JP2004285384A - 高強度浸炭部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】歯車等の浸炭部品を、芯部の化学組成が重量%でC:0.15〜0.30%,Si:0.25〜1.10%,Mn:0.3〜1.20%,Cr:1.25〜2.0%を含有し、残部が不可避的不純物及びFeからなり、真空浸炭後の表面C%が1.0〜1.5%で、表面から50μmまでの範囲で炭化物面積率が5〜15%で且つ5μm以下の炭化物数が全炭化物数の90%以上であり、粒界酸化層深さが1μm以下とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は浸炭部品に関し、詳しくは浸炭処理により表面硬化処理された上で使用される歯車等の動力伝達部品その他耐ピッチング性の要求される機械構造部品として好適なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の動力伝達部品として用いられる、機械構造部品としての歯車用の材料としてJIS SCr420Hが用いられてきた。
機械構造部品としての歯車は高い耐ピッチング強度と歯元強度(疲労強度,衝撃強度)とが要求される部品であり、そこで従来から種々の表面処理による高強度化を施した上で使用されてきた。
その表面処理の中でも浸炭処理は特に高い強度を付与することができる手法として広く用いられてきた。また近年耐ピッチング強度,疲労強度を改善する手法として浸炭窒化処理が適用され始めている。
【0003】
しかしながら、近年における自動車等の高出力化や小型化に伴って歯車等の機械構造部品に対する高強度化の要求が益々高くなってきており、浸炭や浸炭窒化処理を施してもピッチング破壊したり、歯元破壊したりすることがしばしばで、更なる改善が求められている。
【0004】
上記ピッチングの現象は機械構造部品同士の表面が擦り合うことによって、例えば歯車の歯面と歯面とが擦り合うことによって発生する高い応力により亀裂発生,亀裂進行及び剥離する現象であり、そこで従来ではこのようなピッチング破壊或いは歯元破壊等を防止するために、歯面等の摺動面の研削を行い、浸炭異常層等の欠陥を除去することにより強度向上を図っていることが多いが、歯研(歯面研削)の費用は高く、その歯研に要するコストが歯車の製造費用の半分を占める場合があるなどコスト的な面で大きな問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、歯車等に用いられる材料を高合金化して強度向上を図ることも行われている。
例えば下記特許文献1には鋼部材についての発明が示され、そこにおいて歯車,摺動部品等の曲げ疲労特性を害することなく耐ピッチング性を高めることを目的として、炭化物析出量を増し、また焼入性を向上させる元素としてMoを0.05〜0.6%、好ましくは0.15%以上添加する点が開示されている。
【0006】
また下記特許文献2には高面圧部品の製造方法についての発明が示され、そこにおいて歯車等において耐ピッチング性を高める目的でMoを1.0%までの範囲で、またNiを3%までの範囲でそれぞれ添加する点が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−212672号公報
【特許文献2】
特開平6−158266号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれらNiやMo等を多く添加することで強度向上を図る場合、これらNiやMoは高価な元素であるため、結果として材料コストが高くなってしまう問題がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の高強度浸炭部品はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、芯部の化学組成が、重量%でC:0.15〜0.30%,Si:0.25〜1.10%,Mn:0.3〜1.20%,Cr:1.25〜2.0%を含有し、残部が不可避的不純物及びFeからなり、真空浸炭後の表面C%が1.0〜1.5%で、表面から50μmまでの範囲での炭化物面積率が5〜15%で且つ5μm以下の炭化物数が全炭化物数の90%以上であり、粒界酸化層深さが1μm以下であることを特徴とする。
ここで芯部とは浸炭により浸入させた炭素が到達していない領域の内部を意味する。
【0010】
請求項2のものは、請求項1において、重量%でB:0.0005〜0.0050%,Ti:0.02〜0.06%を更に含有していることを特徴とする。
