【0007】
しかし、この成形法は、プリフォーム表面にプリフォーム全体に樹脂含浸をさせるのに必要な樹脂量を有する樹脂層を一箇所に配し、樹脂層から含浸すべき樹脂をプリフォーム内に移動させることから、含浸距離が大きい問題があった。特に航空機部品などに使用されている耐熱性と力学特性のバランスのとれたマトリックス樹脂は、比較的高粘度であり、かつ成形時の加圧も真空吸引による加圧のみであることから、この樹脂を使用すると、プリフォームの隅々までに樹脂を完全に含浸できないという問題があった。さらに、プリフォーム全体に含浸させるのに必要な樹脂量が多いことから、仮に低粘度樹脂を用いても樹脂の硬化途中でこの樹脂層が自己発熱により先に硬化が進行し、樹脂の未含浸部分が残り、結果としてFRPにボイドが発生しやすいという問題があった。また、低粘度樹脂を用いると、含浸はしやすくなるものの樹脂のフロー量が大きくなりFRPにおける樹脂量のコントロールが難しかった。
【0008】
一方、特許文献2には、前記問題を改善すべく強化繊維基材の片面に樹脂を部分的に含浸させたプリプレグの積層体からなるプリフォームを用いたFRPの製造方法が記載されている。この方法は、プリプレグの表面に全体重量の20〜50%の範囲の樹脂を部分含浸させているために前述したRFI成形法に比べ樹脂の含浸距離が小さいので高粘度樹脂を用いた場合においても樹脂含浸をさせやすい利点がある。
【0009】
しかしながら、部分的に含浸させようとすると、所望の含浸レベルにすることが困難なだけでなく、同一プリプレグ内でも含浸レベルが異なる箇所が発生してしまう問題があった。すなわち、強化繊維基材の場所によって樹脂を含浸させなければいけない基材の厚み方向の含浸距離が異なる場合、この問題が大きく顕在化する。例えば、強化繊維の形態が二方向織物である場合においては、たて糸とよこ糸の交錯により目空き部分が発生するが、部分含浸させる際にこの部分が先に樹脂含浸しやすいことから基材厚み方向への樹脂含浸長さが場所によって異なることになり、基材厚み方向への含浸距離が大きい部分と小さい部分が生じ、結果として含浸距離が小さい部分が先に樹脂含浸してしまうことから強化繊維基材内に樹脂が含浸されない部分が残り、ボイドが内在するFRPになってしまうのである。また、プリプレグに樹脂を部分含浸させるために加熱加圧状態で含浸させる必要があるが、特に繊維目付が大きくなるとそれにともない使用する樹脂量が多くなり、部分含浸させる際の加圧により樹脂フローにより樹脂量が変動することや、繊維の配向が乱れるなどの問題が生じていた。
【0010】
【特許文献1】
米国特許明細書4,622,091号(クレーム1、第1図)
【0011】
【特許文献2】
特開2001−511827号公報(請求項1、第2図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解消し、高目付の強化繊維基材や高粘度樹脂を用いた場合であっても、強化繊維基材への樹脂含浸が容易かつ安定であり、しかもボイドのない高品質のFRPを成形することができ、また、成形すべき成形体が大型のFRP構造体であっても、短時間に樹脂含浸ができるとともに、強化繊維の持つ高強度・高弾性率の特性を十分に発揮できるプリフォームならびにそのプリフォームを用いたFRP複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した問題点を解決するために鋭意検討を行い、以下のプリフォームならびに製造方法を用いることにより、高目付の強化繊維基材を用いた大型のFRP成形品であってもボイドの発生が極めて少なく、強化繊維の持つ高強度・高弾性率の特性を十分に発揮でき、また、作業性にも優れるFRP複合体が得られることを見い出すに至った。
【0014】
すなわち、本発明のプリフォームは、強化繊維基材の少なくとも片面にマトリックス樹脂シートが接着してなるプリプレグが複数層積層されたプリフォームであって、前記プリフォームを構成する複数の基材のすべての層間にマトリックス樹脂シートが介在し、かつ、このマトリックス樹脂シートの樹脂が、前記強化繊維基材に実質的に未含浸状態であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の繊維強化樹脂複合体の製造方法は、予め所定形状に賦形した強化繊維基材からなるプリフォームに合成樹脂を含浸させた後、加熱して繊維強化樹脂複合体を製造する方法において、
(A)前記プリフォームに請求項1〜5のいずれかに記載のプリフォームを用いるとともに、
