JP2004283871A - 微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法及び該製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラスチックに、微小径の孔部を容易に形成することができる微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有するプラスチック構造体の製造方法であって、前記孔部を、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成することを特徴とする。孔部を形成する前の被加工プラスチック基材としては、プラスチックシート又はフィルムが好適である。前記微小孔部を有するプラスチック構造体としては、微小孔部を有するプラスチック構造体が、貫通孔を有し、且つフィルター機能、メンブレン機能、セパレータ機能、霧化機能、ガス拡散化機能、ノズル機能、または流路調整機能を有していてもよい。
【選択図】 図5
【解決手段】微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有するプラスチック構造体の製造方法であって、前記孔部を、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成することを特徴とする。孔部を形成する前の被加工プラスチック基材としては、プラスチックシート又はフィルムが好適である。前記微小孔部を有するプラスチック構造体としては、微小孔部を有するプラスチック構造体が、貫通孔を有し、且つフィルター機能、メンブレン機能、セパレータ機能、霧化機能、ガス拡散化機能、ノズル機能、または流路調整機能を有していてもよい。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法及び該製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、プラスチック部品の高機能化、高性能化の要求が高くなってきている。それらの要求に対して、プラスチック材料自身をポリマーアロイ化したり複合化したりする材料面での技術対応と、要求機能に合わせて機能部位を付加する加工面での技術対応の二つの取り組みが行われている。プラスチック部品の表面の高機能化・高性能化は、表面の濡れ性、接着性、吸着性、制電性、水分やガスに対するバリアー性、表面硬さ、光反射性、光散乱性、光透過性などの制御の必要性から、材料・加工両面から色々な技術的な取り組みがされてきている。例えば、プラスチック部品に、微細孔の形成によって、フィルター、メンブレン、セパレータなどの機能を付加する際には、主に延伸、抽出、相分離などの方法が利用されている。
【0003】
一方、レーザー光源に関する技術進歩は著しく、特に、パルスレーザーは、ナノ(10−9)秒からピコ(10−12)秒と超短パルス化が進み、更に最近では、チタン・サファイア結晶などをレーザー媒質とするフェムト(10−15)秒パルスレーザーなどが開発されてきている。ピコ秒やフェムト秒などの超短パルスレーザーシステムは、通常のレーザーの持つ、指向性、空間的・時間的コヒーレンスなどの特徴に加えて、パルス幅が極めて狭く、同じ平均出力でも単位時間・単位空間当りの電場強度が極めて高いことから、物質中に照射して高い電場強度を利用して誘起構造を形成させる試みが、無機ガラス材料を主な対象物として行われてきている。
【0004】
なお、従来、高分子材料(ポリエチレンテレフタレートなど)からなるフィルムに、レーザー光を照射して穿孔加工を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−118569号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平10−118569号公報に記載のレーザーを用いた微細粒子加工分級用フィルターの製造方法では、超短パルスレーザーの特有の効果が発揮されておらず、プラスチックに、微小径の孔部(特に、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔からなる微小孔部)を形成することができない。
【0007】
従って、本発明の課題は、プラスチックに、微小径の孔部を容易に形成することができる微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法及び該製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体を提供することにある。
本発明の他の課題は、さらに、マスクが不要であり、しかも、優れた生産性で微小な貫通孔及び/又は陥没孔を形成することができる微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法及び該製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、プラスチックフィルムに、パルス幅が10−9秒以下で且つ波長が可視光領域の超短パルスのレーザーを照射すると、多光子吸収が生じることにより、プラスチックフィルムに精密な微小孔部を形成することができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有するプラスチック構造体の製造方法であって、前記孔部を、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成することを特徴とする微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法では、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材としては、プラスチックシート又はフィルムを好適に用いることができる。
【0011】
微小孔部を有するプラスチック構造体としては、微小孔部を有するプラスチック構造体が、貫通孔を有し、且つフィルター機能、メンブレン機能、セパレータ機能、霧化機能、ガス拡散化機能、ノズル機能、または流路調整機能を有していることが好ましい。
【0012】
多光子吸収過程を利用したレーザー加工としては、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを用いたレーザー加工であってもよく、該パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーとしては、紫外線波長領域〜近赤外線波長領域の波長を有する超短パルスのレーザーであってもよい。このようなパルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーは、多光束干渉で照射することができる。また、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを、該超短パルスのレーザーの照射方向に対して垂直な方向に且つプラスチック表面に対して平行な方向に、超短パルスのレーザーの焦点を移動させながら照射することが好ましい。
【0013】
なお、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材は、素材としてフッ素系樹脂またはオレフィン系樹脂を含有していることが好ましく、表面及び/又は内部に、無機微粒子を含有していてもよい。
【0014】
また、本発明は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有するプラスチック構造体であって、前記孔部が、前記微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法により形成されていることを特徴とする微小孔部を有するプラスチック構造体を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。なお、同一の部位又は部材には同一の符号を付している場合がある。
(微小孔部を有するプラスチック構造体)
本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である微小孔部を有するプラスチック構造体であり、前記孔部が、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成されている。このような微小孔部(単に「孔部」と称する場合がある)としては、一方の表面から他方の表面に貫通している形状の貫通孔、表面から内部に陥没している形状の陥没孔のいずれであってもよく、貫通孔および陥没孔が組み合わせられていてもよい。すなわち、微小孔部を有するプラスチック構造体は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有することができる。
【0016】
このような微小孔部を有するプラスチック構造体としては、例えば、図1〜4に示されるような微小貫通孔や微小陥没孔を有するプラスチック構造体が挙げられる。図1〜2は、それぞれ、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の例を模式的に示す概略鳥瞰図である。具体的には、図1(a)は、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の一例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図1(b)は、図1(a)におけるX1−X1´線における断面図である。また、図2(a)は、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の他の例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図2(b)は、図2(a)におけるX2−X2´線における断面図である。図1の微小貫通孔を有するプラスチック構造体は、プラスチックフィルム1の一方の表面から他方の表面に貫通して形成された貫通孔2aを複数個有している。また、図2の微小貫通孔を有するプラスチック構造体は、プラスチックフィルム1の一方の表面から他方の表面に貫通して形成された貫通孔2bを複数個有している。具体的には、貫通孔2aは、円筒状の形状を有している。貫通孔2bは、前記円筒状の貫通孔2aが複数連結した形状又はこれに類似する形状を有している。従って、貫通孔2bは、短径(幅)は微小であるが、微小ではない長径を有する構造の貫通孔となっている。
【0017】
また、図3〜4は、それぞれ、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の例を模式的に示す概略鳥瞰図である。具体的には、図3(a)は、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の一例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図3(b)は、図3(a)におけるX3−X3´線における断面図である。また、図4(a)は、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の他の例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図4(b)は、図4(a)におけるX4−X4´線における断面図である。図3の微小陥没孔を有するプラスチック構造体は、プラスチックフィルム1の表面に、該プラスチックフィルム1の表面から内部に陥没して形成された陥没孔(凹部)2cを複数個有している。また、図4の微小陥没孔を有するプラスチック構造体は、プラスチックフィルム1の表面から内部に陥没して形成された陥没孔(凹部)2dを複数個有している。具体的には、陥没孔2cの断面は、略半円、略半楕円又は略三角形(なお、図3では、略半円または略半楕円として例示している)の形状を有することができ、陥没孔2dは、前記断面形状の陥没孔2cで切り込まれたような形状又はこれに類似する形状を有している。従って、陥没孔2dは、短径(幅)は微小であるが、微小ではない長径を有する構造(溝状の構造)の陥没孔となっており、その断面形状は、前記陥没孔2cの断面形状(例えば、略半円、略半楕円、略三角形など)と同様の形状を有することができる。
