JP2004277496A - ふっ素系エラストマー成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】充填材を配合しなくとも高い強度を発現し、耐圧縮永久歪特性が良好で、かつ耐プラズマ性に優れた、特に半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器用、食品貯蔵器用、医療部品等のクリーン環境に好適なふっ素系エラストマー成形体、並びにこれらの用途用のゴム材料を提供する。
【解決手段】テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなるふっ素系エラストマー成形体、並びに前記ふっ素系エラストマー成形体からなる半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器または医療部品用の各シール材。
【選択図】 なし
【解決手段】テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなるふっ素系エラストマー成形体、並びに前記ふっ素系エラストマー成形体からなる半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器または医療部品用の各シール材。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器あるいは医療部品等のクリーン環境用に好適なふっ素系エラストマー成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
クリーン環境で使用される、ゴムOリング等のゴム製のシール材料には、外部を汚染しないための低放出ガス、低溶出金属等の特性が求められる。ここでいうクリーン環境とは、半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器用、医療部品等である。特に、半導体製造装置用ゴム材料には、クリーン性の他に、耐薬品性、耐熱性、耐プラズマ性、耐オゾン性が求められており、ふっ素系のゴムが多く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来のふっ素系ゴムからなる半導体装置用ゴム材料は機械的強度が十分とはいえず、特に稼動部に使用した場合、捩れや切れといった問題を生じるおそれがある。その点を改善すべく、カーボンブラック等の充填材を配合することも行われているが、ゴム材周辺のクリーン環境を汚染する恐れが生じる。
【特許文献1】
特開2000−119468号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決し、充填材を配合しなくとも高い強度を発現し、耐圧縮永久歪特性が良好で、かつ耐プラズマ性に優れた、特に半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器用、食品貯蔵器用、医療部品等のクリーン環境に好適なふっ素系エラストマー成形体、並びにこれらの用途用のゴム材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとを所定割合にて混合し、過酸化物等で共架橋することで、外部の汚染も無く、十分な耐圧縮永久歪み特性を有し、充填材を配合しなくとも機械的強度、特に引張強さが著しく改良されたふっ素系エラストマー成形体が得られることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなることを特徴とするふっ素系エラストマー成形体、並びにテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物を過酸化物架橋してなることを特徴とするふっ素系エラストマー成形体である。
【0007】
本発明はまた、前記ふっ素系エラストマー成形体からなる半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器または医療部品用の各ゴム材料である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0009】
本発明のふっ素系エラストマー成形体は、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなる。また、該組成物を過酸化物等で共架橋することで、カーボンブラック等の充填材を含まないにも関わらず、耐圧縮永久歪特性を損なうことなく、機械的強度、特に引張強さが著しく改良される。
【0010】
本発明においてテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とは、テトラフロロエチレンとプロピレンとを主成分とする共重合体である。例として、旭硝子(株)製のアフラス#100H、#150CS等が挙げられるが、これらに限定されない。また、テトラフロロエチレンとプロピレンの他、ふっ化ビニリデン、ヘキサフロロプロピレン、エチレン、パーフロロアルキルビニルエーテル等の第三成分を共重合したポリマー、あるいはヨウ素、臭素等の過酸化物架橋サイトを有するポリマーでも良い。この場合、テトラフロロエチレン及びプロピレンの含有量は、合計で全モノマーの60%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上である。また、何れの場合も、テトラフロロエチレンとプロピレンとのモル比は、40:60〜65:35が好ましく、50:50〜60:40がより好ましい。
【0011】
また、金属元素は成形体としたときに汚染源となり得ることから、テトラフルオロエチレン−ピロピレン系共重合体は金属成分を極力含まないことが好ましく、特に金属成分含有量が金属元素に基づく量で5000ppm以下であることが好ましい。テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体ラテックスから得られるが、製造に際して種々の金属元素を含有する。そこで、低金属化のために、例えば以下の処理を行うことが好ましい。
【0012】