(B)このプリフォームを成形型上に載置した後、全体をバッグ材で覆い、その内部を大気圧よりも低い状態になるように吸引しつつ前記バッグ材の外部から加熱することで前記基材内部にマトリックス樹脂を含浸させることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のプリフォームの望ましい実施の形態を図を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明のプリフォームの一実施例の縦断面図である。図に示すように、本発明のプリフォーム4は、強化繊維基材1とマトリックス樹脂シート2とで構成されるプリプレグ3が1セットとなり、このプリプレグ3が複数層積層されてなるものである。その結果、プリフオーム4の全体を断面方向に見ると、基材1とマトリックス樹脂シート2とが交互に配置され、所定枚数積層されている。ここで、プリプレグ3の強化繊維基材1とは、詳細は後述するが、織物やステッチ布帛などであり、また、マトリックス樹脂シート2とは、熱硬化性樹脂からなる未硬化状態の樹脂シートである。
【0018】
かかるプリフォーム4は、強化繊維基材1の少なくとも片面にマトリックス樹脂シート2が接着されているプリプレグ3を一単位として複数層積層されているので、すべての基材1間にマトリックス樹脂シート2が存在していることになる。なお、図1の態様のものは、積層体の両表面にもマトリックス樹脂シート2が存在している。この様に積層体の両表面にもマトリックス樹脂シートが存在していると、特にFRP表面にボイドや樹脂欠けのない表面品位に優れたFRPが得られるため、本発明の好ましい態様の一つということができる。
【0019】
ところで、本発明の特徴の一つは、マトリックス樹脂シート2の樹脂が強化繊維基材1に実質的に未含浸状態にあることが挙げられる。本発明は、シートの樹脂を基材に実質的に未含浸状態にすることにより、前述の本発明の課題を達成することを見出したものである。すなわち、前述したように樹脂を基材に部分的に含浸させると、基材厚み方向への樹脂含浸長さが場所によって異なる箇所が発生し、ボイドが形成されることを見出し、かかる問題を解決する手段として、樹脂を未含浸状態にすることを見出したものである。ここで、樹脂が「実質的に未含浸状態である」とは、強化繊維基材の内部にまで樹脂が含浸されていない状態を指し、例えば樹脂シート1を強化繊維基材1の片面ないし両面に剥がれない程度に貼り合わせた状態である。また、ミクロ的に強化繊維基材の表面における強化繊維の単糸数本レベルに樹脂が入り込んでいるものも本発明の未含浸状態に含まれる。具体的には、強化繊維基材における含浸厚みは、基材表面から基材全体厚みのそれぞれ1/10以下、より好ましくは1/20以下にある状態のことを指す。なお、通常、プリプレグとは基材に樹脂が含浸されたものを指すが、本発明では樹脂が未含浸状態にあるものであっても、プリプレグと称することにする。
【0020】
樹脂未含浸プリプレグ3における樹脂量としては、樹脂未含浸プリプレグの全体重量の30〜60%である。好ましくはFRPにした時に軽量でかつ優れた力学特性を発現できる35〜50%である。ここで30%未満であると、樹脂量が少ないことからFRPにした時にボイドが発生しやすい。また、60%を超えると樹脂量が多くなることから重いFRPになってしまう。このため、樹脂未含浸プリプレグにおける樹脂量は、樹脂未含浸プリプレグの全体重量の30〜60%の範囲が好ましい。
【0021】
シート2のマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、変性エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの熱可塑性樹脂である。なかでも、耐熱性、力学特性に優れたエポキシ樹脂が好ましい。
【0022】
強化繊維基材1を構成する強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、その形態は強化繊維が一方向ないし多方向に配列した一方向材ないし織物が好ましい。また、これら強化繊維糸を平行に配列したシートを0°(繊維基材の長さ方向)、90°(繊維基材の幅方向)や±45°(繊維基材の斜め方向)に積層され、これをガラス繊維、ポリエステル繊維やポリアミド繊維などのステッチ糸で縫合した多軸ステッチ布帛であってもよい。なかでも、強化繊維が炭素繊維であれば、ガラス繊維に比べ単糸径が小さいことから補強繊維ストランド間に構成される空隙部が小さく従来のオートクレーブ成形では樹脂含浸が困難であったが、本発明の製造方法を用いることによって樹脂含浸が可能となるとともに高強度、高弾性率のFRPを得ることができるので好ましい。