【0018】
このように微小孔部を有するプラスチック構造体として、微小貫通孔2aや微小陥没孔2c等のような、プラスチック表面の形状が円形状となっている貫通孔や陥没孔(「単独孔部」と称する場合がある)が形成されたプラスチックや、微小貫通孔2bや微小陥没孔2d等のような、前記単独孔部が連結された形状又はこれに類似する形状の貫通孔や陥没孔(「連結孔部」と称する場合がある)が形成されたプラスチックを形成することができる。
【0019】
前記微小孔部(微小貫通孔2a,2bや、微小陥没孔2c,2d)の径は、最小の径又は幅が200μm以下であればよく、例えば、0.05〜200μm(好ましくは0.05〜100μm、さらに好ましくは0.5〜50μm)の範囲から選択することができる。微小孔部が単独孔部である場合は、その径としては、直径(又は平均径)を意味しており、連結孔部である場合は、径としては幅を意味している。また、微小孔部の径は、プラスチック表面(又は該表面と同一の面)における径を意味している。
【0020】
なお、微小孔部が、連結孔部の場合のように、長径と短径とを有するような形状を有している場合、その径としては、短径が200μm以下であればよく、長径の長さは特に制限されない。具体的には、微小孔部の径としては、例えば、短径が0.05〜200μmであり、長径が0.05μm以上(例えば、0.05〜100000μm)であってもよい。また、好ましい微小孔部の径としては、短径が0.05〜100μmであり且つ長径が0.1μm以上(例えば、0.1〜5000μm)であり、さらには、短径が0.5〜50μmであり且つ長径が0.1〜1000μmであることが好ましい。
【0021】
特に、微小孔部が、貫通していない場合(微小陥没孔の場合)、短径が0.05〜200μmで、長径が基材の端から端までのスリット溝状の陥没孔であってもよい。
【0022】
なお、微小孔部が、微小陥没孔(凹部)の場合、微小陥没孔の深さは、特に制限されないが、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材(プラスチック基材)の厚みなどに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1μm以上(例えば、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜8μm)の範囲から選択することができる。
【0023】
また、微小孔部のプラスチック構造体の表面での形状としては、特に制限されず、不定形であってもよいが、例えば、マクロ的又は全体的な観点から、円形類似形状(円類似形状や楕円類似形状など)ないし四角形類似形状(正方形類似形状や長方形類似形状など)であってもよい。従って、微小孔部のプラスチック構造体表面での形状は、ミクロ的な観点からは、例えば、円形類似形状の円周がギザギザ状、波状、鋸状など曲線状であってもよく、また、四角形類似形状の長辺が直線ではなく、ギザギザ状、波状、鋸状など曲線状や折れ曲がり線状であってもよい。
【0024】
微小孔部を有するプラスチック構造体としては、微小孔部を、1つのみ有していてもよく、図1〜4で示されるように複数有していてもよい。微小孔部を複数有する場合、隣り合った孔部間の間隔は、前記最小の径又は幅と同じかそれ以上であることが好ましい。隣り合った孔部間の間隔は、一定であっても、一定でなくてもよい。なお、隣り合った孔部間の間隔としては、孔部が単独孔部である場合、プラスチック表面の円形状の中心間距離を意味し、孔部が連結孔部である場合、プラスチック表面の幅方向における中心間距離を意味することができる。
【0025】
(微小孔部を有するプラスチック構造体の形成)
本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体は、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成することができる。多光子吸収過程を利用することにより、使用するレーザー光の波長が、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材の素材(ポリマー成分)による吸収波長よりも長くても、前記被加工プラスチック基材に、最小の径又は幅が200μm以下である微小孔部を形成する加工を行うことができる。すなわち、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、微細加工を効率よく、しかも優れた精度で行うことができる。
【0026】
なお、多光子吸収過程を利用したレーザー加工とは、高密度の光子が存在する場合に、複数の光子が物質に同時に吸収され、本来、その1光子のエネルギーでは生じ得なかった現象を利用する加工を意味している。また、非線形現象を利用した加工であるので、光を用いているにもかかわらず、照射波長の回折限界を超える加工も可能である。
【0027】
このような多光子吸収過程を利用したレーザー加工方法としては、レーザーを照射して加工する際に、多光子吸収過程を利用して加工する方法であれば特に制限されず、例えば、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザー(「超短パルスレーザー」又は「レーザー」と称する場合がある)を用いたレーザー加工方法を好適に採用することができる。このような超短パルスレーザーとしては、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたパルス幅が10−9秒以下のパルスレーザー、エキシマレーザーやYAGレーザー(Nd−YAGレーザー等)の倍波によるパルス幅が10−9秒以下のパルスレーザーなどを用いることができ、特に、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたパルス幅が10−12秒〜10−15秒のフェムト秒のオーダーのパルスレーザー(フェムト秒パルスレーザー)を好適に用いることができる。もちろん、超短パルスレーザーにおけるパルス幅は、10−9秒以下であれば特に制限されず、例えば、10−9秒から10−12秒のピコ秒オーダーや、10−12秒から10−15秒のフェムト秒のオーダー(好ましくは10−12秒から10−15秒のフェムト秒のオーダー)であり、通常は、100フェムト秒(10−13秒)程度である。このようなチタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたパルス幅が10−9秒以下のパルスレーザーや、エキシマレーザーやYAGレーザー(Nd−YAGレーザー等)の倍波によるパルス幅が10−9秒以下のパルスレーザーなどの超短パルスレーザーを用いると、パルスエネルギーが高いので、多光子吸収過程を利用したレーザー加工を行うことができ、その尖塔のパワーにより波長より狭い幅の微細加工を行うことができるようになる。従って、超短パルスレーザーを用いて多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、最小の径又は幅が200μm以下である微小孔部[特に、短径が0.05〜200μmであり且つ長径が0.05μm以上(例えば、0.05〜100000μm)である微小孔部(なかでも、微小貫通孔)]を形成することができるようになる。なお、長径が長い場合には直線状でなく、曲線、折れ曲がり線等の任意な形状であっても良い。
【0028】
超短パルスレーザーの波長は、特に制限されず、多光子吸収過程を利用しているので、被加工プラスチック基材の樹脂成分の吸収波長(吸収のピーク波長又はその領域)よりも長い波長であってもよく、被加工プラスチック基材の樹脂成分の種類又はその吸収波長[吸収のピーク波長(特に、吸収のメインピーク波長)又はその領域]に応じて適宜選択することができる。具体的には、超短パルスレーザーの波長としては、例えば、紫外線領域〜近赤外線領域の領域内の波長であってもよく、従って、200nmから1000nmの範囲内から適宜選択することができる。なお、超短パルスレーザーの波長としては、被加工プラスチック基材の樹脂成分の吸収波長(吸収のピーク波長)の倍波(2倍波、3倍波など)となる波長であることが好ましい。
【0029】
また、超短パルスレーザーの繰り返しとしては、1Hzから100MHzの範囲で、通常は10Hzから500kHz程度である。
【0030】
被加工プラスチック基材に対して、内部における単位体積当たりに照射されるエネルギーは、超短パルスレーザーの照射エネルギー、被加工プラスチック基材に照射する際に用いられる対物レンズの開口数(光源の絞り込み)、被加工プラスチック基材への照射位置又は焦点の深さ、レーザーの焦点の移動速度などに応じて適宜決めることができる。
【0031】
本発明では、超短パルスレーザーの平均出力又は照射エネルギーとしては、特に制限されず、目的とする微小孔部(特に微小貫通孔)の大きさや形状等に応じて適宜選択することができ、例えば、10000mW以下(例えば、1〜1000mW)、好ましくは5〜500mW、さらに好ましくは10〜300mW程度の範囲から選択することができる。
【0032】
また、超短パルスレーザーの照射スポット径としては、特に制限されず、目的の微小孔部の大きさやその形状、レンズの大きさや開口数又は倍率などに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜10μm程度の範囲から選択することができる。
【0033】
なお、レーザーの光線の焦点を絞って合わせるためにレンズを用いることができる。すなわち、レーザーの焦点を絞って合わせる必要が無い場合は、レンズを用いる必要はない。このようなレンズの開口数(NA)は、特に制限されず、対物レンズの倍率に応じて変更することができ、通常は、倍率としては2.5〜100倍、開口数としては0.05〜0.95程度の範囲から選択される。
【0034】
多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、微小孔部を有するプラスチック構造体を製造する方法の一例として、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを用いてレーザー加工する方法の例を下記に示すが、もちろん、このレーザー加工方法に限定されない。パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを用いたレーザー加工方法としては、例えば、図5で示されているように、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材の表面及び/又は内部に、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザー(超短パルスレーザー)を照射することにより、被加工プラスチック基材に最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を形成する方法が挙げられる。図5は、微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法の一例を示す概略鳥瞰図である。図5において、1はプラスチックフィルム、1aはプラスチックフィルム1の上面(表面)、1bはプラスチックフィルム1の底面(裏面)、Tはプラスチックフィルム1の厚さ、3はパルス幅が10−9秒以下である超短パルスレーザー、4はレンズ、5はレーザー3の焦点である。また、6はレーザー3の照射方向であり、7はレーザー3の焦点5の移動方向である。
【0035】
また、81,82,・・・,8n(nは1以上の整数である)はそれぞれレーザー3の焦点5をライン状に移動させる際のラインである[以下、ライン(81,82,・・・,8n)をライン8として総称する場合がある]。従って、ライン8は、焦点5の移動方向7と平行又は同一の方向に延びている。ライン8は、焦点5をライン状に移動させる際のラインであるので、焦点5がライン状に移動した軌跡(「ライン状移動軌跡」と称する場合がある)に対応又は相当する。なお、ライン8としては、ライン81〜ライン8nまで単数ないし複数有しており、各ライン同士は平行な関係にある。