即ち、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体ラテックスを、先ず、無機非金属塩類、酸や有機物から選択される凝固剤と接触させて凝固させる。無機非金属塩類としては、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウムまたは硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸または硝酸等が挙げられる。有機物としては、カルボン酸等の有機酸、プロパノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、ジクロロメタン、テトラクロロメタン等の塩素化炭化水素、カチオン系変性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの凝固剤で凝固させることにより、不純物、特に金属成分を殆ど含有しないテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体が得られる。尚、凝固剤の使用量は、ラテックスから共重合体を凝固分離できる必要最小量で十分であるが、ラテックスの濃度、凝固剤の種類等に応じて適宜変更可能である。また、凝固剤はアルコール、水−エタノール混合溶媒、水−アセトン混合溶媒等との溶液であってもよい。
【0013】
凝固分離した固形分は、その後水洗を行う。そして、充分洗浄した固形分を100〜150℃にて乾燥処理することにより、低不純物のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体が得られる。こうして得られるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、金属成分の残存量が5000ppm以下となる。
【0014】
一方、ふっ素系熱可塑性エラストマーは、少なくとも1種のエラストマー性ポリマー鎖セグメント、及び少なくとも1種の非エラストマー性ポリマー鎖セグメントを含有し、これらの内少なくとも一方は含ふっ素ポリマー鎖セグメントである。エラストマー性ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性ポリマー鎖セグメントとの比率は、重量比で40〜95:60〜5であることが望ましい。このふっ素系熱可塑性エラストマーの具体的構造は、エラストマー性ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性ポリマー鎖セグメントからなる連鎖と、この連鎖の一端に存在するヨウ素原子と、該連鎖の他端に存在するアイオダイト化合物から少なくとも1個のヨウ素原子を除いた残基とからなるのが好ましい。エラストマー性ポリマー鎖セグメントは、例えば、(1)ふっ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン−テトラフロロエチレン(モル比40〜90:5〜50:0〜35)共重合体、あるいは、(2)パーフロロアルキルビニルエーテル−テトラフロロエチレン−ふっ化ビニリデン(モル比15〜75:0〜85:0:85)共重合体であって、分子量は30,000〜1,200,000である。また、非エラストマー性ポリマー鎖セグメントは、例えば、(3)ふっ化ビニリデン−テトラフロロエチレン(モル比0〜100:0〜100)共重合体、(4)テトラフロロエチレン−エチレン共重合体、(5)ポリふっ化ビニリデン、あるいは(6)エチレン−テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン、3,3,3−トリフロロプロピレン−1,2−トリフロロメチル−3,3,3−トリフロロプロピレン−1またはパーフロロアルキルビニルエーテル(モル比40〜60:60〜40:0〜30)共重合体であって、分子量は3,000〜400,000である。このふっ素系熱可塑性エラストマーとしては、例えばダイキン工業製「ダイエルサーモプラスチックT−530(ソフトセグメント;上記(1)、ハードセグメント;上記(4))」や、同「T−630(ソフトセグメント;上記(1)、ハードセグメント;上記(5))」等が挙げられる。
【0015】
本発明のふっ素系エラストマー成形体を得るには、先ず、上記したテトラフロロエチレン−プロピレン共重合体のラテックスから得られた析出物と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとをドライブレンドさせる。テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとの混合比は、好ましくは95:5〜60:40、より好ましくは90:10〜70:30である。ふっ素系熱可塑性エラストマーの配合比をこれ以上少なくすると、適度な機械的強度が得られない。また、ふっ素系熱可塑性エラストマーの配合比をこれ以上多くすると、ロール加工性が悪化し実用的でない。
【0016】
尚、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとの混合は、ふっ素系熱可塑性エラストマーの溶融温度付近で混合することが望ましい。好ましくは200〜250℃、より好ましくは210〜230℃である。混合温度が低すぎると、分散不良となり物性低下を引き起こす。また、混合温度が高すぎると共重合体の劣化、それに伴う物性低下を引き起こすことがある。
【0017】
本発明において架橋成形方法は任意である。例えば、化学架橋剤による化学架橋成形、または成形後電離放射線により架橋を行うことができる。また、過酸化物架橋等の化学架橋と電離放射線とを併用しても良い。但し、過酸化物架橋は電離性放射線架橋のような予備成形が不必要で成形性が良好であり、また成形体の機械的強度も良好であることから、本発明においては過酸化物架橋が好ましい。特に、上記条件で熱処理を施したテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマとの混合物は、過酸化物架橋が容易であり、その架橋物は高強度等の優れた物性を示す。
【0018】
過酸化物架橋剤としては、例えば、ジt−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