【0023】
また、本発明のプリフォーム4においては、強化繊維基材1における繊維の配向方向が二方向以上の場合に用いることが好ましい。すなわち、通常のプリプレグの作製段階においては、長尺の強化繊維シートに連続的に加熱加圧しながら強化繊維基材に樹脂を含浸させており、強化繊維が一方向に配向した強化繊維基材であればその方向に張力を付与しながら強化繊維に樹脂を含浸させつつ連続的に加工することで強化繊維の蛇行を防止することができるが、強化繊維基材における繊維の配向方向が二方向以上の場合においては、そのすべての方向に張力を付与することは困難であることから張力が作用していない方向の強化繊維の繊維蛇行が発生しやすくなる。本発明は、成形過程で強化繊維基材の厚み方向にのみ加圧することから強化繊維が二方向以上に配向している多軸繊維基材を用いても繊維蛇行が発生しにくくい。
【0024】
また、強化繊維基材の目付としては、200〜1,000g/mの範囲が好ましい。200g/m未満であれば、本発明の製造方法を用いなくとも、通常のホットメルト方式のプリプレグ加工で強化繊維基材への完全含浸が可能である。また、1,000g/mを越えると強化繊維基材の厚みが大きくなるので強化繊維基材への樹脂の含浸距離が大きくなりボイドが発生しやすくなる。このため、200〜1,000g/mの範囲が好ましい。さらに好ましくは、織物目付が400〜1,000g/mの高目付織物である。すなわち、高目付織物は通常のホットメルト方式のプリプレグ加工では、強化繊維基材への樹脂含浸が困難であり、ホットローラによる含浸圧を高めると強化繊維の蛇行が生じやすいことから本発明の効果がいかんなく発揮されることから織物目付は400〜1,000g/mの範囲がより好ましい。
【0025】
本発明のプリフォーム4は、強化繊維基材1同士の剥離強さが1N/m以上であるのが好ましい。より好ましくは3N/m以上、更に好ましくは5N/m以上である。1N/m以上の剥離強さを有していないと、取り扱い時に強化繊維基材1とマトリックス樹脂シート2とがバラバラに分解してしまってプリプレグ3としての体をなさなくなり、好ましい形状のプリフォームを成形できなくなるからである。。ここでいう剥離強さとは、JIS K6854−3(接着剤−剥離接着強さ試験方法−第3部:T形剥離)に準じて測定した値をいう。具体的には強化繊維の配向方向に250mm、その直角方向に150mmの長さになるように強化繊維基材を裁断したものを積層し、強化繊維の配列方向に長さ60mmの非接着部を設けてプリフォーム化したものを用いる。そして、非接着部の端部を把持し、引張試験機により試験速度10mm/分で剥離長さが150mmになるように剥離試験を行う。なお、試験結果は、150mmの剥離長さにおける最初と最後の25mmの長さを除いた100mmの剥離長さを剥離するの要した平均剥離荷重(N)を剥離長さ100mmで除した値を剥離強さ(N/m)とする。
【0026】
次に、図2を参照しながら、本発明のプリフォームを用いた繊維強化樹脂複合体の製造方法を説明する。図2は、本発明の製造方法の工程中、強化繊維基材への樹脂含浸工程を示した縦断面図で、図中、4が図1で説明した樹脂未含浸プリプレグ3の積層体からなる本発明のプリフォームである。
【0027】
本発明のプリフォームを用いたFRP複合体を製造するには、まず、金属製成形型5の表面に例えばフッ素系のフィルム等の離型フィルム6を配置した後、その上に上記プリフォーム4を配置する。そして、その周囲にプリフォーム4に内在するボイドをバッグ材の外に排除する際に通気路となるエッジ・ブリーザー7を配置する。ここで、エッジ・ブリーザー7の配置位置は、プリフォーム4の周囲に接して配置することもできるがそうするとプリフォーム中の樹脂がエッジ・ブリーザー7に流れてしまうことになるため10mm以上の距離をあけ接しないようにすることが好ましい。また、プリフォーム4とエッジ・ブリーザー7との間には、通気パスとなる撚り糸などの通気パス材8を適当な間隔をおいて配置すると良い。
【0028】