【0036】
また、Lはライン8における隣接又は近接したライン(81,82,・・・,8n)間の間隔を示している。該間隔Lは、特に制限されず、ラインの移動速度で決定することができる。間隔Lとしては、通常、5〜10μm程度の範囲から選択される場合が多い。なお、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設け、該シャッターを利用して、超短パルスレーザーによるレーザー光の光路を絶つことにより、ライン間隔を制御することができる。
【0037】
図5では、レーザー3は、プラスチックフィルム1に向けて、照射方向6の向きで、すなわちZ軸と平行な方向で、照射している。なお、レーザー3はレンズ4を用いることにより焦点を絞って合わせることができる。また、プラスチックフィルム1はフィルム状の形態を有しており、該プラスチックフィルム1の上面はX−Y平面と平行な面(またはZ軸と垂直)となっている。なお、プラスチックフィルム1の厚みTは、レーザー3を照射方向6の向きに移動させずに照射しても(例えば、プラスチックフィルム1の表面に焦点を合わせて照射しても)、貫通孔を形成することが可能な薄さを有しており、具体的には、例えば、0.1〜10000μm程度の厚さであってもよい。
【0038】
また、レーザー3は、その焦点5を移動方向7の向き(すなわちY軸と平行な向き)に、ライン状に移動させながら照射させている。従って、その結果として、焦点5をライン8上をライン状に移動方向7の向きに移動させながら、レーザー3が照射されていることになる。前記移動方向7は、照射方向6に対して垂直な方向であり、且つプラスチックフィルム1の表面1aに対して平行な方向である。従って、ライン8は、焦点5の移動方向7と平行であり、照射方向6とは垂直となっている。さらに、ライン8は、プラスチックフィルム1の表面1aに対して平行な方向となっている。なお、レーザー3の焦点5を移動方向7にライン状に移動させる際の該焦点5の移動速度としては、特に制限されず、例えば、10〜1,000、000μm/秒(好ましくは100〜10,000μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。
【0039】
このように、プラスチックフィルム1に対してレーザー3を、照射方向6と垂直な方向である移動方向7に移動させながら照射することにより、独立孔部としての貫通孔(被加工プラスチック基材表面の形状が円形状となっている独立した微小貫通孔)が連結された形状又はこれに類似する形状の貫通孔(すなわち、連結孔部としての貫通孔)を形成することができる。すなわち、短径と長径とを有する微小貫通孔を形成することができる。
【0040】
なお、被加工プラスチック基材の厚みが厚い場合、1パルスで穿孔できない場合や、長軸が長い孔を形成する場合などでは、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設けて、ライン走査中に、超短パルスレーザーによるレーザー光の光路を制御することにより、単位面積あたりのショット数を増加させることができ、これにより、前記のような場合でも、優れた精度で効率よくレーザー加工を行うことができる。
【0041】
一方、独立孔部(特に、プラスチック表面の形状が円形状となっている独立した微小貫通孔や微小陥没孔)は、レーザー3の焦点5を移動させず停止させた状態で照射し、該照射された部位と間隔をあけて再度停止状態で照射することを繰り返すことによって形成することができる。
【0042】
また、被加工プラスチック基材の厚みが厚い場合、1パルスで穿孔できない場合などでは、図6に示されるように、レーザー3の焦点5を、照射方向6の方向に対して垂直となる方向への移動を停止した状態で、Z軸方向(すなわち照射方向6)に焦点位置をずらしながら、上面(表面または一方の表面)から底面(裏面または他方の表面)に照射することによっても、独立孔部(特に、プラスチック表面の形状が円形状となっている独立した微小貫通孔や微小陥没孔)を形成することができる。この場合、焦点は、上面(表面)側の開始点9aから底面(裏面)側の終了点9bに移動させている。このようなZ軸方向への焦点の移動速度は、1〜5,000μm/秒(好ましくは10〜800μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。
【0043】
さらにまた、このレーザー3の焦点5のZ軸方向への移動と、移動方向7への移動とを連動させることによっても、例えば、レーザー3の焦点5を移動方向7には移動させずにZ軸方向に移動させた後、一旦照射を遮断し、Z軸方向復帰させた後、移動方向7に移動させて照射を再開することを繰り返すことによっても、独立孔部としての貫通孔(被加工プラスチック基材表面の形状が円形状となっている独立した微小貫通孔)が連結された形状又はこれに類似する形状の貫通孔(すなわち、連結孔部としての貫通孔)を形成することができる。
【0044】
より具体的には、レーザー3を照射方向6の方向で、ライン8のうちいずれか1つのライン(ライン81とする)の一方の末端部に焦点5を合わせて、照射し、この焦点5を移動方向7の方向にライン81上をライン状にライン81の他方の末端まで移動させる。その後、このライン81上の焦点5の移動方法と同様の方法により、レーザー3の焦点5を他のライン(ライン82とする)の一方の末端に合わせて他方の末端まで該ライン82上をライン状に移動させる。さらに、このような焦点をライン8のうちいずれか1つのラインの一方の末端に合わせて他方の末端まで移動させることを必要なだけ繰り返すことにより、短径および長径(又は最小幅および最大長さ)を有する形状の微小孔部(微小貫通孔や微小陥没孔)を有するプラスチック構造体を作製することができる。
【0045】
また、貫通孔を形成する際には、被加工プラスチック基材の厚みにもよるが、例えば、独立孔部としての微小貫通孔を形成する場合は、図6で示されるように、レーザー3を照射方向6の方向で照射し、その焦点を照射方向6(Z軸方向)の方向に、9aから9b、又は9bから9aに、ライン状に移動させる。その後、焦点の移動を停止して、前記照射した部位とは異なる部位に照射し、照射方向6(Z軸方向)の方向に焦点を移動させる。さらに、このような焦点の照射方向6への移動を、異なる照射部位で、必要なだけ繰り返すことにより、微小貫通孔を有するプラスチック構造体を作製することができる。被加工プラスチック基材の厚みが薄い場合等では、レーザー3の焦点の照射方向6への移動を行わなくても、形成することができる場合がある。
【0046】
もちろん、被加工プラスチック基材の厚みにもよるが、レーザー3の焦点5の移動を、移動方向7の方向への移動と、照射方向6の方向への移動とを組み合わせることにより、短径および長径を有する形状の微小貫通孔を有するプラスチック構造体を作製することができる。
【0047】
なお、超短パルスレーザーの焦点の移動は、超短パルスレーザー及びレンズと、プラスチック構造体との相対位置を動かせることにより、例えば、超短パルスレーザー及びレンズ、及び/又は照射されるプラスチックを移動させることにより、行うことができる。具体的には、超短パルスレーザーの照射は、例えば、照射サンプル(照射される被加工プラスチック基材)を、2次元又は3次元の方向に精密に動かすことができる精密なXYZステージに載せ、3次元的に移動させることにより、サンプル任意の場所に行うことができる。また、XYZステージの移動を時間的に設定することにより、照射を3次元的な連続性を持って任意に行うことができる。
【0048】
なお、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設けることにより、超短パルスレーザーのレーザー光の光路や照射を精密に且つ容易に制御することができ、超短パルスレーザーによるレーザー加工性を高めることができる。
【0049】
このように、レーザー3をプラスチックフィルム1の表面や内部に外部から照射して、必要に応じて焦点をライン状(照射方向に平行な又はプラスチック表面に垂直なライン状や、照射方向に垂直な又はプラスチック表面に平行なライン状など)に移動させることにより、プラスチックフィルム1の表面等に、図1〜4に示されているような微小孔部(2a〜2d)を形成することができる。例えば、単独孔部としての微小貫通孔は、被加工プラスチック基材の厚みにもよるが、被加工プラスチック基材の一方の表面から他方の表面にかけて(ライン状に)焦点を移動させながらレーザーを照射することにより形成することができる。単独孔部としての微小陥没孔は、レーザーの焦点を移動させず停止させた状態で、被加工プラスチック基材の表面又はその付近に焦点を合わせて、レーザーを照射することにより形成することができる。一方、連結孔部としての微小貫通孔は、レーザーの焦点を被加工プラスチック基材の表面又はその付近に合わせるとともに、該レーザーの焦点を被加工プラスチック基材表面と平行な方向に(ライン状に)、前者より遅い速度で移動させながら、必要に応じて超短パルスレーザーの照射装置に設けられたシャッターを開閉しながら、レーザーを照射することにより形成することができる。連結孔部としての微小陥没孔は、レーザーの焦点を被加工プラスチック基材の表面又はその付近に合わせるとともに、該レーザーの焦点を被加工プラスチック基材表面と平行な方向に(ライン状に)移動させながらレーザーを照射することにより形成することができる。
【0050】
なお、微小孔部間の間隔[例えば、複数のライン状に形成された微小孔部の隣接するライン上における微小孔部間の間隔(すなわち、ライン8が形成された方向に対して垂直な方向における間隔)や、1つのライン上における独立孔部や連結孔部間の間隔など]、微小孔部の数(例えば、1つのライン上における独立孔部や連結孔部の数など)などは、特に制限されず、レーザーの照射条件や被加工プラスチック基材の素材等に応じて適宜選択することができる。
【0051】
(孔部の形成前の被加工プラスチック基材)
本発明では、孔部の形成する前の被加工プラスチック基材としては、共重合体を含めた単一化学構造のポリマー材料からなるものだけでなく、異なる化学構造を有する複数のポリマー材料からなるポリマーアロイやポリマーブレンドも用いることができる。また、パルスレーザー照射に使用される被加工プラスチック基材としては、無機化合物や金属などの他の材料を分散状態で含んだ複合体であってもよく、異なるプラスチックや他の材料からなる層を含んだ2以上の層構造からなる積層体であってもよい。例えば、被加工物(微小孔部を有するプラスチック構造体)に導電性を付与するために、被加工プラスチック基材の材料(ポリマー成分)中にカーボンブラックが分散された被加工プラスチック基材を用いると、レーザー光の吸収効率が上がり、加工しやすくなる効果も発現する。
【0052】
具体的には、被加工プラスチック基材としての前記ポリマー材料の代表的な例として、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリレート系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリアミド;ポリイミド(PI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリアミドイミド;ポリエステルイミド;ポリカーボネート(PC);ポリアセタール;ポリフェニレンエーテルなどのポリアリーレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;ポリアリレート;ポリアリール;ポリスルホン(ポリサルホン);ポリエーテルスルホン(PES)(ポリエーテルサルホン);ポリウレタン類;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂;ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなどのポリエーテルケトン類;ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸エステル類;ポリブトオキシメチレンなどのポリビニルエステル類;ポリシロキサン類;ポリサルファイド類;ポリフォスファゼン類;ポリトリアジン類;ポリカーボラン類;ポリノルボルネン;エポキシ系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリイソプレンやポリブタジエンなどのポリジエン類;ポリイソブチレンなどのポリアルケン類;フッ化ビニリデン系樹脂、ヘキサフルオロプロピレン系樹脂、ヘキサフルオロアセトン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂などの樹脂(熱可塑性樹脂など)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