また、架橋助剤等を併用しても良い。架橋助剤としては、例えば、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ラウリルメタアクリルレート、エチレングリコールアクリルレート、トリエチレングリコールジメタアクリルレート、テトラエチレングリコールジメタクリルレート、ポリエチレングリコールジメタクリルレート、トリメチロールプロパントリメタアクリルレート、メチルメタアクリルレート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、N,N’−m−フェニレンヒスマレイミド、無水マレイン酸、イタコン酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルニン、1,2−ポリブタジエン等が挙げられ、特にトリアリルイソシアヌレートが望ましい。これらをテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとの混合物100重量部に対して0.1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部配合することにより、高い強度のふっ素系エラストマー成形体が得られる。
【0020】
本発明の出発原料であるテトラフロロエチレン−プロピレン共重合体、及びふっ素系熱可塑性エラストマーがふっ化ビニリデン単位を有する場合には、ポリアミン架橋剤、ポリオール架橋剤を用いることができる。また、これらの化学架橋剤を併用することもできる。ポリアミン架橋剤としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミンカルバメート、N,N’−ジシナミリデン−1,6−ヘキサジアミンを挙げることができるが、これらに限定されない。ポリオール架橋剤としては、例えば、ビスフェノールAF、ビスフェノールA、p,p’−ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ヒドロキノンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】
尚、ポリオールやポリアミンによる架橋では、慣用法に従い、受酸剤として、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物または金属水酸化物または金属塩を使用するのが望ましい。特に、ポリオール架橋においては、トリフェニル・ベンジルホスホニウム・クロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロミド、ジアザビシクロウンデセン等の架橋促進剤を併用するが好ましい。
【0022】
本発明のふっ素系エラストマー成形体には、カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、ベンガラ、粘士鉱物(例えばウォラストナイト)、雲母等の無機充填材を配合することが出来る。ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の有機充墳材、あるいは綿、レーヨン、ナイロン、ポリエステル等の補強用繊維を配合しても良い。複数の充填材を併用することも可能である。本発明のふっ素系エラストマー成形体はこれらの充填材を含まなくても高強度を発現するが、これら充填材を含有させることにより、本発明のふっ素系エラストマー成形体の強度、硬度を更に高めることが出来る。
【0023】
ふっ素系エラストマーの架橋では一般に、プレス成形等による一次架橋の他に、オーブン等による二次架橋を行う。二次架橋は通常、温度150〜280℃の温度で、1〜50時間程度行われる。本発明においても十分に二次架橋を行うことにより、過酸化物の残渣が放出ガスとなることが抑えられ、好ましい。
【0024】
また、電離放射線による架橋は、架橋剤や受酸剤を必要としないことから、得られる架橋成形体は架橋剤や受酸剤由来の金属塩や金属酸化物等汚染源を含有せず、耐薬品性も良好となり、更には架橋に際して着色することもないため、特に高い清浄性が要求される場合には採用することができる。電離放射線の種類としては、直接または間接に空気を電離する能力を持つ電磁波または粒子線であれば適用可能であり、例えばα線、β線、γ線、重陽子線、陽子線、中性子線、X線、電子線が挙げられるが、これらに限定されない。これら放射線を組み合わせて使用しても良い。本発明においては、特にγ線が好適に使用される。γ線は、透過力が高いため、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物が均一に架橋される。また、γ線を照射する場合は、真空または不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。酸素雰囲気中では、ポリマーが分解する場合があり、好ましくない。
【0025】
但し、電離放射線を照射した場合、ポリマーの架橋と分解とが同時に起こる。また、照射量が多すぎる場合はポリマーの分解のため物性が低下し、照射量が少なすぎる場合はポリマーの架橋不足のため耐熱性が低下する。よって、本発明においては、電離放肘線の照射量はある適当な範囲であることが好ましい。電離放射線の照射総量は、好ましくは10〜500kGy、より好ましくは30〜350kGy、さらに好ましくは60〜300kGyである。電離放射線の線量を上記範囲とすることで、物性の良好なふっ素系エラストマー成形体が得られる。これらγ線照射を、過酸化物架橋したふっ素系エラストマー成形体に対して行うことで架橋密度を更に高めることもできる。
【0026】