次に、プリプレグ積層体4の表面に離型フィルム9を配置するとともにバッグ材(例えばフィルム、ラバー等)10で全体を覆う。ここで、この離型フィルム9の上にはカウルプレートを配置しなくても構わないが、カウルプレートを配置すると加圧する圧力が強化繊維基材に均一に作用することから配置することが好ましい。なお、本実施態様例では離型フィルム6ないし9は、プリフォーム4が硬化後、成形型やカウルプレートなどと接着しないために配置したものであり、成形型やカウルプレート表面に離型剤を塗布する場合においては省略しても構わない。
【0029】
次に、バッグ材10の周縁と成形型5との間にシール材11を配置し、バッグ材の内の気密性が保たれるようにする。そして、エッジ・ブリーザー7上にバッグ材10の内部が真空吸引できるように真空吸引口12を取り付ける。このようにすることでプリフォーム内に残っている空気が通気パス材8、エッジ・ブリーザー7、真空吸引口12を順に通りバッグ材の外に排気される経路が形成される。
【0030】
ついで、図示しない真空ポンプで吸引口12から真空吸引しながら(換言するとバッグ材の内部を大気圧で加圧しながら)、プリプレグ積層体4をバッグ材の外部から熱風やヒータによる直接加熱等の適当な加熱手段により加熱する。これにより、プリプレグ3を構成する個々の強化繊維基材1には、従来のプリプレグとは異なり、マトリックス樹脂が全くないしは殆ど含浸されていないことから、各プリプレグ3の強化繊維基材1がブリーザーの如き役割を果たし、バッグ材内の空気が基材1およびエッジ・ブリーザー7を介して、バッグ材の外に排出されるとともに、その代わりに強化繊維基材1表面に配置されているマトリックス樹脂シート2のマトリックス樹脂が強化繊維基材1内に移動する。この場合、前述のように吸引口12から真空吸引しているので、基材内への樹脂含浸がより助長され、プリフォーム4の隅々にまで樹脂が行き渡ることになる。すなわち、強化繊維基材両表面に配置したマトリックス樹脂シートが加熱されることで粘度が低下するために、マトリックス樹脂が強化繊維基材の厚み方向に徐々に含浸し、未含浸部分にマトリックス樹脂が充填されることになる。この場合、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、加熱によりマトリックス樹脂はゲル化、次いで硬化する。
【0031】
ここで、加熱に加え、バッグ材の外部から大気圧を超える圧力で強制加圧すると、更に含浸時間を短くするだけでなく、ボイドの発生も抑制することができるため好ましい。かかる加圧方法としては、プレス、オートクレーブ等を用いることができ、中でも複雑な型にも追従しやすいオートクレーブが特に好ましい。
【0032】
ここで、マトリックス樹脂の含浸距離は、樹脂フィルムをプリフォーム4のすべての層間に配置していることから、強化繊維基材1厚みの半分の距離で済み、よって含浸が短時間に可能となる。また、強化繊維基材に部分含浸されていないので、その含浸距離はどの場所においてもほぼ一定であることから、従来法のように先に樹脂含浸し、強化繊維基材内の空気と樹脂が置換されずに空気が閉じこめられることもなく、したがってボイドレスのFRPを製造することができるのである。
【0033】
真空ポンプは少なくともマトリックス樹脂の硬化または固化が完了するまで運転し、バッグ材の中を真空状態に保つと、大気圧により加圧され続けるため樹脂含浸が促進され、好ましい。
【0034】
次に、樹脂の硬化後、バッグ材、エッジ・ブリーザーなどを除去し、成形型から脱型する。以上の工程によりボイドの発生がなく、機械的特性に優れた本発明のFRP複合体が得られる。
【0035】
以上が本発明の製造方法の概要であるが、個々の工程はさらに以下の態様とすることもできる。すなわち、本発明に用いる成形型5は、真空バッグ吸引による負荷やオートクレーブ成形時の加圧によりほとんど変形しないことが好ましく、金属ないしFRPなどの高剛性材料のものが好ましい。
【0036】
また、離型フィルム9は、成形型やカウルプレートとFRPの固着を防ぐ必要があり、素材としては、離型性および耐熱性に優れたFEP(Fluorinated Ethylene Propylene)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PVF(Polyvinyl Fluoride)、ECTFE(Polyethylene−Chlorotrifluoroethylene)などのフッ素系フィルムが好ましい。
【0037】