ポリマー材料としては、微小孔部を有するプラスチック構造体の用途などに応じて適宜選択することができ、例えば、フィルター、セパレータ等の用途では、ポリマー材料としては、化学安定性等を考慮すると、フッ素系樹脂またはオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。
【0054】
被加工プラスチック基材としては、その厚みは特に制限されず、微小孔部を有するプラスチック構造体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1μm以上(例えば、0.1μm〜10mm)であってもよい。従って、被加工プラスチック基材としては、プラスチックシート又はフィルムであってもよく、プラスチック板であってもよい。なお、被加工プラスチック基材がプラスチックフィルムである場合、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、微小孔部を有するプラスチックフィルムが得られる。本発明では、被加工プラスチック基材がプラスチックフィルムであっても(すなわち、その厚みが薄くても)、優れた精度でレーザー加工を行うことができる。被加工プラスチック基材がプラスチックフィルムである場合、その厚みは、例えば、0.1〜500μm(好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは10〜150μm)であってもよい。
【0055】
本発明の方法により製造された微小孔部を有するプラスチック構造体は、表面や内部に精密に制御された微小な孔部(貫通孔や陥没孔)を有しているので、前記精密に制御して形成された微小孔部を利用した各種機能を効果的に発揮することができる。特に、微小孔部を有するプラスチック構造体は、微小貫通孔を有している場合、フィルター機能、メンブレン機能、セパレータ機能、霧化機能、ガス拡散化機能、ノズル機能や流路調整機能などを発揮することができる。
【0056】
具体的には、本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体は、精密な空間や流路などを形成するスペーサー機能を利用したマイクロマシーンやセンサー、バイオ機器、マイクロリアクターチップ、埋め込み型人工臓器の他、マイクロフィルター、精密ろ過膜(マイクロメンブレン)、電池用セパレータ(例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の各種電池で利用される電池用セパレータ)、燃料電池の部材(例えば、ガス拡散層、集電層、透湿層、保湿層などの燃料電池で用いられる各種部材)、マイクロノズル(例えば、プリンター用マイクロノズル、噴射用マイクロノズル、噴霧用マイクロノズル、隙間用マイクロノズルなど)、ディストリビュータ、ガス拡散層、マイクロ流路などの各種機能部材に用いることができる。
【0057】
特に、微小孔部を有するプラスチック構造体が、微小孔部を有するプラスチックフィルム(特に、微小貫通孔を有するプラスチックフィルム)である場合、マイクロフィルター、マイクロメンブレン、電池用セパレータ、燃料電池の部材、マイクロノズルなどのマイクロ機能フィルム部材として好適に利用することができる。なお、微小貫通孔を有するプラスチックフィルムをマイクロフィルターやマイクロメンブレンとして利用する場合、電池用セパレータや、燃料電池の部材などの他、バイオ、医療等の分離膜の用途で好適に用いることができる。
【0058】
なお、微小貫通孔を有するプラスチックフィルムをマイクロフィルターやマイクロメンブレンとして利用する場合、微小貫通孔としては、最小の径又は幅が200μm以下であればよいが、具体的には、前述のように、短径が0.05〜200μmであり、長径が0.05μm以上(例えば、0.05〜100000μm)であってもよい。もちろん、長径は直線状であってもよく、曲線状や折れ曲がり線状であってもよい。該微小貫通孔は、プラスチックフィルムに、多数設けられていることが重要であり、整然と設けられていてもよく、ランダムに設けられていてもよい。従って、隣接する微小貫通孔間の間隔は、一定であってもよく、一定でなくランダムであってもよい。なお、微小貫通孔のフィルム表面での形状としては、前述のように、マクロ的又は全体的な観点からは、円形類似形状(円類似形状や楕円類似形状など)ないし四角形類似形状(正方形類似形状や長方形類似形状など)であることが好ましい。
【0059】
微小孔部を有するプラスチック構造体は、そのままプラスチック部材として用いてもよく、他の部材と組み合わせて用いてもよい。微小孔部を有するプラスチック構造体には、任意の加工や処理を施すことができ、例えば、延伸や収縮などの加工処理や、さらに必要に応じて後処理を行うこともできる。
【0060】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
0.025mm厚さのポリイミド(PI)フィルムの表面から裏面方向(他の表面の方向または奥方向)に移動速度8000μm/sの条件で移動させながら、照射波長780nm、パルス幅140フェムト秒、繰り返し1kHzのチタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザーを、照射出力50mW、対物レンズの倍率10倍で、照射スポット約10μm径の条件で照射し、その後、純水中で超音波洗浄を行ったところ、微小貫通孔を有するプラスチックが得られた。この微小貫通孔を有するプラスチックを、光学顕微鏡で観察したところ、5μm径の貫通孔が8μm間隔の等間隔で形成していた。
【0062】
(実施例2)
0.15mm厚さで且つカーボンブラックが50重量%混合されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム(2倍延伸品)に、実施例1と同じパルスレーザーを、照射出力30mWで、移動速度500μm/sで走査させながら、1秒ごとにシャターの開閉を繰り返し行った。その後、純水中で超音波洗浄を行ったところ、微小貫通孔を有するプラスチックが得られた。この微小貫通孔を有するプラスチックを、光学顕微鏡で観察したところ、短径20μm幅、長径500μmの長溝状の貫通孔が等間隔で形成していた。
【0063】
(実施例3)
15mm厚さのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム(無延伸品)に、YAGレーザーの3倍波(波長355nm、パルスエネルギー50nJ/パルス、80MHz)のパルスレーザーを、5倍レンズで集光し、0.1秒間露光し、その後200μm移動をして露光を行うことを繰り返し行った。その後、純水中で超音波洗浄を行ったところ、微小貫通孔を有するプラスチックが得られた。この微小貫通孔を有するプラスチックを、光学顕微鏡で観察したところ、径20μm幅の貫通孔が等間隔で形成していた。
【0064】
(実施例4)
0.05mm厚さのポリエチレンフィルムに、実施例1と同じパルスレーザーを、照射出力200mWで回折素子を用いて5光束に分離し、そのうちの対角の4光束を5倍レンズで集光し、干渉をポリエチレンフィルム上で生じさせて、ポリエチレンフィルムに照射し、その後、純水中で超音波洗浄を行ったところ、微小貫通孔を有するプラスチックが得られた。この微小貫通孔を有するプラスチックを、光学顕微鏡で観察したところ、30μm径の貫通孔が等間隔で4個形成していた。
【0065】
(比較例1)
実施例2と同じフィルム(PTFEフィルム;厚さ0.15mm、カーボンブラック50重量%含有、2倍延伸品)に、8000μm/sの条件で移動させながら、照射波長1064nm、パルス幅8ナノ秒、繰り返し100HzのNd−YAGパルスレーザーを、照射出力50mW(500μJ/パルス)、対物レンズの倍率10倍で、照射スポット約10μm径の条件で照射したが、孔は形成できなかった。
【0066】
【発明の効果】
本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法によれば、プラスチックに、微小径の孔部を容易に形成することができる。さらに、マスクが不要であり、しかも、優れた生産性で微小な貫通孔及び/又は陥没孔を形成することができる。
このような製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体は、マイクロフィルター、マイクロメンブレン、電池用セパレータ、燃料電池の部材、マイクロノズルなどのマイクロ機能フィルム部材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の一例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図1(b)は、図1(a)におけるX1−X1´線における断面図である。
【図2】図2(a)は、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の他の例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図2(b)は、図2(a)におけるX2−X2´線における断面図である。
【図3】図3(a)は、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の一例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図3(b)は、図3(a)におけるX3−X3´線における断面図である。
【図4】図4(a)は、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の他の例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図4(b)は、図4(a)におけるX4−X4´線における断面図である。
【図5】微小孔部を有するプラスチック構造体の形成方法の一例を示す概略鳥瞰図である。
【図6】微小孔部を有するプラスチック構造体の形成方法の他の例を示す概略鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 プラスチックシート
2a 貫通孔
2b 貫通孔
2c 陥没孔
2d 陥没孔
1a プラスチックシート1の上面(表面)
1b プラスチックシート1の底面(裏面)
T プラスチックシート1の厚さ
3 パルス幅が10−9秒以下である超短パルスレーザー
4 レンズ
5 レーザー3の焦点
6 レーザー3の照射方向
7 レーザー3の焦点5の移動方向
8 レーザー3の焦点5をライン状に移動させる際のライン
L ライン8における近接したライン間の間隔
9a レーザー3の焦点5における上面(表面)側の開始点
9b レーザー3の焦点5における底面(裏面)側の終了点
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法及び該製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、プラスチック部品の高機能化、高性能化の要求が高くなってきている。それらの要求に対して、プラスチック材料自身をポリマーアロイ化したり複合化したりする材料面での技術対応と、要求機能に合わせて機能部位を付加する加工面での技術対応の二つの取り組みが行われている。プラスチック部品の表面の高機能化・高性能化は、表面の濡れ性、接着性、吸着性、制電性、水分やガスに対するバリアー性、表面硬さ、光反射性、光散乱性、光透過性などの制御の必要性から、材料・加工両面から色々な技術的な取り組みがされてきている。例えば、プラスチック部品に、微細孔の形成によって、フィルター、メンブレン、セパレータなどの機能を付加する際には、主に延伸、抽出、相分離などの方法が利用されている。