本発明のふっ素系エラストマー成形体は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性の他、耐プラズマ性にも優れる。特に引張特性に優れ、高伸度の上、カーボンブラック等の充填材を配合せずとも高強度を発現する。また、プラズマ性も良好である。そのため、半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移迭器、食品貯蔵器、医療部品等、クリーン環境用に好適である。例えば半導体製造分野では、ウェット洗浄装置、プラズマエッチング装置、プラズマアッシング装置、プラズマCVD装置、イオン注入装置、スパッタリング装置等の半導体製造装置、及びこれら装置の付属機器であるウェハ搬送機器等に使用できる。医療分野ではチューブやゴム栓、食品分野では熱交換器用ガスケット等に使用できる。本発明はまた、上記ふっ素系エラストマー成形体からなる半導体製造装置または半導体搬送装置用ゴム材料;食品製造装置、食品移送器または食品貯蔵用ゴム材料;医療部品用ゴム材料をも包含する。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体「旭硝子製;アフラス#100H」80重量部と、ふっ素系熱可塑性エラストマー「ダイキン工業製;ダイエルサーモプラスチックT−530」20重量部とを混合温度200℃下で、加圧式ニーダーにて練り込んだ。こうして得た混合物は分散状態が良好であった。そして、この混合物100重量部、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン(パーブチルP)2重合部、トリアリルイソシヌレート(TAIC)6重量部を二軸ロールによって練り込んだ。これを150℃の熱プレスで150mm×150mm×2mmのシート状に成形した(一次架橋)。このシートをさらに、ギアオーブンに入れ、200℃、4時間二次架橋した。こうして得られたサンプルについて、含有不純物の分析及び以下の評価を行った。尚、含有不純物の分析は、シートから厚さ1.4mmで直径30mmのサンプルを切り出し、蛍光X線分析法(XPS)で測定した。結果を表1に示す。
【0028】
▲1▼硬さ:JIS K6253に準拠した。
▲2▼引張強さ、破断時伸び、100%伸び時の引張応力:JIS K6251に準拠した。ダンベルは3号とした。
▲3▼圧縮永久歪み:JIS K6262に準拠した。
▲4▼耐プラズマ性:32mm×10mm×2mmに切り取った試験体に、プラズマ照射実験を行った。尚、試験体はエタノール超音波洗浄を5分行い、その後オーブンにて100℃、10分乾燥した。試験体の照射前の重量をW1、照射直後の重量をW2、照射後エタノール超音波洗浄、乾燥後の重量をW3とすると、重量減少量を(W1−W3)とし、パーティクル量を(W2−W3)とした。また、照射条件は以下の通りである。
・プラズマガス種:4ふっ化炭素と酸素との混合ガス
・ガス流量:20SCCM
・高周波周波数:13.56MHz
・高周波出力:150W
・照射時間:2時間
【0029】
(比較例1)
ふっ素系熱可塑性エラストマーを配合せず、テトラフロロエチレン−プロピレン共重合体「旭硝子製;アフラス#100H」のみを用いて実施例1と同様の操作を行い、サンプルを作製した。そして、同様の分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
(比較例2)
ふっ素系熱可塑性エラストマー「ダイキン工業製;ダイエルサーモプラスチックT−530」を100重量部、日本油脂(株)製ジクミルペルオキシド(パークミルD)を2重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)6重量部を二軸ロールによって練り込んだ。これを150℃の熱プレスで150mm×150mm×2mmのシート状に成形した(一次架橋)。このシートをさらに、ギアオーブンに入れ、200℃、4時間二次架橋した。こうして得られたサンプルについて、同様の分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
(比較例3)
ふっ素ゴムラテックス「アウジモント社製テクノフロンTNラテックス(テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン−ふっ化ビニリデン共重合体ラテックス、ポリマー濃度70%、ポリマー比重1.86)」と、ふっ素樹脂ラテックス「住友スリーエム製THV340C(テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン−ふっ化ビニリデン共重合体、ポリマー濃度50%)」とを、固形分重量比でふっ素ゴムラテックス:ふっ素樹脂ラテックス=80:20で混合したものを300g、1LのPP製容器に投入し、プロペラミキサーを用いて300rpmで30秒間攪拌してブレンドラテックスを得た。次いで、ブレンドラテックス200gを、80℃の10%硫酸500gの中に投入して共凝固させた。凝固したポリマーを水洗い洗浄後、乾燥して原料ブレンドポリマーを得た。そして、原料ブレンドポリマーを比較例1と同様の条件で架橋してサンプルを作製し、同様の分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から、本発明に従いテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなる実施例1のサンプルは機械的強度、特に引張り強さに優れ、更に耐プラズマ性にも優れることがわかる。これに対し比較例1のサンプルは、実施例1のサンプルに比べて引張強さが大きく劣り、耐プラズマ性にも劣っている。また、比較例2のサンプルは、実施例1のサンプルに比べて引張強さに劣り、耐プラズマ性にも劣っている。また、比較例3のサンプルは、実施例1のサンプルに比べて引張強さに劣り、圧縮永久歪みも大きい。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、充填材を配合しなくとも高い強度を発現し、耐圧縮永久歪特性が良好で、かつ耐プラズマ性に優れた、特に半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器用、食品貯蔵器用、医療部品等のクリーン環境に好適なふっ素系エラストマー成形体が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器あるいは医療部品等のクリーン環境用に好適なふっ素系エラストマー成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