また、本発明に用いるエッジ・ブリーザー7は、空気および樹脂を通過させることができることが好ましく、例えばナイロン繊維織物、ポリエステル繊維織物、ガラス繊維織物やナイロン繊維、ポリエステル繊維からなる不織布を使用することができる。また、通気パス材8としては、適度な通気性を有するとともに低粘度になった樹脂が流れにくいことが要求されることから有機繊維や無機繊維からなる撚糸が好ましく。特に好ましくは耐熱性が優れ安価なガラス繊維が好ましい。また、バッグ材10は、気密性が保て耐熱性が良好であることが必要であり、例えばナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、PVC(塩化ビニル)フィルム、ポリプロピレンフィルムやポリイミドフィルムなどである。
【0038】
また、シール材11は、金属ないしFRPからなる成形型とバッグ材の双方に強固に接着しオートクレーブ成形中においてバッグ内の気密性を維持する必要があり、ブチルゴム系やシリコーンゴム系の材料である。カウルプレートは、成形型と同様に真空バッグ吸引による負荷やオートクレーブ成形時の加圧によりほとんど変形しないことが必要であり、金属ないしFRPなどの高剛性材料からなる。なお、カウルプレートはプレッシャープレートとも呼ばれることもある。
【0039】
また、上記においては本発明におけるプリフォーム4として樹脂未含浸プリプレグ3のみを用いてFRPを成形する製造方法について示したが、樹脂を完全含浸させたプリプレグを勿論併用することもできる。
【0040】
また、加熱工程においては、加熱過程が一定温度で一定時間2回以上保持するステップキュアであることが好ましい。すなわち、前記ステップキュアにすることにより1回目の保持温度において樹脂の硬化反応が進みにくい状態で樹脂の粘度が低下し、含浸時間がかせげるからである。ここでこの一定温度保持時間は、含浸のしやすさや樹脂の種類に応じて適宜選択すればよいが、通常は含浸しやすいように樹脂の最低粘度になる温度近辺であり、目安として70〜150℃の温度範囲で、0.5〜2時間程度である。そして、2回目の保持温度にてマトリックス樹脂が硬化しFRPとなる。また、1回目の保持温度におけるマトリックス樹脂の最低粘度が0.1〜2Pa・sであることが好ましい。すなわち樹脂の粘度が0.1Pa・s未満であれば樹脂の粘度が低すぎるために加熱かつ加圧により樹脂がフローしやすくFRPにした場合にVfの変化が生じるからである。また最低樹脂粘度が2Pa・sを越えると樹脂の粘度が高すぎるために強化繊維基材に含浸しにくくFRPにした時にボイドが発生しやすくなる。このため、1回目の保持温度におけるマトリックス樹脂の最低粘度が0.1〜2Pa・sであることが好ましい。
【0041】
成形工程において、オートクレーブを用いて加熱、加圧する場合、その加熱温度および加圧力は、使用する樹脂や強化繊維基材の種類によって選択されるものであり、一般産業用途などのあまり耐熱性が要求されないFRPにおいては硬化温度が130℃で圧力が0.3kPa程度、また、航空・宇宙用途などの耐熱性が要求されるFRPにおいては硬化温度が180℃で圧力が0.6kPa程度である。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例)
図1および図2において、強化繊維基材1としては、東レ(株)製炭素繊維T700S−24K−50Cを経糸および緯糸に用い、織物目付が400g/mの二方向織物を製織した。また、マトリックス樹脂シート2として、180℃硬化型エポキシ樹脂(室温から20℃/minの昇温速度で120℃における粘度0.3Pa・s、硬化前のガラス転移点−5℃、180℃×2時間の硬化後のガラス転移点195℃)を用い、樹脂目付が110g/mになるように樹脂フィルムを作製した後、炭素繊維織物の両面に貼り付け、樹脂が未含浸状態のプリプレグ3を作製した。
【0043】
この樹脂未含浸プリプレグ3を30×30cmのサイズにカットし、6枚重ね合わせて樹脂未含浸プリプレグ積層体からなるプリフォーム4を作製し、成形型5の上に離型フィルム6、プリフォーム4の順で配置した。ついで、このプリフォームの周囲に15mmの間隔をあけてエッジ・ブリーザー7を配置し、エッジ・ブリーザーとプリフォームの間に通気パスとなる通気パス材8(ガラス繊維の撚り糸ECG150 1/2を4本引き揃え)をそれぞれ10cm間隔をあけて配置した。
【0044】