【0003】
一方、レーザー光源に関する技術進歩は著しく、特に、パルスレーザーは、ナノ(10−9)秒からピコ(10−12)秒と超短パルス化が進み、更に最近では、チタン・サファイア結晶などをレーザー媒質とするフェムト(10−15)秒パルスレーザーなどが開発されてきている。ピコ秒やフェムト秒などの超短パルスレーザーシステムは、通常のレーザーの持つ、指向性、空間的・時間的コヒーレンスなどの特徴に加えて、パルス幅が極めて狭く、同じ平均出力でも単位時間・単位空間当りの電場強度が極めて高いことから、物質中に照射して高い電場強度を利用して誘起構造を形成させる試みが、無機ガラス材料を主な対象物として行われてきている。
【0004】
なお、従来、高分子材料(ポリエチレンテレフタレートなど)からなるフィルムに、レーザー光を照射して穿孔加工を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−118569号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平10−118569号公報に記載のレーザーを用いた微細粒子加工分級用フィルターの製造方法では、超短パルスレーザーの特有の効果が発揮されておらず、プラスチックに、微小径の孔部(特に、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔からなる微小孔部)を形成することができない。
【0007】
従って、本発明の課題は、プラスチックに、微小径の孔部を容易に形成することができる微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法及び該製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体を提供することにある。
本発明の他の課題は、さらに、マスクが不要であり、しかも、優れた生産性で微小な貫通孔及び/又は陥没孔を形成することができる微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法及び該製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、プラスチックフィルムに、パルス幅が10−9秒以下で且つ波長が可視光領域の超短パルスのレーザーを照射すると、多光子吸収が生じることにより、プラスチックフィルムに精密な微小孔部を形成することができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有するプラスチック構造体の製造方法であって、前記孔部を、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成することを特徴とする微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法では、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材としては、プラスチックシート又はフィルムを好適に用いることができる。
【0011】
微小孔部を有するプラスチック構造体としては、微小孔部を有するプラスチック構造体が、貫通孔を有し、且つフィルター機能、メンブレン機能、セパレータ機能、霧化機能、ガス拡散化機能、ノズル機能、または流路調整機能を有していることが好ましい。
【0012】
多光子吸収過程を利用したレーザー加工としては、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを用いたレーザー加工であってもよく、該パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーとしては、紫外線波長領域〜近赤外線波長領域の波長を有する超短パルスのレーザーであってもよい。このようなパルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーは、多光束干渉で照射することができる。また、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを、該超短パルスのレーザーの照射方向に対して垂直な方向に且つプラスチック表面に対して平行な方向に、超短パルスのレーザーの焦点を移動させながら照射することが好ましい。
【0013】
なお、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材は、素材としてフッ素系樹脂またはオレフィン系樹脂を含有していることが好ましく、表面及び/又は内部に、無機微粒子を含有していてもよい。
【0014】
また、本発明は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有するプラスチック構造体であって、前記孔部が、前記微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法により形成されていることを特徴とする微小孔部を有するプラスチック構造体を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。なお、同一の部位又は部材には同一の符号を付している場合がある。
(微小孔部を有するプラスチック構造体)
本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である微小孔部を有するプラスチック構造体であり、前記孔部が、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成されている。このような微小孔部(単に「孔部」と称する場合がある)としては、一方の表面から他方の表面に貫通している形状の貫通孔、表面から内部に陥没している形状の陥没孔のいずれであってもよく、貫通孔および陥没孔が組み合わせられていてもよい。すなわち、微小孔部を有するプラスチック構造体は、孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有することができる。
【0016】
このような微小孔部を有するプラスチック構造体としては、例えば、図1〜4に示されるような微小貫通孔や微小陥没孔を有するプラスチック構造体が挙げられる。図1〜2は、それぞれ、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の例を模式的に示す概略鳥瞰図である。具体的には、図1(a)は、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の一例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図1(b)は、図1(a)におけるX1−X1´線における断面図である。また、図2(a)は、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の他の例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図2(b)は、図2(a)におけるX2−X2´線における断面図である。図1の微小貫通孔を有するプラスチック構造体は、プラスチックフィルム1の一方の表面から他方の表面に貫通して形成された貫通孔2aを複数個有している。また、図2の微小貫通孔を有するプラスチック構造体は、プラスチックフィルム1の一方の表面から他方の表面に貫通して形成された貫通孔2bを複数個有している。具体的には、貫通孔2aは、円筒状の形状を有している。貫通孔2bは、前記円筒状の貫通孔2aが複数連結した形状又はこれに類似する形状を有している。従って、貫通孔2bは、短径(幅)は微小であるが、微小ではない長径を有する構造の貫通孔となっている。
【0017】
また、図3〜4は、それぞれ、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の例を模式的に示す概略鳥瞰図である。具体的には、図3(a)は、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の一例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図3(b)は、図3(a)におけるX3−X3´線における断面図である。また、図4(a)は、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の他の例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図4(b)は、図4(a)におけるX4−X4´線における断面図である。図3の微小陥没孔を有するプラスチック構造体は、プラスチックフィルム1の表面に、該プラスチックフィルム1の表面から内部に陥没して形成された陥没孔(凹部)2cを複数個有している。また、図4の微小陥没孔を有するプラスチック構造体は、プラスチックフィルム1の表面から内部に陥没して形成された陥没孔(凹部)2dを複数個有している。具体的には、陥没孔2cの断面は、略半円、略半楕円又は略三角形(なお、図3では、略半円または略半楕円として例示している)の形状を有することができ、陥没孔2dは、前記断面形状の陥没孔2cで切り込まれたような形状又はこれに類似する形状を有している。従って、陥没孔2dは、短径(幅)は微小であるが、微小ではない長径を有する構造(溝状の構造)の陥没孔となっており、その断面形状は、前記陥没孔2cの断面形状(例えば、略半円、略半楕円、略三角形など)と同様の形状を有することができる。
【0018】
このように微小孔部を有するプラスチック構造体として、微小貫通孔2aや微小陥没孔2c等のような、プラスチック表面の形状が円形状となっている貫通孔や陥没孔(「単独孔部」と称する場合がある)が形成されたプラスチックや、微小貫通孔2bや微小陥没孔2d等のような、前記単独孔部が連結された形状又はこれに類似する形状の貫通孔や陥没孔(「連結孔部」と称する場合がある)が形成されたプラスチックを形成することができる。
【0019】
前記微小孔部(微小貫通孔2a,2bや、微小陥没孔2c,2d)の径は、最小の径又は幅が200μm以下であればよく、例えば、0.05〜200μm(好ましくは0.05〜100μm、さらに好ましくは0.5〜50μm)の範囲から選択することができる。微小孔部が単独孔部である場合は、その径としては、直径(又は平均径)を意味しており、連結孔部である場合は、径としては幅を意味している。また、微小孔部の径は、プラスチック表面(又は該表面と同一の面)における径を意味している。
【0020】
なお、微小孔部が、連結孔部の場合のように、長径と短径とを有するような形状を有している場合、その径としては、短径が200μm以下であればよく、長径の長さは特に制限されない。具体的には、微小孔部の径としては、例えば、短径が0.05〜200μmであり、長径が0.05μm以上(例えば、0.05〜100000μm)であってもよい。また、好ましい微小孔部の径としては、短径が0.05〜100μmであり且つ長径が0.1μm以上(例えば、0.1〜5000μm)であり、さらには、短径が0.5〜50μmであり且つ長径が0.1〜1000μmであることが好ましい。
【0021】
特に、微小孔部が、貫通していない場合(微小陥没孔の場合)、短径が0.05〜200μmで、長径が基材の端から端までのスリット溝状の陥没孔であってもよい。
【0022】
なお、微小孔部が、微小陥没孔(凹部)の場合、微小陥没孔の深さは、特に制限されないが、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材(プラスチック基材)の厚みなどに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1μm以上(例えば、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜8μm)の範囲から選択することができる。