クリーン環境で使用される、ゴムOリング等のゴム製のシール材料には、外部を汚染しないための低放出ガス、低溶出金属等の特性が求められる。ここでいうクリーン環境とは、半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器用、医療部品等である。特に、半導体製造装置用ゴム材料には、クリーン性の他に、耐薬品性、耐熱性、耐プラズマ性、耐オゾン性が求められており、ふっ素系のゴムが多く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来のふっ素系ゴムからなる半導体装置用ゴム材料は機械的強度が十分とはいえず、特に稼動部に使用した場合、捩れや切れといった問題を生じるおそれがある。その点を改善すべく、カーボンブラック等の充填材を配合することも行われているが、ゴム材周辺のクリーン環境を汚染する恐れが生じる。
【特許文献1】
特開2000−119468号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決し、充填材を配合しなくとも高い強度を発現し、耐圧縮永久歪特性が良好で、かつ耐プラズマ性に優れた、特に半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器用、食品貯蔵器用、医療部品等のクリーン環境に好適なふっ素系エラストマー成形体、並びにこれらの用途用のゴム材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとを所定割合にて混合し、過酸化物等で共架橋することで、外部の汚染も無く、十分な耐圧縮永久歪み特性を有し、充填材を配合しなくとも機械的強度、特に引張強さが著しく改良されたふっ素系エラストマー成形体が得られることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなることを特徴とするふっ素系エラストマー成形体、並びにテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物を過酸化物架橋してなることを特徴とするふっ素系エラストマー成形体である。
【0007】
本発明はまた、前記ふっ素系エラストマー成形体からなる半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器、食品貯蔵器または医療部品用の各ゴム材料である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0009】
本発明のふっ素系エラストマー成形体は、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなる。また、該組成物を過酸化物等で共架橋することで、カーボンブラック等の充填材を含まないにも関わらず、耐圧縮永久歪特性を損なうことなく、機械的強度、特に引張強さが著しく改良される。
【0010】
本発明においてテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とは、テトラフロロエチレンとプロピレンとを主成分とする共重合体である。例として、旭硝子(株)製のアフラス#100H、#150CS等が挙げられるが、これらに限定されない。また、テトラフロロエチレンとプロピレンの他、ふっ化ビニリデン、ヘキサフロロプロピレン、エチレン、パーフロロアルキルビニルエーテル等の第三成分を共重合したポリマー、あるいはヨウ素、臭素等の過酸化物架橋サイトを有するポリマーでも良い。この場合、テトラフロロエチレン及びプロピレンの含有量は、合計で全モノマーの60%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上である。また、何れの場合も、テトラフロロエチレンとプロピレンとのモル比は、40:60〜65:35が好ましく、50:50〜60:40がより好ましい。
【0011】
また、金属元素は成形体としたときに汚染源となり得ることから、テトラフルオロエチレン−ピロピレン系共重合体は金属成分を極力含まないことが好ましく、特に金属成分含有量が金属元素に基づく量で5000ppm以下であることが好ましい。テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体ラテックスから得られるが、製造に際して種々の金属元素を含有する。そこで、低金属化のために、例えば以下の処理を行うことが好ましい。
【0012】
即ち、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体ラテックスを、先ず、無機非金属塩類、酸や有機物から選択される凝固剤と接触させて凝固させる。無機非金属塩類としては、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウムまたは硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸または硝酸等が挙げられる。有機物としては、カルボン酸等の有機酸、プロパノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、ジクロロメタン、テトラクロロメタン等の塩素化炭化水素、カチオン系変性ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの凝固剤で凝固させることにより、不純物、特に金属成分を殆ど含有しないテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体が得られる。尚、凝固剤の使用量は、ラテックスから共重合体を凝固分離できる必要最小量で十分であるが、ラテックスの濃度、凝固剤の種類等に応じて適宜変更可能である。また、凝固剤はアルコール、水−エタノール混合溶媒、水−アセトン混合溶媒等との溶液であってもよい。
【0013】
凝固分離した固形分は、その後水洗を行う。そして、充分洗浄した固形分を100〜150℃にて乾燥処理することにより、低不純物のテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体が得られる。こうして得られるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、金属成分の残存量が5000ppm以下となる。
【0014】