【0011】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、重量%でNb:0.02〜0.12%を更に含有していることを特徴とする。
【0012】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、重量%でPb:0.01〜0.20%,Bi:0.01〜0.10%,Ca:0.0005〜0.0050%,S:0.005〜0.100%の1種又は2種以上を更に含有していることを特徴とする。
【0013】
【作用及び発明の効果】
以上のように本発明は、Mo,Ni等の高価な元素を添加しないこと、高濃度浸炭を行って炭化物を歯車等表面に微細に析出させ表面硬度,強度を高めること、真空浸炭を施して表面の粒界酸化層を実質的に無くすこと等を骨子とするものである。
具体的には、成分的にはCを高めとするとともに炭化物形成元素としてのCrを高めに添加し、またSiを高めに添加して焼戻し軟化抵抗を高め、更に浸炭後における表面C濃度を1.0〜1.5%と高濃度となし、加えて炭化物面積率を5〜15%とすること、その際に5μm以下の炭化物がその殆ど(90%以上)を占めるようにすること、そして真空浸炭を施すことにより粒界酸化層深さを1μm以下とすること等を骨子とするものである。
【0014】
本発明は、ピッチングの原因として結晶粒界に沿ってCrやSiの脆い酸化層が生成し、これが結晶粒界の強度を低下させて、そこから亀裂発生,亀裂進行及び剥離進行させる点に着眼し、そこで浸炭手法として真空浸炭処理を施して結晶粒界の脆い酸化層を実質的に無くし(具体的には粒界酸化層深さを1μm以下となるようにする)、結晶粒界に生じた脆い酸化層によって結晶粒界から亀裂が進行するのを防止するのと併せて、高濃度浸炭を施すことで表面に炭化物を微細に析出させ、その析出硬化により表面硬さ,強度を高めるようになしたものである。
【0015】
但し高濃度浸炭を行って表面C濃度を高め、炭化物を多く析出させたとしても析出した炭化物が粗大であると、その粗大炭化物が結晶粒界に沿って網目状に生成してしまって結晶粒界の強度を弱めてしまう。
そこで本発明では表面C濃度を1.0〜1.5%に維持し、また炭化物面積率を5〜15%とする一方で、5μm以下の微細な炭化物が全炭化物の90%以上を占めるように制御しており、そしてこのようにすることで炭化物の析出による表面強度向上及び結晶粒界の強度向上を達成して、歯車等表面の耐ピッチング性を効果的に高めることができる。
【0016】
このような本発明によれば、歯研等の表面研削処理を省略でき、Mo,Ni等の高価な元素を添加しないことと相俟って高強度浸炭部品を安価に提供できる効果が得られる。
【0017】
本発明においては、必要に応じてB,TiをB:0.0005〜0.0050%,Ti:0.02〜0.06%の範囲で更に含有させることができる(請求項2)。
また更にNbをNb:0.02〜0.12%の範囲で含有させることができる(請求項3)。
その他に、更に必要に応じてPb:0.01〜0.20%,Bi:0.01〜0.10%,Ca:0.0005〜0.0050%,S:0.005〜0.100%の1種又は2種以上を含有させることができる(請求項4)。
【0018】
次に本発明における各化学成分等の限定理由を以下に詳述する。
C:0.15〜0.30%
Cは非浸炭層の強度を上げる上で必須である。そのためには0.15%以上含有させる必要がある。
一方0.30%を超えて含有させると、芯部硬さの上昇により冷鍛(冷間鍛造)加工性や被削性が劣化するため0.30%以下とする。
【0019】
Si:0.25〜1.10%
Siは炭化物の微細化と焼戻し軟化抵抗の向上とによって耐ピッチング強度を高める効果があり、その効果のため0.25%以上含有させる。
一方1.10%を超えて多く含有させると、芯部硬さの上昇により冷鍛加工性や被削性が劣化する。また浸炭性を阻害し、浸炭処理が長時間化するため上限を1.10%とする。
好ましい範囲は0.60%以下である。
【0020】
Mn:0.3〜1.20%
Mnは芯部強度の向上,焼入性向上に有効である。そのためには0.3%以上含有させることが必要である。これよりも少ないと焼入性が低くなり過ぎ、炭化物の周辺に不完全焼入組織が生成する。
一方1.20%を超えて含有させると、芯部硬さの上昇により冷鍛加工性や被削性が劣化する。従って本発明では1.20%以下とする。
好ましい範囲は0.60%以下である。
【0021】
Cr:1.25〜2.0%
Crは炭化物形成元素として、また焼入性を向上させる元素として1.25%以上含有させる必要がある。