【0023】
また、微小孔部のプラスチック構造体の表面での形状としては、特に制限されず、不定形であってもよいが、例えば、マクロ的又は全体的な観点から、円形類似形状(円類似形状や楕円類似形状など)ないし四角形類似形状(正方形類似形状や長方形類似形状など)であってもよい。従って、微小孔部のプラスチック構造体表面での形状は、ミクロ的な観点からは、例えば、円形類似形状の円周がギザギザ状、波状、鋸状など曲線状であってもよく、また、四角形類似形状の長辺が直線ではなく、ギザギザ状、波状、鋸状など曲線状や折れ曲がり線状であってもよい。
【0024】
微小孔部を有するプラスチック構造体としては、微小孔部を、1つのみ有していてもよく、図1〜4で示されるように複数有していてもよい。微小孔部を複数有する場合、隣り合った孔部間の間隔は、前記最小の径又は幅と同じかそれ以上であることが好ましい。隣り合った孔部間の間隔は、一定であっても、一定でなくてもよい。なお、隣り合った孔部間の間隔としては、孔部が単独孔部である場合、プラスチック表面の円形状の中心間距離を意味し、孔部が連結孔部である場合、プラスチック表面の幅方向における中心間距離を意味することができる。
【0025】
(微小孔部を有するプラスチック構造体の形成)
本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体は、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成することができる。多光子吸収過程を利用することにより、使用するレーザー光の波長が、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材の素材(ポリマー成分)による吸収波長よりも長くても、前記被加工プラスチック基材に、最小の径又は幅が200μm以下である微小孔部を形成する加工を行うことができる。すなわち、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、微細加工を効率よく、しかも優れた精度で行うことができる。
【0026】
なお、多光子吸収過程を利用したレーザー加工とは、高密度の光子が存在する場合に、複数の光子が物質に同時に吸収され、本来、その1光子のエネルギーでは生じ得なかった現象を利用する加工を意味している。また、非線形現象を利用した加工であるので、光を用いているにもかかわらず、照射波長の回折限界を超える加工も可能である。
【0027】
このような多光子吸収過程を利用したレーザー加工方法としては、レーザーを照射して加工する際に、多光子吸収過程を利用して加工する方法であれば特に制限されず、例えば、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザー(「超短パルスレーザー」又は「レーザー」と称する場合がある)を用いたレーザー加工方法を好適に採用することができる。このような超短パルスレーザーとしては、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたパルス幅が10−9秒以下のパルスレーザー、エキシマレーザーやYAGレーザー(Nd−YAGレーザー等)の倍波によるパルス幅が10−9秒以下のパルスレーザーなどを用いることができ、特に、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたパルス幅が10−12秒〜10−15秒のフェムト秒のオーダーのパルスレーザー(フェムト秒パルスレーザー)を好適に用いることができる。もちろん、超短パルスレーザーにおけるパルス幅は、10−9秒以下であれば特に制限されず、例えば、10−9秒から10−12秒のピコ秒オーダーや、10−12秒から10−15秒のフェムト秒のオーダー(好ましくは10−12秒から10−15秒のフェムト秒のオーダー)であり、通常は、100フェムト秒(10−13秒)程度である。このようなチタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたパルス幅が10−9秒以下のパルスレーザーや、エキシマレーザーやYAGレーザー(Nd−YAGレーザー等)の倍波によるパルス幅が10−9秒以下のパルスレーザーなどの超短パルスレーザーを用いると、パルスエネルギーが高いので、多光子吸収過程を利用したレーザー加工を行うことができ、その尖塔のパワーにより波長より狭い幅の微細加工を行うことができるようになる。従って、超短パルスレーザーを用いて多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、最小の径又は幅が200μm以下である微小孔部[特に、短径が0.05〜200μmであり且つ長径が0.05μm以上(例えば、0.05〜100000μm)である微小孔部(なかでも、微小貫通孔)]を形成することができるようになる。なお、長径が長い場合には直線状でなく、曲線、折れ曲がり線等の任意な形状であっても良い。
【0028】
超短パルスレーザーの波長は、特に制限されず、多光子吸収過程を利用しているので、被加工プラスチック基材の樹脂成分の吸収波長(吸収のピーク波長又はその領域)よりも長い波長であってもよく、被加工プラスチック基材の樹脂成分の種類又はその吸収波長[吸収のピーク波長(特に、吸収のメインピーク波長)又はその領域]に応じて適宜選択することができる。具体的には、超短パルスレーザーの波長としては、例えば、紫外線領域〜近赤外線領域の領域内の波長であってもよく、従って、200nmから1000nmの範囲内から適宜選択することができる。なお、超短パルスレーザーの波長としては、被加工プラスチック基材の樹脂成分の吸収波長(吸収のピーク波長)の倍波(2倍波、3倍波など)となる波長であることが好ましい。
【0029】
また、超短パルスレーザーの繰り返しとしては、1Hzから100MHzの範囲で、通常は10Hzから500kHz程度である。
【0030】
被加工プラスチック基材に対して、内部における単位体積当たりに照射されるエネルギーは、超短パルスレーザーの照射エネルギー、被加工プラスチック基材に照射する際に用いられる対物レンズの開口数(光源の絞り込み)、被加工プラスチック基材への照射位置又は焦点の深さ、レーザーの焦点の移動速度などに応じて適宜決めることができる。
【0031】
本発明では、超短パルスレーザーの平均出力又は照射エネルギーとしては、特に制限されず、目的とする微小孔部(特に微小貫通孔)の大きさや形状等に応じて適宜選択することができ、例えば、10000mW以下(例えば、1〜1000mW)、好ましくは5〜500mW、さらに好ましくは10〜300mW程度の範囲から選択することができる。
【0032】
また、超短パルスレーザーの照射スポット径としては、特に制限されず、目的の微小孔部の大きさやその形状、レンズの大きさや開口数又は倍率などに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜10μm程度の範囲から選択することができる。
【0033】
なお、レーザーの光線の焦点を絞って合わせるためにレンズを用いることができる。すなわち、レーザーの焦点を絞って合わせる必要が無い場合は、レンズを用いる必要はない。このようなレンズの開口数(NA)は、特に制限されず、対物レンズの倍率に応じて変更することができ、通常は、倍率としては2.5〜100倍、開口数としては0.05〜0.95程度の範囲から選択される。
【0034】
多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、微小孔部を有するプラスチック構造体を製造する方法の一例として、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを用いてレーザー加工する方法の例を下記に示すが、もちろん、このレーザー加工方法に限定されない。パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを用いたレーザー加工方法としては、例えば、図5で示されているように、孔部を形成する前の被加工プラスチック基材の表面及び/又は内部に、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザー(超短パルスレーザー)を照射することにより、被加工プラスチック基材に最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を形成する方法が挙げられる。図5は、微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法の一例を示す概略鳥瞰図である。図5において、1はプラスチックフィルム、1aはプラスチックフィルム1の上面(表面)、1bはプラスチックフィルム1の底面(裏面)、Tはプラスチックフィルム1の厚さ、3はパルス幅が10−9秒以下である超短パルスレーザー、4はレンズ、5はレーザー3の焦点である。また、6はレーザー3の照射方向であり、7はレーザー3の焦点5の移動方向である。
【0035】
また、81,82,・・・,8n(nは1以上の整数である)はそれぞれレーザー3の焦点5をライン状に移動させる際のラインである[以下、ライン(81,82,・・・,8n)をライン8として総称する場合がある]。従って、ライン8は、焦点5の移動方向7と平行又は同一の方向に延びている。ライン8は、焦点5をライン状に移動させる際のラインであるので、焦点5がライン状に移動した軌跡(「ライン状移動軌跡」と称する場合がある)に対応又は相当する。なお、ライン8としては、ライン81〜ライン8nまで単数ないし複数有しており、各ライン同士は平行な関係にある。
【0036】
また、Lはライン8における隣接又は近接したライン(81,82,・・・,8n)間の間隔を示している。該間隔Lは、特に制限されず、ラインの移動速度で決定することができる。間隔Lとしては、通常、5〜10μm程度の範囲から選択される場合が多い。なお、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設け、該シャッターを利用して、超短パルスレーザーによるレーザー光の光路を絶つことにより、ライン間隔を制御することができる。
【0037】
図5では、レーザー3は、プラスチックフィルム1に向けて、照射方向6の向きで、すなわちZ軸と平行な方向で、照射している。なお、レーザー3はレンズ4を用いることにより焦点を絞って合わせることができる。また、プラスチックフィルム1はフィルム状の形態を有しており、該プラスチックフィルム1の上面はX−Y平面と平行な面(またはZ軸と垂直)となっている。なお、プラスチックフィルム1の厚みTは、レーザー3を照射方向6の向きに移動させずに照射しても(例えば、プラスチックフィルム1の表面に焦点を合わせて照射しても)、貫通孔を形成することが可能な薄さを有しており、具体的には、例えば、0.1〜10000μm程度の厚さであってもよい。
【0038】
また、レーザー3は、その焦点5を移動方向7の向き(すなわちY軸と平行な向き)に、ライン状に移動させながら照射させている。従って、その結果として、焦点5をライン8上をライン状に移動方向7の向きに移動させながら、レーザー3が照射されていることになる。前記移動方向7は、照射方向6に対して垂直な方向であり、且つプラスチックフィルム1の表面1aに対して平行な方向である。従って、ライン8は、焦点5の移動方向7と平行であり、照射方向6とは垂直となっている。さらに、ライン8は、プラスチックフィルム1の表面1aに対して平行な方向となっている。なお、レーザー3の焦点5を移動方向7にライン状に移動させる際の該焦点5の移動速度としては、特に制限されず、例えば、10〜1,000、000μm/秒(好ましくは100〜10,000μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。
【0039】