一方、ふっ素系熱可塑性エラストマーは、少なくとも1種のエラストマー性ポリマー鎖セグメント、及び少なくとも1種の非エラストマー性ポリマー鎖セグメントを含有し、これらの内少なくとも一方は含ふっ素ポリマー鎖セグメントである。エラストマー性ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性ポリマー鎖セグメントとの比率は、重量比で40〜95:60〜5であることが望ましい。このふっ素系熱可塑性エラストマーの具体的構造は、エラストマー性ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性ポリマー鎖セグメントからなる連鎖と、この連鎖の一端に存在するヨウ素原子と、該連鎖の他端に存在するアイオダイト化合物から少なくとも1個のヨウ素原子を除いた残基とからなるのが好ましい。エラストマー性ポリマー鎖セグメントは、例えば、(1)ふっ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレン−テトラフロロエチレン(モル比40〜90:5〜50:0〜35)共重合体、あるいは、(2)パーフロロアルキルビニルエーテル−テトラフロロエチレン−ふっ化ビニリデン(モル比15〜75:0〜85:0:85)共重合体であって、分子量は30,000〜1,200,000である。また、非エラストマー性ポリマー鎖セグメントは、例えば、(3)ふっ化ビニリデン−テトラフロロエチレン(モル比0〜100:0〜100)共重合体、(4)テトラフロロエチレン−エチレン共重合体、(5)ポリふっ化ビニリデン、あるいは(6)エチレン−テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン、3,3,3−トリフロロプロピレン−1,2−トリフロロメチル−3,3,3−トリフロロプロピレン−1またはパーフロロアルキルビニルエーテル(モル比40〜60:60〜40:0〜30)共重合体であって、分子量は3,000〜400,000である。このふっ素系熱可塑性エラストマーとしては、例えばダイキン工業製「ダイエルサーモプラスチックT−530(ソフトセグメント;上記(1)、ハードセグメント;上記(4))」や、同「T−630(ソフトセグメント;上記(1)、ハードセグメント;上記(5))」等が挙げられる。
【0015】
本発明のふっ素系エラストマー成形体を得るには、先ず、上記したテトラフロロエチレン−プロピレン共重合体のラテックスから得られた析出物と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとをドライブレンドさせる。テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとの混合比は、好ましくは95:5〜60:40、より好ましくは90:10〜70:30である。ふっ素系熱可塑性エラストマーの配合比をこれ以上少なくすると、適度な機械的強度が得られない。また、ふっ素系熱可塑性エラストマーの配合比をこれ以上多くすると、ロール加工性が悪化し実用的でない。
【0016】
尚、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとの混合は、ふっ素系熱可塑性エラストマーの溶融温度付近で混合することが望ましい。好ましくは200〜250℃、より好ましくは210〜230℃である。混合温度が低すぎると、分散不良となり物性低下を引き起こす。また、混合温度が高すぎると共重合体の劣化、それに伴う物性低下を引き起こすことがある。
【0017】
本発明において架橋成形方法は任意である。例えば、化学架橋剤による化学架橋成形、または成形後電離放射線により架橋を行うことができる。また、過酸化物架橋等の化学架橋と電離放射線とを併用しても良い。但し、過酸化物架橋は電離性放射線架橋のような予備成形が不必要で成形性が良好であり、また成形体の機械的強度も良好であることから、本発明においては過酸化物架橋が好ましい。特に、上記条件で熱処理を施したテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマとの混合物は、過酸化物架橋が容易であり、その架橋物は高強度等の優れた物性を示す。
【0018】
過酸化物架橋剤としては、例えば、ジt−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
また、架橋助剤等を併用しても良い。架橋助剤としては、例えば、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ラウリルメタアクリルレート、エチレングリコールアクリルレート、トリエチレングリコールジメタアクリルレート、テトラエチレングリコールジメタクリルレート、ポリエチレングリコールジメタクリルレート、トリメチロールプロパントリメタアクリルレート、メチルメタアクリルレート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、N,N’−m−フェニレンヒスマレイミド、無水マレイン酸、イタコン酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルニン、1,2−ポリブタジエン等が挙げられ、特にトリアリルイソシアヌレートが望ましい。これらをテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとの混合物100重量部に対して0.1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部配合することにより、高い強度のふっ素系エラストマー成形体が得られる。
【0020】
本発明の出発原料であるテトラフロロエチレン−プロピレン共重合体、及びふっ素系熱可塑性エラストマーがふっ化ビニリデン単位を有する場合には、ポリアミン架橋剤、ポリオール架橋剤を用いることができる。また、これらの化学架橋剤を併用することもできる。ポリアミン架橋剤としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミンカルバメート、N,N’−ジシナミリデン−1,6−ヘキサジアミンを挙げることができるが、これらに限定されない。ポリオール架橋剤としては、例えば、ビスフェノールAF、ビスフェノールA、p,p’−ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ヒドロキノンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】