一方2.0%を超えて含有させると、芯部硬さの上昇により冷鍛加工性や被削性が劣化する。また粗大炭化物が多く生成する。そのため本発明では2.0%以下の範囲で含有させる。
【0022】
B:0.0005〜0.0050%
Bは焼入性を向上させ、また靭性を向上させて歯元の衝撃強度,疲労強度を高める働きがある。従って必要に応じてBを0.0005%以上含有させる。
但し0.0050%を超えて含有させても効果が飽和し、経済的に不利となるため上限を0.0050%とする。
【0023】
Ti:0.02〜0.06%
Tiは窒化物を形成することによりBが窒化物となることを防止し、Bによる焼入性,靭性向上効果を確保する上で有効である。
但し0.02%よりも少ないとその効果がなく、一方0.06%でその効果が飽和し、それ以上の添加は経済的に不利となるため、Bとともに含有させるとしてもその上限を0.06%とする。
【0024】
Nb:0.02〜0.12%
Nbは1000℃前後の高温で処理を行う際、結晶粒の成長を、ひいては粗大炭化物の生成を抑制し、疲労強度の低下を抑制する働きがある。その効果を得るためには0.02%以上含有させる必要がある。
一方で0.12%を超えて含有させると、凝固時に粗大な炭窒化物を形成し、結晶粒成長抑制効果が減退するとともに強度を低下させてしまうため上限を0.12%とする。
【0025】
Pb:0.01〜0.20%
Bi:0.01〜0.10%
Ca:0.0005〜0.0050%
S :0.005〜0.100%
これら元素は被削性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させる。
但し必要以上に含有させると強度の低下を招くため、それぞれの上限値を上記の値とする。
【0026】
尚、スクラップを原料とする電炉製鋼等においてはCu,Ni,Mo等が不可避的不純物成分として含有されてくる。
そこで本発明では、これら成分の含有量を極端に低く規制すると却って高コストとなってしまうため、ある程度の含有を許容するものとする。
【0027】
但し本発明においてはこれらの含有量は以下のように規制することが望ましい。
Cu:≦0.30%
Cuは芯部硬さの上昇により冷鍛加工性や被削性を劣化させる。従って0.30%以下に規制しておくことが望ましい。
【0028】
Ni:≦0.30%
Niは芯部硬さの上昇により冷鍛加工性や被削性を劣化させる。従って0.30%以下に規制することが望ましい。
【0029】
Mo:≦0.05%
Moは熱間加工ままや焼ならし状態の素材硬度を著しく上昇させる。従って製造性と強度の両立を目的とする本発明においては積極的な添加元素ではない。
そのため本発明ではMoの含有量を0.05%以下に規制するのが望ましい。
これらCu,Ni,Moの上記含有量は何れも電炉製鋼における不純物レベルである。
【0030】
浸炭処理:真空浸炭(1000Pa以下)
本発明の浸炭部品では真空浸炭が施される。
このような真空浸炭処理による粒界酸化層の低減によって浸炭部品の高強度化が図られる。
本発明では、化学成分としてSiが必須成分として添加される。
このSiは通常の大気浸炭の際に粒界酸化を促進する元素であり、Siの粒界酸化層によって歯元の衝撃強度や疲労強度が低下する一因となる。従って通常の大気浸炭の場合Siを多量に含有させることはできない。
しかるに真空浸炭による浸炭部品の場合、そのような粒界酸化層の生成が抑制されることでSiを多量に含有させることができる。そしてこれにより焼戻し軟化抵抗が高められ、耐ピッチング強度と歯元強度の向上が図られる。
また高濃度浸炭を従来の大気ガス浸炭法で行うとスーティング(すす発生)が生じ、浸炭ムラが発生する場合があるが、真空浸炭によればこのような浸炭ムラを抑制できる。
【0031】
粒界酸化層深さ:1μm以下
粒界酸化層は疲労強度,耐ピッチング強度の低下を招き、その深さが深くなるにつれて低下の程度が大きくなる。
本発明では、真空浸炭後の粒界酸化層深さは1μm以下でなくてはならない。
【0032】
炭化物分布:表面から50μmまでの範囲で炭化物面積率が5〜15%且つ5μm以下の炭化物数が全炭化物数の90%以上
炭化物の析出は表面硬度を上昇させ、強度を向上させる。
但し表面から50μmの範囲で炭化物の量が5%未満では強度向上の効果が十分得られず、一方15%より多くすると炭化物にCr等の元素が取り込まれてマトリックス中にCr欠乏層等が生じ、マトリックスの焼入性が不足して、炭化物の周りにトルースタイトが生成することにより強度の低下を招く。