このように、プラスチックフィルム1に対してレーザー3を、照射方向6と垂直な方向である移動方向7に移動させながら照射することにより、独立孔部としての貫通孔(被加工プラスチック基材表面の形状が円形状となっている独立した微小貫通孔)が連結された形状又はこれに類似する形状の貫通孔(すなわち、連結孔部としての貫通孔)を形成することができる。すなわち、短径と長径とを有する微小貫通孔を形成することができる。
【0040】
なお、被加工プラスチック基材の厚みが厚い場合、1パルスで穿孔できない場合や、長軸が長い孔を形成する場合などでは、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設けて、ライン走査中に、超短パルスレーザーによるレーザー光の光路を制御することにより、単位面積あたりのショット数を増加させることができ、これにより、前記のような場合でも、優れた精度で効率よくレーザー加工を行うことができる。
【0041】
一方、独立孔部(特に、プラスチック表面の形状が円形状となっている独立した微小貫通孔や微小陥没孔)は、レーザー3の焦点5を移動させず停止させた状態で照射し、該照射された部位と間隔をあけて再度停止状態で照射することを繰り返すことによって形成することができる。
【0042】
また、被加工プラスチック基材の厚みが厚い場合、1パルスで穿孔できない場合などでは、図6に示されるように、レーザー3の焦点5を、照射方向6の方向に対して垂直となる方向への移動を停止した状態で、Z軸方向(すなわち照射方向6)に焦点位置をずらしながら、上面(表面または一方の表面)から底面(裏面または他方の表面)に照射することによっても、独立孔部(特に、プラスチック表面の形状が円形状となっている独立した微小貫通孔や微小陥没孔)を形成することができる。この場合、焦点は、上面(表面)側の開始点9aから底面(裏面)側の終了点9bに移動させている。このようなZ軸方向への焦点の移動速度は、1〜5,000μm/秒(好ましくは10〜800μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。
【0043】
さらにまた、このレーザー3の焦点5のZ軸方向への移動と、移動方向7への移動とを連動させることによっても、例えば、レーザー3の焦点5を移動方向7には移動させずにZ軸方向に移動させた後、一旦照射を遮断し、Z軸方向復帰させた後、移動方向7に移動させて照射を再開することを繰り返すことによっても、独立孔部としての貫通孔(被加工プラスチック基材表面の形状が円形状となっている独立した微小貫通孔)が連結された形状又はこれに類似する形状の貫通孔(すなわち、連結孔部としての貫通孔)を形成することができる。
【0044】
より具体的には、レーザー3を照射方向6の方向で、ライン8のうちいずれか1つのライン(ライン81とする)の一方の末端部に焦点5を合わせて、照射し、この焦点5を移動方向7の方向にライン81上をライン状にライン81の他方の末端まで移動させる。その後、このライン81上の焦点5の移動方法と同様の方法により、レーザー3の焦点5を他のライン(ライン82とする)の一方の末端に合わせて他方の末端まで該ライン82上をライン状に移動させる。さらに、このような焦点をライン8のうちいずれか1つのラインの一方の末端に合わせて他方の末端まで移動させることを必要なだけ繰り返すことにより、短径および長径(又は最小幅および最大長さ)を有する形状の微小孔部(微小貫通孔や微小陥没孔)を有するプラスチック構造体を作製することができる。
【0045】
また、貫通孔を形成する際には、被加工プラスチック基材の厚みにもよるが、例えば、独立孔部としての微小貫通孔を形成する場合は、図6で示されるように、レーザー3を照射方向6の方向で照射し、その焦点を照射方向6(Z軸方向)の方向に、9aから9b、又は9bから9aに、ライン状に移動させる。その後、焦点の移動を停止して、前記照射した部位とは異なる部位に照射し、照射方向6(Z軸方向)の方向に焦点を移動させる。さらに、このような焦点の照射方向6への移動を、異なる照射部位で、必要なだけ繰り返すことにより、微小貫通孔を有するプラスチック構造体を作製することができる。被加工プラスチック基材の厚みが薄い場合等では、レーザー3の焦点の照射方向6への移動を行わなくても、形成することができる場合がある。
【0046】
もちろん、被加工プラスチック基材の厚みにもよるが、レーザー3の焦点5の移動を、移動方向7の方向への移動と、照射方向6の方向への移動とを組み合わせることにより、短径および長径を有する形状の微小貫通孔を有するプラスチック構造体を作製することができる。
【0047】
なお、超短パルスレーザーの焦点の移動は、超短パルスレーザー及びレンズと、プラスチック構造体との相対位置を動かせることにより、例えば、超短パルスレーザー及びレンズ、及び/又は照射されるプラスチックを移動させることにより、行うことができる。具体的には、超短パルスレーザーの照射は、例えば、照射サンプル(照射される被加工プラスチック基材)を、2次元又は3次元の方向に精密に動かすことができる精密なXYZステージに載せ、3次元的に移動させることにより、サンプル任意の場所に行うことができる。また、XYZステージの移動を時間的に設定することにより、照射を3次元的な連続性を持って任意に行うことができる。
【0048】
なお、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設けることにより、超短パルスレーザーのレーザー光の光路や照射を精密に且つ容易に制御することができ、超短パルスレーザーによるレーザー加工性を高めることができる。
【0049】
このように、レーザー3をプラスチックフィルム1の表面や内部に外部から照射して、必要に応じて焦点をライン状(照射方向に平行な又はプラスチック表面に垂直なライン状や、照射方向に垂直な又はプラスチック表面に平行なライン状など)に移動させることにより、プラスチックフィルム1の表面等に、図1〜4に示されているような微小孔部(2a〜2d)を形成することができる。例えば、単独孔部としての微小貫通孔は、被加工プラスチック基材の厚みにもよるが、被加工プラスチック基材の一方の表面から他方の表面にかけて(ライン状に)焦点を移動させながらレーザーを照射することにより形成することができる。単独孔部としての微小陥没孔は、レーザーの焦点を移動させず停止させた状態で、被加工プラスチック基材の表面又はその付近に焦点を合わせて、レーザーを照射することにより形成することができる。一方、連結孔部としての微小貫通孔は、レーザーの焦点を被加工プラスチック基材の表面又はその付近に合わせるとともに、該レーザーの焦点を被加工プラスチック基材表面と平行な方向に(ライン状に)、前者より遅い速度で移動させながら、必要に応じて超短パルスレーザーの照射装置に設けられたシャッターを開閉しながら、レーザーを照射することにより形成することができる。連結孔部としての微小陥没孔は、レーザーの焦点を被加工プラスチック基材の表面又はその付近に合わせるとともに、該レーザーの焦点を被加工プラスチック基材表面と平行な方向に(ライン状に)移動させながらレーザーを照射することにより形成することができる。
【0050】
なお、微小孔部間の間隔[例えば、複数のライン状に形成された微小孔部の隣接するライン上における微小孔部間の間隔(すなわち、ライン8が形成された方向に対して垂直な方向における間隔)や、1つのライン上における独立孔部や連結孔部間の間隔など]、微小孔部の数(例えば、1つのライン上における独立孔部や連結孔部の数など)などは、特に制限されず、レーザーの照射条件や被加工プラスチック基材の素材等に応じて適宜選択することができる。
【0051】
(孔部の形成前の被加工プラスチック基材)
本発明では、孔部の形成する前の被加工プラスチック基材としては、共重合体を含めた単一化学構造のポリマー材料からなるものだけでなく、異なる化学構造を有する複数のポリマー材料からなるポリマーアロイやポリマーブレンドも用いることができる。また、パルスレーザー照射に使用される被加工プラスチック基材としては、無機化合物や金属などの他の材料を分散状態で含んだ複合体であってもよく、異なるプラスチックや他の材料からなる層を含んだ2以上の層構造からなる積層体であってもよい。例えば、被加工物(微小孔部を有するプラスチック構造体)に導電性を付与するために、被加工プラスチック基材の材料(ポリマー成分)中にカーボンブラックが分散された被加工プラスチック基材を用いると、レーザー光の吸収効率が上がり、加工しやすくなる効果も発現する。
【0052】
具体的には、被加工プラスチック基材としての前記ポリマー材料の代表的な例として、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリレート系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリアミド;ポリイミド(PI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリアミドイミド;ポリエステルイミド;ポリカーボネート(PC);ポリアセタール;ポリフェニレンエーテルなどのポリアリーレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;ポリアリレート;ポリアリール;ポリスルホン(ポリサルホン);ポリエーテルスルホン(PES)(ポリエーテルサルホン);ポリウレタン類;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂;ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなどのポリエーテルケトン類;ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸エステル類;ポリブトオキシメチレンなどのポリビニルエステル類;ポリシロキサン類;ポリサルファイド類;ポリフォスファゼン類;ポリトリアジン類;ポリカーボラン類;ポリノルボルネン;エポキシ系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリイソプレンやポリブタジエンなどのポリジエン類;ポリイソブチレンなどのポリアルケン類;フッ化ビニリデン系樹脂、ヘキサフルオロプロピレン系樹脂、ヘキサフルオロアセトン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂などの樹脂(熱可塑性樹脂など)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
ポリマー材料としては、微小孔部を有するプラスチック構造体の用途などに応じて適宜選択することができ、例えば、フィルター、セパレータ等の用途では、ポリマー材料としては、化学安定性等を考慮すると、フッ素系樹脂またはオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。
【0054】
被加工プラスチック基材としては、その厚みは特に制限されず、微小孔部を有するプラスチック構造体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1μm以上(例えば、0.1μm〜10mm)であってもよい。従って、被加工プラスチック基材としては、プラスチックシート又はフィルムであってもよく、プラスチック板であってもよい。なお、被加工プラスチック基材がプラスチックフィルムである場合、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、微小孔部を有するプラスチックフィルムが得られる。本発明では、被加工プラスチック基材がプラスチックフィルムであっても(すなわち、その厚みが薄くても)、優れた精度でレーザー加工を行うことができる。被加工プラスチック基材がプラスチックフィルムである場合、その厚みは、例えば、0.1〜500μm(好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは10〜150μm)であってもよい。
【0055】