尚、ポリオールやポリアミンによる架橋では、慣用法に従い、受酸剤として、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物または金属水酸化物または金属塩を使用するのが望ましい。特に、ポリオール架橋においては、トリフェニル・ベンジルホスホニウム・クロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロミド、ジアザビシクロウンデセン等の架橋促進剤を併用するが好ましい。
【0022】
本発明のふっ素系エラストマー成形体には、カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、ベンガラ、粘士鉱物(例えばウォラストナイト)、雲母等の無機充填材を配合することが出来る。ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の有機充墳材、あるいは綿、レーヨン、ナイロン、ポリエステル等の補強用繊維を配合しても良い。複数の充填材を併用することも可能である。本発明のふっ素系エラストマー成形体はこれらの充填材を含まなくても高強度を発現するが、これら充填材を含有させることにより、本発明のふっ素系エラストマー成形体の強度、硬度を更に高めることが出来る。
【0023】
ふっ素系エラストマーの架橋では一般に、プレス成形等による一次架橋の他に、オーブン等による二次架橋を行う。二次架橋は通常、温度150〜280℃の温度で、1〜50時間程度行われる。本発明においても十分に二次架橋を行うことにより、過酸化物の残渣が放出ガスとなることが抑えられ、好ましい。
【0024】
また、電離放射線による架橋は、架橋剤や受酸剤を必要としないことから、得られる架橋成形体は架橋剤や受酸剤由来の金属塩や金属酸化物等汚染源を含有せず、耐薬品性も良好となり、更には架橋に際して着色することもないため、特に高い清浄性が要求される場合には採用することができる。電離放射線の種類としては、直接または間接に空気を電離する能力を持つ電磁波または粒子線であれば適用可能であり、例えばα線、β線、γ線、重陽子線、陽子線、中性子線、X線、電子線が挙げられるが、これらに限定されない。これら放射線を組み合わせて使用しても良い。本発明においては、特にγ線が好適に使用される。γ線は、透過力が高いため、テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物が均一に架橋される。また、γ線を照射する場合は、真空または不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。酸素雰囲気中では、ポリマーが分解する場合があり、好ましくない。
【0025】
但し、電離放射線を照射した場合、ポリマーの架橋と分解とが同時に起こる。また、照射量が多すぎる場合はポリマーの分解のため物性が低下し、照射量が少なすぎる場合はポリマーの架橋不足のため耐熱性が低下する。よって、本発明においては、電離放肘線の照射量はある適当な範囲であることが好ましい。電離放射線の照射総量は、好ましくは10〜500kGy、より好ましくは30〜350kGy、さらに好ましくは60〜300kGyである。電離放射線の線量を上記範囲とすることで、物性の良好なふっ素系エラストマー成形体が得られる。これらγ線照射を、過酸化物架橋したふっ素系エラストマー成形体に対して行うことで架橋密度を更に高めることもできる。
【0026】
本発明のふっ素系エラストマー成形体は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性の他、耐プラズマ性にも優れる。特に引張特性に優れ、高伸度の上、カーボンブラック等の充填材を配合せずとも高強度を発現する。また、プラズマ性も良好である。そのため、半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移迭器、食品貯蔵器、医療部品等、クリーン環境用に好適である。例えば半導体製造分野では、ウェット洗浄装置、プラズマエッチング装置、プラズマアッシング装置、プラズマCVD装置、イオン注入装置、スパッタリング装置等の半導体製造装置、及びこれら装置の付属機器であるウェハ搬送機器等に使用できる。医療分野ではチューブやゴム栓、食品分野では熱交換器用ガスケット等に使用できる。本発明はまた、上記ふっ素系エラストマー成形体からなる半導体製造装置または半導体搬送装置用ゴム材料;食品製造装置、食品移送器または食品貯蔵用ゴム材料;医療部品用ゴム材料をも包含する。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体「旭硝子製;アフラス#100H」80重量部と、ふっ素系熱可塑性エラストマー「ダイキン工業製;ダイエルサーモプラスチックT−530」20重量部とを混合温度200℃下で、加圧式ニーダーにて練り込んだ。こうして得た混合物は分散状態が良好であった。そして、この混合物100重量部、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン(パーブチルP)2重合部、トリアリルイソシヌレート(TAIC)6重量部を二軸ロールによって練り込んだ。これを150℃の熱プレスで150mm×150mm×2mmのシート状に成形した(一次架橋)。このシートをさらに、ギアオーブンに入れ、200℃、4時間二次架橋した。こうして得られたサンプルについて、含有不純物の分析及び以下の評価を行った。尚、含有不純物の分析は、シートから厚さ1.4mmで直径30mmのサンプルを切り出し、蛍光X線分析法(XPS)で測定した。結果を表1に示す。
【0028】
▲1▼硬さ:JIS K6253に準拠した。
▲2▼引張強さ、破断時伸び、100%伸び時の引張応力:JIS K6251に準拠した。ダンベルは3号とした。
▲3▼圧縮永久歪み:JIS K6262に準拠した。
▲4▼耐プラズマ性:32mm×10mm×2mmに切り取った試験体に、プラズマ照射実験を行った。尚、試験体はエタノール超音波洗浄を5分行い、その後オーブンにて100℃、10分乾燥した。試験体の照射前の重量をW1、照射直後の重量をW2、照射後エタノール超音波洗浄、乾燥後の重量をW3とすると、重量減少量を(W1−W3)とし、パーティクル量を(W2−W3)とした。また、照射条件は以下の通りである。