さらに、プリフォーム4およびエッジ・ブリーザー7の表面を離型フィルム6で覆い、さらに離型フィルムの上にプリフォームの大きさと同じ30×30cmのサイズのカウルプレート(図示せず)を配置した後、全体をバッグ材10で覆い、エッジ・ブリーザー7に接して、真空吸引口12を取り付けシール材11にて成形型5とバック材10とを接着した後、バッグ材の内を真空吸引し、真空状態にした。そして、この真空吸引した状態で成形型をオートクレーブに入れ、真空吸引しながら常温から1.5℃/分の昇温速度で120℃まで昇温した後120℃で1時間でいったんホールドした後、さらに1.5℃/分の昇温速度で180℃まで昇温し180℃×2時間のキュア行い、2.0℃/分で常温まで降温した。この時の圧力は成形開始直後から0.04kPa/分の昇圧速度で0.6kPaまで昇圧するとともに樹脂が硬化するまで圧力を保持した。そしてFRP成形板Aを作製した。なお、樹脂の最低粘度は140℃で0.7Pa・sであった。
【0045】
ここで、得られた成形板は、プリプレグ加工時にホットローラなどにより加熱加圧していないことから強化繊維の蛇行は生じなかった。さらに、樹脂含浸状態を断面観察により調査したところ、ボイドもなく樹脂含浸が良好であった。また、得られた成形板の繊維体積割合(Vf)は、56%であった。
(比較例1)
比較例1として、実施例におけるプリプレグを作製する際に130℃に加熱したホットロールを通過させ、織物に樹脂を完全含浸させ、樹脂完全含浸プリプレグを作製したほかは実施例と同じようにしてプリフォームを作製した。
【0046】
ここで、プリフォームは樹脂完全含浸プリプレグから構成されるが、このプリプレグを加工する際に、織物の経糸方向に引き出しながら張力を付与しつつ連続的にホットロールを通過させたが、樹脂が含浸しにくいことから含浸圧力を高める必要が生じ、結果としてロールによる加圧の際に無張力の緯糸が大きく蛇行した。
【0047】
このプリフォームを用いて他は実施例と同じようにして、FRP成形板Bを作製した。得られた成形板の樹脂含浸状態を断面観察により調査したところ、ボイドもなく樹脂含浸が良好であった)。また、得られた成形板のVfは、55%であった。
(比較例2)
比較例2として、実施例で使用した織物と同じ強化繊維織物を6枚積層し、その強化繊維基材積層体の上面に樹脂目付が1320g/mの樹脂フィルムを貼りあわせて成形した他は実施例と同じようにして、FRP成形板Cを作製した。
【0048】
得られた成形板は積層した強化繊維基材の半分程度までしか樹脂は含浸しなかった。
(比較例3)
比較例3として、実施例におけるプリプレグを作製する際に100℃に加熱したホットロールを通過させ、織物に樹脂を部分含浸させ、部分含浸プリプレグを作製したほかは実施例と同じようにして、プリフォームを作製した。
【0049】
ここで、プリフォームは部分含浸プリプレグから構成されるが、このプリプレグにおいて、織物の経糸と緯糸の交錯によって生じる空隙部においては上下面の樹脂が織物中央部まで充填されているのに対し、経糸と緯糸の交錯部分では織物厚みの1/4程度までしか含浸していなかった。
【0050】
このプリフォームを用いた他は実施例と同じようにしてFRP成形板Dを作製した。得られた成形板Cの樹脂含浸状態を断面観察により調査したところ、織物の構成する炭素繊維ストランドの中央部にボイドが多数観察された。また、得られた成形板のVfは、55%であった。そして、これらのFRP成形板の力学特性を調査すべく、JIS K7076(炭素繊維強化プラスチックの面内圧縮試験方法)に準じて織物の緯糸方向の圧縮試験を行った。
【0051】
これら強化繊維基材への樹脂含浸状態などの成形性と圧縮試験結果を纏めたのが次の表1である。
【0052】
【表1】
Figure 2004276355
【0053】
表1に示すように、実施例のものはプリフォーム4を構成するプリプレグ3が加工時にホットローラなどを用いて加熱加圧含浸させていないことから、繊維蛇行が生じることがなかった。また、オートクレーブ成形の際においてもプリフォームを構成する強化繊維基材のすべての層間およびプリフォームの両表面に樹脂フィルムが存在していることから織物の厚み方向における樹脂の含浸距離が小さくてかつ一定であることから、成形後のFRPは、ボイドの発生もなく、強化繊維の持つ高強度特性を十分に発揮させることができるものであった。
【0054】
一方、比較例1においては、プリプレグ加工段階で樹脂を完全含浸させることができたものの緯糸が蛇行したことから、FRPの圧縮強度が621MPaと低く、強化繊維の持つ高強度、高弾性特性を有効に発揮することができなかった。
【0055】
また、比較例2においては、プリフォームにおける織物の厚み方向への樹脂の含浸距離が大きかったことから樹脂が未含浸であるFRPとなった。
【0056】