本発明の方法により製造された微小孔部を有するプラスチック構造体は、表面や内部に精密に制御された微小な孔部(貫通孔や陥没孔)を有しているので、前記精密に制御して形成された微小孔部を利用した各種機能を効果的に発揮することができる。特に、微小孔部を有するプラスチック構造体は、微小貫通孔を有している場合、フィルター機能、メンブレン機能、セパレータ機能、霧化機能、ガス拡散化機能、ノズル機能や流路調整機能などを発揮することができる。
【0056】
具体的には、本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体は、精密な空間や流路などを形成するスペーサー機能を利用したマイクロマシーンやセンサー、バイオ機器、マイクロリアクターチップ、埋め込み型人工臓器の他、マイクロフィルター、精密ろ過膜(マイクロメンブレン)、電池用セパレータ(例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の各種電池で利用される電池用セパレータ)、燃料電池の部材(例えば、ガス拡散層、集電層、透湿層、保湿層などの燃料電池で用いられる各種部材)、マイクロノズル(例えば、プリンター用マイクロノズル、噴射用マイクロノズル、噴霧用マイクロノズル、隙間用マイクロノズルなど)、ディストリビュータ、ガス拡散層、マイクロ流路などの各種機能部材に用いることができる。
【0057】
特に、微小孔部を有するプラスチック構造体が、微小孔部を有するプラスチックフィルム(特に、微小貫通孔を有するプラスチックフィルム)である場合、マイクロフィルター、マイクロメンブレン、電池用セパレータ、燃料電池の部材、マイクロノズルなどのマイクロ機能フィルム部材として好適に利用することができる。なお、微小貫通孔を有するプラスチックフィルムをマイクロフィルターやマイクロメンブレンとして利用する場合、電池用セパレータや、燃料電池の部材などの他、バイオ、医療等の分離膜の用途で好適に用いることができる。
【0058】
なお、微小貫通孔を有するプラスチックフィルムをマイクロフィルターやマイクロメンブレンとして利用する場合、微小貫通孔としては、最小の径又は幅が200μm以下であればよいが、具体的には、前述のように、短径が0.05〜200μmであり、長径が0.05μm以上(例えば、0.05〜100000μm)であってもよい。もちろん、長径は直線状であってもよく、曲線状や折れ曲がり線状であってもよい。該微小貫通孔は、プラスチックフィルムに、多数設けられていることが重要であり、整然と設けられていてもよく、ランダムに設けられていてもよい。従って、隣接する微小貫通孔間の間隔は、一定であってもよく、一定でなくランダムであってもよい。なお、微小貫通孔のフィルム表面での形状としては、前述のように、マクロ的又は全体的な観点からは、円形類似形状(円類似形状や楕円類似形状など)ないし四角形類似形状(正方形類似形状や長方形類似形状など)であることが好ましい。
【0059】
微小孔部を有するプラスチック構造体は、そのままプラスチック部材として用いてもよく、他の部材と組み合わせて用いてもよい。微小孔部を有するプラスチック構造体には、任意の加工や処理を施すことができ、例えば、延伸や収縮などの加工処理や、さらに必要に応じて後処理を行うこともできる。
【0060】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
0.025mm厚さのポリイミド(PI)フィルムの表面から裏面方向(他の表面の方向または奥方向)に移動速度8000μm/sの条件で移動させながら、照射波長780nm、パルス幅140フェムト秒、繰り返し1kHzのチタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザーを、照射出力50mW、対物レンズの倍率10倍で、照射スポット約10μm径の条件で照射し、その後、純水中で超音波洗浄を行ったところ、微小貫通孔を有するプラスチックが得られた。この微小貫通孔を有するプラスチックを、光学顕微鏡で観察したところ、5μm径の貫通孔が8μm間隔の等間隔で形成していた。
【0062】
(実施例2)
0.15mm厚さで且つカーボンブラックが50重量%混合されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム(2倍延伸品)に、実施例1と同じパルスレーザーを、照射出力30mWで、移動速度500μm/sで走査させながら、1秒ごとにシャターの開閉を繰り返し行った。その後、純水中で超音波洗浄を行ったところ、微小貫通孔を有するプラスチックが得られた。この微小貫通孔を有するプラスチックを、光学顕微鏡で観察したところ、短径20μm幅、長径500μmの長溝状の貫通孔が等間隔で形成していた。
【0063】
(実施例3)
15mm厚さのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム(無延伸品)に、YAGレーザーの3倍波(波長355nm、パルスエネルギー50nJ/パルス、80MHz)のパルスレーザーを、5倍レンズで集光し、0.1秒間露光し、その後200μm移動をして露光を行うことを繰り返し行った。その後、純水中で超音波洗浄を行ったところ、微小貫通孔を有するプラスチックが得られた。この微小貫通孔を有するプラスチックを、光学顕微鏡で観察したところ、径20μm幅の貫通孔が等間隔で形成していた。
【0064】
(実施例4)
0.05mm厚さのポリエチレンフィルムに、実施例1と同じパルスレーザーを、照射出力200mWで回折素子を用いて5光束に分離し、そのうちの対角の4光束を5倍レンズで集光し、干渉をポリエチレンフィルム上で生じさせて、ポリエチレンフィルムに照射し、その後、純水中で超音波洗浄を行ったところ、微小貫通孔を有するプラスチックが得られた。この微小貫通孔を有するプラスチックを、光学顕微鏡で観察したところ、30μm径の貫通孔が等間隔で4個形成していた。
【0065】
(比較例1)
実施例2と同じフィルム(PTFEフィルム;厚さ0.15mm、カーボンブラック50重量%含有、2倍延伸品)に、8000μm/sの条件で移動させながら、照射波長1064nm、パルス幅8ナノ秒、繰り返し100HzのNd−YAGパルスレーザーを、照射出力50mW(500μJ/パルス)、対物レンズの倍率10倍で、照射スポット約10μm径の条件で照射したが、孔は形成できなかった。
【0066】
【発明の効果】
本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法によれば、プラスチックに、微小径の孔部を容易に形成することができる。さらに、マスクが不要であり、しかも、優れた生産性で微小な貫通孔及び/又は陥没孔を形成することができる。
このような製造方法による微小孔部を有するプラスチック構造体は、マイクロフィルター、マイクロメンブレン、電池用セパレータ、燃料電池の部材、マイクロノズルなどのマイクロ機能フィルム部材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の一例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図1(b)は、図1(a)におけるX1−X1´線における断面図である。
【図2】図2(a)は、微小貫通孔を有するプラスチック構造体の他の例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図2(b)は、図2(a)におけるX2−X2´線における断面図である。
【図3】図3(a)は、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の一例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図3(b)は、図3(a)におけるX3−X3´線における断面図である。
【図4】図4(a)は、微小陥没孔を有するプラスチック構造体の他の例を模式的に示す概略鳥瞰図であり、図4(b)は、図4(a)におけるX4−X4´線における断面図である。
【図5】微小孔部を有するプラスチック構造体の形成方法の一例を示す概略鳥瞰図である。
【図6】微小孔部を有するプラスチック構造体の形成方法の他の例を示す概略鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 プラスチックシート
2a 貫通孔
2b 貫通孔
2c 陥没孔
2d 陥没孔
1a プラスチックシート1の上面(表面)
1b プラスチックシート1の底面(裏面)
T プラスチックシート1の厚さ
3 パルス幅が10−9秒以下である超短パルスレーザー
4 レンズ
5 レーザー3の焦点
6 レーザー3の照射方向
7 レーザー3の焦点5の移動方向
8 レーザー3の焦点5をライン状に移動させる際のライン
L ライン8における近接したライン間の間隔
9a レーザー3の焦点5における上面(表面)側の開始点
9b レーザー3の焦点5における底面(裏面)側の終了点
Claims (10)
- 孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有するプラスチック構造体の製造方法であって、前記孔部を、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により形成することを特徴とする微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- 孔部を形成する前の被加工プラスチック基材が、プラスチックシート又はフィルムである請求項1記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- 微小孔部を有するプラスチック構造体が、貫通孔を有し、且つフィルター機能、メンブレン機能、セパレータ機能、霧化機能、ガス拡散化機能、ノズル機能、または流路調整機能を有している請求項1又は2記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- 多光子吸収過程を利用したレーザー加工が、パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを用いたレーザー加工である請求項1〜3の何れかの項に記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーが、紫外線波長領域〜近赤外線波長領域の波長を有する超短パルスのレーザーである請求項4記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを、多光束干渉で照射する請求項4又は5記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- パルス幅が10−9秒以下の超短パルスのレーザーを、該超短パルスのレーザーの照射方向に対して垂直な方向に且つプラスチック表面に対して平行な方向に、超短パルスのレーザーの焦点を移動させながら照射する請求項4〜6の何れかの項に記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- 孔部を形成する前の被加工プラスチック基材が、素材としてフッ素系樹脂またはオレフィン系樹脂を含有している請求項1〜7の何れかの項に記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- 孔部を形成する前の被加工プラスチック基材が、表面及び/又は内部に、無機微粒子を含有している請求項1〜8の何れかの項に記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法。
- 孔部として、最小の径又は幅が200μm以下である貫通孔及び/又は陥没孔を有するプラスチック構造体であって、前記孔部が、請求項1〜9の何れかの項に記載の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法により形成されていることを特徴とする微小孔部を有するプラスチック構造体。
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2003
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