また炭化物面積率5〜15%を充足したとしても、5μmより大きい粗大炭化物が10%を超えて生成すると、それらが粒界に沿った網目状炭化物となって、粒界に切欠が形成されたような状態となり強度の低下を招く。
従って本発明では5μm以下の炭化物数が全炭化物数の90%以上を占めるように微細な炭化物析出状態とする必要がある。
【0033】
表面C%:1.0〜1.5%
表面C%は炭化物の析出量及び大きさを左右する要因で、1.0%未満であると炭化物の析出量が少なく、十分な強度向上効果が得られない。
一方1.5%を超えると炭化物の量が15%を超えるようになり、マトリックスの焼入性が不足し強度の低下を招く。
従って本発明では表面C%を1.0〜1.5%に規制する。
【0034】
ショットピーニング(S/P),ウォータージェットピーニング(W/J):
本発明においては、必要に応じてS/P,W/Jを施しておくことができる。
【0035】
浸炭パターン:
本発明の浸炭部品は、例えば図1に示すような処理パターンで高濃度真空浸炭を施すことで得ることができる。
ここでは第1段階で、950℃程度の温度域でカーボンポテンシャル(Cp)を1.5%程度に調整した雰囲気中で浸炭した後、第2段階で850℃程度の温度でカーボンポテンシャルを0.8%程度に調整した雰囲気中で2時間程度保持し、その後油焼入れするようにしている。
【0036】
【実施例】
次に本発明の実施例を以下に詳述する。
(イ)素材の製造
表1に示す組成の材料を真空誘導炉にて50kg溶製し、インゴット鋳造後にφ32mmに鍛伸を行い、機械加工に供した。
また表2に示す各種項目を測定した。尚測定条件は以下の通りである。
【0037】
(ロ)焼ならし硬さ
機械加工によりφ25×100mmの丸棒試験片に加工した後、920℃×1hrの焼ならしを施し、焼ならし硬さを測定した。
測定は、横断面の中心部をJIS Z 2245に準拠しBスケールによる測定を実施した。
【0038】
(ハ)浸炭処理
強度評価用の試験片に施した真空浸炭処理は次のようにして行った。
第1段階:最表面C%を1.2%狙いの浸炭処理を施し、比較的多量のCを鋼中に浸入させた。
第2段階:第1段階にて浸入させたCを析出させるために850℃にて60minの析出処理を施した。
また浸炭処理後に180℃×90minの焼戻し処理を実施した。
【0039】
(ニ)表面C%
浸炭処理後、処理試験片の表面から50μm位置までのダライ粉からC%を測定した。
【0040】
(ホ)最大炭化物サイズの測定,面積率
高濃度浸炭焼入れ・焼戻しを行った丸棒試験片の長さ方向中央の横断面を切断,研磨後、ピクラールで腐食した後、最表面から50μmの位置をSEMで写真撮影(観察倍率5000倍)し、画像解析して面積率の測定を行った。また径5μm以下の炭化物が占める割合を算出した。
【0041】
(ヘ)網目状炭化物,不完全焼入組織の有無
上記と同様の条件で網目状炭化物,不完全焼入組織の有無を観察した。ここで網目状炭化物は粗大な炭化物が結晶粒界に沿って網目状をなすように析出したものである。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
上記の表1及び表2において鋼種A〜L及びN,Oは本発明の要件を満たす実施例である。
これら実施例のものは、何れも焼ならし後の硬さがHRB90未満であり、機械加工を容易に行うことができる。
浸炭後の特性も要件を満たしており、強度の劣化を招く不完全焼入組織の生成は見られず、粗大炭化物の面積率も少ない。
【0045】
一方鋼種M及びPは本発明の要件を欠く比較例である。
鋼種MはMn量が少な過ぎるため、浸炭層に不完全焼入組織が生成している。
これはMn量が少な過ぎるために浸炭層(特に炭化物の周辺)の焼入性が不足したためと考えられる。
【0046】
鋼種PはCr量が多過ぎるために浸炭され易く、表面C%が請求の範囲の上限を超えている。
その結果炭化物量が多く、5μm超の粗大炭化物が多く析出している。
また鋼種Pは炭化物の周りに不完全焼入組織も観察された。
【0047】
次に表3は、表1における鋼種Aの鋼に表面炭素濃度(表面C%)0.8%,1.2%,1.4%,1.6%,1.8%狙いの真空高濃度浸炭処理を施した際の浸炭特性を調べた結果である。
測定の方法は上記と同様である。
【0048】
【表3】
【0049】
No.18,No.19は本発明の要件を満たす実施例であり、強度の劣化を招く不完全焼入組織の生成は見られず、粗大炭化物の面積率も少ない。
【0050】
一方No.17は表面炭素濃度が低い場合の比較例であり、炭化物の析出量が極めて少なくなっている。
【0051】