さらに、比較例3においては、織物の厚み方向への含浸距離が異なる部分含浸プリプレグからなるプリフォームを用い、織物の空隙部に樹脂が充填されているにも関わらず経糸と緯糸の交錯部分においては含浸厚みが小さかったことから織物内部に空気が閉じこめられ、この空気が成形時に除去できずボイドとなった。このため、FRPの圧縮強さは、525MPaと低く、強化繊維の持つ高強度、高弾性特性を有効に発揮することができなかった。
【0057】
【発明の効果】
本発明のプリフォームおよびそのプリフォームを用いたFRPの製造方法によれば、プリフォームが少なくとも片面にマトリックス樹脂シートが接着しているプリプレグの積層体であり、このプリフォームを構成する強化繊維基材のすべての層間にマトリックス樹脂シートが存在し、かつ、このマトリックス樹脂シートの樹脂が強化繊維基材に実質的に未含浸であることから、強化繊維基材の厚み方向への含浸距離が一定でかつ小さくなることにより、バッグ材の内部を真空吸引しつつバッグ材の外部から加熱することで強化繊維基材内へのマトリックス樹脂の含浸を促進させることができる。したがって、ボイドの発生もなく、強化繊維の持つ優れた力学特性を有効に発揮することができるFRPを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリフォームの一実施例を示す縦断面図である。
【図2】図1のプリフォームを用いた本発明の製造方法の一実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1:強化繊維基材
2:マトリックス樹脂シート(樹脂フィルム)
3:樹脂未含浸プリプレグ
4:プリフォーム
5:成形型
6:離型フィルム
7:エッジ・ブリーザー
8:通気パス材
9:離型フィルム
10:バッグ材
11:シール材
12:吸引口

Claims (10)

  1. 強化繊維基材の少なくとも片面にマトリックス樹脂シートが接着してなるプリプレグが複数層積層されたプリフォームであって、前記プリフォームを構成する複数の基材のすべての層間にマトリックス樹脂シートが介在し、かつ、このマトリックス樹脂シートの樹脂が、前記強化繊維基材に実質的に未含浸状態であることを特徴とするプリフォーム。
  2. 強化繊維基材を構成する強化繊維が炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載のプリフォーム。
  3. 強化繊維基材の目付が200〜1,000g/mであることを特徴とする請求項1または2に記載のプリフォーム。
  4. 強化繊維基材における強化繊維の配列方向が二方向以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリフォーム。
  5. プリフォームにおける強化繊維基材同士の剥離強さが1N/m以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプリフォーム。
  6. 予め所定形状に賦形した強化繊維基材からなるプリフォームに合成樹脂を含浸させた後、加熱して繊維強化樹脂複合体を製造する方法において、
    (A)前記プリフォームに請求項1〜5のいずれかに記載のプリフォームを用いるとともに、
    (B)このプリフォームを成形型上に載置した後、全体をバッグ材で覆い、その内部を大気圧よりも低い状態になるように吸引しつつ前記バッグ材の外部から加熱することで前記基材内部にマトリックス樹脂を含浸させることを特徴とする繊維強化樹脂複合体の製造方法。
  7. さらに、大気圧を超える圧力で、バッグ材の外部から加圧することを特徴とする請求項6に記載の繊維強化樹脂複合体の製造方法。
  8. バッグ材の内部に配置したカウルプレートを介してプリフォームを構成する樹脂未含浸プリプレグを加圧することで、基材内部に樹脂を含浸させることを特徴とする請求項6または7に記載の繊維強化樹脂複合体の製造方法。
  9. 加熱工程が、70〜150℃の温度範囲で、かつ0.5〜2時間の範囲内において、2回以上保持するステップキュアであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の繊維強化樹脂複合体の製造方法。
  10. 1回目の保持温度におけるマトリックス樹脂の最低粘度が0.1〜2Pa・sの範囲であることを特徴とする請求項9記載の繊維強化樹脂複合体の製造方法。
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