・プラズマガス種:4ふっ化炭素と酸素との混合ガス
・ガス流量:20SCCM
・高周波周波数:13.56MHz
・高周波出力:150W
・照射時間:2時間
【0029】
(比較例1)
ふっ素系熱可塑性エラストマーを配合せず、テトラフロロエチレン−プロピレン共重合体「旭硝子製;アフラス#100H」のみを用いて実施例1と同様の操作を行い、サンプルを作製した。そして、同様の分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
(比較例2)
ふっ素系熱可塑性エラストマー「ダイキン工業製;ダイエルサーモプラスチックT−530」を100重量部、日本油脂(株)製ジクミルペルオキシド(パークミルD)を2重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)6重量部を二軸ロールによって練り込んだ。これを150℃の熱プレスで150mm×150mm×2mmのシート状に成形した(一次架橋)。このシートをさらに、ギアオーブンに入れ、200℃、4時間二次架橋した。こうして得られたサンプルについて、同様の分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
(比較例3)
ふっ素ゴムラテックス「アウジモント社製テクノフロンTNラテックス(テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン−ふっ化ビニリデン共重合体ラテックス、ポリマー濃度70%、ポリマー比重1.86)」と、ふっ素樹脂ラテックス「住友スリーエム製THV340C(テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン−ふっ化ビニリデン共重合体、ポリマー濃度50%)」とを、固形分重量比でふっ素ゴムラテックス:ふっ素樹脂ラテックス=80:20で混合したものを300g、1LのPP製容器に投入し、プロペラミキサーを用いて300rpmで30秒間攪拌してブレンドラテックスを得た。次いで、ブレンドラテックス200gを、80℃の10%硫酸500gの中に投入して共凝固させた。凝固したポリマーを水洗い洗浄後、乾燥して原料ブレンドポリマーを得た。そして、原料ブレンドポリマーを比較例1と同様の条件で架橋してサンプルを作製し、同様の分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から、本発明に従いテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなる実施例1のサンプルは機械的強度、特に引張り強さに優れ、更に耐プラズマ性にも優れることがわかる。これに対し比較例1のサンプルは、実施例1のサンプルに比べて引張強さが大きく劣り、耐プラズマ性にも劣っている。また、比較例2のサンプルは、実施例1のサンプルに比べて引張強さに劣り、耐プラズマ性にも劣っている。また、比較例3のサンプルは、実施例1のサンプルに比べて引張強さに劣り、圧縮永久歪みも大きい。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、充填材を配合しなくとも高い強度を発現し、耐圧縮永久歪特性が良好で、かつ耐プラズマ性に優れた、特に半導体製造装置、半導体搬送装置、食品製造装置、食品移送器用、食品貯蔵器用、医療部品等のクリーン環境に好適なふっ素系エラストマー成形体が得られる。
Claims (7)
- テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物からなることを特徴とするふっ素系エラストマー成形体。
- テトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体と、ふっ素系熱可塑性エラストマーとを含有する組成物を過酸化物架橋してなることを特徴とするふっ素系エラストマー成形体。
- 前記組成物におけるテトラフロロエチレン−プロピレン系共重合体とふっ素系熱可塑性エラストマーとの重量比が95:5〜60:40であることを特徴とする請求項1または2記載のふっ素系エラストマー成形体。
- 金属元素換算で、5000ppm以下の金属含有量であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のふっ素系エラストマー成形体。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載のふっ素系エラストマー成形体からなることを特徴とする半導体製造装置用または半導体搬送装置用ゴム材料。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載のふっ素系エラストマー成形体からなることを特徴とする食品製造装置用、食品移送器用または食品貯蔵器用ゴム材料。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載のふっ素系エラストマー成形体からなることを特徴とする医療部品用ゴム材料。
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Cited By (2)
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|---|---|---|---|---|
| JP2006228805A (ja) * | 2005-02-15 | 2006-08-31 | Nippon Valqua Ind Ltd | 半導体製造装置用シール材 |
| JP2014001360A (ja) * | 2012-05-25 | 2014-01-09 | Olympus Corp | エラストマー組成物および成形体 |
-
2003
- 2003-03-13 JP JP2003068303A patent/JP2004277496A/ja active Pending
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