No.20,No.21は表面炭素濃度が本発明の請求の範囲から外れて高い場合の比較例で、共に粗大炭化物の量が多くなっている。
特にNo.21は炭化物の析出量が多いためにマトリックスの焼入性が低下し、浸炭層に不完全焼入組織が確認された。
【0052】
表1に示す各鋼種について真空浸炭処理(浸炭の処理条件は上記と同様)を実施し、その浸炭処理品について硬さ測定,粒界酸化層深さ測定及び疲労強度,ピッチング寿命,シャルピー吸収エネルギー測定をそれぞれ行った。
その結果が表4に示してある。
ここで各試験の試験条件は以下の通りとした。
尚表4には比較として大気ガス浸炭を実施した場合の結果も併せて示してある。
【0053】
(イ)試験片加工
図2(A)に示すローラーピッチング試験片10,図2(B)に示す回転曲げ試験片12及び図2(C)に示すシャルピー衝撃試験片14をそれぞれ用意した。
ここで回転曲げ試験片12はr=1mm(応力集中係数αk=1.8)の環状切欠を有する小野式回転曲げ疲労試験片に加工した後、上記浸炭処理を施し、試験に供した。
一部の試験片にアークハイト1mmAのS/P(ショットピーニング)処理を施した。
【0054】
(ロ)試験条件
[硬さ]
ローラーピッチング試験片10の転送面から50μm位置の硬さをJIS Z 2244に準拠し測定した(HV0.3)。
【0055】
[粒界酸化層深さ]
ローラーピッチング試験片10の転送面を研磨し、未腐食で観察して粒界に沿って黒く見える層の深さを測定した。
【0056】
[ローラーピッチング試験]
面圧:3.4GPa,回転数:1500rpm,すべり率:−40%,油温:80℃の条件で試験を実施した。
【0057】
[回転曲げ試験]
小野式回転曲げ試験を回転数:3500rpm,試験温度:室温の条件で実施した。
107サイクル回しても破損しない応力を疲労限度とした。
【0058】
[シャルピー衝撃試験]
ノッチは10Rノッチとした。
【0059】
【表4】
表4において、鋼種QはJIS SCr420H相当の鋼である。
【0060】
また表4のNo.22〜No.32,No.34,No.38は本発明の要件を満たす実施例である。
これら実施例のものはJIS SCr420Hの浸炭材(表1の鋼種Qを用いたNo.36)に比べて同等以上の硬度が得られている。
また1.5倍程度の疲労強度,3倍程度のピッチング寿命,約2倍以上の衝撃値が得られている。
【0061】
No.38はNo.22+S/Pの実施例であるが、No.39のJIS SCr420H浸炭(No.36)+S/Pに対して優れた強度特性を示している。
【0062】
No.33,No.35〜No.37,No.39は本発明の要件を充足しない比較例である。
No.33(表1の鋼種Mを用いたもの)は不完全焼入組織が生成しており、疲労強度及びピッチング寿命が低くなっている。
またNo.35(表1の鋼種Pを用いたもの)は不完全焼入組織のため表面硬度が下がっており、ピッチング寿命が低下している。
大気浸炭をしたもの(No.36,No.37)は粒界酸化層が深く生成しており、衝撃強度が低くなっている。
【0063】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の高強度浸炭部品を得るために施す高濃度真空浸炭の処理パターンの一例を示す図である。
【図2】
本発明の実施例で行った(A)ピッチング寿命,(B)疲労強度及び(C)シャルピー吸収エネルギー測定に用いた試験片を示した図である。
Claims (4)
- 芯部の化学組成が、重量%で
C :0.15〜0.30%
Si:0.25〜1.10%
Mn:0.3〜1.20%
Cr:1.25〜2.0%
を含有し、残部が不可避的不純物及びFeからなり、真空浸炭後の表面C%が1.0〜1.5%で、表面から50μmまでの範囲での炭化物面積率が5〜15%で且つ5μm以下の炭化物数が全炭化物数の90%以上であり、粒界酸化層深さが1μm以下であることを特徴とする高強度浸炭部品。 - 請求項1において、重量%で
B :0.0005〜0.0050%
Ti:0.02〜0.06%
を更に含有していることを特徴とする高強度浸炭部品。 - 請求項1,2の何れかにおいて、重量%で
Nb:0.02〜0.12%
を更に含有していることを特徴とする高強度浸炭部品。 - 請求項1〜3の何れかにおいて、重量%で
Pb:0.01〜0.20%
Bi:0.01〜0.10%
Ca:0.0005〜0.0050%
S :0.005〜0.100%
の1種又は2種以上を更に含有していることを特徴とする高強度浸炭部品。
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